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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
審判 一部申し立て 発明同一  B29C
管理番号 1362307
異議申立番号 異議2019-700469  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-10 
確定日 2020-03-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6438481号発明「金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品を製造するための半製品及び方法、及びその半製品の使用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6438481号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。 特許第6438481号の請求項5、10ないし13及び15ないし17に係る特許を維持する。 特許第6438481号の請求項1ないし3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第6438481号(設定登録時の請求項の数は15。以下「本件特許」という。)は、2014年(平成26年)8月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年(平成25年)9月3日 ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする特許出願である特願2016-539463号に係るものであって、平成30年11月22日にその特許権の設定登録がされ、同年12月12日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1?3、5、10?13及び15に係る特許について、令和1年6月10日に特許異議申立人 特許業務法人朝日奈特許事務所により、特許異議の申立てがされ、当審は、同年9月6日付けで取消理由を通知したところ、特許権者は、その指定期間内である同年12月9日に訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)を行い、同年同月10日に意見書の提出を行った。
なお、本件訂正請求における訂正は、下記「第2 訂正の適否についての判断」にあるように、請求項の削除及び請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めるもののみであって、訂正後の特許請求の範囲の記載は、すべて訂正前の特許請求の範囲に記載されていたもので、特許法第120条の5第5項ただし書における特別の事情と認め得る内容であったため、同条第5項の通知を行っていない。


第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、以下の訂正事項1?13のとおりである(下線は、訂正箇所について付したものである。)。

(1)訂正事項1
請求項1?3を削除する。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項4の、
「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法において、前記プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4’)によって三次元成形され、前記成形金型が、少なくとも1つの一体型射出成形キャビティ(4.1)と、前記射出成形キャビティ(4.1)に入る少なくとも1つの射出成型チャネルを有することを特徴とする方法。」の記載を、
「シート状又は帯状であって深絞りができる半製品(1、1’)を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品(5)を製造するための方法において、前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板(1.1)と;
前記金属板上に材料ボンディングの形で塗布された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)と;
を具え、
前記金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)を有し;
前記プラスチック層(1.2、1.4)が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体(2)を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体(2)が、連結層として前記プラスチック層(1.2、1.4)の上に、射出成形によって、材料ボンディングの形で成形され;
前記プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4’)によって三次元成形され、前記成形金型が、少なくとも1つの一体型射出成形キャビティ(4.1)と、前記射出成形キャビティ(4.1)に入る少なくとも1つの射出成型チャネルを有することを特徴とする方法。」に訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項5の、
「請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法において、前記プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4)によって三次元成形されて、前記成形金型が、プレスしてプラスチック化合物(3)を三次元成形する少なくとも1つの一体型キャビティ(4.1)を持つ形状を有することを特徴とする方法。」の記載を、
「シート状又は帯状であって深絞りができる半製品(1、1’)を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品(5)を製造するための方法において、前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板(1.1)と;
前記金属板上に材料ボンディングの形で塗布された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)と;
を具え、
前記金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)を有し;
前記プラスチック層(1.2、1.4)が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体(2)を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体(2)が、連結層として前記プラスチック層(1.2、1.4)の上に、プレス成形によって、材料ボンディングの形で成形され;
前記プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4)によって三次元成形されて、前記成形金型が、プレスしてプラスチック化合物(3)を三次元成形する少なくとも1つの一体型キャビティ(4.1)を持つ形状を有することを特徴とする方法。」に訂正する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項6の、
「請求項1に記載の方法において、半製品(1、1’)が、ロール成形による成形加工を受け、この半製品の成形中又は成形後に、回転可能なホイール状のツールが、構造体(2)のプレス成形のために使用され、前記ツールには、プラスチック化合物(3)のプレス加工および三次元成形のための少なくとも1つのキャビティを有する形状が与えられていることを特徴とする方法。」の記載を、
「シート状又は帯状であって深絞りができる半製品(1、1’)を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品(5)を製造するための方法において、前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板(1.1)と;
前記金属板上に材料ボンディングの形で塗布された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)と;
を具え、
前記金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)を有し;
前記プラスチック層(1.2、1.4)が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体(2)を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体(2)が、連結層として前記プラスチック層(1.2、1.4)の上に、プレス成形によって、材料ボンディングの形で成形され;
半製品(1、1’)が、ロール成形による成形加工を受け、この半製品の成形中又は成形後に、回転可能なホイール状のツールが、構造体(2)のプレス成形のために使用され、前記ツールには、プラスチック化合物(3)のプレス加工および三次元成形のための少なくとも1つのキャビティを有する形状が与えられていることを特徴とする方法。」に訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項7の、
「請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法において、連結層として成形されている前記熱可塑性プラスチック層(1.2)を有する少なくとも1つの一体型フランジが、前記ハイブリッド部品(5)上に成形されており、かつ金属/プラスチック複合材として構成されている更なるハイブリッド部品(5)又は有機金属板が前記プラスチック層(1.2)上に溶接によって接合されていることを特徴とする方法。」の記載を、
「請求項4乃至6のいずれか一項に記載の方法において、連結層として成形されている前記熱可塑性プラスチック層(1.2)を有する少なくとも1つの一体型フランジが、前記ハイブリッド部品(5)上に成形されており、かつ金属/プラスチック複合材として構成されている更なるハイブリッド部品(5)又は有機金属板が前記プラスチック層(1.2)上に溶接によって接合されていることを特徴とする方法。」に訂正する。

