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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1362216
審判番号 不服2019-11054  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-21 
確定日 2020-05-14 
事件の表示 特願2017-531874「サウンディング参照信号に基づく下りチャネル推定方法、装置及び通信システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月23日国際公開、WO2016/095110、平成30年 2月 8日国内公表、特表2018-504027〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2014年(平成26年)12月16日を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

平成30年 5月15日付け:拒絶理由通知書
平成30年 7月20日 :意見書,手続補正書の提出
平成30年10月12日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
平成30年12月21日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 5月13日付け:平成30年12月21日にされた手続補正
についての補正の却下の決定,拒絶査定
令和 1年 8月21日 :拒絶査定不服審判の請求
令和 1年11月28日 :手続補正書の提出
令和 1年12月 5日付け:令和1年11月28日にされた手続補正に
ついての却下理由通知書
令和 2年 2月13日付け:令和1年11月28日にされた手続補正に
ついての手続却下の決定

第2 令和1年5月13日付け補正の却下の決定について

1 請求人の主張
請求人は,審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」において,「 本願の出願人は,以下に述べる理由により,本拒絶査定と同日付けで却下された特許請求の範囲(即ち,平成30年12月21日付け手続補正書でした請求項1-18)に記載の各請求項に係る発明は,十分に特許性があると思量される。」と主張しているので,平成30年12月21日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正の却下の決定(以下「本件補正の却下の決定」という。)の適否について,以下に検討する。

2 補正の却下の決定の概要
補正の却下の決定の概要は,
本件補正による請求項1についての補正は,特許請求の範囲の限定的減縮を目的としているものの,本件補正後の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。したがって,本件補正は同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから,同法第53条第1項の規定により却下する,
というものであり,請求項1について,引用例1,2,5,6,9が引用されている。

引用例1:特開2011-130438号公報
引用例2:CMCC,High level view of 3D-MIMO schemes,3GPP TSG RAN WG1
Meeting #78bis R1-143955,2014年9月27日,pages 1-2
引用例5:国際公開第2014/156956号
引用例6:特表2012-529778号公報
引用例9:特開2014-116952号公報

3 当審の判断

(1)本件補正の概要
本件補正は,平成30年7月20日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「 サウンディング参照信号に基づく下りチャネル推定方法であって,
基地局が,ユーザ装置により送信されたサウンディング参照信号を受信することを含み,
前記サウンディング参照信号は,下りチャネル推定のために用いられ,また,高次元MU-MIMOをサポートし,
前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は,2又は4であり,前記サウンディング参照信号は,一部のみのリソースブロック中で構成される,方法。」
との発明(以下,「本願発明」という。)を,
「 サウンディング参照信号に基づく下りチャネル推定方法であって,
基地局が,ユーザ装置にユーザ装置固有の第一シグナリング及び/又はセル固有の第二シグナリングを送信することであって,前記第一シグナリングは,前記ユーザ装置に対してのサウンディング参照信号構成情報を含み,前記第二シグナリングは,セルに対してのサウンディング参照信号構成情報を含むこと;及び
前記基地局が,前記ユーザ装置により送信されたサウンディング参照信号を受信することであって,前記サウンディング参照信号は,下りチャネル推定のために用いられ,また,高次元MU-MIMOをサポートすることを含み,
前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は,2又は4であり,前記サウンディング参照信号は,一部のリソースブロック中で構成される,方法。」(下線は補正箇所を示す。)
との発明(以下,「補正後の発明」という。)に補正することを含むものである。

(2)補正の適否

ア 新規事項の有無,シフト補正の有無,補正の目的要件
請求項1についての上記補正は,本件補正前の請求項1の「基地局」について,「基地局が,ユーザ装置にユーザ装置固有の第一シグナリング及び/又はセル固有の第二シグナリングを送信することであって,前記第一シグナリングは,前記ユーザ装置に対してのサウンディング参照信号構成情報を含み,前記第二シグナリングは,セルに対してのサウンディング参照信号構成情報を含むこと」との限定を付し,特許請求の範囲を減縮するものである。したがって,上記補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであり,同条第3項,同第4項の規定に違反するところはない。

イ 独立特許要件
上記補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのか否かについて,以下検討する。

