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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1361991
審判番号 不服2019-3850  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-22 
確定日 2020-04-27 
事件の表示 特願2018-126071「端末ユニット」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 1月 9日出願公開、特開2020- 5483〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成30年7月2日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 8月28日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月30日 :意見書,手続補正書の提出
平成31年 1月21日付け:拒絶査定
平成31年 3月22日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 平成31年3月22日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成31年3月22日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は,本件補正前の,平成30年10月30日提出の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?7を本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?5に補正するものであり,本件補正により,特許請求の範囲の請求項1の記載は,

(本件補正前の請求項1)
「 【請求項1】
充電可能な電池を有する端末と,
前記端末の前記電池を充電する電源回路を備え,前記端末をセットすることによりコネクタを介して前記端末の前記電池を充電する端末置台と,を有し,
前記端末置台に前記端末がセットされることにより端末置台と前記端末との間にアースラインが成立し,
前記端末置台は,前記端末側から信号が入力されることにより前記電源回路から前記端末に向けて充電電力を供給する端末ユニット。」

から,

(本件補正後の請求項1)
「 【請求項1】
充電可能な電池を有する端末と,
前記端末の前記電池を充電する電源回路を備え,前記端末をセットすることによりコネクタを介して前記端末の前記電池を充電する端末置台と,を有し,
前記端末置台に前記端末がセットされることにより前記端末置台と前記端末とが前記コネクタを介して電気的に接続されるとともに前記端末置台と前記端末との間にアースラインが成立し,
前記端末置台は,前記コネクタを介して充電電力を前記端末に供給する電源出力制御回路を有し,
前記端末は,前記アースラインが成立することにより前記コネクタを介して前記端末置台に向けてコントロール信号を出力し,
前記端末置台は,前記コントロール信号が入力されることにより前記電源出力制御回路から前記コネクタを介して前記端末に向けて充電電力を供給し,前記コントロール信号がオフであれば充電電力の出力を停止する端末ユニット。」
(下線は,補正箇所を示すために,審判請求人が付したものである。)

のように補正された。

本件補正は,次の補正事項を含むものである。
補正事項1:本件補正前の請求項1の「端末ユニット」を「前記端末置台と前記端末とが前記コネクタを介して電気的に接続される」ものに限定する補正。

補正事項2:本件補正前の請求項1の「端末置台」を「前記コネクタを介して充電電力を前記端末に供給する電源出力制御回路を有」するものに限定する補正。

補正事項3:本件補正前の請求項1の「端末」を「前記アースラインが成立することにより前記コネクタを介して前記端末置台に向けてコントロール信号を出力」するものに限定する補正。

補正事項4:本件補正前の請求項1の端末置台に入力される「信号」を「コントロール信号」に限定する補正。

補正事項5:本件補正前の請求項1の「電源回路」を当該電源回路の一部を構成する「電源出力制御回路」に限定する補正。

補正事項6:本件補正前の請求項1の「充電電力を供給」することを「前記コネクタを介し」て供給することに限定する補正。

補正事項7:本件補正前の請求項1の「端末置台」を「前記コントロール信号がオフであれば充電電力の出力を停止」するものに限定する補正。

2 補正の適否
(1)上記補正事項1?7は,いずれも本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項について,上記のとおり限定的に減縮するものであって,本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから,特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

また,特許法第17条の2第3項,第4項に違反するところはない。

(2)独立特許要件について
そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-1)本件補正発明
本件補正発明は,上記1に記載したとおりのものであり,以下に再掲する。
なお,本件補正発明における各構成の符号は,説明のために当審において付与したものであり,以下,構成Aないし構成F2と称する。

「 【請求項1】
(A)充電可能な電池を有する端末と,
(B)(B1)前記端末の前記電池を充電する電源回路を備え,(B2)前記端末をセットすることによりコネクタを介して前記端末の前記電池を充電する端末置台と,を有し,
(C)(C1)前記端末置台に前記端末がセットされることにより前記端末置台と前記端末とが前記コネクタを介して電気的に接続されるとともに(C2)前記端末置台と前記端末との間にアースラインが成立し,
(D)前記端末置台は,前記コネクタを介して充電電力を前記端末に供給する電源出力制御回路を有し,
(E)前記端末は,前記アースラインが成立することにより前記コネクタを介して前記端末置台に向けてコントロール信号を出力し,
(F)(F1)前記端末置台は,前記コントロール信号が入力されることにより前記電源出力制御回路から前記コネクタを介して前記端末に向けて充電電力を供給し,(F2)前記コントロール信号がオフであれば充電電力の出力を停止する(G)端末ユニット。」

