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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1362214
審判番号 不服2019-10038  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-31 
確定日 2020-05-14 
事件の表示 特願2015-40863号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月5日出願公開、特開2016-158907号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成27年3月3日の出願であって、平成30年10月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年11月30日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年4月17日付け(送達日:令和1年5月7日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、それに対して、同年7月31日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和1年7月31日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和1年7月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 補正の内容

本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲、すなわち平成30年11月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、補正後の特許請求の範囲の請求項1のものに補正するものである(下線は補正箇所を示す。)。

(補正前)
「【請求項1】
遊技者の操作を受け付ける複数の演出操作部と、
複数の前記演出操作部それぞれに設けられ、該演出操作部の可動操作に伴って検出信号を出力する複数の操作検出部と、
前記操作検出部から出力される検出信号に基づいて演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
複数の前記演出操作部には、遊技者の第1の操作態様による可動操作を可能とする第1の演出操作部と、前記第1の操作態様とは異なる第2の操作態様により可動操作を可能とする第2の演出操作部が含まれ、
複数の前記操作検出部には、前記第1の演出操作部の可動操作に伴って第1検出信号を出力する第1操作検出部、および、前記第2の演出操作部の可動操作に伴って第2検出信号を出力する第2操作検出部が含まれ、
前記演出実行手段は、
複数の前記操作検出部のうち前記第1操作検出部もしくは前記第2操作検出部のいずれか一方から検出信号が出力されている場合と、前記第1操作検出部および前記第2操作検出部の双方から検出信号が出力されている場合とで、異なる演出を実行することを特徴とする遊技機。」

(補正後)
「【請求項1】
遊技者の操作を受け付ける複数の演出操作部と、
複数の前記演出操作部それぞれに設けられ、該演出操作部の可動操作に伴って検出信号を出力する複数の操作検出部と、
前記操作検出部から出力される検出信号に基づいて演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
複数の前記演出操作部には、遊技者の第1の操作態様として第一の方向への可動操作を可能とする第1の演出操作部と、前記第1の操作態様とは異なる第2の操作態様として前記第一の方向とは異なる第二の方向への可動操作を可能とする第2の演出操作部が含まれ、
複数の前記操作検出部には、前記第1の演出操作部の前記第一の方向への可動操作に伴って第1検出信号を出力する第1操作検出部、および、前記第2の演出操作部の前記第二の方向への可動操作に伴って第2検出信号を出力する第2操作検出部が含まれ、
前記演出実行手段は、
複数の前記操作検出部のうち前記第1操作検出部もしくは前記第2操作検出部のいずれか一方から検出信号が出力されている場合と、前記第1操作検出部および前記第2操作検出部の双方から検出信号が出力されている場合とで、異なる演出を実行することを特徴とする遊技機。」

2 補正の適否

(1) 特許法第17条の2第3項及び第5項に関する要件について

ア 補正の目的について
本件補正は、本件補正前の請求項1における「遊技者の第1の操作態様による可動操作を可能とする第1の演出操作部」を「遊技者の第1の操作態様として第一の方向への可動操作を可能とする第1の演出操作部」に補正し、同「前記第1の操作態様とは異なる第2の操作態様により可動操作を可能とする第2の演出操作部」を「前記第1の操作態様とは異なる第2の操作態様として前記第一の方向とは異なる第二の方向への可動操作を可能とする第2の演出操作部」に補正し、同「前記第1の演出操作部の可動操作」を「前記第1の演出操作部の前記第一の方向への可動操作」に補正し、同「前記第2の演出操作部の可動操作」を「前記第2の演出操作部の前記第二の方向への可動操作」に補正するものである。
上記補正は、実質的に「第1の演出操作部」が「第一の方向への可動操作」を可能とするものである点、及び、「第2の演出操作部」が「前記第一の方向とは異なる第二の方向への可動操作」を可能とするものである点を限定するものであるから、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、本件補正前の請求項1に係る発明と本件補正後の請求項1に係る発明を対比すると、両者は産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であると認められる。

イ 新規事項の有無について
本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0030】には、「演出ボタン208は、遊技者の押下操作を受け付けるボタンであって、・・・」との記載があり、段落【0031】には「・・・演出ハンドル209は、遊技者の左右の操作を受け付ける演出用のハンドルであって、・・・」との記載がある。
そして、当初明細書等の記載における「演出ボタン208」及び「演出ハンドル209」は、それぞれ、補正後の請求項1の記載における「第1の演出操作部」及び「第2の演出操作部」に相当し、当初明細書等の記載における「押下操作」及び「左右の操作」は、それぞれ、補正後の請求項1の記載における「第一の方向」及び「前記第一の方向とは異なる第二の方向」に相当することから、本件補正は、当初明細書等に記載の範囲内のものといえる。

ウ 小括
よって、本件補正は、上記アより、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、上記イにおいて検討したように、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2) 独立特許要件について

(2-1) 本願補正発明

本願補正発明は、令和1年7月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(上記1の(補正後)の記載を参照。)であり、分説し、AないしGの符号を付与すると、以下のとおりである。

「A 遊技者の操作を受け付ける複数の演出操作部と、
B 複数の前記演出操作部それぞれに設けられ、該演出操作部の可動操作に伴って検出信号を出力する複数の操作検出部と、
C 前記操作検出部から出力される検出信号に基づいて演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
D 複数の前記演出操作部には、遊技者の第1の操作態様として第一の方向への可動操作を可能とする第1の演出操作部と、前記第1の操作態様とは異なる第2の操作態様として前記第一の方向とは異なる第二の方向への可動操作を可能とする第2の演出操作部が含まれ、
E 複数の前記操作検出部には、前記第1の演出操作部の前記第一の方向への可動操作に伴って第1検出信号を出力する第1操作検出部、および、前記第2の演出操作部の前記第二の方向への可動操作に伴って第2検出信号を出力する第2操作検出部が含まれ、
F 前記演出実行手段は、
複数の前記操作検出部のうち前記第1操作検出部もしくは前記第2操作検出部のいずれか一方から検出信号が出力されている場合と、前記第1操作検出部および前記第2操作検出部の双方から検出信号が出力されている場合とで、異なる演出を実行すること
G を特徴とする遊技機。」

