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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1361981
審判番号 不服2019-8177  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-19 
確定日 2020-05-12 
事件の表示 特願2017-220033「静電荷像現像用トナーの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月15日出願公開、特開2018- 25828、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は平成25年10月8日に出願した特願2013-211266号の一部を平成29年11月15日に新たな特許出願としたものであって、平成30年7月27日に拒絶理由が通知され、同年12月3日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、平成31年3月14日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和元年6月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 原査定の概要
原査定の拒絶理由の概要は以下のとおりである。

(1)新規性
本願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)進歩性
本願の請求項1?5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1、3?5に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、原査定の拒絶理由に引用された引用文献は、以下のとおりであり、引用文献1は主引用発明が記載された文献であり、引用文献3?5は周知技術を示す文献であり、引用文献6、7は参考となる文献とされている。

引用文献1:特開2003-295500号公報
引用文献3:特開2012-203360号公報
引用文献4:特開2008-241927号公報
引用文献5:特開2010-145467号公報
引用文献6:特開2009-84550号公報
引用文献7:特開2001-66820号公報

3 本件発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明5」という。)は、平成30年12月3日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法において、
前記外添剤として、前記着色樹脂粒子100質量部に対し、
個数平均一次粒径が10?150nmの窒素含有樹脂粒子(ただし、無機粒子を含む複合樹脂粒子を除く。)を0.05?1.5質量部、
個数平均一次粒径が31?300nmの無機微粒子Aを0.5?3.0質量部、
個数平均一次粒径が11?30nmの無機微粒子Bを0.1?2.0質量部、及び
個数平均一次粒径が5?8nmの無機微粒子Cを0.1?1.0質量部、
添加することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
前記外添剤において、無機微粒子A、無機微粒子B、及び無機微粒子Cの吸着水分量が、それぞれ0.1?0.4質量%、0.1?0.6質量%、0.1?1.0質量%であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
前記外添剤において、無機微粒子A、無機微粒子B、及び無機微粒子Cの総含有量が、着色樹脂粒子100質量部に対し、1.2?4.0質量部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項4】
前記外添剤は、さらに個数平均一次粒径が100?2,000nmの脂肪酸金属塩粒子を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
前記外添剤において、無機粒微子A、無機粒微子B、及び無機粒微子Cは、アミノ基を含有する疎水化処理剤でいずれも表面を処理されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。」

4 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶理由に引用され、本願出願前の平成15年10月15日に頒布された刊行物である引用文献1(特開2003-295500号公報)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。以下の文献についても同様である。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも樹脂及び着色剤から成る現像剤本体粒子に、研磨剤が添加され、かつ、該研磨剤の帯電極性と前記現像剤本体粒子の帯電極性とが逆極性であることを特徴とする現像剤。
【請求項2】 前記研磨剤の平均粒径は50?5000〔nm〕である請求項1に記載の現像剤。
【請求項3】 前記研磨剤の平均粒径は、好ましくは、150?2000〔nm〕である請求項2に記載の現像剤。
【請求項4】 前記現像剤本体粒子に、研磨剤及び流動性付与剤が添加される請求項1?3のいずれか1項に記載の現像剤。
【請求項5】 前記流動性付与剤のうちの少なくとも一つの材料の平均粒径は5?40〔nm〕である請求項4に記載の現像剤。
【請求項6】 (a)前記流動性付与剤は、現像剤に対して重量で0.1〔%〕以上添加され、(b)前記研磨剤は、現像剤に対して重量で0.02?1.2〔%〕添加される請求項4又は5に記載の現像剤。
【請求項7】 前記研磨剤は、好ましくは、現像剤に対して重量で0.05?1.0〔%〕添加される請求項6に記載の現像剤。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、現像剤、現像剤カートリッジ及び画像形成装置に関するものである。

(中略)

