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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1362203
審判番号 不服2019-1243  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-30 
確定日 2020-05-14 
事件の表示 特願2015- 45183「情報処理装置、及び情報処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 9月 8日出願公開、特開2016-163982〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成27年3月6日の出願であって、平成30年7月17日付けで拒絶の理由が通知され、同年10月1日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月31日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成31年1月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、令和1年10月10日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月12日に意見書及び手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。)が提出されたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明は次のとおりである。

「【請求項1】
情報の入出力に関する複数の機能部と、
前記複数の機能部のうちの予め選択された機能部を使用したサービスを提供する際に、利用者に応じて前記サービスの名称及び前記サービスの内容を含む前記サービスのアイコンを選択肢として並べた操作画面を表示部に表示させるサービス制御部と
を備えることを特徴とする情報処理装置。」

ここで、請求項1の「利用者に応じて前記サービスの名称及び前記サービスの内容を含む前記サービスのアイコンを選択肢として並べた操作画面を表示部に表示させる」との記載に関連して、発明の詳細な説明には次の記載がある。

「【0086】
また、図11(b)は、画像形成装置10における貸出サービスを提供するメニュー画面(画像G2)の一例を示している。画像形成装置10は、図8に示すような認証処理を実行した後に、図8のステップS110において、画像G2に示すようなメニュー画面を表示部22に表示する。なお、この図に示す例では、利用者が、契約している貸出サーバビスが、コピー”、“写真サービス”、“プリントサービス”、及び“スキャンサービス”であり、画像形成装置10は、画像G2に示すように、提供可能な貸出サービスのみを表示部22に表示する。
【0087】
また、図11(c)は、画像形成装置10における貸出サービスを提供するメニュー画面(画像G3)の別の一例を示している。この場合、画像形成装置10は、貸出サービスとともに、通常サービスを、異なる表示形態(例えば、表示を薄くするなど)により表示させる。このように、画像形成装置10のサービス制御部42は、取得情報に基づく認証を必要とせずに提供されるサービスうち、貸出サービスによって提供されないサービスを、貸出サービスとは異なる表示形態でメニュー画面に表示させる。」(下線は当審で付与した。)

上記記載を参酌すれば、請求項1の「利用者に応じて前記サービスの名称及び前記サービスの内容を含む前記サービスのアイコンを選択肢として並べた操作画面を表示部に表示させる」とは、利用者が契約している貸出サービスに応じて、貸出サービスによって提供可能な貸出サービスのみをメニュー画面に表示させたり、貸出サービスによって提供されないサービスを貸出サービスとは異なる表示形態でメニュー画面に表示させたりすることを意味するものと解するのが相当である。
なお、このような解釈は、請求人が、令和1年5月15日の上申書において、利用者に応じてサービスの名称及びサービスの内容を含むサービスのアイコンを選択肢として並べた操作画面を表示部に表示させることが本願の特徴であり、図11(a)、(b)、(c)ではサービスの選択画面において利用者に応じて表示を行う一例を示していると説明していることに沿うものである。

3 拒絶の理由
令和1年10月10日付けで当審が通知した拒絶の理由は、概略、次の理由を含むものである。

(進歩性)本件出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2003-229986号公報
引用文献2:特開2015-37873号公報

4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0104】(実施の形態1)図1は、この発明の実施の形態1である画像形成装置(以下、「複合機」という)の機能的構成を示すブロック図である。図1に示すように、複合機100は、白黒ラインプリンタ(B&W LP)101と、カラーラインプリンタ(Color LP)102と、スキャナ、ファクシミリ、ハードディスク、メモリ、ネットワークインタフェースなどのハードウェアリソース103を有するとともに、プラットホーム120とアプリケーション130とから構成されるソフトウェア群110とを備えている。」