(2-2) 引用文献とそれに記載された事項

ア 引用文献の記載事項

原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された特開2015-19704号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである。以下同様。)。

引-ア
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
遊技機に関する。」

引-イ
「【0006】
本態様に係る遊技機は、
識別情報を変動表示及び停止表示可能な識別情報表示部(例えば、主遊技図柄表示装置2130)と、
情報を表示可能な情報表示部(例えば、演出表示装置2140)と、
遊技者によって操作可能な操作部(例えば、演出操作装置4000)と
を備え、
所定の乱数取得条件を充足した場合、遊技内容を決定する乱数を取得する乱数取得手段(例えば、乱数取得判定実行手段1120)と、
前記乱数に基づき、前記遊技内容として、識別情報の変動内容及び停止識別情報を決定する識別情報表示内容決定手段(例えば、図柄内容決定手段1140)と、
識別情報表示内容決定手段(例えば、図柄内容決定手段1140)により決定された前記変動内容に従い、識別情報を識別情報表示部(例えば、主遊技図柄表示装置2130)上にて変動表示した後、停止識別情報を表示するよう制御する識別情報表示制御手段(例えば、表示制御手段1150)と、
識別情報表示部(例えば、主遊技図柄表示装置2130)上にて表示された停止識別情報が所定態様であった場合、遊技者にとって有利な特別遊技へ移行し得る特別遊技実行手段(例えば、特別遊技制御手段1170)と、
識別情報が変動表示されている期間である変動表示期間中において、複数種類の予告画像候補の内から特別遊技への移行期待度と対応した種類の予告画像を、情報表示部(例えば、演出表示装置2140)にて表示し得る予告情報表示制御手段(例えば、表示制御手段2152)と
を備え、
変動表示期間中における所定の表示タイミングにて、操作部(例えば、演出操作装置4000)の操作指示に係る情報を情報表示部(例えば、演出表示装置2140)にて表示すると共に、当該表示タイミング後から所定期間が経過するまでに操作部(例えば、演出操作装置4000)が操作された場合には予告画像を表示し得るよう制御し、
操作部(例えば、演出操作装置4000)にて所定の操作態様がなされた場合に操作部(例えば、演出操作装置4000)が操作されたと判定するよう構成されていると共に、操作部(例えば、演出操作装置4000)にて当該所定の操作態様とは異なる特定の操作態様がなされた場合にも操作部(例えば、演出操作装置4000)が操作されたと判定するよう構成されており、当該所定の操作態様がなされた場合と当該特定の操作態様がなされた場合とでは、予告画像の表示内容を異ならせ得るよう構成されており、前記操作部の操作指示に係る情報として当該所定の操作態様に係る指示が表示されるよう構成されている
ことを特徴とする遊技機である。
尚、本態様とは異なる別態様について以下に記載しておくが、これには何ら限定されることなく実施することが可能である。
本別態様に係る遊技機は、
夫々を独立して操作可能な操作部を複数備え、当該複数の操作部に基づく所定の操作手順がなされた場合に操作部(例えば、演出操作装置4000)が操作されたと判定するよう構成されていると共に、当該複数の操作部に基づく当該所定の操作手順とは異なる特定の操作手順がなされた場合にも操作部(例えば、演出操作装置4000)が操作されたと判定するよう構成されており、当該所定の操作手順がなされた場合と当該特定の操作手順がなされた場合とでは、予告画像の表示内容を異ならせ得るよう構成されている
ことを特徴とする遊技機である。」

引-ウ
「【0011】
まず、・・・本実施形態に係るぱちんこ遊技機の前面側の基本構造を説明する。・・・」

引-エ
「【0022】
次に、図2を参照しながら、ぱちんこ遊技機の背面側における基本構造を説明する。ぱちんこ遊技機には、ぱちんこ遊技機の全体動作を制御し、特に主遊技始動口2110へ入球したときの抽選等、遊技動作全般の制御(即ち、遊技者の利益と直接関係する制御)を行う主制御装置(メイン基板)1000と、遊技内容に興趣性を付与する装図表示部2141上での各種演出・情報報知に係る表示制御を行う演出表示制御装置(演出表示制御手段){サブ基板(サブメイン基板)}2150と、サブ基板2150からのコマンドを受けて遊技の興趣性を高める演出が表示される演出表示装置2140と{サブ基板(サブサブ基板)}、賞球タンク212、賞球レール214及び各入賞口への入賞に応じて賞球タンク212から供給される遊技球を上球皿110へ払い出す払出ユニット216等を備える賞球払出機構(セット基盤)210と、払出ユニット216による払出動作を制御する賞球払出制御装置(賞球払出制御基板)3000と、上球皿110の遊技球(貯留球)を遊技領域120へ1球ずつ発射する発射装置232と、発射装置232の発射動作を制御する発射制御基板230と、ぱちんこ遊技機の各部へ電力を供給する電源ユニット290と、ぱちんこ遊技機の電源をオンオフするスイッチである電源スイッチ292等が、前枠104裏面(遊技側と反対側)に設けられている。尚、メイン基板、サブメイン基板、サブサブ基板、賞球払出制御基板は、それぞれ別個にCPU、ROM及びRAMを有している。
【0023】
次に、図3のブロック図を参照しながら、本実施形態に係るぱちんこ遊技機の各種機能について説明する。はじめに、主制御装置1000は、遊技に係る遊技周辺機器2000{(主遊技周辺機器A、補助遊技周辺機器2200)、演出に係るサブメイン制御装置(演出表示制御手段2150)、主制御装置1000からの払出指示に基づき所定数の賞球の払出制御を行う賞球払出制御装置3000}と、情報伝達可能に接続されている。また、サブメイン制御装置(演出表示制御手段2150)は、画像演出を実行するサブサブ制御装置(演出表示装置2140)、各種遊技効果ランプ190(例えばサイドランプ)やスピーカ114等とも電気的に接続されている。そして、サブサブ制御装置(演出表示装置2140)は、十字キーやボタン等の遊技者によって操作可能な演出操作装置(いわゆるサブ入力ボタン)4000と電気的に接続されている。更に、賞球払出制御装置3000は、ステッピングモータやスプロケット等を備えた賞球払出装置と電気的に接続されている。尚、主制御装置1000、サブメイン制御装置(演出表示制御手段2150)、サブサブ制御装置(演出表示装置2140)、賞球払出制御装置3000等は、ハードウエア的にはデータやプログラムを格納するROMやRAM、演算処理に用いるCPU等の素子等から構成される。また、演出表示制御手段2150(サブ基板)や演出表示装置2140(サブサブ基板)については後述する。尚、以下で主制御装置1000に含まれるとする各手段を周辺機器(例えば、遊技周辺機器2000)に搭載される形で構成してもよい。例えば、周辺機器(例えば、遊技周辺機器2000)に含まれるとする各手段を主制御装置1000に搭載される形で構成してもよい。以下、上記各手段(装置)の詳細を説明する。」

