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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1362306
異議申立番号 異議2019-700318  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-23 
確定日 2020-03-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6411924号発明「ミルクオリゴ糖錠剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6411924号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第6411924号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6411924号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成27年3月17日に出願され、平成30年10月5日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月24日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議の申立ての手続の経緯は、次のとおりである。

平成31年4月24日 : 特許異議申立人 田中志帆による特許異議の 申立て
令和1年6月21日付け : 審尋
令和1年8月15日 : 特許権者による回答書の提出
令和1年10月29日付け: 取消理由通知
令和1年12年25日 : 特許権者による意見書の提出及び訂正の請求
なお、令和2年1月7日付けで、特許異議申立人に対して、期間を指定して訂正の請求につき意見を述べる機会を与えたが、何ら応答はなかった。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
令和1年12月25日付けの訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という)の内容は、以下のとおりである。
・訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「錠剤。」と記載されているのを、「錠剤(但し、該錠剤はチュアブル錠ではない)。」と訂正する。
なお、本件訂正前の請求項1?5は、請求項2?5が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項1?5について請求するものである。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、「(但し、該錠剤はチュアブル錠ではない)」との記載に追加することにより、本件訂正前の「錠剤」という発明特定事項を限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
また、本件特許明細書の段落【0018】には、「本発明の錠剤はチュアブル錠ではない」との記載があるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。

(3)小括
上記のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。

3.本件訂正後の発明
本件訂正後の請求項1?5に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(以下、請求項順に「本件発明1」、「本件発明2」等といい、また、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)。

「【請求項1】 ラクチュロースを80質量%以上含有するミルクオリゴ糖60?97質量%、結晶セルロース1?38質量%、還元麦芽糖1?38質量%、及び滑沢剤0.5?5.0質量%を含有する錠剤(但し、該錠剤はチュアブル錠ではない)。
【請求項2】 ラクチュロースを90質量%以上含有するミルクオリゴ糖の含有量が65?95質量%である、請求項1記載の錠剤。
【請求項3】 結晶セルロースと還元麦芽糖の含有比率が、質量比で1:5?5:1である、請求項1又は2記載の錠剤。
【請求項4】 1錠あたりの質量が100?400mgである、請求項1?3のいずれか1項記載の錠剤。
【請求項5】 硬度6kgf以上である、請求項1?4のいずれか1項記載の錠剤。」

4.取消理由通知に記載した取消理由について
令和1年10月29日付けで通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。

本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、以下の甲1及び甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
甲1:特開2001-8666号公報
甲2:国際公開97/09037号

5.当審の判断
当審は、上記4.の取消理由について、以下のとおり判断する。
(1)甲号証に記載された事項
(1-1)甲1に記載された事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)
「【請求項1】オリゴ糖10?80重量%、発泡剤成分0.3?10重量%及び中和剤成分0.9?30重量%を含有し、発泡性チュアブル錠形態を有することを特徴とするオリゴ糖補給組成物。
【請求項2】更に安定剤として炭酸カリウムを0.1?5重量%含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】更に水不溶性食物繊維を5?20重量%含有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】オリゴ糖がラクトスクロースである請求項1?3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】オリゴ糖含量が30?75重量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】オリゴ糖がラクトスクロース、パラチノースオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ガラクトオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、キチンオリゴ糖、大豆オリゴ糖、パノース、セロオリゴ糖、ペクチンオリゴ糖、イヌロオリゴ糖、レバンオリゴ糖、マンノオリゴ糖、キトオリゴ糖及びカップリングシュガーからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】オリゴ糖がラクトスクロース、パラチノースオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクチュロース、ガラクトオリゴ糖及び大豆オリゴ糖からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】発泡剤成分が、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項9】中和剤成分が、クエン酸、L-酒石酸、L-アスコルビン酸及びDL-リンゴ酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項10】中和剤成分が、L-アスコルビン酸及び無水クエン酸からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項11】水不溶性食物繊維が結晶セルロース、小麦ふすま、オーツブラン、コーンファイバー、大豆食物繊維及びビートファイバーからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の組成物。
【請求項12】水不溶性食物繊維が結晶セルロースである請求項1に記載の組成物。」

(イ)
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はオリゴ糖補給組成物、より詳しくはオリゴ糖を高含有量で含有し、食感、安定性の改善された、発泡性チュアブル錠形態のオリゴ糖補給組成物に関する。」

