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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K |
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管理番号 | 1362121 |
審判番号 | 不服2018-10009 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-07-23 |
確定日 | 2020-05-07 |
事件の表示 | 特願2016- 92209「コードケース」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日出願公開、特開2017-199889〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年5月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 5月17日 :手続補正書の提出 平成29年 6月 7日 :手続補正書の提出 平成29年 8月30日 :手続補正書の提出 平成29年 9月 4日 :手続補正書の提出 平成29年 9月 7日付け:拒絶理由通知書 平成29年10月 5日 :意見書、手続補正書の提出 平成29年12月22日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 平成30年 1月10日 :意見書、手続補正書の提出 平成30年 4月 9日付け:平成30年1月10日の手続補正(受付番号51800029432)についての補正の却下の決定、拒絶査定 平成30年 7月23日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 1年 5月14日 :手続補正書(補正対象は審判請求書)の提出 令和 1年 8月27日付け:平成30年7月23日の手続補正(受付番号51801499588)についての補正の却下の決定、拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書 令和 1年10月 3日 :意見書、手続補正書の提出 令和 1年11月 7日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和1年10月3日付けの手続補正(受付番号51902101786)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和1年10月3日付けの手続補正(受付番号51902101786)(以下「本件補正1」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正1の内容 (1)本件補正1後の特許請求の範囲の記載 本件補正1により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す。)。 「【請求項1】 その内壁がコードの太さを超える前後方向の幅を有し、該内壁がその前方側より見た正面形状が近似正多角形を含むその左右の側を短辺側とする近似長方形の形に形成されており、内部に収納される前記コードの巻きコード部の周りを囲う外側案内手段を成す周壁部と、前記周壁部の前側で前記巻きコード部の前側を被う前壁部と、前記周壁部の後側で前記巻きコード部の後側を被う後壁部と、前記巻きコード部の周りの前記周壁部の左右の側壁側の一部位に設けた前記コードを左右方向に出し入れ可能な巻き込み側コード口と、前記周壁部の左右の側壁側の他の部位に設けた前記コードを左右方向に出し入れ可能な巻き出し側コード口を備える開閉可能に分割されたコードケースであって、前記巻きコード部は前記コードを前記巻き込み側コード口と前記巻き出し側コード口の間で前記周壁部の前記内壁に倣って巻いた巻きの位置や大きさを限定しない巻きコードであることを特徴とするコードケース。」 (2)本件補正1前の特許請求の範囲の記載 平成30年1月10日付けの手続補正(受付番号51800029432)及び平成30年7月23日の手続補正(受付番号51801499588)は却下されたので、本件補正1前の、特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成29年10月5日に提出された手続補正(受付番号51702111269)により補正された次のとおりである。 「【請求項1】 その内壁がコードの太さを超える前後方向の幅を有し、該内壁が近似正多角形を含む近似長方形の正面形状の形に形成され内部に収納される前記コードの巻きコード部の周りを囲う周壁部と、前記周壁部の前側で前記巻きコード部の前側を被う前壁部と、前記周壁部の後側で前記巻きコード部の後側を被う後壁部と、前記巻きコード部の周りの前記周壁部の一部位に設けた前記コードの出し入れ可能な巻き込み側コード口と、前記周壁部の他の部位に設けた前記コードの出し入れ可能な巻き出し側コード口を備える開閉可能に分割されたコードケースであって、前記巻きコード部は前記コードを巻きの位置や大きさを限定しない巻きコードであることを特徴とするコードケース。」 