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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1362153
審判番号 不服2019-9643  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-19 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 特願2017-249281「ファイル」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月26日出願公開、特開2018-67963〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年4月20日(優先権主張 平成26年5月15日、平成27年2月6日)に出願した特願2015-85601号の一部を平成27年11月13日に新たな特許出願(特願2015-222650号)とし、さらにその一部を平成29年12月26日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 4月18日 :上申書の提出
同年 6月21日 :手続補正書、上申書の提出
同年12月18日付け:拒絶理由通知書
平成31年 2月25日 :意見書の提出
同年 4月16日付け:拒絶査定
令和 元年 7月19日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年10月18日 :上申書の提出

第2 令和元年7月19日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
令和元年7月19日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲についてする補正であり、平成30年6月21日付け手続補正により補正された請求項1(以下、「補正前の請求項1」という。)を、以下の請求項1(以下、「補正後の請求項1」という。)とする補正事項を含むものである。(下線は、補正箇所である。)
符号A?C3は説明のため当審で付与したものであり、以下、発明特定事項A?発明特定事項C3と称する。各請求項1において同じ記載内容の発明特定事項には同じ符号を付し、本件補正により補正された発明特定事項の符号には「’」を付した。

(補正前の請求項1)
「(A)
(A1)制御部および動画生成部を備えるコンピュータに用いられ、
(A2)全天球動画を生成するための処理に用いられるデータのデータ構造であって、
(B)
(B1)複数のフレームデータからなる画像データと、
(B2)複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データであり、前記複数のフレームデータに関連付けられた複数の傾き角データと、
を有し、
(C)
(C1)前記コンピュータが、前記データ構造を有する全天球動画を生成するためのデータを読み出し、
(C2)前記制御部が、前記複数のフレームデータに関連付けられた前記複数の傾き角データに基づき前記複数のフレームデータの傾きを補正し、
(C3)前記動画生成部が、補正された前記複数のフレームデータに基づき全天球動画を生成するための処理に用いられる
ことを特徴とする、
(A2)全天球動画を生成するためのデータのデータ構造。」

(補正後の請求項1)
「(A)
(A1)制御部および動画生成部を備えるコンピュータに用いられ、
(A2)全天球動画を生成するための処理に用いられるデータのデータ構造であって、
(B)
(B1’)複数のフレームデータからなる、時間軸方向の圧縮が行われた形式の画像データと、
(B2)複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データであり、前記複数のフレームデータに関連付けられた複数の傾き角データと、
を有し、
(C)
(C1)前記コンピュータが、前記データ構造を有する全天球動画を生成するためのデータを読み出し、
(C2’)前記制御部が、前記時間軸方向の圧縮が行われた形式の画像データ中の起点となるフレームに基づく一部のフレームのメモリ上に展開された単位で前記複数のフレームデータに関連付けられた前記複数の傾き角データに基づき前記複数のフレームデータの傾きを補正し、
(C3)前記動画生成部が、補正された前記複数のフレームデータに基づき全天球動画を生成するための処理に用いられる
ことを特徴とする、
(A2)全天球動画を生成するためのデータのデータ構造。」

2 本件補正の適否
(1)本件補正の補正事項
本件補正における請求項1に係る補正事項は、以下のとおりである(以下、「補正事項ア」、「補正事項イ」という。)。

(補正事項ア)
発明特定事項B1の「画像データ」を、発明特定事項B1’の「時間軸方向の圧縮が行われた形式の画像データ」とする補正

(補正事項イ)
発明特定事項C2の「前記複数のフレームデータに関連付けられた前記複数の傾き角データ」を、発明特定事項C2’の「前記時間軸方向の圧縮が行われた形式の画像データ中の起点となるフレームに基づく一部のフレームのメモリ上に展開された単位で前記複数のフレームデータに関連付けられた前記複数の傾き角データ」とする補正

(2)補正の目的
補正事項アは、発明特定事項B1の「画像データ」について、「時間軸方向の圧縮が行われた形式の」との限定を加えるものであり、補正事項イは、発明特定事項C2の「複数の傾き角データ」について、「前記時間軸方向の圧縮が行われた形式の画像データ中の起点となるフレームに基づく一部のフレームのメモリ上に展開された単位で」との限定を加えるものであるから、補正事項ア及びイは、特許請求の範囲を減縮を目的とする補正といえ、特許法第17条の2第5項第2号の規定に該当する。

(3)新規事項、発明の特別な技術的特徴の変更
補正事項ア及びイは、願書に最初に添付した明細書の段落【0058】及び段落【0059】に記載されているから、補正事項ア及びイは、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、新たな技術事項を導入するものでないといえる。よって、補正事項ア及びイは、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものである。