(ア)補正後の発明
補正後の発明は,「(1)本件補正の概要」の項中の「補正後の発明」のとおりのものと認める。

(イ)引用発明
a 引用発明1
本件補正の却下の決定において引用された特開2011-130438号公報(引用例1)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0003】
時分割複信(TDD)システムにとって,上り・下りリンクは同じ周波数リソースを使用するため,上り・下り無線チャネル間に相反性があり,上りチャネルに基づいて下りチャネルを容易に推知することができ,逆も同じである。
(中略)
【0012】
無線通信システムにおけるマルチユーザ多入力多出力(MU-MIMO)伝送方法であって,基地局は,N(N>1)局のユーザ端末(UE)から送信されるサウンディングパイロット(SRS)を受信してチャネル推定を行い,チャネル推定結果および前記システムのチャネルの相反性に基づいて下りチャネル情報行列を生成し,前記基地局は,前記生成した下りチャネル情報行列をQR分解して,得られたQ行列から,i(i=1,…,N)番目のUEのマルチユーザビームフォーミング(MU-BF)行列P(i)を得,さらにi番目のUEの下りシングルユーザビームフォーミング(SU-BF)行列V(i)を得,前記基地局は,前記MU-BF行列P(i)および前記下りSU-BF行列V(i)に基づいて,i番目のUEの送信データに対してビームフォーミング処理を行う,ことを含む。
(中略)
【0042】
説明すべきところとして,TDDシステムにおいて,上り・下りリンクが同じ無線チャネルを使用するとき,上り・下りの無線チャネル間に相反性がある。即ち,eNBからi番目のUEまでの下りチャネル行列をH(i)で表すと,i番目のUEからeNBまでの上りチャネル行列を

で表すことができ,つまり,上り・下りチャネル行列は転置関係を満たす。本発明の実施例では,上り・下りSU-BF行列の算出を簡略化するために,上り・下りチャネル行列間で共役転置関係を満たす必要がある。即ち,eNBからi番目のUEまでの下りチャネル行列をH(i)で表すと,i番目のUEからeNBまでの上りチャネル行列を

で表す。この共役転置関係を満たすために,上り信号の送信前および上り受信信号の処理前にそれぞれ1回の共役処理を行うだけでよい。
【0043】
図1のモデルに基づいて,上り・下りリンクの無線リソース割当が同じである前提で,図2に示すように,上り・下り連合MU-MIMO伝送のフローは,以下のステップを含む。
【0044】
ステップ201で,複数のUE(ユーザ数がNであることを想定,N>1)からeNBへサウンディングパイロット(SRS)を送信し,ここで,i番目のUEはUEi,i=1,…,Nである。本実施例では,N=2である。
【0045】
ステップ202で,eNBは,SRSに基づいてチャネル推定を行って,複数のUEの上り物理チャネルを知り,さらに,チャネルの相反性に基づいて,下り物理チャネル

を生成する。」

上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,以下のことがいえる。

(a)【0012】の記載によれば,無線通信システムにおけるマルチユーザ多入力多出力(MU-MIMO)伝送方法において,基地局は,ユーザ端末(UE)から送信されるサウンディングパイロット(SRS)を受信してチャネル推定を行い,チャネル推定結果及び前記システムのチャネルの相反性に基づいて下りチャネル情報行列を生成することが記載されているといえる。
また,【0003】の「上り・下り無線チャネル間に相反性があり,上りチャネルに基づいて下りチャネルを容易に推知することができ」との記載によれば,上述した「下りチャネル情報行列を生成すること」は,下りチャネルを推知することに含まれることは明らかである。

以上を総合すると,引用例1には以下の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「 無線通信システムにおけるマルチユーザ多入力多出力(MU-MIMO)伝送方法において,基地局は,ユーザ端末(UE)から送信されるサウンディングパイロット(SRS)を受信してチャネル推定を行い,チャネル推定結果及び前記システムのチャネルの相反性に基づいて下りチャネルを推知する,方法。」

b 引用発明2
本件補正の却下の決定において引用されたCMCC,High level view of 3D-MIMO schemes,3GPP TSG RAN WG1 Meeting #78bis R1-143955,2014年 9月27日,pages 1-2(引用例2)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「2.1 Higher Order MU-MIMO
In current specification, MU-MIMO operation can support up to 2 UEs with orthogonal DMRS. Such design is aligned with convential 2D-MIMO, where UEs can be spatially seperated in azimuth domain only. With 3D-MIMO, where eNB can separate UE in elevation domain as well, it would be beneficial to support higher order MU-MIMO, such as MU-MIMO with up to 8 UEs. Our initial evaluation results also support this proposal.
(中略)
2) SRS
3D-MIMO may consider more UEs in a cell, consequently more UEs are required to send SRS for acquiring downlink channel state information for beamforming. Whether the SRS design in current specification can satisfy such increase of UE SRS transmission needs to be studied. If the SRS capacity needs to be enlarged, increase of uplink resources, e.g., in time/frequency/sequences domain, may be considered for SRS transmission.」