2 補正の適否 請求項1について本件補正1は、 本件補正1前の請求項1に記載の「内壁」について、「その前方側より見た正面形状が」「その左右の側を短辺側とする近似長方形の形に形成されており」と限定し、 本件補正1前の請求項1に記載の「周壁部」について、「外側案内手段を成す」と限定し、 本件補正1前の請求項1に記載の巻き込み側コード口を設けた「一部位」について、「左右の側壁側の一部位」と限定し、 本件補正1前の請求項1に記載の巻き出し側コード口を設けた「他の部位」について、「左右の側壁側の他の部位」と限定し、 本件補正1前の請求項1に記載の「コードの出し入れ可能な巻き込み側コード口」の出し入れ方向について、「左右方向」と限定し、 本件補正1前の請求項1に記載の「コードの出し入れ可能な巻き出し側コード口」の出し入れ方向について、「左右方向」と限定し、 本件補正1前の請求項1に記載の「巻きコード部」について、コードを「前記巻き込み側コード口と前記巻き出し側コード口の間で前記周壁部の前記内壁に倣って巻いた」と限定するものである。 したがって、本件補正1は、本件補正1前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 よって、本件補正1は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項の目的とするものである。 そこで、本件補正1後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (1)本件補正発明1 本件補正発明1は、上記「1 (1)」に記載したとおりのものである。 (2)引用文献及びその記載事項 令和1年8月27日付け拒絶理由通知に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭58-483号(実開昭58-120155号)のマイクロフィルム(昭和58年8月16日公開、以下「引用文献」という。)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様)。 a 「本考案の他の例では前記手段を2個のケース部分て構成し、一方のケース部分を他方のケース部分上に摺動自在に嵌め合せてケースを構成し得るようにし、少なくとも一方のケース部分に少なくとも1個の孔を形成し、該孔と他方のケース部分の壁部分とでケースの閉止時コード通路が形成されるようにするのが良い。実際上かかる本考案ケースは下側ケース部分と蓋側ケース部分とで構成する。電気コードを挿入するに際しては、蓋側ケース部分を下側ケース部分から除去した後、コードの余分な長さ部分を折畳んたり、巻いた状態でケース部分内に挿入し、はみ出しコード部分を孔内に挿通した後、蓋側ケース部分を再度かぶせる。」(第4頁第5-17行) b 「第1図に示す本考案電気コード収納ケースは周面1及び円形端面2を具える。周面1にその全長に亘り溝孔3を形成し、これを経て電気コードを折畳んだ状態又は巻いた状態で挿入し得るようにする。端面2に溝孔3を樋状開口4となす切欠きを形成すると共に、該開口の底部に連なる円形コード孔5を形成する。長過ぎる電気コードを挿入する場合、はみ出しコード部分を孔5内に位置させる。一層長いコードが必要な場合、-方又は双方のはみ出しコード部分を引出せばよい。」(第5頁第16行-第6頁第5行) c 「第2図aに示す電気コード収納ケースは2個のケース部分6,7で構成し、ケース部分7をケース部分6上で摺動自在とする。両ケース部分の短かい対向端面8,9に夫々細長切欠溝10,11を形成する。両ケース部分を互にかぶせ合せるとコード通路12が形成される(第2図b参照)。」(第6頁第6-11行) d 「 ![]() 」 上記図2bより、6面の壁部分(以下、「左壁部、右壁部、上壁部、下壁部、前壁部、後壁部」という。)を備えた左右方向に長い直方体状の電気コード収納ケースが見て取れる。また、コード通路12が、左壁部及び右壁部に設けられていることも見て取れる したがって、上記a,c及び図2bの記載より引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「左壁部、右壁部、上壁部、下壁部、前壁部、後壁部を備えた左右方向に長い直方体状の電気コード収納ケースであって、 電気コード収納ケースは、2個のケース部分6,7で構成し、 ケース部分7をケース部分6上で摺動自在とし、 両ケース部分の短かい対向端面8,9に夫々細長切欠溝10,11を形成し、 両ケース部分を互にかぶせ合せるとコード通路12が形成され、 コードの余分な長さ部分を巻いた状態でケース部分内に挿入するものであり、 コード通路12は、左壁部及び右壁部に設けられる電気コード収納ケース。」 (3)対比 本願補正発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明は「電気コード収納ケース」にコードを収納するのであるから、「前壁部」と「後壁部」との間は、コードの太さを超える幅を有することは明らかである。