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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q
管理番号 1361990
審判番号 不服2019-102  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-07 
確定日 2020-04-27 
事件の表示 特願2014-131975「平面アンテナ及びアンテナエレメント間の結合低減方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月21日出願公開、特開2016-12749〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年6月27日に出願された特願2014-131975号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

平成30年 6月14日付け:拒絶理由通知
平成30年 7月26日 :意見書、手続補正書
平成30年10月12日付け:拒絶査定
平成31年 1月 7日 :審判請求、手続補正書
令和 1年11月 5日付け:拒絶理由通知(当審)
令和 2年 1月10日 :意見書、手続補正書

第2 本願発明

令和2年1月10日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
誘電体基板と、
前記誘電体基板の一方の面上に設けられており、端部がグランドに直流的に接続された第1エレメントパターンを備え、同一の周波数帯で電磁波を前記第1エレメントパターンを励振させて放射する複数のアンテナエレメントと、
前記アンテナエレメント間に設けられ、前記第1エレメントパターンに対して容量結合で交流的に接続されているパターンであり、前記アンテナエレメントと同一の周波数帯で共振する無給電アンテナエレメントと
を備えることを特徴とする平面アンテナ。」

第3 拒絶の理由

令和1年11月5日付けで当審で通知した拒絶理由は、概略次のとおりのものである。

1 (サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の請求項1-6に係る発明が発明の詳細な説明に記載したものでないため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2 (明確性)この出願は、特許請求の範囲の請求項1-6に係る発明が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3 (実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明が当業者が請求項1-6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

4 (新規性)(進歩性)この出願の請求項1-4、6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、前記引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

5 (進歩性)この出願の請求項1-4、6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2013-126120号公報
引用文献2:特開2014-42142号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1の記載

引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)

(1-1)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
(前略)そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、アンテナ素子間の結合を効果的に分離し、より広い周波数帯域をカバーすることが可能な小型のアンテナ装置、及びこれを搭載した無線通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】(中略)
【0011】
また、上記のアンテナ装置は、前記第1及び第2の給電素子と前記結合素子との組み合わせを複数備える構成であってもよい。このように、上記のアンテナ装置の構成は複数の給電素子を搭載したアンテナ装置の構成に拡張することが可能であり、MIMO等の通信方式において多重数の多いケースにも対応することが可能である。また、このような拡張を行った場合でも、各給電素子間の相互結合が効果的に抑圧されているため、広帯域特性が得られる。」

