ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L |
---|---|
管理番号 | 1362085 |
審判番号 | 不服2019-3087 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-05 |
確定日 | 2020-05-19 |
事件の表示 | 特願2016-543334「粒子捕捉を用いる超音波溶接のための方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月26日国際公開,WO2015/039771,平成28年10月20日国内公表,特表2016-533040,請求項の数(11)〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2014年4月28日(パリ条約による優先権主張2013年9月17日,欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって,平成29年4月3日付けで手続補正書が提出され,平成30年2月13日付けで拒絶理由通知がされ,同年5月25日付けで意見書と手続補正書が提出され,同年10月31日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成31年3月5日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和元年9月10日に審判請求人から面接希望の上申がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年10月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1ないし11に係る発明は,以下の引用文献1ないし4に基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2010-40615号公報 2.特開2001-178839号公報 3.特開2012-630号公報 4.特開2009-18346号公報 第3 本願発明 本願請求項1ないし11に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明11」という。)は,平成31年3月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 パワー半導体モジュールを製造するために超音波溶接によって2つの部品を接続する方法であって,前記方法は, a)溶接される前記部品を位置合わせして溶接界面(16)を形成するステップと, b)位置合わせされた前記部品に溶接工具(18)を位置合わせするステップと, c)前記溶接界面(16)を少なくとも部分的に取囲む捕捉材料(20)を除去可能なように配置するステップとを備え,前記捕捉材料(20)は発泡体であり,前記方法はさらに, d)前記溶接工具(18)を作動させることによって前記部品を接続する溶接ステップと, e)前記溶接ステップの後に洗浄手順を実行して捕捉された粒子とともに前記捕捉材料を除去する洗浄ステップとを備える,方法。 【請求項2】 前記発泡体のポケットは不活性ガスまたは界面活性剤で充填される,請求項1に記載の方法。 【請求項3】 ステップc)はステップb)の前に実行される,請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。 【請求項4】 ステップc)はステップb)の後に実行される,請求項1から2のいずれか一項に記載の方法。 【請求項5】 前記洗浄手順は,溶剤の塗布,消泡剤の塗布,湿式洗浄,空気吸込,空気吹込,蒸発または燃焼を備える,請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記方法は, f)表面張力低下材料によって前記パワー半導体モジュールの少なくとも1つの表面を前処理するさらなるステップを備える,請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。 【請求項7】 前記少なくとも1つの表面は高分子材料でコーティングされる,請求項6に記載の方法。 【請求項8】 ステップd)は,10℃以上80℃以下の範囲内の温度で実行される,請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。 【請求項9】 ステップd)は,1mバール以上6バール以下の範囲内の圧力で実行される,請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項10】 ステップd)は,不活性ガスを含む雰囲気下で実行される,請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 溶接される前記部品は,金属またはポリマーから形成される,請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。」 第4 引用文献,引用発明等 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付加した。以下,同じ。) 「【請求項1】 絶縁基板上に形成した配線パターンと,前記配線パターン上に搭載した半導体素子と,前記配線パターン上に超音波接合により搭載されたリードフレームを有する半導体装置において,超音波接合により接合されるリードフレームの周りに樹脂が塗布されていることを特徴とする半導体装置。 【請求項2】 絶縁基板上に形成した配線パターンと,前記配線パターン上に搭載した半導体素子と,前記配線パターン上に超音波接合により搭載されたリードフレームを有する半導体装置において,前記配線パターンの一部に凹部を設け,その凹部とリードフレームを超音波接合により接合することを特徴とする半導体装置。 【請求項3】 絶縁基板上に形成した配線パターンと,前記配線パターン上に搭載した半導体素子と,前記配線パターン上に超音波接合により搭載されたリードフレームを有する半導体装置において,超音波接合により接合されるリードフレームの周りに枠が形成されていることを特徴とする半導体装置。 