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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
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管理番号 | 1362148 |
審判番号 | 不服2019-5459 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-24 |
確定日 | 2020-05-07 |
事件の表示 | 特願2015- 11376「携帯端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月28日出願公開、特開2016-136334〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成27年1月23日の出願であって,平成30年7月5日付けで拒絶の理由が通知され,同年9月7日に意見書とともに手続補正書が提出され,平成31年1月30日付けで拒絶査定(謄本送達日同年2月5日)がなされ,これに対して同年4月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願発明について 1 本願発明 本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,特許請求の範囲の請求項1に記載された,次のとおりのものと認める。 「筐体と、 表示部と、 赤外線によりバーコード情報を読取る読取部と、 複数の操作キーにより構成される操作部と、 前記筐体を把持するための突出部と、 を備え、 前記突出部は、前記筐体の背面において軸方向を前記筐体の上下方向に平行にして設けられた略半円筒形状の凸部である携帯端末装置。」 2 引用例 (1)引用例に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した,本願の出願前に既に公知である,特開2013-156751号公報(平成25年8月15日公開。以下,これを「引用例」という。)には,関連する図面と共に,次の事項が記載されている。(下線は当審で付加。以下同様。) A 「【0024】 図1?図5に示す光学式情報読取装置100は、外形を一方向に延長された板状としている。光学式情報読取装置100の外形を構成する筐体10は、図6の分解斜視図に示すように、上ケース11と下ケース12に2分割される。上ケース11と下ケース12は、樹脂などの絶縁部材で構成される。これら上ケース11と下ケース12の間には、各部材を纏めたシャーシ集合体20が収納される。このシャーシ集合体20は図7に示すように、複数の部材で構成されている(詳細は後述)。また図6、図7の分解斜視図及び図8の垂直断面図等に示すように、筐体10の先端部分には、読取対象のシンボルの光学的読取を行うための読取部22が設けられている。読取部22は、バーコードを読み取るスキャンモジュールや二次元コードを読み取るカメラモジュールなどで構成される。 【0025】 筐体10の上ケース11側の上面には、ディスプレイ部30と、キー配置部40が設けられる。またディスプレイ部30は筐体10の上方に設けられており、ディスプレイ部30の下方にはキー配置部40が設けられる。この筐体10は、ディスプレイ部30を設けた表示部分DAと、表示部分DAの下方に設けられた把持部分HAとで構成している。ユーザは、把持部分HAを手で把持して、表示部分DAに設けられたディスプレイの表示内容を参照しながら、把持部分HAの表面側に配置されたキー配置部40の各操作キー46を操作する。 【0026】 また筐体10は、その表面側にディスプレイ部30を設けた表示部分DAと、表示部分DAの下方において、同じく表面側にキー配置部40を設けた把持部分HAとが一方向に並ぶように構成されている。また後述するように、筐体10は平面視において表示部分DAを幅広とし、把持部分HAを幅狭とする一方、側面視においては、把持部分HAを厚くしている。特に把持部分HAは、表示部分DAよりも平面視において一方向と略直交する方向の外径が幅狭となるように形成されている。一方でバッテリ部50は、筐体10の背面側に収納される。 (ディスプレイ部30) 【0027】 ディスプレイ部30は、筐体10の一面に設けられ、読取対象のシンボルをカメラ部で撮像した画像や、シンボルを復号化した情報、その他の設定情報といった各種の情報を表示するための部材である。