(6)訂正事項6
訂正前の請求項10の、
「請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記金属板(1.1)が、0.1乃至2.5 mmの範囲の厚さを有することを特徴とする方法。」の記載を、
「請求項4乃至9のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(4、1’)の前記金属板(1.1)が、0.1乃至2.5 mmの範囲の厚さを有することを特徴とする方法。」に訂正する。

(7)訂正事項7
訂正前の請求項11の、
「請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、又は、これらの混合物から製造されることを特徴とする方法。」の記載を、
「請求項4乃至10のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、又は、これらの混合物から製造されることを特徴とする方法。」に訂正する。

(8)訂正事項8
訂正前の請求項12の、
「請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、0.01乃至1.2mmの範囲の厚さを有することを特徴とする方法。」の記載を、
「請求項4乃至11のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、0.01乃至1.2mmの範囲の厚さを有することを特徴とする方法。」に訂正する。

(9)訂正事項9
訂正前の請求項13の、
「請求項1乃至12のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、前記金属板(1.1)上の当該プラスチック層が適用される側を、部分的に被覆していることを特徴とする方法。」の記載を、
「請求項4乃至12のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、前記金属板(1.1)上の当該プラスチック層が適用される側を、部分的に被覆していることを特徴とする方法。」に訂正する。

(10)訂正事項10
訂正前の請求項14の、
「請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)が二重に作られていて、当該2つのプラスチック層間に、熱可塑性プラスチック発泡体層が配置されていることを特徴とする方法。」の記載を、
「請求項4乃至13のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)が二重に作られていて、当該2つのプラスチック層間に、熱可塑性プラスチック発泡体層が配置されていることを特徴とする方法。」に訂正する。

(11)訂正事項11
訂正前の請求項15の、
「請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、少なくとも1つの有機金属板で部分的に被覆されていることを特徴とする方法。」の記載を、
「請求項4乃至14のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、少なくとも1つの有機金属板で部分的に被覆されていることを特徴とする方法。」に訂正する。

(12)訂正事項12
訂正前の請求項2である、
「請求項1に記載の方法において、前記構造体(2)が成形される前に、前記半製品を三次元構造へと成形することを特徴とする方法。」を、
新たな請求項16として、
「請求項4、5、7?15のいずれか一項に記載の方法において、前記構造体(2)が成形される前に、前記半製品を三次元構造へと成形することを特徴とする方法。」と訂正する。

(13)訂正事項13
訂正前の請求項3である、
「請求項2に記載の方法において、前記成形の工程が、深絞り又はロール成形によって行われることを特徴とする方法。」を、
新たな請求項17として、
「請求項16に記載の方法において、前記成形の工程が、深絞り又はロール成形によって行われることを特徴とする方法。」と訂正する。

(14)一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-15〕に対して請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否等
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1?3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2?4について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項4が、訂正前の請求項1?3を引用するものであったのを、訂正前の請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
加えて、訂正前の請求項4は、「射出成形」によってプラスチックの構造体(2)を成形するものであったため、訂正前の請求項1の「プラスチックの構造体(2)が、・・・(略)・・・射出成形又はプレス成形によって、材料ボンディングの形で成形される」の記載を「プラスチックの構造体(2)が、・・・(略)・・・射出成形によって、材料ボンディングの形で成形される」として、その記載を整合させるための訂正でもあるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるともいえる。

また、訂正事項3は、訂正事項2と同様に、訂正前の請求項1?3を引用していた訂正前の請求項5のうち、請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改め、その際、プレス成形によって成形することに記載を整合させているものである。

さらにまた、訂正事項4は、訂正事項2及び3と同様に、訂正前の請求項1を引用していた訂正前の請求項6を、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改め、その際、プレス成形によって成形することに記載を整合させているものである。

そうすると、訂正事項2?4は、いずれも、特許請求の範囲の減縮、明瞭でない記載の釈明及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。

イ 新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2?4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ 独立特許要件について
(ア)訂正事項5に係る訂正前の請求項5に対して、特許異議の申立てがされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する、いわゆる独立特許要件は課されない。

一方、訂正事項2及び4に係る訂正前の請求項4及び6に対しては、特許異議の申立てがされていないので、以下、訂正後における、これらの特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか検討する。

