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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1362213
審判番号 不服2019-8214  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-20 
確定日 2020-05-14 
事件の表示 特願2016-233724号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018- 89056号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成28年12月1日の出願であって、平成30年10月23日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月20日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年3月28日付け(送達日:同年4月2日)で拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年6月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、同年12月19日付けで拒絶の理由が通知され、令和2年2月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願請求項1に係る発明は、令和2年2月18日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定されるとおりのものであると認められ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、分説してAないしHの符号を付与すると、次のとおりのものである。

「【請求項1】
A 所定条件の成立に基づきゲームを実行し、当該ゲームの結果に応じて遊技者に遊技価値を付与可能な遊技機において、
B 遊技に関する画像を表示可能な表示装置と、
C 前記表示装置における表示を制御する演出制御手段と、
D 遊技機における異常を検出する異常検出手段と、
E 遊技者が遊技媒体を発射する為の操作に用いる操作手段と、を備え、
F 前記演出制御手段は、
前記異常検出手段により検出された異常を報知するための異常報知表示、予め定められた表示である特定表示、及び前記操作手段の操作について指示するための指示表示のうちの少なくともいずれかの表示を前記表示装置に表示可能であり、
G 前記特定表示及び前記異常報知表示を前記表示装置に表示する場合には、当該異常報知表示を当該特定表示の前側に表示可能であり、
H 前記指示表示及び前記異常報知表示を前記表示装置に表示する場合には、遊技者が当該異常報知表示を認識可能な態様で当該指示表示を当該異常報知表示よりも前側に表示可能である
A ことを特徴とする遊技機。」

第3 令和1年12月19日付け拒絶理由の概要

当審による令和1年12月19日付け拒絶理由の概要は、請求項1に係る発明に対する拒絶理由を含むものであって、以下のとおりのものである。

理由1:この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1:特開2015-36027号公報
引用文献2:特開2014-158670号公報

第4 各引用文献に記載された事項及び引用発明

1 引用文献1

ア 引用文献1の記載事項

当審における拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2015-36027号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。

引1-ア
「【0001】
本発明は、変動表示ゲームを実行可能な遊技機に関する。」

引1-イ
「【0013】
遊技機1は、島設備に固定される外枠(支持体)2にヒンジ3を介して右側部が開閉回動自在に取り付けられる開閉枠(本体枠)4を備える。開閉枠4は、前面枠5及びガラス枠(透明板保持枠)6によって構成される。
【0014】
前面枠5には、遊技盤30(図2A参照)が配設されるとともに、遊技盤30の前面を覆うカバーガラス6aを備えたガラス枠6が取り付けられる。前面枠5及びガラス枠6は、それぞれ個別に開放することが可能となっている。例えば、ガラス枠6のみを開放して遊技盤30の遊技領域31(図2A参照)にアクセスすることができる。また、前面枠5をガラス枠6が開放されていない状態で開放することによって、遊技盤30の裏側に配置された遊技制御装置600(図3参照)等にアクセスすることができる。」

引1-ウ
「【0022】
ガラス枠6の下方位置において前面枠5に固定される固定パネル13には、下皿(受皿)14と、球発射装置を駆動するための操作部15とが備えられる。遊技者が操作部15を回動操作することによって、球発射装置は上皿11aから供給された遊技球を遊技盤30の遊技領域31(図2A参照)に発射する。下皿14には、当該下皿14に貯留された遊技球を外部へ排出するための球抜き機構16が設けられる。
【0023】
球発射装置(発射手段)は、遊技領域31に遊技球を発射する勢(速度)である発射勢を、遊技者によるハンドル等の操作部15(発射操作手段、遊技実行手段)の操作態様に対応して変更でき、発射勢の異なる種々の発射態様で遊技球を発射できる。球発射装置は、遊技者による操作部15の操作に対応して、第1の発射勢で遊技球を発射する第1発射態様と、第1の発射勢とは異なる第2の発射勢で遊技球を発射する第2発射態様と、で発射可能である。例えば、第1発射態様は、左打ちと右打ちのうちの一方であり、第2発射態様は、左打ちと右打ちのうちの他方である。左打ち、右打ちとは、それぞれ、遊技領域31(図2A参照)の左側、右側において遊技球を流下させる態様である。遊技者は、操作部15の操作態様に対応して、左打ち又は右打ちを選択できる。」

引1-エ
「【0030】
遊技盤30の裏面には、表示装置35を備える制御ベースユニットが配設される。表示装置35は、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示可能な表示部35aを有する。制御ベースは、内部に空間を有する箱型の部材であり、制御ベースユニットは、センターケース34との間で遊技盤30を挟むようにして、遊技盤30の裏面に取り付けられる。
【0031】
センターケース34の開口部34aは表示装置35の表示部35aに対応して設けられており、表示装置35の表示部35aはセンターケース34の開口部34aに臨むように配設される。表示装置35の表示部35aは任意の画像を表示可能な液晶表示器であり、表示画面上には複数の識別情報(特別図柄)や変動表示ゲームを演出するキャラクタ等、遊技の進行に基づく画像が表示される。なお、表示装置35の表示部35aは、液晶表示器に限らず、EL、CRT等であってもよい。表示装置35は、表示部35aに複数の変動表示領域(例えば、左側、中央、右側の3つの表示領域)を有しており、各表示領域の各々で独立した画像を表示可能に構成されている。」

引1-オ
「【0034】
始動入賞口ユニット101の下部には、遊技球の入賞に基づき特別図柄(特図)変動表示ゲームの始動条件を付与可能な始動入賞口(始動領域)37が配設される。始動入賞口37は、遊技球が入賞した場合に第1特図変動表示ゲームの始動条件を成立させる第1始動入賞口37aと、遊技球が入賞した場合に第2特図変動表示ゲームの始動条件を成立させる第2始動入賞口37bとを備える。なお、以下の説明において、第1特図変動表示ゲームと第2特図変動表示ゲームを区別しない場合は、単に特図変動表示ゲーム(又は単に変動表示ゲーム)と称する。」