【請求項4】 請求項1記載の半導体装置において,リードフレームの周りに塗布される樹脂に表面活性成分が含有されていることを特徴とする半導体装置。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は,半導体装置に係り,特に絶縁基板上の配線パターン上に複数個の半導体素子を搭載し超音波接合によりリードフレームを接続する大電力半導体装置に関するものである。」 「【0004】 超音波を用いる接合方法は,金属同士である配線パターンとリードを重ね合わせ,リードの上面からホーンで押圧しながら所定の周波数で水平方向に超音波振動させる。押圧と超音波振動により金属表面にあった汚れや酸化膜を除去し接合される。ホーンの先端には,ホーンの振動をリードに滑りを起こすことなく伝えるために,複数の角錐状の突起部が形成されている。この突起部がリードに食い込むとこによりリードに滑りなく振動を伝えることが出来る。しかしながら,超音波による方法で配線パターンとリードを接合すると,金属くずが発生する。これは,配線パターンとリード間,リードとホーンの突起部間から発生するものである。この金属くずが半導体素子や配線パターン残存すると故障の原因に繋がる。 【0005】 金属くずの抑制方法として,ホーンの突起部の角錐の角度や溝幅などを適正にすることにより抑制できると記載されている(特許文献2参照)。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかし,特許文献1の方法では,リードとホーンの突起部から発生する金属くずは抑制できるが,配線パターとリード間から発生する微細な金属くずを抑制することが困難である。 【0008】 本発明の目的は,上記した従来技術の欠点を解消し,配線パターンとリードなどの金属同士を接続させる超音波接合時に発生する金属くずの飛散防止をする技術を提供することにある。」 「【0014】 図1は本発明の第一の実施例の平面図である。図において,1はベース,2は絶縁基板,3は配線パターン,4は半導体素子,5は外部接続用リードである。配線パターン3と外部接続用リード5の接合部には樹脂6が塗布されている。図示していないが,配線パターン3上には配線パターン3と半導体素子4を接続するためのワイヤが配置されている。図中には図2で説明する第一の実施例の断面の位置をあらわすA-Aラインが記載されている。 【0015】 図2は本発明の第一の実施例の断面図であり,図1に記載されているA-Aラインの箇所である。絶縁基板2の下面にはベース1とはんだを介して接続するための金属板8が設けられている。樹脂6は,配線パターン3上に外部接続用リード5を設置した後に塗布する。そして,ホーン(図示せず)を外部接続用リード5上に塗布された樹脂6上から降下させ押圧しながら超音波を振動させて配線パターン3と外部接続用リード5を接合する。その際に配線パターン3と外部接続用リード5間と外部接続用リード5とホーン間から発生する金属くずは,樹脂6内に留める事ができ飛散防止できる。 【0016】 上記のように構成することにより,超音波接合時に発生する金属くずが半導体素子や配線パターン間に飛散しないので素子破壊や絶縁不良などでの歩留りの低下がなくなり生産性を向上させることができる。 【0017】 樹脂6は,ホーンの押圧と振動を減衰なく外部接続用リードに伝えなければならないので反応が進んでも硬化しない樹脂(例えばシリコン樹脂)が望ましいのはいうまでもない。 【0018】 また,樹脂6に金属表面を活性化させ接合をしやすくする成分が含有されていてもかまわない。」 「【0019】 図3は本発明の第二の実施例の断面図である。配線パターン3上には凹部9が設けられており,凹部9には外部接続用リード5が接合されている。超音波接合時に発生する金属くずは,この凹部9内に残留するので飛散を防止できる。凹部9の形状は,リード底面より大きく深さはリード厚さより深いことが必要である。 【0020】 上記のような構造にすることにより,超音波接合時に発生する金属くずが凹部内に残留し飛散しないので素子破壊や絶縁不良などでの歩留りの低下がなくなり生産性を向上させることができる。」 「【0021】 図4は本発明の第三の実施例の断面図である。配線パターン3上には枠10が設けられており,枠10内には外部接続用リード5が接合されている。超音波接合時に発生する金属くずは,この枠10内に残留するので飛散を防止できる。枠10の形状は,リード底面より大きく深さはリード厚さより深いことが必要である。 【0022】 上記のような構造にすることにより,超音波接合時に発生する金属くずが枠内に残留し飛散しないので素子破壊や絶縁不良などでの歩留りの低下がなくなり生産性を向上させることができる。」 「 」 「 」 (2)したがって,上記引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 <引用発明> 「絶縁基板上の配線パターン上に複数個の半導体素子を搭載し超音波接合によりリードフレームを接続する大電力半導体装置の製造方法であって,前記製造方法は, a’)配線パターン3上に外部接続用リード5を設置する工程と, c’)前記工程a’)の後に,樹脂6を,前記配線パターン3上に設置した前記外部接続用リード5上に塗布する工程と, d’)ホーンを前記外部接続用リード5上に塗布された前記樹脂6上から降下させ押圧しながら超音波を振動させて前記配線パターン3と前記外部接続用リード5を接合する工程とを備える製造方法であり,前記製造方法において,さらに, 前記樹脂6は,ホーンの押圧と振動を減衰なく外部接続用リードに伝えなければならないので反応が進んでも硬化しない樹脂(例えばシリコン樹脂)が望ましいのはいうまでもなく, 前記工程d’)において,前記配線パターン3と前記外部接続用リード5間と前記外部接続用リード5と前記ホーン間から発生する金属くずは,前記樹脂6内に留める事ができ飛散防止できる製造方法。」 (3)さらに,引用文献1には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 ・配線パターン3上に,リード底面より大きく深さはリード厚さより深い凹部9を設け,当該凹部9に外部接続用リード5を接合する構造を備えた第二の実施例は,超音波接合時に発生する金属くずが凹部内に残留し飛散しないので素子破壊や絶縁不良などでの歩留りの低下がなくなり生産性を向上させることができること。 ・配線パターン3上に,リード底面より大きく深さはリード厚さより深い枠10を設け,当該枠10内に外部接続用リード5を接合する構造を備えた第三の実施例は,超音波接合時に発生する金属くずが枠内に残留し飛散しないので素子破壊や絶縁不良などでの歩留りの低下がなくなり生産性を向上させることができること。 2 引用文献2について (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には,次の事項が記載されている。 「【請求項1】 高熱粉粒体の発生源の近傍に,泡状物を散布すると共に,発生した高熱の粉粒体を該泡状物中に落下させるようにしたことを特徴とする高熱粉粒体の処理方法。 【請求項2】 高熱粉粒体の発生源は,溶接・溶断作業であることを特徴とする請求項1に記載の高熱粉粒体の処理方法。 【請求項3】 泡状物は,起泡成分と水とから成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の高熱粉粒体の処理方法。 【請求項4】 起泡成分と水とから成る水溶液を圧縮空気と共に泡発生機に供給し,発生した泡状物を散布するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の高熱粉粒体の処理方法。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は,簡易な操作にて例えば溶接・溶断時などに発生する高熱の粉粒体を冷却して防火すると共に,その飛散を防止することができる高熱粉粒体の処理方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来より製鉄所・各種事業所などの定期的修繕時や各種の加工・施工建築現場においては,溶接・溶断作業が頻繁になされる。そして,特に石炭輸送コンベアラインでは,極度の乾燥または超微粒子の石炭粉が堆積しているため,溶接・溶断時に発生する火花等の高熱の粉粒体が重大な火災を引き起こす危険性がある。また,油汚れが付着した床面などにも同様の危険性が潜んでいる。さらには,高熱の粉粒体が周辺環境に飛散することによって火災を発生させる危険性もある。 そのため,防火対策として,以下の方法が採られていた。 (1)可燃物の除去;事前に周辺環境を含めた清掃の実施 (2)火気養生;水で濡らした防炎シート,波鉄板,防炎シート等での養生 (3)火の粉の飛散範囲の散水;常時濡れた状態維持 (4)常時散水できる状態;ホース,消火栓,貯水の準備 (5)工事用消火器の配置 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら,前述の(1)?(5)の防火対策は,多大な経費と時間が必要であり,さらには落下した高熱粉粒体の状態を監視,管理する作業者も必要であり,特にその作業者は危険性が高かった。 また,この溶接・溶断作業は前述のように頻繁になされるため,その都度このように多大な経費と時間等をかけて防火や焼け焦げを防止しなければならず,必要となる経費と時間は膨大なものであった。 さらに,灼熱した鉄片(切断片)などの比較的粒径の大きな高熱粉粒体は,火の粉などの比較的粒径の小さな高熱粉粒体に比べて冷めにくく,防炎シートなどを貫通することがあり,気づかずに速やかに対処しないと大事に至る場合もあった。 加えて高熱粉粒体が落下の衝撃で微細に粉砕された場合には,想定を超える広範囲の周辺環境にまで飛散して火災や焼け焦げの原因となる場合もあった。 また,従来の石炭等の表面に連続的に散水することにより着火を防止する方法では,表面或いは槽内底部の石炭が多量の水分を吸水してしまうため,石炭塔槽内の付着炭・棚吊り,或いは石炭水分の上昇によりコークス炉の火落不良,操業トラブルにより総在庫が減少し減産につながる。 そこで,極めて簡易な処理にて,即ち多大な経費と時間を必要とすることなく,しかも安全且つ確実に高熱粉粒体を処理することができる方法が嘱望されていた。」 「【0004】 【課題を解決するために手段】 本発明は前記に鑑み提案されたものであって,高熱粉粒体の発生源の近傍に,泡状物を散布すると共に,発生した高熱の粉粒体を該泡状物中に落下させるようにしたことを特徴とする高熱粉粒体の処理方法に関するものである。 【0005】 【発明の実施の形態】 上記高熱粉粒体の発生源とは,前述のように製鉄所・各種事業所などの定期的修繕時や各種の加工・施工建築現場における溶接・溶断作業を指すが,特にそれに限定するものではなく,高熱の粉粒体を発生するどのような処理,加工を含む。また,高熱粉粒体は,特にその粒径を限定するものではなく,mm単位の火花から数cm程度,或いはそれ以上の大きさの灼熱した切断片等をも含むものである。したがって,本発明は各種の分野に適用することができる。 【0006】 また,泡状物は,界面活性剤等の気泡成分と水とから成り,これらを空気と共に,液送ポンプ,エアーコンプレッサー,気液混合装置,各種調整弁,噴射ノズル等で適宜に構成される泡発生機に供給して泡状物を発生させる。 【0007】 上記泡状物の原料となる液状組成物は,所望の発泡性,持続性,強度,接着性等に応じて適宜に選択することができるが,界面活性剤及び水溶性高分子樹脂を有効成分とする水溶液であって,粘度が100mPa・sを越えない範囲としたものが望ましい。また,この液状組成物を原料として生成される泡状物の物性としては,例えば製鉄所等の定期的修繕時における溶接・溶断作業に際しては1時間程度消泡しない安定且つ緻密な泡状物であることが望ましい。 【0008】 上記界面活性剤としては,アニオン系,カチオン系,ノニオン系,両性界面活性剤の何れの界面活性剤を使用することもでき,適宜にその一種以上を選定して使用することができる。 また,上記水溶性高分子樹脂としては,泡沫の安定化,泡沫の均一性,泡沫の付着性をそれぞれ大きくする作用を示し,例えばメチルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシアルキルセルロース等のセルロース系,ポリエチレンオキサイド系高分子樹脂,デンプン,カルボキシメチルデンプン,ジアルデヒドデンプン等のデンプン系,ポリビニルアルコール,アクリルアマイド,ポリアクリル酸ソーダ,アルギン酸ソーダ,アラビアゴム,トランガム等の水性ゴム系,ゼラチン,ガゼイン,キサンタンガン,コラーゲン,カンテン,サポニン,等の天然または合成の水溶性高分子樹脂の一種以上を適宜に選定して使用することができる。 