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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1361998 |
審判番号 | 不服2018-15622 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-11-26 |
確定日 | 2020-04-30 |
事件の表示 | 特願2018- 83235「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月15日出願公開、特開2018-181351〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成29年4月18日に出願した特願2017-82324号の一部を平成29年12月1日に新たな特許出願とした特願2017-231858号の一部を平成30年4月24日に新たな特許出願(特願2018-83235号)としたものであって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成30年 4月24日: 手続補正書 平成30年 6月 4日付け:拒絶理由通知 平成30年 8月 3日: 意見書、手続補正書 平成30年 8月16日付け:拒絶査定 平成30年11月26日: 審判請求 2.本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成30年8月3日提出の手続補正書により特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項2】 第1の面に配置される、自機器に触れないジェスチャを検出するための第1の近接センサと、 前記第1の面と対向な第2の面に配置される、自機器に触れないジェスチャを検出するための第2の近接センサと、 自機器の向きに応じて、前記第1の近接センサまたは前記第2の近接センサを切り替えるコントローラと、を備え、 前記コントローラは、 自機器の向きが縦向きである場合に、前記第2の近接センサに切り替える、電子機器。」 3.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、次のとおりのものである。 この出願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2014-135668号公報 4.引用文献1、引用発明について 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は、特に着目した箇所を示す。以下同様。)。 (1) 段落【0002】-【0009】 「【背景技術】 【0002】 携帯端末装置における入力デバイスとして、カメラがある。また、カメラにより撮像されたジェスチャを認識して、操作を行うジェスチャ認識機能も一般的になりつつある。 例えば、特許文献1では、着信を受けた時に、メインカメラまたはサブカメラを起動して、被写体を撮像して表情を認識し、認識結果に基づいて異なる応答を返す。メインカメラまたはサブカメラのどちらを起動するかは端末の開閉状態により判断する。 また、非特許文献1では、フロントカメラより入力される画像情報からハンドジェスチャを認識し、着信した電話に対して受話の操作をタッチレスで行う機能を搭載しており、ジェスチャによる受話操作を行うと、スピーカーホンに切り替わるものである。 ・・・(中略)・・・ 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、特許文献1の技術を、スマートフォンなどの開閉機構のない携帯機器に適用しようとすると、メインカメラとサブカメラは表面と裏面にそれぞれ1つずつ配置される場合に、そのうちどちらのカメラを起動するかをその開閉状態等によって判断することはできない。そのため、カメラを予め起動させておき、その入力画像を迅速に処理することができないという問題がある。 本発明は、携帯端末装置の設置状況に応じて、複数の動作検出部のいずれか有効にしたい方を選択することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明の一観点によれば、筐体の異なる位置に配置される第1の動作検出部と第2の動作検出部とを有する携帯端末装置であって、筐体の姿勢を検出する姿勢検出部と、前記姿勢検出部により検出された姿勢に基づいて、前記第1の動作検出部と前記第2の動作検出部とのいずれを動作させるかを判定する選択部と、を有することを特徴とする携帯端末装置が提供される。 