【0005】また、トナーにおいては、粘性を低くし、流動性を高くするために、現像剤本体粒子に流動性付与剤を添加することが多く、流動性付与剤には、例えば、酸化珪素(以下「シリカ」という。)、シリカの表面処理品、チタン、チタン酸化物、チタン酸化物の表面処理品、クレー、アルミナ、炭酸カルシウム等の無機研磨剤、又はメタクリレート研磨剤、メラミン研磨剤、シリコーン研磨剤等の有機研磨剤が使用される。
【0006】前記流動性付与剤の直径、すなわち、粒径は前記現像剤本体粒子より小さくされる。また、トナーの製造工程においては、前記流動性付与剤が現像剤本体粒子に添加され、ヘンシェルミキサー等の外添装置を使用して、現像剤本体粒子の表面に付着させられ、トナーとして完成される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の画像形成装置においては、溶融しやすい特性を有するトナーを使用したり、現像剤本体粒子に、離形剤を添加してトナーを溶融しやすくしたり、流動性付与剤を添加してトナーの粘性を低くし、流動性を高くしたりすると、定着装置における定着特性を向上させることができるが、媒体上のバックグラウンド(地の部分)にトナーが付着してかぶりが発生し、画像品位が低下してしまう。

(中略)

【0011】本発明は、前記従来の現像剤の問題点を解決して、媒体上にかぶりが発生するのを抑制することができ、画像品位を向上させることができる現像剤、現像剤カートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】そのために、本発明の現像剤においては、少なくとも樹脂及び着色剤から成る現像剤本体粒子に、研磨剤が添加され、かつ、該研磨剤の帯電極性と前記現像剤本体粒子の帯電極性とが逆極性である。」

ウ 「【0023】前記一成分現像方式及び二成分現像方式の現像装置において、前記トナー16として、溶融しやすいトナーを使用したり、現像剤本体粒子に離形剤を添加して溶融しやすくしたり、流動性付与剤を添加して粘性を低くし、流動性を高くしたりしたトナーを使用したときに、現像ローラ14、トナー供給ローラ15、現像ブレード17、キャリヤ等の各種の帯電付与部材の表面にフィルミングが発生すると、媒体22上のバックグラウンドにトナー16が付着してかぶりが発生し、画像品位が低下してしまう。
【0024】そこで、前記現像剤本体粒子に各種の微粒子を添加して評価を行ったところ、現像剤本体粒子の帯電極性に対して逆極性の、かつ、研磨効果がある研磨剤を添加するのが好ましいことが分かった。
【0025】十分な研磨効果を有するためには、研磨剤の粒径が重要であり、該研磨剤の平均粒径は50?5000〔nm〕、好ましくは、100?2000〔nm〕である。なお、前記流動化付与剤のうちのシリカ、チタン酸化物等は、平均粒径が5?40〔nm〕程度であるので、研磨効果はない。
【0026】そして、現像剤本体粒子の帯電極性に対して逆極性の研磨剤として、現像剤本体粒子が負の帯電極性を有する場合、メラミン研磨剤等の正の帯電極性を有するものが、現像剤本体粒子が正の帯電極性を有する場合、シリコーン研磨剤等の負の帯電極性を有するものが有効であり、媒体22上にかぶりが発生するのを抑制することができ、その結果、画像品位を向上させることができる。
【0027】例えば、本発明においては、メラミン研磨剤とホルムアルデヒドを付加重合させる際の反応時間及び温度を変化させ、研磨剤の平均粒径を0.05?6.5〔μm〕にした。そして、前記現像剤本体粒子に研磨剤を添加し、一成分現像方式の現像装置を使用して印刷を行い、現像ブレード17における現像ローラ14との接触面に対してSEM観察及びIR分析を行ったところ、多数の研磨剤が前記接触面に付着していることが分かった。すなわち、現像ブレード17によって現像ローラ14の表面にトナー層が形成されるときに発生するストレスによって、研磨剤の一部が現像剤本体粒子から剥(はく)離して現像ブレード17に付着し、フィルミングを発生させたと考えられる。同様に、現像ローラ14及びトナー供給ローラ15のそれぞれの表面にも研磨剤が付着していることが分かった。
【0028】この場合、前記研磨剤は二成分現像方式の現像装置におけるキャリヤのような働きをすると推定される。したがって、帯電極性が現像剤本体粒子と逆極性の添加剤を使用するのが好ましい。
【0029】ところで、シリカのように平均粒径が5?40〔nm〕程度の、現像剤本体粒子と逆極性の研磨剤を使用するのは、好ましくない。これは、現像剤本体粒子とシリカとはクーロン力のほかに、ファンデルワールス力によっても結びついていて、ナノミリオーダの粒子の場合、特に、ファンデルワールス力によって受ける影響が大きい。
【0030】すなわち、ファンデルワールス力は、粒子の粒径に比例して大きくなるのに対して、クーロン力は、粒径の2乗に比例して大きくなる。したがって、粒径が小さくなるほど、クーロン力よりファンデルワールス力の方が影響を与えるようになる。
【0031】実際に、平均粒径が12〔nm〕の帯電極性が正のシリカを帯電極性が負の現像剤本体粒子に添加して印刷を行ったところ、平均粒径が12〔nm〕の帯電極性が負のシリカを帯電極性が負の現像剤本体粒子に添加して印刷を行ったときより、多くのかぶりが発生してしまった。ところが、平均粒径が300〔nm〕の帯電極性が正のシリカを帯電極性が負の現像剤本体粒子に添加して印刷を行ったところ、まったくかぶりが発生することがなく、画像品位を極めて向上させることができた。これに対して、平均粒径が300〔nm〕の帯電極性が負のシリカを帯電極性が負の現像剤本体粒子に添加して印刷を行ったところ、極めて多くのかぶりが発生してしまった。
【0032】また、現像剤本体粒子に研磨剤を添加したときの、かぶりの発生を抑制する効果は、一成分現像方式の現像装置を使用する画像形成装置の方が二成分現像方式の現像装置を使用する画像形成装置より顕著であった。また、一成分現像方式の現像装置においては、接触現像方式の現像装置、及び非接触現像方式の現像装置があるが、かぶりの発生を抑制する効果は、接触現像方式の現像装置を使用する画像形成装置の方がより顕著であった。このことから、トナー16に大きなストレスが加わる現像方式の現像装置を使用する画像形成装置において、かぶりの発生を抑制する効果が著しいことが分かる。」