「【0118】セキュアアプリ117は、複合機100の利用者を後述する利用者コードによってチェックして、後述する利用者データベース320に登録されている利用者コードを有する利用者のみが複合機100を利用できるように制限する利用者制限処理を行うものである。また、セキュアアプリ117は、利用者データベース320に登録されている利用権限に基づいて、コピー、プリンタ、スキャナ、ファクシミリなどのユーザサービスの中から利用者に対して利用権限のある機能だけを提供可能とする利用者制限を行う。さらに、セキュアアプリ117は、この利用者制限処理の際にオペレーションパネル210に対して種々の画面表示をOCS126に対して依頼するようになっている。なお、セキュアアプリ117の詳細な処理については後述する。」

「【0122】オペレーションパネル210は、利用者のキー入力、ボタン押下などのキー操作を入力する操作部と、ボタン、ウィンドウ、各種画面などの描画データを表示する表示部とから構成される。」

「【0124】ハードディスク(HD)205には利用者データベース320が格納されている。利用者データベース320は、複合機100を利用できる利用者を管理するファイルである。図4は、この利用者データベース320に登録されるレコードのデータ構造図である。図4に示すように、利用者データベース320には、「利用者コード」と、「利用者名」と、「所属」と、「利用権限」とからなるデータが一レコードとして登録されている。
【0125】「利用者コード」は、各利用者に一意的に決定される識別コードであり、本発明における利用者識別情報を構成する。「利用者名」は、利用者の氏名であり、「所属」は利用者が属する部門である。「利用権限」は利用者が利用可能なユーザサービスを登録したものであり、本発明における利用権限情報を構成する。この「利用権限」には、「コピー」、「プリンタ」、「スキャナ」、「ファクシミリ」、「コピーサーバ」などのユーザサービス名の中で、利用者が利用可能なものが設定される。また、利用者が複数のユーザサービスを利用可能な場合には、「利用権限」には、例えば「コピー:ファクシミリ」のように、複数のユーザサービス名が設定される。」

「【0132】次に、制御権限を付与されたセキュアアプリ117による利用者制限処理について説明する。図6は、セキュアアプリ117による利用者制限の処理手順を示すフローチャートである。図9(a)?(c)は、利用者制限処理においてオペレーションパネル210の表示部に表示される画面の一例を示す模式図である。
【0133】セキュアアプリ117は、SCS122から制御権限付与の通知メッセージを受信すると(ステップS601)、オペレーションパネル210に対して初期画面(図示せず)を表示した後、図9(a)に示す利用者選択画面を表示する(ステップS602)。利用者選択画面に表示する利用者名は、図9(a)に示すように、HD205の利用者データベース320を参照して登録済み利用者名を、所属(企画、技術、営業、購買、品質管理)ごとに異なるタブでグループ分けをして表示する。
【0134】ここで、オペレーションパネル210に対する画面表示は、実際にはセキュアアプリ117の表示依頼によりOCS126が行う。すなわち、セキュアアプリ117がOCS126に対して表示すべき描画情報(ウィンドウID、ボタンIDなどの識別情報)を指定して描画関数の呼び出しを行うことにより(ステップS307)、OCS126が指定された描画情報の表示処理を行う(ステップS308)。
【0135】この利用者選択画面において利用者名のボタンが選択された場合には、そのキーイベントがセキュアアプリ117に通知される。ここで、オペレーションパネル210からのキー入力、ボタン押下などの操作は、図3に示すようにOCS126とSCS122を順に介してセキュアアプリ117に通知される(ステップS309、S310、S311)。より具体的には、OCS126、SCS122で次の処理が行われる。
【0136】図7は、実施の形態1の複合機100におけるOCS126およびSCS122によるオペレーションパネル210からのキー操作の取得処理の手順を示すフローチャートである。図7に示すように、オペレーションパネル210においてキー操作があると、OCS126で押下されたキーまたはボタンに対応したキーイベント関数を発行してキーイベントをSCS122に送信する(ステップS701)。
【0137】SCS122では、このキーイベント関数の呼び出しをされることによりキーイベントを受信し(ステップS702)、受信したキーイベントをSDRAM203の優先アプリ領域323に設定されているアプリケーションに送信する(ステップS703)。ここで、SDRAM203の優先アプリ領域323には、現在オペレーションパネル210に対する制御権限を有しているアプリケーション130が設定されているので、キー操作が正常に処理されることになる。
【0138】ステップS602による利用者選択画面に対して利用者名の選択ボタンの押下があった時点では、SDRAM203の優先アプリ領域323には、制御権限のあるセキュアアプリ117が設定されているため、キーイベントはOCS126、SCS122を介してセキュアアプリ117に通知されることになる。
【0139】利用者名の選択が行われると、セキュアアプリ117は、図9(b)に示す利用者コード入力画面を表示し(ステップS603)、利用者コードの入力待ち状態となる(ステップS604)。そして、利用者コードが入力された場合には、利用者データベース320を参照して、選択された利用者名の利用者コードと、オペレーションパネル210から入力された利用者コードとが一致しているか否かを判断する(ステップS605、S312 )。
【0140】両利用者コードが一致していない場合には、利用者コードエラーの旨をオペレーションパネル210に表示し(ステップS609)、再度利用者入力画面を表示する(ステップS603)。
【0141】両利用者コードが一致している場合には入力された利用者コードが正しいと判断し、この利用者コードのレコードから利用権限の内容を取得する(ステップS606)。この利用権限には、利用者が利用可能なユーザサービスの名称が列挙されているので、図9(c)に示すように、列挙されたユーザサービスのボタンのみを選択可能に表示した機能選択画面を表示する(ステップS607)。図9(c)の例では、利用者データベース320のレコードの利用権限として、「コピー:ファクシミリ」が設定されている場合の例を示しており、このため図9(c)の機能選択画面には、斜線で示す「コピー」ボタンと「ファクシミリ」ボタンが選択可能で他のサービスは選択不可能に表示されている。」

