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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61K
管理番号 1362062
審判番号 不服2018-6251  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-08 
確定日 2020-05-19 
事件の表示 特願2016-81874「コルチコステロイド組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月8日出願公開、特開2016-164185、請求項の数(16)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、2008年11月12日(パリ条約による優先権主張 2007年11月13日 米国(US) 2007年12月6日 米国(US) 2007年12月21日 米国(US) 2008年1月8日 米国(US) 2008年3月7日 米国(US) 2008年3月10日 米国(US) 2008年5月16日 米国(US) 2008年5月16日 米国(US) 2008年5月16日 米国(US) 2008年5月16日 米国(US) 2008年5月16日 米国(US) 2008年8月20日 米国(US))を国際出願日とする特願2010-533128号の一部を、平成25年11月21日に新たな特許出願とした特願2013-240729号の一部を、平成28年4月15日にさらに新たな特許出願としたものであって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 5月12日 :手続補正書及び上申書の提出
平成29年 1月19日付け :拒絶理由通知
平成29年 7月31日 :意見書及び手続補正書の提出
平成29年12月20日付け :拒絶査定
平成30年 5月 8日 :審判請求書及び手続補正書の提出
平成30年 6月20日 :手続補正書(方式)及び
手続補足書の提出
平成30年 9月12日付け :前置報告書
令和 1年 7月30日付け :拒絶理由通知
令和 1年12月 6日 :意見書、手続補正書及び
手続補足書の提出
令和 2年 2月27日付け :拒絶理由通知
令和 2年 3月 6日 :意見書及び手続補正書の提出

第2 本願発明

本願請求項1?16に係る発明(以下、それぞれ請求項の順に「本願発明1」?「本願発明16」という。)は、令和2年3月6日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
食道炎もしくはこれに付随する症状を治療または予防するための医薬の製造における、経口投与用の液体医薬組成物の使用であって、
前記医薬組成物は、
a.治療有効量のコルチコステロイド、
b.0.1?25mg/mLの酸化防止剤、
c.0.1?30mg/mLの緩衝剤、
d.0.01?1.5mg/mLの界面活性剤、
e.防腐剤、着香剤、甘味料、又はこれらの組み合わせ、
f.食道表面と当該医薬組成物との相互作用を高める少なくとも1つの追加賦形剤であって、約10mg/mL?約1g/mLの量のマルトデキストリンと、組成物中に約5mg/mL?約100mg/mLの量で存在する、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、カルボキシメチル-セルロース(CMC)、微晶質セルロース(MCC)、及びカルボマーの少なくとも1つ並びにこれらの組み合わせと、であり、
g.0?500mg/mLのデキストロース、及び、
h.水性液状ビヒクル
を含有し、1mL?20mLの量の単回投与又は反復投与で投与され、前記医薬組成物は、13.2sec^(-1)の剪断速度で少なくとも35cPの粘度をもつ、使用。
【請求項2】
前記医薬組成物は、
a.治療有効量のコルチコステロイド、
b.0.1?25mg/mLの前記酸化防止剤としてのエデト酸塩、
c.0.1?30mg/mLの前記緩衝剤としてのクエン酸塩、
d.0.01?1.5mg/mLの前記界面活性剤としてのポリソルベート80、
e.防腐剤、着香剤、甘味料、又はこれらの組み合わせ、
f.前記追加賦形剤としての、約10mg/mL?約1g/mLの量のマルトデキストリンと、CMC及びMCCの組み合わせと、であって、前記CMC及びMCCの組み合わせは、約10mg/mL?約40mg/mLの量で存在し、CMC/MCCの重量混合比が11/89であり、並びに、
g.0?500mg/mLのデキストロース、及び、
h.前記水性液状ビヒクルとしての水
を含有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記医薬が、好酸球性食道炎又は胃食道逆流性疾患に関する食道炎を治療するためのものである、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
前記医薬が少なくとも一日間の保存後にも変わらず実質的に均一である、請求項1?3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記医薬が反復投与製剤である、請求項1?4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記コルチコステロイドが、ブデソニド、フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、シクレソニド、トリアムシノロン、ベクロメタゾン及びこれらの薬学的に許容可能なエステル、並びにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
前記医薬組成物は、1日当たり0.1mg?20mgのコルチコステロイドを含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記医薬は、以前に好酸球性食道炎の治療を受けていない個人へ、3日?16週間経口投与される、請求項1?7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記医薬は、以前に好酸球性食道炎の治療を受けている個人へ、16週間?1年まで経口投与される、請求項1?7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記個人が12歳未満の小児又は乳児である、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
前記個人が16歳未満の小児又は乳児である、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項12】
前記個人が成人である、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬組成物は更に、治療有効量の少なくとも1つの追加有効成分を含む、請求項1?12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記追加有効成分が第二のコルチコステロイドである、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記追加有効成分が第二のコルチコステロイドでない、請求項13に記載の使用。
【請求項16】
前記追加有効成分が、制酸薬、プロトンポンプ阻害薬(PPI)、ヒスタミン受容体リガンド、一過性下部食道括約筋弛緩(TLESR)抑制薬、運動促進セロトニン作動薬、カリウム競合型酸遮断薬(P-CAB)、粘膜保護剤、抗ガストリン薬、ロイコトリエン拮抗薬、肥満細胞阻害薬、肥満細胞安定剤、免疫調節剤、生物学的製剤、抗喘息薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、化学療法剤、mGluR5拮抗薬、アセチルコリン調節剤、5HT4受容体作動薬、5HT3受容体拮抗薬、5HT1受容体拮抗薬、及び抗生物質、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13?15のいずれか一項に記載の使用。」