前記姿勢検出部により検出された姿勢に基づいて、前記第1の動作検出部と前記第2の動作検出部とのいずれを動作させるかを判定する選択部を備えるため、携帯端末装置がどのように置かれているかを自動的に判断し、使用する動作検出部を自動的に選択することができる。 【0007】 前記第1の動作検出部と前記第2の動作検出部とは、筐体の表面側と背面側とにそれぞれ配置され、前記姿勢検出部は、加速度センサであり、前記選択部は、前記加速度センサにより測定された前記表面側の加速度が一定の値(例えばゼロ)より大きい場合に、前記第1の動作検出部を動作させ、前記加速度センサによる測定された加速度が一定の値(例えばゼロ)より小さい場合に、前記第2の動作検出部を動作させるように選択することを特徴とする。選択された動作検出部、例えば撮像部のみを起動させたり、選択されなかった動作検出部をオフにしたり、選択された動作検出部、例えば撮像部において合焦処理を行ったりなどの起動準備を行うようにしても良い。 【0008】 また、前記姿勢検出部で検出できない場合等において、前記第1の動作検出部又は前記第2の動作検出部のいずれか一方を動作させるように設定しておくこともできる。例えば、前記加速度センサにより測定された前記表面側の加速度が実質的にゼロの場合に、いずれの動作検出部を動作させるべきかを判定することはできない。このような場合には、あらかじめいずれの動作検出部を動作させるかを決めておき、動作させるようにしても良い。 【0009】 さらに、近接する障害物を検出する近接センサを有し、前記選択部は、前記加速度センサにより測定された前記表面側の加速度が実質的にゼロの場合に、前記近接センサを用いて障害物がない方の動作検出部を動作させることを特徴とする。」 (2) 段落【0014】 「【発明の効果】 【0014】 本発明によれば、携帯端末装置がどのように置かれているかを自動的に判断することができるため、携帯端末装置の設置状況に依存せずに複数の動作検出部のいずれか有効にしたい方を選択することができる。」 (3) 段落【0016】-【0027】 「【発明を実施するための形態】 【0016】 本明細書において、動作検出部とは、カメラなどの画像を撮影する撮像装置、ジェスチャを認識するジェスチャ認識デバイスを含み、携帯端末装置の外部の動作を検出する機能を有する。 以下、本発明の実施の形態による携帯端末装置について図面を参照しながら詳細に説明する。ここでは、スマートフォンを例に説明するが、その他の形態を有する携帯端末装置であっても良い。 【0017】 (第1の実施の形態) 図1は、本発明の第1の実施の形態による携帯端末装置の一構成例を示す機能ブロック図である。 図1に示すように、本実施の形態による携帯端末装置Aは、例えば、筐体内に設けられ、筐体の姿勢を検出する姿勢検出部1と、姿勢検出部1が検出した筐体の姿勢に関するセンシング結果に基づいて筐体の姿勢を判定する姿勢判定部3と、携帯端末装置Aの全体を制御する制御部(CPU)5と、筐体の異なる面に配置される第1の動作検出部(ここでは、撮像素子を用いたジェスチャ認識デバイス1を例にする。)7aと、第2の動作検出部(ここでは、撮像素子を用いたジェスチャ認識デバイス2を例にする。)7bと、筐体の少なくとも一面に設けられる表示部(ディスプレイ)15と、記憶部17と、を有している。制御部(CPU)5は、ジェスチャ認識デバイス選択・起動部5aを有する。 【0018】 尚、本実施の形態では、姿勢検出部1として加速度センサを用い、動作検出部として撮像部(カメラ)により動作検出を行うジェスチャ認識デバイスを用いた例を示すが、ジェスチャ認識デバイスとしては、赤外線ジェスチャ認識デバイス、音波によるジェスチャ認識デバイスなどを用いることもできる。 ジェスチャ認識デバイスを用いる場合には、複数のジェスチャ認識デバイス(カメラ等)のうちから、ジェスチャ認識で実際に使用する1つまたは複数のジェスチャ認識デバイスを、姿勢判定部の出力値によって選択して使用する。 また、一般的な加速度センサは、時間あたりの速度変化や移動距離ではなく、筐体にかかっている力の大きさから加速度を測定する。 以下に加速度センサについて簡単に説明する。 【0019】 ばねの原理であるフックの法則(f=kx)と、ニュートンの運動方程式(f=ma)とに基づいて、式kx=maから、a=x*(k/m)のように加速度aを求めることができる。つまり、絶対的な変位量と定数の掛け算のみから計算できるので、重力加速度とそれ以外の加速度の両方の合算値を計測できる。 逆に、重力加速度を計測可能な加速度センサは、重力加速度とそれ以外の加速度を区別できない。