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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q |
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管理番号 | 1362236 |
審判番号 | 不服2019-1727 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-02-06 |
確定日 | 2020-06-02 |
事件の表示 | 特願2015- 57209「抽出装置、抽出方法及び抽出プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月 6日出願公開、特開2016-177536、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年3月20日の出願であって、平成30年5月2日付けで拒絶理由通知がなされ、平成30年7月17日に意見書の提出及び手続補正がなされたが、平成30年10月25日付けで拒絶査定(原査定)がなされ、これに対し、平成31年2月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成30年10月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-11に係る発明は、下記の引用文献1-3に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特表2015-501990号公報 2.田頭 幸浩 外2名、オンライン広告におけるCVR予測モデルの素性評価、第6回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム(第12回日本データベース学会年次大会)[online]、日本、電子情報通信学会データ工学研究専門委員会日本データベース学会情報処理学会データベースシステム研究会、2014年 5月 3日 3.国際公開第01/067319号 第3 本願発明 本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成31年2月6日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1、2は以下のとおりの発明である(なお、下線は、審判請求人が、補正箇所を示すために付与したものである。)。 「【請求項1】 共通した宣伝対象に関する複数の広告コンテンツの入稿を受け付ける受付部と、 広告コンテンツの配信対象であるユーザの属性に基づき分類される複数のユーザ群のいずれか毎に、前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する取得部と、 前記取得部によって取得された指標値と前記複数のユーザ群のいずれかとの相関性に基づいて、前記複数の広告コンテンツの中から、前記複数のユーザ群のいずれかに属するユーザに配信される広告コンテンツを抽出する抽出部と、 を備えたことを特徴とする抽出装置。 【請求項2】 共通した宣伝対象の異なる特徴を示す複数の広告コンテンツの入稿を受け付ける受付部と、 広告コンテンツの配信対象であるユーザの属性に基づき分類されるユーザ群毎に、前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する取得部と、 前記取得部によって取得された指標値と前記ユーザ群との相関性に基づいて、前記複数の広告コンテンツの中から、前記ユーザに配信される広告コンテンツを抽出する抽出部と、 を備えたことを特徴とする抽出装置。」 なお、本願発明3-7は、本願発明1または2を減縮した発明である。 本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 本願発明9は、本願発明1の各部に対応する手順をコンピュータに実行させるプログラムの発明である。 本願発明10は、本願発明2に対応する方法の発明であり、本願発明2とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。 本願発明11は、本願発明2の各部に対応する手順をコンピュータに実行させるプログラムの発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特表2015-501990号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審において付与した。)。 ア.「【0019】 広告パブリッシャ100は、広告主110から広告を受領して記憶し、記憶した広告のうちの何れが異なるコンテンツプロバイダ130のコンテンツと併せて表示するのに最も適しているかを識別し、認識された広告を表示のためにクライアント120に提供する。広告パブリッシャ100は、グラフィカルユーザインタフェースなどの、広告主110に1または複数の広告を含む広告キャンペーンを定義させるインタフェースを提供し、任意で、所与の広告または全ての広告を表示すべきターゲットグループを示す指示とともに提供する。 【0020】 より具体的には、広告パブリッシャ100は、広告データベース101と、統計データベース102と、広告選択モジュール103と、キャンペーン調整モジュール104とを含む。」 イ.「【0044】 キャンペーン調整モジュール104はさらに、図6に示すように、特定のターゲット人口統計層に対して用いるためのキャンペーンの最高の広告を選択するために用いられてもよい。まず、広告パブリッシャ100は広告主110から広告キャンペーンの定義を受信する。