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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1362017
審判番号 不服2019-11661  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-05 
確定日 2020-04-30 
事件の表示 特願2015-180900号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月23日出願公開、特開2017-55814号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯の概要
本願は、平成27年9月14日の出願であって、平成30年12月28日に手続補正書が提出され、平成31年2月18日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月23日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、令和1年6月3日付け(送達日:同年6月11日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年9月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和1年9月5日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年9月5日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正により、平成31年4月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
識別情報を変動表示させる識別情報表示手段を備え、前記識別情報が特定態様で表示されることに基づいて、可変入球口が入球可能状態となる特定遊技を実行する遊技機において、
前記識別情報が前記特定態様で表示される可能性を示唆する予告演出を発生させる演出発生手段と、
遊技状態を設定する遊技状態設定手段と、
を備え、
前記遊技状態設定手段は、前記遊技状態として少なくとも、通常状態と、前記通常状態より遊技者にとって有利な有利状態とを設定可能であり、
前記演出発生手段は、
前記予告演出として少なくとも、第一の予告演出と、前記第一の予告演出と比較して遊技者に認知し難い第二の予告演出とを、発生可能であり、
前記第一の予告演出および前記第二の予告演出のうち少なくとも一方について、前記通常状態が設定されている場合と前記有利状態が設定されている場合とで異なる発生頻度で予告演出を発生させ、
前記有利状態が設定されている場合には、有利状態中における演出態様として少なくとも、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能であり、有利状態中において前記第一の演出態様から前記第二の演出態様へ変更可能であり、
有利状態中における演出態様が前記第一の演出態様である場合と前記第二の演出態様である場合とで、前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の少なくとも一方の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されており、
前記第一の予告演出よりも前記第二の予告演出の方が、前記予告演出が表示される演出表示部の中央から離れた位置で表示されるよう構成されている
ことを特徴とする遊技機。」は、
審判請求時に提出された手続補正書(令和1年9月5日付け)の特許請求の範囲の請求項1における
「【請求項1】
識別情報を変動表示させる識別情報表示手段を備え、前記識別情報が特定態様で表示されることに基づいて、可変入球口が入球可能状態となる特定遊技を実行する遊技機において、
前記識別情報が前記特定態様で表示される可能性を示唆する予告演出を発生させる演出発生手段と、
遊技状態を設定する遊技状態設定手段と、
を備え、
前記遊技状態設定手段は、前記遊技状態として少なくとも、通常状態と、前記通常状態より遊技者にとって有利な有利状態とを設定可能であり、
前記演出発生手段は、
前記予告演出として少なくとも、第一の予告演出と、前記第一の予告演出と比較して遊技者に認知し難い第二の予告演出とを、発生可能であり、
前記第一の予告演出および前記第二の予告演出のうち少なくとも一方について、前記通常状態が設定されている場合と前記有利状態が設定されている場合とで異なる発生頻度で予告演出を発生させ、
前記有利状態が設定されている場合には、有利状態中における演出態様として少なくとも、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能であり、有利状態中において前記第一の演出態様から前記第二の演出態様へ変更可能であり、
有利状態中における演出態様が前記第一の演出態様である場合と前記第二の演出態様である場合とで、前記第一の予告演出および前記第二の予告演出を少なくとも発生可能であり、前記第一の演出態様である場合における前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の発生頻度と前記第二の演出態様である場合における前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されており、
前記第一の予告演出よりも前記第二の予告演出の方が、前記予告演出が表示される演出表示部の中央から離れた位置で表示されるよう構成されている
ことを特徴とする遊技機。」に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審判合議体にて付した。)。

2 補正の適否
2-1 補正の目的及び新規事項について
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「有利状態中における演出態様が前記第一の演出態様である場合と前記第二の演出態様である場合」における「前記第一の予告演出および前記第二の予告演出」の「発生頻度」に関して、本件補正前に「有利状態中における演出態様が前記第一の演出態様である場合と前記第二の演出態様である場合とで、前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の少なくとも一方の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されており」とあったものを、「有利状態中における演出態様が前記第一の演出態様である場合と前記第二の演出態様である場合とで、前記第一の予告演出および前記第二の予告演出を少なくとも発生可能であり、前記第一の演出態様である場合における前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の発生頻度と前記第二の演出態様である場合における前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されており」と限定することを含むものである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。
また、本件補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0125】等の記載からみて、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

2-2 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか否かについて、以下に検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、次のとおりのものであると認める(記号A?Iは、分説するため当審判合議体にて付した。)。
「A 識別情報を変動表示させる識別情報表示手段を備え、前記識別情報が特定態様で表示されることに基づいて、可変入球口が入球可能状態となる特定遊技を実行する遊技機において、
B 前記識別情報が前記特定態様で表示される可能性を示唆する予告演出を発生させる演出発生手段と、
C 遊技状態を設定する遊技状態設定手段と、
を備え、
D 前記遊技状態設定手段は、前記遊技状態として少なくとも、通常状態と、前記通常状態より遊技者にとって有利な有利状態とを設定可能であり、
E 前記演出発生手段は、
E1 前記予告演出として少なくとも、第一の予告演出と、前記第一の予告演出と比較して遊技者に認知し難い第二の予告演出とを、発生可能であり、
E2 前記第一の予告演出および前記第二の予告演出のうち少なくとも一方について、前記通常状態が設定されている場合と前記有利状態が設定されている場合とで異なる発生頻度で予告演出を発生させ、
F 前記有利状態が設定されている場合には、有利状態中における演出態様として少なくとも、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能であり、有利状態中において前記第一の演出態様から前記第二の演出態様へ変更可能であり、
G 有利状態中における演出態様が前記第一の演出態様である場合と前記第二の演出態様である場合とで、前記第一の予告演出および前記第二の予告演出を少なくとも発生可能であり、前記第一の演出態様である場合における前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の発生頻度と前記第二の演出態様である場合における前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されており、
H 前記第一の予告演出よりも前記第二の予告演出の方が、前記予告演出が表示される演出表示部の中央から離れた位置で表示されるよう構成されている
I ことを特徴とする遊技機。」