エ 「【0035】
【実施例】まず、実施例1?5並びに比較例1及び2について表1を参照して説明する。

(中略)

【0037】〔実施例1〕樹脂としてのポリエステル樹脂(数平均分子量Mn=3700、ガラス転移点Tg=62〔℃〕)が100重量部、及び着色剤としてのフタロシアニンブルーが4.5重量部、帯電制御剤(負の帯電極性)が2.5重量部から成る組成の混合物をヘンシェルミキサーによって十分に攪拌し混練した後、ロールミルによって120〔℃〕の温度で約3時間加熱して溶融させ、室温まで冷却した後、得られた混練物を衝突版式粉砕機「ディスパージョンセパレーター」(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて粉砕し、分級を行い、平均粒径が8〔μm〕の現像剤本体粒子を得た。この現像剤本体粒子の平均帯電量は-50〔μC/g〕であった。
【0038】次に、前記現像剤本体粒子に、R972(日本アエロジル社製)が0.5重量部、及びRX50(日本アエロジル社製)が0.5重量部から成るシリカ、並びに研磨剤としての平均粒径が300〔nm〕、平均帯電量が+600〔μC/g〕のメラミン研磨剤(M-300)を0.02重量部添加し、最終的にトナーを得た。

(中略)

【0042】この場合、50000枚の媒体22に対して連続して印刷を行っても、画像品位は初期のものと全く変わらず、媒体22上にかぶりは発生しなかった。また、十分な印刷濃度で印刷を行うことができ、各帯電付与部材の表面にフィルミングが発生しておらず、印刷上の異常も見られなかった。
〔実施例3〕本実施例において、メラミン研磨剤(M-300)の添加量を0.50重量部としたほかは、実施例1と同様の方法でのトナーを得た。

(中略)

【0126】次に、各研磨剤の粒径を変化させたときの実施例21?27並びに比較例9及び10について表5を参照して説明する。

(中略)

