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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
管理番号 1362112
審判番号 不服2018-2312  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-19 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 特願2015-507378「流量を調節し測定するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日国際公開、WO2013/159777、平成27年 5月21日国内公表、特表2015-514611〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年3月20日(パリ条約による優先権主張2012年4月27日、デンマーク国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月27日に手続補正がされ、平成29年2月15日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月22日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、同年10月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成30年2月19日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、同年9月19日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月25日に意見書が提出されるとともに、手続補正がなされ、平成31年4月18日付けで拒絶の理由(最後)が通知され(以下、「当審拒絶理由通知」という。)、令和1年10月18日に意見書が提出されたものである。


第2 当審拒絶理由通知の概要
平成31年4月18日付けの当審拒絶理由通知の概要は以下のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1?7
・引用文献等 1?4
引 用 文 献 等 一 覧
1.特開平9-39205号公報
2.特開平6-293130号公報
3.特開2004-130788号公報
4.特開2001-343316号公報


第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成30年12月25日に補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「【請求項1】
グラフィックプロセスにおけるインクの流量を調節するためのシステムであって、
第1の液体導管を介して第1のコンテナ(4)に、そして第2の液体導管(6b)を介してグラフィック印刷機(1)内の印刷モジュール(1a)に連結され、第1のコンテナ(4)からグラフィック印刷機(1)までインク(3)を圧送するように構成され、インク(3)の粘度によってその動作が影響を受ける、往復容積型ポンプ(5)、例えばピストンまたは膜ポンプと、
ポンプ(5)と接続され、ポンプ(5)内のポンプストロークを少なくとも測定するように構成されているセンサー(8)と、
センサー(8)と接続され、センサー(8)からのデータを分析して既定の時間(T_(1))全体にわたりポンプストローク数を決定するように構成されているコントローラ(9)と、を含むシステムにおいて、
コントローラ(9)が、ポンプ(5)内の測定されたポンプストローク数に基づいてインク(3)の粘度を決定するように構成され、
コントローラ(9)が、測定/決定された粘度から制御信号(17)を生成するように構成され、
システムには、コントローラ(9)からの制御信号(17)を受信し、インク(3)の粘度を調節するためにインク(3)を保持する第1のコンテナ(4)内に第2のコンテナ(14)から既定量の希釈剤(13)を追加するように構成された秤量ユニット(12)が含まれ、
前記ポンプストローク数が第1の閾値以下である場合、前記秤量ユニット(12)及び警報ユニット(10)の少なくとも一つを起動し、続いて、前記ポンプストローク数が第2の閾値より小さい場合、前記秤量ユニット(12)を起動した状態を維持し、
前記ポンプ(5)が、ほぼ恒常な電力供給で該ポンプ(5)を駆動するように構成されている制御ユニット(7)に接続されている、
ことを特徴とするシステム。」