引1-カ
「【0046】
始動入賞口37の右側の遊技領域31には、特別変動入賞装置41が設けられる。特別変動入賞装置41は、大入賞口と、大入賞口ソレノイド28(図3参照)によって上端側が手前側に倒れる方向に回動して大入賞口を開放可能とするアタッカ形式の開閉扉41aと、を備える。特別変動入賞装置41は、特図変動表示ゲーム(第1特図変動表示ゲーム及び第2特図変動表示ゲーム)の結果が大当りになると、大入賞口を閉じた状態(遊技者にとって不利な閉塞状態)から開放状態(遊技者にとって有利な状態)に変換し、大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせることで、遊技者に賞球を付与するように構成されている。」

引1-キ
「【0079】
〔遊技制御装置/演出制御装置〕
次に、図3及び図4を参照して、遊技機1に備えられる遊技制御装置600及び演出制御装置700について説明する。
【0080】
図3は、本発明の第1の実施の形態の遊技機1の遊技制御装置600を中心とする制御系を示すブロック構成図である。図4は、本発明の第1の実施の形態の遊技機1の演出制御装置700を中心とする制御系を示すブロック構成図である。
【0081】
図3に示す遊技制御装置600は、遊技機1における遊技を統括的に制御する主制御装置(主基板)である。遊技制御装置600には、電源装置800、払出制御装置640、及び演出制御装置700が接続される。遊技制御装置600は、払出制御装置640や演出制御装置700に制御信号(コマンド)を送信し、各種処理の実行を指示する。さらに、遊技制御装置600には、各種スイッチや制御対象のソレノイド等が接続される。」

引1-ク
「【0111】
払出制御装置640は、遊技制御装置600からの賞球指令信号に基づいて払出ユニット(図示省略)から賞球を排出させたり、カードユニット(図示省略)からの貸球要求信号に基づいて払出ユニットから貸球を排出させたりする。払出制御装置640は、前述のように、球切れや故障等の障害が発生した場合に、払出異常ステータス信号やシュート球切れスイッチ信号、オーバーフロースイッチ信号を遊技制御装置600に出力する。
【0112】
払出異常ステータス信号は、遊技球の払い出しが正常に行われていない場合に出力される信号である。払出シュート球切れスイッチ信号は、払い出し前の遊技球が不足している場合に出力される信号である。オーバーフロースイッチ信号は、下皿14(図1参照)に所定量以上の遊技球が貯留されている場合に出力される信号である。遊技制御装置600から演出制御装置700には、シリアル通信でデータが送信される。」

引1-ケ
「【0125】
図4に示す演出制御装置700は、遊技制御装置600の遊技用マイコン611と同様にアミューズメントチップ(IC)からなる主制御用マイコン(1stCPU)710と、主制御用マイコン710の制御下で映像制御等を行う映像制御用マイコン(2ndCPU)720と、映像制御用マイコン720からのコマンドやデータに従って表示装置35(図2A参照)への映像表示のための画像処理を行うVDP(Video Display Processor)730と、各種メロディや効果音等を上スピーカ10a及び下スピーカ10bから再生させる音源LSI705とを備える。」

引1-コ
「【0137】
演出制御装置700は、遊技制御装置600から送信されるコマンド(主基板コマンド)を受信するためのインタフェースチップ(コマンドI/F)701を備えている。演出制御装置700は、コマンドI/F701を介して、遊技制御装置600から送信された変動開始コマンド、客待ちデモコマンド、ファンファーレコマンド、確率情報コマンド、及びエラー指定コマンド等を演出制御指令信号として受信する。遊技制御装置600の遊技用マイコン611はDC5Vで動作し、演出制御装置700の主制御用マイコン710はDC3.3Vで動作するため、コマンドI/F701には信号のレベル変換の機能が設けられている。」

引1-サ
「【0142】
以上のように、演出制御装置700は、遊技制御装置600から送信されたコマンドに基づいて演出制御を行う演出制御手段として機能し、表示装置35に表示される表示内容を制御する表示制御手段、及び、スピーカ10から効果音等を出力する音出力制御手段としての機能を有する。」

引1-シ
「【0189】
その後、遊技制御装置600は、各種入賞口スイッチなどを監視したり、枠の不正な開放などのエラーを監視したりする入賞口スイッチ/エラー監視処理を実行する(ステップA1107)。各種入賞口スイッチには、例えば、第1始動口スイッチ601、第2始動口スイッチ602、ゲートスイッチ603、入賞口スイッチ604a?604n、カウントスイッチ605a?mが含まれる。入賞口スイッチ/エラー監視処理では、これらのスイッチから正常な信号が入力されているか否かを監視したりする。エラーの監視としては、前面枠開放検出SW25やガラス枠開放検出SW26の信号の出力によって前面枠5やガラス枠6の不正開放を監視し、払出異常ステータス信号、シュート球切れスイッチ信号、オーバーフロースイッチ信号の出力によって払出制御装置640の障害などを監視する。」