(1-2)「【0021】
そこで、本件発明者は、アンテナ素子間の結合を抑圧することが可能なアンテナ装置の構成を考案した。以下、この構成について詳細に説明する。
【0022】
<2:実施形態>
本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、複数のアンテナ素子と、当該アンテナ素子間の相互結合を抑圧するための結合素子とを備え、当該相互結合の抑圧により利用可能な周波数帯域を広帯域化したアンテナ装置に関する。
【0023】
[2-1:基本構成(裏面に結合素子を設ける構成)]
まず、図5?図12を参照しながら、本実施形態に係るアンテナ装置100の構成例及びその特性について説明する。図5?図9は、アンテナ装置100の構成例を示した説明図である。図10は、アンテナ装置100の電流分布を示した説明図である。図11は、アンテナ装置100のVSWR特性を示した説明図である。図12は、アンテナ装置100の通過特性を示した説明図である。
【0024】
図5に示すように、アンテナ装置100は、主に、誘電体基板101(PCB)と、グラウンド導体102と、給電素子111、121と、結合素子113、123とにより構成される。グラウンド導体102は、矩形状であり、誘電体基板101上に積層配置される。また、給電素子111、121は、約λ/4(λは波長)の長さを有する逆F形状であり、グラウンド導体102の周囲に形成され、それぞれ異なるグラウンド導体102の辺に接続される。なお、給電素子111は、給電点112を介してグラウンド導体102に接続される。また、給電素子121は、給電点122を介してグラウンド導体102に接続される。
【0025】
また、給電素子111、121が配置された誘電体基板101の面を表面とすると、誘電体基板101の裏面には、図6に示すように、グラウンド導体102と離隔して配置された結合素子131が設けられている。ここで、図7?図9を参照しながら、結合素子131の構成について、より詳細に説明する。図7は、図6の符号Aで示した部分を拡大した拡大図である。また、図8は、結合素子131の形状について説明するための説明図である。そして、図9は、給電素子111、121と結合素子131との間の配置関係を説明するための説明図である。
【0026】
まず、図7を参照する。図7に示すように、結合素子131は、2つのパッド部分1311、1312、及び、パッド部分1311、1312を接続する1つの線状部分1313で構成される。線状部分1313は、パッド部分1311、1312よりも幅が狭く、細い線状を成している。一方、パッド部分1311、1312は、線状部分1313よりも幅が広く、矩形の面状を成している。なお、図7の例では、パッド部分1311、1312が略同一の形状を成しているが、両者の形状が異なっていてもよい。また、パッド部分1311、1312の形状が楕円形や多角形などであってもよい。
【0027】
また、線状部分1313の形状は、L字型に配線されている必要はなく、任意の形状で配線することが可能である。但し、結合素子131の長さは、約λ/2(λは波長)に設定される。例えば、図8に示すように、パッド部分1311、1312が一辺の長さa1及び他辺の長さa2の矩形状を成し、線状部分1313が幅w及び長さb1+b2の線状を成す場合、w≪a1、a2に設定され、b1+b2+2a1+2a2≒λ/2に設定される。また、図9に示すように、パッド部分1311は、給電素子111がグラウンド導体102に短絡する短絡部分に対向する位置に配置される。一方、パッド部分1312は、給電素子121がグラウンド導体102に短絡する短絡部分に対向する位置に配置される。
【0028】
上記のように結合素子131を配置することで、パッド部分1311を介して給電素子111と結合素子131とが静電的に結合し、パッド部分1312を介して給電素子121と結合素子131とが静電的に結合する。なお、パッド部分1311、1312が幅広に形成されていることで、パッド部分1311、1312と給電素子111、121との間で生じる静電的な結合がより強固になり、給電素子111、121と結合素子131との間の結合が効果的に生じる。その結果、給電素子111、121間の相互結合が効果的に分離され、アンテナ装置100の広帯域化に大きく寄与する。
【0029】
給電点112に電流を流すと、グラウンド導体102、給電素子111、121、及び結合素子131には、図10に示すような電流分布(図10では色が薄いほど電流量が大きい。)が生じる。図10から、給電素子111、結合素子131には大きな電流の流れが生じている一方で、給電素子121には僅かな電流の流れしか生じていないことが分かる(図2の例と比較されたい。)。これは、給電素子111と結合素子131とが結合して電流分布が結合素子131に偏ったために、給電素子111、121間の結合が分離されたことを示している。
【0030】
また、図11に示すように、給電素子111、121のVSWRが2.6GHz付近(共振周波数)の他、2.38GHz付近でも落ち込むような特性を示すようになる。さらに、給電素子111(端子1)から給電素子121(端子2)への通過特性(Sパラメータ;S21)は、図12のようになる。図12に示すように、給電素子111、121間の通過特性は、全体に小さくなり、さらに共振周波数付近で大きく落ち込んでおり、給電素子111、121間の結合が大きく抑圧されていることが分かる(図4の例と比較されたい。)。一般に、給電素子111、121間の間隔が短くなると、通過特性を示すSパラメータの値は大きくなる。しかし、結合素子131を配置することにより、図12に示すように、給電素子111、121間の結合を効果的に抑圧することが可能になる。その結果、広帯域化が実現される。
【0031】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置100の構成例及びその特性について説明した。」

(1-3)「【0035】
[2-3:変形例#2(表面に結合素子を設ける構成)]
次に、図14を参照しながら、本実施形態に係るアンテナ装置100の他の一変形例(変形例#2)について述べる。変形例#2は、結合素子の配置に関する変形例である。これまで、結合素子を誘電体基板101の裏面に配置する構成について説明してきた。しかし、結合素子を誘電体基板101の表面に配置する場合でも、図14に示すように、その配置に工夫をすることで同等の特性を得ることが可能である。なお、ここでは誘電体基板101の表面に配置した結合素子を結合素子141と表記することにする。
【0036】
図14に示すように、結合素子141は、誘電体基板101の表面に配置される。但し、上述した結合素子131の構成とは異なり、結合素子141は、給電素子111、121の間の領域に形成される。また、結合素子141は、一方のパッド部分が給電素子111の短絡部と近接して配置され、他方のパッド部分が給電素子121の短絡部と近接して配置される。このような配置により、給電素子111、121と結合素子141のパッド部分とが静電的に結合する。また、結合素子141は、上述した結合素子131と同様、長さが約λ/2となるように設計される。
【0037】
上記のような結合素子141を配置することで、給電素子111、121と結合素子141とが結合し、給電素子111、121間の相互結合を抑圧することが可能になる。その結果、誘電体基板101の裏面に結合素子131を設けた場合と同様、広帯域特性を得ることが可能になる。なお、上述した変形例#1と同様、結合素子141の形状についても様々な変形が可能である。例えば、結合素子141の線状部分の形状や、線状部分とパッド部分との接続位置などを変更してもよい。このような変形をしても、同様の特性を得ることが可能である。
【0038】
以上、変形例#2について説明した。」