(2-2)引用文献について
ア 引用文献2について
(ア)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用された,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,特開2015-179637号公報(平成27年10月8日公開。以下「引用文献2」という。)には,図面とともに,次の記載がある。(下線は,当審で付したものである。以下,同様。)

「【0013】
図10に示すように,実施形態に係る携帯端末充電システム1は,電源100と接続される充電器2と,充電器2に設けられた複数の充電器側接続端子3と,バッテリ44を有する携帯端末4と,携帯端末4に設けられた複数の端末側接続端子5とを含んで構成されている。携帯端末充電システム1は,端末側接続端子5と充電器側接続端子3とが電気的に接続すること,すなわち接続端子接続状態となることで,電源100からの電力によりバッテリ44が充電されるものである。
【0014】
充電器2は,携帯端末4を充電する際に,携帯端末4が載置されるものである。充電器2は,ACアダプタ200を介して,電源100,例えば,商用電源から電力が供給されるものである。充電器2は,図1に示すように,充電器本体21と,フラップ22と,付勢部材23と,複数の充電器側接続端子3が設けられる充電器側コネクタ24と,スイッチ回路25とを含んで構成されている。」

「【0020】
スイッチ回路25は,図10に示すように,電源100と充電器側電源端子3Pとの通電,非通電を切り替えるものである。スイッチ回路25は,例えば,FET(電界効果トランジスタ)を含み,ソース端子25Sと,ゲート端子25Gと,ドレイン端子25Dとを有している。ソース端子25Sは,ACアダプタ200を介して電源100と電気的に接続されている。ゲート端子25Gは,充電器側検出端子3Dと電気的に接続されている。ドレイン端子25Dは,充電器側電源端子3Pと電気的に接続されている。スイッチ回路25は,端末側検出端子5Dと充電器側検出端子3Dとが電気的に接続され(検出端子接続状態),かつ携帯端末4の電源回路42からの検出電圧がゲート端子25Gに印加されるとソース端子25Sとドレイン端子25Dとが電気的に接続される(通電状態)。つまり,スイッチ回路25は,検出端子接続状態に基づいて充電器2が携帯端末4と接続されていることを電源回路42からの検出電圧に基づいて判断する。そして,端末側電源端子5Pと充電器側電源端子3Pとが電気的に接続されている(電源端子接続状態)と,端末側電源端子5Pおよび充電器側電源端子3Pを介して電源100からバッテリ44に電力を供給する。一方,スイッチ回路25は,端末側検出端子5Dと充電器側検出端子3Dとが電気的に接続されていない(検出端子非接続状態),あるいは検出端子接続状態であっても,検出電圧がゲート端子25Gに印加されていないと,ソース端子25Sとドレイン端子25Dとが電気的に接続されない(非通電状態)。」

「【0023】
充電器側検出端子3D,充電器側電源端子3P,充電器側GND端子3G,充電器側認識信号端子3Rの無負荷状態でのそれぞれの長さHd,Hp,Hg,Hrは,Hg>Hp=Hr>Hdとなる。つまり,無負荷状態では,充電器側検出端子3Dが最も短く,充電器側GND端子3Gが長く,充電器側電源端子3Pおよび充電器側認識信号端子3Rが充電器側検出端子3Dと充電器側GND端子3Gとの間の長さである。従って,充電器2に対して携帯端末4が収容状態となる場合は,まず充電器側GND端子3Gが端末側GND端子5Gと接続状態となり,次に充電器側電源端子3Pが端末側電源端子5Pと,充電器側認識信号端子3Rが端末側認識信号端子5Rと接続状態となり,最後に充電器側検出端子3Dが端末側検出端子5Dと接続状態となる。一方,収容状態から充電器2に対して携帯端末4を取り外す場合は,まず充電器側検出端子3Dが端末側検出端子5Dと非接続状態となり,次に充電器側電源端子3Pが端末側電源端子5Pと,充電器側認識信号端子3Rが端末側認識信号端子5Rと非接続状態となり,最後に充電器側GND端子3Gが端末側GND端子5Gと非接続状態となる。なお,本実施形態における複数の充電器側接続端子3は,図1に示すように,前後方向に2列,幅方向に8列で配置されているが,上記各端子を含んでいれば数や配列に制限はない。
【0024】
携帯端末4は,オペレータが持ち運び,種々の操作をすることで,種々の業務を行うために用いるものである。携帯端末4は,図10に示すように,筐体41と,電源回路42と,充電回路43と,バッテリ44と,端末制御部45と,記憶部46と,表示部47と,操作部48と,複数の端末側接続端子5が設けられる端末側コネクタ49とを含んで構成されている。また,図示は省略するが,少なくとも無線あるいは有線のいずれかで,外部の装置と情報のやりとりを行う通信部をさらに含んでいる。」