このようなディスプレイ部30には、液晶ディスプレイ部(LCD)や有機ELなどが利用される。またディスプレイ部30の上面には、タッチパネル34が配置される。 (キー配置部40) 【0028】 キー配置部40には、各種の操作を行うテンキーや電源ボタン、ファンクションボタンといった複数の操作キー46が並べられている。 (バッテリ蓋58) 【0029】 また光学式情報読取装置100は、これを駆動する電力を供給するためのバッテリ部50を備えている。バッテリ部50は、光学式情報読取装置100に着脱自在に装着している。このため、図9、図10の分解斜視図に示すように、筐体10の背面に、バッテリ部50を収納するためのバッテリ収納部13を形成している。バッテリ収納部13は、筐体10の把持部分HAに設けられる。またバッテリ収納部13は、バッテリ部50を収納できる窪み状に形成されている。このバッテリ収納部13の窪み状の開口部分は、バッテリ蓋58によって閉塞される。このためバッテリ蓋58は、筐体10の下ケース12に着脱自在に装着している。またバッテリ蓋58でバッテリ収納部13を閉塞した状態で防水性を発揮するよう、図7の分解斜視図に示すようにパッキン57を設けることもできる。」 B 「【0033】 次にバッテリ部50の外観斜視図を図12に、垂直断面図を図13に、それぞれ示す。これらの図に示すバッテリ部50は、充電可能な二次電池を備えている。ここでは、二次電池として円筒形の二次電池セル51を用いている。一般に光学式情報読取装置は、小型化、薄型化が求められているため、角型電池が用いられることが多い。言い換えると、厚さが厚くなる円筒形二次電池は忌避されていた。ただ、ユーザが光学式情報読取装置を把持する際の持ちやすさについて、本願発明者が検討したところ、単に薄型化するのみならず、平面視における横幅が小さいことも重要となることが判明した。寧ろ、薄くて幅広の板状は、却って持ち難いこともある。そこで本実施例では、敢えて角型電池でなく円筒形二次電池を採用することで、厚さを若干厚めにしつつも、横幅を狭くすることで、把持部分HAを板状から棒状に近付けている。このような把持部分HAとすることで、把持部分HAの厚みが若干増しても、持ちやすさの低下を防いでいる。 (曲面突出部分RP) 【0034】 さらに把持部分HAの背面は、図14の側面図及び図15の横断面図に示すように、円筒形二次電池セル51の円筒形状に沿って、部分的に突出させた曲面状としている。このように筐体10の背面に突出した曲面を設けることで、把持部分HAが部分的に厚くなっても却って握りやすくでき、グリップ感を一層向上させることができる。すなわち、把持部分HAの背面を単に平坦面とした従来の構成と比べ、中央を凸状に突出させた曲面突出部分RPを設けたことで、ここをユーザが把持する際の握りやとっかかりとして利用でき、横幅を狭くしたこととも相俟って、グリップ感の向上に寄与することができる。」 C 「 図5」 D 「 図9」 E 「 図10」 F 「 図11」 G 「 図14」 H 「 図15」 I 「【0039】 さらに図5の側面図に示すように、筐体10の背面側において、バッテリ部50を配置した部分よりも表示部分DA側に、凹部14を形成している。この凹部14は、図4の底面図に示すように、下ケース12の背面で、曲面突出部分RPの幅方向にわたって形成される。また凹部14の断面形状は、図14の側面図に示すように、ユーザが把持部分HAを把持した状態で、指をかけやすくなるよう、断面視を曲面状に形成している。これによって、把持部の握りやすさが一層向上される。凹部14に掛ける指は、例えばユーザの手が大きい場合は中指、手が小さい場合は人指し指等とできる。この凹部14は、把持部分HAと表示部分DAとの境界近傍で、表示部分DA側に形成される。換言すれば、ディスプレイ部30の背面側に形成されるといえる。 【0040】 また凹部14は、光学式読取装置の重心よりも前に位置させることが好ましい。これによって、ユーザが凹部14に指をかけた状態で、ここを支点としてバランスよく把持し、光学式読取装置の姿勢をコントロールし易くして操作を容易にできる。例えばユーザが人差し指を凹部14にかけると、重心よりやや前で筐体10を保持でき、前方に倒れることを防止し、適切な姿勢とバランスを保持できるので、片手でも安定して保持しやすくできる。」 (2)引用発明 ア 上記記載事項Aの「光学式情報読取装置100は、外形を一方向に延長された板状としている。光学式情報読取装置100の外形を構成する筐体10…(中略)…筐体10の先端部分には、読取対象のシンボルの光学的読取を行うための読取部22が設けられている。