(4)独立特許要件
上記(2)のとおり本件補正のうち請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後の請求項1に係る発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

(4-1)補正発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は、上記1(補正後の請求項1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
なお、発明特定事項B2の「複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データであり」の記載は、当該「複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により」の記載に対してこれを受ける関係となる記載が請求項1中に存在していない。
このため、発明特定事項B2の「複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データであり」の記載は、明確とはいえないところ、出願当初の特許請求の範囲の請求項1の「撮像手段により前記画像を撮像しているときの基準方向に対する傾きのデータである傾き角データ」の記載が、平成30年6月21日付け手続補正によって、「複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データであり」と補正されたことから、当該記載は、「複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により撮像しているときの前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データであり」を意味する事項であると認定した。

(4-2)補正発明の発明特定事項について
ア 補正発明の「全天球動画を生成するための処理に用いられるデータのデータ構造」の構成

(ア)補正発明の「データ構造」は、発明特定事項Aにより特定されるものであって、「制御部および動画生成部を備えるコンピュータに用いられ」(発明特定事項A1)、「全天球動画を生成するための処理に用いられるデータのデータ構造」(発明特定事項A2)である。

(イ)補正発明の「全天球動画を生成するための処理に用いられるデータ」は、発明特定事項Bにより特定されるものであって、
「複数のフレームデータからなる、時間軸方向の圧縮が行われた形式の画像データ」(発明特定事項B1’)と、
「複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データであり、前記複数のフレームデータに関連付けられた複数の傾き角データ」(発明特定事項B2)とを有する。

(ウ)補正発明の「複数のフレームデータからなる画像データ」及び「傾き角データ」については、発明特定事項B2において、「前記複数のフレームデータに関連付けられた複数の傾き角データ」であることが特定されている。

イ 補正発明の「データ構造」に基づき実行される情報処理
(ア)補正発明の「データ構造」は、発明特定事項A及び発明特定事項Cに特定される「制御部および動画生成部を備えるコンピュータ」に用いられる「全天球動画を生成するための処理」に供する情報であって、
その「全天球動画を生成するための処理」は、「全天球動画を生成するためのデータを読み出し」(発明特定事項C1)、「前記複数のフレームデータの傾きを補正」(発明特定事項C2’)し、「全天球動画を生成」(発明特定事項C3)する処理を含む。

(イ)発明特定事項C1の情報処理に供される情報である「全天球動画を生成するためのデータ」は、発明特定事項A?C3に特定されていない読み出し元から「読み出し」を実施するものである。

(ウ)発明特定事項C2’の情報処理に供される情報である「複数のフレームデータ」及び「複数の傾き角データ」は、上記(イ)で読み出した「全天球動画を生成するためのデータ」が有するデータであって、「画像データ中の起点となるフレームに基づく一部のフレームのメモリ上に展開された単位で」情報処理が実施されるものである。
そして、発明特定事項C2’の情報処理は、当該「複数のフレームデータ」及び「複数の傾き角データ」を用いて、「前記複数のフレームデータに関連付けられた前記複数の傾き角データに基づき前記複数のフレームデータの傾きを補正」する処理を実施するものである。

(エ)発明特定事項C3の情報処理に供される情報である「複数のフレームデータ」は、上記(ウ)で傾きを補正されたデータであって、発明特定事項C3の情報処理は、当該「複数のフレームデータに基づき全天球動画を生成する」ものである。

(4-3)補正発明の発明該当性についての判断
ア 「全天球動画を生成するための処理に用いられるデータのデータ構造」のデータ構造について
(ア)補正発明において、「全天球動画を生成するための処理に用いられるデータ」は、上記(4-2)ア(イ)のとおりであって、「画像データ」及び「複数の傾き角データ」を有し、当該「画像データ」は、「時間軸方向の圧縮が行われた形式」であって「複数のフレームデータからなる」ものであり、当該「複数の傾き角データ」は「前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データ」であって「前記複数のフレームデータに関連付けられた」ものである。

(イ)そうすると、補正発明において、「全天球動画を生成するための処理に用いられるデータのデータ構造」は、当該「データ構造」が有する「画像データ」及び「傾き角データ」のデータ要素について、
「画像データが複数のフレームデータからなる」、「傾き角データは複数」、「傾き角データは画像データの傾き角の時系列データ」及び「複数の傾き角データは複数のフレームデータに関連付けられた」というデータ要素間の関係を有しているといえる。