(2)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2009-261722号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。
ア 記載事項
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、ステップアップ予告に関する演出の面白みを向上させ、遊技の興趣を向上させることができる遊技機を提供することである。」

(イ)「【0021】
〔第1実施形態〕
まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機1の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機1を正面からみた正面図である。
・・・
【0024】
遊技領域7の中央付近には、液晶表示装置(LCD)で構成された演出表示装置9が設けられている。演出表示装置9の表示画面には、第1特別図柄または第2特別図柄の変動表示に同期した演出図柄の変動表示を行なう演出図柄表示領域がある。演出表示装置9は、各々が識別可能な複数種類の識別情報としての演出図柄の変動表示を行なう変動表示装置(変動表示部)に相当する。演出図柄表示領域には、たとえば「左」、「中」、「右」の3つの装飾用(演出用)の識別情報を変動表示する図柄表示エリアがある。図柄表示エリアには「左」、「中」、「右」の各図柄表示エリア9L、9C、9Rがあるが、図柄表示エリア9Aの位置は、演出表示装置9の表示画面において固定的でなくてもよいし、図柄表示エリア9L、9C、9Rの3つ領域が離れてもよい。演出表示装置9は、演出制御基板に搭載されている演出制御用マイクロコンピュータによって制御される。演出制御用マイクロコンピュータが、第1特別図柄表示器8aで第1特別図柄の変動表示が実行されているときに、その変動表示に伴って演出表示装置9で演出表示を実行させ、第2特別図柄表示器8bで第2特別図柄の変動表示が実行されているときに、その変動表示に伴って演出表示装置で演出表示を実行させるので、遊技の進行状況を把握しやすくすることができる。」

(ウ)「【0041】
演出表示装置9は、第1特別図柄表示器8aによる第1特別図柄の変動表示時間中、および第2特別図柄表示器8bによる第2特別図柄の変動表示時間中に、装飾用(演出用)の図柄としての演出図柄の変動表示を行なう。第1特別図柄表示器8aにおける第1特別図柄の変動表示と、演出表示装置9における演出図柄の変動表示とは同期している。また、第2特別図柄表示器8bにおける第2特別図柄の変動表示と、演出表示装置9における演出図柄の変動表示とは同期している。また、第1特別図柄表示器8aにおいて大当り図柄が停止表示されるときと、第2特別図柄表示器8bにおいて大当り図柄が停止表示されるときとには、演出表示装置9において大当りを想起させるような特定表示結果としての演出図柄の組合せが停止表示される。」

(エ)「【0064】
この実施の形態では、演出制御基板80に搭載されている演出制御手段(後述する演出制御用マイクロコンピュータ100)が、中継基板77を介して遊技制御用マイクロコンピュータ560から演出内容を指示する演出制御コマンドを受信し、飾り図柄を変動表示する第1飾り図柄表示器9aおよび第2飾り図柄表示器9bの表面制御と、演出図柄を変動表示する演出表示装置9の表示制御とを行なう。また、演出制御基板80に搭載されている演出制御手段は、操作ボタン30からの操作検出信号が入力され、その信号に応じて、後述する予告演出等の各種演出を行なう。」

(オ)「【0122】
第1特別図柄表示器8aまたは第2特別図柄表示器8bにおいて、特別図柄(第1特別図柄または第2特別図柄)の変動表示が開始された後、所定時間(変動時間)が経過すると、特別図柄の変動表示結果である停止図柄を停止表示(導出表示)する。大当りにすることに決定されている場合には、特定の特別図柄(大当り図柄)が停止表示される。小当りにすることに決定されている場合には、大当り図柄とは異なる所定の特別図柄(小当り図柄)が停止表示される。はずれにすることに決定されている場合には、大当り図柄や小当り図柄以外の特別図柄が停止表示される。大当り図柄が導出表示された場合には、遊技状態が、特定遊技状態としての大当り遊技状態に制御される。また、小当り図柄が導出表示された場合には、大当り遊技状態とは異なる小当り遊技状態に制御される。この実施の形態では、一例として、「1」、「3」、「7」を示す数字を大当り図柄とし、「5」を示す数字を小当り図柄とし、「-」を示す記号をはずれ図柄にする。
・・・
【0125】
また、大当り遊技状態が終了した後、遊技状態が時短状態に制御される。時短状態では、通常状態(確変状態や時短状態ではない状態)に比べて特別図柄の変動表示における特別図柄の変動時間が短縮される。時短状態は、たとえば、所定回数(たとえば、100回)の特別図柄の変動表示が実行されること、および、変動表示結果が「大当り」となることのうち、いずれかの条件が先に成立したときに終了する。なお、大当り状態が終了した後に、時短状態にせずに通常状態になるようにしてもよい。
【0126】
遊技状態を確変状態に制御することに決定されている場合には、大当り遊技状態が終了した後、遊技状態が確変状態に制御される。確変状態は、たとえば、次に変動表示結果として大当り図柄が導出表示されるまで継続する。遊技状態を大当り遊技状態に制御することに決定されている場合に導出表示される特別図柄の停止図柄を、大当り図柄という。そして、遊技状態を大当り状態に制御しないことに決定されている場合に導出表示される特別図柄の停止図柄を、はずれ図柄という。
・・・
【0128】
第1特別図柄表示器8aまたは第2特別図柄表示器8bに小当り図柄が停止表示された場合には、遊技状態が、大当り遊技状態とは異なる小当り遊技状態に制御される。小当り遊技状態では、2ラウンド大当り状態と同様に、可変入賞球装置20における開閉板が第2期間(たとえば、0.5秒間)開放状態になって大入賞口が開放される。ラウンドの回数は第2回数(たとえば、2)である。ただし、2ラウンド大当り状態とは異なり、遊技状態は変更されない。すなわち、小当り遊技状態に制御される前の遊技状態が継続する。ただし、確変状態や時短状態を終了することに決定されている場合には、小当り遊技状態の終了後に、遊技状態は通常状態に制御される。なお、2ラウンド大当り状態における各ラウンドで可変入賞球装置20とは別個に設けられた入賞球装置を第1状態に変化させる場合には、小当り遊技状態でも、2ラウンド大当り状態の場合と同様に、その入賞球装置を第1状態に変化させる。
【0129】
また、確変状態では、低確率状態(通常状態)に比べて、大当りに決定される確率が高くなっている。たとえば、10倍になっている。具体的には、確変状態では、大当り判定用乱数の値と一致すると大当りにすることに決定される判定値の数が、通常状態に比べて10倍になっている。また、普通図柄表示器10の停止図柄が当り図柄になる確率が高められている。すなわち、始動入賞口13が開放しやすくなって、始動入賞が生じやすくなっている。具体的には、確変状態は、普通図柄当り判定用乱数の値と一致すると当りにすることに決定される判定値の数が、通常状態に比べて多い。また、普通図柄表示器10の停止図柄が当り図柄になる確率を高めることに加えて、可変入賞球装置15の開放回数または開放時間を多くしたり、可変入賞球装置15の開放回数および開放時間を多くしたりしてもよい。また、時短状態でも、普通図柄表示器10の停止図柄が当り図柄になる確率を高めたり、可変入賞球装置15の開放回数または開放時間を多くしたり、可変入賞球装置15の開放回数および開放時間を多くしたりしてもよい。この実施の形態では、確変状態において、大当りに決定される確率が高くなることに加えて、普通図柄表示器10の停止図柄が当り図柄になる確率が高められる例を示した。しかし、確変状態においては、少なくとも、大当りに決定される確率が高くなればよい。」