(当審仮訳:
2.1 高次元MU-MIMO
現在の仕様では,MU-MIMO動作は,直交DMRSを用いて最大2つのUEをサポートできます。このような設計は,UEを方位角領域でのみ空間的に分離できる従来の2D-MIMOと協調しています。3D-MIMOでは,eNBが仰角領域でもUEを分離できるため,最大8つのUEを備えたMU-MIMOなど,高次元MU-MIMOをサポートすることが有益です。最初の評価結果もこの提案をサポートしています。
(中略)
2) SRS
3D-MIMOは,セル内のより多くのUEを考慮する場合があり,その結果,ビームフォーミングのためのダウンリンクチャネル状態情報を取得するために,より多くのUEがSRSを送信することを要求されます。現在の仕様のSRS設計がこのようなUE SRS送信の増加を満足できるかどうかを検討する必要があります。SRSキャパシティを拡大する必要がある場合,例えば時間/周波数/シーケンスドメインでのアップリンクリソースの増加をSRS伝送のために考慮することができます。)

上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,以下のことがいえる。

(a)「2.1 高次元MU-MIMO」の記載によれば,3D-MIMOは,高次元MU-MIMOをサポートすることが記載されているといえる。
また,「2) SRS」の記載によれば,3D-MIMO において,UEが送信したSRSを用いてダウンリンクチャネル状態情報を取得することが記載されているといえる。

以上を総合すると,引用例2には以下の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

「 高次元MU-MIMOをサポートする3D-MIMOにおいて,UEが送信したSRSを用いてダウンリンクチャネル状態情報を取得する方法。」

c 引用発明3
本件補正の却下の決定において引用された国際公開第2014/156956号(引用例5)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「[0082] (第1実施形態に係る信号処理)
無線周波数を効率的に利用するための1つの解として,シングルユーザ/マルチユーザMIMOやeNB間連携などのマルチアンテナ技術による空間チャネルの有効活用がある。しかし,これらのマルチアンテナ技術はチャネル推定の精度に依存しており,特に下りチャネルに適用する場合にはeNB200側での下りチャネル情報の把握が重要となる。
(中略)
[0112] ステップS14において,UE100は,アナログシンボル及び上り参照信号(SRS又はDMRS)をeNB200に送信する。
[0113] ステップS15において,eNB200は,UE100からのアナログシンボル及び上り参照信号に基づいて,アナログシンボルのシンボル判定を行う。
[0114] ステップS16において,eNB200は,シンボル判定により,送信対象データとしてのチャネル情報を検出(抽出)する。
(中略)
[0121] [第2実施形態]
以下,第2実施形態について,第1実施形態との相違点を主として説明する。第2実施形態は,アナログ伝送処理部6の構成が第1実施形態とは異なる。その他の構成については,第1実施形態と同様である。
(中略)
[0135] ステップS25において,UE100は,アナログシンボル及び上り参照信号(SRS又はDMRS)をeNB200に送信する。
[0136] ステップS26において,eNB200は,UE100からのアナログシンボル及び上り参照信号に基づいて,アナログシンボルに適用されているプレコーダを判定する。
[0137] ステップS27において,eNB200は,プレコーダ判定により,送信対象データとしてのチャネル情報を検出(抽出)する。
(中略)
[0139] [第3実施形態]
以下,第3実施形態について,第1実施形態及び第2実施形態との相違点を説明する。第3実施形態は,リソースマッピングに関する実施形態である。ここでは,第2実施形態をベースとしたリソースマッピングを主として説明する。
[0140] 図13及び図14は,第3実施形態に係るリソースマッピングのパターン1を説明するための図である。図13では,1サブフレーム(上りサブフレーム)における1リソースブロック分の無線リソースを示している。
[0141] 図13に示すように,パターン1では,リソースマッピング部4は,アナログシンボルがマッピングされるリソースエレメントを,SRSがマッピングされるリソースエレメント(SRSリソース)に隣接して配置する。SRSがマッピングされるリソースエレメント(SRSリソース)は,第1の無線リソースに相当する。SRSリソースは,最終シンボルにおいて1サブキャリア間隔を空けて設けられる。アナログシンボルがマッピングされるリソースエレメントは,第2の無線リソースに相当する。SRSはサブフレームの最終シンボルにおけるリソースエレメントにマッピングされるため,アナログシンボルは,最後から2番目のシンボルにおいてSRSリソースと隣接するリソースエレメント(以下,「eSRS」という)にマッピングされる。
(中略)
[0143] 図15は,第3実施形態に係るリソースマッピングのパターン2を説明するための図である。
[0144] 図15に示すように,パターン2では,リソースマッピング部4は,アナログシンボルを,最終シンボルに対応するリソースエレメントにマッピングする。具体的には,SRSリソースに相当するリソースエレメントのうち一部のリソースエレメントに,アナログシンボルをマッピングする。SRSは,最終シンボルにおいて3サブキャリア間隔を空けてマッピングされる。アナログシンボルは,最終シンボルにおいて当該3サブキャリアの中央に位置するサブキャリア(リソースエレメント)にマッピングされる。」