(1-4)「【0051】
[2-7:変形例#6(同一辺上に複数のアンテナを設ける構成2)]
次に、図21を参照しながら、本実施形態に係るアンテナ装置100の他の一変形例(変形例#6)について述べる。上述した変形例#5と同様に、給電素子111、121を誘電体基板101の同一辺上に形成する場合における給電素子(結合素子171)の配置方法について述べる。但し、ここでは、図21に示すように、誘電体基板101の表面に結合素子171を設ける構成について紹介する。
【0052】
図21に示すように、誘電体基板101の同一辺に給電素子111、121が形成され、両者の短絡部が向かい合わせとなるように配置された場合、広帯域特性を得るには、給電素子111、121間の相互結合を抑圧する手段が必要になる。その一つとして、図21に示すように、誘電体基板101の表面に結合素子171を設ける構成が考えられる。結合素子171は、上述した結合素子141と同様に、2つのパッド部分と、両パッド部分を接続する線状部分とにより構成される。また、一方のパッド部分は、給電素子111の短絡部に近接して配置され、他方のパッド部分は、給電素子121の短絡部に近接して配置される。また、結合素子171の長さは約λ/2に設定される。
【0053】
このように、図21に示した構成は、給電素子111、121、及び結合素子171が形成される誘電体基板101上の位置が異なるだけで上述した変形例#2と実質的に同じである。そのため、結合素子171が給電素子111、121間の相互結合を抑圧する作用及び効果も上述した変形例#2と同様であり、良好な広帯域特性を得ることが可能である。なお、設計上の都合で線状部分の長さが十分に長くとれない場合には、線状部分の幅wを太くすることで、線状部分の長さを長くすることと同様の作用を得ることができる。
【0054】
以上、変形例#6について説明した。なお、変形例#6を上述した変形例#5と組み合わせることで、上述した変形例#3と同様に、さらに良好な特性が得られる。」

(1-5)以下、順に図5、図14及び図21を示す。

2 引用文献1に記載されているに等しいといえる事項

引用文献1に記載されている「変形例#6」は、同文献に記載されている「変形例#2」及び「変形例#5」をそれぞれ、“グラウンド導体102に対する給電素子111、121の配置を変形したもの”、及び、“誘電体基板101に対する結合素子(161、171)の配置(即ち、「裏面」か「表面」の違い)を変形したもの”であり、変形例#6として記載されているアンテナ装置100を構成するその他の要素については、【図5】等で記載されている「基本構成」や「各変形例(#2、#5)」として記載されているものと共通のものであるから、引用文献1には、以下の事項が記載されているに等しいといえる。

(2-1)上記「1 引用文献1の記載」で摘記した【図5】、【図14】、【図21】、及び、それらに関する発明の詳細な説明の記載を参酌するに、引用文献1に記載されている「アンテナ装置100」は、「誘電体基板101と、グラウンド導体102と、給電素子111、121と、結合素子(131又は141又は171)とにより構成される」(【0024】)との事項が開示されている。

(2-2)同様に、「給電素子111、121」は、「約λ/4(λは波長)の長さを有する逆F形状であり、グラウンド導体102の周囲に形成され、それぞれグラウンド導体102の辺に接続される」(【0024】)との事項が開示されている。