(カ)「【0210】
図31は、主基板31に搭載される遊技制御用マイクロコンピュータ560(具体的には、CPU56)が実行する特別図柄プロセス処理(S26)のプログラムの一例を示すフローチャートである。上述したように、特別図柄プロセス処理では第1特別図柄表示器8aまたは第2特別図柄表示器8bおよび大入賞口を制御するための処理が実行される。特別図柄プロセス処理において、CPU56は、第1始動入賞口13に遊技球が入賞したことを検出するための第1始動口スイッチ13aまたは第2始動入賞口14に遊技球が入賞したことを検出するための第2始動口スイッチ14aがオンしていたら、すなわち始動入賞が発生していたら、始動口スイッチ通過処理を実行する(S311,S312)。そして、S300?S310のうちのいずれかの処理を行なう。第1始動入賞口スイッチ13aまたは第2始動口スイッチ14aがオンしていなければ、内部状態に応じて、S300?S310のうちのいずれかの処理を行なう。」

(キ)「【0271】
大入賞口制御タイマの値が0になっている場合には、CPU56は、大入賞口の開放中(ラウンド中)におけるラウンド数に応じた表示状態を指定する大入賞口開放中指定コマンド(A1XX(H))を演出制御用マイクロコンピュータ100に送信する制御を行なう(S403)。なお、CPU56は、ラウンド数を、大当り遊技中のラウンド数をカウントするための開放回数カウンタの値を確認することにより認識する。そして、CPU56は、は、ソレノイド21を駆動して大入賞口(特別可変入賞球装置20)を開放する制御を行なうとともに(S404)、開放回数カウンタの値を-1する(S405)。」

(ク)「【0319】
予告パターン種別決定用の乱数SR7は、第1予告演出を実行するか否かを決定し、第1予告演出を実行する場合における予告パターン種別を予め用意された複数種類のいずれかに決定するために用いられる乱数である。ここで、予告演出とは、変動表示時において、大当り遊技状態となることを予告する演出をいう。本実施の形態の場合、予告演出は、第1予告演出、第2予告演出、第3予告演出、第4予告演出、および、第5予告演出を含む。」

(ケ)「【0383】
図64は、予告演出の一例として第1予告演出のボタン予告が実行されたときの演出表示装置9における表示動作例を示す説明図である。図64では、(A)?(F)に、擬似連の変動表示中にボタン予告が実行されたときの表示状態が時間経過にしたがって示されている。ボタン予告は、第1予告演出として実行される。
【0384】
図64を参照して、(A),(B)に示すように、特別図柄の変動表示における特別図柄の変動開始等に対応して、「左」、「中」、「右」の図柄表示エリア9L、9C、9Rの全部で演出図柄の変動が開始される。ボタン予告を実行することが決定されたときには、その後、(C)に示すように、いずれの図柄表示エリアでも演出図柄が停止されていない変動中の状態において、封筒を示す画像(以下、封筒画像と呼ぶ)9Pが表示されるとともに、操作ボタンを示す画像(以下、操作ボタン画像と呼ぶ)9Qと、「ボタンを押してください」という操作要求メッセージを示す画像(以下、操作要求メッセージ画像)9Sとが表示される。」

(コ)「【0450】
図70においては、一例として、第1ステップアップ予告が実行されているときにミニキャラ予告が実行されたときの表示状態が示されている。ミニキャラ予告は、前述したように、他の予告演出とは別個に実行の有無および予告パターンが決定されるので、他の予告演出と同時に実行されるときと、ミニキャラ予告単独で実行されるときとがある。
【0451】
(A)に示すような演出図柄が停止されている状態から(B1)、(B2)、または(B3)に示すようなすべての図柄表示エリア9L、9C、9Rで演出図柄が変動を開始した段階になると、ミニキャラ予告が行なわれるときには、複数種類のミニキャラ画像961,962,963のうちから選択されたミニキャラ画像が演出表示装置9において表示される。
【0452】
たとえば、(B1)に示される第1ミニキャラ画像961は、虫の形状のミニキャラであり、ミニキャラ表示Aの予告パターンが選択されたときに表示される。(B2)に示される第2ミニキャラ画像962は、木の葉の形状のミニキャラであり、ミニキャラ表示Bの予告パターンが選択されたときに表示される。(CB3)に示される第3ミニキャラ画像963は、鳥の形状のミニキャラであり、ミニキャラ表示Cの予告パターンが選択されたときに表示される。
【0453】
ミニキャラ予告の予告パターンとしてのミニキャラ表示A?ミニキャラ表示Cについては、ミニキャラ表示A<ミニキャラ表示B<ミニキャラ表示Cの順序で、その後に大当りとなる割合が高くなるように大当りとなる信頼度が設定されている。これにより、遊技者からの見た目では、第1ミニキャラ画像961<第2ミニキャラ画像962<第3ミニキャラ画像963の順序で、表示されたときにその後に大当りとなる割合が高くなるように大当りとなる信頼度が設定されている。
・・・
【0455】
ミニキャラ画像は、視認性が低い画像であるので、この実施の形態のようにミニキャラ予告を行なうときには、遊技経験が浅い遊技者にとっては見逃しやすくなる予告演出であるが、遊技経験を積んだ熟練の遊技者にとっては見逃さなくても済むような予告演出にすることが可能であるので、熟練の遊技者の満足感を高めることができる。」