上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,以下のことがいえる。

(a)[0139]?[0141],[0143],[0144]の記載によれば,「第3実施形態」において,リソースマッピングのパターン1では,SRSリソースは,最終シンボルにおいて1サブキャリア間隔を空けて設けられ,リソースマッピングのパターン2では,SRSは,最終シンボルにおいて3サブキャリア間隔を空けてマッピングされることが記載されているといえる。

(b)[0082] ,[0112]?[0114]によれば,第1実施形態は,マルチユーザMIMOを含むマルチアンテナ技術において,SRSに基づいてチャネル推定を行うことを含む実施形態といえ,第1実施形態のベースとなる技術は,マルチユーザMIMOを含むマルチアンテナ技術といえる。
また, [0121],[0135]?[0137] によれば,第2実施形態は,アナログ伝送処理部6の構成が第1実施形態とは異なるものの,第1実施形態と同様に,マルチユーザMIMOを含むマルチアンテナ技術において,SRSに基づいてチャネル推定を行うことを含む実施形態といえる。そして,第2実施形態のベースとなる技術も,第1実施形態と同様に,マルチユーザMIMOを含むマルチアンテナ技術であることは自明である。
更に,[0139]によれば,第3実施形態は第2実施形態をベースとした実施形態であるといえる。
してみると,(a)で上述した「第3実施形態」のベースとなる技術も,第1実施形態及び第2実施形態と同様に,マルチユーザMIMOを含むマルチアンテナ技術であることは明らかである。

以上を総合すると,引用例5には以下の発明(以下,「引用発明3」という。)が記載されていると認める。

「 マルチユーザMIMOを含むマルチアンテナ技術において,
リソースマッピングのパターン1では,SRSリソースは,最終シンボルにおいて1サブキャリア間隔を空けて設けられる方法。」

d 引用発明4
本件補正の却下の決定において引用された特表2012-529778号公報(引用例6)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0003】
LTEシステムにおいては,UE(ユーザ機器;User Equipment)は,eNB(発展ノードB;evolved NodeB)のスケジューリングにしたがって,アップリンクでSRS(サウンディング参照信号;Sounding Reference Signal)を送信する。SRSは,ULの出力制御や時間追跡などの他の目的と同様に,ULの周波数選択的なスケジューリングを容易にするための広帯域サウンディング信号として設計される。また,TDD(時分割二重;Time Division Duplexing)では,チャネル相互関係(channel reciprocity)の利用によって,ダウンリンクスケジューリングにも使われる。現行のLTE標準(下記の非特許文献1を参照)によれば,SRSを送信するための主な手順には以下が含まれる。すなわち,eNB(または基地局)は,ユーザ機器(または移動局)に対して,必要に応じて,指定されたセルにおいて共通するセル固有のSRS設定パラメータをブロードキャスト(broadcast)する;また,eNBは,指定されたUEに対して専用のSRSパラメータを設定するために,UE固有のRRCシグナリング(無線リソース制御シグナリング;Radio Resource Control signaling)をUEに送信する;さらに,UEは,パラメータにしたがって,設定された帯域幅およびサブフレームにおいて,周期的にSRSを送信する。例えば,eNBは{2,5,10,20,40,80,160,320}msを周期(SRSの送信インターバル)としてUEに設定する。以下では,この周期的なSRSの送信を「ピリオディック(periodic)SRS(ピリオディックSRSの送信)」と称する。加えて,LTEでは,eNBは,UE固有のRRCシグナリングを使って,1回限りのピリオディックSRSの送信をユーザ機器に設定する。ここで,eNBは,準静的に(semi-statically)RRSシグナリングを(例えば100msごとに)送信してもよい。」

上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,以下のことがいえる。

(a)【0003】には,「基地局は,UEに対して,指定されたセルにおいて共通するセル固有のSRS設定パラメータをブロードキャストすること,及び,指定されたUEに対して専用のSRSパラメータを設定するために,UE固有のRRCシグナリングをUEに送信すること,更に,UEは,パラメータにしたがって,設定された帯域幅およびサブフレームにおいて,周期的にSRSを送信すること」が記載されていると認める。

以上を総合すると,引用例6には以下の発明(以下,「引用発明4」という。)が記載されていると認める。

「 基地局は,UEに対して,指定されたセルにおいて共通するセル固有のSRS設定パラメータをブロードキャストすること,及び,指定されたUEに対して専用のSRSパラメータを設定するために,UE固有のRRCシグナリングをUEに送信すること,更に,UEは,パラメータにしたがって,設定された帯域幅およびサブフレームにおいて,周期的にSRSを送信すること,を含む方法。」

e 引用発明5
本件補正の却下の決定において引用された特開2014-116952号公報(引用例9)には,図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