引-オ
「【0046】
まず、演出表示制御手段2150は、主制御装置1000側からの各種情報を受信するための表示情報受信手段2151と、主制御装置1000側からの前記情報に基づき、演出表示装置2140上での演出表示制御を行う表示制御手段2152と、を有している。以下、上記各手段を詳述する。」

引-カ
「【0084】
次に、図18は、図13のステップ2300のサブルーチンに係る、サブ(サブメイン基板)側で実行する演出表示制御処理のフローチャートである。まず、ステップ2302で、表示制御手段2152は、演出表示関連情報一時記憶手段2152e内の図柄内容決定フラグがオンであるか否かを判定する。ステップ2302でYesの場合、ステップ2304で、表示制御手段2152は、演出表示関連情報一時記憶手段2152e内の図柄内容決定フラグをオフにする。次に、ステップ2306で、表示制御手段2152は、演出表示関連情報一時記憶手段2152e内の図柄変動中フラグをオンにする。次に、ステップ2309で、表示制御手段2152は、装図変動時間管理タイマ2152a-4-1をスタートし、ステップ2310に移行する。尚、ステップ2302でNoの場合にも、ステップ2310に移行する。
【0085】
次に、ステップ2310で、表示制御手段2152は、演出表示関連情報一時記憶手段2152e内の図柄変動中フラグがオンであるか否かを判定する。ステップ2310でYesの場合、ステップ2320で、表示制御手段2152は、後述する表示更新処理を実行する。次に、ステップ2312で、表示制御手段2152は、主遊技図柄が停止表示されたか否かを判定する(例えば、メイン側情報一時記憶手段2151aを参照し、主制御装置1000側から主遊技図柄が停止表示される旨の情報を受信したか否かを判定する)。ステップ2312でYesの場合、ステップ2314で、表示制御手段2152は、装図変動時間管理タイマ2152a-4-1を停止すると共にリセット(ゼロクリア)する。次に、ステップ2318で、表示制御手段2152は、演出表示関連情報一時記憶手段2152e内の図柄変動中フラグをオフにし、次の処理(ステップ2400の特別遊技中表示制御処理)に移行する。尚、ステップ2310又はステップ2312でNoの場合にも、次の処理(ステップ2400の特別遊技中表示制御処理)に移行する。」

引-キ
「【0105】
次に、図23は、本実施形態からの変更例1における、ぱちんこ遊技機の正面図である。本実施形態からの変更点は、サブ入力ボタン4000、十字キー4100、タッチパネル4200が追加されたことである(サブ入力ボタンについては図示するようにした)。尚、タッチパネル4200は透明版106の前面に設けるよう構成したが、これには限定されず、遊技者が遊技をしながら触れやすい場所であれば遊技機のどこに設けてもよい。」

引-ク
「【0192】
(変更例9)
尚、サブ入力ボタンの入力操作を促す画像(ボタン画像及びインジケータ画像)の表示に係る演出態様はこれには限定されない。そこで、そのような演出態様の一例を、本実施形態からの変更例9とし、以下、本実施形態からの変更点についてのみ詳述する。
【0193】
まず、図52は、本実施形態からの変更例9における、図15でのステップ2230のサブルーチンに係る、演出表示制御装置(サブメイン基板)側での予告演出内容決定処理のフローチャートである。本実施形態からの変更点は、操作する操作部材及びその組み合わせによって異なる予告が発生し得るよう構成したことである。尚、操作部材及びその組み合わせはこれには限定されず、操作部材の数、使用する操作部材、操作する際の操作部材の組み合わせ等を変更しても何ら問題ない。
【0194】
次に、図53は、本実施形態からの変更例9における、図18でのステップ2320のサブルーチンに係る、演出表示制御装置(サブメイン基板)側での表示更新処理のフローチャートである。本実施形態からの変更点は、ステップ2334(変9)及びステップ2650(変9)であり、即ち、ステップ2333でYesの場合、換言すれば、決定された予告演出内容が所定の予告演出内容であった場合、ステップ2334(変9)で、表示制御手段2152は、操作部材の操作を促す所定の画像(ボタン画像)及び指示(「サブ入力ボタンを押してください」との指示)を表示する。尚、本例では、サブ入力ボタン単独押しの指示を表示しているが、タッチパネルの操作指示等の他の操作方法の指示でも何ら問題ない。また、ステップ2370のインジケータ演出表示処理の後、ステップ2650(変9)で、表示制御手段2152は、後述するボタン演出表示処理を実行し、本サブルーチンの呼び出し元に復帰する。
【0195】
次に、図54は、本実施形態からの変更例9における、図53でのステップ2650(変9)のサブルーチンに係る、演出表示制御装置(サブメイン基板)側でのボタン演出表示処理のフローチャートである。まず、ステップ2652で、ボタン演出表示制御手段2152hは、演出表示関連情報一時記憶手段2152eを参照し、サブ入力ボタンの操作があるか否かを判定する。ステップ2652でYesの場合、ステップ2654で、ボタン演出表示制御手段2152hは、演出表示関連情報一時記憶手段2152eを参照し、十字キー4100が操作中であるか否かを判定する。尚、この場合の十字キーの操作はいずれの方向(上下左右)であるかを問わないものとしている。ステップ2654でYesの場合、ステップ2656で、ボタン演出表示制御手段2152hは、取得した表示更新内容に基づくサブ入力ボタンと十字キー同時押し予告を実行し、ステップ2668に移行する。他方、ステップ2654でNoの場合には、ステップ2658で、ボタン演出表示制御手段2152hは、取得した表示更新内容に基づくサブ入力ボタン単独押し予告を実行し、ステップ2668に移行する。」