引1-ス
「【0630】
主制御用マイコン710は、まず、遊技制御装置600からエラー指定コマンドを受信したか否か判定する(ステップB6001)。エラー指定コマンドには、エラーの種類に関する情報が含まれている。エラーの種類として、遊技制御装置600によって入賞口スイッチ/エラー監視処理(ステップA1107)、磁石不正監視処理(ステップA1111)、電波不正監視処理(ステップA1112)などで検出されたエラーや異常がある。
エラー指定コマンドを受信していない場合に(ステップB6001の結果が「N」)、今回の処理を終了する。
【0631】
エラー指定コマンドを受信した場合に(ステップB6001の結果が「Y」)、主制御用マイコン710は、エラーが発生したことを示すエラー発生フラグF7をオンに設定する(ステップB6002)。次に、エラー報知処理として、表示装置35の表示部35aに表示するエラー表示の表示内容、表示領域、及び、表示タイミングを設定し、警報音を発生する(ステップB6003)。なお、エラー表示は、表示装置35の表示部35aにおいて、他の各種表示と表示タイミング及び/又は表示領域が重なって設定される場合でも、優先的に表示されてもよい。
【0632】
例えば、エラーの種類が下皿14に所定量以上の遊技球が貯留されている場合のオーバーフロースイッチ信号の出力であれば、エラー表示の内容として、文字表示「球を抜いてください」が設定され、エラーの種類が払い出し前の遊技球が不足している場合の払出シュート球切れスイッチ信号の出力であれば、エラー表示の表示内容として、文字表示「係員を呼んでください」が設定される。映像制御用マイコン720は、主制御用マイコン710からの演出コマンド(ステップB1014)によって、設定されたエラー表示を表示装置35の表示部35aに表示する制御を行う。例えば、エラーの種類が、前面枠5やガラス枠6の不正開放であれば、警報音を発生してよい。」

引1-セ
「【0634】
主制御用マイコン710は、ステップB2001からB2007までの処理を第1の実施の形態(図46)と同様に行った後、図77-79のテーブルを参照して、変動パターン情報設定処理(ステップB2004)とハイチャンスゾーン演出設定処理(ステップB2006)などで表示設定された各種表示の表示優先順位(優先度)を設定する表示優先順位設定処理(変動中)を実行する(ステップB6201)。ここでの各種表示として、操作情報表示137、飾り特別図柄(識別情報)の変動表示、残り回転数表示143、始動記憶表示(保留表示)などがある。操作情報表示137は、演出に介入するため遊技者に演出ボタン17を押すことを促すPB操作指示表示137a(演出介入情報表示)と、遊技者に右打ち又は左打ちを促すための発射操作情報表示137bを含む。また、後述のように、PB操作指示表示137aの表示態様には、通常表示態様(第1の表示態様)と、通常表示態様とは異なる特殊表示態様(第2の表示態様)がある。本実施形態において、特殊表示態様は、比較的小さい通常表示態様を拡大した拡大表示態様である。
【0635】
なお、各種表示は、文字、記号、図形(複数可)またはそれらの組合せを含む一つの画像オブジェクトであり、演出制御装置700において一体として表示制御がされる。主制御用マイコン710と映像制御用マイコン720の協働によって、各種表示は、表示装置35の表示部35aにおける表示領域(表示位置とサイズ)を指定され、所定の表示タイミングで表示されるが、表示タイミング及び/又は表示領域が重なると見づらく理解し難い場合がある。そこで、各種表示の表示タイミング及び/又は表示領域が重なるよう設定されている場合に備えて、主制御用マイコン710は、各種表示の表示優先順位を決定して(ステップB6201)、演出コマンドに表示優先順位の情報を含めて映像制御用マイコン720に送信しておく(ステップB1014)。なお、表示タイミングが重なるとは、表示装置35の表示部35aにおいて、ある表示が行われる期間と別の表示が行われる期間との間に重複が生じることをいう。」

引1-ソ
「【0639】
次に、主制御用マイコン710は、エラー発生フラグF7がオンに設定されているか判定する(B6205)。エラー発生フラグF7がオンに設定されていない場合に(ステップB6205の結果が「N」)、今回の処理を終了する。エラー発生フラグF7がオンに設定されている場合に(ステップB6205の結果が「Y」)、エラー表示とその他の各種表示とが表示タイミング及び/又は表示領域に関して重なるよう設定されている場合においては、エラー表示が優先して表示部35aで表示させるように、エラー表示の表示優先順位をその他の各種表示の表示優先順位より高く設定する(ステップB6206)。なお、これに限られず、PB操作対応表示をエラー表示に優先して表示してもよい。主制御用マイコン710は、演出コマンドにエラー表示の表示優先順位の情報を含めて映像制御用マイコン720に送信する(ステップB1014)。
【0640】
なお、表示優先順位を取得した映像制御用マイコン720は、各種表示の表示タイミング及び/又は表示領域が重なるよう設定されている場合に、表示装置35の表示部35aにおいて、例えば、表示優先順位が高い各種表示を表示優先順位が低いものよりも前面に表示したり、表示優先順位が最も高い各種表示だけを表示する制御を行ってもよい。即ち、表示部35aにおいて、表示優先順位が低い各種表示(画像オブジェクト)は、表示優先順位が高い各種表示に隠れるように表示されてよいし、表示優先順位が低い各種表示(画像オブジェクト)は表示されなくてもよい。このようにして、表示優先順位が高い各種表示を、表示装置35の表示部35aに優先して表示することができる。また、各種表示の表示タイミング及び/又は表示領域が重なるように設定されていても、適切に対処できるため、各種表示のサイズを予め厳密に調整する必要がなくなる。」