読取部22は、バーコードを読み取るスキャンモジュールや二次元コードを読み取るカメラモジュールなどで構成される。」との記載から,引用例には,“光学式情報読取装置100の外形を構成する筐体10の先端部分には,読取対象のシンボルの光学的読取を行うための読取部22が設けられ,読取部22は,バーコードを読み取るスキャンモジュールや二次元コードを読み取るカメラモジュールなどで構成され”ることが記載されているといえる。 イ 上記記載事項Aの「筐体10は、その表面側にディスプレイ部30を設けた表示部分DAと、表示部分DAの下方において、同じく表面側にキー配置部40を設けた把持部分HAとが一方向に並ぶように構成されている。…(中略)…キー配置部40には、各種の操作を行うテンキーや電源ボタン、ファンクションボタンといった複数の操作キー46が並べられている。」との記載から,引用例には,“筐体10は,その表面側にディスプレイ部30を設けた表示部分DAと,表示部分DAの下方において,同じく表面側にキー配置部40を設けた把持部分HAとが一方向に並ぶように構成され,キー配置部40には,各種の操作を行うテンキーや電源ボタン,ファンクションボタンといった複数の操作キー46が並べられて”いることが記載されているといえる。 ウ 上記記載事項Bの「把持部分HAの背面は、図14の側面図及び図15の横断面図に示すように、円筒形二次電池セル51の円筒形状に沿って、部分的に突出させた曲面状としている。このように筐体10の背面に突出した曲面を設けることで、把持部分HAが部分的に厚くなっても却って握りやすくでき、グリップ感を一層向上させることができる。…(中略)…中央を凸状に突出させた曲面突出部分RPを設けたことで、ここをユーザが把持する際の握りやとっかかりとして利用でき、横幅を狭くしたこととも相俟って、グリップ感の向上に寄与することができる。」との記載から,引用例には,“把持部分HAの背面は,円筒形二次電池セル51の円筒形状に沿って,部分的に突出させた曲面状とされ,筐体10の背面に突出した曲面を設けることで,把持部分HAが部分的に厚くなっても却って握りやすくでき,グリップ感を一層向上させることができ,中央を凸状に突出させた曲面突出部分RPを設けたことで,ここをユーザが把持する際の握りやとっかかりとして利用でき,横幅を狭くしたこととも相俟って,グリップ感の向上に寄与することができる”ことが記載されているといえる。 エ 以上上記ア乃至ウより,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「光学式情報読取装置100の外形を構成する筐体10の先端部分には,読取対象のシンボルの光学的読取を行うための読取部22が設けられ,読取部22は,バーコードを読み取るスキャンモジュールや二次元コードを読み取るカメラモジュールなどで構成され, 筐体10は,その表面側にディスプレイ部30を設けた表示部分DAと,表示部分DAの下方において,同じく表面側にキー配置部40を設けた把持部分HAとが一方向に並ぶように構成され,キー配置部40には,各種の操作を行うテンキーや電源ボタン,ファンクションボタンといった複数の操作キー46が並べられており, 把持部分HAの背面は,円筒形二次電池セル51の円筒形状に沿って,部分的に突出させた曲面状とされ,筐体10の背面に突出した曲面を設けることで,把持部分HAが部分的に厚くなっても却って握りやすくでき,グリップ感を一層向上させることができ,中央を凸状に突出させた曲面突出部分RPを設けたことで,ここをユーザが把持する際の握りやとっかかりとして利用でき,横幅を狭くしたこととも相俟って,グリップ感の向上に寄与することができる 光学式情報読取装置100。」 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「筐体10」及び筐体10の表面側に設けられる「ディスプレイ部30」は,本願発明の「筐体」及び「表示部」に相当する。 (2)引用発明の,「バーコードを読み取るスキャンモジュールや二次元コードを読み取るカメラモジュールなどで構成」され,「筐体10の先端部分」に設けられる,「読取対象のシンボルの光学的読取を行うための読取部22」と,本願発明の「赤外線によりバーコード情報を読取る読取部」とは,下記の点(相違点1)で相違するものの,“バーコード情報を読取る読取部”である点で一致する。 (3)引用発明の,「各種の操作を行うテンキーや電源ボタン,ファンクションボタンといった複数の操作キー46が並べられて」いる「キー配置部40」は,本願発明の「複数の操作キーにより構成される操作部」に相当する。 (4)引用発明の「筐体10」に「ディスプレイ部30を設けた表示部分DA」と,当該「表示部分DAの下方」において「一方向に並ぶように構成され」ている「把持部分HA」の「背面」の,「円筒形二次電池セル51の円筒形状に沿って,部分的に突出させた曲面状とされ」る部分は,これが設けられることにより「把持部分HAが部分的に厚くなっても却って握りやすくでき,グリップ感を一層向上させることができ,中央を凸状に突出させた曲面突出部分RPを設けたことで,ここをユーザが把持する際の握りやとっかかりとして利用でき,横幅を狭くしたこととも相俟って,グリップ感の向上に寄与することができる」ものであることから,本願発明の「前記筐体を把持するための突出部」に相当するといえる。 そして,当該部分は,上記記載事項C乃至Gに掲げた,図5,図9乃至図11及び図14の態様からみて,本願発明の「前記突出部は、前記筐体の背面において軸方向を前記筐体の上下方向に平行にして設けられた略半円筒形状の凸部である」構成と,下記の点(相違点2)で一応相違するものの,“前記突出部は,前記筐体の背面において軸方向を前記筐体の上下方向に平行にして設けられた”点で一致するといえる。 (5)引用発明の「光学式情報読取装置100」は,上記(2)乃至(4)で検討したことを踏まえれば,本願発明の「携帯端末装置」に相当するといえる。 (6)以上,(1)乃至(5)の検討から,引用発明と本願発明とは,次の一致点及び相違点を有する。 〈一致点〉 筐体と, 表示部と, バーコード情報を読取る読取部と, 複数の操作キーにより構成される操作部と, 前記筐体を把持するための突出部と, を備え, 前記突出部は,前記筐体の背面において軸方向を前記筐体の上下方向に平行にして設けられた携帯端末装置。 〈相違点1〉 本願発明の「読取部」が,「赤外線により」バーコード情報を読み取るのに対し,引用発明の「読取部22」は,「読取対象のシンボルの光学的読取を行う」に際して赤外線を用いることが特定されていない点。 〈相違点2〉 本願発明の「突出部」が,「略半円筒形状の凸部である」であるのに対し,引用発明の「把持部分HAの背面」は,「略半円筒形状の凸部である」であることが特定されていない点。 4 判断 上記相違点につき検討する。 まず相違点1について検討する。 本願発明において,読取部がバーコードを読み取るに際し,赤外線を用いることに関しては,本願明細書段落0020に僅か,「読取部4は、例えば、赤外線バーコードリーダである。」とのみ記載されるにとどまり,当該機構が,とりわけ本願発明の「突出部」の構造になんらの作用的変更をもたらすもので無いことは当業者に明らかである。そして,バーコードを読み取る際に赤外線を用いることは,本願出願前の周知技術に過ぎず,本相違点は格別なものとはいえない。 次に相違点2について検討する。 引用発明は,「把持部分HAの背面は,円筒形二次電池セル51の円筒形状に沿って,部分的に突出させた曲面状とされ,筐体10の背面に突出した曲面を設けることで,把持部分HAが部分的に厚くなっても却って握りやすくでき,グリップ感を一層向上させることができ,中央を凸状に突出させた曲面突出部分RPを設けたことで,ここをユーザが把持する際の握りやとっかかりとして利用でき,横幅を狭くしたこととも相俟って,グリップ感の向上に寄与することができる」ものである。また,上記記載事項Bに,「一般に光学式情報読取装置は、小型化、薄型化が求められているため、角型電池が用いられることが多い。言い換えると、厚さが厚くなる円筒形二次電池は忌避されていた。ただ、ユーザが光学式情報読取装置を把持する際の持ちやすさについて、本願発明者が検討したところ、単に薄型化するのみならず、平面視における横幅が小さいことも重要となることが判明した。寧ろ、薄くて幅広の板状は、却って持ち難いこともある。そこで本実施例では、敢えて角型電池でなく円筒形二次電池を採用することで、厚さを若干厚めにしつつも、横幅を狭くすることで、把持部分HAを板状から棒状に近付けている。このような把持部分HAとすることで、把持部分HAの厚みが若干増しても、持ちやすさの低下を防いでいる。」との記載があるとおり,引用発明は,従来一般に用いられていた「角形電池」に代えて「円筒型二次電池」を用いることによって,「把持部分HAを板状から棒状に近付け」ることにより,「持ちやすさの低下を防」ぐという作用効果を奏することの発想を得たことからなされたものであることが窺える。 そして,上記記載事項Cに示す図5のほか,上記記載事項Gに示す図14からも明らかなように,引用発明の「曲面突出部分RP」の形状は,本願発明にいう,「略半円筒形状の凸部」であるというほかない。 