(2-3)上記「1 引用文献1の記載」で摘記した【図14】、【図21】、及び、それらに関する発明の詳細な説明の記載を参酌するに、「結合素子(141又は171)」は、「誘電体基板101の表面に配置され、給電素子111、121の間の領域に形成され(【0036】)、2つのパッド部分と、両パッド部分を接続する線上部分とにより構成され、一方のパッド部分は、給電素子111の短絡部に近接して配置され、他方のパッド部分は、給電素子121の短絡部に近接して配置され(【0036】、【0052】)、給電素子111、121と結合素子(141又は171)のパッド部分とが静電的に結合し(【0036】)、長さが約λ/2に設定される(【0036】、【0052】)。」との事項が開示されている。

3 引用発明

上記「1 引用文献1の記載」で摘記した事項及び上記「2 引用文献1に記載されているに等しいといえる事項」で言及した事項をふまえると、引用文献1には、「MIMO等の通信方式に対応可能であり、アンテナ素子間の結合を抑制することが可能なアンテナ装置」に関する以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「誘電体基板101と、グラウンド導体102と、給電素子111、121と、結合素子(171)とにより構成されるアンテナ装置100であって、
前記給電素子111、121は、約λ/4(λは波長)の長さを有する逆F形状であり、前記グラウンド導体102の周囲に形成され、それぞれ前記グラウンド導体102の辺に接続され、
前記結合素子(171)は、前記誘電体基板101の表面に配置され、前記給電素子111、121の間の領域に形成され、2つのパッド部分と、両パッド部分を接続する線上部分とにより構成され、一方のパッド部分は、前記給電素子111の短絡部に近接して配置され、他方のパッド部分は、前記給電素子121の短絡部に近接して配置され、前記給電素子111、121と前記結合素子(171)のパッド部分とが静電的に結合し、長さが約λ/2に設定される、
アンテナ装置100。」

第5 対比

本願発明と引用発明とを対比する。

1 『誘電体基板』について

引用発明の「誘電体基板101」が本願発明の『誘電体基板』に相当することは明らかである。

2 『前記誘電体基板の一方の面上に設けられており、端部がグランドに直流的に接続された第1エレメントパターンを備え、同一の周波数帯で電磁波を前記第1エレメントパターンを励振させて放射する複数のアンテナエレメント』について

(2-1)引用発明の「給電素子111、121」は、「誘電体基板101」の「表面」に「配置」されており、前記「表面」は前記「誘電体基板101」の「一方の面」といえるから、本願発明の『アンテナエレメント』と、「誘電体基板の一方の面上に設けられて」いる点で共通する。そして、引用発明の「給電素子111」と「給電素子121」は、『複数のアンテナエレメント』といえる。

(2-2)引用発明の「グラウンド導体102」は、本願発明の『グランド』に相当する。
そして、引用発明の「給電素子111、121」は、「逆F形状」のものであり、当該「逆F形状」の部分は、本願発明でいう『第1エレメントパターン』に対応するものである。
更に、前記「給電素子111、121」は、「それぞれ前記グラウンド導体102の辺に接続される」のであるから、「給電素子111、121」と「グラウンド導体102」とが接続される部分は、給電素子の「端部」といえるものである。
してみると、引用発明と本願発明とは、『端部がグランドに直流的に接続された第1エレメントパターンを備え、』という点で共通する。

(2-3)引用発明の「給電素子111、121」は、いずれも「約λ/4(λは波長)の長さを有する逆F形状である」から、それぞれの給電点より波長λに対応する同一周波数帯の電流が給電されて励振され電磁波を放射するものといえる。
してみると、引用発明と本願発明とは、『同一の周波数帯で電磁波を前記第1エレメントパターンを励振させて放射する』という点で共通する。

(2-4)上記「(2-1)」から「(2-3)」で言及したように、引用発明は、本願発明の『前記誘電体基板の一方の面上に設けられており、端部がグランドに直流的に接続された第1エレメントパターンを備え、同一の周波数帯で電磁波を前記第1エレメントパターンを励振させて放射する複数のアンテナエレメント』の構成を備えるといえる。

3 『前記アンテナエレメント間に設けられ、前記第1エレメントパターンに対して容量結合で交流的に接続されているパターンであり、前記アンテナエレメントと同一の周波数帯で共振する無給電アンテナエレメント』について

(3-1)引用発明の「結合素子(171)」は、「誘電体基板101の表面に配置され、給電素子111、121の間の領域に形成される」ものであり、上記「(2-1)」で言及したように、「給電素子(111、121)」は、それぞれ、本願発明の『アンテナエレメント』に対応するものであるから、引用発明の「結合素子(171)」は、本願発明と同様に『前記アンテナエレメント間に設けられ』ているといえる。