「【0001】
本発明は,一般的に無線通信システムに関し,特にユーザ端末(User Equipment:UE)から転送される基準信号の機能を向上させることに関する。一般的に,上記基準信号は与えられた時間にUEが経験するチャンネル媒体推定を提供する。
(中略)
【0003】
通信システムの適切な機能のために,いろいろな種類の信号がサポートされる。このような信号は,情報内容を伝達するためのデータ信号,及び通信システムのアップリンク(UpLink:UL)からUEが各々自身のサービング(serving)基地局(Base Station:BS or Node B)に転送し,通信システムのダウンリンク(Down Link:DL)からサービングノードBがUEに転送する,上記データ信号を処理するための情報を伝達する制御信号を含む。例えば,制御信号はデータパケット受信に対応して転送され,ハイブリッド自動再転送要請(Hybrid Automatic Repeat request:HARQ)過程と関連した肯定または否定確認信号(ACKまたはNACKの各々),例えば,HARQ-ACK及びHARQ-NACK信号を含む。また,制御信号はUEが自身が経験するDLチャンネル状況に対する情報を提供するために,ノードBに転送するチャンネル品質指示(Channel Quality Indication:CQI)信号を含む。また,パイロット(pilots)とも知られている基準信号(RSs)は,一般的にチャンネル推定を提供し,転送されるデータまたは制御信号に対する同調復調を可能にするために転送されたり,上記UEが経験するULチャンネル状況を測定するために,受信ノードBにより使われるように転送される。データまたは制御信号の復調に使われるRSは復調RS(DeModulation RS)と呼ばれることができ,これは事実上,一般的に広帯域であり,ULチャンネル媒体をサウンディングする(sounding)RSは,サウンディングRS(SRS)と呼ばれることができる。
(中略)
【0009】
PUSCH転送帯域幅(Band Width:BW)は本明細書でリソースブロック(Resource Blocks:RBs)と呼ばれる周波数リソースユニットを含む。図1で,各RBはリソースエレメント(Resource Elements:REs)とも呼ばれることができるNRBSC=12個の副搬送波(170)を含む。UEは,PUSCH転送のために1つまたはその以上の連続するRBの割当を受けることができ,PUCCH転送のために1つのRBの割当を受けることができる。
(中略)
【0039】
多重-ユーザ多重-入力多重-出力(Multi-User Multiple-Input Multiple-Output:MU-MIMO)は概して通信システムのスペクトル効率を向上させることができる。複数のUEからのPUSCH転送はMU-MIMOによりBWの少なくとも一部を共有する。ノードBがMU-MIMO UEが経験したチャンネル媒体の非-干渉推定を獲得できる場合,MU-MIMOが容易になる。これは,各DMRSに対する直交受信を必要とする。上記MU-MIMO UEからのPUSCH転送が完全に同一なBWを共有する場合,直交DMRS多重化は同一なCAZAC-基盤シーケンスの互いに異なるCSを使用して獲得できる。UL SAでのCSI IEはCSを表す。しかしながら,上記MU-MIMO UEからのPUSCH転送が完全に同一なBWを共有しない場合,各CAZACシーケンスが互いに異なる長さを有するため,互いに異なるCSを使用する直交DMRS多重化が可能でない。しかしながら,時間領域での直交カバーリングコード(Orthogonal Covering Codes:OCCS)のDMRS転送への適用は,また直交DMRS多重化を提供することができる。例えば,2つのDMRSシンボルを具備する図1に図示されたサブフレーム構造を使用することによりOCCは{1,1}及び{1,-1}でありうる。CSに対して言わば,UL SAはPUSCHでのDMRS転送に対するOCCを表さなければならない。
(中略)
【0045】
図8は,多様な帯域幅で従来のSRS転送の多重化を示す図である。具体的に,図8は<表2>の構成c=3に対する多重SRS転送BWの概念をさらに図示する。
【0046】
図8を参照すると,PUCCHは作用BWの2つのエッジ(802及び804)に位置し,UEはm^(3)_(SRS,0)RB(812),m^(3)_(SRS,1)RB(814),m^(3)_(SRS,2)RB(816),またはm^(3)_(SRS,3)RB(818)でSRS転送BWを構成する。一部のRB(806及び808)はサウンディングされないことがあるが,各UL SINRがSRS転送が遂行される近くのRBからインターポレーティングできるので,これはこのようなRBでのPUSCH転送をスケジューリングするノードBの能力にいつも影響を及ぼさない。また,ノードBは最大SRS BWを除外したSRS BWに対し,UEにSRS転送の開始周波数位置を割り当てる。
(中略)
【0101】
図12で,互いに異なるSRS転送サブフレーム(1210)でのSRS転送BWは制限無しで(1220),そして制限(1230)を有して図示され,上記SRSは特定BW(1240)での転送から除外される。






