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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1362138
審判番号 不服2019-902  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-23 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 特願2014-222997「レジストパターン形成装置およびレジストパターン形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月23日出願公開、特開2016- 92120〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月31日の出願であって、その手続の概要は、以下のとおりである。

平成30年 4月17日付け:拒絶理由の通知
平成30年 6月22日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年11月13日付け:拒絶査定
平成31年 1月23日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 元年12月25日付け:拒絶理由の通知
令和 2年 2月12日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
本願の請求項1ないし8に係る発明は、令和2年2月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ポジ型レジスト組成物を塗布して基板上にレジスト膜を形成する塗布装置と、
前記レジスト膜の現像処理を行うことでプレパターンを形成する現像装置と、
露点-80?-5℃の雰囲気内で前記プレパターンを所定時間加熱した状態とする第1加熱装置と、
加熱後の前記プレパターンに光照射処理を行うことで硬化させる光照射部と、を備え、
前記第1加熱装置は、前記光照射処理に先立ち、低露点雰囲気内で前記プレパターンを100℃まで加熱した状態で保持し、
前記光照射部は、前記光照射処理を行う処理チャンバ内の酸素濃度を1000ppm以下とし、
前記光照射部は、前記プレパターンが100℃に到達した後、350nm?450nmの波長域の光を前記プレパターンに照射する
レジストパターン形成装置。」

第3 拒絶の理由
令和元年12月25日付けで当審が通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

[理由1](進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



●理由1(進歩性)について
・請求項 1-8
・引用文献等 1-3

<引用文献等一覧>
引用文献1.特開2013-110194号公報
引用文献2.特開2008-166316号公報
引用文献3.特開2008-164789号公報

第4 引用文献について
引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。
「【請求項1】
基板に対する紫外線照射を行う処理室と、
少なくとも前記処理室内の前記基板を加熱する加熱機構と、
前記処理室内を脱酸素及び脱水分状態に保持するように該処理室内に気体を供給する気体供給部と、
当該紫外線照射装置内に前記基板の搬入を行うための基板搬入口と前記処理室との間に少なくとも設けられ、前記処理室に連通されることで該処理室内を所定雰囲気に維持する予備室と、を備えることを特徴とする紫外線照射装置。」

「【請求項3】
前記気体供給部は、前記処理室内に不活性ガスを供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の紫外線照射装置。
【請求項4】
前記気体供給部は、前記不活性ガスとして窒素ガスを供給することを特徴とする請求項3に記載の紫外線照射装置。」

「【請求項6】
前記予備室及び前記処理室間において前記基板を移動させる基板移動機構を更に備えることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。」

「【請求項8】
前記加熱機構は、前記予備室内の前記基板も加熱することを特徴とする請求項1?7のいずれか一項に記載の紫外線照射装置。」

「【請求項12】
基板に処理液の塗布処理を行う塗布装置と、
前記基板に塗布された前記処理液の現像処理を行う現像装置と、
前記基板に紫外線照射処理を行う紫外線照射装置と、
前記塗布処理、前記現像処理及び前記紫外線照射処理の関連処理を行う関連装置と、を備え、前記塗布装置、前記現像装置、前記紫外線照射装置及び前記関連装置の間を直列的に前記基板を搬送する基板処理装置であって、
前記紫外線照射装置として、請求項1?11のいずれか一項に記載の紫外線照射装置が用いられていることを特徴とする基板処理装置。」

「【0002】
液晶ディスプレイなどの表示パネルを構成するガラス基板上には、配線パターンや電極パターンなどの微細なパターンが形成されている。一般的にこのようなパターンは、例えばフォトリソグラフィなどの手法によって形成される。フォトリソグラフィ法では、レジスト膜をガラス基板に塗布する工程、レジスト膜を露光する工程、露光後のレジスト膜を現像する工程及び現像後のレジスト膜に対して紫外線を照射する工程が行われる。」

「【0024】
以下、本発明の紫外線照射装置及びこれを備えた基板処理装置に係る実施例について説明する。
図1は本実施形態に係る基板処理装置SPAを示す平面図である。基板処理装置SPAは、例えばX方向に一列に配置されたローダ・アンローダLU、塗布現像処理部CD及びインターフェース部IFを備えている。基板処理装置SPAは、塗布現像処理部CDがローダ・アンローダLUとインターフェース部IFによって挟まれて配置された構成になっている。」

「【0029】
(塗布現像処理部)
塗布現像処理部CDは、基板Gにレジスト塗布及び現像を含む一連の処理を施す部分である。塗布現像処理部CDは、スクラバユニットSR、脱水ベークユニットDH、塗布ユニットCT、プリベークユニットPR、インターフェース部IF、現像ユニットDV、紫外線照射ユニットUV及びポストベークユニットPBを有している。」