もし重力以外の成分を取り出す場合には、キャリブレーションを行うなどして、計測された値から重力加速度に相当する静的な成分を取り除く必要がある。 【0020】 実際にばねの役割をするものとしては、圧電素子やひずみゲージなど様々な手段があるが、どちらも計測の基本原理は同じであり、[変化量x定数]か、変化量によって非線形に加速度が変化する場合でも、加速度をa=f(x)で求めることができる。本発明では、重力加速度を含む加速度を測定可能な加速度センサを用いることを前提にしているが、上記の方法によれば、異なる加速度センサも用いることができる。 【0021】 以下では、図2(a)、(b)に示すように、携帯端末装置Aの筐体において、ジェスチャ認識デバイスとして、筐体の表面側に第1の撮像部7aが、背面側に第2の撮像部7bが設けられている場合を例にして説明する。なお、筐体の表面側にはメインの表示部15も設けられている。姿勢検出部1として機能する加速度センサは、筐体内又は筐体の表面に取り付けられている。裏面側にサブの表示部を設けても良い。 【0022】 図2に示されているX,Y,Z軸は、任意に定義できるが、本実施の形態では、説明の便宜上、Z軸が表示画面の法線方向であり、X、Y軸が、それぞれ筐体の上下に沿った方向、側面に沿った方向としている。加速度センサの出力値として、X,Y,Zの3軸方向の加速度が得られ、Z軸方向の出力値は、表面が上向き(重力加速度が働く方向と逆向き)であるときに正の値を得られるものとする。 【0023】 図3は、本実施の形態による携帯端末装置Aの配置例を示す図である。図4Aは、本実施の形態によるジェスチャ認識処理のうち、ジェスチャ認識開始までの処理の一例を示すフローチャート図であり、図4Bは、ジェスチャ認識デバイスの選択処理までの処理の流れの一例を示すフローチャート図である。 【0024】 図4Aに示すように、処理が開始され(Start:ステップS1)、例えば電話着信などを契機にジェスチャ認識開始要求を受けると、ステップS3において、姿勢検出部1と姿勢判定部3により、姿勢判定処理が行われる。次いで、ステップS4において、ジェスチャ認識デバイス選択・起動部5aがジェスチャ認識デバイス7a、7bのいずれか一方を選択し、次いで、ステップS5において、選択した方のジェスチャ認識デバイス7a、7bのいずれか一方を起動させる。選択された方のみを起動させたり、選択されなかった方をオフにしたり、選択された方のジェスチャ認識デバイスにおいて合焦処理を行ったりなどの起動準備を行うようにしても良い。 これにより、ステップS6で、ジェスチャ認識処理を開始することができ、開始までの処理が終了する(end:ステップS7)。 【0025】 図4Bは、図4AのステップS3に相当する姿勢判定処理と、ステップS4に相当するジェスチャ認識デバイス選択処理の流れの詳細を示す図である。ステップS3のステップS3-1において、加速度センサの出力値として、x,y,zを取得する。次いで、ステップS3-2において、z≧k(kは定数)であるか否かを判定する。ここで、kは、一定の値であり、一般的には0である。すなわち、zが一定の値より大きい場合には(ステップS3-2でYes)、上記のように、Z軸方向の出力値は、表面が上向き(重力加速度が働く方向と逆向き)であるときに正の値を得られると定義しており、図3(a)のように、筐体の表面を上にした平置きであると判定できる(ステップS3-3)。従って、ジェスチャ認識デバイス選択・起動部5aが、ステップS4-1において、表面のジェスチャ認識デバイス7aが有効であると判断して、ジェスチャ認識デバイス7aを起動させる。 【0026】 一方、ステップS3-2で、Noの場合には、ステップS3-4に進み、図3(d)に示すように、筐体の裏面が上を向いていると判断し、ステップS4-2に進み、裏面のジェスチャ認識デバイス7bが有効であると判断して、ジェスチャ認識デバイス7bを起動させる。 また、kは典型的には0であるが、必ずしも0でなくてもよい。例えば、zが-9.8≦z≦9.8を取りうるのであれば、k=-1.0などとしてもよい。 【0027】 以上のように、本実施の形態によれば、加速度センサにより携帯端末装置の姿勢を判定し、ジェスチャ認識デバイスを適切に選択して動作させるように制御することができる。 従って、スマートフォンのように開閉機構を持たないジェスチャ認識装置などの携帯端末装置において、例えば、姿勢検出部によりジェスチャ認識装置がどのように置かれているかを自動的に判断し、使用するジェスチャ認識デバイスを自動的に選択してジェスチャを認識することができるようになるため、ジェスチャ認識装置が表向きに置かれていても、裏向きに置かれていても、ジェスチャを認識させて操作を行うことができるようになるという利点がある。