そうすると、「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」の内壁は、コードの太さを超える前後方向の幅を有しているといえる。 そして、引用発明の「電気コード収納ケース」は、「左右方向に長い直方体状」であるから、「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」の内壁は、前方側より見た正面形状が左右の側を短辺側とする長方形状を構成している。 また、引用発明の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」は、「コードの余分な長さ部分を巻いた」部分の周りを囲んでいる周壁として構成しているといえる。 よって、引用発明の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」は、本願補正発明1の「その内壁がコードの太さを超える前後方向の幅を有し、該内壁がその前方側より見た正面形状が近似正多角形を含むその左右の側を短辺側とする近似長方形の形に形成されており、内部に収納される前記コードの巻きコード部の周りを囲う」「周壁部」に相当する。 イ 上記(1)で示したように、引用発明の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」は、周壁部を構成しているので、引用発明の「前壁部」及び「後壁部」は、それぞれ、本願補正発明1の「前記周壁部の前側で前記巻きコード部の前側を被う前壁部」及び「前記周壁部の後側で前記巻きコード部の後側を被う後壁部」に相当する。 ウ 引用発明の「左壁部」及び「右壁部」に設けた「コード通路12」は、本願補正発明1の「前記巻きコード部の周りの前記周壁部の左右の側壁側の一部位に設けた前記コードを」「出し入れ可能な巻き込み側コード口」と、「前記周壁部の左右の側壁側の他の部位に設けた前記コードを」「出し入れ可能な巻き出し側コード口」に相当する。 そして、引用発明の「コード通路12」は、「対向端面8,9に夫々細長切欠溝10,11を形成し」た「ケース部分7」及び「ケース部分6」を、「互にかぶせ合せ」て形成されてるので、引用発明の「2個のケース部分6,7で構成し」た「電気コード収納ケース」は、本願補正発明1の「前記巻きコード部の周りの前記周壁部の左右の側壁側の一部位に設けた前記コードを」「出し入れ可能な巻き込み側コード口と、前記周壁部の左右の側壁側の他の部位に設けた前記コードを」「出し入れ可能な巻き出し側コード口を備える開閉可能に分割されたコードケース」に相当する。 エ 引用発明の「電気コード収納ケース」は、内部にコード仕切りなどが存在しないので(図2参照)、「コードの余分な長さ部分を巻いた」部分の位置や大きさを限定していない。 よって、引用発明の「電気コード収納ケース」は、本願補正発明1の「前記巻きコード部は前記コードを」「巻きの位置や大きさを限定しない巻きコードである」「コードケース」に相当する。 すると本願補正発明1と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。 (一致点) 「その内壁がコードの太さを超える前後方向の幅を有し、該内壁がその前方側より見た正面形状が近似正多角形を含むその左右の側を短辺側とする近似長方形の形に形成されており、内部に収納される前記コードの巻きコード部の周りを囲う周壁部と、前記周壁部の前側で前記巻きコード部の前側を被う前壁部と、前記周壁部の後側で前記巻きコード部の後側を被う後壁部と、前記巻きコード部の周りの前記周壁部の左右の側壁側の一部位に設けた前記コードを出し入れ可能な巻き込み側コード口と、前記周壁部の左右の側壁側の他の部位に設けた前記コードを出し入れ可能な巻き出し側コード口を備える開閉可能に分割されたコードケースであって、前記巻きコード部は前記コードを巻きの位置や大きさを限定しない巻きコードであるコードケース。」 (相違点1) 周壁部について、本願補正発明1は、巻きコード部の周りを囲う「外側案内手段を成す」周壁部であるのに対して、引用発明の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」にはそのような特定がない点。 (相違点2) 巻き込み側コード口及び巻き出し側コード口について、本願補正発明1は、「コードを左右方向に出し入れ可能」であるのに対して、引用発明は、「コード通路12」にそのような特定がない点。 (相違点3) 巻きコード部について、本願補正発明1は、「前記コードを前記巻き込み側コード口と前記巻き出し側コード口の間で前記周壁部の前記内壁に倣って巻いた」ものであるのに対して、引用発明は、「コードの余分な長さ部分を巻いた状態でケース部分内に挿入するものであ」るが、そのような特定がない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 事案に鑑み、相違点1、3についてまとめて検討する。 引用発明は、「コードの余分な長さ部分を巻いた状態でケース部分内に挿入」しているので、挿入した後に、「巻いた状態」である「コード」は元の状態に戻ろうとして広がり、「電気コード収納ケース」の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」又は「下壁部」の2箇所以上の内壁に接した状態となることは明らかである。 