(認定事項)
図9(c)から、オペレーションパネルの表示部に、コピー、プリンタ、ファクシミリ、スキャナなどのユーザサービスの名称を付したボタンが並べて表示されていることが見て取れる。

以上の記載事項及び認定事項から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認められる。

「白黒ラインプリンタ(B&W LP)101と、カラーラインプリンタ(Color LP)102と、スキャナ、ファクシミリ、ハードディスク、メモリ、ネットワークインタフェースなどのハードウェアリソース103と、
利用者のキー入力、ボタン押下などのキー操作を入力する操作部と、ボタン、ウィンドウ、各種画面などの描画データを表示する表示部とから構成されるオペレーションパネル210と、
コピー、プリンタ、スキャナ、ファクシミリなどのユーザサービスの中から利用者に対して利用権限のある機能だけを提供可能とする際に、コピー、プリンタ、ファクシミリ、スキャナなどのユーザサービスの名称を付したユーザサービスのボタンを並べて表示するとともに、利用者が利用可能なユーザサービスのボタンを選択可能に表示し、他のサービスのボタンを選択不可能に表示する機能選択画面を前記オペレーションパネル210の表示部に表示させるセキュアアプリ117と
を備える複合機100。」(以下「引用発明1」という。)

(2)引用文献2には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。ここでは、具体的一例として、コピーサービス処理機能、ファックスサービス処理機能、及びスキャナサービス処理機能を有する複合機である、画像処理装置について詳細に説明する。」

「【0019】
図2に示すように、本実施の形態の表示操作部30は、中央部分にLCD38及びタッチパネル40機能を有する、TFT(Thi Film Transistor:薄膜トランジスタ)等により成る、操作パネルが設けられている。当該操作パネルの周囲には、テンキー50、スタートボタン52、リセットボタン54、クリアボタン56、及びメニューボタン58等のボタン42が設けられている。テンキー50は、コピー等の部数の設定等、利用者が数字を設定するために用いられるものであり、スタートボタン52は、各サービスの実行を開始させるために用いられるものであり、リセットボタン54、及びクリアボタン56は、各機能(詳細後述)の設定値をリセット、またはクリアするために用いられるものであり、メニューボタン58は、操作パネル(LCD38)にメニュー画面(詳細後述)を表示させるために用いられるものである。」

