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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S |
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管理番号 | 1362208 |
審判番号 | 不服2019-2985 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-04 |
確定日 | 2020-05-14 |
事件の表示 | 特願2014- 56705「移動体の位置検出システム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日出願公開、特開2015-179024〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月19日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 2月 9日付け:拒絶理由通知書 平成30年 6月21日 :意見書、手続補正書(補正対象:特許請求 の範囲および明細書)の提出 平成30年11月26日付け:拒絶査定 (平成30年12月 4日 :査定の謄本の送達日) 平成31年 3月 4日 :審判請求書、手続補正書(補正対象:特許 請求の範囲)の提出 平成31年 3月14日 :手続補正書(補正対象:審判請求書)の提 出 令和 元年11月25日付け:拒絶理由通知書 令和 2年 1月27日 :意見書、手続補正書(補正対象:特許請求 の範囲)の提出 第2 本願発明 本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、令和2年1月27日に補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 n(nは2または3の整数)次元の空間を移動可能な移動体の位置を検出するシステムであって、 前記空間に配置される、少なくとも(n+1)個のスピーカと、 前記各スピーカを駆動する制御装置と、 前記移動体に搭載され、前記スピーカから出力された音を検出するマイクロホンと、 前記マイクロホンで受信された音に基づいて、前記移動体の位置を算出する演算装置と、 を備え、 前記演算装置には、前記各スピーカから出力される音の周波数が記憶され、 前記制御装置は、前記少なくとも(n+1)個のスピーカの中から、少なくとも(n+1)個のスピーカが、所定の同一の時間間隔をおいて所定順序で音を出力する出力動作を少なくとも1回行うように制御し、 前記演算装置は、前記出力動作で出力された音を前記マイクロホンで受信した時刻、及び前記スピーカの位置に基づいて、前記移動体の位置及びいずれかの前記スピーカが最初に音を出力した時刻を未知数とする連立方程式により、前記移動体の位置を算出する、移動体の位置検出システム。」 なお、本願発明2-6は本願発明1を減縮した発明である。 第3 当審が通知した拒絶の理由 当審が令和元年11月25日付けで通知した拒絶の理由は、概略以下のとおりである。 1 理由1(サポート要件) 請求項1-6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 よって、この出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2 理由2(実施可能要件) この出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1-6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 よって、この出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 3 理由3(進歩性) 本願の請求項1、2、4-6に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本願の請求項3に係る発明は、引用文献1に記載された発明、引用文献4に記載された技術的事項、および、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1-6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 理由1(サポート要件)についての判断 請求項1に係る発明は、「前記演算装置は、前記出力動作で出力された音を前記マイクロホンで受信した時刻、及び前記スピーカの位置に基づいて、前記移動体の位置及びいずれかの前記スピーカが最初に音を出力した時刻を未知数とする連立方程式により、前記移動体の位置を算出する」構成を有する発明である。 一方、発明の詳細な説明には、連立方程式を用いて移動体の位置を算出する点に関して、【0036】【数2】、【0041】【数3】、及び、【0053】【数4】に示される連立方程式を用いて移動体の位置を算出することが記載されているのみである。そして、これらの連立方程式を解くためには、連立方程式に代入する、各スピーカからの音を受信した時刻を把握しておく必要がある。すなわち、ある時刻に受信した音が、どのスピーカによって出力されたのかを特定する必要がある。したがって、例えば、1番目に出力するスピーカから出力される音の周波数と、他のスピーカから出力される音の周波数とを相違させる構成のように、各スピーカからの音を互いに識別することを可能とする構成が必須の構成である。 しかしながら、請求項1に係る発明は、この必須の構成が反映されていない。 よって、請求項1、及び、これを引用する請求項2、3、5、6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 第5 請求人の主張について 請求人は、理由1(サポート要件)について、意見書で以下のように主張している。 『補正後の請求項1では、「前記演算装置には、前記各スピーカから出力される音の周波数が記憶され、」との構成を追加しております。したがいまして、補正後の請求項1では、審判官殿からの「各スピーカからの音を識別することを可能とする構成が必須の構成であるといえる」との御指摘を反映しております。 よって、特許法第36条第6項1号及び第4項第1号違反は、解消されたと思料いたします。』 当該主張について検討する。 本願発明1の、「前記演算装置には、前記各スピーカから出力される音の周波数が記憶され、」という構成は、「各スピーカから出力される音の周波数」が、同じ周波数であるのか、それとも、異なる周波数であるのかを特定するものではない。 「前記演算装置」に「記憶され」る「前記各スピーカから出力される音の周波数」がすべて同じ周波数であるであるならば、「前記各スピーカから出力される音の周波数」を利用することによって、「前記各スピーカから出力される音」と、「前記各スピーカから出力される音の周波数」と異なる周波数の音(例.ノイズ)とを識別することは可能であるが、「前記各スピーカから出力される音」それぞれを識別することは可能ではない。 上記「第4 理由1(サポート要件)についての判断」で述べたとおり、本願発明1においては、「前記移動体の位置及びいずれかの前記スピーカが最初に音を出力した時刻を未知数とする連立方程式」を解くためには、各スピーカからの音を互いに識別することを可能とする構成が必須の構成である。 しかしながら、本願発明1は、この必須の構成が反映されていない。 よって、本願発明1、及び、これを引用する本願発明2、3、5、6は、依然として、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 したがって、請求人の主張は、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 したがって、他の拒絶の理由を検討するまでもなく、本願は拒絶をするべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-03-13 |
結審通知日 | 2020-03-17 |
審決日 | 2020-03-31 |
出願番号 | 特願2014-56705(P2014-56705) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WZ
(G01S)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼場 正光、中村 説志、渡辺 慶人 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
小林 紀史 梶田 真也 |
発明の名称 | 移動体の位置検出システム |
代理人 | 立花 顕治 |