そうすると、「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」が、「巻いた状態」である「コード」の周りを囲う外側案内手段となっているといえる。 また、引用発明は、上記のように「巻いた状態」である「コード」が内壁に接した状態であるから、「左壁部」の「コード通路12」と、「右壁部」の「コード通路12」との間で、「コード」が内壁に倣って巻かれているといえる。 そうすると、上記相違点1及び3は、実質的な相違点ではない。 相違点2について 引用文献に、電気コード収納ケースに長過ぎる電気コードを挿入する場合、はみ出しコード部分をコード孔内に位置させ、一層長いコードが必要な場合、一方又は双方のはみ出しコード部分を引出せばよいと記載されているように(上記「(2)b」)、コードの長さを調整する場合に、コードを引き出すなどして、左右方向にコードを出し入れすることは通常行われることにすぎない。 したがって、引用発明の「電気コード収納ケース」において、「コード通路12」を、コードを左右方向に出し入れ可能な構造として、上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、上記相違点1ないし3を総合的に判断しても、本願補正発明1が奏する効果は引用発明から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。 よって、本願補正発明1は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)請求人の主張について 請求人は、令和1年10月3日付けの意見書において、 「即ち、引用発明は、その明細書からは、電気コードを折畳んだり、巻いた状態で収納可能で、はみ出しコード部分を引き出し可能な電気コード収納ケースでありますが、図にコードが示されておらず、従って、コードの太さとケースの大きさとの関係、巻きコードの巻きの大きさや巻き方、ケース内での周壁部や前後の壁部に対する巻きコードの向き、巻きコードと各壁部との間の関係等、ケースと巻きコードの相対的関係が不明であります。 また、引用発明の明細書には、電気コードを収めるケースを小さくコンパクトにするとか、電気コードをケース内に安定に保持するとか、ケース内での電気コードの乱れを防止するなどの記載や図面の表示などもありません。又、これらの事柄について、何らかの示唆を与える記載や、予見させるものも示されておりません。 ケースの形や大きさに関わりなく、大きなケースの中に、任意の太さのコードを任意に巻いてその向きなどに構わずに挿入するものでは、既に人の手で扱われ、曲がり癖や捩れ癖の付いた電気コードは、元の形に戻ろうとする自らの力で、ケース内を勝手な方向にバラケてしまうことになります。 引用発明の『電気コード収納ケース』は、本願発明が目的とする、ケース内のコードの巻きの原形が維持され、コードのねじれや乱れが生じないように収納する機能を有しておりません。」と主に主張している。(「(7) 本願発明と引用発明の対比」の欄) しかしながら、上記「4 判断」で相違点1,3で検討したとおり、引用発明の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」は、「巻いた状態」である「コード」の周りを囲う外側案内手段となっており、「左壁部」の「コード通路12」と、「右壁部」の「コード通路12」との間で、「コード」が内壁に倣って巻かれているといえるので、本願発明と、ケース内のコードの巻きの原形が維持され、コードのねじれや乱れが生じないように収納するための構成で相違はなく、上記主張を採用することができない。 (6)むすび 以上のとおり、本件補正1は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 令和1年11月7日付けの手続補正(受付番号51902345885)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和1年11月7日付けの手続補正(受付番号51902345885)(以下「本件補正2」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正2の内容 (1)本件補正2後の特許請求の範囲の記載 本件補正2により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す。)。 「【請求項1】 その内壁がコードの太さを超える前後方向の幅を有し、該内壁がその前後方向より見た正面形状が近似正多角形を含む近似長方形に形成されており、内部に収納される前記コードの巻きコード部の周りを囲う外側案内手段を成す周壁部と、前記周壁部の前側で前記巻きコード部の前側を被う前壁部と、前記周壁部の後側で前記巻きコード部の後側を被う後壁部と、前記巻きコード部の周りの前記周壁部の一部位に設けられ前記コードを前記巻きコード部の巻き込み端に沿う方向に出し入れ可能な巻き込み側コード口と、前記周壁部の前記巻き込み側コード口より任意の角度離隔した位置の一部位に設けられ前記コードを前記巻きコード部の巻き出し端に沿う方向に出し入れ可能な巻き出し側コード口を備える開閉可能に分割されたコードケースであって、前記巻きコード部は前記コードを前記巻き込み側コード口と前記巻き出し側コード口の間で前記周壁部の前記内壁に倣って巻かれた巻きの位置や大きさを限定しない巻きコードであることを特徴とするコードケース。」 (2)本件補正2前の特許請求の範囲の記載 平成30年1月10日付けの手続補正(受付番号51800029432)、平成30年7月23日の手続補正(受付番号51801499588)及び令和1年10月3日付けの手続補正(受付番号51902101786)は却下されたので、本件補正2前の、特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成29年10月5日に提出された手続補正(受付番号51702111269)による。)により補正された次のとおりである。 「【請求項1】 その内壁がコードの太さを超える前後方向の幅を有し、該内壁が近似正多角形を含む近似長方形の正面形状の形に形成され内部に収納される前記コードの巻きコード部の周りを囲う周壁部と、前記周壁部の前側で前記巻きコード部の前側を被う前壁部と、前記周壁部の後側で前記巻きコード部の後側を被う後壁部と、前記巻きコード部の周りの前記周壁部の一部位に設けた前記コードの出し入れ可能な巻き込み側コード口と、前記周壁部の他の部位に設けた前記コードの出し入れ可能な巻き出し側コード口を備える開閉可能に分割されたコードケースであって、前記巻きコード部は前記コードを巻きの位置や大きさを限定しない巻きコードであることを特徴とするコードケース。」 2 補正の適否 請求項1について本件補正2は、 本件補正2前の請求項1に記載の「内壁」について、「その前後方向より見た正面形状が近似正多角形を含む近似長方形に形成されており」と限定し、 本件補正2前の請求項1に記載の「周壁部」について、「外側案内手段を成す」と限定し、 本件補正2前の請求項1に記載の「コードの出し入れ可能な巻き込み側コード口」の出し入れ方向について、「前記巻きコード部の巻き込み端に沿う方向」に限定し、 本件補正2前の請求項1に記載の「巻き出し側コード口」を設けた場所を、周壁部の「前記巻き込み側コード口より任意の角度離隔した位置の一部位」と限定し、 本件補正2前の請求項1に記載の「コードの出し入れ可能な巻き出し側コード口」の出し入れ方向について、「前記巻きコード部の巻き出し端に沿う方向」に限定し、 本件補正2前の請求項1に記載の「巻きコード部」について、コードを「前記巻き込み側コード口と前記巻き出し側コード口の間で前記周壁部の前記内壁に倣って巻かれた」と限定するものである。 したがって、本件補正2は、本件補正2前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 よって、本件補正2は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項の目的とするものである。 そこで、本件補正2後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明2」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。 (1)本件補正発明2 本件補正発明2は、上記「1 (1)」に記載したとおりのものである。 (2)引用文献及びその記載事項 引用文献及びその記載事項については、上記「第2 [理由] 2(2)」に記載したとおりである。 (3)対比 本願補正発明2と引用発明とを対比する。 ア 引用発明は「電気コード収納ケース」にコードを収納するのであるから、「前壁部」と「後壁部」との間は、コードの太さを超える幅を有することは明らかである。そうすると、「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」の内壁は、コードの太さを超える前後方向の幅を有しているといえる。 そして、引用発明の「電気コード収納ケース」は、「直方体状」であるから、「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」の内壁は、前後方向より見た正面形状が長方形状を構成している。 また、引用発明の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」は、「コードの余分な長さ部分を巻いた」部分の周りを囲んでいる周壁として構成しているといえる。 よって、引用発明の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」は、本願補正発明2の「その内壁がコードの太さを超える前後方向の幅を有し、該内壁がその前後方向より見た正面形状が近似正多角形を含む近似長方形に形成されており、内部に収納される前記コードの巻きコード部の周りを囲う」「周壁部」に相当する。 