広告キャンペーンは、たとえば図2のユーザインタフェース200に指定されているように、複数の広告を含むことができ、ターゲット基準は個別に、または全体的に広告に割り当てられることができる。複数の広告はキャンペーン全体の異なる表示、または異なるメッセージを示すことができ、したがって、多少異なる閲覧者にアピールしてもよい。したがって、関連する所与のターゲットグループに対して、広告のうち異なるものが適切であってもよい。 【0045】 ターゲットグループ(たとえば男性、20歳から30歳までの人など)は、広告主110によって明確に指定されてもよい。あるいは、広告パブリッシャ100は、図4Bおよび図5に関して上述したボトムアップアプローチなどにおいて、自動的に複数の区分を形成するようにしてもよく、これらの区分はそれぞれ、ターゲットグループとして個別に評価されてもよい。 【0046】 何れかの場合において、広告パブリッシャ100は、ターゲットグループのユーザに広告キャンペーンの複数の広告を提供し(620)、ターゲットグループにおける異なる広告に対する広告メトリック値を決定する(630)。広告パブリッシャ100は次いで、ターゲットグループに対して、最も高い広告メトリック値を有する広告などの、広告のメトリック値に基づいて最も効果的である広告(複数可)を識別する(640)。広告パブリッシャは次いで、広告主110に対して、識別された最も効果的である広告(複数可)を、ターゲットグループに対する広告(複数可)として表示し、他の広告をターゲットグループに対して表示する広告から除外する提案を送信する(650)。」 前記ア.イ.によれば、引用文献1には、次の事項が記載されているといえる。 ・前記ア.の「広告パブリッシャ100は、広告データベース101と、統計データベース102と、広告選択モジュール103と、キャンペーン調整モジュール104とを含む。」の記載、前記イ.の「キャンペーン調整モジュール104はさらに、図6に示すように、特定のターゲット人口統計層に対して用いるためのキャンペーンの最高の広告を選択するために用いられてもよい。」の記載によれば、引用文献1には広告パブリッシャ100が記載され、その広告パブリッシャ100は、特定のターゲット人口統計層に対して用いるためのキャンペーンの最高の広告を選択するキャンペーン調整モジュール104を有すること、が記載されているといえる。 ・前記ア.の「広告パブリッシャ100は、グラフィカルユーザインタフェースなどの、広告主110に1または複数の広告を含む広告キャンペーンを定義させるインタフェースを提供し」の記載、前記イ.の「まず、広告パブリッシャ100は広告主110から広告キャンペーンの定義を受信する。広告キャンペーンは、たとえば図2のユーザインタフェース200に指定されているように、複数の広告を含むことができ」の記載によれば、引用文献1には、広告パブリッシャ100において、広告主110に広告キャンペーンを定義させるインタフェース200を提供し、当該ユーザインタフェース200で指定された複数の広告を含む広告キャンペーンの定義を受信すること、が記載されているといえる。 ・前記イ.の「複数の広告はキャンペーン全体の異なる表示、または異なるメッセージを示すことができ」の記載によれば、引用文献1には、前記複数の広告はキャンペーン全体の異なる表示、または異なるメッセージを示すこと、が記載されているといえる。 ・前記イ.の「特定のターゲット人口統計層に対して用いるためのキャンペーンの最高の広告を選択する」及び「ターゲットグループ(たとえば男性、20歳から30歳までの人など)」の記載によれば、引用文献1には、ターゲットグループが、男性、20歳から30歳までの人のような特定の人口統計層のグループであること、が記載されているといえる。 ・前記イ.の「広告パブリッシャ100は、ターゲットグループのユーザに広告キャンペーンの複数の広告を提供し(620)、ターゲットグループにおける異なる広告に対する広告メトリック値を決定する(630)。広告パブリッシャ100は次いで、ターゲットグループに対して、最も高い広告メトリック値を有する広告などの、広告のメトリック値に基づいて最も効果的である広告(複数可)を識別する(640)。広告パブリッシャは次いで、広告主110に対して、識別された最も効果的である広告(複数可)を、ターゲットグループに対する広告(複数可)として表示し、他の広告をターゲットグループに対して表示する広告から除外する提案を送信する(650)。」の記載によれば、引用文献1には、広告パブリッシャ100において、前記(620)から(650)までの動作を行うこと、が記載されているといえる。 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 <引用発明> 「特定のターゲット人口統計層に対して用いるためのキャンペーンの最高の広告を選択するキャンペーン調整モジュール104を有し、 広告主110に広告キャンペーンを定義させるインタフェース200を提供し、当該ユーザインタフェース200で指定された複数の広告を含む広告キャンペーンの定義を受信し、 前記複数の広告は、キャンペーン全体の異なる表示、または異なるメッセージを示し、 特定の人口統計層であるターゲットグループのユーザに、広告キャンペーンの複数の広告を提供し(620)、 ターゲットグループにおける異なる広告に対する広告メトリック値を決定し(630)、 ターゲットグループに対して、最も高い広告メトリック値を有する、最も効果的である広告(複数可)を識別し(640)、 広告主110に対して、識別された最も効果的である広告を、ターゲットグループに対する広告(複数可)として表示し、他の広告をターゲットグループに対して表示する広告から除外する提案を送信する(650)、 広告パブリッシャ100。