(イ)訂正後の請求項4に係る発明について
訂正後の請求項4に係る発明は、「プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4’)によって三次元成形され、前記成形金型が、少なくとも1つの一体型射出成形キャビティ(4.1)と、前記射出成形キャビティ(4.1)に入る少なくとも1つの射出成型チャネルを有する」との特定事項を有する。
そして、上記特定事項に関し、特に射出成形のキャビティを構成する金型によって、金属板を含む積層体である半製品を三次元成形する点が、特許異議申立人が特許異議申立書において提示した甲第1?5号証(以下、それぞれ「甲1」?「甲5」と略記する。)のいずれにも記載及び示唆がされておらず、かつ、上記特定事項によって、本件特許明細書の段落【0029】に記載される「この改良例によって、ハイブリッド部品を製造する工程ステップ数を減らすことが可能になり、半製品又は一定の寸法に切断した半完成ブランクの成形と、好ましくはリブ付き構造体といった構造体を製造する連結層のバック射出成形とを、同じ工程ステップにおいて行うことができる」という格別顕著な効果を奏するものである。
よって、訂正後の請求項4に係る発明については、特許法第29条第1項第3号に該当せず、かつ、同条第2項の規定又は同法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。そして、その他の特許を受けることができない理由もない。

(ウ)訂正後の請求項6に係る発明について
訂正後の請求項6に係る発明は、「回転可能なホイール状のツールが、構造体(2)のプレス成形のために使用され、前記ツールには、プラスチック化合物(3)のプレス加工および三次元成形のための少なくとも1つのキャビティを有する形状が与えられている」との特定事項を有する。
そして、上記特定事項に関し、特にホイール状のツールが、金属板を含む積層体である半製品を三次元成形するとともにプラスチックの構造体をプレス成形する点が、特許異議申立人が特許異議申立書において提示した甲1?5のいずれにも記載及び示唆がされておらず、かつ、上記特定事項によって、本件特許明細書の段落【0031】に記載される「この改良例によって、断面ビームとして成形される上述した型のハイブリッド部品を、特に効率的に大量生産できる」という格別顕著な効果を奏するものである。
よって、訂正後の請求項6に係る発明については、特許法第29条第1項第3号に該当せず、かつ、同条第2項の規定又は同法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。そして、その他の特許を受けることができない理由もない。

(エ)独立特許要件についてのまとめ
したがって、訂正後の請求項4及び6に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しない。

(3)訂正事項5?11について
請求項7、10?15に係る訂正は、いずれも引用請求項数を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項5?11は、いずれも願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、訂正後の請求項7?9及び14に係る発明は、訂正後の請求項4?6を引用するものであり、請求項4及び6を引用する場合、上記「第2 2(2)」のとおり、本件発明4及び6は、独立特許要件を満たしており、また、請求項5を引用する場合、後記「第6 1」のとおり、取り消すべき理由はないから、かかる本件発明4?6の発明特定事項をすべて含み、さらに限定する請求項7?9及び14に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、かつ、同条第2項の規定又は同法第29条の2の規定により特許を受けることができないものではない。そして、その他の特許を受けることができない理由もない。
したがって、訂正後の請求項7?9及び14に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しない。

(4)訂正事項12について
訂正事項12は、訂正事項1によって、訂正前の請求項2が削除されたため、訂正前の請求項2を引用する形で存在していた訂正前の請求項4、5、7?15を、訂正後の請求項4、5、7?15を引用する新たな請求項16として設けるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項12は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項13について
訂正事項13は、訂正事項1によって、訂正前の請求項2のみを引用していた訂正前の請求項3が削除されたため、訂正前の請求項3を引用する形で存在していた訂正前の請求項4、5、7?15を、訂正事項12で設けた請求項16を引用する新たな請求項17として設けるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
また、訂正事項13は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3号及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-17〕について訂正することを認める。