第3 当審拒絶理由の概要等

1 令和1年7月30日付けの拒絶理由通知書による拒絶の理由

(1)特許法第36条第6項第2号について

当審では、令和1年7月30日付けの拒絶理由通知書により、平成30年5月8日提出の手続補正書により補正された請求項8及び9には、「請求項1?7のいずれか一項に記載の方法。」と記載されているが、引用する請求項には「方法」との記載は存在しないため、請求項8及び9に記載された「請求項1?7のいずれか一項に記載の方法。」が示すものが明確でない、との拒絶の理由(当審拒絶理由1)を通知した。

(2)特許法第29条第2項について

当審では、令和1年7月30日付けの拒絶理由通知書により、平成30年5月8日提出の手続補正書により補正された請求項1?16に係る発明は、以下の引用文献2に記載された発明及び以下の引用文献2?4、5’に記載された技術事項に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、との拒絶の理由(当審拒絶理由2)を通知した。

<引用文献>
2.米国特許出願公開第2007/0111978号明細書
3.パルミコート吸入液添付文書、2007.06
4.J. Agric. Food Chem. (2004) Vol.52 No.14、pp.4375-4378
5’.米国特許出願公開第2007/202054号明細書

2 令和2年2月27日付けの拒絶理由通知書による拒絶の理由

当審では、令和2年2月27日付けの拒絶理由通知書により、令和1年12月6日提出の手続補正書により補正された請求項2における項目a.?f.の記載について、請求項1における項目a.?h.の記載との関係が不明瞭であり、また、請求項10?12における「前記個人」との記載及び請求項14?16における「前記追加有効成分」との記載について、各請求項が当該記載の存在しない請求項を引用しているため不明瞭となっており、請求項2?5、7?16に記載された発明は、明確でない、との拒絶の理由(当審拒絶理由3)を通知した。

3 当審拒絶理由1及び3についての判断

上記1の拒絶の理由の通知に対して、令和1年12月6日提出の手続補正書による補正により、請求項8及び9の上記記載を「請求項1?7のいずれか一項に記載の使用。」と補正した結果、当審拒絶理由1は解消した。また、上記2の拒絶の理由の通知に対して、令和2年3月6日提出の手続補正書による補正により、請求項2におけるa.?h.に関する記載及び請求項10?12、14?16における引用請求項の番号を補正した結果、当審拒絶理由3は解消した。

第4 原査定の拒絶理由の概要等

1 原査定(平成29年12月20日付け拒絶査定)の拒絶の理由

原査定の拒絶理由の対象は、平成29年7月31日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された請求項1?16に係る発明である。

(原査定理由1)本願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(原査定理由3)請求項1?16に係る発明は、以下の引用文献1又は2に記載された発明及び以下の引用文献1?6、8、9に記載された技術事項に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献>
1.Am. J. Gastroenterol.,2007年6月,Vol.102 No.10,pp.2271-2279
2.米国特許出願公開第2007/111978号明細書
3.パルミコート吸入液添付文書,アストラゼネカ株式会社,2007年6月(周知技術を示す文献)
4.J. Agric. Food Chem.,2004年,Vol.52 No.14,pp.4375-4378(周知技術を示す文献)
5.特表2002-519318号公報(周知技術を示す文献)
6.特表2001-523638号公報(周知技術を示す文献)
8.国際公開第1998/050005号(新たに通知する文献)
9.米国特許第4372861号明細書(新たに通知する文献)

2 原査定理由1についての判断

平成30年5月8日提出の手続補正書による補正により、請求項1及び2から「局所活性」との記載を削除した結果、原査定理由1は解消した。


以下では、当審拒絶理由2及び原査定理由3に対する判断をまとめて示す。

第5 引用文献、引用発明等

1 引用文献2

(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、以下の事項が記載されている(当審による訳文にて示す。)。