「【0023】
次に、本実施の形態の表示制御装置10における、表示操作部30の表示制御処理動作について説明する。図3は、表示制御装置10で実行される表示制御処理の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、説明を簡略化するため、サービス処理(以下、サービスという)としてコピーサービスを利用者が選択する場合について、詳細に説明する。また、コピーサービスには、通常コピーサービス(以下、通常コピーという)と、簡易コピーサービス(以下、簡易コピーという)と、2つの処理がある。通常コピーは、複数の機能(倍率選択、用紙選択、わく消し等、詳細後述)を有しており、コピーにおける詳細な機能(項目)の設定を利用者が行えるサービスである。一方、簡易コピーは、通常コピーが有する機能の一部(詳細後述)を有しており、限られた機能の設定を利用者が行えるサービスである。なお、一般に簡易コピーは、利用者がよく使用する機能を有している。本実施の形態では、このように、上述の通常コピーのように、サービスにおける利用者が設定可能な全ての機能の設定が可能なサービスを通常サービスという。また、上述の簡易コピーのように、サービスに関する利用者が設定可能な機能の一部の設定が可能なサービスを簡易サービスという。
【0024】
LCD38にメニュー画面が表示された状態において、図3に示した本処理が実行される。本実施の形態におけるメニュー画面の具体的一例を図4に示す。本実施の形態のメニュー画面は、通常コピー選択ボタン60、簡易コピー選択ボタン61、通常ファックス選択ボタン62、簡易ファックス選択ボタン63、通常スキャナ選択ボタン64、簡易スキャナ選択ボタン65、及びメッセージ表示欄66を含んで構成されている。
【0025】
利用者により何もサービスが選択されていない場合は、メッセージ表示欄66には、図4に示すように、使用するサービスを選択するように促すメッセージが表示されている。
【0026】
通常コピー選択ボタン60、簡易コピー選択ボタン61、通常ファックス選択ボタン62、簡易ファックス選択ボタン63、通常スキャナ選択ボタン64、及び簡易スキャナ選択ボタン65は、各サービスを利用者が選択するためのボタンであり、本実施の形態では、タッチパネル40であるため、各選択ボタンはLCD38に表示された各画像であり、利用者は、利用したいサービスの画像をタッチする(ボタンが押し下げられたものとみなされる)ことにより、各サービスを選択する。
【0027】
本実施の形態では、簡易コピー選択ボタン61には、サービスの名称と、簡易コピーサービスが有する、利用者によって設定可能な全ての機能を表す各機能毎の画像(アイコン)70、72、74、76、78、80、82、84と、が表示されている。本実施の形態における簡易コピー選択ボタン61の詳細図を図5に示す。本実施の形態では、簡易コピーは、基本機能として、倍率選択機能、用紙選択機能、コピー濃度選択機能、及びコピー部数選択機能を有しており、その他の機能として、カラーモード選択機能、両面/片面選択機能、2枚の用紙上の画像をまとめて1枚に印刷する(以下、まとめて1枚という)機能、及び用紙の左上1ヵ所をホチキス止めする(以下、ホチキス左上1ヵ所という)機能を有している。簡易コピー選択ボタン61には、これら各機能に対応するアイコンが表示されている。なお、本実施の形態では、各機能に対応するアイコンには、それぞれの機能の設定値(パラメータ)や設定値が反映された機能が表示されている。なお、本実施の形態では、利用者によって設定可能な全ての機能を表すアイコン(アイコン70、72、74、76、78、80、82、84)を簡易コピー選択ボタン61に表示されている場合について説明しているがこれに限らず、利用者によって設定可能な全ての機能のうちのいくつか(例えば、利用者がアイコンを簡易コピー選択ボタン61に表示させるように設定した機能)が表示されるように構成してもよい。