上記の記載,並びに当業者の技術常識を考慮すると,以下のことがいえる。

(a)【0003】の「ULチャンネル媒体をサウンディングする(sounding)RSは,サウンディングRS(SRS)と呼ばれることができる。」との記載,及び【0046】の「一部のRB(806及び808)はサウンディングされないことがある」との記載について,「サウンディング」とは,SRSを送信することと解することができる。してみれば,上述した【0003】,【0046】の記載,及び図8によれば,一部のRBではSRSが送信されないことが記載されているといえる。
更に,【0009】には,BWはRB(リソースブロック)を含むことが記載されており,【0101】,図12には,特定のBWでは,SRSが転送されないことが記載されている。してみれば,【0009】,【0101】,図12の記載からも,一部のRBではSRSが送信されないことが記載されているといえる。
よって,引用例9には「一部のRBではSRSが送信されないこと」が記載されていると認める。

(b)【0001】には,引用例9に記載された発明は,一般的に無線通信システムに関するものであることが記載されており,【0039】には,MU-MIMOを用いる通信システムが記載されている。更に,本願の国際出願日の時点において,MU-MIMOを用いる通信システムは一般的な無線通信システムといえることは明らかである。
してみると,(a)で上述した「一部のRBではSRSが送信されないこと」は,引用例9に記載された発明に含まれる処理であるから,MU-MIMOを用いる通信システムを含む一般的な無線通信システムに関する処理,すなわち,MU-MIMOを用いる通信システムを含む一般的な無線通信システムにおいて用いられる処理であることは明らかである。

以上を総合すると,引用例9には以下の発明(以下,「引用発明5」という。)が記載されていると認める。

「 MU-MIMOを用いる通信システムにおいて,一部のRBではSRSが送信されない,方法。」

(ウ)対比・判断
補正後の発明と引用発明1とを対比する。

a 引用発明1は,「サウンディングパイロット(SRS)を受信してチャネル推定を行い,チャネル推定結果及び前記システムのチャネルの相反性に基づいて下りチャネルを推知する」ことを含む「方法」であるから,補正後の発明と同様に「サウンディング参照信号に基づく下りチャネル推定方法」といえる。

b 引用発明1の「ユーザ端末(UE)」は,補正後の発明の「ユーザ装置」に相当する。また,補正後の発明の「基地局」と,引用発明1の「基地局」は,「ユーザ装置により送信されたサウンディング参照信号を受信する」ものである点で共通する。

また,引用発明1において,「サウンディングパイロット(SRS)」は,「下りチャネルを推知」するために用いられていることは明らかである。
してみると,引用発明1の「サウンディングパイロット(SRS)」は,補正後の発明の「サウンディング参照信号」と同様に,「下りチャネル推定のために用いられ」ているといえる。
また,引用発明1の「サウンディングパイロット(SRS)」は,「無線通信システムにおけるマルチユーザ多入力多出力(MU-MIMO)伝送方法」において用いられるものであるから,マルチユーザ多入力多出力(MU-MIMO)をサポートしていることは明らかである。
してみると,補正後の発明の「サウンディング参照信号」と,引用発明1の「サウンディングパイロット(SRS)」は,「MU-MIMOをサポート」している点で共通する。

以上を総合すると,補正後の発明と引用発明1とは,以下の点で一致し,また,相違している。

(一致点)
「 サウンディング参照信号に基づく下りチャネル推定方法であって,
基地局が,ユーザ装置により送信されたサウンディング参照信号を受信することであって,前記サウンディング参照信号は,下りチャネル推定のために用いられ,また,MU-MIMOをサポートする,方法。」

(相違点1)
「基地局」について,補正後の発明は「基地局が,ユーザ装置にユーザ装置固有の第一シグナリング及び/又はセル固有の第二シグナリングを送信することであって,前記第一シグナリングは,前記ユーザ装置に対してのサウンディング参照信号構成情報を含み,前記第二シグナリングは,セルに対してのサウンディング参照信号構成情報を含むこと」であるのに対し,引用発明1は,ユーザ装置にユーザ装置固有の第一シグナリング及び/又はセル固有の第二シグナリングを送信することは特定されていない点。

(相違点2)
「MU-MIMOをサポートする」ことについて,補正後の発明は「高次元MU-MIMOをサポート」するものであるのに対し,引用発明1は,マルチユーザ多入力多出力(MU-MIMO)をサポートするものであるが,高次元マルチユーザ多入力多出力(MU-MIMO)をサポートするものとは特定されていない点。

(相違点3)
「サウンディング参照信号」について,補正後の発明は「サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は2又は4」であることを含むのに対し,引用発明1は,サウンディングパイロット(SRS)のサブキャリア周波数間隔は特定されていない点。