(サ)「【1230】
第1予告演出予告パターン種別決定テーブル200の設定では、具体的に、確変状態のときは、非確変状態のときと比べて予告演出なしとなる割合が高くなるように各選択項目に対応する乱数SR7の割り振りが設定されている。さらに、確変状態のときは、非確変状態のときと比べてボタン予告が選択される割合が低く、かつ、第1ステップアップ予告が選択される割合が高くなるように乱数SR7の割り振りが設定されている。これにより、ボタン予告および第1ステップアップ予告(基本発展予告、リーチ分岐予告、ボタン分岐予告)のそれぞれの予告パターンは、非確変状態と確変状態とで異なる割合で選択される。
・・・
【1237】
また、第1予告演出に限らず、第4予告演出についても、図100に示すような「第4予告演出なし」、および、「ミニキャラ予告」のそれぞれの選択項目についての割り振りが、非確変状態であるときと、確変状態であるときとに分けて、異なるように設定してもよい。その場合には、たとえば、次のように、非確変状態であるときと確変状態であるときとで、ミニキャラ予告のミニキャラ表示を決定するテーブルを使い分けるようにしてもよい。ミニキャラ予告のミニキャラ表示を決定するテーブルとしては、大当りの信頼度が高いミニキャラ表示が選択されやすいようにデータが設定された確変状態用のテーブルと、大当りの信頼度が高いミニキャラ表示が選択されにくいようにデータが設定された非確変状態用のテーブルとの2種類用意し、確変状態であるか否かに応じて、確変状態用のテーブルと非確変状態用のテーブルとを使い分けるようにする。なお、逆に、ミニキャラ予告のミニキャラ表示を決定するテーブルとしては、大当りの信頼度が高いミニキャラ表示が選択されにくいようにデータが設定された確変状態用のテーブルと、大当りの信頼度が高いミニキャラ表示が選択されやすいようにデータが設定された非確変状態用のテーブルとの2種類用意し、確変状態であるか否かに応じて、確変状態用のテーブルと非確変状態用のテーブルとを使い分けるようにしてもよい。」

イ 認定事項
(ア)
引用文献1には、【0126】に「・・・遊技状態が確変状態に制御される。」ことが記載され、【0128】に「・・・遊技状態は通常状態に制御される。」ことが記載され、【0129】に「確変状態では、・・・通常状態・・・に比べて、大当りに決定される確率が高くなっている。」ことが記載され、【0210】に「図31は、主基板31に搭載される遊技制御用マイクロコンピュータ560(具体的には、CPU56)が実行する特別図柄プロセス処理(S26)のプログラムの一例を示すフローチャートである。」ことが記載されている。

【図31】



そして、【図31】の特別図柄停止処理(S304)に対応する、「特別図柄停止処理を示すフローチャートである」【図39】に、S133で大当りフラグがセットされている場合、S134で確変フラグおよび時短フラグがリセットされること、S141で時短回数カウンタ=0である場合、S142で時短フラグがリセットされることが図示されている。ここで、「確変フラグおよび時短フラグがリセットされる」こと、および、「時短フラグがリセットされる」ことは、遊技状態が通常状態となることを意味するものであると認める。

【図39】


また、同じく、【図31】の大当り終了処理(S307)に対応する、「大当り終了処理を示すフローチャートである」【図43】に、S158で大当り種別が確変大当り又は突然確変大当りである場合、S161で確変フラグがセットされることが図示されている。ここで、「確変フラグがセットされる」ことは、遊技状態が確変状態となることを意味するものであると認める。

【図43】

これらのことからみて、引用文献1には、遊技制御用マイクロコンピュータ560が、特別図柄プロセス処理において、遊技状態として、通常状態と通常状態に比べて大当りに決定される確率が高くなっている確変状態とに設定可能であることが示されているものと認められる。
(イ)
引用文献1には、【0064】に「・・・演出制御手段(後述する演出制御用マイクロコンピュータ100)が、・・・予告演出等の各種演出を行なう。」ことが記載されている。
そして、引用文献1には、ボタン予告に関して、【0384】に「ボタン予告を実行することが決定されたときには、・・・封筒画像・・・9Pが表示されるとともに、・・・操作ボタン画像・・・9Qと、・・・操作要求メッセージ画像・・・9Sとが表示される。」ことが記載され、「予告演出の一例として第1予告演出のボタン予告が実行されたときの演出表示装置9における表示動作例を示す説明図である」(【0383】)【図64】に、ボタン予告として、封筒画像9P、操作ボタン画操9Q、操作要求メッセージ画像9Sが、演出表示装置9の中央寄りの下部領域に表示されることが図示されている。

【図64】


また、引用文献1には、ミニキャラ予告に関して、【0451】に「ミニキャラ予告が行なわれるときには、複数種類のミニキャラ画像961,962,963のうちから選択されたミニキャラ画像が演出表示装置9において表示される。」こが記載され、第4予告演出の一例としてのミニキャラ予告が実行されたときの演出表示装置における表示例を示す説明図である【図70】に、ミニキャラ予告として、ミニキャラ画像が、演出表示装置9の中央から若干離れた上部領域に小さく表示されることが図示されている。

【図70】


さらに、【図64】と【図70】において、ミニキャラ予告とボタン予告とを比較した場合、ミニキャラ予告が、ボタン予告よりも視認性の低い演出を用いて実行されることが示されているとともに、ミニキャラ予告が、ボタン予告よりも演出表示装置9の中央から離れた表示領域を用いて実行されることが図示されているものと認められる。