(ウ)
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来公知のオリゴ糖含有製剤に代わって、特に実用性が高く、製剤的にも均一で、食感にも優れており、更に製剤安定性や摂取服用性も良好な、改良されたオリゴ糖補給製剤を提供することにある。
【0007】本発明者らは、上記目的より鋭意研究を重ねた結果、製剤を発泡性チュアブル錠形態とすることによって、その摂取、服用時に口中での崩壊性・溶解性が良好となり、これによって噛み砕く際に歯に製剤が付着する欠点が抑えられ、かくして、食感低下を感じさせず、水なしでなめたり、噛んだりしながら味覚を楽しめる改良されたオリゴ糖補給製剤が提供できるという事実を見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。」

(エ)
「【0021】ラクチュロース含有製剤は、乳糖を異性化して得られ、主成分とするラクチュロースを97重量%以上含有し、他の成分としてガラクトース等を含んでいる。
【0022】略
【0023】略
【0024】上記オリゴ糖は、本発明組成物中に10?80重量%、好ましくは30?75重量%の範囲で含有させるのがよい。これが10重量%を下回る場合、チュアブル錠1粒に占めるオリゴ糖の割合が少なくなりすぎ、例えばビフィズス菌増殖効果等のオリゴ糖本来の効果を発揮することが困難となり、商品価値を失う不利がある。逆に80重量%を越えてあまりに多量に含ませる場合、該オリゴ糖以外の成分の含量がそれだけ低下し、例えば発泡剤成分及び中和剤成分の含量低下は、所望の発泡性を期待できず、得られるチュアブル錠の食感改善効果が望めなくなる不利がある。」

(オ)
「【0036】
【実施例】以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。尚、各例中部及び%は特記しない限り重量部及び重量%を示す。
【0037】
【実施例1?21】攪拌混合機(三井ヘンシェルミキサーFM20C/l,三井鉱山製)にオリゴ糖、その他の糖類及び水不溶性食物繊維を下記表1?表4に記載の所定量で添加して混合し、結合液(水+エタノール)を上記混合物に対して数%添加し湿式造粒を行なった。
【0038】次いで、得られた造粒物を箱型真空乾燥機(TABAI ESPEC CORP製)を用いて真空乾燥後、16号篩を通過した顆粒に、中和剤成分、発泡剤成分、粉末果汁、香料、炭酸カリウム及び香料の所定量と共に滑沢剤としての蔗糖脂肪酸エステルの所定量を添加し、混合した。混合物をロータリー式打錠機で(RT-S20-25K-A,菊水製作所製)を用いて打錠して、チュアブル発泡錠形態の本発明オリゴ糖補給組成物を調製した。」

(カ)
「【0040】【表2】

【0042】【表4】



(1-2)甲2に記載された事項
甲2には、以下の事項が記載されている。
(キ)
「技術分野
本発明は、低圧打錠発泡製剤に関する。
従来の技術
発泡錠剤の製造には、打錠機が使用されるが、錠剤成分の種類によっては、また該成分が多種類となる場合には、市場流通に堪えられる適当な錠剤硬度を得るために、打錠を高圧で行わなければならない場合がある。しかるに、打錠圧が高くなると、打錠機にかかる過負荷により機器の耐久性が問題となる。また、錠剤にバインディング、キャッピング、スティッキング等の打錠障害を招き、製造ラインに障害を与える危険も多くなる。」(1ページ3?13行)

(ク)
「本発明者らは、鋭意研究の結果、発泡製剤にマルチトール、ソルビトール、マルトース、トレハロース、マンニトール及びキシリトールから選ばれる少なくとも一種の特定量を用いることにより、上記目的が達成されることを見出だし、ここに本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、発泡製剤において、炭酸水素ナトリウム及び(又は)炭酸ナトリウム10?35%(重量%、以下同じ)、中和剤10?70%及びマルチトール、ソルビトール、マルトース、トレハロース、マンニトール、ラクチトール及びキシリトールから選ばれる少なくとも一種を0.02?40%含有させたことを特徴とする低圧打錠発泡製剤、殊にマルチトールを用いた上記低圧打錠発泡製剤に係わる。」(1ページ21行?2ページ12行)