第3 本件発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1?17に係る発明(以下、順に「本件発明1」・・・のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
シート状又は帯状であって深絞りができる半製品(1、1’)を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品(5)を製造するための方法において、前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板(1.1)と;
前記金属板上に材料ボンディングの形で塗布された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)と;
を具え、
前記金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)を有し;
前記プラスチック層(1.2、1.4)が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体(2)を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体(2)が、連結層として前記プラスチック層(1.2、1.4)の上に、射出成形によって、材料ボンディングの形で成形され;
前記プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4’)によって三次元成形され、前記成形金型が、少なくとも1つの一体型射出成形キャビティ(4.1)と、前記射出成形キャビティ(4.1)に入る少なくとも1つの射出成型チャネルを有することを特徴とする方法。
【請求項5】
シート状又は帯状であって深絞りができる半製品(1、1’)を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品(5)を製造するための方法において、前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板(1.1)と;
前記金属板上に材料ボンディングの形で塗布された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)と;
を具え、
前記金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)を有し;
前記プラスチック層(1.2、1.4)が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体(2)を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体(2)が、連結層として前記プラスチック層(1.2、1.4)の上に、プレス成形によって、材料ボンディングの形で成形され;
前記プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4)によって三次元成形されて、前記成形金型が、プレスしてプラスチック化合物(3)を三次元成形する少なくとも1つの一体型キャビティ(4.1)を持つ形状を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
シート状又は帯状であって深絞りができる半製品(1、1’)を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品(5)を製造するための方法において、前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板(1.1)と;
前記金属板上に材料ボンディングの形で塗布された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)と;
を具え、
前記金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)を有し;
前記プラスチック層(1.2、1.4)が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体(2)を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体(2)が、連結層として前記プラスチック層(1.2、1.4)の上に、プレス成形によって、材料ボンディングの形で成形され;
半製品(1、1’)が、ロール成形による成形加工を受け、この半製品の成形中又は成形後に、回転可能なホイール状のツールが、構造体(2)のプレス成形のために使用され、前記ツールには、プラスチック化合物(3)のプレス加工および三次元成形のための少なくとも1つのキャビティを有する形状が与えられていることを特徴とする方法。」に訂正する。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の方法において、連結層として成形されている前記熱可塑性プラスチック層(1.2)を有する少なくとも1つの一体型フランジが、前記ハイブリッド部品(5)上に成形されており、かつ金属/プラスチック複合材として構成されている更なるハイブリッド部品(5)又は有機金属板が前記プラスチック層(1.2)上に溶接によって接合されていることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記2つのハイブリッド部品(5)を組み立てて、中空のチャネル又は閉じた形材を成形することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記ハイブリッド部品と前記有機金属板を組み立てて、中空のチャネル又は閉じた形材を成形することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項4乃至9のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記金属板(1.1)が、0.1乃至2.5 mmの範囲の厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項4乃至10のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、又は、これらの混合物から製造されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項4乃至11のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、0.01乃至1.2 mmの範囲の厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項4乃至12のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、前記金属板(1.1)上の当該プラスチック層が適用される側を、部分的に被覆していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項4乃至13のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)が二重に作られていて、当該2つのプラスチック層間に、熱可塑性プラスチック発泡体層が配置されていることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項4乃至14のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、少なくとも1つの有機金属板で部分的に被覆されていることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項4、5、7?15のいずれか一項に記載の方法において、前記構造体(2)が成形される前に、前記半製品を三次元構造へと成形することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記成形の工程が、深絞り又はロール成形によって行われることを特徴とする方法。


第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について
特許異議申立人が提出した特許異議申立書において主張する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。

(1)申立理由1-1(甲1を根拠とする新規性)
本件特許の訂正前の請求項1?3、10及び12に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(2)申立理由1-2(甲2を根拠とする新規性)
本件特許の訂正前の請求項1?3、10?12及び15に係る発明は、甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(3)申立理由1-3(甲3を根拠とする新規性)
本件特許の訂正前の請求項1?3及び10?12に係る発明は、甲3に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(4)申立理由2-1(甲1を主引用例とする進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1?3及び10?13に係る特許は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された技術的事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(5)申立理由2-2(甲2を主引用例とする進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1?3、5、10?12及び15に係る特許は、甲2に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(6)申立理由2-3(甲3を主引用例とする進歩性)
本件特許の訂正前の請求項1?3及び10?13に係る特許は、甲3に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(7)申立理由3-1(甲4に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1?3、5、10?12及び15に係る発明は、その出願前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲4にかかる、特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

(8)申立理由3-2(甲5に基づく拡大先願)
本件特許の請求項1?2、10?13及び15に係る発明は、その出願前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲5にかかる、特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(9)証拠方法
甲1:特開2012-45920号公報
甲2:特開昭61-86245号公報
甲3:特開2001-315159号公報
甲4:特願2013-150935号(特開2015-20364号)
甲5:特願2015-555687号(特表2016-506882号)

第5 取消理由の概要
本件特許の訂正前の請求項1?3及び10?13に係る特許に対して、当審が令和1年9月6日付け(発送日:令和1年9月11日)で特許権者に通知した取消理由(以降、「取消理由」という。)の要旨は、次のとおりである。

取消理由1(進歩性)本件特許の請求項1?3及び10?13についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

取消理由2(拡大先願)本件特許の請求項1、10及び11についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
・・・
取消理由1(進歩性)
(1)甲第1号証を主引用文献とする取消理由
・対象となる発明:本件発明1?3、10、12及び13
・引用文献等
甲1
・・・
(2)甲第3号証を主引用文献とする取消理由
・対象となる発明:本件発明1?3及び10?13
・引用文献等
甲3
・・・
取消理由2(拡大先願)
・対象となる発明:請求項1、10及び11
・引用文献等
甲4」

なお、取消理由1の上記(1)の理由は、特許異議申立人が主張する申立理由2-1と、請求項11に対して採用していない点を除き、同趣旨であり、また、上記(2)の理由は、申立理由2-3と同趣旨である。そして、取消理由2は、請求項2、3、5、11及び15に対して採用していない点を除き、申立理由3-1と同趣旨である。


第6 当審の判断
1 取消理由についての検討
(1)取消理由1について
取消理由1(進歩性)についての対象となる請求項1?3は、本件訂正請求により削除され、また、同じく対象となる訂正前の請求項10?13は、いずれも取消理由の対象ではない訂正後の請求項4?6のいずれかに従属する請求項に訂正されたため、取消理由1(進歩性)は解消された。