第4 当審の判断
1.引用発明等
当審の拒絶の理由において引用され、本願の優先日前である平成9年2月10日に頒布された刊行物である特開平9-39205号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 印刷インキ等の流動体の流路に配置され該流動体を流動させるダイヤフラムポンプと、該ダイヤフラムポンプの脈動数を検出する検出器と、該検出器によって検出された脈動数から流動体の粘度を求める演算手段と、求められた粘度を直接表示する表示手段と、前記脈動数の検出を所定の時間ごとに行うとともに、求められた粘度が予め設定された粘度範囲から外れたときは希釈液供給用のバルブを設定時間だけ開く信号を出力する制御装置とを具備することを特徴とする粘度調節装置。
【請求項2】 脈動数を検出する検出器がダイヤフラムポンプのエア圧力を検出する圧力スイッチで構成されている請求項1に記載の粘度調節装置。」
(2)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、グラビア印刷等のインキの粘度の調節に使用するに適した粘度調節装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】グラビア印刷では、印刷工程中にインキが外気に曝されるため、溶剤が揮発してインキの粘度が上昇し、これが原因と見られる印刷汚れなどの不良が多発するのみならず、生インキ使用量が増加することによるムダが生じていた。この種の不良の発生を防止するため、従来は熟練工の感に頼った粘度管理を行っていたが、作業が煩雑となり、しかも高精度の粘度管理を行うことができなかった。一方、このような作業者の感に頼らずに粘度管理を行うことを目的として、インキの粘度をある種のパラメタ-として検出し、その検出結果に基づいて溶剤を補給する装置が開発されているが、従来の装置はインキの粘度の数値管理に、検出デ-タを複雑な数表を使用して粘度に換算する必要があったため、煩雑で作業ミスや故障が起こりやすく、結局人手に頼ることが多かった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】最近、食品業界をはじめとする需要家側の高成長に伴って、商品の付加価値を上げ、消費者の購買意欲を高めるため、包装資材の印刷をきわめて高品質なものとするよう要求されるようになった。例えば、細線、細字、ハ-フト-ンを多用するなど、印刷の高品質化が急激に進行している。グラビア印刷の版胴にしても、深度が7?15ミクロンという過酷な条件が要求されており、インキの粘度の厳格な管理が必要となっている。
【0004】そこで、本発明は、精密なハ-ド部分とコンピュ-タを用いるソフト部分とを組み合わせることにより、インキのような流動体の粘度管理を高精度に行うことのできる自動式の粘度調節装置を提供することを課題としている。」
(3)「【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面にあらわされた本発明の実施の形態について具体的に説明する。図1は本発明の粘度調節装置をあらわすもので、この粘度調節装置1は、ハ-ド部2とコンピュ-タを含む制御部3とで構成され、印刷用インキの全自動粘度コントロ-ルシステムを構成している。
【0010】ハ-ド部2のケ-シング4内には、流動体であるインキの流路となる配管5が設けられ、その中間部にダイヤフラムポンプ10が介装されている。ダイヤフラムポンプ10は、エア圧で振動させられるダイヤフラム10aを備え、このダイヤフラムの振動により流動体を圧送するポンプであり、回転部がないので、その部分の潤滑油を必要とせず、メインテナンスが簡単である。
【0011】エア配管15のエア供給口15aから導入された圧縮空気(エア)は、コック16、圧力調節器17、オイルカップ18、スピコン19等を経由してダイヤフラムポンプ10に供給され、そこから制御部3に送られたのち、エア吐出口15bから大気中に放出されるが、この間にダイヤフラムを振動させて、前記配管5内のインキを矢印方向に流動させる。5aはインキの吸入口、5bはその吐出口である。
【0012】ケ-シング4の上部には溶剤タンク20が設置され、この中に希釈液であるインキ用溶剤Dが収容されている。溶剤タンク20の底部には溶剤配管21が溶剤コック23を介して接続されている。この溶剤配管21の中間部には、耐圧防爆型電磁バルブ25が介装されている。
【0013】制御部3にはCPU(パソコン)30が設けられ、これに圧力センサである圧力スイッチ32が接続されている。圧力スイッチ32は、前記エア配管15に接触するように取りつけられており、エア配管(エアホ-ス)15内の圧力変動を検出してその検出信号をCPUに入力する。
【0014】一方、CPU30には粘度範囲設定器34、溶剤バルブ開時間設定器35、メモリ36、検出サイクル設定器37等が接続され、溶剤の添加を開始する粘度の限界設定、溶剤用電磁バルブ25を開く時間tの設定、対象とするインキを流動させた場合の脈動数と実際の粘度との関係(予備試験結果)の記憶、制御周期の設定等を行うことができるようになっている。
【0015】また、CPU30には溶剤添加中を知らせる溶剤添加ブザ-40と、求めた粘度を表示するデジタルカウンタ42が接続されている。図中、44は電源スイッチ、45は電源投入中を示すシグナルランプである。
【0016】この粘度調節装置1は、図4に示すように、印刷装置50にインキLを供給するシステム中に設置される。印刷装置50にはインキタンク51のインキがポンプ53で循環供給される。一方、インキタンク51内のインキは、粘度調節装置1のダイヤフラムポンプ10によって吸い上げられ、その時の単位時間内の脈動数が圧力スイッチ32によって検出される。
【0017】この検出結果はCPU30に入力され、予備実験結果に基づく関係式(メモリに記憶されている)により、粘度に換算される。得られた粘度値(センチポアズ)はデジタルカウンタ42によって小数点以下1桁まで表示される。
【0018】一方、粘度の管理限界(上限)が粘度範囲設定器34によって設定されており、測定された粘度がこの範囲を越えると電磁バルブ25が設定時間tだけ開かれる。このため、溶剤タンク内の溶剤がインキ中に添加され、インキの濃度が薄められる結果、粘度が低下する。この溶剤添加中は、ブザ-40がこれを報知する。なお、上記設定時間tは数秒ないし数十秒程度に設定するのが普通であるが、装置の大きさ、インキの種類等によって適当に設定すればよい。
【0019】また、粘度検出の周期すなわち制御サイクルは短い方が精度が高くなるが、通常は数秒ないし数十秒程度で十分である。なお、この管理デ-タすなわち測定粘度値と溶剤の添加時間(量)は、図示しないプリンタにより連続的に記録紙に記録される。
【0020】以上の説明では、流動体の粘度をダイヤフラムポンプの脈動で検出しているが、ダイヤフラムポンプ以外のポンプを用いて循環させつつ流動体の粘度を検出することができるものであれば、他の方法を採用することもできる。また、溶剤の添加量は、上記のようにバルブを一定時間だけ開く方法で制御してもよく、粘度値に応じてバルブ開度と開時間を制御するようにしてもよい。」