ア「胃腸管の炎症性疾患の治療のための粘性ブデソニド
・・・。
発明の分野
[0002]本発明は、食道に関係する炎症性疾患に伴う炎症を予防又は軽減するための方法及び薬学的組成物に概ね関するものである。
従来の技術
[0003]好酸球性食道炎(EE)は、食道における高量の好酸球及び基底細胞過形成を特徴とする急拡大中の疾患である。EEは、少なくとも一部の患者では、食物アレルギー又は大気アレルゲンへの暴露によって引き起こされると考えられている・・・。
[0004]EEは、開発途上国(7, 8, 13-16)全体で、より多く診断されつつあるが、疾患の多くの様相は、その病因、全体像及び最適療法を含め未だ不明である。・・・
[0005]長期の全身ステロイド療法は、成長及び骨の発育に対して著しい副作用をもたらし得るため、局所用のステロイド製剤が、EE、場合によっては食道に関する他の炎症性胃腸疾患及び症状を、治療するためにしばしば使用される。抗IL-5モノクローナル抗体治療がEEにおいて奏功したことが報告されているものの、この療法は、現在子供への使用が認可されていない・・・。
[0006]現行の治療法としては、除去食(22,23)及び消化態栄養剤(2, 24)が挙げられる。真の誘発性食物アレルゲンの同定は困難であり得、消化態栄養剤が口に合わないことが多く、そのため食事治療介入が困難となる(1, 22)。定量噴霧式吸入器(MDI)を介して投与されたプロピオン酸フルチカゾン(FloventTM)のような、全身性コルチコステロイド及び嚥下局所ステロイドは、食道好酸球レベルを下げて維持することが示されている(25-30)。例えば、1つの方法であるフルチカゾン定量噴霧式吸入器(MDI)では、中咽頭へ吹き付けられ飲み込まれる・・・。この吹付飲み込み法は、患者、特に小児、とりわけ発達遅延児、にとって困難であることが多い。・・・。
・・・。
[0008]ブデソニド、16,17-(ブチリデンビス(オキシ))-11,21-ジヒドロキシ-(11-β,16-α)-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオンは、喘息又は鼻炎のような炎症性疾患又は症状を治療するための吸入剤として、又は、クローン病のような他の炎症性の下部胃腸疾患又は症状を治療するための他の剤形(例えば、経口送達又は浣腸)として、使用されることがあるコルチコステロイドである。
[0009]食道に関する炎症性の疾患及び症状を予防又は軽減するための新規な方法が必要とされている。液剤かつ長時間作用型の局所投与用コルチコステロイド製剤が必要とされている。」

イ「 概要
[0010]ここでは、ステロイド療法に反応する、食道に関する任意の慢性炎症又は悪性症状を予防及び軽減するための方法が提供される。本発明の方法は、例えば、好酸球性食道炎の症状及び炎症、食道に関する炎症性腸疾患、・・・の予防及び軽減のために有用である。・・・。また、ここでは、本出願の方法において有用な医薬組成物が提供される。
[0011]したがって、一実施形態では、上記組成物の粘度を増加させる少なくとも1つの賦形剤を伴うコルチコステロイドの個体への経口投与を含む、個体における食道炎症を予防又は軽減する方法が提供される。ある実施形態においては、組成物の粘度は、おおよそ、4mlの水に対して約5?10gのスクラロース、又は4mlの水に対して約10?12gのスクラロースを添加して調製された懸濁液の粘度であり、その粘度は25℃で測定されるものである。・・・。
[0012]本発明の方法は、任意の年齢の、哺乳動物、例えばヒトの食道の炎症を予防又は軽減するために使用され得るが、特定の例において、個体は、小児、例えば、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1歳未満の小児である。
[0013]また、本発明において提供される医薬組成物は、コルチコステロイド、例えば局所投与用コルチコステロイド、例えばブデソニド、と増粘性賦形剤を含むものである。・・・。
[0014]上記賦形剤は、例えば、ラクトース、スクロース、スクラロース、マンニトール、ソルビトール、蜂蜜、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチル-セルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)からなる群から選択されてもよい。・・・。特定の例示的な実施例では、賦形剤は、スクラロースである。」