(ウ)以上のとおり、補正発明において、「全天球動画を生成するための処理に用いられるデータのデータ構造」により、「画像データ」及び「傾き角データ」のデータ要素間の関係が表されているといえる。

イ 「プログラムに準ずるデータ構造」について
(ア)補正発明において、発明特定事項C2’の情報処理は、上記(4-2)イ(ウ)のとおりであって、「全天球動画を生成するための処理に用いられるデータのデータ構造」が有する「複数のフレームデータ」及び「複数の傾き角データ」の複数のデータ要素について、1つのデータ要素毎に、1つの「フレームデータ」に関連付けられた「傾き角データ」に基づき当該「フレームデータ」の「傾きを補正」という情報処理を実施するものといえる。そして、当該1つのデータ要素毎の「傾きを補正」という情報処理を、「起点となるフレームに基づく一部のフレームのメモリ上に展開された単位で」実施する情報処理といえる。

(イ)そうすると、補正発明において、「全天球動画を生成するための処理に用いられるデータのデータ構造」が有するデータ要素間の関係により定める情報処理は、1つのデータ要素毎の演算対象に「傾きを補正」を実施する、及び、「傾きを補正」を実施するデータ要素の単位を特定する程度に過ぎないといえる。
よって、補正発明のデータ構造は、1つの演算(傾きを補正)の演算対象のデータ要素間の関係及び演算を実施するデータ要素の単位を定めるのみであって、当該データ要素間の関係及びデータ要素の単位が、コンピュータに対する指令が一の結果を得ることができるように組み合わされたプログラムに類似する性質を有しているとはいえない。

(ウ)以上のとおり、補正発明のデータ構造は、プログラムに類似する性質を有するデータ構造ではない点で、「プログラムに準ずるデータ構造」とはいえない。
そして、補正発明のデータ構造に基づく情報処理については、上記(4-2)イのとおりであって、補正発明の「データ構造」は、「制御部および動画生成部を備えるコンピュータ」に用いられる「全天球動画を生成するための処理」に供する情報であって、「全天球動画を生成するためのデータを読み出し」、「前記複数のフレームデータの傾きを補正」し、「全天球動画を生成」という用途を記載したに過ぎない。

ウ 審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書及び令和元年10月18日付け上申書において、補正発明は、コンピュータによる情報処理を規定するという点でプログラムに類似する性質を有するものであり、プログラムに準ずるデータ構造であるとの主張を行っている。
しかしながら、上記イのとおりであるから、当該主張を採用することはできない。

エ 小括
以上のとおり、補正発明は、「プログラムに準ずるデータ構造」を有しているとはいえず、「制御部および動画生成部を備えるコンピュータ」が実施する情報処理に用いられるという用途を記載したに過ぎず、「人為的な取決め」を記載したにとどまるものといえる。
したがって、補正発明は、全体としてみて、人為的な取決めを記載したにとどまるから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しない。

(4-4)まとめ
上記(4-1)?(4-3)のとおりであるから、補正発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しない。
したがって、補正発明は、特許を受けることができる発明の要件を満たしておらず、特許法第29条第1項柱書の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年7月19日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?5に係る発明は、平成30年6月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1(補正前の請求項1)に記載された事項により特定されるとおりのものである。
なお、上記第2[理由]2(4)(4-1)のとおり、発明特定事項B2の「複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データであり」の記載は、「複数の光学系および撮像素子を備える撮像手段により撮像しているときの前記画像データの基準方向に対する前記撮像手段の傾き角の時系列データであり」を意味する事項であると認定した。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?5に記載された発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、「発明」に該当しないから、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない、というものである。

3 本願発明の発明該当性についての判断
本願発明は、上記第2[理由]2(1)のとおり、補正発明の発明特定事項B1’の補正事項ア及び発明特定事項C2’の補正発明イを除いた発明特定事項からなる発明である。
そうすると、上記第2[理由]2(4)(4-3)の判断と同じく、本願発明は、「プログラムに準ずるデータ構造」を有しているとはいえず、「制御部および動画生成部を備えるコンピュータ」が実施する情報処理に用いられるという用途を記載したに過ぎず、「人為的な取決め」を記載したにとどまるものといえる。
したがって、本願発明は、全体としてみて、人為的な取決めを記載したにとどまるから、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではなく、特許法第2条第1項に規定する「発明」に該当しない。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-03-04 
結審通知日 2020-03-10 
審決日 2020-03-24 
出願番号 特願2017-249281(P2017-249281)
審決分類 P 1 8・ 1- Z (H04N)
P 1 8・ 575- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松元 伸次  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 川崎 優
樫本 剛
発明の名称 ファイル  
代理人 間山 進也  

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