そうすると、上記(1)乃至(3)の記載事項から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「印刷装置50にインキLを供給するシステムであって、粘度調節装置1はその中に設置され、粘度調節装置1は、ハ-ド部2とコンピュ-タを含む制御部3とで構成され、制御部3にはCPU(パソコン)30が設けられ、CPU30には溶剤添加中を知らせる溶剤添加ブザ-40と、求めた粘度を表示するデジタルカウンタ42が接続され、グラビア印刷の印刷工程中に、印刷装置50にはインキタンク51のインキがポンプ53で循環供給され、インキタンク51内のインキは、粘度調節装置1のダイヤフラムポンプ10によって吸い上げられ、その時の単位時間内の脈動数が圧力スイッチ32によって検出され、この検出結果はCPU30に入力され、予備実験結果に基づく関係式(メモリに記憶されている)により、粘度に換算され、得られた粘度値(センチポアズ)はデジタルカウンタ42によって小数点以下1桁まで表示され、粘度の管理限界(上限)が粘度範囲設定器34によって設定されており、測定された粘度がこの範囲を越えると電磁バルブ25が設定時間tだけ開かれ、溶剤タンク内の溶剤がインキ中に添加され、インキの濃度が薄められる結果、粘度が低下し、溶剤添加中は、ブザー40がこれを報知し、この管理デ-タすなわち測定粘度値と溶剤の添加時間(量)は、プリンタにより連続的に記録紙に記録される、システム。」

2.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)前者の「インクの流量を調整する」ことについて、本願の願書に添付された特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「本願明細書等」という。)の【特許請求の範囲】及び【0015】を参酌すると、前者の「インクの流量を調整する」とは、実質的に「インクの粘度を調整すること」を意味するものと解される。
そして、後者の「システム」は、「グラビア印刷の印刷中に」「インキの濃度が薄められ」「粘度を低下」させるものであって、「グラフィックプロセスにおける」「インクの粘度を調整する」ものといえるから、前者の「システム」と後者の「システム」とは、「グラフィックプロセスにおけるインクの流量を調節するためのシステム」の点で共通する。
また、一般に、インクの粘度が変われば、インクの流量が変わることは自明な事項であることから、後者の「粘度が低下」していることは、インクの流量を変えている、すなわち、「インクの流量を調整」しているといえる。
(2)後者の「ポンプ53」は、「印刷装置50」に「インキタンク51のインキ」を「循環供給」するものであって、一般に、インクを供給するポンプは、インクの粘度が変われば、その動作に影響がでることは明らかなことであるから、前者の「往復容積型ポンプ(5)、例えばピストンまたは膜ポンプ」と後者の「ポンプ53」とは、「第1の液体導管を介して第1のコンテナ(4)に、そして第2の液体導管(6b)を介してグラフィック印刷機(1)内の印刷モジュール(1a)に連結され、第1のコンテナ(4)からグラフィック印刷機(1)までインク(3)を圧送するように構成され、インク(3)の粘度によってその動作が影響を受けるポンプ」との概念で共通する。
(3)後者の「圧力スイッチ32」は、「インキタンク51内のインキ」を吸い上げる「粘度調節装置1のダイヤフラムポンプ10」の「脈動数」、すなわち、ストローク数を検出するものであるから、前者の「センサー(8)」と後者の「圧力スイッチ32」とは、「ポンプストロークを少なくとも測定するように構成されている」ものとの概念で共通する。
(4)前者の「センサー(8)と接続され、センサー(8)からのデータを分析して既定の時間(T_(1))全体にわたりポンプストローク数を決定するように構成されているコントローラ(9)」について、本願明細書等には、「特定の一実施形態において、ポンプストローク数はコントローラ9内の1つ以上の既定の時間T_(1)全体にわたり蓄積され、その後、コントローラ9はインク3の粘度を決定する。」(【0052】参照。)とのみ記載されていることから、前者の「センサー(8)と接続され、センサー(8)からのデータを分析して既定の時間(T_(1))全体にわたりポンプストローク数を決定するように構成されているコントローラ(9)」は、「センサー(8)と接続され、センサー(8)からのポンプストローク数を既定の時間T_(1)全体にわたり蓄積し、インク3の粘度を決定するコントローラ(9)」と解される。
そして、後者の「CPU30」には、インキタンク51内のインキが、粘度調節装置1のダイヤフラムポンプ10によって吸い上げられた時の単位時間内の脈動数が圧力スイッチ32によって検出され、この検出結果が入力され、予備実験結果に基づく関係式(メモリに記憶されている)により、粘度に換算されるから、前者の「コントローラ(9)」と後者の「CPU30」とは、「センサー(8)と接続され、センサー(8)からのポンプストローク数を既定の時間T_(1)全体にわたり蓄積し、インク3の粘度を決定するコントローラ(9)」及び「コントローラ(9)が、ポンプ(5)内の測定されたポンプストローク数に基づいてインク(3)の粘度を決定するように構成され」との概念で共通する。
(5)後者の「CPU30」には、圧力スイッチ32によって検出した脈動数が入力され、測定された粘度が粘度の管理限界(上限)を越えると電磁バルブ25が設定時間tだけ開かれ、溶剤タンク内の溶剤がインキ中に添加されるものであって、電磁バルブ25が設定時間tだけ開かれるのは、測定された粘度が粘度の管理限界(上限)を越えたことに伴って、CPU30から電磁バルブ25を開放する信号が生成されて送信されたことによるものであることは明らかであるから、前者の「コントローラ(9)」と後者の「CPU30」とは、「測定/決定された粘度から制御信号(17)を生成するように構成され」との概念で共通する。
(6)前者の「第2のコンテナ(14)」と、後者の「溶剤タンク」とは、「希釈剤」を収容するものとの概念で共通する。
そして、後者の「電磁バルブ25」は、測定された粘度が粘度の管理限界(上限)を越えると、CPU30から開放する信号が送信されたことに起因し、電磁バルブ25が設定時間tだけ開かれ、溶剤タンク内の溶剤をインキ中に添加するものであって、電磁バルブ25が設定時間tだけ開かれると、設定時間tに対応した既定量のインキが添加されることとなるのは明らかであるから、前者の「秤量ユニット(12)」と、後者の「電磁バルブ25」とは、「コントローラ(9)からの制御信号(17)を受信し、インク(3)の粘度を調節するために第2のコンテナ(14)から既定量の希釈剤(13)を追加するように構成された」ものとの概念で共通する。