ウ「[0021]ブデソニドを経口剤形で、増大した流体粘度となる処方で投与することにより、当該コルチコステロイドが食道の炎症を減少させるのに有効な量で食道に送達されたことが見出された。40人以上の患者の治療において、この治療は、食道の炎症を標的とするのに有効であることが見出された。共に小児である、特定の2人の患者における例が、実施例1及び2として示される。ブデソニドの粘性経口懸濁液は、吹付飲み込み法における定量吸入器を使うことができない2人の患者において、症状を改善し、内視鏡下異常を解消し、食道好酸球を顕著に減少させるか又は排除した。この治療法は、吹付飲み込み法が最も困難な小児にとって特に有用であるが、本発明の方法は、任意の年齢の個体に使用することができる。「個体」とは、任意の動物、例えば哺乳動物、又は、例えばヒト(例えば治療を必要とする患者を含む)を意味する。
・・・。
[0030]本発明の懸濁液は、例えば、約5?25gのスクラロース・・・にブデソニドrespuleとして入手できるブデソニド4mlを加えて調製されるもの、・・・を含む。
[0031]・・・。治療有効量とは、治療前における症状の状態と比較して症状及び炎症を改善する程度のコルチコステロイドの量を指す。有効量を含有する剤形は、慣用の実験の範囲内のものであり、それゆえ本発明の範囲内である。しかしながら一般に、適切な用量は、約10?400μg/kg体重/日、例えば20?300μg/kg体重/日、30?200μg/kg体重/日、30?100μg/kg体重/日、35?100μg/kg体重/日、30?50μg/kg体重/日、40?100μg/kg体重/日又は40?60μg/kg体重/日であり、例示的な実施形態においては35?60μg/kg体重/日である。例示的な実施形態では、投与量は、組成物が有効な量で食道に到達することを可能にするのに十分な量として提供される。一般に、液体の投与量としては、例えば5?50ml、5?40ml、5?30ml、5?25ml又は10?25mlであり、実施例としては5?15mlである。当業者であれば、食道に治療有効量のコルチコステロイドを送達するのに十分な容量の適切な経口投与量を決定することができる。例えば、当業者は、食道を覆うのに十分な容量、例示的な実施形態では、食道下部を覆うのに十分な容量の、適切な経口投与量を決定することができる。組成物は、例えば、1日1回、1日おき、週3回又は2回投与することができる。投与量は、例えば、日内で複数回投与に分割してよく、すなわち、例えば1日4回、3回、2回又は1回投与されてよい。一つの例示的な実施例においては、1日1回で投与される。
・・・。
[0033]初回治療は、急性症状であれば例えば約3日?2週間、慢性症状であれば約4?16週間、又は約8?12週間、続けてもよい。また、例えば、持続性喘息の慢性治療のように、より長期間の治療が必要な場合がある。患者は、例えば、6ヶ月間まで、又は1年間までの間、治療されてもよい。・・・。
[0038]液剤には、液体組成物の粘度を増加させるような適切な賦形剤を添加することができる。適切な賦形剤は、例えば、液体組成物の味を提供するものも含むことができる。賦形剤は、例えば、乳糖、ショ糖、スクラロース、マンニトール又はソルビトールを含む糖;蜂蜜;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)ナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)のいずれかを含むことができる。」

エ「[0042]粘度
[0043]例えば本明細書に列挙するような賦形剤は、送達される組成物の粘度を増加させるために当該組成物に包含される。経口剤として液体の粘度が増加されてもよく、また錠剤が溶解した状態での粘度が賦形剤により増加されてもよい。当業者であれば、組成物の有効量、例えば食道を被覆しうるような量を食道へ送達するのに十分なレベルとなる粘度とすべきであると認識する。また、経口投与されるがゆえに、嚥下が困難とならず、吐き気、不快感を生じさせないレベルの粘度とされるべきである。当業者は、実施例中に提供される組成物の粘度を決定することができ、したがって適切な範囲を決定することができる。組成物が十分に粘性であるかどうかを決定する1つの方法は、コルチコステロイドによる治療後に食道における炎症又は好酸球浸潤が抑制されるか否かを調べることにより行われる。
[0044]粘度は、物質又は調製物の剪断抵抗を測定する任意の方法によって決定することができる。多くの粘度計が医薬分野での当業者にとって利用可能であり、例えば、ブルックフィールド粘度計が利用できる。
[0045]粘度は、例えば約20?25℃の室温で、又は約37℃の体温で測定される。液体の粘度は一般に、温度を上げることにより低下する。本発明のいくつかの実施形態では、粘度はおおよそ、25℃において、4mlの水に対して約5?25g、7?20g、5?15g、7?15g、8?12g又は10?11gのスクラロースを添加した際の粘度である。例示的な実施形態では、粘度はおおよそ、25℃において、4mlの水に対して10gのスクラロースを添加した際の粘度である。他の実施形態では、粘度はおおよそ、25℃において、8ml総液量に対して5?20gのスクラロースを添加した際の粘度である。他の実施形態では、粘度はおおよそ、室温において、8ml総液量に対して5?15gのスクラロースを添加した際の粘度である。他の実施形態では、粘度はおおよそ、25℃において、8ml総液量に対して8?12gのスクラロースを添加した際の粘度である。いくつかの実施形態では、粘度はおおよそ、25℃において測定される、果実蜜と市販の蜂蜜の間の粘度である。」