(ケ)
「本発明においては、上記特定成分を利用したことに基づいて、より低い打錠圧で錠剤硬度がより硬く、溶解時間のより短い、錠剤物性の優れた所望の発泡錠剤を得ることができる。また、上記特定成分の添加配合量を特定範囲内で適宜加減することによって、打錠機にとって最適の打錠条件を容易に設定でき、よりスムーズな打錠を実現でき、打錠障害(バインディング、キャッピング、スティッキング)を起こすリスクも低減できる。
以下、本発明製剤につき詳述すれば、該製剤において利用される必須構成成分は、マルチトール、ソルビトール、マルトース、トレハロース、マンニトール、ラクチトール及びキシリトールから選ばれる。これらは、通常発泡錠剤の賦形剤に要求される要件、即ち(1)水に溶けやすいこと、(2)味がよいこと、(3)取り扱いが容易(流動性がよく、吸湿性が小さい)であること等を満たしており、そのうえに上記の通り優れた打錠物性を付与できる特徴を有している。
上記特定成分は、通常賦形剤として慣用される精製白糖にその全部又は一部を置き換えて利用することができる。従って、その添加配合量は、賦形剤の通常用いられる範囲から適宜選択できる。特に本発明所期の低圧打錠を行うためには、少なくとも0.02%の添加配合が必要であり、一般には、約0.5?20%の範囲から選ばれるのが好ましい。」(3ページ8行?4ページ11行)

(2)甲1に記載された発明
甲1の記載事項(ア)、(エ)、(オ)及び(カ)の実施例19を踏まえると、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。
「ラクチュロースを97.5重量%(78/80*100)含有するオリゴ糖製剤80質量%、中和剤成分として、無水クエン酸を0.9質量%、発泡剤成分として、炭酸水素ナトリウムを0.3質量%、結晶セルロース19質量%を含有する発泡性チュアブル錠形態のオリゴ糖補給組成物。」(以下「甲1発明1」という。)

また、甲1の記載事項(ア)、(エ)、(オ)及び(カ)の実施例7を踏まえると、甲1には、以下の発明が記載されていると認める。
「ラクチュロースを97重量%(58/60*100)含有するオリゴ糖製剤60質量%、中和剤成分として、L-アスコルビン酸を3質量%、無水クエン酸を1質量%、発泡剤成分として、炭酸水素ナトリウムを1質量%、滑沢剤として、蔗糖脂肪酸エステルを1質量%、粉糖15質量%、結晶セルロース14質量%を含有する発泡性チュアブル錠形態のオリゴ糖補給組成物。」(以下「甲1発明2」という。)

(3)本件発明1について
(3-1)甲1発明1との対比
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0002】【0012】等の記載及び甲1の記載事項(エ)を参酌すると、甲1発明1における「オリゴ糖製剤」は、本件発明1における「ミルクオリゴ糖」に相当するものと認められ、本件発明1と甲1発明1の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「ラクチュロースを80質量%以上含有するミルクオリゴ糖60?97質量%及び結晶セルロース1?38質量%を含有する錠剤。」

<相違点1>
本件発明1では、還元麦芽糖1?38質量%を含有するのに対し、甲1発明1では、そのような特定がない点。
<相違点2>
本件発明1では、滑沢剤0.5?5.0質量%を含有するのに対し、甲1発明1では、そのような特定がない点。
<相違点3>
錠剤の形態に関し、本件発明1では、チュアブル錠ではないとされているのに対し、甲1発明1では、「発泡性チュアブル錠」である点。

(3-2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3から判断する。
・相違点3について
甲1発明1は、上記のような組成を有する「発泡性チュアブル錠形態のオリゴ糖補給組成物」である。
そして、甲1の記載事項(イ)(ウ)によれば、甲1発明1の技術的意義は、改良されたオリゴ糖補給製剤を提供することであり、具体的には、製剤を発泡性チュアブル錠形態とすることによって、その摂取、服用時に口中での崩壊性・溶解性が良好となり、これによって噛み砕く際に歯に製剤が付着する欠点が抑えられ、かくして、食感低下を感じさせず、水なしでなめたり、噛んだりしながら味覚を楽しめるようにしたというものである。
そうしてみると、甲1発明1における「発泡性チュアブル錠」という形態は、課題解決の観点から採用した必須の発明特定事項というものであって、同発明においてこれ以外の製剤の形態とすることには、阻害要因があると言わざるを得ない。
この阻害要因の点は、発泡錠剤において、より低い打錠圧で錠剤硬度を向上させ、打錠障害(バインディング、キャッピング、スティッキング)のリスク低減等の技術について開示された甲2の記載を参酌しても、変わらない。
よって、上記相違点3は、実質的な相違点であり、かつ、「発泡性チュアブル錠」以外の形態とすることは、甲2の記載を参酌しても、当業者が容易に想到しうることとはいえない。