イ 上記(1)で示したように、引用発明の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」は、周壁部を構成しているので、引用発明の「前壁部」及び「後壁部」は、それぞれ、本願補正発明2の「前記周壁部の前側で前記巻きコード部の前側を被う前壁部」及び「前記周壁部の後側で前記巻きコード部の後側を被う後壁部」に相当する。 ウ 引用発明の「左壁部」及び「右壁部」に設けた「コード通路12」は、任意の角度離隔しているので、本願補正発明2の「前記巻きコード部の周りの前記周壁部の一部位に設られ前記コードを」「出し入れ可能な巻き込み側コード口」と、「前記周壁部の前記巻き込み側コード口より任意の角度離隔した位置の一部位に設けられ前記コードを」「出し入れ可能な巻き出し側コード口」に相当する。 そして、引用発明の「コード通路12」は、「対向端面8,9に夫々細長切欠溝10,11を形成し」た「ケース部分7」及び「ケース部分6」を、「互にかぶせ合せ」て形成されてるので、引用発明の「2個のケース部分6,7で構成し」た「電気コード収納ケース」は、本願補正発明2の「前記巻きコード部の周りの前記周壁部の一部位に設られ前記コードを」「出し入れ可能な巻き込み側コード口と、前記周壁部の前記巻き込み側コード口より任意の角度離隔した位置の一部位に設けられ前記コードを」「出し入れ可能な巻き出し側コード口を備える開閉可能に分割されたコードケース」に相当する。 エ 引用発明の「電気コード収納ケース」は、内部にコード仕切りなどが存在しないので(図2参照)、「コードの余分な長さ部分を巻いた」部分の位置や大きさを限定していない。 よって、引用発明の「電気コード収納ケース」は、本願補正発明2の「前記巻きコード部は前記コードを」「巻きの位置や大きさを限定しない巻きコードである」「コードケース」に相当する。 すると本願補正発明2と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。 (一致点) 「その内壁がコードの太さを超える前後方向の幅を有し、該内壁がその前後方向より見た正面形状が近似正多角形を含む近似長方形に形成されており、内部に収納される前記コードの巻きコード部の周りを囲う周壁部と、前記周壁部の前側で前記巻きコード部の前側を被う前壁部と、前記周壁部の後側で前記巻きコード部の後側を被う後壁部と、前記巻きコード部の周りの前記周壁部の一部位に設けられ前記コードを出し入れ可能な巻き込み側コード口と、前記周壁部の前記巻き込み側コード口より任意の角度離隔した位置の一部位に設けられ前記コードを出し入れ可能な巻き出し側コード口を備える開閉可能に分割されたコードケースであって、前記巻きコード部は前記コードを巻きの位置や大きさを限定しない巻きコードであるコードケース。」 (相違点4) 周壁部について、本願補正発明2は、巻きコード部の周りを囲う「外側案内手段を成す」周壁部であるのに対して、引用発明の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」にはそのような特定がない点。 (相違点5) 巻き込み側コード口及び巻き出し側コード口について、本願補正発明2は、「前記巻きコード部の巻き込み端に沿う方向に出し入れ可能な」巻き込み側コード口及び「前記巻きコード部の巻き出し端に沿う方向に出し入れ可能な」巻き出し側コード口であるのに対して、引用発明は、「コード通路12」にそのような特定がない点。 (相違点6) 巻きコード部について、本願補正発明2は、「前記コードを前記巻き込み側コード口と前記巻き出し側コード口の間で前記周壁部の前記内壁に倣って巻かれた」ものであるのに対して、引用発明は、「コードの余分な長さ部分を巻いた状態でケース部分内に挿入するものであ」るが、そのような特定がない点。 (4)判断 上記相違点について検討する。 事案に鑑み、相違点4、6についてまとめて検討する。 引用発明は、「コードの余分な長さ部分を巻いた状態でケース部分内に挿入」しているので、挿入した後に、「巻いた状態」である「コード」は元の状態に戻ろうとして広がり、「電気コード収納ケース」の「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」又は「下壁部」の2箇所以上の内壁に接した状態となることは明らかである。 そうすると、「左壁部」、「右壁部」、「上壁部」及び「下壁部」が、「巻いた状態」である「コード」の周りを囲う外側案内手段となっているといえる。 また、引用発明は、上記のように「巻いた状態」である「コード」が内壁に接した状態であるから、「左壁部」の「コード通路12」と、「右壁部」の「コード通路12」との間で、「コード」が内壁に倣って巻かれているといえる。 そうすると、上記相違点4及び6は、実質的な相違点ではない。 相違点5について 引用文献に、電気コード収納ケースに長過ぎる電気コードを挿入する場合、はみ出しコード部分をコード孔内に位置させ、一層長いコードが必要な場合、一方又は双方のはみ出しコード部分を引出せばよいと記載されているように(上記「第2 [理由] 2 (2)b」)、コードの長さを調整する場合に、コードを引き出すなどして、コードに沿う方向に出し入れすることは、通常行われることにすぎない。 