これらのことからみて、引用文献1には、次の事項が示されているものと認められる。
イ-1:演出制御用マイクロコンピュータ100は、予告演出として、例えば、封筒画像9P、操作ボタン画操9Q、操作要求メッセージ画像9Sを表示するボタン予告や、ボタン予告よりも視認性の低い画像であるミニキャラ画像を表示するミニキャラ予告を実行可能であること。
イ-2:ミニキャラ予告が、ボタン予告よりも演出表示装置9の中央から離れた表示領域を用いて実行されること。

ウ 引用発明
上記アの記載事項および上記イの認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(a?iは、本件補正発明のA?Iに対応させて当審判合議体にて付与した。)。
「a 複数種類の識別情報としての演出図柄の変動表示を行なう演出表示装置9を備え(【0024】)、
演出表示装置9において大当りを想起させるような特定表示結果としての演出図柄の組合せが導出表示された場合に、大入賞口(特別可変入賞球装置20)を開放する制御を行なう大当り遊技状態に制御される(【0041】、【0122】、【0271】)
パチンコ遊技機1(【0021】)において、
b 変動表示時において、大当り遊技状態となることを予告する予告演出等の各種演出を行なう演出制御用マイクロコンピュータ100(【0064】、【0319】)と、
c?d 特別図柄プロセス処理において、遊技状態として、通常状態と通常状態に比べて大当りに決定される確率が高くなっている確変状態とに設定可能である遊技制御用マイクロコンピュータ560(認定事項(ア))とを備え、
e 演出制御用マイクロコンピュータ100は、
e1 予告演出として、例えば、封筒画像9P、操作ボタン画操9Q、操作要求メッセージ画像9Sを表示するボタン予告や、ボタン予告よりも視認性の低い画像であるミニキャラ画像を表示するミニキャラ予告を実行可能とし(認定事項(イ-1))、
e2、f’、g’ ボタン予告について、予告パターン種別決定テーブル200に、確変状態のときは、非確変状態のときと比べて選択される割合が低くなるように予告パターンの選択割合を設定し(【1230】)、
ミニキャラ予告について、選択項目についての割り振りを、非確変状態であるときと、確変状態であるときとに分けて、異なるように設定し(【1237】)、
h ミニキャラ予告が、ボタン予告よりも演出表示装置9の中央から離れた表示領域を用いて実行される(認定事項(イ-2))、
i パチンコ遊技機1。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを、分説に従い対比する。
(a、i)
引用発明における構成aの「複数種類の識別情報としての演出図柄の変動表示を行なう演出表示装置9」は、本件補正発明における構成Aの「識別情報を変動表示させる識別情報表示手段」に相当する。
そして、引用発明における構成aの「演出表示装置9において大当りを想起させるような特定表示結果としての演出図柄の組合せが導出表示され」たことは、本件補正発明における構成Aの「識別情報が特定態様で表示される」ことに相当する。
また、引用発明における構成aの「大入賞口(特別可変入賞球装置20)を開放する制御を行なう大当り遊技状態に制御されるパチンコ遊技機1」は、本件補正発明における構成Aの「可変入球口が入球可能状態となる特定遊技を実行する遊技機」に相当する。
したがって、引用発明における構成a、構成iは、それぞれ、本件補正発明における構成A、構成Iに相当する。

(b)
引用発明における構成bの「変動表示時において、大当り遊技状態となることを予告する予告演出等の各種演出を行なう」ことは、本件補正発明における構成Bの「識別情報が特定態様で表示される可能性を示唆する予告演出を発生させる」ことに相当する。
したがって、引用発明における構成bの「演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本件補正発明における構成Bの「演出発生手段」としての機能を有する。

(c?d)
引用発明における構成c?dの「遊技状態」、「通常状態」、「通常状態に比べて大当りに決定される確率が高くなっている確変状態」は、それぞれ、本件補正発明における構成C?Dの「遊技状態」、構成Dの「通常状態」、構成Dの「通常状態より遊技者にとって有利な有利状態」に相当する。
したがって、引用発明における構成c?dの「遊技制御用マイクロコンピュータ560」は、本件補正発明における構成C?Dの「遊技状態設定手段」としての機能を有する。

(e、e1)
引用発明における構成e、e1の「封筒画像9P、操作ボタン画操9Q、操作要求メッセージ画像9Sを表示するボタン予告」は、本件補正発明における構成E、E1の「第一の予告演出」に相当する。
そして、引用発明における構成e、e1の「ボタン予告よりも視認性の低い画像であるミニキャラ画像を表示するミニキャラ予告」は、本件補正発明における構成E、E1の「第一の予告演出と比較して遊技者に認知し難い第二の予告演出」に相当する。
したがって、引用発明における構成e、e1の「演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本件補正発明における構成E、E1の「演出発生手段」としての機能を有する。

(e、e2)
引用発明における構成e、e2、f’、g’の「ボタン予告について、予告パターン種別決定テーブル200に、確変状態のときは、非確変状態のときと比べて選択される割合が低くなるように予告パターンの選択割合を設定」すること、および、「ミニキャラ予告について、選択項目についての割り振りを、非確変状態であるときと、確変状態であるときとに分けて、異なるように設定」することは、本件補正発明における構成E、E2の「通常状態が設定されている場合と有利状態が設定されている場合とで異なる発生頻度で予告演出を発生させ」ることに相当する。
したがって、引用発明における構成e、e2、f’、g’の「演出制御用マイクロコンピュータ100」は、本件補正発明における構成E、E2の「演出発生手段」としての機能を有する。

(f)
引用発明における構成e2、f’、g’の「確変状態」では、「ボタン予告」や、「ミニキャラ予告」を所定の割合で選択され、実行される等、何らかの演出が行われていることは当業者において自明であるから、引用発明は、「確変状態」中に所定の演出態様が設定されるものである。
そうすると、引用発明における「確変状態」中に所定の演出態様が設定されることと、本件補正発明における構成Fの「有利状態が設定されている場合には、有利状態中における演出態様として少なくとも、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能であり、有利状態中において第一の演出態様から第二の演出態様へ変更可能であ」ることとは、「有利状態が設定されている場合には、有利状態中における所定の演出態様を設定可能であ」ることで共通する。