(3-3)甲1発明2との対比
本件特許の発明の詳細な説明の段落【0002】【0012】等の記載及び甲1の記載事項(エ)を参酌すると、甲1発明2における「オリゴ糖製剤」は、本件発明1における「ミルクオリゴ糖」に相当するものと認められ、本件発明1と甲1発明2の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

<一致点>
「ラクチュロースを80質量%以上含有するミルクオリゴ糖60?97質量%、結晶セルロース1?38質量%、及び滑沢剤0.5?5.0質量%を含有する錠剤。」

<相違点1’>
本件特許発明1では、還元麦芽糖1?38質量%を含有するのに対し、甲1発明では、そのような特定がない点。
<相違点2’>
錠剤の形態に関し、本件発明1では、チュアブル錠ではないとされているのに対し、甲1発明2では、「発泡性チュアブル錠」である点。

(3-4)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2’から判断する。
・相違点2’について
相違点2’は、本件発明1と甲1発明1との対比における「相違点3」に相当する。
そして、この相違点が、実質的な相違点であり、かつ、甲1発明2において「発泡性チュアブル錠」以外の形態とすることは、甲2の記載を参酌しても、当業者が容易に想到しうるとはいえないことは、上記(3-2)における説示と同様である。

(3-5)小括
以上のとおりであるから、上記(3-2)又は(3-4)で検討した相違点以外の相違点及び本件発明1の効果について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明2?5について
本件発明2?5は、いずれも本件発明1の発明特定事項をさらに限定するものである。
そして、上記(3)のとおり、本件発明1が甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、本件発明1の発明特定事項をさらに限定する本件発明2?5についても、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、進歩性が否定されることはない。

6.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由通知において採用しなかった取消理由
特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下の(ア)及び(イ)の点で、訂正前の特許請求の範囲の請求項1?5に係る発明によって発明の課題が解決できることを、発明の詳細な説明の記載から当業者が理解できるとはいえず、訂正前の特許請求の範囲の請求項1?5の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨主張している。
(ア)請求項1に係る発明の課題は、以下の3つである。
a)ミルクオリゴ糖を高含有させること
b)ミルクオリゴ糖錠剤を小型で飲みやすくすること
c)良好な打錠性・硬度を有することにより製造及び保存を容易にすること
しかしながら、上記課題b)及びc)については、請求項1に係る発明により解決されることが認識できない。

・課題b)について
本件明細書の発明の詳細な説明に記載される飲みやすさの評価については、評価基準が不明であり、また、評価者の主観によるものであり、客観性がない。また、4名の評価者による評価のうち、最も多かった評価を評価結果として採用することは不適切である。
よって、本件明細書に記載された飲みやすさの評価は、客観性及び信頼性を有するものではなく、本件明細書の記載から、当業者は、請求項1?5に係る発明によって課題b)が解決されることを認識できない。

・課題c)について
本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0022】には、打錠時の障害の評価に関し、「試験例1(実施例1?5及び比較例1?9) ミルクオリゴ糖(「ミルクオリゴ糖」;森永乳業製)、還元麦芽糖粉末(「アマルティ」;三菱商事フードテック製)、結晶セルロース(「セオラス」;旭化成ケミカルズ製)、滑沢剤(「ステアリン酸カルシウム」;太平化学産業製)、デキストリン(松谷化学工業製)及び馬鈴薯澱粉(松谷化学工業製)を表1?2記載の量でミキサーに投入して、5分間混合した。この混合物をロータリー式打錠機に投入し、打錠圧2000kgfで打錠し、直径8mm、1粒当たり260mgの錠剤を製造した。打錠時の障害(スティッキング、キャッピング)の有無を、[◎:障害なし、〇:わずかに障害あり、×:障害あり]の3段階で評価した。」との記載がある。
しかしながら、上記の評価については、評価基準が不明であり、評価者及び評価に用いた装置も記載されていない。
よって、本件明細書に記載された打錠時の障害に関する評価結果は、客観性及び信頼性を有するものではなく、本件明細書の記載から、当業者は、請求項1?5に係る発明によって課題c)が解決されることを認識できない。