【0028】
倍率選択アイコン70は、倍率選択機能を有していることを示しており、図5では、倍率100%が設定されていることを示している。カラーモード選択アイコン72は、カラーモード選択機能を有していることを示しており、図5では、カラーコピーが設定されていることを示している。ホチキス選択アイコン74は、ホチキス左上1ヵ所機能を有していることを示しており、図5では、用紙の左上1ヵ所にホチキス止めするように設定されていることを示している。なお、ホチキス止めを行わない場合は、アイコンの画像上に「×」が表示されていたり、他のアイコンと色が異なる(例えば、薄い等)ように表示される。用紙選択アイコン76は、用紙選択機能を有していることを示しており、図5では、用紙収納部1(本実施の形態では画像処理装置1が複数の用紙収納部を備えているものとする)に収納されている用紙が設定されていることを示している。両面/片面選択アイコン78は、両面/片面選択機能を有していることを示しており、図5では、片面→両面が設定されていることを示している。コピー濃度選択アイコン80は、コピー濃度選択機能を有していることを示しており、図5では、普通(中間)の濃度が設定されていることを示している。まとめて1枚選択アイコン82は、まとめて1枚機能を有していることを示しており、図5では、2枚の用紙上の画像を1枚の用紙にコピーするように設定されていることを示している。コピー部数選択アイコン84は、コピー部数選択機能を有していることを示しており、図5では、コピー部数として1部が設定されていることを示している。
【0029】
また、本実施の形態では、通常コピー選択ボタン60には、通常サービスが有している機能のうち、簡易コピーサービスが有していない機能が各機能毎に表示されている。本実施の形では、通常サービスが有している機能のうち、簡易コピーサービスが有していない機能が複数有るため、このような機能のうち、利用者がよく使用する機能を通常コピー選択ボタン60上に表示させるものとしている。具体的には、このような機能のうち、通常コピーの選択時に表示される通常表示画面(詳細後述)の基本画面に表示される機能、及び利用者や画像処理装置1の管理者等により指定された機能が通常コピー選択ボタン60上に表示されている。
【0030】
本実施の形態における通常コピー選択ボタン60の詳細図を図6に示す。なお、通常コピーが有する機能については詳細を後述する。図6に示すように、通常コピー選択ボタン60には、サービスの名称と、わく消し機能を有していること示す、わく消し選択アイコン90、製本機能を有していることを示す、製本選択アイコン92、及びコピー位置/とじしろ機能を有していることを示すコピー位置/とじしろ選択アイコン94と、が表示されている。なお、各機能に対応するアイコンには、当該機能を有していることを示すのみならず、簡易コピー選択ボタン61に表示される各機能のアイコンと同様に、それぞれの機能の設定値(パラメータ)が表示されていてもよい。」