したがって、両者は、
「 グラフィックプロセスにおけるインクの流量を調節するためのシステムであって、
第1の液体導管を介して第1のコンテナ(4)に、そして第2の液体導管(6b)を介してグラフィック印刷機(1)内の印刷モジュール(1a)に連結され、第1のコンテナ(4)からグラフィック印刷機(1)までインク(3)を圧送するように構成され、インク(3)の粘度によってその動作が影響を受ける、ポンプと、
ポンプストロークを少なくとも測定するように構成されているセンサー(8)と、
センサー(8)と接続され、センサー(8)からのデータを分析して既定の時間(T1)全体にわたりポンプストローク数を決定するように構成されているコントローラ(9)と、を含むシステムにおいて、
コントローラ(9)が、ポンプ(5)内の測定されたポンプストローク数に基づいてインク(3)の粘度を決定するように構成され、
コントローラ(9)が、測定/決定された粘度から制御信号(17)を生成するように構成され、
システムには、コントローラ(9)からの制御信号(17)を受信し、インク(3)の粘度を調節するためにインク(3)を保持する第1のコンテナ(4)内に第2のコンテナ(14)から既定量の希釈剤(13)を追加するように構成された秤量ユニット(12)が含まれる、
システム。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
センサー(8)がポンプストロークを測定する対象が、本願発明では、第1のコンテナ(4)からグラフィック印刷機(1)までインク(3)を圧送するように構成された、往復容積型ポンプ(5)、例えばピストンまたは膜ポンプであるのに対し、引用発明では、粘度調節装置1のダイヤフラムポンプ10である点。

[相違点2]
本願発明が、「前記ポンプストローク数が第1の閾値以下である場合、前記秤量ユニット(12)及び警報ユニット(10)の少なくとも一つを起動し、続いて、前記ポンプストローク数が第2の閾値より小さい場合、前記秤量ユニット(12)を起動した状態を維持」するものであるのに対し、引用発明は、そのような特定を有していない点。

[相違点3]
ポンプ(5)が、本願発明では、「ほぼ恒常な電力供給で該ポンプ(5)を駆動するように構成されている制御ユニット(7)に接続されている」ものであるのに対し、引用発明は、そのようなものなのか定かでない点。