【0128】〔実施例21〕本実施例において、研磨剤として、メラミン研磨剤(M-300)に代えて平均粒径が50〔nm〕、平均帯電量が+1100〔μC/g〕のメラミン研磨剤(M-50)を使用したほかは、実施例3と同様の方法でトナーを得た。
【0129】該トナーを図1に示される画像形成装置のトナー16として使用し、A4判の媒体22に対してべた画像を連続して印刷する耐久印刷試験を行った。
【0130】この場合、50000枚の媒体22に対して連続して印刷を行っても、画像品位は初期のものと全く変わらないが、媒体22上にわずかなかぶりが発生した。そして、印刷かすれは全く発生しなかった。また、十分な印刷濃度で印刷を行うことができ、各帯電付与部材の表面にフィルミングが発生しておらず、印刷上の異常も見られなかった。
【0131】次に、現像装置を分解し、現像ブレード17における現像ローラ14との接触面に対してSEM観察を行ったところ、平均粒径がほぼ50〔nm〕のシリカより大きい粒子が多数観察された。また、IR分析を行ったところ、メラミンの存在を示すピークが観察された。
【0132】同様に、現像ローラ14及びトナー供給ローラ15の表面のSEM観察においても、メラミン研磨剤の存在が観察された。すなわち、耐久印刷試験において、メラミン研磨剤の一部がトナーから剥離して、帯電付与部材の表面に付着していることが分かった。
〔実施例22〕本実施例において、研磨剤として、メラミン研磨剤(M-50)に代えて平均粒径が150〔nm〕、平均帯電量が+800〔μC/g〕のメラミン研磨剤(M-150)を使用したほかは、実施例21と同様の方法でトナーを得た。
【0133】該トナーを図1に示される画像形成装置のトナー16として使用し、A4判の媒体22に対してべた画像を連続して印刷する耐久印刷試験を行った。
【0134】この場合、50000枚の媒体22に対して連続して印刷を行っても、画像品位は初期のものと全く変わらず、媒体22上にかぶりは発生しなかった。そして、印刷かすれも全く発生しなかった。また、十分な印刷濃度で印刷を行うことができ、各帯電付与部材の表面にフィルミングが発生しておらず、印刷上の異常も見られなかった。
【0135】次に、現像装置を分解し、現像ブレード17における現像ローラ14との接触面に対してSEM観察を行ったところ、平均粒径がほぼ150〔nm〕のシリカより大きい粒子が多数観察された。また、IR分析を行ったところ、メラミンの存在を示すピークが観察された。
【0136】同様に、現像ローラ14及びトナー供給ローラ15の表面のSEM観察においても、メラミン研磨剤の存在が観察された。すなわち、耐久印刷試験において、メラミン研磨剤の一部がトナーから剥離して、帯電付与部材の表面に付着していることが分かった。」

オ 「【0165】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、現像剤においては、少なくとも樹脂及び着色剤から成る現像剤本体粒子に、研磨剤が添加され、かつ、該研磨剤の帯電極性と前記現像剤本体粒子の帯電極性とが逆極性である。
【0166】この場合、現像剤本体粒子に、研磨剤が添加され、かつ、該研磨剤の帯電極性と前記現像剤本体粒子の帯電極性とが逆極性であるので、媒体上にかぶりが発生するのを抑制することができる。したがって、画像品位を向上させることができる。」

(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1の記載事項に基づけば、引用文献1には、実施例21におけるトナーを得る方法として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていたと認められる。
「樹脂としてのポリエステル樹脂(数平均分子量Mn=3700、ガラス転移点Tg=62〔℃〕)が100重量部、及び着色剤としてのフタロシアニンブルーが4.5重量部、帯電制御剤(負の帯電極性)が2.5重量部から成る組成の混合物を攪拌し混練した後、加熱して溶融させ、室温まで冷却した後、得られた混練物を粉砕し、分級を行い、平均粒径が8〔μm〕の現像剤本体粒子を得て、
次に、前記現像剤本体粒子に、R972(日本アエロジル社製)が0.5重量部、及びRX50(日本アエロジル社製)が0.5重量部から成るシリカ、並びに研磨剤としての平均粒径が50〔nm〕、平均帯電量が+1100〔μC/g〕のメラミン研磨剤(M-50)を0.50重量部添加し、トナーを得る方法。」

(3)引用文献6の記載事項
原査定の拒絶理由に参考となる文献として引用され、本願出願前の平成21年4月23日に頒布された刊行物である引用文献6(特開2009-84550号公報)には、以下の記載事項がある。