(イ)請求項1に記載される「滑沢剤」については、明細書に定義がないので、滑沢作用を有する化合物及び滑沢作用を錠剤にもたらすために用いられる化合物の全てがこれに包含されると解釈するのが妥当である。
しかしながら、実施例において滑沢剤として用いられているのは、「ステアリン酸カルシウム」のみであるところ、滑沢剤はその種類に応じて滑沢作用が異なることは技術常識であり、「ステアリン酸カルシウム」以外の他のあらゆる滑沢剤を用いた場合においても、「ステアリン酸カルシウム」を用いた場合と同程度の効果が得られるとは当業者は考えない。
したがって、請求項1?5に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。

(2)当審の判断
(2-1)本件明細書の記載
(本1)「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ミルクオリゴ糖を高含有しながら、小型で飲みやすく、かつ良好な打錠性や硬度を有していて製造や保存が容易なミルクオリゴ糖錠剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】 本発明者らは、種々検討した結果、ミルクオリゴ糖に、結晶セルロース、還元麦芽糖及び滑沢剤を所定量配合し、これを打錠することで、上記課題を達成する錠剤を製造することができることを見出した。
【0009】 したがって本発明は、ミルクオリゴ糖60?97質量%、結晶セルロース1?38質量%、還元麦芽糖1?38質量%、及び滑沢剤0.5?5.0質量%を含有する錠剤を提供する。」

(本2)「【発明の効果】
【0010】
本発明の錠剤は、ミルクオリゴ糖を高濃度で含有しているにもかかわらず、打錠性が良く錠剤硬度も高いため、製造が容易であり、かつ輸送や保存中に欠けや割れなどの破損が起こりにくい。また、本発明の錠剤は、打錠性や硬度が良好なため、小型に成形することができる。したがって、本発明の錠剤は、小型で飲みやすく、かつこれを少数飲むだけで、腸内環境改善や体質改善に必要な有効量のミルクオリゴ糖を摂取することができる。本発明によれば、有効量のミルクオリゴ糖を容易に摂取することが可能になる。」

(本3)「【0011】
本発明は、ミルクオリゴ糖60?97質量%、結晶セルロース1?38質量%、還元麦芽糖1?38質量%、及び滑沢剤0.5?5.0質量%を含有する錠剤を提供する。
【0013】
本発明の錠剤におけるミルクオリゴ糖の含有量は、60?97質量%、好ましくは65?95質量%、より好ましくは67?85質量%である。錠剤中のミルクオリゴ糖の含有量が60質量%未満の場合、有効量のミルクオリゴ糖を摂取するためには錠剤の大型化又は多数の錠剤の摂取が必要となるため、相対的に飲みにくい設計になる。一方、ミルクオリゴ糖の含有量が97質量%を超えた錠剤は、成形性や硬度が低下するため、製造が困難であり、かつ欠けや割れなどの破損を起こしやすくなる。
【0015】
本発明の錠剤はまた、結晶セルロース及び還元麦芽糖を含有する。当該結晶セルロース及び還元麦芽糖は、食品や製剤の製造に使用できるものであればよく、市販品を使用してもよい。本発明の錠剤中における結晶セルロースの含有量は、1?38質量%、好ましくは3?22質量%、より好ましくは3?17質量%である。本発明の錠剤中における還元麦芽糖の含有量は、1?38質量%、好ましくは5?27質量%、より好ましくは10?22質量%である。また、本発明の錠剤中における結晶セルロース及び還元麦芽糖の合計量は、2?39.5質量%、好ましくは2?32質量%、より好ましくは4?27質量%である。本発明の錠剤における結晶セルロースと還元麦芽糖の含有比率(質量比)は、好ましくは1:5?5:1程度、より好ましくは1:5?3:1程度である。
【0016】
本発明の錠剤中における還元麦芽糖の含有量が少ないと、錠剤の打錠性が低下し、製造過程でスティッキングやキャッピングなどの障害が発生しやすくなる。また錠剤中における結晶セルロースの含有比率が高い場合も、スティッキングが発生しやすくなる。結晶セルロースの含有量が少ない場合は、錠剤の硬度が低下する。一方、錠剤中における結晶セルロース又は還元麦芽糖の含有量が高くなると、相対的にミルクオリゴ糖の配合量が低下するため、有効量のミルクオリゴ糖を摂取するためには錠剤の大型化又は多数の錠剤の摂取が必要となって、飲みにくい設計になる。
【0017】
さらに、本発明の錠剤は滑沢剤を含有する。当該滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク及びシリカヒドロゲルなどの、錠剤に通常使用される滑沢剤が挙げられる。本発明の錠剤中における滑沢剤の含有量は、0.5?5.0質量%、好ましくは0.5?3.0質量%である。錠剤中における滑沢剤の含有量が0.5質量%未満であると、製造過程でスティッキングやキャッピングなどの障害が発生しやすくなる。一方、錠剤中における滑沢剤の含有量が5.0質量%よりも多くなると、錠剤の成形性が悪くなり、十分な錠剤硬度が得られない。」