引-ケ
「【0198】
以上のように変更することで、本実施形態からの変更例9によれば、インジケータ演出中に操作部材を操作する場合において、操作部材及びその組み合わせの中で1通りの操作(例えば、サブ入力ボタンの押下)を指示しているが、異なる操作部材及びその組み合わせの操作(例えば、タッチパネルに触れる等)であっても入力を受け付けると共に、操作する操作部材及びその組み合わせによって異なる予告が発生し得るよう構成することで、遊技者が任意に操作部材及びその組み合わせを選択することができるようになり、遊技の興趣性が高まることとなる。」

引-コ
「【図18】




引-サ
「【図23】



引-シ
「【図52】



引-ス
「【図53】



引-セ
「【図54】



イ 引用文献の記載事項より導き出せる事項

上記引-アないし引-セに摘記した引用文献1の記載より、以下の事項が導き出せる。

(ア)段落【0006】には、「遊技者によって操作可能な操作部(例えば、演出操作装置4000)」の記載があり、段落【0105】及び図23には、ぱちんこ遊技機が、「サブ入力ボタン4000」と、「十字キー4100」を備えた点が記載されており、図23を参照すると、「サブ入力ボタン4000」と、「十字キー4100」は、遊技者による操作を可能とするために、ぱちんこ遊技機の前面に設けられた点が図示されていることから、「サブ入力ボタン4000」と「十字キー4100」は、「演出操作部4000」を構成する複数の操作部であると認められる。また、図23を参照すると、「サブ入力ボタン4000」は、当該ボタンの中心軸の部分をぱちんこ遊技機の前後方向に操作可能であると認められ、一方、「十字キー4100」は、段落【0195】に「十字キーの操作はいずれの方向(上下左右)であるかを問わない」と記載されていることから、十字キーの中心軸の上下左右のいずれかの部分を所定方向へ操作可能であると認められる。

(イ)段落【0084】において、「図18は、」「サブ(サブメイン基板)側で実行する演出表示制御処理のフローチャートである。」と記載されたように、図18は、演出表示制御処理のフローチャートを示したものであるが、演出表示制御処理におけるステップ2320について、段落【0085】には、「ステップ2320で、表示制御手段2152は、後述する表示更新処理を実行する。」と記載されていることから、演出表示制御処理は、表示更新処理を含むものである。そして、段落【0194】には、「図53は、本実施形態からの変更例9における、図18でのステップ2320のサブルーチンに係る、演出表示制御装置(サブメイン基板)側での表示更新処理のフローチャートである。」と記載されたように、図53は、表示更新処理のフローチャートを記載したものであるが、段落【0194】には、その表示更新処理について、「ステップ2650(変9)で、表示制御手段2152は、後述するボタン演出表示処理を実行し、」と記載されていることから、ボタン演出表示処理は、表示更新処理に含まれ、さらには、演出表示制御処理に含まれるものであり、「表示制御手段2152は、」「ボタン演出表示処理を実行」することが読み取れる。
さらに、段落【0195】には、「図54は、本実施形態からの変更例9における、図53でのステップ2650(変9)のサブルーチンに係る、演出表示制御装置(サブメイン基板)側でのボタン演出表示処理のフローチャートである。」と記載され、そのフローチャートに関して、段落【0195】には、「ステップ2656で、ボタン演出表示制御手段2152hは、」「サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告を実行し、」と記載され、また、「ステップ2658で、ボタン演出表示制御手段2152hは、」「サブ入力ボタン単独押し予告を実行し、」と記載されていることから、表示制御手段2152はボタン演出表示制御手段2152hを備え、ボタン演出表示処理は、ボタン演出表示制御手段2152hにより行われるものであることが導き出せる。

(ウ)段落【0195】の記載において、「ボタン演出表示制御手段2152hは、」「サブ入力ボタンの操作があるか否かを判定する」ものであるから、「サブ入力ボタンの操作があるか否かを判定する」機能を備えるものである。また、同様に、「ボタン演出表示制御手段2152hは、」「十字キー4100が操作中であるか否かを判定する」ものであるから、「サブ入力ボタンの操作中であるか否かを判定する」機能を備えるものである。