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(「オンライン広告におけるCVR予測モデルの素性評価」)には、次の事項が記載されている。 ウ.「本稿ではクリック課金型広告の配信ログを用いてCVR予測モデルの素性を評価し、その有用性を検証する.クリック課金型広告とは、広告が配信されたページを閲覧しているユーザーが広告をクリックして広告主の設定したページに移動した場合に、入札額に基づき課金される仕組みである.広告クリック時に課金が行われることから、本稿では広告クリックを経たコンバージョン(post-click conversion) 確率の予測について扱う.」(1ペジ右欄23-30行) エ.「3.2 素性 素性は種類に応じてグループ分けを行った。それぞれのグループの詳細は表2にまとめている。 広告主に紐づく素性としては広告の階層構造情報に加え、画像広告の場合は画像の情報を用いた。広告の階層構造は、広告主、キャンペーン、広告グループ、広告の順に粒度が細かくなる。それぞれのIDを素性として用いた。コンバージョンに至るかどうかは、広告クリック後に遷移するランディングページの影響があると考えられるため、そのURLのIDを用いた。ユーザーに紐づく素性としてはアクセスしたデバイス種別に加えて、可能であれば性別、年代、地域情報、ウェブ上での行動履歴をもとに推定した興味カテゴリを用いた。」(3頁右欄13-26行) オ.表2として、以下の表が記載されている。(3頁右欄) カ.「4. 予測モデル 3章で示したデータセットと素性を用いてCVR予測モデルを構築した.CVR予測モデルとしては、以下の式で表現されるロジスティック回帰モデルを用いた. なお、c ∈ {+1,-1} はコンバージョンしたか否かを表す変数であり、c = +1 の時にコンバージョンしたことを、c = -1 の時にコンバージョンしなかったことを表す.また、p(c = +1 | a,p,u)は広告a、パブリッシャーp、ユーザーu が与えられた時に、コンバージョンする確率を表す.x(a,p,u) はその3つから抽出された素性ベクトルを、w はその素性に対応する重みベクトルを表現している.」(4頁左欄18-29行) 前記ウ.-カ.によれば、引用文献2には、次の事項(引用文献2に記載された技術的事項)が記載されている。 <引用文献2に記載された技術事項> クリック課金型広告の配信ログであるデータセットとユーザーに紐づく素性である性別、年代、地域、デバイス識別、興味カテゴリとを用いて、 の式で表現されるロジスティック回帰モデルでCVR予測モデルを構築すること 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3(国際公開第01/067319号)には、図面とともに次の事項が記載されている。 キ.「情報提供装置30が行う処理は、広告反応履歴記録処理と、広告効果解析処理と、広告対象者層判定処理の3つのモードを有する。広告反応履歴記録処理は、同一商品に対する複数の広告情報の1つを無作為に選択してユーザに送信し、ユーザの商品の詳細情報へのアクセス状況と広告した商品の購入状況を反応履歴として記録する処理である。広告効果解析処理は、得られた反応履歴を集計し、広告情報に反応するユーザの特性を平均化した広告対象者層に関する情報を広告情報毎に求める処理である。広告対象者判定処理は、ユーザのユーザ特性と広告対象者層に関する情報とに基づいて、ユーザを広告対象者層の1つに分類し、ユーザが分類された広告対象者層に対応づけられた広告情報を選択し、ユーザに送信する処理である。」(明細書の27頁14-23行) ク.「ユーザの特性は、ユーザの年齢、性別等のデモグラフィックな属性を表す基本属性、ユーザの趣味、関心事、愛用する商品のブランド等の嗜好を表す嗜好特性、及びユーザの購買行動を決める心理的特性を含む。」(明細書の27頁28行-同28頁3行) 前記キ.及びク.によれば、引用文献3には、次の事項(引用文献3に記載された技術的事項)が記載されている。 <引用文献3に記載された技術的事項> 「同一商品に対する複数の広告情報の1つを無作為に選択してユーザに送信し、ユーザの商品の詳細情報へのアクセス状況と広告した商品の購入状況を反応履歴として記録する広告反応履歴記録処理と、 得られた反応履歴を集計し、広告情報に反応するユーザの特性を平均化した広告対象者層に関する情報を広告情報毎に求める広告効果解析処理と、 ユーザのユーザ特性と広告対象者層に関する情報とに基づいて、ユーザを広告対象者層の1つに分類し、ユーザが分類された広告対象者層に対応づけられた広告情報を選択し、ユーザに送信する広告対象者判定処理とを行い、 前記ユーザの特性は、ユーザの年齢、性別等のデモグラフィックな属性を表す基本属性、ユーザの趣味、関心事、愛用する商品のブランド等の嗜好を表す嗜好特性、及びユーザの購買行動を決める心理的特性を含む、 情報提供装置30。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア.引用発明の「広告パブリッシャ100」は、「ターゲットグループにおける異なる広告に対する広告メトリック値を決定し(630)、ターゲットグループに対して、最も高い広告メトリック値を有する、最も効果的である広告(複数可)を識別し(640)、広告主110に対して、識別された最も効果的である広告を、ターゲットグループに対する広告(複数可)として表示し、他の広告をターゲットグループに対して表示する広告から除外する提案を送信する(650)」ものであり、ここでいう「識別」は、ターゲットグループのユーザに提供された複数の広告の中から、そのターゲットグループに対して最も効果的である広告を抽出することといえる。 したがって、引用発明の「広告パブリッシャ100」は、後述する相違点は別にして、本願発明1の「抽出装置」に相当する。 