(2)取消理由2について
取消理由2(拡大先願)についての対象となる請求項1は、本件訂正請求により削除され、また、同じく対象となる訂正前の請求項10及び11は、いずれも取消理由の対象ではない訂正後の請求項4?6のいずれかに従属する請求項に訂正されたため、取消理由2(拡大先願)は解消された。

2 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立理由1-1(甲1を根拠とする新規性)及び申立理由2-1(甲1を主引用例とする進歩性)について
申立理由1-1(甲1を根拠とする新規性)の対象である訂正前の請求項1?3、10及び12は、甲1を主引用例とする進歩性に係る取消理由1(1)の対象となる請求項に包含されるから、上記「第6 1(1)」で述べた取消理由1と同様、申立理由1-1は、理由がない。
申立理由2-1の対象であって、取消理由において採用しなかった、訂正前の請求項11に係る発明は、本件訂正請求による訂正によって、甲1を主引例とする進歩性欠如の特許異議申立理由とされない請求項4?6を引用するものとなった。そして、本件発明4及び6は、上記「第2 2(2)」で述べたように、それぞれ、独立特許要件を満たしており、また、本件発明5は、取消理由の理由がなく、その他に特許を取り消すべき理由を発見しないものであり、かかる本件発明4?6の発明特定事項をすべて含み、さらに限定するものであるから、本件発明11について申立理由2-1は、理由がない。

(2)申立理由1-2(甲2を根拠とする新規性)及び申立理由2-2(甲2を主引用例とする進歩性)について
ア 甲2の記載事項および甲2に記載された発明について
(ア)甲2の記載事項
甲2には、「表皮材を貼着した樹脂成形品の成形方法」に関し、次の事項が記載されている。

・「特許請求の範囲
(1)金属板または金属箔などの非通気性もしくは難通気性の表皮材と、強化熱可塑性樹脂からなる支持層とを積層・一体的に貼着した樹脂成形品の成形方法であって、
(イ)上記表皮材の上記支持層との当接面に接着性向上の表面処理を施した後に該表皮材に貫通孔を穿設する工程と、
(ロ)成形型内に上記表皮材を表面処理側が上方となるようにセットし、該表皮材上にあらかじめ加熱軟化あるいは加熱溶融された上記強化熱可塑性樹脂を載せ圧縮成形する工程とからなることを特徴とする表皮材を貼着した樹脂成形品の成形方法。」(第1ページ左欄第4?17行)

・「成形品を作成するに当って、本発明の方法では、まず、第1図に示すように表皮材10を特殊加工する。
すなわち、平板状の表皮材10を、これが貼着される強化熱可塑性樹脂との接着を向上させる表面処理、例えば表皮材10が金属板,金属箔などの金属材であれば、脱脂処理,ホットメルト系の接着剤塗布などを施し、所定形状に成形し、貫通孔12をプレスなどで穿設する。」(第2ページ右下欄第11?19行)

・「さらに、前記の表皮材10の接着性向上のための処理は、表皮材10と強化熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂との接着性を考慮して行なえば良く、例えば金属箔を表皮材10とするときには、マトリックス樹脂の選択によっては金属箔表面の脱脂処理のみにて充分な接着が得られる場合もあるが、一般には、表皮材10にホットメルト系接着剤として、エポキシ変性ポリオレフィン,マレイン酸変性ポリオレフィン,カルボン酸塩含有ポリオレフィン(アイオノマー)ロジン添加エチレン酢酸ビニル共重合体,エチレンエチルアクリレート共重合体,各種脂肪族のポリアミド共重合体樹脂,テレフタル酸,イソフタル酸または脂肪族ジカルボン酸と各種グリコールの共重合体ポリエステル樹脂等による接着層を0.05?0.5mmの厚みで設ける方法が推奨される。」(第3ページ左下欄第3?18行)

・「具体例1
厚さ0.1mm,幅500mmのアルミニウム箔(JIS材質記号1070H-0)と厚さ0.1mm,幅500mmのマレイン酸変性ポリプロピレン(住友化学製,商品名「ボンドファーストG」)フィルムとを積層した。次に、180℃に加熱したスチールロール(幅650mm,外径315mm)と内部水冷した表面シリコンゴム張りのロール(幅650mm,外径163mm)からなる一対のニップロール間に、上記のアルミニウム箔と樹脂フィルムを重ねて通過させることにより、該樹脂フィルムを溶融させて該アルミ箔の表面に圧接させ、この後冷却させて両者を互いに接着した。・・・(略)・・・
しかる後、このアルミ箔表皮材10を、240×240mm角で60mm深さで四周に30mm幅のフランジを有する箱の展開図に相当する形状に切り出し、240×240mmの底面に相当する部分から約20mm内側の部分、すなわち200×200mmの部分に孔径1.5mmの貫通孔をピッチ20mmで穿設した。
しかる後、この表皮材10を上述の箱用の成形型に載置し、ガラス長繊維よりなるマット状のガラス繊維を強化材として40重量%含有し、ポリプロピレンをマトリックス樹脂として含む繊維強化熱可塑性樹脂シート(出願人製、「商品名「アズデル」)であって厚さ3.7mm目付4.4Kg/m^(2)のものを200×200cmにカットしたものを8枚ブランクとして、内部樹脂温度が200℃に達するまで加熱したホットブランクを重ねて圧縮成形を行なった。」(第3ページ右下欄第1行?第4ページ左上欄第13行)

