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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1362130
審判番号 不服2018-15261  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-19 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 特願2016-558180「複数の材料から形成された芯線を有する血管内装置、システム、及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日国際公開、WO2015/148383、平成29年 5月25日国内公表、特表2017-512566〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年(平成26年)3月26日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成28年 9月20日 :国内書面の提出
平成28年 9月27日 :手続補正書の提出
平成30年 2月26日 :手続補正書の提出
平成30年 3月16日付け:拒絶理由通知書
平成30年 6月25日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 7月19日付け:拒絶査定
平成30年11月19日 :審判請求書、同時に手続補正書の提出


第2 本願発明
本願の各請求項に係る発明は、平成30年11月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
感知ガイドワイヤであって、当該ガイドワイヤは、
内側部分、及び該内側部分を取り囲む外側部分を含むコア部材であって、前記内側部分は、第1の材料から形成され、前記外側部分は、第1の材料とは異なる第2の材料から形成され、前記内側部分及び前記外側部分は、前記コア部材を形成するために一緒に共延伸される2つの異なる金属から形成される、コア部材と、
該コア部材を取り囲む単一の外層と、
前記コア部材の先端部分に結合される感知素子と、
前記単一の外層内に埋め込まれた少なくとも1つの通信線であって、該少なくとも1つの通信線及び前記コア部材は、前記単一の外層によって分離される、少なくとも1つの通信線と、を備え、
前記単一の外層は、前記コア部材と前記少なくとも1つの通信線との両方に直接的に接触し、前記感知素子は、前記少なくとも1つの通信線に通信可能に結合される、
ガイドワイヤ。」


第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1及び2に記載された発明、及び、引用文献4に記載された周知の技術的事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:米国特許出願公開第2007/0255145号明細書
引用文献2:米国特許出願公開第2003/0216668号明細書
引用文献4:国際公開第2014/005012号