引1-タ
「【0646】
〔表示優先順位(変動中)〕
図77と図78は、それぞれ、保留表示がない場合とある場合において、変動表示ゲームの実行中(飾り特別図柄の変動中)の表示優先順位を設定する表示優先順位設定処理(ステップB6201)で参照するテーブルの一例である。保留数コマンド受信処理(ステップB1318)で取得した保留数がゼロでなければ保留表示があるが、消化される保留の保留表示が表示部35aの保留消化領域に表示される場合には、変動中に常に保留表示があることになる。テーブルにおいて、表示の種類と優先順位が対応付けられており、優先順位を表す数が小さいほど優先順位は高くなる。このテーブルでは「1」が最も優先順位が高い。映像制御用マイコン720には、表示優先順位の情報として優先順位を表す数が送信され、映像制御用マイコン720は、優先順位を表す数が小さいほど表示優先順位が高いと判定できる。(A)は、PB操作指示表示137aが通常表示態様で表示される場合を示し、(B)は、PB操作指示表示137aが拡大表示態様で表示される場合を示す。図77と図78において、優先順位が同じに表示されているものは、抽選等によって最終的な優先順位が定められてよい。なお、PB操作対応表示やエラー表示の表示優先順位が、このテーブルの表示優先順位より高く設定される場合には(ステップB6204、ステップB6206)、PB操作対応表示やエラー表示の表示優先順位を、0或いはマイナスの数で設定してよい。例えば、PB操作対応表示よりもエラー表示の表示優先順位が高い場合には、PB操作対応表示とエラー表示の表示優先順位はそれぞれ0と-1に設定される。
【0647】
図77と図78のように、通常、発射操作情報表示137b、保留表示、PB操作指示表示137aは、残り回転数表示143と特別図柄の変動表示よりも優先順位を高く設定する。また、PB操作指示表示137aが拡大表示態様で表示される場合には、発射操作情報表示137bの表示優先順位は、PB操作指示表示137aの表示優先順位より高くなる。なお、PB操作指示表示137aが通常表示態様で表示される場合でも、発射操作情報表示137bの表示優先順位を、PB操作指示表示137aの表示優先順位より高くしてもよい。これにより、遊技者にとってより重要な発射操作情報(右打ちや左打ち等の情報)を示す発射操作情報表示137bを優先して表示部35aに表示できる。」

引1-チ
「【0650】
〔表示例(変動中)〕
図80(A)-(D)は、表示装置35の表示部35aにおける前述の各種表示の表示
例を示す。図80(A)-(D)は、特図変動表示ゲームの実行中(飾り特別図柄の変動中)の場合を示す。
【0651】
図80(A)において、PB操作指示表示137aが通常表示態様で表示されている。PB操作指示表示137aと発射操作情報表示137bは、表示タイミング及び表示領域が飾り特別図柄の変動表示と重なるが、変動表示よりも前面に表示されている。
【0652】
図80(B)において、PB操作指示表示137aは、通常表示態様より拡大された拡大表示態様で表示され、表示タイミング及び表示領域が発射操作情報表示137bと重なっている。しかし、発射操作情報表示137bがPB操作指示表示137aより前に見えるよう表示され、重なりの部分でPB操作指示表示137aが発射操作情報表示137bに隠れている。これにより、発射操作情報表示137bが見やすくなる。
【0653】
図80(C)において、残り回転数表示143と発射操作情報表示137bの表示タイミング及び表示領域が重なっているが、発射操作情報表示137bが残り回転数表示143より前に見えるよう表示され、重なりの部分で残り回転数表示143が発射操作情報表示137bに隠れている。これにより、発射操作情報表示137bが見やすくなる。
【0654】
一方、図80(D)において、残り回転数が所定回転数(例えば7回)より少なくなった場合には、残り回転数表示143と発射操作情報表示137bの表示タイミング及び表示領域が重なっているが、残り回転数表示143が発射操作情報表示137bより前に見えるよう表示され、重なりの部分で発射操作情報表示137bが残り回転数表示143に隠れている。これにより、残り回転数が少なくなり、遊技者に残り回転数を示す重要性が高くなった場合に、残り回転数表示が見やすくなる。
【0655】
また、図80(C)(D)において、ハイチャンスゾーン表示133と消化される保留の保留表示(左端の保留消化領域で表示されている)の表示タイミング及び表示領域が重なっているが、保留表示がハイチャンスゾーン表示133よりも前に見えるよう表示され、重なりの部分でハイチャンスゾーン表示133が保留表示に隠れている。これにより、保留表示が見やすくなる。なお、図78と図79のテーブルに、保留表示より表示優先順位が低くなるようにハイチャンスゾーン表示を含めてもよい。
【0656】
なお、図80(A)-(D)において、各種表示の重なりの部分において、各種表示の重なりの部分において、前側の各種表示が、裏側の各種表示を所定の透過度で透過させるように表示されてもよい。」

イ 引用発明1

よって、上記引1-アないし引1-チに摘記した引用文献1の記載事項より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。なお、aないしhの符号は、本願発明の構成AないしHに対応させて当審にて付与した。