・「

」(第1図)

・「

」(第2図)

(イ)甲2に記載された発明
甲2の、特に具体例1の記載から、甲2には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「厚さ0.1mmのアルミニウム箔と厚さ0.1mmのマレイン酸変性ポリプロピレンフィルムとを積層し、一対のニップロール間に重ねて通過させることにより、該樹脂フィルムを溶融させて該アルミ箔の表面に圧接させ、この後冷却させて両者を互いに接着して表皮材を得た後、箱用の成形型に載置し、繊維強化熱可塑性樹脂シートを8枚ブランクとして、内部樹脂温度が200℃に達するまで加熱したホットブランクを重ねて圧縮成形を行なう、箱の製造方法。」

イ 本件発明5と甲2発明との対比・判断
本件発明5から検討する。
(ア)対比
本件発明5と甲2発明を対比する。
甲2発明の「アルミニウム箔」、「マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム」、「箱用の成形型」、「圧縮成形」、及び「箱」は、本件発明5の「シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板」、「熱可塑性プラスチック層」、「成形金型」、「プレス成形」及び「金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品」に相当する。
また、甲2発明の「表皮材」は、「厚さ0.1mmのアルミニウム箔と厚さ0.1mmのマレイン酸変性ポリプロピレンフィルムとを積層」したものであり、その厚みから、深絞りができるといえるから、「シート状又は帯状であって深絞りができる半製品」に相当する。
そして、甲2発明における圧縮成形は、繊維強化熱可塑性樹脂シートを8枚ブランクとして重ねたホットブランクに施すものであり、マレイン酸変性ポリプロピレンフィルムによる層に対して接合されることになるから、このことは、本件発明5における「プラスチックの構造体が、連結層として前記プラスチック層の上に、プレス成形によって」成形されることに相当し、甲2発明の「ホットブランク」が圧縮成形されたものは、本件発明5の「構造体」に相当する。

そうすると、本件発明5と甲2発明は、以下の点で一致する。
<一致点>
「シート状又は帯状であって深絞りができる半製品を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品を製造するための方法において、前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板と;
前記金属板上に積層された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層と;
を具え、
前記プラスチック層が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体が、連結層として前記プラスチック層の上に、プレス成形によって、成形される方法。」

そして、次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1>
本件発明5は、「少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層」の形成が「金属板上に材料ボンディングの形で塗布」してなされるに対し、甲2発明は、「アルミニウム箔」に、マレイン酸変性ポリプロピレンフィルムの形で積層され、接着される点。

<相違点2>
本件発明5は、「金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面を有」すると特定するのに対し、甲2発明は、そのような特定がされない点。

<相違点3>
本件発明5は「プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4)によって三次元成形され」るのに対し、甲2発明は、同時成形の特定がされない点。

(イ)判断
事案に鑑み、相違点2から検討する。
a 相違点2について
甲2発明における「マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム」(本件発明5の「熱可塑性プラスチック層」)は、「アルミニウム箔」(本件発明5の「金属板(1.1)」)とホットブランクのマトリックス樹脂との接着性向上を目的としたホットメルト系接着剤といえる。
このことは、甲2の「平板状の表皮材10を、これが貼着される強化熱可塑性樹脂との接着を向上させる表面処理、例えば表皮材10が金属板,金属箔などの金属材であれば、脱脂処理,ホットメルト系の接着剤塗布などを施し、所定形状に成形し、貫通孔12をプレスなどで穿設する。」(第2ページ右下欄第14?19行)の記載、及び「表皮材10の接着性向上のための処理は、表皮材10と強化熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂との接着性を考慮して行なえば良く、例えば金属箔を表皮材10とするときには、マトリックス樹脂の選択によっては金属箔表面の脱脂処理のみにて充分な接着が得られる場合もあるが、一般には、表皮材10にホットメルト系接着剤として、エポキシ変性ポリオレフィン,マレイン酸変性ポリオレフィン・・・による接着層を0.05?0.5mmの厚みで設ける方法が推奨される」(第3ページ左下欄第3?18行)の記載から理解できる。
そうすると、既にアルミニウム箔とホットブランクのマトリックス樹脂との接着性を改善する手段として「マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム」を採用している甲2発明において、さらにアルミニウム箔表面を脱脂処理を行う動機付けがなく、当業者にとって、相違点2に係る発明特定事項を甲2発明に採用することは容易になし得るとはいえない。