【0009】 なお,使用する水溶性高分子樹脂の種類によって,溶解時の粘度は著しく異なる。例えばポリアクリルアマイド系では0.1%水溶液(%は質量比)でも数百mPa・sの高粘度の水溶液となるし,ポリエチレンオキサイド系のもののように1%水溶液(%は質量比)でも数百mPa・sの低粘度の水溶液となるものもある。そして,低粘度である程発泡し易く,かつ均一な泡沫となり,広範囲に亘って散布させる場合に都合が良いが,生成した泡沫の安定性が乏しく,破泡し易く,特に傾斜面や鉛直面では流れ易いという傾向がある。逆に高粘度であるほど発泡しにくくなり,噴射する空気圧を高くする必要があり,広範囲に散布することが困難であるが,生成した泡状物は,極めて安定で,高粘度であり,傾斜面や鉛直面でも長時間に亘って流れ難いという傾向がある。即ち泡状物の原料となる液状組成物の成分組成を適宜選択することにより所定の粘度に適宜調整することができ,目的に応じた粘度とすれば良い。本発明者等の経験によれば,前記実用的な噴射圧の使用においては,上限として100mPa・s,下限としては特定すべきものではないが,少なくとも水の粘度(1mPa・s)以上であれば良く,望ましくは2?70mPa・sである。 【0010】 また,泡状物の原料となる液状組成物における界面活性剤と水溶性高分子樹脂の配合割合(%は質量比)は,水溶液中,界面活性剤を5?20%,水溶性高分子樹脂を5%以下の範囲で適宜配合することにより前記粘度が得られるが,特に限定するものではない。さらに,液状組成物に,アルカリを添加して水溶液のpHが10.0を越えない範囲とすることにより,泡状物の発生を促進することができる。 【0011】 このような構成の液状組成物と空気(圧縮空気)を,前述のように泡発生機に供給して運転させることにより泡状物を発生させるのであるが,泡発生機の運転条件を種々変化させることにより所望の発生量,発泡倍率等に調整することができる。尚,空気に代えて窒素ガスや炭酸ガス等を用いても良い。 【0012】 そして,本発明の処理方法にて発生させた泡状物は,前記高熱粉粒体の発生源の近傍に散布するのであって,特に散布する処理面の状態を限定するものではなく,例えば堆積した極度の乾燥又は超微粒子の石炭粉の表面や油汚れが付着した床面などに直接散布しても良いし,或いは波鉄板,防炎シートなどを配設した上に散布しても良い。また,処理面は,水平面に限定されるものではなく,傾斜面でも鉛直面でも良い。 【0013】 このように散布した泡状物中に高熱粉粒体が落下すると,泡状物を通過する際に泡状物中の水分が高熱粉粒体を冷却する。また,泡状物中に落下した高熱粉粒体には空気遮断がなされるので窒息消火ができる。このように冷却効果と空気遮断による効果にて高熱粉粒体による着火を防止することができる。 また,灼熱した鉄片(切断片)などの比較的粒径の大きな高熱粉粒体は,瞬時には冷却,消火できないが,泡状物が空気を遮断するため,泡状物中の水分による冷却効果とこの空気遮断の効果にて安全且つ確実に高熱粉粒体を処理することができる。 尚,このような着火防止効果は泡状物の散布厚みが厚い方が大きいが,経済性等も考慮して5?100mm程度にすることが望ましい。 また,特に泡状物を高粘性にした場合には粉塵の密着性(捕獲性)に優れたものとなるため,高熱粉粒体が落下の衝撃で微細に粉砕されてもその飛散を防止することができる。 【0014】 さらに,泡状物の大部分は空気であるから,石炭や油汚れが付着したウエスなどの表面から吸水されることもなく,吸水されても重量の増加は僅かである。即ち石炭の堆積物の場合,その最表層に位置する石炭が僅かに吸水するに過ぎず,燃焼効率にも殆ど影響を与えることがない。 【0015】 また,泡状物は,既に着火した石炭等の消火にも利用することができ,万が一の着火に備えて高価な消火器(消防用発泡材)を準備する必要がない。したがって,散水したり,波鉄板,防炎シートを配設し,高価な消防用発泡材を準備していた従来の防火対策に対し,泡状物(液状組成物)及び泡発生機だけを準備すればよいので,本発明を防火対策に適用した場合にはその経費削減効果が極めて大きいものである。 加えて,消火器に用いられている消防用発泡材中には多量の水分(500kg/m^(3) )が含まれているため,これを用いて消火した場合には石炭などが多量の水分を吸水してその後の使用に際して燃焼トラブルを生じてしまうが,本発明に用いられる泡状物は,水分量がおよそ1/5である100kg/m^(3) 程度に過ぎないため,これを用いて消火した場合にも石炭などが吸水する量は極めて軽微であり,その後の使用に際して燃焼効率等の低下を生じないものとなる。 【0016】 さらに,泡状物は,粉塵の飛散防止をも有しており,石炭粉などに散布する場合などには前述の着火防止の効果と共に粉塵の飛散防止の効果も果たされる。また,石炭やコークスの野積みに際して自然発火や粉塵の飛散防止の目的で同じ材料を用いた場合には,資材管理を容易にする効果が果たされるものとなる。」 (2)したがって,引用文献2には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 ・引用文献2に記載された技術は,簡易な操作にて例えば溶接・溶断時などに発生する高熱の粉粒体を冷却して防火すると共に,その飛散を防止することができる高熱粉粒体の処理方法に関するものであること。 ・従来より製鉄所・各種事業所などの定期的修繕時や各種の加工・施工建築現場においては,溶接・溶断作業が頻繁になされており,高熱の粉粒体が周辺環境に飛散することによって火災を発生させる危険性があることから,事前に周辺環境を含めた清掃の実施,水で濡らした防炎シート,波鉄板,防炎シート等での養生,常時濡れた状態維持,ホース,消火栓,貯水の準備,工事用消火器の配置といった防火対策が採られていたが,これらの対策には多大な経費と時間が必要であり,さらには落下した高熱粉粒体の状態を監視,管理する作業者も必要であり,特にその作業者は危険性が高かったことから,極めて簡易な処理にて,即ち多大な経費と時間を必要とすることなく,しかも安全且つ確実に高熱粉粒体を処理することができる方法が嘱望されていたこと。 ・高熱粉粒体の発生源の近傍に,泡状物を散布すると共に,発生した高熱の粉粒体を該泡状物中に落下させるようにしたことで,前記課題が解決されること。 ・高熱粉粒体は,特にその粒径を限定するものではなく,mm単位の火花から数cm程度,或いはそれ以上の大きさの灼熱した切断片等をも含むものであること。 ・泡状物は,界面活性剤等の気泡成分と水とから成り,これらを空気と共に,液送ポンプ,エアーコンプレッサー,気液混合装置,各種調整弁,噴射ノズル等で適宜に構成される泡発生機に供給して泡状物を発生させるものであること。 ・泡状物は,前記高熱粉粒体の発生源の近傍に散布するのであって,例えば堆積した極度の乾燥又は超微粒子の石炭粉の表面や油汚れが付着した床面などに直接散布しても良いし,或いは波鉄板,防炎シートなどを配設した上に散布しても良いこと。 ・このように散布した泡状物中に高熱粉粒体が落下すると,泡状物を通過する際に泡状物中の水分が高熱粉粒体を冷却し,また,泡状物中に落下した高熱粉粒体には空気遮断がなされるので窒息消火ができるので,冷却効果と空気遮断による効果にて高熱粉粒体による着火を防止することができること。 ・着火防止効果は泡状物の散布厚みが厚い方が大きいが,経済性等も考慮して5?100mm程度にすることが望ましいこと。 3 引用文献3について (1)拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献3には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】 レーザ光集光のための光学系を有しレーザ光を被溶接材に照射する加工ヘッドと,前記被溶接材のレーザ光照射部に溶接ワイヤを給送するワイヤ給送手段と,レーザ光の照射により前記被溶接材に形成された溶融部及びその近傍をシールドするシールドガス供給手段と,前記加工ヘッド及び被溶接材を相対的に移動させる移動手段とを有し,被溶接材の接合部に形成された開先にレーザ光を照射し溶接ワイヤを給送しつつ前記被溶接材および溶接ワイヤを溶融させ,前記開先を積層溶接するレーザ溶接装置において, 前記レーザ溶接装置は,溶接により生じた溶接生成物を吸引する吸引手段と,前記レーザ光の反射光及び溶接部の輻射熱から前記加工ヘッドを保護する加工ヘッド保護手段と,積層溶接された溶接金属の表面に堆積した溶接生成物を除去するクリーニング手段を有することを特徴とするレーザ溶接装置。 【請求項2】 請求項1に記載のレーザ溶接装置において,前記溶融部から生ずる溶接生成物から前記加工ヘッドの光学系を保護する光学系保護手段を有することを特徴とするレーザ溶接装置。 【請求項3】 請求項1または2に記載のレーザ溶接装置において,前記溶接生成物はヒューム及びスパッタの少なくとも一つを含むことを特徴とするレーザ溶接装置。 【請求項4】 請求項1または2に記載のレーザ溶接装置において,前記レーザ光を照射する加工ヘッドと前記溶接生成物の吸引手段の間に,溶接金属を大気から保護し前記溶接生成物の吸引手段による吸引を案内するトレーラ部材を有することを特徴とするレーザ溶接装置。 【請求項5】 請求項1又は2に記載のレーザ溶接装置において,前記加工ヘッド保護手段は,前記加工ヘッドと被溶接材の間に設置され,前記加工ヘッド及びその付属装置をレーザ反射光及び溶接部輻射熱から保護する板状部材からなることを特徴とする請求項1及び2記載のレーザ溶接装置。 【請求項6】 請求項5に記載のレーザ溶接装置において,前記加工ヘッド保護手段は,凹面状の湾曲面を有することを特徴とするレーザ溶接装置。 【請求項7】 請求項5または6に記載のレーザ溶接装置において,前記加工ヘッド保護手段はシールドガス供給手段と水冷構造を有することを特徴とするレーザ溶接装置。 【請求項8】 請求項1乃至7の少なくとも1項に記載のレーザ溶接装置において,前記積層溶接された溶接金属の表面に堆積した溶接生成物を除去するクリーニング手段は,パルスレーザ照射手段を備えたことを特徴とするレーザ溶接装置。 【請求項9】 請求項1乃至7の少なくとも1項に記載のレーザ溶接装置において,前記積層溶接された溶接金属の表面に堆積した溶接生成物を除去するクリーニング手段は,機械的除去手段を備えたことを特徴とするレーザ溶接装置。 【請求項10】 請求項9に記載のレーザ溶接装置において,前記クリーニング手段の機械的除去手段は,溶接金属の表面に堆積した溶接生成物を除去する回転ブラシと,ガス吹付手段と,除去した溶接生成物を吸引する吸引手段を有することを特徴とするレーザ溶接装置。 【請求項11】 請求項1乃至7の少なくとも1項に記載のレーザ溶接装置において,前記積層溶接された溶接金属の表面に堆積した溶接生成物を除去するクリーニング手段は,パルスレーザ照射手段と機械的除去手段を備えたことを特徴とするレーザ溶接装置。」 「【0014】 レーザ溶接はエネルギー密度が高いので,レーザ照射により被溶接材表面で金属蒸発や溶融金属の飛散が生じ,多量のヒュームやスパッタが発生する。このヒュームやスパッタは,レーザ出力が高い場合やディフォーカス条件では発生量がさらに増加する傾向にある。 【0015】 特にヒュームについて説明すると,ヒュームは溶融凝固した溶接金属の表面や開先壁に付着する。ヒュームが付着した状態で次層の積層を行うと,融合不良やポロシティ等の溶接欠陥が発生する。ヒュームの溶接金属表面への付着を防止するため,溶接部を空気から遮断し溶接金属の酸化を防止するため,シールド用ガスを溶接部に供給している。 【0016】 しかし,開先が深い場合にはヒュームの完全な付着防止が困難である。そこで,溶接後にブラシ等で溶接金属及び開先壁に付着したヒュームの溶接生成物を物理的に除去した後で,次層の溶接を行っている。このため,円筒物の周溶接のような場合には,1パス溶接ごとに,溶接金属表面及び開先壁の清掃作業が必要となるため,連続溶接が行えず溶接能率が悪い。また,ヒュームは金属蒸気が凝固することによって発生する金属の微粒子及び金属化合物微粒子であり,吸湿等により一層除去しにくくなるという問題がある。 【0017】 また,ヒュームやスパッタが加工ヘッドのレーザ光の集光光学系またはその保護ガラス,フィルタ等に付着すると,レーザ出力,ビーム形状等が変化するので安定した溶接が出来ない。