「【0042】
なお、本実施の形態では、通常ファックス及び簡易ファックスが上述した機能を有するため、メニュー画面(図4)の通常ファックス選択ボタン62上には、簡易ファックスに無い機能である、リダイヤル機能を示すリダイヤルアイコン150、送信濃度を選択する機能を示す送信濃度選択アイコン152、及び宛先表を表示させて宛先を選択する機能を示す宛先選択アイコン154が表示される。また、メニュー画面(図4)の簡易ファックス選択ボタン63上には、簡易ファックスが有する全機能を示すアイコンとして、送信画質選択アイコン156、原稿の画質設定アイコン158、及び両面原稿送りアイコン160が表示される。ここでファックスサービスの場合、一般に、宛先はファックスを送信する度に設定する機能であるため、メニュー画面には表示させていない。
【0043】
さらに、通常表示画面及び簡易表示画面において設定値が変更されれば、変更された設定値がメニュー画面のアイコンの画像に反映されるように、上記と同様の処理を行う。
【0044】
また、説明を省略するが、スキャナサービスが選択された場合についても同様の処理が行われる。」

以上の記載事項から、引用文献2には、次の発明が記載されていると認められる。

「コピーサービス処理機能、ファックスサービス処理機能、及びスキャナサービス処理機能を有する複合機であって、
LCD38及びタッチパネル40機能を有する操作パネルが設けられ、
前記操作パネルにおいて、メニュー画面が、通常コピー選択ボタン60、簡易コピー選択ボタン61、通常ファックス選択ボタン62、簡易ファックス選択ボタン63、通常スキャナ選択ボタン64、簡易スキャナ選択ボタン65、及びメッセージ表示欄66を含んで構成され、
前記簡易コピー選択ボタン61には、サービスの名称と、簡易コピーサービスが有する、利用者によって設定可能な全ての機能を表す各機能毎の画像(アイコン)として、倍率選択アイコン70、カラーモード選択アイコン72、ホチキス選択アイコン74、用紙選択アイコン76、両面/片面選択アイコン78、コピー濃度選択アイコン80、まとめて1枚選択アイコン82、コピー部数選択アイコン84がそれぞれの機能の設定値(パラメータ)や設定値が反映された機能を含んで表示され、
前記通常コピー選択ボタン60には、サービスの名称と、通常サービスが有している機能のうち、簡易コピーサービスが有していない機能である、わく消し機能を有していること示す、わく消し選択アイコン90、製本機能を有していることを示す、製本選択アイコン92、及びコピー位置/とじしろ機能を有していることを示すコピー位置/とじしろ選択アイコン94と、がそれぞれの機能の設定値(パラメータ)を含んで表示され、
前記簡易ファックス選択ボタン63上には、サービスの名称と、簡易ファックスが有する全機能を示すアイコンとして、送信画質選択アイコン156、原稿の画質設定アイコン158、及び両面原稿送りアイコン160が設定値を含んで表示され、
前記通常ファックス選択ボタン62上には、簡易ファックスに無い機能である、リダイヤル機能を示すリダイヤルアイコン150、送信濃度を選択する機能を示す送信濃度選択アイコン152、及び宛先表を表示させて宛先を選択する機能を示す宛先選択アイコン154が設定値を含んで表示され、
スキャナサービスについても同様である、
複合機。」(以下「引用発明2」という。)

5 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

(1)引用発明1の「白黒ラインプリンタ(B&W LP)101と、カラーラインプリンタ(Color LP)102と、スキャナ、ファクシミリ、ハードディスク、メモリ、ネットワークインタフェース」は、いずれも情報の入出力機能を有することが明らかであるから、本願発明の「情報の入出力に関する複数の機能部」に相当する。

(2)技術的にみて、引用発明1において、「コピー、プリンタ、スキャナ、ファクシミリなどのユーザサービス」が、「白黒ラインプリンタ(B&W LP)101と、カラーラインプリンタ(Color LP)102と、スキャナ、ファクシミリ、ハードディスク、メモリ、ネットワークインタフェース」のうちの予め選択されたものを使用して行われるサービスであることは明らかである。
また、引用発明1の「コピー、プリンタ、ファクシミリ、スキャナなどのユーザサービスの名称を付したユーザサービスのボタン」は、「オペレーションパネル210の表示部に表示」されるものであるから、ユーザサービスの名称を含むユーザサービスのアイコンといえる。
さらに、引用発明1の「コピー、プリンタ、スキャナ、ファクシミリなどのユーザサービスの中から利用者に対して利用権限のある機能だけを提供可能とする際に、コピー、プリンタ、ファクシミリ、スキャナなどの」「ユーザサービスのボタンを並べて表示するとともに、利用者が利用可能なユーザサービスのボタンを選択可能に表示し、他のサービスのボタンを選択不可能に表示する」ことは、上記2の請求項の記載の解釈に基づけば、本願発明の「利用者に応じて前記サービスの名称及び前記サービスの内容を含む前記サービスのアイコンを選択肢として並べた操作画面を表示部に表示させる」ことに相当する。
したがって、引用発明1の「コピー、プリンタ、スキャナ、ファクシミリなどのユーザサービスの中から利用者に対して利用権限のある機能だけを提供可能とする際に、コピー、プリンタ、ファクシミリ、スキャナなどのユーザサービスの名称を付したユーザサービスのボタンを並べて表示するとともに、利用者が利用可能なユーザサービスのボタンを選択可能に表示し、他のサービスのボタンを選択不可能に表示する機能選択画面を前記オペレーションパネル210の表示部に表示させるセキュアアプリ117」と、本願発明の「前記複数の機能部のうちの予め選択された機能部を使用したサービスを提供する際に、利用者に応じて前記サービスの名称及び前記サービスの内容を含む前記サービスのアイコンを選択肢として並べた操作画面を表示部に表示させるサービス制御部」とは、「前記複数の機能部のうちの予め選択された機能部を使用したサービスを提供する際に、利用者に応じて前記サービスの名称を含む前記サービスのアイコンを選択肢として並べた操作画面を表示部に表示させるサービス制御部」である限りにおいて共通する。