「【0038】
紫外線処理ユニット(紫外線照射装置)UVは、現像ユニットDVの下流側に接続されており、現像後の基板Gに例えばi線などの紫外線を照射する。」

「【0043】
図2、3に示すように、紫外線処理ユニットUVは、第1?第4予備室80?83と、紫外線処理室84と、これら予備室80?83及び紫外線処理室84間で基板Gを移動させる基板移動機構85と、を有している。第1?第4予備室80?83は、後述するように紫外線処理室84内を所定雰囲気に維持するためのものである。」

「【0053】
第3予備室82は、チャンバ131及び加熱機構133を有している。チャンバ131は、第2予備室81のチャンバ111との接続部分に間隔壁132を有している。なお、間隔壁132は第3予備室82のチャンバ131と第2予備室81のチャンバ121とは連通した状態に形成されている。チャンバ131は後述する所定雰囲気において基板Gを加熱した状態で収容するためのものである。また、チャンバ131はフィルター151を介して循環機構150に接続されており、内部雰囲気が循環されるようになっている。
【0054】
加熱機構133は、基板Gを加熱した状態で保持するホットプレート134を主体に構成されるものである。ホットプレート134におけるX方向に沿う端面には、後述する基板移動機構85の一部を移動可能とする溝部134aが形成されている(図3参照)。なお、ホットプレート134の表面温度は例えば100℃に設定されている。」

「【0060】
紫外線処理室84は、チャンバ161、チャンバ161内の基板Gに対して紫外線を照射する紫外線照射部162、加熱機構163及びチャンバ161内に不活性ガス(気体)を供給するガス供給部165を有している。」

「【0062】
チャンバ161は、第3予備室82のチャンバ131との接続部分に基板搬入部161aを有しており、第4予備室83のメインチャンバ141との接続部分に基板搬出部161bを有している。これら基板搬入部161a及び基板搬出部161bはシャッター構造により開閉可能とされている。
【0063】
紫外線照射部162は、基板Gに照射する紫外線を照明する。紫外線照射部162は、紫外線を照射する光源86を有し、該光源86が基板Gに対してX方向に走査可能に構成されている。光源86としては、紫外線(例えばi線など)を照射する光源が用いられている。光源86として、波長340nm?420nmの範囲の紫外線を照射するメタルハライドランプ、LEDランプ、及び高圧水銀ランプ等を例示することができる。具体的に本実施形態では、高圧水銀ランプを採用した。なお、光源86に所定の波長の紫外線のみを透過させる紫外線カットを設け、上記i線を照射するようにしても構わない。光源86は、上記i線を照射することで、基板Gに形成されたレジスト表面をキュアし、レジストの後の工程においてレジストが熱等によるダレが生じるのを防止することができる。
【0064】
加熱機構163は基板Gを加熱した状態で保持するホットプレート164を主体に構成されるものである。ホットプレート164におけるX方向に沿う端面には、後述する基板移動機構85の一部を移動可能とする溝部164aが形成されている。なお、ホットプレート164の表面温度は例えば100℃に設定されている。
【0065】
ガス供給部165は、チャンバ161内に不活性ガス(気体)を供給するためのものである。上記不活性ガスとしては窒素ガスを用いるのが好ましく、ガス供給部165は窒素ガスをチャンバ161内に供給することで低酸素状態(脱酸素及び脱水分状態)に保持している。具体的にガス供給部165は、チャンバ161内の酸素濃度が100ppm程度となるようにチャンバ161内に窒素ガスを供給する。なお、紫外線処理ユニットUVは、装置の立ち上げ時に、処理室84以外の予備室80?83にも不図示のガス供給部から窒素ガスを導入し、予備室80?83及び処理室84全体を脱酸素、脱水分状態に保持するようにしている。」

「【0076】
その後、基板Gは塗布ユニットCTにおいてレジスト膜の塗布処理が行われる。塗布処理後の基板GはプリベークユニットPRに搬送され、加熱装置50においてプリベーク処理が行われ、冷却装置51において冷却処理が行われる。プリベークユニットPRでの処理を完了させた基板Gは、搬送機構TR2によってインターフェース部IFに搬送される。」

「【0078】
現像ユニットDVにおいて、基板Gには現像処理、リンス処理及び乾燥処理が順に行われる。乾燥処理の後、コンベア機構CV10によって基板Gは紫外線処理ユニットUVへと搬送される。」