(エ)段落【0195】には、図54に記載されたボタン演出表示処理のフローチャートの説明が記載されており、段落【0195】の記載において、「ステップ2652で、ボタン演出表示制御手段2152hは、」「サブ入力ボタンの操作があるか否かを判定」し、「ステップ2652でYesの場合」とは、サブ入力ボタン4000の操作があるか否かの判定結果において「サブ入力ボタン4000の操作がある場合」であり、「ステップ2652でYesの場合」「ステップ2654で、ボタン演出表示制御手段2152hは、」「十字キー4100が操作中であるか否かを判定」することは、「サブ入力ボタン4000の操作がある場合」に「十字キー4100が操作中であるか否かを判定」することであり、「ステップ2654でYesの場合」とは、十字キー4100が操作中であるか否かの判定結果において、十字キー4100が操作中である場合であり、「ステップ2654でNoの場合」とは、「十字キー4100が操作中でない場合」であることが導き出せる。

(オ)段落【0198】には、「操作する操作部材及びその組み合わせによって異なる予告が発生し得るよう構成することで、遊技者が任意に操作部材及びその組み合わせを選択することができるようになり、遊技の興趣性が高まることとなる。」と記載されており、図52の記載を参照すると、主演出内容がハズレの場合、サブ入力ボタン単独押し予告として「コメント予告1」及び「コメント予告2」が選択され、サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告として「コメント予告4」及び「コメント予告5」が選択されて表示されることが記載されており、主演出内容が大当りの場合、サブ入力ボタン単独押し予告として「コメント予告1」ないし「コメント予告3」が選択され、サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告として「コメント予告4」ないし「コメント予告6」が選択されて表示されることが読み取れることから、「サブ入力ボタン単独押し予告」と「サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告」とが異なる予告であることが導き出せる。

ウ 引用発明

よって、上記引-アないし引-セに摘記した引用文献1の記載事項、及び、上記(ア)ないし(オ)に示した認定事項より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、aないしgの符号は、本願補正発明の構成AないしGに対応させて当審にて付与した。

「a1 ぱちんこ遊技機であって(【0001】、【0006】、【0011】、【0105】、図23)、
a2 前記ぱちんこ遊技機には、遊技動作全般の制御を行う主制御装置1000と(【0022】)、識別情報を変動表示及び停止表示可能な主遊技図柄表示装置2130と(【0006】)、遊技内容に興趣性を付与する装図表示部2141上での各種演出・情報報知に係る表示制御を行う演出表示制御手段2150と、前記演出表示制御手段2150からのコマンドを受けて遊技の興趣性を高める演出が表示される演出表示装置2140と(【0022】)、
a3 遊技者によって操作可能な演出操作装置と(【0006】)が設けられ、
a4 前記演出表示制御手段2150は、主制御装置1000側からの各種情報に基づき、前記演出表示装置2140上での演出表示制御を行う表示制御手段2152を有し(【0046】)、前記表示制御手段2152は、識別情報が変動表示されている期間である変動表示期間中において、複数種類の予告画像候補の内から特別遊技への移行期待度と対応した種類の予告画像を、前記演出表示装置2140にて表示し得るものであり(【0006】、【0194】、認定事項(イ))、
a5 前記演出表示装置2140は、前記演出操作装置と電気的に接続され(【0023】)、
a6、d 前記演出操作装置には、ボタンの中心軸の部分をぱちんこ遊技機の前後方向に操作可能なサブ入力ボタン4000と、キーの中心軸の上下左右のいずれかの部分を所定方向に操作可能な十字キー4100があり(【0105】、【0195】、図23、認定事項(ア))
b、e 前記表示制御手段2152はボタン演出表示制御手段2152hを備え(【0194】、認定事項(イ))、前記ボタン演出表示制御手段2152hは、前記サブ入力ボタン4000の操作があるか否かを判定する機能、及び、前記十字キー4100が操作中であるか否かを判定する機能を備え(【0195】、認定事項(ウ))、
c 前記ボタン演出表示制御手段2152hは、前記サブ入力ボタン4000の操作があるか否かを判定し、また、前記十字キー4100が操作中であるか否かを判定してボタン演出表示処理を行うものであり(【0194】、【0195】、認定事項(ウ))、
f 前記ボタン演出表示制御手段2152hは、前記サブ入力ボタン4000の操作があるか否かを判定し(【0195】、図54、認定事項(エ))、前記サブ入力ボタン4000の操作がある場合に、前記十字キー4100が操作中であるか否かを判定し(【0195】、図54、認定事項(エ))、前記十字キー4100が操作中である場合に、前記ボタン演出表示制御手段2152hは、サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告を実行し(【0195】、図52、図54、認定事項(エ)、(オ))、前記十字キー4100が操作中でない場合に、前記ボタン演出表示制御手段2152hは、前記サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告とは異なるサブ入力ボタン単独押し予告を実行する(【0195】、図52、図54、認定事項(エ)、(オ))、
g ぱちんこ遊技機。」

(2-3) 本願補正発明と引用発明との対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 本願補正発明の構成Aについて
(ア)引用発明の構成a3における「遊技者によって操作可能な演出操作装置」は、構成a6、dにおいて「サブ入力ボタン4000」と「十字キー4100」からなることが特定されていることから、複数のものであり、本願補正発明の「遊技者の操作を受け付ける複数の演出操作部」に相当する。(イ)よって、引用発明は、本願補正発明の構成Aに相当する構成を有する。

イ 本願補正発明の構成Bについて
(ア)引用発明の構成b、eにおいて「ボタン演出表示制御手段2152h」は、「前記サブ入力ボタン4000の操作があるか否かを判定する機能」及び「前記十字キー4100が操作中であるか否かを判定する機能」を有するものであるが、構成a5に「電気的に接続され」ることが特定されていることから、それらの判定が電気的な信号に基づいて行われるものであることは、当業者にとって明らかである。
(イ)してみると、引用発明における、「前記サブ入力ボタン4000の操作があるか否かを判定する機能」及び「前記十字キー4100が操作中であるか否かを判定する機能」を有する「ボタン演出表示制御手段2152h」は、本願補正発明の「該演出操作部の可動操作に伴って検出信号を出力する」「操作検出部」に相当する。
(ウ)よって、引用発明は、本願補正発明の構成Bに相当する構成を有する。