オ「 実施例3
複数患者の後方視的レビュー
[0048]この実施例は、EEを伴う小児における疾患活性の減少の誘導及び維持について、1日1回の粘性ブデソニドの経口投与(OVB)の有効性及び安全性を詳述する。この試験の結果は、20人の子供(平均年齢5.5歳)において、平均最大好酸球数は治療前で87eos/hpf(30?170の範囲)、治療後で7eos/hpf(0?50の範囲、p<0.0001)であったことを示す。16人(80%)に反応が見られ、1人は部分的に反応が見られ、3人には反応が見られなかった。平均症状スコアは4.4から0.8まで低下し(p<0.0001)、平均内視鏡スコアは3.6から0.8まで低下した(p<0.0001)。重大な副作用は報告されなかった。朝のコルチゾールレベルは正常範囲内であった。
方法。
・・・
[0053]治療。患者は、0.5?2mgのOVBを日毎に投与されるとともに、その後30分間は任意の固体又は液体を摂取しないように指示された。粘性ブデソニドは、各0.5mgであるPulmicort^(TM) respuleと、5g(5包)のスクラロース(Splenda^(TM))を混合して、8?12mlの容量として作製された。Pulmicort respule^(TM)は、噴霧投与用のブデソニド液剤である(0.5mg ブデソニド/2ml)。既に食事制限を受けている患者においては、食事の変更を行わなかった。全ての患者は、同時に酸抑制療法を受けた。
・・・
結果。
[0056]被験者。チャートレビューは、平均5.5歳(範囲:1.7?17.6歳)の小児で行った。15人が白人、2人がヒスパニック、2人がアジア人、及び1人がアフリカ系アメリカ人であった。3人は発育遅延(脳性麻痺1人、自閉症1人及びレット症候群1人)を有し、1人は軽度のIgG欠損症(321mg/dl、対照範囲423?1090mg/dl)であった。いずれも、H.ピロリ感染を有さなかった。14人の小児が喘息、湿疹、及び/又はアレルギー性鼻炎を有し、16人は陽性皮膚試験及び/又はRAST試験において、食品に対し感作を示した(表1)。OVBに先立ち、6人の小児は、食事制限(3人は消化態栄養剤を用いた)を、5人はフルチカゾンプロピオネートの局所投与を、及び5人はプロトンポンプ阻害剤(PPI)療法を受けた。追加の5人の小児は、フルチカゾンプロピオネート又は食事制限のいずれかとともに、PPI療法を受けた。以前に治療を受けた全ての子供が、OVB治療開始前に、複数回の食道生検において、>24eos/hpfを示していた。[表1]。
・・・
[0058]治療。患者は複数回の内視鏡検査前に平均3.6ヶ月のOVBを投与された。15人の患者が1mg/日で、4人が2mg/日で、1人が意図せずに0.5mg/日でOVBを投与された([表1])。・・・。
[0059]組織学。治療前は、全患者及び全部位に対する平均最大好酸球数は、87eos/hpf(95% CI 72-103)・・・であった。・・・。治療後は、全患者に対する平均最大好酸球数は、7eos/hpf(95% CI 1-13, p<0.0001)であった。・・・。
考察。
・・・。
[0067]これらのデータは、粘性ブデソニドの経口投与が、EEが見られた個体、例えば小児、またより幼い小児にとって有効かつ安全な治療法であることを示唆している。また、飲みやすく、その体積(8?12ml)により食道粘膜全体を覆うことができ、1日1回のみの投与でよい点において、他の治療法に勝る利点を有するであろう。・・・。」

カ「

」(表1)

キ「特許請求の範囲
1.組成物の粘度を増加させるために、少なくとも1つの賦形剤とともにコルチコステロイドを個体に経口投与することを特徴とする、個体における食道の炎症を予防又は軽減するための方法。
2.組成物の粘度は、おおよそ、約5g?約15gのスクラロースを4mlの水に添加することにより調製された懸濁液の粘度であって、当該粘度は25℃で測定されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
・・・
5.前記コルチコステロイドはブデソニドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
・・・
15.コルチコステロイドと増粘性賦形剤を含むことを特徴とする、経口医薬組成物。
・・・
23.前記賦形剤は、ラクトース、スクロース、スクラロース、マンニトール、ソルビトール、蜂蜜、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、ナトリウムカルボキシメチル-セルロース(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項15-17の医薬組成物。
・・・
25.前記賦形剤は、スクラロースであることを特徴とする、請求項15-17の医薬組成物。
・・・」(特許請求の範囲)