b 相違点3について
甲2は、「本発明の方法では、まず、第1図に示すように表皮材10を特殊加工する」(第2ページ右下欄第11?13行)と記載されるように、樹脂の圧縮成形型によって、金属箔を含む表皮材を樹脂の圧縮成形と同時に成形することは、記載及び示唆がなされていない。
甲2発明において、表皮材に用いるアルミニウム箔の厚みは、0.1mmであり、薄い軟質の金属ではあるが、樹脂成形用金型で、金属のプレス加工を同時に行うことは一般的なことではなく、さらに、甲2発明では、ホットメルト接着剤層が、アルミニウム箔の上に形成されており、熱可塑性樹脂のプレス加工時と同時にその成形を行うことには阻害事由であるともいえることから、当業者にとって、相違点3に係る発明特定事項を甲2発明に採用することは容易になし得るとはいえない。

c 特許異議申立人の主張
(a)相違点2について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、「甲2発明の積層体において、表皮材10は、表皮材10との強化熱可塑性樹脂のマトリックス樹脂との接着性を考慮して、接着性向上のための処理が行われてもよい(第3頁左下欄第3行?第5行)。
そうすると、甲2発明における「接着性向上のための処理が行われた表皮材の表面」は、本件特許発明1における「プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)」に相当する。」(第48ページ第18?23行)と主張している。
しかしながら、上記aにおける相違点2についての判断のとおり、金属箔表面の脱脂処理とマレイン酸変性ポリプロピレンフィルムの積層は、共にホットブランクのマトリックス樹脂と金属箔との接着性を改善する目的でなされるものであって、これらの処理が、併用されることについて甲2には記載はない。
そもそも、本件特許は、段落【0003】?【0004】に記載されるように、鋼板の脱油作業(脱脂処理に相当)及び接着剤の層の塗布という費用のかかる工程を課題とし、接着剤を用いないことでその課題を解決するものであるが、甲2発明における「マレイン酸変性ポリプロピレンフィルム」は、「接着剤」として使用されるものであるから、甲2発明は、本件特許の課題を解決するものではない。

(b)相違点3について
特許異議申立人は、特許異議申立書において「アルミニウム箔のような薄膜は、その成形容易性から、樹脂成型品の成形に際して同時に成形され得ることが自明である。そうすると、当業者は、上記具体例1における製造方法において、アルミニウム箔を、樹脂成型品の成形と同時に成形し得ることに関して、何ら困難ではない。
また、得られる加工後の樹脂成型品は、アルミニウム箔を同時に成形したか否かによって、本件特許発明5が顕著に優れた効果を奏するなどの開示は、本件特許明細書には見当たらない。
そのため、アルミニウム箔の成形容易性に関する技術常識に基づけば、甲2発明において構成要件5Bを具備させることは、当業者にとって設計的事項であり、極めて容易である」(第64ページ第14?23行)と主張している。
しかしながら、上記bにおいて相違点3について述べたように、アルミ箔の成形容易性の技術常識があったとしても、樹脂成形用金型によって、樹脂のプレス成形と同時にホットメルト接着剤が表面に塗布された表皮材の成形を行うことは、当業者にとって容易になし得るものではない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)小括
したがって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明5は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明1?3、10?12及び15?17と甲2発明との対比・判断
申立理由2-2の対象であって、取消理由において採用しなかった、訂正前の請求項1?3、10?12及び15は、本件訂正請求による訂正によって、請求項1?3は削除され、請求項10?12及び15並びに訂正前の請求項2及び3に相当する請求項16及び17は、いずれも請求項4?6を引用するものとなった。
そして、本件発明4及び6は、上記「第2 2(2)」で述べたように、それぞれ、独立特許要件を満たしており、また、本件発明5は、上記イでの検討のとおりであるから、かかる本件発明4?6の発明特定事項をすべて含み、さらに限定するものである本件発明10?12及び15?17について申立理由2-2は、理由がない。
また、申立理由1-2(甲2を根拠とする新規性)の対象である訂正前の請求項1?3、10?12及び15は、申立理由2-2の対象となる請求項に包含されるから、申立理由2-2同様、申立理由1-2は、理由がない。

エ よって、申立理由1-2及び申立理由2-2は、理由がないものである。

(3)申立理由1-3(甲3を根拠とする新規性)
申立理由3-1の対象である訂正前の請求項1?3及び10?12は、甲3を主引用例とする進歩性に係る取消理由1(2)の対象となる請求項に包含されるから、上記「第6 1(1)」で述べた取消理由1と同様、申立理由1-3は、理由がないものである。

(4)申立理由3-1(甲4に基づく拡大先願)について
ア 甲第4号証の記載事項および甲第4号証に記載された発明について
甲第4号証に係る、特願2013-150935号の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。なお、記載箇所については、対応する公開特許公報である甲第4号証の記載箇所で示す。)には、「複合体およびその製造方法、ならびに塗装金属素形材およびその製造方法」に関し、次の事項が記載されている。