すなわち、フロントカメラが向いている面を伏せるように置いてある状態では、ジェスチャを認識できないため、機能が動作しないという問題を解決できる。」 (4) 段落【0033】 「【0033】 (第3の実施の形態) 本実施の形態では、姿勢検出部として、図8に示すように、加速度センサ21aと、近接センサ21bとを有している一般的なスマートフォンである。 第1の実施の形態のように、加速度センサのみを有している場合には、図3(b)、(c)のような状態では、いずれのジェスチャ認識デバイス(ここではカメラ)を動作させるように制御するかが不明であることがある。そこで、本実施の形態では、姿勢検出部として、加速度センサ21aと、近接センサ21bとを有しており、カメラ選択部25aは、加速度センサ21aによる測定された筐体における表面側の加速度が実質的にゼロの場合に、近接センサ21bを用いて障害物がない方のカメラを動作させることを特徴とする。 これにより、zの値がどのような場合でも、適切なカメラを起動させ、動作を行うことができる。 例えば、開閉機構等のない携帯機器であって複数の撮像手段を備えるジェスチャ認識装置において、実際に撮像を行う撮像手段を適切に選択し、ジェスチャ等を認識できるようにすることができる。」 よって、上記各記載事項を関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には、特に「第1の実施の形態」に着目すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「携帯端末装置Aは、 筐体内に設けられ、筐体の姿勢を検出する姿勢検出部1と、 姿勢検出部1が検出した筐体の姿勢に関するセンシング結果に基づいて筐体の姿勢を判定する姿勢判定部3と、 携帯端末装置Aの全体を制御する制御部(CPU)5と、 筐体の異なる面に配置される第1の動作検出部(ここでは、撮像素子を用いたジェスチャ認識デバイス1を例にする。)7aと、第2の動作検出部(ここでは、撮像素子を用いたジェスチャ認識デバイス2を例にする。)7bと、 筐体の少なくとも一面に設けられる表示部(ディスプレイ)15と、 記憶部17と、を有し、 制御部(CPU)5は、ジェスチャ認識デバイス選択・起動部5aを有し、 姿勢検出部1として加速度センサを用い、 動作検出部として撮像部(カメラ)により動作検出を行うジェスチャ認識デバイスを用いたが、ジェスチャ認識デバイスとしては、赤外線ジェスチャ認識デバイス、音波によるジェスチャ認識デバイスなどを用いることもでき、 携帯端末装置Aの筐体において、ジェスチャ認識デバイスとして、筐体の表面側に第1の撮像部7aが、背面側に第2の撮像部7bが設けられており、筐体の表面側にはメインの表示部15も設けられており、 X,Y,Z軸は、Z軸が表示画面の法線方向であり、X、Y軸が、それぞれ筐体の上下に沿った方向、側面に沿った方向としており、加速度センサの出力値として、X,Y,Zの3軸方向の加速度が得られ、Z軸方向の出力値は、表面が上向き(重力加速度が働く方向と逆向き)であるときに正の値を得られるものとし、 ジェスチャ認識開始までの処理において、 処理が開始され(Start:ステップS1)、 電話着信などを契機にジェスチャ認識開始要求を受けると、 ステップS3において、姿勢検出部1と姿勢判定部3により、姿勢判定処理が行われ、 次いで、ステップS4において、ジェスチャ認識デバイス選択・起動部5aがジェスチャ認識デバイス7a、7bのいずれか一方を選択し、 次いで、ステップS5において、選択した方のジェスチャ認識デバイス7a、7bのいずれか一方を起動させ、選択された方のみを起動させたり、選択されなかった方をオフにしたり、などの起動準備を行うようにしても良く、 これにより、ステップS6で、ジェスチャ認識処理を開始することができ、 ステップS3に相当する姿勢判定処理と、ステップS4に相当するジェスチャ認識デバイス選択処理の流れの詳細において、 ステップS3のステップS3-1において、加速度センサの出力値として、x,y,zを取得し、 次いで、ステップS3-2において、z≧k(kは定数)であるか否かを判定し、ここで、kは、一定の値であり、 すなわち、zが一定の値より大きい場合には(ステップS3-2でYes)、筐体の表面を上にした平置きであると判定でき(ステップS3-3)、 従って、ジェスチャ認識デバイス選択・起動部5aが、ステップS4-1において、表面のジェスチャ認識デバイス7aが有効であると判断して、ジェスチャ認識デバイス7aを起動させ、 一方、ステップS3-2で、Noの場合には、ステップS3-4に進み、筐体の裏面が上を向いていると判断し、 ステップS4-2に進み、裏面のジェスチャ認識デバイス7bが有効であると判断して、ジェスチャ認識デバイス7bを起動させ、 また、kは典型的には0であるが、必ずしも0でなくてもよく、zが-9.8≦z≦9.8を取りうるのであれば、k=-1.0などとしてもよい、 携帯端末装置A。」 