3.相違点についての判断
以下、上記各相違点について検討する。
(1)[相違点1]について
引用発明1の「ダイヤフラムポンプ10」は、「膜ポンプ」といえるものである。
そして、印刷機の分野において、インクを圧送するポンプにセンサーを設けることは周知の技術手段といえる(例えば、特開平6-293130号公報(【0007】?【0010】参照。)。以下「周知技術1」という。)。
してみると、引用発明において、ダイヤフラムポンプ10と、ダイヤフラムポンプ10によって吸い上げられたインキの単位時間内の脈動数を検出する圧力スイッチ32を、上記周知技術1を参酌し、ポンプ53に適用し、ポンプ53を膜ポンプとし、ポンプストロークを測定するようにすることにより、上記相違点1とすることは、当業者が容易になし得ることである。
よって、相違点1に係る本願発明は、引用発明において、上記周知技術1を参酌することにより、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)[相違点2]について
相違点2に係る本願発明は、「前記ポンプストローク数が第1の閾値以下である場合、前記秤量ユニット(12)及び警報ユニット(10)の少なくとも一つを起動し、続いて、前記ポンプストローク数が第2の閾値より小さい場合、前記秤量ユニット(12)を起動した状態を維持し」との記載であるところ、「ポンプストローク数が第1の閾値以下である場合」、「警報ユニット(10)」のみを起動したとすると、「ポンプストローク数が第2の閾値より小さい場合」、「秤量ユニット(12)を起動した状態を維持」することはできないから、相違点2に係る本願発明を「前記ポンプストローク数が第1の閾値以下である場合、前記秤量ユニット(12)を起動し、続いて、前記ポンプストローク数が第2の閾値より小さい場合、前記秤量ユニット(12)を起動した状態を維持し」と解して、以下検討する。
印刷機の分野において、インキの粘度を調整する方法として、印刷機に使用されるインキの粘度値に目標インキ粘度値(本願発明の第2の閾値に相当)と上限許容値(インキ粘度許容範囲)(本願発明の第1の閾値に相当)を設け、インキの粘度が上限許容値(インキ粘度許容範囲)を超えた場合には、希釈液が添加され、目標インキ粘度値になるように調整することは、周知の技術手段(例えば、特開2004-130788号公報(特に、【0035】参照。)及び特開2001-343316号公報(特に、【0043】参照。)。以下「周知技術2」という。)であって、上記相違2に係る本願発明は、周知技術2といえるものである。
そうすると、上記相違点2に係る本願発明は、引用発明に、上記周知技術2を適用することにより、当業者が容易に想到し得るものである。

(3)[相違点3]について
引用発明の「ポンプ53」は、インキタンク51のインキを印刷装置50へ循環供給するものであって、インキの粘度が粘度の管理限界(上限)を越えても、ポンプ53の駆動を変更制御するものではないから、引用発明の「ポンプ53」は、恒常な電力供給で駆動されているものと推認できる。
よって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、実質的な相違点ではない。
仮に、引用発明の「ポンプ53」が、恒常な電力供給で駆動されているものでないとしても、上記のとおり、引用発明の「ポンプ53」は、インクを循環供給するだけのものであるから、インクを循環供給するポンプとして、恒常な電力供給で駆動させることは、当業者が適宜なし得る程度の事項である。
よって、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、当業者が適宜なし得る程度の事項である。

請求人は、「しかしながら、引用文献1は、圧力スイッチ(32)によって単位時間内の脈動数が検出されるダイヤフラムポンプ(10)は、インクを印刷装置(50)に供給するポンプ(53)とは異なることを明示的に開示しており、これに反して、脈動数を検出するためのセンサーを印刷装置(50)にインクを供給する供給するポンプ(53)に設けることや、ポンプ(53)を印刷装置(50)及び粘度調節装置(1)で共用することは、引用文献1に記載された発明において技術的に矛盾を生じるものとなります。」と、主張する。
しかし、引用発明のダイヤフラムポンプ10は、インキタンク51内のインキを吸い上げ、循環させるだけのものであって、インキの粘度に応じた駆動制御を行うものではない点で、ポンプ53と何ら変わるところがないから、ダイヤフラムポンプ10と、ダイヤフラムポンプ10に設けられた圧力スイッチ32を、上記周知技術1を参酌し、ポンプ53に適用することで、技術的な矛盾が生じるものではない。

そして、本願発明によって奏される効果も、引用発明及び周知技術1及び2から、当業者が予測し得る範囲内のものである。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願出願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-28 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-17 
出願番号 特願2015-507378(P2015-507378)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藏田 敦之  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤本 義仁
清水 康司
発明の名称 流量を調節し測定するためのシステムおよび方法  
代理人 三橋 真二  
代理人 伊藤 公一  
代理人 伊藤 健太郎  
代理人 青木 篤  

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