「a 始動入賞口(始動領域)37に遊技球が入賞した場合に特別図柄(特図)変動表示ゲームの始動条件を成立させ(【0034】)、特図変動表示ゲームの結果が大当りになると、大入賞口を閉じた状態(遊技者にとって不利な閉塞状態)から開放状態(遊技者にとって有利な状態)に変換し、大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせることで、遊技者に賞球を付与するように構成される(【0046】)遊技機1であって(【0001】)、
b 遊技機1は、開閉枠(本体枠)4を備え、開閉枠4は、前面枠5及びガラス枠(透明板保持枠)6によって構成され、前面枠5には遊技盤30が配設され、遊技盤30の裏面には、表示装置35を備える制御ベースユニットが配設され、表示装置35は、複数の識別情報を変動表示する変動表示ゲームを表示可能な表示部35aを有し(【0013】、【0014】、【0030】)、
c 遊技機1は、遊技制御装置600及び演出制御装置700を備え(【0079】)、遊技制御装置600は、遊技機1における遊技を統括的に制御し(【0081】)、遊技制御装置600には、払出制御装置640、及び演出制御装置700が接続され(【0081】)、演出制御装置700は、表示装置35に表示される表示内容を制御する表示制御手段としての機能を有し(【0142】)、
d 前面枠5に固定される固定パネル13には、下皿(受皿)14と、球発射装置を駆動するための操作部15とが備えられ(【0022】)、払出制御装置640は、下皿14に所定量以上の遊技球が貯留されている場合にオーバーフロースイッチ信号を遊技制御装置600に出力し(【0111】、【0112】)、遊技制御装置600は、オーバーフロースイッチ信号の出力によって払出制御装置640の障害を監視し(【0189】)、
e 球発射装置は、遊技者による操作部15の操作に対応して、第1の発射勢で遊技球を発射する第1発射態様と、第1の発射勢とは異なる第2の発射勢で遊技球を発射する第2発射態様と、で発射可能であり、第1発射態様は、左打ちと右打ちのうちの一方であり、第2発射態様は、左打ちと右打ちのうちの他方であり(【0023】)、
f-1 演出制御装置700は、遊技制御装置600から送信されたエラー指定コマンド等を演出制御指令信号として受信し(【0137】)、
f-2 演出制御装置700が備える主制御用マイコン710と映像制御用マイコン720の協働によって(【0125】、【0635】)、操作情報表示137、飾り特別図柄(識別情報)の変動表示などの各種表示は、表示装置35の表示部35aにおける表示領域(表示位置とサイズ)を指定され、所定の表示タイミングで表示され(【0634】、【0635】)、
f-3 主制御用マイコン710は、遊技制御装置600からエラー指定コマンドを受信したか否か判定し(【0630】)、エラーの種類が下皿14に所定量以上の遊技球が貯留されている場合のオーバーフロースイッチ信号の出力であれば、エラー表示の内容として、文字表示「球を抜いてください」が設定され、主制御用マイコン710からの演出コマンドによって、設定されたエラー表示を表示装置35の表示部35aに表示する制御を行い(【0632】)、
f-4 操作情報表示137は、遊技者に右打ち又は左打ちを促すための発射操作情報表示137bを含み(【0634】)、
g-1 主制御用マイコン710は、各種表示の表示優先順位(優先度)を設定する表示優先順位設定処理(変動中)を実行し(【0634】)、表示優先順位が高い各種表示は、表示優先順位が低いものよりも前面に表示され(【0640】)、発射操作情報表示137bは、特別図柄の変動表示よりも優先順位を高く設定され(【0646】、【0647】)、発射操作情報表示137bは、変動表示よりも前面に表示され(【0652】)、
g-2 エラー表示とその他の各種表示とが表示タイミング及び/又は表示領域に関して重なるよう設定されている場合においては、エラー表示が優先して表示部35aで表示させるように、エラー表示の表示優先順位をその他の各種表示の表示優先順位より高く設定し(【0639】)、
h 各種表示の重なりの部分において、前側の各種表示が、裏側の各種表示を所定の透過度で透過させるように表示可能である(【0656】)、
a 遊技機1。」

2 引用文献2

当審における拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2014-158670号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

引2ーア
「【0001】
本発明は、パチンコ機、アレンジボール機、スロットマシン等の遊技機に関するものである。」

引2-イ
「【発明の効果】
【0011】
・・・また、操作誘導報知とエラー報知とが重なった場合の優先順位を、エラー状態の種類に応じて異ならせているため、状況に応じてより適切な報知を優先的に行うことが可能となる」

引2-ウ
「【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳述する。図1?図12は本発明をパチンコ機に採用した第1の実施形態を例示している。図1において、遊技機本体1は、矩形状の外枠2と、この外枠2の前側に左右一側、例えば左側のヒンジ3により開閉自在に枢着された前枠4とを備えている。前枠4の前側には、遊技盤5等が上部側に、遊技盤5の前側の遊技領域16に向けて遊技球を発射する発射手段6等が下部側にそれぞれ配置され、また遊技盤5等の前側に対応してガラス扉7が、発射手段6等の前側に対応して前面板8がそれぞれヒンジ3と同じ側のヒンジ9により開閉自在に枢支されている。
【0014】
前面板8の前側には、払い出し手段(図示省略)から払い出された遊技球を貯留して発射手段6に供給する上皿10が上部側に配置され、またその上皿10の下側には、例えば上皿10が満杯のときにその余剰球を貯留する下皿11が左端側に、発射手段6を作動させるための発射ハンドル12が右端側に夫々設けられている。更に、例えば上皿10等を前側から覆う上皿カバー13上には演出用操作ボタン14等が設けられている。」

引2-エ
「【0026】
なお、発射ハンドル12の操作に基づいて発射手段6から発射された遊技球が入球口31に入球し、その遊技球が振り分け手段34によって第1通路32aと第2通路32bとの何れかに案内された状態が、「外部操作に基づいて発生する所定状態」の一例である。また、振り分け手段34によって第1通路32a側に案内された遊技球を検出する第1遊技球検出手段35aと、振り分け手段34によって第2通路32b側に案内された遊技球を検出する第2遊技球検出手段35bとが、「所定状態を検出する所定状態検出手段」の一例である。」

引2-オ
「【0086】
ラウンド数選択操作報知画像45には、ラウンド数選択期間中に遊技者が行うべき操作内容、ラウンド数選択期間の制限時間、振り分け可動体33の状態等の各種情報が盛り込まれている。ラウンド数選択期間中に遊技者が行うべき操作内容に関する情報としては、例えば「↑ここを狙って発射せよ!」、「左に案内されたら8R固定、右に案内されたら4R/12R抽選」等の文字情報が考えられる(図10(a),(b))。ラウンド数選択期間の制限時間に関する情報としては、例えばラウンド数選択期間の終了までの残り時間を「残り15秒」等のように表示する情報が考えられる(図10(a),(b))。また、振り分け可動体33の状態に関する情報としては、振り分け可動体33の状態に応じて、第1通路振り分け期間中に「今入れば8R」(図10(a))、第2通路振り分け期間中に「今入れば4R/12R」(図10(b))等の表示を行うことが考えられる。」

引2-カ
「【0092】
ここで、画像表示手段22への画像表示に関し、例えばラウンド数選択報知制御手段85aによるラウンド数選択操作報知画像45の表示と、エラー報知制御手段85bによるエラー報知画像46の表示とが競合した場合には、報知制御手段85は、図12に示すような優先順位に従って画像表示手段22への表示制御を行うようになっている。即ち、エラー報知画像46が、扉開放エラー、不正入賞エラー等、不正行為に関連する不正関連エラーに関するものである場合には、その不正関連エラーに関するエラー報知画像46をラウンド数選択操作報知画像45に優先して画像表示手段22に表示させ、エラー報知画像46が、皿満杯エラー、補給切れエラー、払い出しエラー等、不正行為に関連しない一般エラーに関するものである場合には、その一般エラーに関するエラー報知画像46よりもラウンド数選択操作報知画像45を優先して画像表示手段22に表示させるようになっている。」