5.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1) 引用発明の「筐体の異なる面に配置される第1の動作検出部(ここでは、撮像素子を用いたジェスチャ認識デバイス1を例にする。)7a」、及び、「第2の動作検出部(ここでは、撮像素子を用いたジェスチャ認識デバイス2を例にする。)7b」は、「携帯端末装置Aの筐体において、ジェスチャ認識デバイスとして、筐体の表面側に第1の撮像部7aが、背面側に第2の撮像部7bが設けられて」いるから、本願発明の「第1の面に配置される」、「第1の近接センサ」、及び、「前記第1の面と対向な第2の面に配置される」、「第2の近接センサ」に対応する。 さらに、引用文献1には、「背景技術」として、段落【0002】に、以下の記載がある。 「【背景技術】 【0002】 携帯端末装置における入力デバイスとして、カメラがある。また、カメラにより撮像されたジェスチャを認識して、操作を行うジェスチャ認識機能も一般的になりつつある。 例えば、特許文献1では、着信を受けた時に、メインカメラまたはサブカメラを起動して、被写体を撮像して表情を認識し、認識結果に基づいて異なる応答を返す。メインカメラまたはサブカメラのどちらを起動するかは端末の開閉状態により判断する。 また、非特許文献1では、フロントカメラより入力される画像情報からハンドジェスチャを認識し、着信した電話に対して受話の操作をタッチレスで行う機能を搭載しており、ジェスチャによる受話操作を行うと、スピーカーホンに切り替わるものである。」 上記「背景技術」欄の記載から、引用文献1には、電話の着信時の操作を、「カメラ」により「タッチレス」で「ハンドジェスチャ」により行う技術が記載されていることを考慮すると、引用発明における「電話着信などを契機にジェスチャ認識開始要求を受けると」、ジェスチャ認識処理を行う、「動作検出部として撮像部(カメラ)により動作検出を行うジェスチャ認識デバイス」は、「自機器に触れないジェスチャを検出するための」ものであることが明らかであるといえる。 よって、引用発明の「筐体の異なる面に配置される第1の動作検出部(ここでは、撮像素子を用いたジェスチャ認識デバイス1を例にする。)7a」、及び、「第2の動作検出部(ここでは、撮像素子を用いたジェスチャ認識デバイス2を例にする。)7b」は、本願発明の「第1の面に配置される、自機器に触れないジェスチャを検出するための第1の近接センサ」、及び、「前記第1の面と対向な第2の面に配置される、自機器に触れないジェスチャを検出するための第2の近接センサ」に相当する。 (2) 引用発明において、「携帯端末装置Aの全体を制御する制御部(CPU)5」、すなわち、CPUの制御によって、一連のステップS1?S6を含む「ジェスチャ認識開始までの処理」が行われることは明らかである。 よって、引用発明の「制御部(CPU)5は、ジェスチャ認識デバイス選択・起動部5aを有し」ており、「ジェスチャ認識開始までの処理」において、「ステップS3において、姿勢検出部1と姿勢判定部3により、姿勢判定処理が行われ」、「次いで、ステップS4において、ジェスチャ認識デバイス選択・起動部5aがジェスチャ認識デバイス7a、7bのいずれか一方を選択し」、「次いで、ステップS5において、選択した方のジェスチャ認識デバイス7a、7bのいずれか一方を起動させ、選択された方のみを起動させたり、選択されなかった方をオフにしたり、などの起動準備を行うようにしても良」いことは、本願発明が「自機器の向きに応じて、前記第1の近接センサまたは前記第2の近接センサを切り替えるコントローラ」を備えることに相当する。 (3) 引用発明の「携帯端末装置A」は、本願発明の「電子機器」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点・相違点があるといえる。 [一致点] 「第1の面に配置される、自機器に触れないジェスチャを検出するための第1の近接センサと、 前記第1の面と対向な第2の面に配置される、自機器に触れないジェスチャを検出するための第2の近接センサと、 自機器の向きに応じて、前記第1の近接センサまたは前記第2の近接センサを切り替えるコントローラと、を備える、電子機器。」 [相違点1] 本願発明では、「前記コントローラは、自機器の向きが縦向きである場合に、前記第2の近接センサに切り替える」のに対して、引用発明では、自機器の向きが縦向きである場合に、第2の近接センサに切り替えることが特定されていない点。 6.当審の判断 [相違点1]について 一般に、ユーザの使い勝手等を考慮して、携帯機器の縦/横方向などの把持状態をセンサで判別して,判別結果に応じて機器の動作を切り替えることは周知技術である。 (必要ならば、例えば、 ・特開2007-109240号公報、段落【0070】 「【0070】 ここで、ユーザによる画面切り換え指示があったり、回転検出部108による感知で、端末機姿勢の変更(回転)が認識されると、縦向き表示(ポートレートビュー)していた画面を図4に示すように横向き表示(ランドスケープビュー)に切り換える。この場合、第1ディスプレイ部105及び第2ディスプレイ部106の各表示画面は、同じ向きに連動して切り換わる。ユーザによる画面切り換え指示は、画面切り換えファンクションを割り付けたボタンの操作とすることが可能で、たとえば、当該ボタンの操作回数や操作持続時間に応じて画面切り換え実行とすることができる。回転検出部108による場合は、位置センサや地磁気センサ等により移動通信端末機100の姿勢変化を検出することで、端末機姿勢が変わったときに自動的に実行される。」の記載、 ・特表2012-516518号公報、段落【0041】-【0042】 「【0041】 ここで図4を参照すると、図4は、本発明の一実施形態に従ったグラフィカルユーザインターフェースを示す。示された実施形態では、デバイス400は、様々な機能を行うためにユーザによって選択可能な複数のアイコン420a-fを有するユーザインターフェース410からなる。例えば、ユーザインターフェースは、アイコンがユーザによって選択された時に電子メールアプリケーションが実行されて使用可能となる電子メール機能に対応するアイコン420bを含む。ユーザがユーザインターフェース410をナビゲートするのを補助するために、ユーザインターフェース410は、実行する機能を選択するためにシフトパターン440内でユーザによって操作可能なギアシフトノブ430からなる。一実施形態では、ユーザは、ギアシフトノブ430にタッチして、ノブを望ましい機能までドラッグしても良い。加えて、ユーザは、シフトノブ430を動かすためにシフトパターン440内で望ましい方向にデバイス100を単に振っても(または揺り動かしても)良い。そのような実施形態では、デバイス400内に配置されたジャイロスコープ状またはその他の好適なセンサーのようなセンサー(図示せず)は、デバイス400の動きを検出し、動きを示すセンサー信号を出力するように構成されている。デバイス400内に配置されたプロセッサ(図示せず)は、センサー信号を受け取り、デバイス400の動きに対応するシフトパターン内のシフトノブ430の動きを決定するように構成されている。例えば、もしユーザがデバイス400を左に揺り動かせば、プロセッサはデバイス400の左への動きを示すセンサー信号を受け取り、シフトノブの対応する動きを決定する。 【0042】 いくつかの実施形態ではデバイス400は様々な向きで保持されても良いので、動きの向きはデバイス400の向きに従って変動し得ることに注意されたい。例えば、示された実施形態では、ユーザは第一の向きにデバイス400を保持している。しかしながら、ユーザはデバイス400を時計回りに90度回転する方を選ぶかもしれない。そのような場合には、前の「ポートレート」ビューではなく「ランドスケープ」ビューにおいてであるが、シフトパターンがユーザに対して同じ向きに留まるように、ユーザインターフェースが反対方向に90度回転しても良い。」の記載、 ・特開2016-82352号公報、段落【0049】 「【0049】 デジタルカメラ100は、ステップS101にて、アウトカメラとインカメラ双方を用いて撮影した画像を同時に表示部28に表示する同時表示モードかどうかを判定する。同時表示モードの場合は、アウトカメラで撮影された画像とインカメラで撮影された画像が合成されて同時に表示部28に表示される。さらに、表示部に表示されているのと同じ構成で、アウトカメラで撮影された画像とインカメラで撮影された画像を合成して外部記録媒体91に記録する。同時表示モードであるかではなく、アウトカメラとインカメラ双方の画像を合成して記録する同時記録モードであるかを判定してもよい。ここで、同時記録モードでは、同時表示モードの時と同等の処理が行われる。これらのモードは、記録モード設定のためのユーザの操作により切り替えることができるものとする。ステップS101にて同時表示モードではないと判断した場合は、ステップS114へと進み、通常のカメラ動作を行うのみとなる。