(本4)「【0014】
所望される1日あたりのミルクオリゴ糖摂取量、及び飲みやすい錠剤の大きさや摂取数を考慮して、錠剤中のミルクオリゴ糖の含有量を決定することができる。例えば、ミルクオリゴ糖の1日摂取量を1gに設定した場合、錠剤の大きさを300mg、1日の摂取数を4錠とし、1錠中のミルクオリゴ糖含有量を250mg(約83質量%)にすることができる。
【0021】
飲みやすさを考慮すると、本発明の錠剤の1日あたりの摂取数は、250mg以上の錠剤であれば、好ましくは4錠以下、より好ましくは3錠以下である。したがって、本発明の錠剤は、大きさ250?300mgの錠剤3?4錠中に、所望される1日あたりのミルクオリゴ糖摂取量(例えば、650mg以上)を含有するように構築されることが好ましい。ただし、本発明の錠剤の用量はこれに限定されない。例えば、本発明の錠剤を250mg未満の小型の錠剤にすれば、1日あたりの摂取数が5錠以上であっても飲みやすさを維持することができる。」

(本5)「【実施例】
【0022】
試験例1
(実施例1?5及び比較例1?9)
ミルクオリゴ糖(「ミルクオリゴ糖」;森永乳業製)、還元麦芽糖粉末(「アマルティ」;三菱商事フードテック製)、結晶セルロース(「セオラス」;旭化成ケミカルズ製)、滑沢剤(「ステアリン酸カルシウム」;太平化学産業製)、デキストリン(松谷化学工業製)及び馬鈴薯澱粉(松谷化学工業製)を表1?2記載の量でミキサーに投入して、5分間混合した。この混合物をロータリー式打錠機に投入し、打錠圧2000kgfで打錠し、直径8mm、1粒当たり260mgの錠剤を製造した。打錠時の障害(スティッキング、キャッピング)の有無を、[◎:障害なし、〇:わずかに障害あり、×:障害あり]の3段階で評価した。その結果を表1に示す。
【0023】
(錠剤硬度の評価)
得られた各錠剤の硬度は、無作為に抽出した10錠の錠剤の直径方向における破壊強度を錠剤硬度計(フロイント産業製)で測定し、その平均値を求めることにより算出した。また、上記平均値から、錠剤硬度を[◎:6.5kgf以上、〇:6.0?6.5kgf未満、×:6.0kgf未満]の3段階で評価した。
【0024】
(飲みやすさの評価)
各錠剤について、ミルクオリゴ糖摂取量が650mg以上となる粒数を求め、1回摂取数とした。当該1回摂取数の各錠剤を一度にぬるま湯100mLとともに摂取したときの飲みやすさを、4名の評価者により[◎:障害なし、〇:わずかに引っかかる感じがする、×:引っかかりがある]の3段階で評価し、最も多かった評点を飲みやすさの評価結果として採用した。
【0025】
評価結果を表1?2に示す。結晶セルロース、還元麦芽糖及び滑沢剤を全て含む実施例1?5では、いずれも錠剤の製造は概ね良好であり、得られた錠剤の硬度も6.5kgf以上と良好であった。一方、結晶セルロース、還元麦芽糖及び滑沢剤のいずれかを含まない比較例1?7では、打錠障害が発生するか、又は得られた錠剤の硬度が低かった。特に馬鈴薯澱粉を用いた比較例4や、滑沢剤を用いない比較例7では、打錠中に障害が多発し、錠剤の製造が困難であった。ミルクオリゴ糖の含有量が高すぎる場合(比較例8)も、打錠中に障害が多発し、錠剤の製造が困難であった。また、ミルクオリゴ糖の含有量が低く、結晶セルロース及び還元麦芽糖の配合量が高い場合(比較例9)は、錠剤硬度がやや低くなることに加え、必要量のミルクオリゴ糖の摂取のために飲むべき錠剤の粒数が増えるため、飲みやすさが低下した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
【表3】