したがって、引用発明の「電気コード収納ケース」において、「コード通路12」を、コードに沿う方向にコードの出し入れが可能な構造として、上記相違点5に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、上記相違点4ないし6を総合的に判断しても、本願補正発明2が奏する効果は引用発明から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。 よって、本願補正発明2は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正2は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第4 本願発明について 1 本願発明 本件補正1及び2は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年10月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 [理由] 1 (2)本件補正1前の特許請求の範囲の記載」に「請求項1」として記載したとおりのものであり、次に記す(再掲載)。 「【請求項1】 その内壁がコードの太さを超える前後方向の幅を有し、該内壁が近似正多角形を含む近似長方形の正面形状の形に形成され内部に収納される前記コードの巻きコード部の周りを囲う周壁部と、前記周壁部の前側で前記巻きコード部の前側を被う前壁部と、前記周壁部の後側で前記巻きコード部の後側を被う後壁部と、前記巻きコード部の周りの前記周壁部の一部位に設けた前記コードの出し入れ可能な巻き込み側コード口と、前記周壁部の他の部位に設けた前記コードの出し入れ可能な巻き出し側コード口を備える開閉可能に分割されたコードケースであって、前記巻きコード部は前記コードを巻きの位置や大きさを限定しない巻きコードであることを特徴とするコードケース。」 2 拒絶の理由 令和1年8月27日付けで当審が通知した拒絶の理由のうち理由1は、次のとおりのものである。 本願発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:実願昭58-000483号(実開昭58-120155号)のマイクロフィルム 3 引用文献 当審が通知した拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、上記「第2 [理由] 2 (2)引用文献及びその記載事項」に記載したとおりである。 4 対比、判断 本願発明は、本願補正発明1から、上記「第2 [理由] 1 本件補正1の内容」で検討した本件補正1に係る、「内壁」を「その前方側より見た正面形状が」「その左右の側を短辺側とする近似長方形の形に形成されており」とする限定、「周壁部」を「外側案内手段を成す」とする限定、巻き込み側コード口を設けた「一部位」を「左右の側壁側の一部位」とする限定、巻き出し側コード口を設けた「他の部位」を「左右の側壁側の他の部位」とする限定、「コードの出し入れ可能な巻き込み側コード口」の出し入れ方向を「左右方向」とする限定、「コードの出し入れ可能な巻き出し側コード口」の出し入れ方向を「左右方向」とする限定、及び、「巻きコード部」を、コードを「前記巻き込み側コード口と前記巻き出し側コード口の間で前記周壁部の前記内壁に倣って巻いた」と限定を削除するものである。 したがって、本願発明と引用発明を対比すると、本願発明と引用発明の相違点は次のとおりであり、その余の点で一致する。 (相違点) 巻き込み側コード口及び巻き出し側コード口について、本願発明は、「コードの出し入れ可能」であるのに対して、引用発明は、「コード通路12」にそのような特定がない点。 ここで、上記相違点について検討する。 引用文献1に、電気コード収納ケースに長過ぎる電気コードを挿入する場合、はみ出しコード部分をコード孔内に位置させ、一層長いコードが必要な場合、一方又は双方のはみ出しコード部分を引出せばよいと記載されているように(上記「第2 [理由] 2 (2)b」)、コードの長さを調整する場合に、コードを引き出すなどして、コードを出し入れすることは通常行われることにすぎない。 したがって、引用発明の「電気コード収納ケース」において、「コード通路12」を、コードを出し入れ可能な構造として、上記相違点に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たことである。 よって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-03-06 |
結審通知日 | 2020-03-10 |
審決日 | 2020-03-24 |
出願番号 | 特願2016-92209(P2016-92209) |
審決分類 |
P
1
8・
56-
WZ
(H05K)
P 1 8・ 121- WZ (H05K) P 1 8・ 575- WZ (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石坂 博明 |
特許庁審判長 |
國分 直樹 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 山澤 宏 |
発明の名称 | コードケース |