(2)上記(1)カの記載からみて、6、7、11及び16番の患者には2mgのブデソニドが投与され、うち6、7及び16番の患者の年齢は、各々5歳半、7歳4ヶ月及び10歳1ヶ月である。
また、上記(1)オの記載からみて、各患者には1日1回、8?12mlの粘性ブデソニドとして、ブデソニドが経口投与されており、その粘性ブデソニドは、各0.5mg ブデソニド/2mlであるPulmicort^(TM) respuleと、5g(5包)のスクラロース(Splenda^(TM))とを混合して、8?12mlとすることで調製されるから、2mg投与の際の粘性ブデソニドは、ブデソニド2mg相当(4単位)のPulmicort^(TM) respuleと、5gのSplenda^(TM)とを混合して、8?12mlに調製されたものといえる。そして、上記(1)オの記載によれば、この粘性ブデソニドは、経口投与された結果、「EE(好酸球性食道炎)を伴う小児における疾患活性の減少の誘導及び維持」という医薬的な効果を奏するものであるから、「好酸球性食道炎を伴う小児における疾患活性の減少の誘導及び維持」のための「医薬」の製造に使用されるものであるといえる。
加えて、上記(1)ウの「ブデソニドの粘性経口懸濁液」なる記載から、上記粘性ブデソニドは、「ブデソニドの粘性経口懸濁液」であるといえる。

したがって、引用文献2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「好酸球性食道炎を伴う5歳半、7歳4ヶ月又は10歳1ヶ月の小児における、疾患活性の減少を誘導及び維持するための医薬の製造における、ブデソニドの粘性経口懸濁液の使用であって、前記懸濁液は、ブデソニド2mg相当のPulmicort respule^(TM)(0.5mg ブデソニド/2ml)と、5gのスクラロース(Splenda^(TM))とを混合して、8?12mlとすることで製造され、8?12mlの量で1日1回経口投与されるものである、使用。」

2 引用文献1

引用文献1の記載事項(標題、要約、2272頁「治療」の項目及び表1を参照。)及び上記1(2)の説示も踏まえると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「好酸球性食道炎を伴う5歳半、7歳4ヶ月又は10歳1ヶ月の小児における、疾患活性の減少を誘導及び維持するための医薬の製造における、ブデソニドの粘性経口懸濁液の使用であって、前記懸濁液は、ブデソニド2mg相当のPulmicort respule^(TM)(0.5mg ブデソニド/2ml)と、5gのスクラロース(Splenda^(TM))とを混合して、8?12mlとすることで製造され、1日あたり8?12mlの量で経口投与されるものである、使用。」

第6 対比・判断

1 引用発明2に基づく進歩性の対比・判断

(1)本願発明1について

ア 対比

本願発明1と引用発明2とを対比する。

(ア)引用発明2における「好酸球性食道炎を伴う5歳半、7歳4ヶ月又は10歳1ヶ月の小児における、疾患活性の減少を誘導及び維持する」とは、疾患を治療し、治療後の再発をも防ぐことを意味すると解されるから、本願発明1における「食道炎もしくはこれに付随する症状を治療または予防する」に相当する。また、引用発明2における「ブデソニドの粘性経口懸濁液」は、本願発明1における「液体医薬組成物」に相当する。さらに、「ブデソニド」は「コルチコステロイド」の一種であり、引用発明2における「懸濁液」は実際に「好酸球性食道炎」の「疾患活性の減少を誘導及び維持」することが確認されたものであるから、引用発明2における「懸濁液」は、「コルチコステロイド」を「治療有効量」含有するといえる。加えて、引用発明2において、「8?12ml」の調製物が、同じく「8?12ml」、すなわちその全量で「1日1回」投与されるところ、このことは本願発明1における「8?12ml」の量の「単回投与」に相当するといえる。

(イ)「Pulmicort respule^(TM)(0.5mg ブデソニド/2ml)」とは、その名称、有効成分量及び体積からみて、本願優先日当時に市販されていた「Pulmicort^(R) Respules^(R)」であると解されるところ、「Pulmicort^(R) Respules^(R)」は、ブデソニドの他、エデト酸ナトリウム水和物、塩化ナトリウム、ポリソルベート80、無水クエン酸及びクエン酸ナトリウム水和物を含有する水性懸濁液である(拒絶査定で引用された引用文献3:「1.組成」の項を参照。)。

そして、本願明細書【0069】、【0070】、【0074】の記載から、エデト酸ナトリウム水和物、ポリソルベート80、及び無水クエン酸とクエン酸ナトリウム水和物との組合せは、各々本願発明1における「酸化防止剤」、「界面活性剤」及び「緩衝剤」に相当する。