(2-2)上記(ア)の取消理由について
・課題b)に関して
ミルクオリゴ糖を高含有しながら、小型で飲みやすい錠剤を提供することが、本件発明の課題の一つである(上記(本1)、(本2))。
そして、上記(本4)によれば、錠剤の飲みやすさは、その大きさ及び摂取量(錠数)によることが窺え、「飲みやすさを考慮すると、本発明の錠剤の1日あたりの摂取数は、250mg以上の錠剤であれば、好ましくは4錠以下、より好ましくは3錠以下である」ことが記載されている。
また、実施例では、飲みやすさの評価について、「1回摂取数の各錠剤を一度にぬるま湯100mLとともに摂取したときの飲みやすさを、4名の評価者により[◎:障害なし、○:わずかに引っかかる感じがする、×:引っかかりがある]の3段階で評価し、多かった評点を飲みやすさの評価結果として採用した。」ことが記載され、実際、直径8mm、1粒当たり260mgの錠剤を摂取させたところ、1回当たりの摂取量が3錠、4錠及び5錠の場合の飲みやすさは、それぞれ◎、○及び×と評価されている(上記(本5))。
そうしてみると、実施例における飲みやすさの評価結果は、(本4)における上記記載(「飲みやすさを考慮すると、本発明の錠剤の1日あたりの摂取数は、250mg以上の錠剤であれば、好ましくは4錠以下、より好ましくは3錠以下である」)と齟齬するものではなく、また、同じ大きさの錠剤であれば、摂取量が少ないほど飲みやすさが向上することは技術常識であることを踏まえると、本件発明により上記課題b)が解決できることは、当業者であれば認識しうることである。
特許異議申立人によるサポート要件違反の取消理由の主張は、飲みやすさの評価が客観性及び信頼性を有するものではないことを根拠とするものであるが、上記のとおり、実施例における飲みやすさの評価結果は、明細書の記載と齟齬がなく、技術常識にもかなうものであるといえるから、採用できない。

・課題c)について
ミルクオリゴ糖を高含有しながら、良好な打錠性を有しているミルクオリゴ糖錠剤を提供することが、本件発明の課題の一つである(上記(本1)、(本2))。
(本3)によれば、打錠性と各成分の含有量の関係については、以下のことが理解できる。
・ミルクオリゴ糖の含有量が97質量%を超えた錠剤は、成形性が低下すること
・錠剤中の還元麦芽糖の含有量は、1?38質量%、好ましくは5?27質量%、より好ましくは10?22質量%であるところ、還元麦芽糖の含有量が少ない(1質量%未満)と、錠剤の打錠性が低下し、製造過程でスティッキングやキャッピングなどの障害が発生しやすくなること
・錠剤中の結晶セルロースの含有量は、1?38質量%、好ましくは3?22質量%、より好ましくは3?17質量%であるところ、結晶セルロースの含有比率が高い場合(38質量%超)も、スティッキングが発生しやすくなること
・錠剤中の滑沢剤の含有量は、0.5?5.0質量%、好ましくは0.5?3.0質量%であるところ、滑沢剤の含有量が0.5質量%未満であると、製造過程でスティッキングやキャッピングなどの障害が発生しやすくなり、また、滑沢剤の含有量が5.0質量%よりも多くなると、錠剤の成形性が悪くなること
ここで、実施例では、「打錠時の障害(スティッキング、キャッピング)の有無を、[◎:障害なし、〇:わずかに障害あり、×:障害あり]の3段階で評価した。」ことが記載されている。そして、キャッピング及びスティッキングの評価がいずれも◎又は○である、実施例1-5(表1)及び製造例1-7では、ミルクオリゴ糖、還元麦芽糖、結晶セルロース及び滑沢剤の含有量のいずれもが、本件発明の発明特定事項を充足し、打錠障害が発生しうる量とはなっていないのに対し、比較例1-9(表2)では、ミルクオリゴ糖、還元麦芽糖、結晶セルロース及び滑沢剤の含有量の少なくとも一つは、本件発明の発明特定事項を充足せず、特に、キャッピング及びスティッキングの評価の少なくとも一方が×である比較例1,4,6,7,8では、以下のとおり、錠剤中の成分の含有量が打錠性の観点から好ましくないものとなっている。
比較例1,4,6:還元麦芽糖の含有量が0質量%
比較例7:滑沢剤の含有量が0質量%
比較例8:ミルクオリゴ糖の含有量が98質量%、還元麦芽糖の含有量が 0.5質量%
そうしてみると、実施例における打錠性の評価結果は、(本3)から把握される、上記打錠性と各成分の含有量の関係と齟齬するものではない。