「【0011】
シリカ粒子の市販品としては、コロイダルシリカMEK分散ゾル(日産化学社製、MEK-ST、平均一次粒子径10-15nm、シリカ含有量30質量%)、コロイダルシリカMIBK分散ゾル(日産化学社製、MIBK-ST、平均一次粒子径10-15nm、シリカ含有量30質量%)、コロイダルシリカIPA分散ゾル(日産化学社製、IPA-ST、平均一次粒子径10-15nm、シリカ含有量30質量%)、コロイダルシリカトルエン分散ゾル(扶桑化学社製、PL-2L-TOL、平均一次粒子径15-20nm、シリカ含有量40質量%)、同じく扶桑化学製のコロイダルシリカMEK分散ゾルなどのシリカ分散ゾルが挙げられ、又、粉末状のものとしては、シリカ粉体(日本アエロジル社製、AEROSIL R976、RX300、R812、RY300=平均一次粒子径7nm、AEROSIL R972=平均一次粒子径16nm、AEROSIL NAX50=平均一次粒子径30nm、AEROSIL RX50=平均一次粒子径40nm)などが挙げられる。
本発明のPC樹脂組成物において、(A)成分の無機酸化物粒子の含有量は、PC樹脂組成物基準で0.5?50質量%であることが好ましい。無機酸化物粒子の含有量が0.5質量%以上であると、適度の硬度や剛性、良好な熱安定性が得られる。また、50質量%以下であると、射出成形がし易いという利点がある。」

(4)引用文献7の記載事項
原査定の拒絶理由に参考となる文献として引用され、本願出願前の平成13年3月16日に頒布された刊行物である引用文献7(特開2001-66820号公報)には、以下の記載事項がある。

「【0075】以下の実施例及び比較例では、下記(A)?(K)のいずれかの外添剤を使用した。
(A)単分散球形シリカA
ゾルゲル法で得られたシリカゾルにHMDS処理を行い、乾燥、粉砕により真比重1.50、球形化度Ψ=0.85、体積平均粒径D_(50)=135nm(標準偏差=29nm)の球形単分散シリカAを得た。
(B)単分散球形シリカB
ゾルゲル法で得られたシリカゾルにHMDS処理を行い、乾燥、粉砕により真比重1.60、球形化度Ψ=0.90、体積平均粒径D_(50)=80nm(標準偏差=13nm)の球形単分散シリカBを得た。
(C)単分散球形シリカC
ゾルゲル法で得られたシリカゾルにHMDS処理を行い、乾燥、粉砕により真比重1.50、球形化度Ψ=0.70、体積平均粒径D_(50)=100nm(標準偏差=40nm)の球形単分散シリカCを得た。
(D)単分散球形シリカD
ゾルゲル法で得られたシリカゾルにイソブチルシラン処理を行い、乾燥、粉砕により真比重1.30、球形化度Ψ=0.70、体積平均粒径D_(50)=100nm(標準偏差=20nm)の球形単分散シリカDを得た。
(E)単分散球形シリカE
ゾルゲル法で得られたシリカゾルにデシルシラン処理を行い、乾燥、粉砕により真比重1.90、球形化度Ψ=0.60、体積平均粒径D_(50)=200nm(標準偏差=40nm)の球形単分散シリカEを得た。
(F)ヒュームドシリカ
市販のヒュームドシリカRX50(日本アエロジル製)、真比重2.2、球形化度Ψ=0.58、体積平均粒径D_(50)=40nm(標準偏差=20nm)
(G)シリコーン樹脂微粒子
真比重1.32、球形化度Ψ=0.90、体積平均粒径D_(50)=500nm(標準偏差=100nm)
(H)ポリメチルメタクリレート樹脂
真比重=1.16、球形化度Ψ=0.95、体積平均粒径D_(50)=300nm(標準偏差=100nm)
(I)単分散球形シリカI
ゾルゲル法で得られたシリカゾルにHMDS処理を行い、乾燥、粉砕により真比重1.60、球形化度Ψ=0.90、体積平均粒径D_(50)=100nm(標準偏差=20nm)の球形単分散シリカIを得た。
(J)ヒュームドシリカ
市販のヒュームドシリカRX200(日本アエロジル社製)、真比重2.2、球形化度Ψ=0.40、体積平均粒径D_(50)=12nm(標準偏差=5nm)
(K)スチレン-メチルメタクリレート共重合体微粒子
真比重1.10、球形化度Ψ=0.95、体積平均粒径D_(50)=100nm(標準偏差=50nm)」