第4 引用文献及び引用発明
1 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳及び下線は、当審が付与したものである。以下同様。)
(1)「[0024]In FIG. 2 a first embodiment of a sensor and guide wire assembly 21 according to the present invention is schematically illustrated. The sensor and guide wire assembly 21 comprises a sensor element 22, which is arranged in a distal portion of a sensor guide wire 23. More specifically, the sensor guide wire 23 comprises a distal tip 24, a distal coil spring 25, a jacket or sleeve 26, a core wire 28, and a proximal tube 29. The distal coil spring 25 is attached to the distal tip 24 and extends to the jacket 26, which serves as a housing for the sensor element 22. Unlike in a conventional design of a sensor guide wire, an example of which is shown in FIG. 1, the sensor guide wire 23 comprises further a polymer layer 27, which extends between the jacket 26 and the proximal tube 29. The distal coil spring 25, the jacket 26, the polymer layer 27 and the proximal tube 29 are all tubular members having essentially equal outer diameters and surrounding different consecutive portions of the core wire 28. The sensor element 22 is mounted in a recess 30 in a distal portion of the core wire 28, and is through a window in the jacket 26 in communication with the medium, e.g. blood, surrounding the sensor and guide wire assembly 21. The sensor and guide wire assembly 21 comprises further a number of signal transmitting cables 31, the distal ends of which are electrically connected to the sensor element 22 and which extend along the core wire 28 to the proximal end portion of the sensor and guide wire assembly 21, where each signal transmitting cable 31 is electrically connected to a conductive member 32. The conductive members 32 are electrically insulated from each other by insulating members 33, so as to form a male connector adapted for connection to a corresponding female connector of an external signal conditioning and display unit (not shown in FIG. 2 ).」(図2には、本発明に係るセンサー・ガイドワイヤ・アセンブリ21の第1実施例が概念的に示されている。センサー・ガイドワイヤ・アセンブリ21は、センサーガイドワイヤ23の遠位部分に配置されたセンサーエレメント22を有している。より具体的には、センサーガイドワイヤ23は、遠位端24、遠位コイルバネ25、ジャケット又はスリーブ26、コアワイヤ28、及び、近位チューブ29を有している。遠位コイルバネ25は、遠位端24に取り付けられており、センサーエレメント22のハウジングとしての役割を担うジャケット26に向かって延びている。図1に示された例のようなセンサーガイドワイヤの従来のデザインとは異なり、センサーガイドワイヤ23はさらに、ジャケット26と近位チューブ29との間に延在するポリマー層27を有している。遠位コイルバネ25、ジャケット26、ポリマー層27及び近位チューブ29はすべて、基本的に同じ外径を有しており、コアワイヤ28の連続する異なる部位を取り囲んでいる。センサーエレメント22は、コアワイヤ28の遠位部にある窪み部30に取り付けられており、ジャケット26にある窓を通じてセンサーやガイドワイヤアセンブリ21の周囲に存在する血液などの媒体と接触する。センサー・ガイドワイヤ・アセンブリ21はさらにいくつかの信号伝達ケーブル31を有しており、その遠位端は、センサーエレメント22に電気接続されるとともに、コアワイヤ28に沿ってセンサー・ガイドワイヤ・アセンブリ21の近位端部にまで延びている。そして、信号伝達ケーブル31のそれぞれは導電部材32と電気的に接続されている。導電部材32は、外部の信号調整ユニットや表示ユニット(図2には示されていない。)のメス型コネクタに対応して接続する雄型コネクタが形成できるように、絶縁部材33によって互いに電気的に絶縁されている。)
(2)「[0030]A fourth embodiment of a sensor and guide wire assembly according to the present invention comprises a sensor guide wire 63 having a cross-section which is schematically illustrated in FIG. 4. The sensor guide wire 63 comprises a core wire 68, three signal transmitting cables 71 and a polymer layer 67. Rather than being arranged around the signal transmitting cables 71 - as in the previous embodiments -, the polymer layer 67 has been applied as a coating 67 on a section of the core wire 68, with the three signal cables 71 being embedded in the polymer coating 67. With this arrangement, the signal cables 71 can be produced without a separate insulating layer on each signal cable 71, because the polymer coating will electrically insulate each of the signal transmitting cables 71. When the signal cables are embedded in a polymer layer, the diameter of the core wire can be increased in comparison with an arrangement where a polymer layer in the form of a tubing surrounds the signal cables. The stiffness, torqueability and pushability of a sensor guide wire is to a very large extent depending on the characteristics of a core wire disposed in the sensor guide wire, and a larger diameter of the core wire will thereby improve the overall mechanical properties of the sensor guide wire.・・・(後略)・・・」(本発明に係るセンサー・ガイドワイヤ・アセンブリの第4実施例は、図4に概念的に示された断面を有するセンサーガイドワイヤ63を有している。センサーガイドワイヤ63は、コアワイヤ68、3本の信号伝達ケーブル71及びポリマー層67を有している。ポリマー層67は、前述の実施例のように信号伝達ケーブル71の周りに配置されているのでは無く、3本の信号ケーブル71がポリマーコーティング67内に埋め込まれるように、コアワイヤ68の部分のコーティング67として適用されている。こうすることによって、ポリマーコーティングが信号伝達ケーブル71を互いに電気的に絶縁するので、信号ケーブル71を、それぞれの信号ケーブル71ごとに隔離用絶縁層を設けることなく製造することができる。信号ケーブルがポリマー層内に埋め込まれるようにすると、チューブ形式のポリマー層が信号ケーブルを取り囲む場合と比べて、コアワイヤの直径を大きくすることができる。センサーガイドワイヤの剛性、トルク性能及び押出性能は、センサーガイドワイヤに用いられるコアワイヤの性能に大幅に影響を受けることから、コアワイヤの直径をより大きくすることで、センサーガイドワイヤのあらゆる機械特性を向上することができる。)
(3)「[0031]・・・(前略)・・・The core wires can be made from stainless steel or a super-elastic alloy, e.g. a NiTi-alloy, or a shape-memory metal such as Nitinol. ・・・(後略)・・・」(コアワイヤは、ステンレス鋼又はニッケルチタン合金のような超弾性合金、或いは、ニチノールのような形状記憶合金で形成することができる。)
(4)図4には、3本の信号伝達ケーブル71が一層のポリマー層67に埋め込まれており、信号伝達ケーブル71とコアワイヤ68が一層のポリマー層によって離隔されている点、一層のポリマー層67がコアワイヤ68と信号伝達ケーブル71の両方に直接的に接触している点がそれぞれ開示されている。
(5)上記(1)?(4)からみて、引用文献1には、特に、第4の実施例を参照すると、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「センサー・ガイドワイヤ・アセンブリであって、当該アセンブリは、
ステンレス鋼又はニッケルチタン合金からなるコアワイヤと、
前記コアワイヤを取り囲む一層のポリマー層と、
前記コアワイヤの遠位部分に配置されたセンサーエレメントと、
前記一層のポリマー層内に埋め込まれた3本の信号伝達ケーブルであって、前記3本の信号伝達ケーブル及び前記コアワイヤは、前記一層のポリマー層によって隔離される、3本の信号伝達ケーブルと、を備え、
前記一層のポリマー層は、前記コアワイヤと前記3本の信号伝達ケーブルとの両方に直接的に接触し、前記センサーエレメントは、前記3本の信号伝達ケーブルに電気接続される、
センサー・ガイドワイヤ・アセンブリ。」