通常のカメラ動作(S114)では、アウトカメラで撮影した画像のみを表示部28に表示し、シャッターボタンが押下されて(SW2がON)、撮影指示が入力されたことに応じて、アウトカメラで撮影した画像を外部記録媒体91に記録する。ステップS101にて、同時表示モードであると判断した場合には、ステップS102に進む。ステップS102では、表示モードが正像表示モードであるか鏡像表示モードであるかを判断する。鏡像表示モードではなく正像表示モードであると判断される場合は、ステップS103へと進み、デジタルカメラ100の姿勢が縦姿勢かどうかを判断する。具体的には、姿勢検出センサ44の検出結果である回転角度情報を取得し、回転角度情報に基づいてデジタルカメラの姿勢を判断する。撮影方向周り(光軸周り)の回転角度が90度または270の場合が縦姿勢であるので、本実施形態では、取得した回転角度情報が、50?130度、または、230?310度の場合に、デジタルカメラ100が縦姿勢であると判断する。そして、取得した回転角度情報が50?130度、230?310度の範囲に含まれない場合(0?50度、130?230度、310?360度の場合)は横姿勢であると判断する。ステップS103にてデジタルカメラ100が縦姿勢で はないと判断された場合には、ステップS104において、アウトカメラのスルー画像とインカメラのスルー画像とを回転や鏡像反転処理を行わずに、表示部28に表示する。ステップS103にてデジタルカメラ100が縦位置であると判断された場合には、ステップS105へと進む。ステップS105では、インカメラのスルー画像に対して180度回転する回転処理を施して、アウトカメラのスルー画像と共に表示部28に表示させる。」の記載を参照。) 一方、引用文献1の段落【0008】-【0009】には、以下の記載がある。 「【0008】 また、前記姿勢検出部で検出できない場合等において、前記第1の動作検出部又は前記第2の動作検出部のいずれか一方を動作させるように設定しておくこともできる。例えば、前記加速度センサにより測定された前記表面側の加速度が実質的にゼロの場合に、いずれの動作検出部を動作させるべきかを判定することはできない。このような場合には、あらかじめいずれの動作検出部を動作させるかを決めておき、動作させるようにしても良い。 【0009】 さらに、近接する障害物を検出する近接センサを有し、前記選択部は、前記加速度センサにより測定された前記表面側の加速度が実質的にゼロの場合に、前記近接センサを用いて障害物がない方の動作検出部を動作させることを特徴とする。」 上記記載から、引用文献1には、表面側の加速度、すなわち、Z軸方向の加速度が実質的にゼロの場合に、いずれの動作検出部を動作させるかを決めておくべきことの示唆があるといえる。 また、引用発明は、「姿勢検出部1として加速度センサを用い」、「Z軸が表示画面の法線方向であり、X、Y軸が、それぞれ筐体の上下に沿った方向、側面に沿った方向としており、加速度センサの出力値として、X,Y,Zの3軸方向の加速度が得られ」るものであるからから、引用発明の姿勢検出部1(3軸方向の加速度センサ)は、Z軸方向以外の、Y軸方向の加速度として、機器が縦方向であることを検出可能なことが明らかである。 よって、引用発明において、Z軸方向の加速度が実質的にゼロの場合について、ユーザの使い勝手等を考慮して、携帯機器の縦/横方向などの把持状態をセンサで判別して,判別結果に応じて機器の動作を切り替える周知技術を付加することによって、「前記コントローラは、自機器の向きが縦向きである場合に、前記第2の近接センサに切り替える」ように構成して、上記[相違点1]に係る本願発明の構成とすることは、当業者であれば容易に推考し得ることである。 さらに、本願発明の効果も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が予測し得る範囲内のものである。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-03-02 |
結審通知日 | 2020-03-03 |
審決日 | 2020-03-16 |
出願番号 | 特願2018-83235(P2018-83235) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 円子 英紀、佐伯 憲太郎 |
特許庁審判長 |
▲吉▼田 耕一 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 岩田 玲彦 |
発明の名称 | 電子機器 |
代理人 | 河合 隆慶 |
代理人 | 甲原 秀俊 |
代理人 | 杉村 憲司 |