(g)
引用発明は、構成e2、f’、g’を備えることで、「確変状態」において、「ボタン予告」と「ミニキャラ予告」とを実行可能なものである。
そうすると、上記(f)より、引用発明の構成e2、f’、g’と、本件補正発明の構成Gの「有利状態中における演出態様が第一の演出態様である場合と第二の演出態様である場合とで、第一の予告演出および第二の予告演出を少なくとも発生可能であり、第一の演出態様である場合における第一の予告演出および第二の予告演出の発生頻度と第二の演出態様である場合における第一の予告演出および第二の予告演出の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されて」いることとは、「有利状態中における所定の演出態様において、第一の予告演出および第二の予告演出を少なくとも発生可能であ」ることで共通する。

(h)
引用発明における構成hの「ミニキャラ予告が、ボタン予告よりも演出表示装置9の中央から離れた表示領域を用いて実行される」ことは、本件補正発明における構成Hの「第一の予告演出よりも第二の予告演出の方が、予告演出が表示される演出表示部の中央から離れた位置で表示される」ことに相当する。
したがって、引用発明における構成hは、本件補正発明における構成Hに相当する。

上記(a、i)?(h)によれば、本件補正発明と引用発明は、
「A 識別情報を変動表示させる識別情報表示手段を備え、前記識別情報が特定態様で表示されることに基づいて、可変入球口が入球可能状態となる特定遊技を実行する遊技機において、
B 前記識別情報が前記特定態様で表示される可能性を示唆する予告演出を発生させる演出発生手段と、
C 遊技状態を設定する遊技状態設定手段と、
を備え、
D 前記遊技状態設定手段は、前記遊技状態として少なくとも、通常状態と、前記通常状態より遊技者にとって有利な有利状態とを設定可能であり、
E 前記演出発生手段は、
E1 前記予告演出として少なくとも、第一の予告演出と、前記第一の予告演出と比較して遊技者に認知し難い第二の予告演出とを、発生可能であり、
E2 前記第一の予告演出および前記第二の予告演出のうち少なくとも一方について、前記通常状態が設定されている場合と前記有利状態が設定されている場合とで異なる発生頻度で予告演出を発生させ、
F’ 前記有利状態が設定されている場合には、有利状態中における所定の演出態様を設定可能であり、
G’ 有利状態中における所定の演出態様において、前記第一の予告演出および前記第二の予告演出を少なくとも発生可能であり、
H 前記第一の予告演出よりも前記第二の予告演出の方が、前記予告演出が表示される演出表示部の中央から離れた位置で表示されるよう構成されている
I 遊技機。」の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点」(構成F?G)
有利状態中における所定の演出態様に関して、
本件補正発明は、少なくとも、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能であり、第一の演出態様から第二の演出態様へ変更可能であるとともに、所定の演出態様が第一の演出態様である場合と第二の演出態様である場合とで、第一の予告演出および第二の予告演出を少なくとも発生可能であり、第一の演出態様である場合における第一の予告演出および第二の予告演出の発生頻度と第二の演出態様である場合における第一の予告演出および第二の予告演出の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されているのに対して、
引用発明は、有利状態中における演出態様として、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能であることが特定されていないため、本件補正発明の構成F?Gを備えていない点。

(5)当審判合議体の判断
ア 相違点について
上記相違点について検討する。
特許第5671177号公報には、遊技興趣の向上を図ることを目的とし(【0005】)、
高確率状態で設定され、予告演出を実行する態様がそれぞれ異なる3つの期間X,期間Y,期間Zを有する特別モードにおいて、専用の背景として期間X、Yでは第1の背景を用い、期間Zでは第2の背景を用いるパチンコ機10において(【0017】、【0049】、【0052】、【0060】)、
特別モード期間Z指定コマンドに基づいて特別モードにおける演出表示装置34の背景画面を第1の背景から第2の背景に切り替え(【0060】?【0062】)、
期間X?Zのいずれにおいても、三つの予告種A,B,Cを実行可能であり(【0101】)、
期間Zの外れ時では、期間X,Yの外れ時に比べて、三つの予告種A,B,Cから一つを選択した予告演出への予告演出決定用乱数の振り分けを少なくし、予告種A,B,Cから二つ選択して組み合わせた予告演出や三つ選択して組み合わせた予告演出への予告演出決定用乱数の振り分けを多くする(【0101】、【図38】)ことが記載されている。

【図38】



また、特開2011-240037号公報には、「所定の潜伏条件が成立した後における遊技の興趣を向上させて、遊技状態が特別遊技状態であることに対する遊技者の期待感を高めることができる遊技機を提供する」(【0011】)ことを目的とし、
確変状態が継続する期間を、確変大当りBの種別により決定される使用テーブル変更始動回数となる前の期間(期間1)と、使用テーブル変更始動回数後から変動回数が確変終了回数である78回となるまでの期間(期間2)とに分け(【0518】、【0521】、【0525】)たパチンコ遊技機1(【0020】)において、
「期間1では夜モードに非常に移行し易いモード変化決定用テーブルAが使用され、期間2ではモード変化決定用テーブルAに比較して転落が決定され易いモード変化決定用テーブルBが使用されるので、使用テーブル変更始動回数を境界としてモード変化状況が変化」(【0527】、【図55】)し、「予告演出においては、期間1においてはキャラクタCが決定され易く、期間2においてはキャラクタBが決定され易いので、予告演出において多く出現するキャラクタが使用テーブル変更始動回数を境界として変化」(【0528】、【図55】)することが示されている。