上記引2-アないし引2-カの記載より、引用文献2には、以下の事項が記載されていると認められる。

「遊技球を発射する発射手段6を作動させるための発射ハンドル12が設けられた遊技機において、状況に応じてより適切な報知を優先的に行うために、エラー報知画像46が、皿満杯エラー等の不正行為に関連しない一般エラーに関するものである場合には、その一般エラーに関するエラー報知画像46よりも、ラウンド数選択期間中に遊技者が行うべき発射ハンドル12の操作内容である「↑ここを狙って発射せよ!」等の文字情報が盛り込まれているラウンド数選択操作報知画像45を優先して画像表示手段22に表示させる点。」(以下、「引用文献2記載事項」という。)

第5 対比

ア 本願発明の構成Aについて
(ア) 引用発明1の構成aにおける「特別図柄(特図)変動表示ゲームの始動条件」の「成立」は、本願発明の「所定条件の成立」に相当し、引用発明1の構成aにおける「特別図柄(特図)変動表示ゲーム」は、本願発明の「所定条件の成立に基づ」き「実行」される「ゲーム」に相当する。
(イ)引用発明1の構成aにおける「特図変動表示ゲーム」「の結果が大当りになると、大入賞口を閉じた状態(遊技者にとって不利な閉塞状態)から開放状態(遊技者にとって有利な状態)に変換し、大入賞口内への遊技球の流入を容易にさせることで、遊技者に賞球を付与するように構成される」ことは、本願発明の「当該ゲームの結果に応じて遊技者に遊技価値を付与可能」であることに相当する。
(ウ) 引用発明1の構成aにおける「遊技機1」は、本願発明の「遊技機」に相当する。
(エ) よって、引用発明1における構成aは、本願発明の構成Aに相当する。

イ 本願発明の構成Bについて
(ア) 引用発明1の構成bにおける「変動表示ゲームを表示可能な表示部35aを有する表示装置35」は、本願発明の「遊技に関する画像を表示可能な表示装置」に相当する。
(イ) よって、引用発明1における構成bは、本願発明の構成Bに相当する。

ウ 本願発明の構成Cについて
(ア) 引用発明1の構成cにおける「演出制御装置700」は、「表示装置35に表示される表示内容を制御する表示制御手段としての機能を有」するものであるから、本願発明の「前記表示装置における表示を制御する演出制御手段」に相当する。
(イ) よって、引用発明1は、本願発明の構成Cに相当する構成を有する。

エ 本願発明の構成Dについて
(ア) 引用発明1の構成dにおける「払出制御装置640の障害」は、本願発明の「遊技機における異常」に相当する。
(イ) 引用発明1の構成dにおける「下皿14に所定量以上の遊技球が貯留されている場合に」「払出制御装置640」が「出力」する「オーバーフロースイッチ信号の出力によって払出制御装置640の障害を監視」する「遊技制御装置600」は、本願発明の「遊技機における異常を検出する異常検出手段」に相当する。
(ウ) よって、引用発明は、本願発明の構成Dに相当する構成を有する。

オ 本願発明の構成Eについて
(ア) 引用発明1の構成eにおける「遊技者による操作部15の操作に対応して、」「遊技球を発射する」「球発射装置」は、本願発明の「遊技者が遊技媒体を発射する為の操作に用いる操作手段」に相当する。
(イ) よって、引用発明1は、本願発明の構成Eに相当する構成を有する。

カ 本願発明の構成Fについて
(ア) 引用発明の構成dにおける「遊技制御装置600」により「監視」された「払出制御装置640の障害」は、本願発明の「前記異常検出手段により検出された異常」に相当する。
(イ) 引用発明1の構成f-3における「文字表示「球を抜いてください」が設定され」た「エラー表示」は、本願発明の「異常を報知するための異常報知表示」に相当する。
(ウ) 引用発明1の構成f-2における「飾り特別図柄(識別情報)の変動表示」は、本願発明の「予め定められた表示である特定表示」に相当する。
(エ) 引用発明1の構成f-4における「遊技者に右打ち又は左打ちを促す」ことは、構成eにおける「第1発射態様は、左打ちと右打ちのうちの一方であり、第2発射態様は、左打ちと右打ちのうちの他方であ」る点を考え合わせると、第1発射態様又は第2発射態様で遊技球を発射するように遊技者の操作を促すことといえるから、遊技者による操作部15の操作を促すことである。
(オ) してみると、引用発明1の構成f-4における「遊技者に右打ち又は左打ちを促すための発射操作情報表示137b」は、本願発明の「前記操作手段の操作について指示するための指示表示」に相当する。
(カ) よって、引用発明1の「演出制御装置700が備える主制御用マイコン710は」「文字表示「球を抜いてください」が設定され」た「エラー表示」、「飾り特別図柄(識別情報)の変動表示」、「遊技者に右打ち又は左打ちを促すための発射操作情報表示137b」を「表示装置35の表示部35aに表示する」ことは、本願発明の「前記演出制御手段は、」「前記異常検出手段により検出された異常を報知するための異常報知表示、予め定められた表示である特定表示、及び前記操作手段の操作について指示するための指示表示のうちの少なくともいずれかの表示を前記表示装置に表示可能であ」ることに相当する。
(キ) 以上のことから、引用発明1は、本願発明の構成Fに相当する構成を有する。