ウ 本願補正発明の構成Cについて
(ア)引用発明の構成cにおける「前記サブ入力ボタン4000の操作があるか否か」の判定、及び、「前記十字キー4100が操作中であるか否か」の判定と、本願補正発明の「前記操作検出部から出力される検出信号」は、ともに、「操作」の結果を表すものである点で一致する。
(イ)引用発明の構成cにおける「ボタン演出表示処理を行う」ことは、本願補正発明の「演出を実行する」ことに相当する。
(ウ)そして、引用発明の構成cにおける「前記サブ入力ボタン4000の操作があるか否かを判定し、また、前記十字キー4100が操作中であるか否かを判定してボタン演出表示処理を行う」ことと、本願補正発明の「前記操作検出部から出力される検出信号に基づいて演出を実行する」ことは、ともに、演出操作部の「操作」の結果に基づいて「演出を実行する」点で一致し、引用発明の構成Cにおける「ボタン演出表示制御手段2152h」は、本願補正発明の「前記操作検出部から出力される検出信号に基づいて演出を実行する演出実行手段」としての機能を有するものである。
(エ)よって、引用発明は、本願補正発明の構成Cに相当する構成を有する。

エ 本願補正発明の構成Dについて
(ア)引用発明の構成a6、dにおける「サブ入力ボタン4000」及び「十字キー4100」は、構成a3における「遊技者によって操作可能な演出操作装置」を構成するものであるから、それぞれ、本願補正発明の「遊技者の」「可動操作を可能とする第1の演出操作部」及び「可動操作を可能とする第2の演出操作部」に相当し、引用発明の構成a6、dにおける「演出操作装置には、」「サブ入力ボタン4000」と「十字キー4100があ」ることは、本願補正発明の「複数の前記演出操作部には、」「第1の演出操作部と、」「第2の演出操作部が含まれ」ることに相当する。
(イ)引用発明における、「遊技者」による「サブ入力ボタン4000」の「ボタンの中心軸の部分」の「ぱちんこ遊技機の前後方向」の「操作」は、本願補正発明の「第1の操作態様として」の「第一方向への可動操作」に相当する。
(ウ)引用発明における、「遊技者」による「十字キー4100」の「キーの中心軸の上下左右のいずれかの部分」の「所定方向」の「操作」は、本願補正発明の「第2の操作態様として」の「第二方向への可動操作」に相当する。
(エ)よって、引用発明の構成a3及びa6、dにおける「遊技者によって操作可能な演出操作装置には、」「ボタンの中心軸の部分をぱちんこ遊技機の前後方向に操作されるサブ入力ボタン4000と、キーの中心軸の上下左右のいずれかの部分を所定方向に操作可能な十字キー4100があ」ることと、本願補正発明の「複数の前記演出操作部には、遊技者の第1の操作態様として第一の方向への可動操作を可能とする第1の演出操作部と、前記第1の操作態様とは異なる第2の操作態様として前記第一の方向とは異なる第二の方向への可動操作を可能とする第2の演出操作部が含まれ」ることは、「複数の前記演出操作部には、遊技者の第1の操作態様としての第一の方向への可動操作を可能とする第1の演出操作部と、第2の操作態様として」「第二の方向への可動操作を可能とする第2の演出操作部が含まれ」る点で一致する。

オ 本願補正発明の構成Eについて
(ア)上記イ(ア)において検討したように、引用発明の構成b、eにおける「ボタン演出表示制御手段2152h」は、本願補正発明の「操作検出部」としての機能を有するものである。
(イ)そして、引用発明の構成b、eにおける「前記サブ入力ボタン4000の操作があるか否かを判定する機能」を有する「ボタン演出表示制御手段2152h」は、本願補正発明の「前記第1の演出操作部の可動操作に伴って前記第一の方向への第1検出信号を出力する第1操作検出部」としての機能を有し、また、引用発明の構成b、eにおける「前記十字キー4100が操作中であるか否かを判定する機能」を有する「ボタン演出表示制御手段2152h」は、本願補正発明の「前記第2の演出操作部の前記第二の方向への可動操作に伴って第2検出信号を出力する第2操作検出部」としての機能を有するものである。
(ウ)よって、引用発明は、本願補正発明の構成Eに相当する構成を有する。

カ 本願補正発明の構成Fについて
(ア)引用発明の構成fにおける「サブ入力ボタン4000の操作があるか否かを判定し」、「サブ入力ボタン4000の操作がある場合に、十字キー4100が操作中であるか否かを判定し」、「十字キー4100が操作中でない場合」は、サブ入力ボタン4000のみが操作されたことは明らかであるから、本願補正発明の「複数の前記操作検出部のうち前記第1操作検出部もしくは前記第2操作検出部のいずれか一方から検出信号が出力されている場合」に相当する。
(イ)引用発明の構成fにおける「サブ入力ボタンの操作があるか否かを判定し」、「サブ入力ボタン4000の操作がある場合に、十字キー4100が操作中であるか否かを判定し」、「十字キー4100が操作中である場合」は、サブ入力ボタン4000と十字キー4100がともに操作されていることから、本願補正発明の「前記第1操作検出部および前記第2操作検出部の双方から検出信号が出力されている場合」に相当する。
(ウ)引用発明の構成fにおける「サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告」と「サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告とは異なるサブ入力ボタン単独押し予告」は、本願補正発明の「異なる演出」に相当するから、引用発明の構成fにおける「ボタン演出表示制御手段2152h」が「サブ入力ボタン4000の操作がある場合に、」「十字キー4100が操作中である場合」は「サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告を実行し」、「十字キー4100が操作中でない場合」は「前記サブ入力ボタンと十字キー同時押し予告とは異なるサブ入力ボタン単独押し予告を実行する」ことは、本願補正発明の「前記演出実行手段は、複数の前記操作検出部のうち前記第1操作検出部もしくは前記第2操作検出部のいずれか一方から検出信号が出力されている場合と、前記第1操作検出部および前記第2操作検出部の双方から検出信号が出力されている場合とで、異なる演出を実行すること」に相当する。