5 対比・判断
(1)本件発明1
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

(ア)着色樹脂粒子
引用発明の「現像剤本体粒子」は、「樹脂としてのポリエステル樹脂」及び「着色剤としてのフタロシアニンブルー」を含む組成の混合物を攪拌し混練した後、加熱して溶融させ、室温まで冷却した後、得られた混練物を粉砕し、分級を行って得たものである。そして、引用発明の「樹脂としてのポリエステル樹脂」及び「着色剤としてのフタロシアニンブルー」は、それぞれ、本件発明1の「結着樹脂」及び「着色剤」に相当する。そうすると、引用発明の「現像剤本体粒子」は、本件発明1の「結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子」に相当する。

(イ)外添剤
引用発明の「R972(日本アエロジル社製)」、「RX50(日本アエロジル社製)」、及び、「メラミン研磨剤(M-50)」は、現像剤本体粒子に添加されるものである。そうすると、引用発明の「R972(日本アエロジル社製)」、「RX50(日本アエロジル社製)」、及び、「メラミン研磨剤(M-50)」は、技術的にみて、本件発明1の「外添剤」に相当する。

(ウ)静電荷像現像用トナーの製造方法
引用発明は、上記「現像剤本体粒子」に上記「外添剤」を添加することにより「トナーを得る方法」である。そして、引用発明の「トナー」は、技術的にみて、本件発明1の「静電荷像現像用トナー」に相当するといえる。そうすると、引用発明の「トナーを得る方法」は、本件発明1の「結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法」に相当する。

(エ)窒素含有樹脂粒子
引用発明の「メラミン研磨剤」は、「平均粒径が50〔nm〕」である。そうすると、引用発明の「メラミン研磨剤」は、本件発明1の「個数平均一次粒径が10?150nmの窒素含有樹脂粒子」に相当する。また、引用発明の「メラミン研磨剤」は、本件発明1の「ただし、無機粒子を含む複合樹脂粒子を除く。」とする要件を満たしている。

(オ)無機微粒子
引用発明の「R972(日本アエロジル社製)が0.5重量部、及びRX50(日本アエロジル社製)が0.5重量部から成るシリカ」と本件発明1の「個数平均一次粒径が31?300nmの無機微粒子A」、「個数平均一次粒径が11?30nmの無機微粒子B」、及び、「個数平均一次粒径が5?8nmの無機微粒子C」とは、「無機微粒子」である点で共通する。

(カ)一致点及び相違点
以上より、本件発明1と引用発明とは、
「結着樹脂及び着色剤を含有する着色樹脂粒子、並びに外添剤を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法において、
前記外添剤として、
個数平均一次粒径が10?150nmの窒素含有樹脂粒子(ただし、無機粒子を含む複合樹脂粒子を除く。)、及び
無機微粒子を、
添加する静電荷像現像用トナーの製造方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点1]窒素含有樹脂粒子の含有量が、本件発明1は、「着色樹脂粒子100質量部」に対し「0.05?1.5質量部」であるのに対し、引用発明は、メラミン研磨剤(M-50)を「0.50重量部」添加するとされるものの、現像剤本体粒子の重量部が明らかでない点。
[相違点2]無機微粒子が、本件発明では、「着色樹脂粒子100質量部」に対し「個数平均一次粒径が31?300nmの無機微粒子Aを0.5?3.0質量部」、「個数平均一次粒径が11?30nmの無機微粒子Bを0.1?2.0質量部」、「個数平均一次粒径が5?8nmの無機微粒子Cを0.1?1.0質量部」、添加されるのに対し、引用発明では、「R972(日本アエロジル社製)が0.5重量部、及びRX50(日本アエロジル社製)が0.5重量部から成るシリカ」が添加されるものの、それぞれの個数平均一次粒径及び現像剤本体粒子100質量部に対する含有量が明らかでない点。