(ウ)「スクラロース(Splenda^(TM))」の「Splenda^(TM)」は、スクラロースの他、マルトデキストリン及びデキストロースを含有し、デキストロースの含有量は85.3重量%であるから(拒絶査定で引用された引用文献4:p.4375右欄下から6?4行、p.4378左欄最下行?右欄7行を参照。)、「5gのスクラロース(Splenda^(R))」中には約4.27gのデキストロースが存在し、総容量「8?12ml」の下では、デキストロースの濃度は約356?534mg/mlとなるので、本願発明1における「0?500mg/ml」の範囲とは、約356?500mg/mlの範囲で重複する。
また、本願明細書【0076】の記載から、「Splenda^(TM)」に含まれるマルトデキストリンは、本願発明1における「食道表面と当該医薬組成物との相互作用を高める少なくとも1つの追加賦形剤」に相当する。
さらに、本願明細書【0079】の記載から、デキストロースは本願発明1における「甘味料」に相当するとともに、スクラロースやマルトデキストリンは「甘味料」として知られるものであるから(必要であれば、上記引用文献4や、国際公開第2005/60760号:[0014]、[0017]?[0018]を参照。)、それらも本願発明1における「甘味料」に相当する。

(エ)そうすると、本願発明1と引用発明2とは、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「食道炎もしくはこれに付随する症状を治療または予防するための医薬の製造における、経口投与用の液体医薬組成物の使用であって、
前記医薬組成物は、
a.治療有効量のコルチコステロイド
b.酸化防止剤
c.緩衝剤
d.界面活性剤
e.甘味料
f.食道表面と当該医薬組成物との相互作用を高める少なくとも1つの追加賦形剤であるマルトデキストリン
g.約356?500mg/mlのデキストロース、及び
h.水性液状ビヒクル
を含有し、8mL?12mLの量の単回投与で投与され、前記医薬組成物は粘度をもつ、使用。」

<相違点1>本願発明1では、上記一致点における成分b.、c.及びd.の濃度が、各々「0.1?25mg/mL」、「 0.1?30mg/mL」及び「0.01?1.5mg/mL」に特定されているのに対し、引用発明2では、これらの濃度が明記されない点。

<相違点2>本願発明1では、医薬組成物が「13.2sec^(-1)の剪断速度で少なくとも35cPの粘度をもつ」ことが特定されているのに対し、引用発明2における懸濁液は「粘性」であることは特定されるものの、「13.2sec^(-1)の剪断速度で少なくとも35cPの粘度をもつ」ことは特定されない点。

<相違点3>本願発明1では、追加賦形剤のマルトデキストリンの量が、「約10mg/mL?約1g/mL」であり、また、追加賦形剤が、「組成物中に約5mg/mL?約100mg/mLの量で存在する、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、カルボキシメチル-セルロース(CMC)、微晶質セルロース(MCC)、及びカルボマーの少なくとも1つ並びにこれらの組み合わせ」であることが特定されているのに対し、引用発明2では、マルトデキストリンの量が特定されず、また、「組成物中に約5mg/mL?約100mg/mLの量で存在する、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、カルボキシメチル-セルロース(CMC)、微晶質セルロース(MCC)、及びカルボマーの少なくとも1つ並びにこれらの組み合わせ」について特定されない点。

イ 相違点についての判断

事案に鑑み、相違点3から検討する。
引用文献2の[0014]、[0038]及び請求項23には、粘度を増加させる賦形剤として、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムが記載されているものの、実施例としてその効果を確認された賦形剤としての記載はなく、その含有量については形式的にも記載はされていない。また、引用発明2に含まれるマルトデキストリンは、「スクラロース(Splenda^(TM))」中の一成分として含まれるものであって、引用文献2には、マルトデキストリンを粘度を増加させる賦形剤として含有させる旨の記載はない。
また、当審拒絶理由2において引用された引用文献3?4、5’を参照しても、食道表面と医薬組成物との相互作用を高める追加賦形剤としての、約10mg/mL?約1g/mLの量のマルトデキストリンと、約5mg/mL?約100mg/mLの量で存在する、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチル-セルロース、微晶質セルロース及びカルボマーと、については記載も示唆もされていない。
加えて、原査定理由3において引用された引用文献1、引用文献6(特に【0039】?【0040】を参照。)、引用文献8?9を検討しても、同様に、食道表面と医薬組成物との相互作用を高める追加賦形剤としての、約10mg/mL?約1g/mLの量のマルトデキストリンと、約5mg/mL?約100mg/mLの量で存在する、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチル-セルロース、微晶質セルロース及びカルボマーと、については記載も示唆もされていない。
そうしてみると、引用発明2において、食道表面と医薬組成物との相互作用を高める追加賦形剤として、マルトデキストリンの量を、「約10mg/mL?約1g/mL」とし、かつ、「ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、カルボキシメチル-セルロース(CMC)、微晶質セルロース(MCC)、及びカルボマーの少なくとも1つ並びにこれらの組み合わせ」を「約5mg/mL?約100mg/mL」の量で含有させることは、当業者が容易になし得たことということはできない。

一方、本願明細書の実施例においては、本願発明1の液体医薬組成物が食道炎を治療するために有用であったことが裏付けられている。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明2及び引用文献1?6、8?9、5’に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2?16について