イ.引用発明の「当該ユーザインタフェース200で指定された複数の広告を含む広告キャンペーンの定義を受信し」に係る手段と、本願発明1の「共通した宣伝対象に関する複数の広告コンテンツの入稿を受け付ける受付部」は、「複数の広告コンテンツの入稿を受け付ける受付部」の点で共通する。 なお、複数の広告コンテンツが、本願発明1では「共通した宣伝対象に関する」ものであるのに対し、引用発明では「キャンペーン全体の異なる表示、または異なるメッセージ」を示すものである点で相違する。 ウ.引用発明は、「特定の人口統計層であるターゲットグループのユーザに、広告キャンペーンの複数の広告を提供し(620)」ているところ、該「特定の人口統計層」はユーザの属性に基づき分類されたものであるといえることから、引用発明の「ターゲットグループ」と本願発明1の「広告コンテンツの配信対象であるユーザの属性に基づき分類される複数のユーザ群」とは、「広告コンテンツの配信対象であるユーザの属性に基づき分類されるユーザ群」の点で共通する。] エ.引用発明の「ターゲットグループにおける異なる広告に対する広告メトリック値」は、そのターゲットグループに複数の広告を提供することで得られ、広告の効果を示すものであることから、本願発明1の「前記複数の広告コンテンツのいずれかを」「配信することで得られる広告効果を示す指標値」に相当する。 オ.上記ウ.及びエ.からみて、引用発明の「ターゲットグループにおける異なる広告に対する広告メトリック値を決定し(630)」に係る手段と、本願発明1の「広告コンテンツの配信対象であるユーザの属性に基づき分類される複数のユーザ群のいずれか毎に、前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する取得部」は、「広告コンテンツの配信対象であるユーザの属性に基づき分類されるユーザ群に、前記複数の広告コンテンツのいずれかを配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する取得部」の点で共通する。 なお、指標値が、本願発明1では、「複数のユーザ群のいずれか毎に」得られるのに対し、引用発明では、ターゲットグループの数が不明であり、「複数のユーザ群のいずれか毎に」得られるものではない点で相違する。また、指標値が、本願発明1では、「広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる」ものであるのに対し、引用発明では、複数のターゲットグループへの総配信数も、指標値が得られるまでの配信数も定められておらず、「広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる」ものではない点で相違する。 カ.引用発明は、「ターゲットグループに対して、最も高い広告メトリック値を有する、最も効果的である広告(複数可)を識別し(640)、広告主110に対して、識別された最も効果的である広告を、ターゲットグループに対する広告(複数可)として表示し、他の広告をターゲットグループに対して表示する広告から除外する提案を送信する(650)」ものであって、広告主110に対して、識別された最も効果的である広告を識別された最も効果的である広告を、ターゲットグループに対する広告(複数可)として表示していることから、引用発明は、最も高い広告メトリック値という取得された指標値に基づいて、複数の広告コンテンツの中から、最も効果的である広告コンテンツを抽出することといえる。 したがって、引用発明の上記識別に係る手段と、本願発明1の「前記取得部によって取得された指標値と前記複数のユーザ群のいずれかとの相関性に基づいて、前記複数の広告コンテンツの中から、前記複数のユーザ群のいずれかに属するユーザに配信される広告コンテンツを抽出する抽出部」は、「前記取得部によって取得された指標値に基づいて、前記複数の広告コンテンツの中から、広告コンテンツを抽出する抽出部」の点で共通する。 なお、抽出される広告コンテンツが、本願発明1では「複数のユーザ群のいずれかに属するユーザに配信される広告コンテンツ」であるのに対し、引用発明では、広告主に対して表示する広告である点で相違する。また、抽出が、本願発明1では「指標値と前記複数のユーザ群のいずれかとの相関性」に基づくものであるのに対し、引用発明では、ターゲットグループに対して、最も高い指標値(広告メトリック値)を有するものを抽出するものであり、「指標値と前記複数のユーザ群のいずれかとの相関性」に基づくものではない点で相違する。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 <一致点> 「 複数の広告コンテンツの入稿を受け付ける受付部と、 広告コンテンツの配信対象であるユーザの属性に基づき分類されるユーザ群に、前記複数の広告コンテンツのいずれかを配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する取得部と、 前記取得部によって取得された指標値に基づいて、前記複数の広告コンテンツの中から、広告コンテンツを抽出する抽出部と、 を備えたことを特徴とする抽出装置。」 <相違点1> 複数の広告コンテンツが、本願発明1では「共通した宣伝対象に関する」ものであるのに対し、引用発明では「キャンペーン全体の異なる表示、または異なるメッセージ」である点。 <相違点2> 取得部によって取得される指標値が、本願発明1では「複数のユーザ群」の「いずれか毎」に得られるのに対し、引用発明では、ターゲットグループの数が不明であり、「複数のユーザ群」の「いずれか毎」に得られるか不明な点。 <相違点3> 取得部によって取得される指標値が、本願発明1では「広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる」ものであるのに対し、引用発明では、複数のターゲットグループへの総配信数も、指標値が得られるまでの配信数も定められておらず、「広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる」ものではない点。 <相違点4> 抽出部において抽出される広告コンテンツが、本願発明1では「複数のユーザ群のいずれかに属するユーザに配信される広告コンテンツ」であるのに対し、引用発明では、広告主に対して表示する広告である点で相違し、また、抽出が、本願発明1では「指標値と前記複数のユーザ群のいずれかとの相関性」に基づくものであるのに対し、引用発明では、ターゲットグループに対して最も高い指標値(広告メトリック値)を有するものを抽出するものであり、「指標値と前記複数のユーザ群のいずれかとの相関性」に基づくものではない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3について、以下、検討する。 上記相違点3について検討すると、指標値に相当する引用発明の広告メトリック値を、「複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる」ものとすることは、引用文献2及び引用文献3に記載も示唆もされておらず、また、本願出願前において周知技術であるともいえない。 そして、本願発明1が、取得部によって取得される指標値を「広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる」ものとする、すなわち、指標値を取得するまでに、「広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで、「従来技術では、訴求効果の高いコンテンツをより多くのユーザに配信することは困難であった。具体的には、従来の技術では、ターゲットとするユーザ群を絞り込んで広告コンテンツを配信するため、広告コンテンツを配信する数が低下する場合がある。すなわち、広告効果の高い広告コンテンツを配信することと、広告主から求められる配信数を達成することとの両立ができなくなるおそれがある。」との発明が解決しようとする課題を解決し、「訴求効果の高いコンテンツをより多くのユーザに配信することができる抽出装置、抽出方法及び抽出プログラムを提供すること」との目的を達成し、「訴求効果の高いコンテンツをより多くのユーザに配信することができる」との発明の効果を奏していると認められる。 したがって、本願発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、引用発明、及び、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-11について 本願発明2は、上記相違点3に係る本願発明1の「前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する」の構成を備えるものである。 本願発明3-7は、本願発明1又は2を減縮した発明であるから、上記相違点3に係る本願発明1の「前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する」の構成を備えるものである。 本願発明8は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する」に対応する構成を備えるものである。 本願発明9は、本願発明1に対応するプログラムの発明であり、本願発明1の「前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する」に対応する構成を備えるものである。 本願発明10は、本願発明2に対応する方法の発明であり、本願発明1の「前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する」に対応する構成を備えるものである。 本願発明11は、本願発明2に対応するプログラムの発明であり、本願発明1の「前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する」に対応する構成を備えるものである。 したがって、本願発明2-11も、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び、引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。 第6 原査定について 審判請求時の補正により、本願発明1-11は「前記複数の広告コンテンツのいずれかを広告コンテンツの総配信数のうち、所定の割合以上まで配信することで得られる広告効果を示す指標値を取得する」という構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-3に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。 したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-05-14 |
出願番号 | 特願2015-57209(P2015-57209) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06Q)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松野 広一 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
松田 直也 佐藤 聡史 |
発明の名称 | 抽出装置、抽出方法及び抽出プログラム |
代理人 | 特許業務法人酒井国際特許事務所 |