(3-2)引用発明の「結合素子(171)」は、「2つのパッド部分と、両パッド部分を接続する線上部分とにより構成され、一方のパッド部分は、前記給電素子111の短絡部に近接して配置され、他方のパッド部分は、前記給電素子121の短絡部に近接して配置され、前記給電素子111、121と前記結合素子(171)のパッド部分とが静電的に結合」するものであり、上記「(2-2)」で言及したように、「給電素子(111、121)」の「逆F形状」は、本願発明でいう『第1エレメントパターン』に対応するものであるから、引用発明の「結合素子(171)」を構成している前記「2つのパッド部分と、両パッド部分を接続する線上部分」は、本願発明の『第1エレメントパターンに対して容量結合で交流的に接続されているパターン』に対応するものといえる。

(3-3)引用発明の「給電素子(111、121)」は、「約λ/4(λは波長)の長さを有する逆F形状」であるから、波長λに対応する周波数帯で電磁波を放射するものであり、一方、引用発明の「結合素子(171)」は、「長さが約λ/2に設定される」のであるから、波長λに対応する周波数帯で共振することは技術常識である。
また、引用発明の「結合素子(171)」は、給電されていない素子であるから、本願発明でいう『無給電アンテナエレメント』といえるものである。
してみると、引用発明の「結合素子(171)」は、本願発明の『前記アンテナエレメントと同一の周波数帯で共振する無給電アンテナエレメント』といえるものである。

(3-4)上記「(3-1)」から「(3-3)」で言及したように、引用発明は、本願発明の『前記アンテナエレメント間に設けられ、前記第1エレメントパターンに対して容量結合で交流的に接続されているパターンであり、前記アンテナエレメントと同一の周波数帯で共振する無給電アンテナエレメント』の構成を備えるといえる。

4 『平面アンテナ』について

引用発明の「アンテナ装置100」は、誘電体基板101の表面に給電素子111、121が配置された構造からみて「平面アンテナ」といえることは明らかである。

5 まとめ

上記「1」から「4」で検討したとおり、本願発明と引用発明との間に差異はない。

第6 判断

以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

第7 拒絶査定不服審判請求人が令和2年1月10日に提出した意見書における主張について

拒絶査定不服審判請求人は上記意見書の「・理由4(新規性)及び理由5(進歩性)」の項において、「引用文献1には、本願発明(請求項1)における『前記誘電体基板の一方の面上に設けられており、端部がグランドに直流的に接続されたエレメントパターンを備え、同一の周波数帯で電磁波を前記エレメントパターンを励振させて放射する複数のアンテナエレメント』と、『前記アンテナエレメント間に設けられ、前記エレメントパターンに対して容量結合で交流的に接続されているパターンであり、前記アンテナエレメントと同一の周波数帯で共振する無給電アンテナエレメント』との各々の構成が記載されて」いない旨主張している。

しかしながら、『前記誘電体基板の一方の面上に設けられており、端部がグランドに直流的に接続されたエレメントパターンを備え、同一の周波数帯で電磁波を前記エレメントパターンを励振させて放射する複数のアンテナエレメント』の構成については、上記「第5」の「2」で検討したとおりであり、『前記アンテナエレメント間に設けられ、前記エレメントパターンに対して容量結合で交流的に接続されているパターンであり、前記アンテナエレメントと同一の周波数帯で共振する無給電アンテナエレメント』の構成については、上記「第5」の「3」で検討したとおりである。
そして、引用発明は、上記構成を備えることにより、給電素子間の結合を効果的に抑圧することが可能になるという、本願発明と共通の作用効果を奏するものである。
したがって、意見書の上記主張を採用することはできない。

第8 むすび

以上のとおり、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-03-02 
結審通知日 2020-03-03 
審決日 2020-03-16 
出願番号 特願2014-131975(P2014-131975)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米倉 秀明  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 中野 浩昌
衣鳩 文彦
発明の名称 平面アンテナ及びアンテナエレメント間の結合低減方法  
代理人 西澤 和純  
代理人 勝俣 智夫  
代理人 柏野 由布子  
代理人 伊藤 英輔  
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