「【0036】
次に,本実施形態に係る携帯端末充電システム1による携帯端末4の充電について説明する。まず,充電器2に対して携帯端末4を載置することで,バッテリ44を充電するまでについて説明する。まず,オペレータは,携帯端末4の一部を端末収容部21eに挿入して収容状態とする。この際,収容状態となる前に,まずGND端子接続状態となり,次に,図13に示すように,電源端子接続状態および認識信号端子接続状態となる。ここでは,電源回路42がONとなり,スイッチ回路25と電源回路42とが電気的に接続され,電源回路42に電源100から電力が供給できる状態となる。また,認識信号端子接続状態となることで,電源回路42から端末側検出端子5Dに検出電圧が印加される。そして,図11に示すように,収容状態となると,検出端子接続状態となり,検出電圧がスイッチ回路25に印加され,スイッチ回路25が通電状態となり,電源回路42および充電回路43を介して,バッテリ44に電源100から電力が供給され,バッテリ44が充電される。」

「図10




(イ)引用発明
ここで,上記引用文献2に記載されている事項について検討する。

段落0013,0014の記載及び図10の記載から,引用文献2には,「ACアダプタ200を介して電源100,例えば,商用電源から電力が供給される充電器2と,充電器2に設けられた複数の充電器側接続端子3と,バッテリ44を有する携帯端末4と,携帯端末4に設けられた複数の端末側接続端子5とを含んで構成されている携帯端末充電システム1」が記載されていると認められる。

上記の検討と上記(ア)に摘記した引用文献2の記載事項から,引用文献2には,次のとおりの発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお,引用発明の各構成の符号は,説明のために付与したものであり,以下,構成aないし構成h3と称する。

「(a)ACアダプタ200を介して電源100,例えば,商用電源から電力が供給される充電器2と,充電器2に設けられた複数の充電器側接続端子3と,バッテリ44を有する携帯端末4と,携帯端末4に設けられた複数の端末側接続端子5とを含んで構成されている携帯端末充電システム1であって,

(b)端末側接続端子5と充電器側接続端子3とが電気的に接続することで,電源100からの電力によりバッテリ44が充電されるものであり,

(c)充電器2は,携帯端末4を充電する際に,携帯端末4が載置されるものであり,充電器2は,複数の充電器側接続端子3が設けられる充電器側コネクタ24と,スイッチ回路25とを含んで構成されており,

(d)スイッチ回路25は,電源100と充電器側電源端子3Pとの通電,非通電を切り替えるものであり,

(e)スイッチ回路25は,端末側検出端子5Dと充電器側検出端子3Dとが電気的に接続され(検出端子接続状態),かつ携帯端末4の電源回路42からの検出電圧がゲート端子25Gに印加されるとソース端子25Sとドレイン端子25Dとが電気的に接続され(通電状態),端末側電源端子5Pと充電器側電源端子3Pとが電気的に接続されている(電源端子接続状態)と,端末側電源端子5Pおよび充電器側電源端子3Pを介して電源100からバッテリ44に電力を供給する一方,スイッチ回路25は,検出電圧がゲート端子25Gに印加されていないと,ソース端子25Sとドレイン端子25Dとが電気的に接続されず(非通電状態),

(f)充電器2に対して携帯端末4が収容状態となる場合は,まず充電器側GND端子3Gが端末側GND端子5Gと接続状態となり,次に充電器側電源端子3Pが端末側電源端子5Pと,充電器側認識信号端子3Rが端末側認識信号端子5Rと接続状態となり,最後に充電器側検出端子3Dが端末側検出端子5Dと接続状態となり,

(g)携帯端末4は,バッテリ44と,複数の端末側接続端子5が設けられる端末側コネクタ49とを含んで構成されており,

(h)携帯端末充電システム1による携帯端末4の充電では,
(h1)充電器2に対して携帯端末4を載置すると
(h2)まずGND端子接続状態となり,次に,電源端子接続状態および認識信号端子接続状態となり,認識信号端子接続状態となることで,電源回路42から端末側検出端子5Dに検出電圧が印加され,
(h3)収容状態となると,検出端子接続状態となり,検出電圧がスイッチ回路25に印加され,スイッチ回路25が通電状態となり,電源回路42および充電回路43を介して,バッテリ44に電源100から電力が供給され,バッテリ44が充電される