また、実施例における打錠時の障害(スティッキング、キャッピング)の有無の評価、[◎:障害なし、〇:わずかに障害あり、×:障害あり]については、「障害」の明示的な定義はなく、さらに「○:わずかに障害あり」と「×:障害あり」の差異も必ずしも明確とはいえないが、「◎:障害なし」との評価は、その字句からみて、打錠時の障害(スティッキング、キャッピング)の発生が認められなかった場合であると解するのが自然である。
そして、表1及び3によれば、大半の実施例(実施例2?5)及び製造例(製造例1?5)において、評価が「◎」であったこと、すなわち、打錠時の障害(スティッキング、キャッピング)の発生が認められなかったことが窺える。

以上の点を総合すると、「○:わずかに障害あり」と「×:障害あり」の差異の不明確さの問題はさておき、本件発明の発明特定事項を充足することによって、上記課題c)が解決できることは、当業者であれば認識しうることである。

なお、特許異議申立人による、打錠時の障害に関する評価結果が客観性及び信頼性を有するものではないことを根拠とする、サポート要件違反の取消理由の主張は、上で説示したとおり、採用できない。

(2-3)上記(イ)の取消理由について
上記(本3)の【0017】によれば、本件発明における滑沢剤については、
・ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸カルシウム、二酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、タルク及びシリカヒドロゲルなどの、錠剤に通常使用されるものが用いうること
・錠剤中の含有量は、0.5?5.0質量%、好ましくは0.5?3.0質量%であるところ、含有量が0.5質量%未満であると、製造過程でスティッキングやキャッピングなどの障害が発生しやすくなり、また、含有量が5.0質量%よりも多くなると、錠剤の成形性が悪くなること
がわかる。
また、実施例では、滑沢剤として、ステアリン酸カルシウムが用いられ、これを全く添加しなかった場合(比較例7)には、これ以外の成分の含有量は、本件発明の発明特定事項を充足しているにもかかわらず、スティッキング及びキャッピングの評価は、ともに「×」となっており、上記滑沢剤についての明細書中の記載と齟齬がない。
ここで、滑沢剤は、錠剤の製造時に、粉体の流動性、充填性、付着性、成形性などの諸性質を改善するために、通常添加される成分であり、本件発明において滑沢剤として用いうると例示されているものも、汎用のものにすぎない。そして、滑沢剤の種類に応じて、その作用の程度に相違が認められることがあるとしても、ステアリン酸カルシウム以外の汎用の滑沢剤を用いた場合に、本件発明の課題が解決できないと認めるに足る技術常識もない。
そうしてみると、上記(1)(イ)のような特許異議申立人のサポート要件違反の取消理由に関する主張は採用できず、滑沢剤の観点から、本件発明がサポート要件を満たしていないとはいえない。

(3)小括
以上のとおり、特許異議申立人のサポート要件違反の特許異議申立理由は、採用できない。

7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクチュロースを80質量%以上含有するミルクオリゴ糖60?97質量%、結晶セルロース1?38質量%、還元麦芽糖1?38質量%、及び滑沢剤0.5?5.0質量%を含有する錠剤(但し、該錠剤はチュアブル錠ではない)。
【請求項2】
ラクチュロースを90質量%以上含有するミルクオリゴ糖の含有量が65?95質量%である、請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
結晶セルロースと還元麦芽糖の含有比率が、質量比で1:5?5:1である、請求項1又は2記載の錠剤。
【請求項4】
1錠あたりの質量が100?400mgである、請求項1?3のいずれか1項記載の錠剤。
【請求項5】
硬度6kgf以上である、請求項1?4のいずれか1項記載の錠剤。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-09 
出願番号 特願2015-53250(P2015-53250)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A61K)
P 1 651・ 121- YAA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 井上 典之
特許庁審判官 穴吹 智子
滝口 尚良
登録日 2018-10-05 
登録番号 特許第6411924号(P6411924)
権利者 日清ファルマ株式会社
発明の名称 ミルクオリゴ糖錠剤  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  

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