キ 本願補正発明の構成Gについて
引用発明の構成gにおける「ぱちんこ遊技機」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

以上のことから、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致する。

<一致点>
A 遊技者の操作を受け付ける複数の演出操作部と、
B 複数の前記演出操作部それぞれに設けられ、該演出操作部の可動操作に伴って検出信号を出力する複数の操作検出部と、
C 前記操作検出部から出力される検出信号に基づいて演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
D’ 複数の前記演出操作部には、遊技者の第1の操作態様としての第一の方向への可動操作を可能とする第1の演出操作部と、第2の操作態様としての第二の方向への可動操作を可能とする第2の演出操作部が含まれ、
E 複数の前記操作検出部には、前記第1の演出操作部の前記第一の方向への可動操作に伴って第1検出信号を出力する第1操作検出部、および、前記第2の演出操作部の前記第二の方向への可動操作に伴って第2検出信号を出力する第2操作検出部が含まれ、
F 前記演出実行手段は、
複数の前記操作検出部のうち前記第1操作検出部もしくは前記第2操作検出部のいずれか一方から検出信号が出力されている場合と、前記第1操作検出部および前記第2操作検出部の双方から検出信号が出力されている場合とで、異なる演出を実行する
G 遊技機。

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点> (構成Dに関して)
第二の方向に関して、本願補正発明は、第二の方向が、前記第一の方向とは異なる方向であるのに対して、引用発明は、前後方向と所定方向との関係が明確に特定されていないことから、前後方向とは異なる方向であるか否かが不明である点。

(2-4) 当審の判断

ア 相違点についての検討

上記相違点について以下に検討する。

引用発明は、十字キー4100の操作方向が明確に特定されておらず、引用文献1には、サブ入力ボタン4000と、十字キー4100の詳細な構造を示した図面が示されていないことから、サブ入力ボタン4000の操作方向である前後方向と、十字キー4100の操作方向である所定方向との関係が明確ではないが、サブ入力ボタン4000が押圧方向である前後方向の1方向への押圧操作を受け付けるものであるのに対して、十字キー4100は、遊技者により、十字の中心を支点として傾動させて4方向に作用する傾動操作を受け付けるものであることは技術常識であるから、サブ入力ボタン4000と十字キー4100の操作方向が同じ方向とはならず、引用発明も、サブ入力ボタン4000の操作方向と十字キー4100の操作方向は異なる方向であると認められる。
したがって、引用発明の構成dは、本願補正発明の構成Dに相当する。
ゆえに、上記相違点は、実質的な相違点とは認められない。
よって、本願補正発明は、引用発明であるといわざるを得ない。

また、上記相違点が実質的な相違点であったとしても、「ぱちんこ遊技機において、遊技者の操作を受け付ける演出操作部として、上下左右自在に操作可能なスティックを用いること」は、本願出願前周知の事項(例えば、特開2008-49186号公報の段落【0093】には、「さらに、操作手段としては、この実施の形態で記載したもの(操作ボタンによるもの)に限らず、他の操作手段を用いても良い。例えば、上下左右自在に操作可能なスティック(ジョイスティック)を設けてもよいし、十字キーを用いてもよい。・・・」と記載されており、また、特開2012-183187号公報の段落【0454】には、「なお、この実施の形態では、操作手段としてプッシュボタン120による操作を検出したことにもとづいて、先読み予告演出およびボタン予告演出の態様を変化させる場合を示しているが、・・・、例えば、スティックコントローラ122が前後方向や左右方向に傾倒操作されたことにもとづいて、先読み予告演出およびボタン予告演出の態様を変化させてもよい。・・・」と記載されている。)である。
そして、引用発明と上記周知の事項は、遊技者の操作を受け付ける演出操作部を有するぱちんこ遊技機という共通の技術分野に属するものであり、また、引用文献1の段落【0193】には、「操作部材及びその組み合わせはこれには限定されず、操作部材の数、使用する操作部材、操作する際の操作部材の組み合わせ等を変更しても何ら問題ない。」との記載があることから、操作部材として、十字キー以外の操作部材を組み合わせに用いる点の示唆がされており、引用発明において、上下左右方向に操作するための操作部材である十字キーに代えて、上下左右方向に操作可能な操作部材という点で機能が共通するスティック等を用いることには十分な動機付けが存在するものと認められる。
してみると、引用発明において、上記周知の事項を適用し、十字キーに代えて上下左右自在に操作可能なスティックを採用し、演出ボタンの押圧方向である「第一の方向」とは異なる「第二の方向への可動操作」を可能とし、本願補正発明の上記相違点に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得るものである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果