【図55】


すると、高確率状態(確変状態)において、演出の異なる少なくとも2つの期間が設定され(故に、期間の境界で演出が変わることになる。)、2つの期間で少なくとも2種類の予告演出が可能であって、それぞれの期間における2種類の予告演出の割り振りが互いに異なるように設定されること(以下「周知の技術事項」という。)が、本願出願前に周知であるといえる。
そして、周知の技術事項の「高確率状態(確変状態)」が、本件補正発明の「有利状態」に、周知の技術事項の「2つの期間」の「異なる」「演出」が、本件補正発明の「第一の演出態様」および「第二の演出態様」に、周知の技術事項の「2種類の予告演出」が、本件補正発明の「第一の予告演出」および「第二の予告演出」に、それぞれ相当するから、周知の技術事項は、本件補正発明の構成FおよびGに相当すると認められる。

ここで、引用発明と上記周知の技術事項とは、確変状態において予告演出を行う遊技機である点で共通するとともに、遊技の興趣を向上させるという共通の課題を解決するものであるから、引用発明における予告演出を伴う確変状態に上記周知の技術事項を適用して、確変状態中における演出態様として、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能とし、かつ、第一の演出態様である場合と、第二の演出態様である場合とで、ボタン予告とミニキャラ予告の選択割合を異ならせ、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

イ 効果について
本件補正発明により奏される効果は、当業者が、引用発明、および、上記周知の技術事項から予測し得た効果の範囲内のものであって、格別なものではない。

ウ 小括
よって、本件補正発明は、引用発明、および、上記周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(6)まとめ
上記(1)?(5)より、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年4月23日付け手続補正書の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。
「A 識別情報を変動表示させる識別情報表示手段を備え、前記識別情報が特定態様で表示されることに基づいて、可変入球口が入球可能状態となる特定遊技を実行する遊技機において、
B 前記識別情報が前記特定態様で表示される可能性を示唆する予告演出を発生させる演出発生手段と、
C 遊技状態を設定する遊技状態設定手段と、
を備え、
D 前記遊技状態設定手段は、前記遊技状態として少なくとも、通常状態と、前記通常状態より遊技者にとって有利な有利状態とを設定可能であり、
E 前記演出発生手段は、
E1 前記予告演出として少なくとも、第一の予告演出と、前記第一の予告演出と比較して遊技者に認知し難い第二の予告演出とを、発生可能であり、
E2 前記第一の予告演出および前記第二の予告演出のうち少なくとも一方について、前記通常状態が設定されている場合と前記有利状態が設定されている場合とで異なる発生頻度で予告演出を発生させ、
F 前記有利状態が設定されている場合には、有利状態中における演出態様として少なくとも、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能であり、有利状態中において前記第一の演出態様から前記第二の演出態様へ変更可能であり、
G’有利状態中における演出態様が前記第一の演出態様である場合と前記第二の演出態様である場合とで、前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の少なくとも一方の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されており、
H 前記第一の予告演出よりも前記第二の予告演出の方が、前記予告演出が表示される演出表示部の中央から離れた位置で表示されるよう構成されている
I ことを特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由
(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2009-261722号公報
2.特開2013-94478号公報

3 引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された引用文献1の記載事項、および、引用発明の認定については、前記「第2[理由] 2 2-2(2)引用文献1」に記載したとおりである。
そして、同じく、原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2013-94478号公報(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審判合議体にて付した。以下同じ。)。
(1)記載事項
ア 「【発明が解決しようとする課題】
・・・
【0005】
しかしながら、これでは遊技モードを跨ぐような予告演出を行うことができず、遊技モードの切り替え時期には必ず予告演出が途切れてしまうため、演出全体として流れの悪い印象を与え、十分な演出効果を得ることができないという問題があった。」

イ 「【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1?図12は本発明をパチンコ機に採用した一実施形態を例示している。図1において、遊技機本体1は、矩形状の外枠2と、この外枠2の前側に左右一側、例えば左側のヒンジ3により開閉自在に枢着された前枠4とを備えている。前枠4の前側には、ガラス扉5と前面板6とが上下に配置され、夫々ヒンジ3と同じ側のヒンジ7により前枠4に開閉自在に枢支されている。」

ウ 「【0039】
また、変動パターン選択テーブルは複数種類用意されており、例えば後述する確変遊技状態中(特別遊技期間の一例)は、所定の遊技モード変更パターンに従って変化する遊技モード毎に予め定められた変動パターン選択テーブルが用いられるようになっている。なお、確変遊技状態中以外については、常に同一の変動パターン選択テーブルを用いてもよいし、所定のタイミングで変動パターン選択テーブルを変更するようにしてもよい。例えば後述する時短遊技状態中についても、確変遊技状態中と同様、遊技モードの変更に応じて変動パターン選択テーブルを変更してもよい。
・・・
【0041】
また、その確変遊技状態中の遊技モードとして、図5に示すように「ST前半モード」、「ST中盤モード」、「ST後半モード」の3種類が設けられており、確変遊技状態が開始されてから特別図柄表示手段32が33回変動するまでの期間が「ST前半モード」、そこから特別図柄表示手段32が30回変動するまでの期間が「ST中盤モード」、更にそこから最後まで、即ち特別図柄表示手段32が7回変動するまでの期間が「ST後半モード」となっている。
【0042】
各遊技モードに対しては、例えば図3に示すような各1つの変動パターン選択テーブルが設定されており、それら各遊技モードに対応する3種類の変動パターン選択テーブルは、例えば各変動パターンの選択率の設定が異なるのはもちろん、選択対象となる変動パターンの種類も異なっていてもよい。」

エ 「【0066】
ここで、本実施形態では、確変遊技状態中に出現可能な予告演出として、図10に示すようにA?Eの5種類が設けられている。これら5種類の予告演出A?Eは、例えば何れも先読み判定手段68による先読み判定結果に基づく予告演出(遊技演出)であり、その先読み判定に係る保留記憶が図柄変動に供されるまでの例えば4回(所定上限回数)を限度とする1又は複数回の図柄変動にわたって実行されるいわゆる連続予告である点では共通するが、予告演出Aは例えば保留表示画像35の表示態様(色、形状等)を変化させるものであり、予告演出Bは例えば演出図柄の変動中に登場するキャラクターの表示態様を変化させるものであり、予告演出Cは例えば可動体を各種パターンで作動させるものである等、その演出の態様が夫々異なっている。
【0067】
また、これら5種類の予告演出A?Eは、各遊技モードにおける図柄演出と整合するか否か等により、遊技モード毎に出現可能なものと出現不可能なものとが予め分類されている。本実施形態では、図10に示すように、ST前半モードでは予告演出A?Cのみが、ST中盤モードでは予告演出A,C,Dのみが、ST後半モードでは予告演出A,D,Eのみが夫々出現可能であり、それら以外は出現不可能となっている。即ち、ST前半モードとST中盤モードとの両方で出現可能な予告演出はA,Cのみであり、ST中盤モードとST後半モードとの両方で出現可能な予告演出はA,Dのみであり、全ての遊技モードで出現可能な予告演出はAのみとなっている。」