本願発明2?16は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらにそれらを限定したものであるから、前記(1)イと同じ理由により、当業者であっても、引用発明2及び引用文献1?6、8?9、5’に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 引用発明1に基づく進歩性の対比・判断

(1)本願発明1について

ア 対比

上記1(1)アにおける対比も踏まえ、本願発明1と引用発明1とを対比すると、以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
「食道炎もしくはこれに付随する症状を治療または予防するための医薬の製造における、経口投与用の液体医薬組成物の使用であって、
前記医薬組成物は、
a.治療有効量のコルチコステロイド
b.酸化防止剤
c.緩衝剤
d.界面活性剤
e.甘味料
f.食道表面と当該医薬組成物との相互作用を高める少なくとも1つの追加賦形剤であるマルトデキストリン
g.約356?500mg/mlのデキストロース、及び
h.水性液状ビヒクル
を含有し、8mL?12mLの量で投与され、前記医薬組成物は粘度をもつ、使用。」

<相違点1>本願発明1では、上記一致点における成分b.、c.及びd.の濃度が、各々「0.1?25mg/mL」、「 0.1?30mg/mL」及び「0.01?1.5mg/mL」に特定されているのに対し、引用発明2では、これらの濃度が特定されていない点。

<相違点2>本願発明1では、医薬組成物が「13.2sec^(-1)の剪断速度で少なくとも35cPの粘度をもつ」ことが特定されているのに対し、引用発明2における懸濁液は「粘性」であることは特定されるものの、「13.2sec^(-1)の剪断速度で少なくとも35cPの粘度をもつ」ことは特定されていない点。

<相違点3>本願発明1では、追加賦形剤のマルトデキストリンの量が、「約10mg/mL?約1g/mL」であり、また、追加賦形剤が、「組成物中に約5mg/mL?約100mg/mLの量で存在する、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、カルボキシメチル-セルロース(CMC)、微晶質セルロース(MCC)、及びカルボマーの少なくとも1つ並びにこれらの組み合わせ」であることが特定されているのに対し、引用発明2では、マルトデキストリンの量が特定されず、また、上記の追加賦形剤の物質やその量について特定されない点。

<相違点4>本願発明1では、医薬組成物が、「単回投与又は反復投与で投与され」るのに対し、引用発明1では、一日あたりの投与回数について特定されない点。

イ 相違点についての判断

事案に鑑み、上記相違点3から検討する。
引用発明1に含まれるマルトデキストリンは、「スクラロース(Splenda^(TM))」中の一成分として含まれるものであって、引用文献1には、マルトデキストリンを粘度を増加させる賦形剤として含有させる旨の記載はなく、また、引用文献1には、粘度を増加させる賦形剤としての「ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、カルボキシメチル-セルロース(CMC)、微晶質セルロース(MCC)、及びカルボマー」に関する記載もない。
また、原査定理由3において引用された引用文献2?5、引用文献6(特に【0039】?【0040】を参照。)、引用文献8?9を参照しても、食道表面と医薬組成物との相互作用を高める追加賦形剤としての、約10mg/mL?約1g/mLの量のマルトデキストリンと、約5mg/mL?約100mg/mLの量で存在する、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチル-セルロース、微晶質セルロース及びカルボマーと、については記載も示唆もされていない。
加えて、当審拒絶理由2において引用された引用文献5’を検討しても、同様に、食道表面と医薬組成物との相互作用を高める追加賦形剤としての、約10mg/mL?約1g/mLの量のマルトデキストリンと、約5mg/mL?約100mg/mLの量で存在する、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチル-セルロース、微晶質セルロース及びカルボマーと、については記載も示唆もされていない。
そうしてみると、引用発明1において、食道表面と医薬組成物との相互作用を高める追加賦形剤として、マルトデキストリンの量を、「約10mg/mL?約1g/mL」とし、かつ、「ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース(HPMC)、カルボキシメチル-セルロース(CMC)、微晶質セルロース(MCC)、及びカルボマーの少なくとも1つ並びにこれらの組み合わせ」を「約5mg/mL?約100mg/mL」の量で含有させることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献1?6、8?9、5’に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2?16について

本願発明2?16は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらにそれらを限定したものであるから、前記(1)イと同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献1?6、8?9、5’に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 小括

以上のとおり、本願発明1?16は、当業者が引用文献1又は2のいずれかに記載された発明及び引用文献1?6、8?9、5’に記載された技術事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。

第7 むすび

したがって、原査定の理由及び当合議体が通知した拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-04-23 
出願番号 特願2016-81874(P2016-81874)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61K)
P 1 8・ 121- WY (A61K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 理文  
特許庁審判長 井上 典之
特許庁審判官 前田 佳与子
渡邊 吉喜
発明の名称 コルチコステロイド組成物  
代理人 特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所  
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