キ 本願発明の構成Gについて
(ア) 引用発明1の構成g-2における「エラー表示とその他の各種表示とが表示タイミング及び/又は表示領域に関して重なるよう設定されている場合」において、構成f-2には、「各種表示」に「飾り特別図柄(識別情報)の変動表示」が含まれる点が特定されており、また、構成g-2には、「エラー表示が優先して表示部35aで表示させるように、エラー表示の表示優先順位をその他の各種表示の表示優先順位より高く設定する」ことが特定されていることから、「エラー表示の表示優先順位」は、「飾り特別図柄(識別情報)の変動表示」よりも高く設定されていることは明らかである。
(イ) そして、引用発明1の構成g-1には、「表示優先順位が高い各種表示は、表示優先順位が低いものよりも前面に表示され」ることが特定されており、ここにおいて、引用発明1における「前面に表示」することは、本願発明の「前側に表示可能であ」ることに相当する。
(ウ) してみると、引用発明1における、「エラー表示とその他の各種表示とが表示タイミング及び/又は表示領域に関して重なるよう設定されている場合に」「エラー表示が優先して表示部35aで表示させるように、エラー表示の表示優先順位をその他の各種表示の表示優先順位より高く設定し」、「表示優先順位が低い」「飾り特別図柄(識別情報)の変動表示」「よりも前面に表示」することは、本願発明の「前記特定表示及び前記異常報知表示を前記表示装置に表示する場合には、当該異常報知表示を当該特定表示の前側に表示可能であ」ることに相当する。
(エ) よって、引用発明1は、本願発明の構成Gに相当する構成を有する。

ク 本願発明の構成Hについて
(ア) 引用発明1の構成f-2には「各種表示」に「操作情報表示137」が含まれる点が特定され、また、構成f-4には、「操作情報表示137は、遊技者に右打ち又は左打ちを促すための発射操作情報表示137bを含み」と特定されていることから、引用発明1の構成g-2における「エラー表示とその他の各種表示とが表示タイミング及び/又は表示領域に関して重なるよう設定されている場合」には、「エラー表示」と「発射操作情報表示137b」「とが表示タイミング及び/又は表示領域に関して重なるよう設定されている場合」が含まれる。
(イ) そして、引用発明1の「エラー表示」と「発射操作情報表示137b」「とが表示タイミング及び/又は表示領域に関して重なるよう設定されている場合」は、本願発明の「前記指示表示及び前記異常報知表示を前記表示装置に表示する場合」に相当する。
(ウ) よって、本願発明と引用発明1は、「前記指示表示及び前記異常報知表示を前記表示装置に表示する場合」が存在する点で一致する。

以上のことから、本願発明と引用発明1とは、以下の点で一致する。

<一致点>

A 所定条件の成立に基づきゲームを実行し、当該ゲームの結果に応じて遊技者に遊技価値を付与可能な遊技機において、
B 遊技に関する画像を表示可能な表示装置と、
C 前記表示装置における表示を制御する演出制御手段と、
D 遊技機における異常を検出する異常検出手段と、
E 遊技者が遊技媒体を発射する為の操作に用いる操作手段と、を備え、
F 前記演出制御手段は、
前記異常検出手段により検出された異常を報知するための異常報知表示、予め定められた表示である特定表示、及び前記操作手段の操作について指示するための指示表示のうちの少なくともいずれかの表示を前記表示装置に表示可能であり、
G 前記特定表示及び前記異常報知表示を前記表示装置に表示する場合には、当該異常報知表示を当該特定表示の前側に表示可能であり、
H’ 前記指示表示及び前記異常報知表示を前記表示装置に表示する場合がある
A 遊技機。

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点> (構成Hに関して)
指示表示及び異常報知表示を表示装置に表示する場合に関して、本願発明は、遊技者が当該異常報知表示を認識可能な態様で指示表示を異常報知表示よりも前側に表示可能であるのに対して、引用発明1では、「指示表示を異常報知表示よりも前側に表示可能」とはされておらず、また、表示するにあたって、「指示表示を」「当該異常報知表示を認識可能な態様で」「表示可能」とはされていない点。

第6 検討・判断

1 相違点についての検討

上記引用文献2には、「第4」「2」に記載したように、引用文献2記載事項が記載されており、引用文献2記載事項における「一般エラーに関するエラー報知画像46」、「ラウンド数選択期間中に遊技者が行うべき発射ハンドル12の操作内容である「↑ここを狙って発射せよ!」等の文字情報が盛り込まれているラウンド数選択操作報知画像45」は、それぞれ、本願発明の上記相違点に係る構成の「異常報知表示」、「指示表示」に相当する。
そして、引用発明1と引用文献2記載事項は、いずれも、異常報知表示と指示表示を表示装置に表示させる遊技機という点で技術分野が共通している。
また、上記引1-タに示した段落【0647】には、「発射操作情報表示137b、保留表示、PB操作指示表示137aは、残り回転数表示143と特別図柄の変動表示よりも優先順位を高く設定する。」と記載され、「遊技者にとってより重要な発射操作情報(右打ちや左打ち等の情報)を示す発射操作情報表示137bを優先して表示部35aに表示できる。」と記載されていることから、引用発明1は、遊技者にとってより重要な情報を優先して表示部に表示するものであり、引用文献2記載事項も、「状況に応じてより適切な報知を優先的に行う」ことを目的にしていることから、引用発明1と引用文献2記載事項は、いずれも、遊技者にとってより重要な情報を優先して表示部に表示するという共通の課題を有するものである。
してみると、引用発明1において、エラー表示と発射操作情報表示137bとが表示タイミング及び/又は表示領域に関して重なるよう設定されている場合における表示優先順位の設定において、引用文献2記載事項を適用し、エラー表示が皿満杯エラー等の不正行為に関連しない一般エラーに関するものである場合に、発射操作情報表示137bをエラー表示よりも前側に表示することは、当業者が容易に想到し得ることである。
さらに、表示装置に複数の表示を行う場合において、遊技者が他方の表示を認識可能な態様で一方の表示を他方の表示よりも前側に表示可能とすることについて検討すると、引用発明1においても、構成hには「各種表示の重なりの部分において、前側の各種表示が、裏側の各種表示を所定の透過度で透過させるように表示可能である」点が特定されていることから、重なりの部分に前側の表示と、所定の透過度で透過した裏側の表示が存在することが示唆されており、そして、「遊技者が他方の表示を認識可能な態様で一方の表示を他方の表示よりも前側に表示可能とすること」は、本願出願前周知の事項(例えば、以下に示す特開2016-87208号公報の図40(i)「右打ち報知」において、「球を抜いてください」の表示が認識可能な態様で、右打ち指示を表す「手」のイラストの表示が行われている。)である。
「【図40】