そのため,従来は特許文献4のように,保護ガラスの下部にエアを噴出させ,光学系へのヒューム及びスパッタの付着を防止する対策が行われている。しかし,集光光学系を有する加工ヘッドは,溶融金属部からのレーザ光の反射や溶融部ならの輻射熱の影響も受けるため,連続溶接等の長時間溶接においては加工ヘッド並びにヘッド駆動系の温度上昇,反射光による損傷等を生じやすいという課題がある。 【0018】 本発明は,上記の課題に鑑みてなされたものであり,連続的に積層溶接を行っても,安定して高品質な溶接部が得られるレーザ溶接装置を提供するものである。」 「【0039】 開先内及び溶接部近傍のヒューム9はヒューム吸引ノズル19により吸引される。ヒューム吸引ノズル19の後部には積層された溶接金属表面及び開先壁面をクリーニングするレーザクリーニングヘッド20が取り付けられている。レーザクリーニングヘッド20は高さ方向と前後左右方向への動作が可能な可動関節構造を有し,ヒュームが付着した開先表面を十分に清掃できるように構成する。レーザクリーニングヘッド20はファイバーを介してパルスレーザ発振器23に接続されており,レーザクリーニングヘッド20からパルス状レーザを開先内に照射し,積層された溶接金属及びその周囲の開先壁面に付着しているヒューム9による溶接生成物を除去する。」 「【0051】 さらに図5のように,加工ヘッド8のレーザ照射部とヒューム吸引ノズル19の間に,高温部の溶接金属の酸化抑制のために,加工ヘッドの移動に追従してシールドガスを供給するトレーラー部材29を設置してもよい。トレーラー部材29は溶接金属の酸化の抑制のみならず,ヒュームの吸引促進にも有効なので,溶接金属表面及び開先壁面に付着する溶接生成物を低減させることが出来る。トレーラー部材29は,レーザ光の反射光及び溶接部からの輻射熱の影響を受けるので,水冷構造とすることが好ましい。また,トレーラー部材29はシールドガスの供給を行わない単純な板状のガイド部材でも良い。この場合でもトレーラー部材29はヒュームの吸引通路を形成するガイド部材として作用することができる。」 (2)したがって,引用文献3には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 ・レーザ溶接はエネルギー密度が高いので,レーザ照射により被溶接材表面で金属蒸発や溶融金属の飛散が生じ,多量のヒュームやスパッタが発生すること。 ・特にヒュームについて説明すると,ヒュームは溶融凝固した溶接金属の表面や開先壁に付着すること。 ・溶接後にブラシ等で溶接金属及び開先壁に付着したヒュームの溶接生成物を物理的に除去した後で,次層の溶接を行っていること。 ・引用文献3には,積層溶接された溶接金属の表面に堆積した溶接生成物を除去するクリーニング手段を有することを特徴とするレーザ溶接装置であって,前記積層溶接された溶接金属の表面に堆積した溶接生成物を除去するクリーニング手段は,パルスレーザ照射手段と機械的除去手段を備えたことを特徴とするレーザ溶接装置が開示されていること。 4 引用文献4について (1)拒絶査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献4には,図面とともに次の事項が記載されている。 「【請求項1】 ワークピース同士を溶接するための溶接装置であって, ワークピース(6)上に溶接継目(3)を形成する溶接手段(2)と, 前記ワークピースの表面(5)に対して,前記溶接継目が形成されるべき領域にクライオジェニック混合物(8)を噴射するノズル(7)と, を備え, 前記溶接手段(2)と前記ノズル(7)の距離が少なくとも5cmである, 溶接装置。 【請求項2】 溶接用ロボット(20)を備える,請求項1に記載の溶接装置。 【請求項3】 ツールを保持するために前記ロボット(20)上に切替システム(21)が形成される,請求項1または2に記載の溶接装置。 【請求項4】 前記ツールはCO_(2)ノズル(7)である,請求項1?3のいずれかに記載の溶接装置。 【請求項5】 前記ツールは前記溶接手段である,請求項1?4のいずれかに記載の溶接装置。 【請求項6】 前記クライオジェニック混合物(8)を噴射し,前記ワークピース(6)を洗浄し,冷却し,ワークピース(6)の歪を最小化するための前記ノズル(7)が,溶接方向(4)に沿って前記溶接手段(2)の前方に配置される,請求項1?5のいずれかに記載の溶接装置。 【請求項7】 前記クライオジェニック混合物(8)を噴射し,前記ワークピース(6)を洗浄し,冷却し,ワークピース(6)の歪を最小化するための第2ノズル(7)が,溶接方向(4)に沿って前記溶接手段(2)の後方に配置される,請求項1?6のいずれかに記載の溶接装置。 【請求項8】 前記溶接手段(2)は,ガス溶接,手動アーク溶接,又はレーザビーム溶接のための手段として設計される,請求項1?7のいずれかに記載の溶接装置。 【請求項9】 前記溶接手段(2)と前記ノズル(7)の距離が5cmと20cmの間にあり,好ましくは5cmと10cmの間にある,請求項1?8のいずれかに記載の溶接装置。 【請求項10】 ワークピース同士を溶接するための工程であって, クライオジェニック混合物(8)が,前記ワークピースの表面(5)上で前記溶接継目が形成されるべき領域に衝突させられ,それによって当該領域が洗浄及び冷却され, 前記ワークピース同士がその洗浄された領域で溶接される, 工程。 【請求項11】 前記溶接継目を生成する溶接手段(2)とクライオジェニック混合物(8)の間に少なくとも5cmの距離が観測される,請求項10に記載の工程。 【請求項12】 溶接装置(1)によって生成される溶接継目(3)が後に第2ノズル(7)によって洗浄され,ワークピース(6)の歪が冷却によって低減される,請求項10または11に記載の工程。 【請求項13】 CO_(2)と圧縮空気からなるクライオジェニック混合物が前記クライオジェニック混合物(8)として噴射させられる,請求項10?12のいずれかに記載の工程。 【請求項14】 液体CO_(2),又はCO_(2)ドライアイス,又はCO_(2)ペレット,又はCO_(2)ガスが,CO_(2)と圧縮空気からなる前記クライオジェニック混合物(8)として使用される,請求項13に記載の工程。 