【図10】


(2)引用文献2に記載された技術事項
上記(1)の記載事項および図面の図示内容を総合すると、引用文献2には、次の技術事項(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されている(f?g’は、本願発明のF?G’に対応させて当審判合議体にて付与した。)。
「f 確変遊技状態中の遊技モードとして、確変遊技状態が開始されてから特別図柄表示手段32が33回変動するまでの期間に対応する「ST前半モード」と、「ST前半モード」から特別図柄表示手段32が30回変動するまでの期間に対応する「ST中盤モード」とが設けられ(【0041】)、
変動パターン選択テーブルとして、遊技モード毎に予め定められた、各変動パターンの選択率の設定が異なることに加え、選択対象となる変動パターンの種類も異なるテーブルを用い(【0039】、【0042】)、
g’ST前半モードでは予告演出A?Cのみが出現可能であり、ST中盤モードでは予告演出A,C,Dのみが出現可能である(【0067】)、
i パチンコ機(【0015】)。」

4 対比・判断
本願発明は、前記「第2[理由] 3(1)」で検討した本件補正発明の
「前記第一の予告演出および前記第二の予告演出」の「発生頻度」に関して、「有利状態中における演出態様が前記第一の演出態様である場合と前記第二の演出態様である場合とで、前記第一の予告演出および前記第二の予告演出を少なくとも発生可能であり、前記第一の演出態様である場合における前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の発生頻度と前記第二の演出態様である場合における前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されており」とあったものを「前記第一の予告演出および前記第二の予告演出」の「発生頻度」に関して、本件補正前に「有利状態中における演出態様が前記第一の演出態様である場合と前記第二の演出態様である場合とで、前記第一の予告演出および前記第二の予告演出の少なくとも一方の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されており」とその限定を省いたものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、本件補正発明と同様に、次の相違点1’において相違し、その余の点において一致する。

[相違点1’](構成F?G’)
本願発明は、有利状態が設定されている場合には、有利状態中における演出態様として少なくとも、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能であり、有利状態中において前記第一の演出態様から前記第二の演出態様へ変更可能であるとともに、有利状態中における演出態様が第一の演出態様である場合と第二の演出態様である場合とで、第一の予告演出および第二の予告演出の少なくとも一方の発生頻度を互いに異ならせるよう構成されているのに対して、
引用発明は、有利状態中における演出態様として、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能であることが特定されていないため、本願発明の構成F?G’を備えていない点。

そこで、上記相違点1’について検討する。
まず、本願発明の構成Fと引用文献2に記載された技術事項の構成fとを対比する。
引用文献2に記載された技術事項の「確変遊技状態中」は、本願発明における「有利状態が設定されている場合」に相当する。
そして、引用文献2に記載された技術事項の「確変遊技状態が開始されてから特別図柄表示手段32が33回変動するまでの期間に対応する「ST前半モード」」は、「遊技モード毎に予め定められた、各変動パターンの選択率の設定が異なるのに加え、選択対象となる変動パターンの種類も異なっている変動パターン選択テーブルが用いられ」ることからみて、実行される演出態様が、「「ST前半モード」から特別図柄表示手段32が30回変動するまでの期間に対応する「ST中盤モード」」において実行される演出態様と異なるものであるから、引用文献2に記載された技術事項の「ST前半モード」、「ST中盤モード」は、それぞれ、本願発明の「第一の演出態様」、「第二の演出態様」に相当する。
また、引用文献2に記載された技術事項において、「特別図柄表示手段32」の「確変遊技状態が開始されてから」の33回目の変動が終了して、34回目の変動に切り替わるタイミングで、演出モードは、「ST前半モード」から「ST中盤モード」へと切り替わるものであるから、引用文献2に記載された技術事項は、本願発明の「有利状態中において第一の演出態様から第二の演出態様へ変更可能であ」ることに相当する構成を備えるものである。
したがって、引用文献2に記載された技術事項の構成fは、本願発明における構成Fに相当する。

次に、本願発明の構成G’と引用文献2に記載された技術事項の構成g’とを対比する。
引用文献2に記載された技術事項において、予告演出Bは、ST前半モードで出現可能であるが、ST中盤モードで出現不可能であり、また、予告演出Dは、ST前半モードで出現不可能であるが、ST中盤モードで出現可能である。
そうすると、引用文献2に記載された技術事項において、予告演出Bと予告演出Dとに着目した場合、予告演出Bと予告演出Dは、ST前半モーとST中盤モードとで、その出現率が異なるといえる。
したがって、引用文献2に記載された技術事項の構成g’は、本願発明における構成G’に相当する。

そして、引用発明と引用文献2に記載された技術事項とは、確変状態において予告演出を行う遊技機である点で共通するとともに、演出効果を向上させるという共通の課題を解決するものである。
したがって、引用発明における確変状態のときに実行される予告演出に引用文献2に記載された技術事項を適用して、確変状態中における演出態様として、第一の演出態様と、第二の演出態様とを設定可能とし、かつ、第一の演出態様である場合と、第二の演出態様である場合とで、ボタン予告とミニキャラ予告の選択割合を異ならせ、上記相違点1’に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。

5 むすび
上記1?4より、本願発明は、特許法第29条第2項の規定に基づいて特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-02-27 
結審通知日 2020-03-03 
審決日 2020-03-17 
出願番号 特願2015-180900(P2015-180900)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 手塚 毅  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 蔵野 いづみ
長崎 洋一
発明の名称 遊技機  
代理人 伊藤 温  

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