(3)引用発明1の「複合機100」は、コピー、プリンタ、スキャナ、ファクシミリなどのユーザサービスを提供可能とするから、情報処理を行う装置ということができ、本願発明の「情報処理装置」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明1とは、
「情報の入出力に関する複数の機能部と、
前記複数の機能部のうちの予め選択された機能部を使用したサービスを提供する際に、利用者に応じて前記サービスの名称を含む前記サービスのアイコンを選択肢として並べた操作画面を表示部に表示させるサービス制御部と
を備える情報処理装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
サービス制御部が、複数の機能部のうちの予め選択された機能部を使用したサービスを提供する際に、表示部に表示させる操作画面に利用者に応じて選択肢として並べるサービスの名称を含む、サービスのアイコンについて、本願発明は、サービスの内容をも含むものであるのに対し、引用発明1は、サービスの内容を含むものではない点。

6 判断
引用発明2の「簡易コピー選択ボタン61に」「簡易コピーサービスが有する、利用者によって設定可能な全ての機能を表す各機能毎の画像(アイコン)として、倍率選択アイコン70、カラーモード選択アイコン72、ホチキス選択アイコン74、用紙選択アイコン76、両面/片面選択アイコン78、コピー濃度選択アイコン80、まとめて1枚選択アイコン82、コピー部数選択アイコン84がそれぞれの機能の設定値(パラメータ)や設定値が反映された機能を含んで表示され」ることは、簡易コピーサービスの内容が表示されることといえる。
同様に、引用発明2の「通常コピー選択ボタン60に」「通常サービスが有している機能のうち、簡易コピーサービスが有していない機能である、わく消し機能を有していること示す、わく消し選択アイコン90、製本機能を有していることを示す、製本選択アイコン92、及びコピー位置/とじしろ機能を有していることを示すコピー位置/とじしろ選択アイコン94と、がそれぞれの機能の設定値(パラメータ)を含んで表示され」ることは、通常コピー選択ボタン60に通常サービスの内容が表示されることといえる。
同様に、引用発明2の「簡易ファックス選択ボタン63上に」「簡易ファックスが有する全機能を示すアイコンとして、送信画質選択アイコン156、原稿の画質設定アイコン158、及び両面原稿送りアイコン160が設定値を含んで表示されることは、簡易ファックス選択ボタン63上にサービスの内容が表示されることといえる。
同様に、「通常ファックス選択ボタン62上に」「簡易ファックスに無い機能である、リダイヤル機能を示すリダイヤルアイコン150、送信濃度を選択する機能を示す送信濃度選択アイコン152、及び宛先表を表示させて宛先を選択する機能を示す宛先選択アイコン154が設定値を含んで表示される」ることは、通常ファックス選択ボタン63上にサービスの内容が表示されることといえる。
また、引用発明2の「通常コピー選択ボタン60、簡易コピー選択ボタン61、通常ファックス選択ボタン62、簡易ファックス選択ボタン63、通常スキャナ選択ボタン64、簡易スキャナ選択ボタン65」は、いずれも「操作パネル」に「表示」されるものであるから、サービスのアイコンということができる。
そうすると、引用発明2は、サービスの名称を含むサービスのアイコンについて、サービス内容をも含むものであるということができる。