(a)携帯端末充電システム1。」

(2-3)対比・判断

ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)構成Aについて
構成aの「バッテリ44」は,電源100からの電力により充電される(構成b)ものであるから,構成Aの「充電可能な電池」に相当する。
したがって,構成aの「バッテリ44を有する携帯端末4」は構成Aの「充電可能な電池を有する端末」に相当する。

(イ)構成Bについて
(イ1)構成B1について
構成a,b,cより,引用発明の「充電器2」は,ACアダプタ200を介して,電源100,例えば,商用電源から電力が供給され,携帯端末4のバッテリ44を充電するものであるから,構成B1の「前記端末の前記電池を充電する電源回路」に相当する構成を備えているといえる。

(イ2)構成B2について
構成cの「充電器2」は,携帯端末4を充電する際に携帯端末4が載置されるものであるから,携帯端末4を「セットすることにより」,携帯端末4のバッテリ44を充電するものといえる。
また,構成b,c,gより,バッテリ44は,端末側コネクタ49の端末側接続端子5と充電器側コネクタ24の充電器側接続端子3とが電気的に接続することで充電されるから,「コネクタを介して」充電されるといえる。
したがって,構成cの「充電器2」と構成B2の「端末置台」とは,「前記端末をセットすることによりコネクタを介して前記端末の前記電池を充電する」点で共通する。

(イ3)構成B1及びB2について
上記(イ1)(イ2)より,構成cの「充電器2」は,構成Bの「(B1)前記端末の前記電池を充電する電源回路を備え,(B2)前記端末をセットすることによりコネクタを介して前記端末の前記電池を充電する端末置台」に相当する。

(ウ)構成A,B及びGについて
上記(ア)(イ)の検討と構成aより,引用発明の「携帯端末4」と「充電器2」とから構成される「携帯端末充電システム1」は,本件補正発明の「(A)充電可能な電池を有する端末と,(B)(B1)前記端末の前記電池を充電する電源回路を備え,(B2)前記端末をセットすることによりコネクタを介して前記端末の前記電池を充電する端末置台と,を有する(G)端末ユニット」に相当する。

(エ)構成Cについて
(エ1)構成C1について
構成h1の「充電器2に対して携帯端末4を載置する」ことは,構成C1の「前記端末置台に前記端末がセットされる」ことに相当する。
また,構成h2,h3のGND端子接続状態,電源端子接続状態,認識信号端子接続状態及び検出端子接続状態は,充電器2と携帯端末4とが,複数の充電器側接続端子3が設けられる充電器側コネクタ24と,複数の端末側接続端子5が設けられる端末側コネクタ49とを介して「電気的に接続されること」である。
したがって,構成h1,h2及びh3の「充電器2に対して携帯端末4を載置すると」「まずGND端子接続状態となり,次に,電源端子接続状態および認識信号端子接続状態となり」,「収容状態となると,検出端子接続状態とな」ることが,構成C1の「前記端末置台に前記端末がセットされることにより前記端末置台と前記端末とが前記コネクタを介して電気的に接続される」ことに相当する。

(エ2)構成C2について
上記(エ1)で検討した構成h2の「GND端子接続状態」は,構成fの充電器側GND端子3Gが端末側GND端子5Gと接続状態となることであるから,構成C2の「前記端末置台と前記端末との間にアースラインが成立」することに相当する。

(エ3)構成Cについて
上記(エ1)及び(エ2)から,引用発明と本件補正発明とは,「(C)(C1)前記端末置台に前記端末がセットされることにより前記端末置台と前記端末とが前記コネクタを介して電気的に接続されるとともに(C2)前記端末置台と前記端末との間にアースラインが成立し」という点で一致する。

(オ)構成Dについて
構成eの「スイッチ回路25」は,端末側電源端子5Pおよび充電器側電源端子3Pを介して電源100からバッテリ44に電力を供給するものであり,電源出力を制御しているといえるから,構成Dの「前記コネクタを介して充電電力を前記端末に供給する電源出力制御回路」に相当する。
また,構成cより,「充電器2」は「スイッチ回路25」を含んでいるから,スイッチ回路25を有しているといえる。
したがって,引用発明と本件補正発明とは,「(D)前記端末置台は,前記コネクタを介して充電電力を前記端末に供給する電源出力制御回路を有し」という点で一致する。

(カ)構成Eについて
構成hの「検出電圧」は,携帯端末4の電源回路42から充電器2のスイッチ回路25に印加されることにより,スイッチ回路25が通電状態となってバッテリ44の充電が開始されるものであり,携帯端末4から充電器2の充電の開始をコントロールするために出力される「信号」であるから,構成Eの「コントロール信号」に相当する。