(相違点4)
「サウンディング参照信号」について,補正後の発明は「一部のリソースブロック中で構成される」ものであるのに対し,引用発明1は,サウンディングパイロット(SRS)が構成されるリソースブロックは特定されていない点。

以下,上記相違点について検討する。

(相違点1)
上記「(イ)引用発明」の「d 引用発明4」で認定したとおり,
「 基地局は,UEに対して,指定されたセルにおいて共通するセル固有のSRS設定パラメータをブロードキャストすること,及び,指定されたUEに対して専用のSRSパラメータを設定するために,UE固有のRRCシグナリングをUEに送信すること,更に,UEは,パラメータにしたがって,設定された帯域幅およびサブフレームにおいて,周期的にSRSを送信すること,を含む方法。」との引用発明4は公知である。ここで,引用発明4は「UEは,パラメータにしたがって,設定された帯域幅およびサブフレームにおいて,周期的にSRSを送信すること」を含むことから,引用発明4の「セル固有のSRS設定パラメータ」及び「指定されたUEに対して専用のSRSパラメータ」は,UEにおいてSRSを構成するための情報が含まれていることは明らかである。
そして,SRSを構成するための情報をUEに適切に通知することは一般的な課題であるから,当該課題を解決するために引用発明1に引用発明4を適用することは格別困難なことではない。
そうすると,引用発明1に引用発明4を適用し,相違点1の構成を採用することは,当業者が容易に想到しうることである。

(相違点2)
上記「(イ)引用発明」の「b 引用発明2」で認定したとおり,
「 高次元MU-MIMOをサポートする3D-MIMOにおいて,UEが送信したSRSを用いてダウンリンクチャネル状態情報を取得する方法。」との引用発明2は公知である。
そして,本願の国際出願日の時点で公知の技術である高次元MU-MIMOによる通信を行うために,下りチャネル状態を適切に取得することは一般的な課題であるから,当該課題を解決するために引用発明1に引用発明2を適用することは格別困難なことではない。
そうすると,引用発明1に引用発明2を適用し,引用発明1のサウンディングパイロット(SRS)が,高次元MU-MIMOをサポートするようにすることは,当業者が容易に想到しうることである。

(相違点3)
「又は」は択一的であることを意味するから,補正後の発明の「前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は,2又は4」であることは,「前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は2」であることを含む。
また,「前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は2」であることとは,本願明細書の段落【0068】の「サブキャリア周波数間隔(即ち,Comb値)が2である」との記載から,「前記サウンディング参照信号」のリソースが,1サブキャリア間隔を空けて設けられることに他ならない(Comb値を2とすることとは,1サブキャリア間隔空けてリソースを設けることに他ならない)。
ここで,上記「(イ)引用発明」の「c 引用発明3」で認定したとおり,
「 マルチユーザMIMOを含むマルチアンテナ技術において,
リソースマッピングのパターン1では,SRSリソースは,最終シンボルにおいて1サブキャリア間隔を空けて設けられる方法。」との引用発明3は公知である。
そして,サウンディングパイロット(SRS)を含むアップリンク信号に関して,当該アップリンク信号を送信するために適切なアップリンクリソースを決定することは一般的な課題であるから,当該一般的な課題を解決するために引用発明1に引用発明3を適用することは格別困難なことではない。
そうすると,引用発明1に引用発明3を適用し,サウンディングパイロット(SRS)のリソースが,1サブキャリア間隔を空けて設けられるようにすること(すなわち,サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔を2とすること)は,当業者が容易に想到しうることである。

(相違点4)
上記「(イ)引用発明」の「e 引用発明5」で認定したとおり,
「 MU-MIMOを用いる通信システムにおいて,一部のRBではSRSが送信されない,方法。」との引用発明5は公知である。
そして,サウンディングパイロット(SRS)を含むアップリンク信号に関して,当該アップリンク信号を送信するために適切なアップリンクリソースを決定することは一般的な課題であるから,当該一般的な課題を解決するために引用発明1に引用発明5を適用することは格別困難なことではない。更に,引用発明1に引用発明5を適用した場合,一部のリソースブロックを用いてサウンディングパイロット(SRS)が構成され,当該構成されたサウンディングパイロット(SRS)が送信されることは自明である。
したがって,引用発明1に引用発明5を適用して,引用発明1において,サウンディングパイロット(SRS)が,一部のリソースブロック中で構成されるようにすることは,当業者が容易に想到しうることである。

そして,補正後の発明の作用効果も,引用発明1?引用発明5に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。
したがって,補正後の発明は,引用発明1?引用発明5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