してみると、引用発明1において、エラー表示と発射操作情報表示137bとが表示タイミング及び/又は表示領域に関して重なるよう設定されている場合における表示優先順位の設定において、引用文献2記載事項及び本願出願前周知の事項を適用し、エラー表示が皿満杯エラー等の不正行為に関連しない一般エラーに関するものである場合に、遊技者が皿満杯エラー等の一般エラーの表示が認識可能な態様で発射操作情報表示137bをエラー表示よりも前側に表示し、本願発明の上記相違点に関する構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

2 令和2年2月18日付け意見書における請求人の主張への反論

(1) 請求人は、令和2年2月18日付け意見書の「3.拒絶理由が解消されたと考える理由」において、
「引用文献1には、PB操作対応表示をエラー表示に優先して表示してもよい旨記載されていることから、引用文献1に記載の発明の発明者は、「状況に応じてより適切な報知を優先的に行うこと」、「遊技者にとってより重要な情報をエラー報知に優先して表示部に表示すること」について考慮した結果、あえてエラー表示を発射操作情報表示に優先する旨を引用文献1に記載したものと思料いたします。
また、引用文献1に記載の発明は、基本的には、同時に表示する情報の種類に関係なくエラー情報を優先するものであるのに対し、引用文献2に係る発明は、ラウンド数選択操作報知画像45をエラー報知画像46に優先して表示するという、引用文献1に記載の発明とは逆の動作をするものとなっています。つまり、引用文献2は、同時に表示する情報に関係なく(同時に表示する情報が同じであっても)エラーの程度によって表示の優先順位を変えるものとなっており、エラー発生時に何を重要な(優先する)情報とするかは引用文献1に記載の発明と大きく異なっています。
このため、引用文献1に記載の「発射操作情報表示よりも、皿満杯、払い出し球不足に係るエラー報知を優先して表示する」ことについて、引用文献2の記載事項を適用する動機付けは無いと考えます。
また、このような内容が逆の引用文献2の記載事項を、引用文献1に記載の発明に適用することを仮に考えた場合、適用を受けた引用文献1に係る発明は、エラーの報知を最優先するという引用文献1に記載の発明の目的に反したものとなってしまいます。
つまり、引用文献1に記載の発明に引用文献2の記載事項を組み合わせることには、阻害要因があると考えます。」
と主張している。
そこで、請求人の上記の主張について検討すると、引用文献1の段落【0639】には、「PB操作対応表示をエラー表示に優先して表示してもよい」との記載があることから、引用文献1の記載を総合すると、エラー表示は、常に他の各種表示よりも表示優先順位が高いものではなく、他の各種表示のうち、エラー表示よりも遊技者に優先して報知すべき情報が存在する場合には、当該情報の表示を、エラー表示に優先して表示することが示唆されていると認められる。
したがって、引用文献1に記載された実施例が、請求人が主張する「エラー表示を発射操作情報表示に優先する」ものであっても、それは表示優先順位が規定された具体例のうちの一例であって、引用文献1には、それとは異なる表示優先順位の態様についての示唆がされていることから、引用文献1に記載された事項は、すべてが請求人が主張している「エラーの報知を最優先するという」「発明の目的」を有するものではない。
そして、引用文献2には、請求人が意見書において認めているように、「遊技者が行うべき操作内容に関する情報」を「エラー報知画像」よりも優先する点が記載されているが、上記したように、引用文献1には、表示優先順位に関して「エラー表示を発射操作情報表示に優先する」もの以外のものも示唆されていると認められることから、引用文献2記載事項が、引用発明1とは逆の動作をするものとはいえず、引用発明1において、引用文献2記載事項を参酌し、エラー表示よりも優先して表示すべき情報として、「遊技者が行うべき操作内容に関する情報」を設定することには、十分な動機付けが存在すると認められ、請求人の主張は採用できない。

(2) また、請求人は、
「引用文献1には、発射操作情報表示137bとエラー表示以外の表示を同時に表示する場合の優先に係る「態様」についての記載はありますが、発射操作情報表示137bとエラー表示を同時に表示する場合の態様に関する記載が全くありません。
また、引用文献2の段落0092には、「一般エラーに関するエラー報知画像46よりもラウンド数選択操作報知画像45を優先して画像表示手段22に表示させる」との記載はありますが、この「優先して・・表示させる」がどのような態様を指すのかについての説明がありません。
つまり、引用文献1,2のいずれにも、本願発明の「遊技者が当該異常報知表示を認識可能な態様で当該指示表示を当該異常報知表示よりも前側に表示」することに相当する技術に関する記載や示唆がありません。」
と主張している。
しかしながら、「遊技者が他方の表示を認識可能な態様で一方の表示を他方の表示よりも前側に表示可能とすること」が本願出願前周知の事項であることは、上記「第6 1 相違点についての検討」に判断を示したとおりである。

したがって、上記(1)及び(2)において検討したように、請求人の意見書における上記の主張を参酌しても、本願発明が進歩性を有するものとは認められない。

第7 結語

以上のとおり、本願発明は、引用発明1に、引用文献2記載事項及び本願出願前周知の事項を適用することによって、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-03-12 
結審通知日 2020-03-17 
審決日 2020-04-01 
出願番号 特願2016-233724(P2016-233724)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 手塚 毅  
特許庁審判長 ▲吉▼川 康史
特許庁審判官 木村 隆一
▲高▼橋 祐介
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  
代理人 荒船 良男  

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