イ 判断
事案に鑑みて、[相違点2]について検討する。

(ア)引用文献6における「AEROSIL R972=平均一次粒子径16nm」及び「AEROSIL RX50=平均一次粒子径40nm」との記載に基づけば、引用発明における「R972(日本アエロジル社製)」の個数平均一次粒径は「16nm」、引用発明における「RX50(日本アエロジル社製)」の個数平均一次粒径は「40nm」であるといえる。
そうすると、引用発明の「RX50(日本アエロジル社製)」は、本件発明1の「個数平均一次粒径が31?300nmの無機微粒子A」に相当し、引用発明の「R972(日本アエロジル社製)」は、本件発明1の「個数平均一次粒径が11?30nmの無機微粒子B」に相当するといえるものの、引用発明には、本件発明1の「個数平均一次粒径が5?8nmの無機微粒子C」が含まれないこととなる。
ところで、引用発明の「R972(日本アエロジル社製)」が、一次粒径について、5?8nmの無機微粒子を含む様々な一次粒径の粒子の集合体であって、個数平均一次粒径が「16nm」と計算される分散状態である無機微粒子の集合体であると、考えることもできる。しかしながら、「R972(日本アエロジル社製)」の一次粒径の度数分布がどのようなものであるか明らかではない。引用文献7には、「市販のヒュームドシリカRX50(日本アエロジル製)、真比重2.2、球形化度Ψ=0.58、体積平均粒径D_(50)=40nm(標準偏差=20nm)」との記載があり、「RX50(日本アエロジル社製)」の「体積平均」とした場合の粒径の標準偏差が「20nm」であることが理解できるから、「体積平均」とした場合の粒径の度数分布が正規分布に近いものと考えることができる。しかし、「R972(日本アエロジル社製)」の「個数平均」とした場合の粒径の度数分布は明らかでない。そうすると、仮に、引用発明が、「R972(日本アエロジル社製)」を、「現像剤本体粒子」100質量部に対し「0.50」質量部(重量部)含んでいたとしても、「個数平均一次粒径が11?30nmの無機微粒子Bを0.1?2.0質量部」と、「個数平均一次粒径が5?8nmの無機微粒子Cを0.1?1.0質量部」とを含んでいたとする根拠を見いだすことができない。
したがって、上記[相違点2]は、実質的な相違点である。

(イ)引用文献1には、「流動化付与剤のうちのシリカ、チタン酸化物等は、平均粒径が5?40〔nm〕程度である」(記載事項ウ段落【0025】)と記載されているものの、現像剤本体粒子に添加する流動化付与剤を、個数平均粒径が31?300nm、11?30nm、5?8nmの3種とし、それぞれの添加量を特定の範囲とすることについては、記載も示唆もない。
また、現像剤本体粒子に添加する無機微粒子を、個数平均粒径が31?300nm、11?30nm、5?8nmの3種とし、それぞれの添加量を特定の範囲とすることが、本件出願前に知られていたということもできない。
したがって、当業者であっても、引用発明におけるシリカについて、本件発明1の上記[相違点2]の構成とすることが、容易になし得たということはできない。

ウ むすび
以上のとおりであるから、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明と同一の発明ということはできず、また、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものということもできない。

(2)本件発明2?5
本件発明2?5は、本件発明1と同じ、「着色樹脂粒子100質量部」に対し「個数平均一次粒径が31?300nmの無機微粒子Aを0.5?3.0質量部」、「個数平均一次粒径が11?30nmの無機微粒子Bを0.1?2.0質量部」、「個数平均一次粒径が5?8nmの無機微粒子Cを0.1?1.0質量部」、添加されるという構成を備えるものである。そうすると、本件発明2?5は、本件発明1と同じ理由により、引用発明と同一の発明ということはできず、また、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6 むすび
以上のとおり、本件発明1?3は、引用文献1に記載された発明と同一の発明であるということはできないから、特許法第29条第1項第3号に該当しない。また、本件発明1?5は、引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明できたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないということもできない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-04-24 
出願番号 特願2017-220033(P2017-220033)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 113- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 野田 定文  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 宮澤 浩
井口 猶二
発明の名称 静電荷像現像用トナーの製造方法  
代理人 岸本 達人  
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