「【0088】
基板Gはホットプレート134により所定時間100℃で加熱される。このように第3予備室82内において基板Gを予め加熱することで紫外線処理室84内において基板Gを所定温度まで短時間で加熱できる。
なお、チャンバ131内は、循環機構150によって内部雰囲気がフィルター151を介して循環されるため、クリーンな雰囲気が安定的に維持されている(図5参照)。」

「【0090】
基板Gをホットプレート134によって所定時間加熱した後、駆動機構172は切欠134bを介して保持部170aを+Z方向に上昇させることでホットプレート134の上方に基板Gを持ち上げる。そして、駆動機構172は基板保持部材170を-X方向に移動させることで第3予備室82のチャンバ131内の基板Gを基板搬入部161aを介して紫外線処理室84のチャンバ161内へと移動する。」

「【0094】
これによれば、紫外線処理ユニットUVに対して基板Gの搬入を行った場合であっても、上記第1予備室80乃至第3予備室82によって紫外線処理室84のチャンバ161内の雰囲気が変動するのを防止することができ、チャンバ161内を所定雰囲気(低酸素雰囲気)に維持することができる。
【0095】
具体的に基板Gの搬入時に基板搬入部161aのシャッターが開くと、第3予備室82のチャンバ131内には相対的に内部圧力が高い状態(正圧状態)とされる紫外線処理室84のチャンバ161内から窒素ガスが流れ込むことで酸素濃度が低い状態(チャンバ161の酸素濃度の90%程度)に維持される。なお、紫外線処理室84のチャンバ161は、ガス供給部165によって窒素ガスが供給されることで所定の低酸素雰囲気に維持することができる。」

「【0099】
基板Gが搬入された後、紫外線処理室84は、ホットプレート164によって加熱される基板Gに対して紫外線照射部162の光源86から紫外線(i線)を照射する。ここで、チャンバ161内は上述のようにガス供給部165によって窒素ガスが供給されることで低酸素状態とされているため、基板Gに形成された現像パターンに化学変化等を生じさせることなく、良好に紫外線照射処理を行うことができる。」

したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「塗布現像処理部CDは、基板Gにレジスト塗布及びレジスト膜の現像を含む一連の処理を施す部分であり、塗布現像処理部CDは、塗布ユニットCT、現像ユニットDV、紫外線処理ユニットUV及びポストベークユニットPBを有し、
紫外線処理ユニットUVは、第3予備室82と、紫外線処理室84と、第3予備室82及び紫外線処理室84間で現像後の基板Gを移動させる基板移動機構85と、を有し、
第3予備室82は、チャンバ131及び加熱機構133を有し、第3予備室82を脱酸素、脱水分状態に保持し、加熱機構133は、ホットプレート134の表面温度は100℃に設定され現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持するホットプレート134を主体に構成され、
紫外線処理室84は、チャンバ161、チャンバ161内の基板Gに対して紫外線を照射する紫外線照射部162、加熱機構163及びチャンバ161内に不活性ガス(気体)を供給するガス供給部165を有し、チャンバ161は、第3予備室82のチャンバ131との接続部分に基板搬入部161aを有しており、ガス供給部165は、酸素濃度が100ppm程度となるように窒素ガスをチャンバ161内に供給することで低酸素状態(脱酸素及び脱水分状態)に保持し、加熱機構163は、ホットプレート164の表面温度が100℃に設定され現像後の基板Gを加熱した状態で保持するホットプレート164を主体に構成され、
前記第3予備室82のチャンバ131内の現像後の基板Gを基板搬入部161aを介して紫外線処理室84のチャンバ161内へと移動し、チャンバ161内を100ppm程度となる低酸素(脱酸素及び脱水分)雰囲気に維持し、紫外線処理室84は、現像後の基板Gに対して紫外線照射部162の光源86から紫外線(i線)を照射する
塗布現像処理部CDを備えている基板処理装置SPA。」