2 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。(日本語訳及び下線は、当審が付与したものである。)
(1)「[0035]In one embodiment, the guide wire 10 has a wire core 12 that is made from an inner core 58 of a first material and an outer shell 56 of a second material wherein the first material of the inner core is relatively stiffer than the outer shell material. FIG. 3 provides a cross-sectional view taken along line 3 - 3 of FIG. 1 (a) showing such a structure. In particular, FIG. 3 illustrates a cross-section of the distal core section 16 with an outer shell 56 covering an inner core 58.」(ある実施例においては、ガイドワイヤ10は、第1材料でできた内側コア58と第2材料でできた外側シェル56からなるワイヤコア12をなし、ここで、内側コアの第1材料は外側コアよりも比較的硬いものである。図3には、図1(a)の3-3線で切った断面図であり、そのような構造を示している。特に、図3は、外側シェル56で内側コア58を覆った遠位コア部位16の断面図を示している。)
(2)「[0036]In the core-to-tip embodiment of FIG. 1 (b), the composition of the stiff inner core 58 inside a more flexible outer shell 56 preferably extends from a proximal end 44 of the wire core 12 continuously to the distal end 18.・・・(後略)・・・」(図1(b)に示されたコアから先端部にかけての実施例において、より柔軟な外側シェルの内側にある硬い内側コア58の構成は、好ましくは、ワイヤコア12の近位端44から遠位端18まで連続して延びている。)
(3)「[0041]The flexible outer shell 56 is joined to the stiffer inner core 58 through a mechanical joining process. This essentially metal cladding process is accomplished in multiple stages of cold drawing through a series of dies; the tubular shaped outer shell 56 is joined to the solid inner core 58 by undergoing a series of compressive and tensile loads.」(柔軟な外側シェル56は硬い内側コア58に機械的結合プロセスを経て結合されている。この本質的な金属被覆プロセスは、一連のダイを通した多段階の冷間引抜きによって実現される。つまり、管状の外側シェル56は中実の内側コア58に一連の圧縮及び引張負荷をかけることで結合される。)
(4)上記(3)の記載からみて、この金属被覆プロセスが、中実の内側コアを管状の外側シェルで覆って多段階の冷間引抜きによって形成されるものであることは、技術常識を踏まえると明らかである。
(5)上記(1)?(4)からみて、引用文献2には、次の技術が記載されているといえる。
「内側コア、及び内側コアを覆った外側シェルからなるガイドワイヤであって、前記内側コアは、第1の材料からできており、前記外側シェルは、第1の材料よりも硬い第2の材料からできており、前記中実の内側コアを管状の外側シェルで覆って多段階の冷間引抜きによって形成された、ガイドワイヤ。」


第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「センサー・ガイドワイヤ・アセンブリ」は、その構造及び機能からみて、本願発明の「感知ガイドワイヤ」に相当し、以下同様に、「一層の」は「単一の」に、「ポリマー層」は「外層」に、「遠位部分」は「先端部分」に、「配置され」は「結合され」に、「センサーエレメント」は「感知素子」に、「3本の」は「少なくとも1つの」に、「信号伝達ケーブル」が「通信線」に、「隔離され」は「分離され」に、「電気接続」は「通信可能に結合」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「ステンレス鋼又はニッケルチタン合金からなるコアワイヤ」と本願発明の「内側部分、及び該内側部分を取り囲む外側部分を含むコア部材であって、前記内側部分は、第1の材料から形成され、前記外側部分は、第1の材料とは異なる第2の材料から形成され、前記内側部分及び前記外側部分は、前記コア部材を形成するために一緒に共延伸される2つの異なる金属から形成される、コア部材」とは、「金属製のコア部材」である限りにおいて共通する。

してみると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「感知ガイドワイヤであって、当該ガイドワイヤは、
金属性のコア部材と、
該コア部材を取り囲む単一の外層と、
前記コア部材の先端部分に結合される感知素子と、
前記単一の外層内に埋め込まれた少なくとも1つの通信線であって、該少なくとも1つの通信線及び前記コア部材は、前記単一の外層によって分離される、少なくとも1つの通信線と、を備え、
前記単一の外層は、前記コア部材と前記少なくとも1つの通信線との両方に直接的に接触し、前記感知素子は、前記少なくとも1つの通信線に通信可能に結合される、
ガイドワイヤ。」

(相違点)
金属性のコア部材について、本願発明では、内側部分、及び該内側部分を取り囲む外側部分を含むコア部材であって、前記内側部分は、第1の材料から形成され、前記外側部分は、第1の材料とは異なる第2の材料から形成され、前記内側部分及び前記外側部分は、前記コア部材を形成するために一緒に共延伸される2つの異なる金属から形成されるのに対して、引用発明では、そのような構成を有するか明らかでない点。

(3)判断
引用発明のコアワイヤにおいて、上記第4の1(2)のとおりワイヤ直径だけでなく、同(3)のとおり金属素材の種類などを選択工夫することで、そのトルク性能や押出性能といった機械特性を向上させることが技術的課題として存在する。
また、上記第4の2(5)に記載された引用文献2に記載の技術においても、ガイドワイヤの機械特性の向上を技術的課題とするものであることは明らかである。
そして、本願発明の「前記内側部分及び前記外側部分は、前記コア部材を形成するために一緒に共延伸される」とは、内側部分を外側部分で覆った状態で引抜き加工することでコア部材を形成することを意味することは技術常識からみて明らかである。
してみると、引用発明において上記の引用文献2に記載の技術を採用することで、上記相違点に係る本願発明の構成を想起することは、同一技術分野における同じ技術的課題を解決するための手段を単に置換したものに過ぎないので、当業者にとって何ら困難性は無い。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものであるとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の技術に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-26 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-16 
出願番号 特願2016-558180(P2016-558180)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今関 雅子  
特許庁審判長 高木 彰
特許庁審判官 寺川 ゆりか
芦原 康裕
発明の名称 複数の材料から形成された芯線を有する血管内装置、システム、及び方法  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  

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