【請求項15】 引き抜かれた金属製コンポーネントが溶接され,そのコンポーネントには前記クライオジェニック混合物によって絞り剤の残留物が除去される,請求項10?14のいずれかに記載の工程。」 「【背景技術】 【0002】 溶接の間に,溶接用添加物を用いて,又は用いないで,熱又は圧力を加えることでコンポーネント同士が永久的に接続される。熱を伴う溶接方法は,例えば鍛造溶接,ガス溶接,手動アーク溶接,抵抗溶接,レーザービーム溶接,テルミット溶接,及び電子ビーム溶接である。 【0003】 金属製ワークピース,プラスチック部品,及びガラス部品は,公知の溶接方法を備えた手段によって互いに,永久的かつ確実に接続可能である。 【0004】 深絞り加工及び/又は高圧で成形される金属製コンポーネントはさらに,頻繁に溶接方法を備えた手段によって処理される。 【0005】 深絞り加工の間,打ち抜きされていない薄板が,引張及び圧縮の組合せの条件の下で単独で開口した空洞体に形成されるか,又は予め絞り加工がなされた空洞体が,引張及び圧縮の組合せの条件の下で,より少ない断面積で,かつ板厚の大きな変化が無い空洞体に形成される。 【0006】 特に材料の裂け等の絞り加工時の欠陥を防止するために,実質的な歪によって発生する場合でさえ,脂肪,油,石鹸,及び被覆物等の絞り剤が使用される。これにより,ツールの磨耗の形跡が少なくなり,ワークピースの表面状態が改善される。成形工程の後,絞り剤は,その表面上に残留物として残る。絞り剤の物質は高品質の溶接を妨げるので,成形部品の溶接のためには,その成形部品から絞り剤の残留物を除去しなければならない。洗浄又はピックリングによる絞り剤の除去は,全てのコンポーネントを洗浄しなければならないため,大変に高価であり,かつ環境に有害である。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 上述した観点に鑑み,本発明の目的は,ワークピース表面上の絞り剤の残留物を,ワークピース全体を洗浄することなく除去することを可能にする装置及び方法を提供することにある。なお,この除去対象の残留物は,洗浄又はピックリングによっては除去されないのである。」 「【0043】 本発明に係る溶接装置の実施形態の別の例では,第2CO_(2)ノズル7が,溶接工程の後に表面被覆を除去し,かつワークピースの歪を取り除くことを目的として,溶接方向4に沿って溶接手段2の後方に配置される。これにより,接合後のワークピース6のドレッシングが省略される。」 「【0049】 金属の接合の間のCO_(2)洗浄のための上述した溶接装置の使用方法を,以下で説明する。 【0050】 CO_(2)ノズル7におけるCO_(2)弁12と圧縮空気弁10は,制御手段19によって開口させられる。圧縮空気と液体CO_(2)がCO_(2)ノズル7の混合用チャンバ14に流れ込む。CO_(2)と圧縮空気からなるクライオジェニック混合物8は混合用チャンバ14内で形成される。CO_(2)と圧縮空気からなるクライオジェニック混合物8は,ラバルノズル17を通して流れるときには,ほぼ音速の速さにまで加速させられている。 【0051】 CO_(2)と圧縮空気からなるクライオジェニック混合物8が,ラバルノズル17から噴出するときには,ワークピース表面5に付着する絞り剤18に衝撃を与えることでこれを除去し,それによって高品質な溶接継目3が得られる。さらに,溶接継目3が成形される領域が冷却され,その結果,ワークピース6の歪が低減する。 【0052】 溶接装置1は例えば,溶接方向に沿ってロボットによって完全自動で移動させられる。溶接手段2が,ワークピース表面5の洗浄・冷却がなされた領域の上方に配置させられると,溶接手段2は制御手段19によって活性化され,ワークピース表面5上で溶接継目3の生成を開始する。 【0053】 溶接工程が完了すると,本発明に係る溶接装置を溶接方向4の反対方向に移動させ,溶接継目3の全体の延びを収縮させるようにしてもよい。これは,溶接継目3の周囲の領域と溶接継目3自体を冷却し,歪を最小化し,表面の被覆を除去するために行われる。 【0054】 特にアルミニウムを溶接する場合には,上品な溶接継目を生成することと,事後の洗浄は重要である。これは,研磨又は光沢付け等の仕上げ処理がなされていない溶接継目はしばしば視認可能であるためである。 【0055】 液体CO_(2),又はCO_(2)ドライアイス,又はCO_(2)ペレット,又はガス状のCO_(2)と,圧縮空気との混合物が特に,CO_(2)と圧縮空気からなるクライオジェニック混合物8として提供される。」 (2)したがって,引用文献4には,次の技術的事項が記載されていると認められる。 ・ワークピース(6)上に溶接継目(3)を形成する,ガス溶接,手動アーク溶接,又はレーザビーム溶接のための手段として設計される溶接手段(2)と,前記ワークピースの表面(5)に対して,前記溶接継目が形成されるべき領域にクライオジェニック混合物(8)を噴射する,溶接方向(4)に沿って前記溶接手段(2)の後方に配置される第2ノズル(7)とを備えた,ワークピース同士を溶接するための溶接装置を使用することで,溶接装置(1)によって生成される溶接継目(3)が後に第2ノズル(7)によって洗浄され,ワークピース(6)の歪が冷却によって低減されること。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。 ア 引用発明における「大電力半導体装置」,「超音波接合」及び「ホーン」は,本願発明1における「パワー半導体モジュール」,「超音波溶接」及び「溶接工具(18)」に相当する。 イ 引用発明の「絶縁基板上の配線パターン」及び「半導体素子」の「リードフレーム」は,本願発明1の「2つの部品」に相当する。 ウ 部品の接合に当たって,部品の位置合わせをして接合界面を形成することは自明の手順であるから,引用発明の「a’)配線パターン3上に外部接続用リード5を設置する工程」は,本願発明1の「a)溶接される前記部品を位置合わせして溶接界面(16)を形成するステップ」に相当する。 エ 工具を用いた部品の接合に当たって,位置合わせされた部品に工具を位置合わせすることは自明の手順であるから,引用発明が「b)位置合わせされた前記部品に溶接工具(18)を位置合わせするステップ」を備えていることは明らかである。 