第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。
(1)引用発明の「『基板Gにレジスト塗布』『を施す』」は、本願発明の「レジスト組成物を塗布して基板上にレジスト膜を形成する」に、
引用発明の「塗布ユニットCT」は、本願発明の「塗布装置」に、
引用発明の「『レジスト膜の現像』『の処理を施す』」は、本願発明の「前記レジスト膜の現像処理を行うことでプレパターンを形成する」に、
引用発明の「現像ユニットDV」は、本願発明の「現像装置」に、
引用発明の「『現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持するホットプレート134を主体に構成され』た『加熱機構133』」は、本願発明の「前記プレパターンを所定時間加熱した状態とする第1加熱装置」に、
引用発明の「『加熱機構133を有する』『第3予備室82のチャンバ131との接続部分に基板搬入部161aを有』する『チャンバ161内の現像後の基板Gに対して紫外線を照射する紫外線照射部162』」は、本願発明の「加熱後の前記プレパターンに光照射処理を行うことで硬化させる光照射部」に、
引用発明の「『第3予備室82』が『有』する『加熱機構133は、ホットプレート134の表面温度は100℃に設定され現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持するホットプレート134を主体に構成され』」は、本願発明の「『前記第1加熱装置は、前記光照射処理に先立ち、』『前記プレパターンを100℃まで加熱した状態で保持し』」に、
引用発明の「『紫外線処理室84は、チャンバ161』『を有し、』『酸素濃度が100ppm程度となるように窒素ガスをチャンバ161内に供給する』」は、本願発明の「前記光照射部は、前記光照射処理を行う処理チャンバ内の酸素濃度を1000ppm以下とする」に、
引用発明の「基板処理装置SPA」は、本願発明の「レジストパターン形成装置」に、
それぞれ相当する。

(2)引用発明は「『第3予備室82は、チャンバ131及び加熱機構133を有し、第3予備室82を脱酸素、脱水分状態に保持し、加熱機構133は、表面温度は100℃に設定され現像後の基板Gを加熱した状態で保持するホットプレート134を主体に構成され、』『前記第3予備室82のチャンバ131内の基板Gを基板搬入部161aを介して紫外線処理室84のチャンバ161内へと移動し、チャンバ161内を100ppm程度となる低酸素(脱酸素及び脱水分)雰囲気に維持し、紫外線処理室84は、現像後の基板Gに対して紫外線照射部162の光源86から紫外線(i線)を照射する』」と特定されており、第3予備室82の加熱機構133において、ホットプレート134の表面温度は100℃に設定され現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持し、その後、前記第3予備室82のチャンバ131内の現像後の基板Gは紫外線処理室84のチャンバ161内へと移動し、紫外線処理室84は、現像後の基板Gに対して紫外線照射部162の光源86から紫外線(i線)を照射することが把握できる。
また、フォトリソグラフィに関する技術において、i線が波長365nmの水銀のスペクトル線であることは、技術常識である。
そうすると、引用発明の「『第3予備室82は、チャンバ131及び加熱機構133を有し、第3予備室82を脱酸素、脱水分状態に保持し、加熱機構133は、ホットプレート134の表面温度は100℃に設定され現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持するホットプレート134を主体に構成され、』『前記第3予備室82のチャンバ131内の現像後の基板Gを基板搬入部161aを介して紫外線処理室84のチャンバ161内へと移動し、チャンバ161内を100ppm程度となる低酸素(脱酸素及び脱水分)雰囲気に維持し、紫外線処理室84は、現像後の基板Gに対して紫外線照射部162の光源86から紫外線(i線)を照射する』」は、本願発明の「前記光照射部は、前記プレパターンが100℃に到達した後、350nm?450nmの波長域の光を前記プレパターンに照射する」と、「前記光照射部は、前記プレパターンが100℃に到達した後、365nmの波長域の光を前記プレパターンに照射する」点で一致する。

2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「レジスト組成物を塗布して基板上にレジスト膜を形成する塗布装置と、
前記レジスト膜の現像処理を行うことでプレパターンを形成する現像装置と、
前記プレパターンを所定時間加熱した状態とする第1加熱装置と、
加熱後の前記プレパターンに光照射処理を行うことで硬化させる光照射部と、を備え、
前記第1加熱装置は、前記光照射処理に先立ち、低露点雰囲気内で前記プレパターンを100℃まで加熱した状態で保持し、
前記光照射部は、前記光照射処理を行う処理チャンバ内の酸素濃度を1000ppm以下とし、
前記光照射部は、前記プレパターンが100℃に到達した後、365nmの波長域の光を前記プレパターンに照射する
レジストパターン形成装置。」

【相違点1】
レジスト組成物が、本願発明では「ポジ型」であるのに対し、引用発明では「ポジ型」であるのか明らかでない点で相違する。

【相違点2】
第1加熱装置でプレパターンを所定時間加熱した状態とする雰囲気が、本願発明では「露点-80?-5℃の雰囲気内」であるのに対し、引用発明では「露点-80?-5℃の雰囲気内」であるのか明らかでない点で相違する。

第6 判断
1 相違点1について
フォトリソグラフィに関する技術において、「ポジ型レジスト組成物」は一般的に知られており(必要ならば、特開昭62-129849号公報、引用文献3(特に、【0025】参照。)を参照されたい。)、引用発明のレジストの組成物としてポジ型レジスト組成物を採用することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