(請求人の主張について)
請求人は審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」において,「 本願の出願人は,以下に述べる理由により,本拒絶査定と同日付けで却下された特許請求の範囲(即ち,平成30年12月21日付け手続補正書でした請求項1-18)に記載の各請求項に係る発明は,十分に特許性があると思量される。
<補正の却下の決定における引例>
上記引例1-9と同様である。
進歩性について>
・請求項1に係る発明(本発明)
本発明では,少なくとも,「・・・前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は,2又は4であり,前記サウンディング参照信号は,一部のリソースブロック中で構成される」との特徴が記載されている。
しかし,このような特徴は,引例1-9に記載も示唆もされていない。その理由は,以下の通りである。
引例5では,周波数領域におけるlegacy SRSのサブキャリア周波数間隔が4であり,また,周波数領域におけるeSRSのサブキャリア周波数間隔が4であるが,周波数領域におけるlegacy SRS及びeSRSのサブキャリア周波数間隔が2である。即ち,引例5では,SRS間のサブキャリア周波数間隔が2である(例えば,図15参照)。よって,引例5は,本発明における「前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は,4である」ことを開示していない。」と主張している。
しかしながら,(相違点3)に関して検討したとおり,「又は」は択一的であることを意味するから,補正後の発明の「前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は,2又は4」であることは,「前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は2」であることを含む。そして,(相違点3)に関して検討したとおり,引用発明1に引用発明3を適用し,サウンディングパイロット(SRS)のリソースが,1サブキャリア間隔を空けて設けられるようにすること(すなわち,サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔を2とすること)は,当業者が容易に想到しうることである。
更に言えば,「(イ)引用発明」の「c 引用発明3」の「(a)」で上述したとおり,引用例5には,リソースマッピングのパターン2では,SRSは,最終シンボルにおいて3サブキャリア間隔を空けてマッピングされることが記載されている。してみると,「前記サウンディング参照信号の周波数領域上でのサブキャリア周波数間隔は,4」とすることについても,引用例5の記載から当業者が容易に想到しうることに過ぎない(サブキャリア周波数間隔(即ち,Comb値)を4とすることは,3サブキャリア間隔空けてリソースを設けることに他ならない)。
したがって,請求人の上記主張を採用することはできない。

また,請求人は審判請求書の「【本願発明が特許されるべき理由】」において,「つまり,引例9は,BWの粒度でのSRS設定,RBサイズの制限などについてのみ開示しているが,SRSがRBの粒度で伝送されるかどうかとは関係がない。言い換えると,引例9では,SRSを伝送するリソースブロックが削減されること,即ち,本発明における「前記サウンディング参照信号は,一部のリソースブロック中で構成される」ことが記載されていない。」と主張している。
しかしながら,「(イ)引用発明」の「e 引用発明5」の「(a)」で検討したとおり,引用例9に「一部のRBではSRSが送信されない」ことが記載されていることは明らかである。そして,請求人の「引例9は,BWの粒度でのSRS設定,RBサイズの制限などについてのみ開示しているが,SRSがRBの粒度で伝送されるかどうかとは関係がない。」との主張には根拠がない。
したがって,請求人の上記主張を採用することはできない。

(3)小括
したがって,平成30年12月21日にされた手続補正(本件補正)は,補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって,本件補正の却下の決定に誤りはない。

第3 本願発明について

1 本願発明
上記のとおり,本件補正の却下の決定に誤りはないから,本願の請求項1に係る発明は,上記「第2 令和1年5月13日付け補正却下の決定について」の項中の「3 当審の判断」の項中の「(1)本件補正の概要」の項中の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は,
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」
というものであり,請求項1について,引用例1,2,5,9が引用されている。

3 引用発明
引用発明1?3,5は,上記「第2 令和1年5月13日付け補正却下の決定について」の項中の「3 当審の判断」の項中の「(2)補正の適否」の項中の「イ 独立特許要件」の項中の「(イ)引用発明」の項で認定したとおりである。

4 対比・判断
そこで,本願発明と引用発明1とを対比するに,本願発明は補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。

そうすると,本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が,上記「第2 令和1年5月13日付け補正却下の決定について」の項中の「3 当審の判断」の項中の「(2)補正の適否」の項中の「イ 独立特許要件」の項中の「(ウ)対比・判断」の項で検討したとおり,引用例1,2,5,9に基づいて容易に発明できたものであるから,本願発明も同様の理由により,容易に発明できたものである。

そして,本願発明の作用効果も,引用例1,2,5,9に基づいて当業者が予測できる範囲のものである。

5 むすび
本願発明は,当業者が引用例1,引用例2,引用例5及び引用例9に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-03-16 
結審通知日 2020-03-17 
審決日 2020-03-30 
出願番号 特願2017-531874(P2017-531874)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 575- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石原 由晴  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 相澤 祐介
山本 章裕
発明の名称 サウンディング参照信号に基づく下りチャネル推定方法、装置及び通信システム  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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