そして、引用発明1と引用発明2とは、共に、複合機の各サービスを選択するために操作パネルに表示されるボタンに係る発明である点で共通し、両発明に接した当業者であれば、引用発明1の「ユーザサービスのボタン」に対し、そのサービス内容をユーザに把握させるために、引用発明2を適用しようと想起することに格別の困難性はなく、そのようにして相違点に係る本願発明の構成とすることは容易になし得たことである。

(効果について)
本願発明の奏する作用効果は、引用発明1及び引用発明2の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(請求人の主張について)
請求人は、令和1年12月12日の意見書において、
(1)引用文献1は、利用権限に列挙されているユーザサービスのボタンのみを選択可能に表示された機能選択画面を開示しているが、サービスの内容はユーザサービスのボタン表示に含まれていない、
(2)引用文献2は、図4にて簡易コピー選択ボタン60にサービスの名称と設定可能な機能を表示しているが、利用者に応じて表示するものではない、
(3)本願では「複数の機能部のうちの予め選択された機能部を使用したサービスを提供」することを「利用者に応じて」行うものであり、この場合、サービスの名称だけで、サービスの内容を把握することは容易ではない、
(4)サービスの名称が同じであっても、利用者に応じてその内容が異なることも考えられる、
(5)「利用者に応じてサービスの名称及びサービスの内容を含むサービスのアイコンを選択肢として並べる」ことで、本願特有の効果が得られる、
旨を主張する。

しかしながら、上記(1)及び(2)の主張について、上記5(2)で説示したように、引用発明1のユーザサービスのボタンは利用者に応じて表示されるものであり、また、上記6で説示したように、引用発明2の選択ボタンはサービス内容の表示が含まれるものであって、両発明に接した当業者であれば、引用発明1に引用発明2を適用しようと想起することに格別の困難性はなく、そのようにして、サービスの内容の表示を含むユーザサービスのボタン(選択ボタン)を利用者に応じて表示するものとすることは容易になし得たことである。

また、上記(3)及び(5)の主張について、「複数の機能部のうちの予め選択された機能部を使用したサービスを提供」することを「利用者に応じて」行う場合に、「利用者に応じてサービスの名称及びサービスの内容を含むサービスのアイコンを選択肢として並べる」ことにより、サービスの名称だけでなく、サービスの内容を把握することを容易にするという作用効果は、ユーザサービスのボタンを利用者に応じて表示する引用発明1の奏する作用効果、及び選択ボタンがサービス内容の表示を含む引用発明2が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

さらに、上記(4)の主張について、上記2で説示したように、請求項1の「利用者に応じて前記サービスの名称及び前記サービスの内容を含む前記サービスのアイコンを選択肢として並べた操作画面を表示部に表示させる」とは、利用者が契約している貸出サービスに応じて、貸出サービスによって提供可能な貸出サービスのみをメニュー画面に表示させたり、貸出サービスによって提供されないサービスを貸出サービスとは異なる表示形態でメニュー画面に表示させたりすることを意味するものと解するのが相当であるから、これを、選択肢として表示させるサービスのアイコンに含まれるサービスの内容について利用者に応じて異ならせることであるとする請求人の解釈は請求項の記載に基づくものではない。
なお、選択肢として表示させるサービスのアイコンに含まれるサービスの内容について利用者に応じて異ならせることは、本願の明細書及び図面に記載されておらず、それが自明の事項ということもできないことを付言する。

(まとめ)
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-03-10 
結審通知日 2020-03-17 
審決日 2020-03-30 
出願番号 特願2015-45183(P2015-45183)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 孝幸  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 藤田 年彦
畑井 順一
発明の名称 情報処理装置、及び情報処理システム  
代理人 吉田 隆彦  

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