2 相違点2について
(1)フォトリソグラフィに関する技術において、露点-80?-5℃の雰囲気とすることは、周知技術(必要ならば、引用文献2(特に、【0023】参照。)、引用文献3(特に、【0034】参照。)を参照されたい。)である。

(2)そして、引用発明は「第3予備室82は、チャンバ131及び加熱機構133を有し、第3予備室82を脱酸素、脱水分状態に保持し、加熱機構133は、ホットプレート134の表面温度は100℃に設定され現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持するホットプレート134を主体に構成され」と特定されているので、引用発明において、第3予備室82は、脱水分状態に保持、すなわち、第3予備室82は、低い露点の雰囲気に保持し、第3予備室82が有する加熱機構133のホットプレート134で現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持していると認められる。

(3)そうすると、引用発明において、周知技術を考慮し、第3予備室82の脱水分状態として、露点-80?-5℃の雰囲気を選択し、露点-80?-5℃の雰囲気内の第3予備室82が有する加熱機構133のホットプレート134で現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持することは、当業者が適宜なし得た事項にすぎない。

3 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 効果について
そして、相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

5 まとめ
以上のとおりであるから、引用発明に上記周知技術を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

第7 審判請求人の主張について
審判請求人は、令和2年2月12日付けの意見書において、「新請求項1に係る発明は、『前記光照射部は、前記プレパターンが100℃に到達した後、350nm?450nmの波長域の光を前記プレパターンに照射する』ことを特徴としています。これにより、プレパターンの表層側だけでなく内部まで、パターン全体を硬化させることができ、また、上記波長域の光を照射することで、輻射熱の発生を抑えつつ、硬化時におけるプレパターンの過度な温度上昇を抑制できるという特有の効果を奏します(段落[0127]参照)。」、「本願新請求項1の特徴については引用文献に開示されておらず、また示唆をする記載もありません。」、「引用文献1に記載された発明は、第3予備室82のチャンバ131内の基板Gを基板搬入部161aを介して紫外線処理室84のチャンバ161内へと移動させた場合に基板Gを所定温度まで短時間で加熱することを目的としていると思料致します。」旨主張している。

しかしながら、仮に、審判請求人の主張する目的のみであったとしても、上記第5の1(2)で検討したとおり、引用発明から、第3予備室82の加熱機構133において、ホットプレート134の表面温度は100℃に設定され現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持し、その後、前記第3予備室82のチャンバ131内の現像後の基板Gは紫外線処理室84のチャンバ161内へと移動し、紫外線処理室84は、現像後の基板Gに対して紫外線照射部162の光源86から紫外線(i線)を照射することが把握できることから、引用発明は上記特徴の構成内のものに一致する構成が特定されていると解される。
更に、引用発明は「『紫外線処理室84は、』『加熱機構163』『を有し、』『加熱機構163は、ホットプレート164の表面温度が100℃に設定され現像後の基板Gを加熱した状態で保持するホットプレート164を主体に構成され』」と特定されていることから、上記第3予備室82から現像後の基板Gを移動した後の紫外線処理室84においても、現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持していると解するのが自然である。そうすると、第3予備室82及び紫外線処理室84において、現像後の基板Gを100℃に加熱した状態で保持していると解されるので、そのような効果も予測される範囲内のものにすぎない。

なお、本願の請求項1は「所定時間加熱した状態とする第1加熱装置と、加熱後の前記プレパターンに光照射処理を行うことで硬化させる光照射部」、「前記第1加熱装置は、前記光照射処理に先立ち、低露点雰囲気内で前記プレパターンを100℃まで加熱した状態で保持し」、「光照射部は、前記プレパターンが100℃に到達した後、350nm?450nmの波長域の光を前記プレパターンに照射する」と特定されているものの、本願の請求項1において、光照射部は、前記プレパターンが100℃に到達した後、第1加熱装置から移動をさせずに、350nm?450nmの波長域の光を前記プレパターンに照射することまでは特定されていない。
また、本願の請求項1の「『前記光照射部は、前記プレパターンが100℃に到達した後、』『光を前記プレパターンに照射する』」自体は、装置の使用方法を特定するにすぎず、「レジストパターン形成装置」という物を何ら特定していない。

以上のとおりであるから、審判請求人の主張を採用することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-03-05 
結審通知日 2020-03-10 
審決日 2020-03-25 
出願番号 特願2014-222997(P2014-222997)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷 潮  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 野村 伸雄
星野 浩一
発明の名称 レジストパターン形成装置およびレジストパターン形成方法  
代理人 飯田 雅人  
代理人 宮本 龍  
代理人 棚井 澄雄  
代理人 松本 将尚  

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