構成f,h1及びh2より,充電器2に対して携帯端末4を載置すると,まず充電器側GND端子3Gが端末側GND端子5Gと接続状態(GND端子接続状態)となるから,上記(エ2)より,充電器2に対して携帯端末4を載置すると,まず,「アースラインが成立」しているといえる。

その後,携帯端末4の電源回路42から端末側検出端子5Dに「検出電圧」が印加され(構成h2),検出端子接続状態となると「検出電圧」がスイッチ回路25に印加される(構成h3)から,構成hと構成Eとは,「前記端末は,前記コネクタを介して前記端末置台に向けてコントロール信号を出力し」ている点で一致する。

また,所定の電圧を有する「検出電圧」を携帯端末4から充電器2のスイッチ回路25に印加するためには,充電器側GND端子3Gと端末側GND端子5Gとが接続されてアースラインが成立している必要があるから,構成h2において,まずGND端子接続状態とすることで「アースラインが成立することにより」,構成h2,h3で「前記端末は,前記コネクタを介して前記端末置台に向けてコントロール信号を出力し」ているものといえる。

したがって,引用発明と本件補正発明とは,「(E)前記端末は,前記アースラインが成立することにより前記コネクタを介して前記端末置台に向けてコントロール信号を出力し」という点で一致する。

(キ)構成Fについて
(キ1)構成F1について
構成hでは,充電器2に携帯端末4を載置すると,検出電圧が充電器2のスイッチ回路25に印加されてスイッチ回路25が通電状態となり,スイッチ回路25から携帯端末4のバッテリ44に向けて電力が供給されるから,上記(イ3),(オ)及び(カ)の検討も踏まえると,構成hと構成F1とは,「(F1)前記端末置台は,前記コントロール信号が入力されることにより前記電源出力制御回路から前記コネクタを介して前記端末に向けて充電電力を供給し」という点で一致する。

(キ2)構成F2について
構成eの「スイッチ回路25は,検出電圧がゲート端子25Gに印加されていないと,ソース端子25Sとドレイン端子25Dとが電気的に接続されず(非通電状態)」は,本件補正発明の「コントロール信号」に相当する「検出電圧」が印加されないと,スイッチ回路25のソース端子25Sとドレイン端子25Dとが電気的に接続されず,その結果,バッテリ44への充電電力が出力されなくなるというものであるから,構成eと構成F2とは,「(F2)前記コントロール信号がオフであれば充電電力の出力を停止する」点で一致する。

イ 上記(ア)?(キ2)の検討から,本件補正発明と引用発明とは,

「(A)充電可能な電池を有する端末と,
(B)(B1)前記端末の前記電池を充電する電源回路を備え,(B2)前記端末をセットすることによりコネクタを介して前記端末の前記電池を充電する端末置台と,を有し,
(C)(C1)前記端末置台に前記端末がセットされることにより前記端末置台と前記端末とが前記コネクタを介して電気的に接続されるとともに(C2)前記端末置台と前記端末との間にアースラインが成立し,
(D)前記端末置台は,前記コネクタを介して充電電力を前記端末に供給する電源出力制御回路を有し,
(E)前記端末は,前記アースラインが成立することにより前記コネクタを介して前記端末置台に向けてコントロール信号を出力し,
(F)(F1)前記端末置台は,前記コントロール信号が入力されることにより前記電源出力制御回路から前記コネクタを介して前記端末に向けて充電電力を供給し,(F2)前記コントロール信号がオフであれば充電電力の出力を停止する(G)端末ユニット。」

である点において一致し,両者の間に相違する点はない。

ウ したがって,本件補正発明は,引用文献2に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年3月22日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,平成30年10月30日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,その請求項1に記載された事項により特定される,前記第2[理由]1の「本件補正前の請求項1」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,この出願の請求項1に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない,というものである。

引用文献2:特開2015-179637号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2及びその記載事項は,前記第2[理由]2(2)の(2-2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から,前記第2の[理由]1の補正事項1?補正事項7に係る限定事項を削除したものである。
そして,本願発明の発明特定事項を全て含み,さらに前記の限定を付加した本件補正発明は,前記第2[理由]2(2)に記載したとおり,引用文献2に記載された発明である。
そうすると,本願発明も同様に,引用文献2に記載された発明である。

第4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用文献2に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。
したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶するべきものである。
よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-03-04 
結審通知日 2020-03-05 
審決日 2020-03-17 
出願番号 特願2018-126071(P2018-126071)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 陽  
特許庁審判長 千葉 輝久
特許庁審判官 須田 勝巳
小池 正彦
発明の名称 端末ユニット  
代理人 石橋 佳之夫  

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