本願補正発明によって奏される効果は、引用文献1に記載された事項、及び、上記周知の事項から、当業者が予測し得る程度のものである。

ウ 審判請求人の主張について

審判請求人は、審判請求書の「(4)本願発明と引用発明との対比」において、「引用文献1においては審査官の指摘の通り、「サブ入力ボタン」と「十字キー」の同時押しにより「コメント予告4-6」を実行可能とした遊技機が記載されているものの、これら「サブ入力ボタン」および「十字キー」はいずれも押下により操作するものであり、その可動操作の方向は下方で同じ方向となっている。一方、上記補正後の本願発明は「第一の方向への可動操作を可能とする第1の演出操作部」および「第一の方向とは異なる第二の方向への可動操作を可能とする第2の演出操作部」という構成を有するものであり、その可動操作の方向は互いに異なる方向となっている。そして、このような構成は引用文献1には記載も示唆もなされておらず、本願発明が新規性を有することは明らかであるものと思料する。」と主張している。
しかしながら、上記アにおいて検討したとおり、前後方向へ移動可能な「サブ入力ボタン4000」と十字の中心を支点として傾動可能な「十字キー4100」は、構造が異なるものであるから、「サブ入力ボタン4000」の操作方向と「十字キー4100」の操作方向が同じ方向であるとはいえない。
また、引用発明において、「サブ入力ボタン4000」と「十字キー4100」の操作方向が仮に同じものであったとしても、上下左右方向に操作するための操作部材として、スティックの操作部材を用いることは、本願出願前周知の事項であり、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、審判請求人が主張するように、本願補正発明が新規性を有するものであったとしても、本願補正発明が、格別な進歩性を有するものとは認められない。

(2-5) 小括

よって、本願補正発明は、引用発明との対比において、実質的な相違点が見いだせないことから、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、あるいは、本願補正発明は、引用発明、及び、上記周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3) むすび

以上のことから、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和1年7月31日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成30年11月30日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(上記第2[理由]1の(補正前)の記載を参照)(以下「本願発明」という。)であり、分説してAないしGの符号を付与すると、以下のとおりである。

「A 遊技者の操作を受け付ける複数の演出操作部と、
B 複数の前記演出操作部それぞれに設けられ、該演出操作部の可動操作に伴って検出信号を出力する複数の操作検出部と、
C 前記操作検出部から出力される検出信号に基づいて演出を実行する演出実行手段と、
を備え、
D’’ 複数の前記演出操作部には、遊技者の第1の操作態様による可動操作を可能とする第1の演出操作部と、前記第1の操作態様とは異なる第2の操作態様により可動操作を可能とする第2の演出操作部が含まれ、
E’’ 複数の前記操作検出部には、前記第1の演出操作部の可動操作に伴って第1検出信号を出力する第1操作検出部、および、前記第2の演出操作部の可動操作に伴って第2検出信号を出力する第2操作検出部が含まれ、
F 前記演出実行手段は、
複数の前記操作検出部のうち前記第1操作検出部もしくは前記第2操作検出部のいずれか一方から検出信号が出力されている場合と、前記第1操作検出部および前記第2操作検出部の双方から検出信号が出力されている場合とで、異なる演出を実行すること
G を特徴とする遊技機。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

理由1
本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

引用文献1:特開2015-19704号公報

3 引用文献とそれに記載された事項

原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びそれらの記載事項は、上記第2[理由]2(2)(2-2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。

ア 本願発明のA,B,C,F,Gの特定事項について
本願発明のA,B,C,F,Gの特定事項は、本願補正発明のA,B,C,F,Gの特定事項に相当し、引用発明に対するそれらの構成の対比は、上記第2[理由]2(2)(2-3)のア,イ,ウ,カ,キに記載したとおりである。

イ 本願発明のD’’の特定事項について
(ア)引用発明の構成a6、dにおける「サブ入力ボタン4000」及び「十字キー4100」は、構成a3における「遊技者によって操作可能な演出操作装置」を構成するものであるから、それぞれ、本願発明の「遊技者の」「可動操作を可能とする第1の演出操作部」及び「可動操作を可能とする第2の演出操作部」に相当し、引用発明の構成a6、dにおける「演出操作装置には、」「サブ入力ボタン4000」と「十字キー4100があ」ることは、本願発明の「複数の前記演出操作部には、」「第1の演出操作部と、」「第2の演出操作部が含まれ」ることに相当する。
(イ)引用発明における、「遊技者」による「サブ入力ボタン4000」の「ボタンの中心軸の部分」の「操作」は、本願発明の「遊技者の第1の操作態様による可動操作」に相当する。
(ウ)引用発明における、「遊技者」による「十字キー4100」の「キーの中心軸の上下左右のいずれかの部分」の「操作」は、本願発明の「前記第1の操作態様とは異なる第2の操作態様によ」る「可動操作」に相当する。
(エ)よって、引用発明の構成a3及びa6、dにおける「遊技者によって操作可能な演出操作装置には、ボタンの中心軸の部分を」「操作されるサブ入力ボタン4000と、キーの中心軸の上下左右のいずれかの部分を」「操作可能な十字キー4100があ」ることは、本願発明の「複数の前記演出操作部には、遊技者の第1の操作態様による可動操作を可能とする第1の演出操作部と、前記第1の操作態様とは異なる第2の操作態様により可動操作を可能とする第2の演出操作部が含まれ」ることに相当する。
(オ)以上のことから、引用発明は、本願発明の構成D’’に相当する構成を有する。

ウ 本願発明のE’’の特定事項について
(ア)引用発明の構成b、eにおける「前記サブ入力ボタン4000の操作があるか否かを判定する機能」を有する「ボタン演出表示制御手段2152h」は、本願発明の「前記第1の演出操作部の可動操作に伴って第1検出信号を出力する第1操作検出部」としての機能を有し、また、引用発明の構成b、eにおける「前記十字キー4100が操作中であるか否かを判定する機能」を有する「ボタン演出表示制御手段2152h」は、本願発明の「前記第2の演出操作部の可動操作に伴って第2検出信号を出力する第2操作検出部」としての機能を有するものである。
(イ)よって、引用発明は、本願発明の構成E’’に相当する構成を有する。

してみると、引用発明は、本願発明の構成A、B,C,D’’,E’’,F及びGをすべて有しており、本願発明と引用発明との対比において、相違点は見出せない。

したがって、本願発明は、引用発明である。

第4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2020-03-11 
結審通知日 2020-03-17 
審決日 2020-03-31 
出願番号 特願2015-40863(P2015-40863)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳 重幸岩永 寛道  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人青海特許事務所  

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