なお審判請求人は審判請求書において,この点につき以下のような主張を行っている。 「引用文献1の図10に相当する下掲の参考図1に記載のとおり、曲面突出部分RPの上部の形状は、同図に記載されているバッテリー部50の形状(半円筒状部)と比較すると、明らかに楕円形状となっていることが分かる。また、曲面突出部分RPの下部の形状は、同図から直線となっていることが分かる。そのような構成では、曲面突出部分RPの下部は、本願に記載の略半円筒形状とはならないことは明白である。 【参考図1】 更に、引用文献1は、小型化を図りつつも厚型化が回避可能な光学式情報読取装置を提供することを課題としている。そして、小型化を図るために、把持部分HAを、外径が幅狭となるように形成している。又、引用文献1は、グリップ感を向上させることも課題としている(段落0033、0034)。そして、グリップ感を向上させる上で、掌を筐体10の背面に対向させた状態で、第1指(親指)を上ケース11の縁に掛け、且つ、その縁とは反対側の縁に第2?5指の何れかを掛けるという握り方を前提としている(図15参照)。このような握り方を前提とした場合、たとえ当業者であっても、曲面突出部分RPの下部を本願記載の突出部の形状(略半円筒形状)に変更し、曲面突出部分RPに指が掛けられるようとする動機付けを生じることはない。よって、引用文献1からでは、当業者であっても本願請求項1に記載の発明に容易に想到することは難しいであろう、と考える。」 上記主張について検討する。 まず図10(上記記載事項Eを参照のこと。)に対応する「参考図1」についてみるに,筺体10の下端部で吹き出しによって「直線」と強調しているバッテリ蓋58の下端部は,当該バッテリ蓋58が筺体10に設けられたバッテリ収納部13を閉塞して筺体10の下ケース12に着脱自在に装着される(上記第2 2(1)記載事項Aの段落0029及び記載事項Fの図11等参照。)ものであることから,当該バッテリ蓋58の形状が略半円筒形状にならないことの根拠たり得ず,寧ろ,参考図1及び上記記載事項D乃至Fの図9乃至11にもあるように,当該「直線」部分の上には,弧状の線が描かれており,これは参考図1において吹き出しで強調される「楕円形状」の部分の構造と相俟って,当該バッテリ蓋58の「曲面突出部分RP」の形状が本願発明の「略半円筒形状の凸部」と同等の構造であることを十分に示唆するものと認められる。 次に,引用発明の把持部分HAの握り方について検討するに,上記記載事項Hの図15を参照すると,なるほど筺体両側面を親指とそれ以外の指とで挟み込むような把持の態様が読み取れる一方で,引用例の発明の詳細な説明には,そのような持ち方をして用いることを示唆する明示的な記載はない。寧ろ,上記記載事項Gの図14のような態様,即ち筺体側面は,第2指乃至第5指と第1指の拇指球付近とで挟み込んで把持して用いるものと理解され,このことは,筺体10の下ケース13に凹部14を設け,当該凹部14に指をかけやすくして把持部の握りやすさを一層向上させる(上記記載事項I参照。)効果を奏することとも符合する。そうすると,審判請求人が主張する,「掌を筐体10の背面に対向させた状態で、第1指(親指)を上ケース11の縁に掛け、且つ、その縁とは反対側の縁に第2?5指の何れかを掛けるという握り方を前提」とするものである旨の主張は,当を得ないものとして採用することはできない。 したがって,相違点2も格別なものとはいえない。 以上検討したとおり,相違点1及び2はいずれも格別なものではなく,またそのことによる効果も,当業者であれば普通に想起し得る程度のことに過ぎない。 したがって,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易になし得たものであり,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。 第3 むすび 以上のとおり,本願発明は,本願出願前に頒布された引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-03-09 |
結審通知日 | 2020-03-10 |
審決日 | 2020-03-24 |
出願番号 | 特願2015-11376(P2015-11376) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 甲斐 哲雄 |
特許庁審判長 |
田中 秀人 |
特許庁審判官 |
松平 英 山崎 慎一 |
発明の名称 | 携帯端末装置 |
代理人 | 特許業務法人 楓国際特許事務所 |