オ 引用発明の「c’)前記工程a’)の後に,樹脂6を,前記配線パターン3上に設置した前記外部接続用リード5上に塗布する工程」と,本願発明1の「c)前記溶接界面(16)を少なくとも部分的に取囲む捕捉材料(20)を除去可能なように配置するステップ」とは,「c)前記溶接界面(16)を少なくとも部分的に取囲む捕捉材料(20)を配置するステップ」の範囲において一致する。 カ したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。 (一致点) 「パワー半導体モジュールを製造するために超音波溶接によって2つの部品を接続する方法であって,前記方法は, a)溶接される前記部品を位置合わせして溶接界面(16)を形成するステップと, b)位置合わせされた前記部品に溶接工具(18)を位置合わせするステップと, c)前記溶接界面(16)を少なくとも部分的に取囲む捕捉材料(20)を配置するステップとを備え,前記方法はさらに, d)前記溶接工具(18)を作動させることによって前記部品を接続する溶接ステップを備える,方法。」 (相違点) 本願発明1では,捕捉材料(20)が「発泡体」であり,「除去可能」なように配置され,「溶接ステップの後に洗浄手順を実行して捕捉された粒子とともに前記捕捉材料を除去する洗浄ステップ」を備えるのに対して,引用発明では,樹脂6は「ホーンの押圧と振動を減衰なく外部接続用リードに伝えなければならないので反応が進んでも硬化しない樹脂(例えばシリコン樹脂)が望ましいのはいうまでもなく」とされ,「前記配線パターン3と前記外部接続用リード5間と前記外部接続用リード5と前記ホーン間から発生する金属くずは,前記樹脂6内に留める事ができ飛散防止できる製造方法」である点。 (2)相違点についての判断 上記「第4」2(2)のとおり,引用文献2に記載された技術は,製鉄所・各種事業所などの定期的修繕時や各種の加工・施工建築現場においては,溶接・溶断作業が頻繁になされており,高熱の粉粒体が周辺環境に飛散することによって火災を発生させる危険性があることから,極めて簡易な処理にて,即ち多大な経費と時間を必要とすることなく,しかも安全且つ確実に高熱粉粒体を処理するために,高熱粉粒体の発生源の近傍に,泡状物を散布すると共に,発生した高熱の粉粒体を該泡状物中に落下させるようにしたものである。 一方,引用発明は,「絶縁基板上の配線パターン上に複数個の半導体素子を搭載し超音波接合によりリードフレームを接続する大電力半導体装置の製造方法」に関するものであって,引用発明における樹脂6は,「前記配線パターン3と前記外部接続用リード5間と前記外部接続用リード5と前記ホーン間から発生する金属くずは,前記樹脂6内に留める事ができ飛散防止できる」という機能を果たすものである。 してみれば,引用発明と引用文献2に記載された技術は,半導体素子の超音波接合による接続と,製鉄所・各種事業所などの定期的修繕時や各種の加工・施工建築現場における溶接・溶断作業という点において,その属する技術分野が異なり,引用発明の半導体素子の超音波接合による接続においては,引用文献2において課題とする,高熱の粉粒体が周辺環境に飛散することによって火災を発生させる危険性が存在しないことから,引用発明の樹脂6に替えて,引用文献2に記載された泡状物を用いる動機は存在しない。 さらに,上記相違点のうち,本願発明1の「溶接ステップの後に洗浄手順を実行」という構成は,上記「第4」3の引用文献3,及び,上記「第4」4の引用文献4に記載されているとおり,本願の優先日前において周知技術であったといえるが,「溶接ステップの後に洗浄手順を実行」という構成が周知技術であるとしても,引用文献3に記載された技術は,エネルギー密度が高いレーザ溶接のレーザ照射により生じる被溶接材表面での金属蒸発や溶融金属の飛散により発生した多量のヒュームやスパッタのクリーニングに関するものであり,引用文献4に記載された技術は,ガス溶接,手動アーク溶接,又はレーザビーム溶接のための手段として設計される溶接手段によって形成されるワークピース上の溶接継目の洗浄に関するものであって,引用発明に係る「絶縁基板上の配線パターン上に複数個の半導体素子を搭載し超音波接合によりリードフレームを接続する大電力半導体装置の製造方法」とは,溶接の種類,及び,溶接の対象が相違し,その属する技術分野が異なると認められるから,引用発明に前記周知技術を適用することには阻害要因がある。 したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2に記載された技術的事項及び上記周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2ないし11について 本願発明2ないし11も,本願発明1と同一の,捕捉材料(20)が「発泡体」であり,「除去可能」なように配置され,「溶接ステップの後に洗浄手順を実行して捕捉された粒子とともに前記捕捉材料を除去する洗浄ステップ」という構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,拒絶査定において引用された引用文献2ないし4に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 上記第5で判断したとおり,本願発明1ないし11は,当業者であっても,拒絶査定において引用された引用文献1ないし4に基づいて,容易に発明できたものとはいえない。したがって,原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-04-28 |
出願番号 | 特願2016-543334(P2016-543334) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01L)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 工藤 一光 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
小田 浩 加藤 浩一 |
発明の名称 | 粒子捕捉を用いる超音波溶接のための方法 |
代理人 | 特許業務法人深見特許事務所 |