(ア)甲第4号証に記載された事項
・「【0058】
第2工程では、予熱されたシート状の繊維強化熱可塑性樹脂組成物をホットプレス金型内でプレス成形すると同時に、塗装金属素形材の有機樹脂層の表面に繊維強化熱可塑性樹脂組成物を接触させたまま加圧して、塗装金属素形材の表面に繊維強化熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合する。」

・「【0063】
第3工程では、繊維強化熱可塑性樹脂組成物の成形体を作製する。予め所定の形状に切断したシート状の繊維強化熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性樹脂が溶融する温度まで予熱する。この場合も予熱には、例えば赤外線加熱炉を用いることができる。予熱されたシート状の繊維強化熱可塑性樹脂組成物をホットプレス金型の内部に挿入し、型締めを行い、ホットプレス金型内部に圧力をかける。その後、金型内部の温度低下に伴い、繊維強化熱可塑性樹脂組成物は金型内部で固化して成形体となる。」

・「【0065】
なお、前述した各製造方法は、本発明の効果が得られる範囲内において、第1工程?第4工程以外の他の工程をさらに含んでいてもよい。また、第1工程?第4工程も本発明の効果が得られる範囲内において、他の工程をさらに含んでいてもよい。たとえば、第2工程において、シート状の繊維強化熱可塑性樹脂組成物をホットプレス成形する際のホットプレス金型の上下動を利用して、塗装金属素形材に対しても同時にプレス成形による加工を行ってもよい。このホットプレス金型の上下動を利用してプレス成形と同時に行うことができる加工には、塗装金属素形材および繊維強化熱可塑性樹脂組成物の成形体に対するバリ取りや穴あけなどが含まれ、既知の方法を用いることができる。また、たとえば、前述した製造方法により製造された複合体は、さらにアニール処理をして、成形収縮による内部歪みを解消してもよい。」

・「【実施例】
【0071】
1.複合体の作製
(1)塗装基材(金属素形材)
A.塗装基材1
板厚が0.8mmのSUS430の表面をNo.4仕上げして塗装基材1を準備した。・・・(中略)・・・
【0073】
(2)塗料の調製
樹脂合計質量に対する酸変性ポリプロピレンの質量の割合が95質量%になるように、酸変性ポリプロピレン(PP)樹脂(A)、ポリエチレン(PE)ワックス(C)、エポキシ系架橋剤(D)を水に添加して、不揮発成分が20質量%のプレ塗料1を調製した。・・・(中略)・・・このプレ塗料1に、・・・(中略)・・・をそれぞれ配合し、塗料1を調製した。・・・(中略)・・・
【0074】
同様に、酸変性PP樹脂(A)の上記含有量が40質量部であり、ポリウレタン(PU)系樹脂(B)の含有量が55質量%である塗料2、・・・(中略)・・・
【0079】
(3)有機樹脂層の形成
塗装基材1を液温40℃のアルカリ脱脂水溶液(サーフクリーナーSD-270;日本ペイント株式会社、pH=12)に1分間浸漬して、表面を脱脂した。次いで、脱脂した塗装基材1の表面に、乾燥膜厚が2.0μmとなるように、ロールコータ-で塗料2を塗布し、塗装基板1の到達板温が150℃となる温度で、塗布された塗料2を熱風乾燥機によって乾燥させて、有機樹脂層を形成した。この有機樹脂層を有する塗装金属素形材を基材Iとする。また、塗装基材および塗料を表1に示すように変えた以外は基材Iと同様にして塗装基材の表面に有機樹脂層を形成し、基材II?VIIを作製した。
さらに、塗料を塗布しない塗装基材2を基材VIIIとして用意した。基材I?基材VIIIの材料およびその物性を表1に示す。・・・(中略)・・・
【0081】
・・・(中略)・・・繊維強化熱可塑性樹脂組成物として、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(PP)を含有し、強化繊維としてガラス繊維を74質量%含有する市販のスタンパブルシートであるクイックフォームランダムシート(東洋紡績株式会社)を準備し、FRP2とした。・・・(中略)・・・
【0084】
(5)塗装金属素形材と繊維強化熱可塑性樹脂組成物の成形体との接合
A.ホットプレス成形による複合体の作製
ホットプレス成形により複合体1を以下の手順で作製した。基材Iについて、幅20mm×長さ30mm×厚さ0.8mmの形状のものを2枚準備し、それぞれ第1基材11、第2基材12とした。図1に示される下金型13に、下金型のキャビティー17とのオーバーラップ長さが5mmとなるように第1基板11および第2基材12を1枚ずつ挿入し、・・・(中略)・・・シート状のFRP2は、・・・(中略)・・・予熱した後に、下金型13のキャビティー17投入し、120℃に予熱した上金型15を下降させ、
図2に示される形状のFRP2の成形体16をホットプレス成形で作製すると同時に、第1基材11または第2基材12と、FRP2の成形体とをそれぞれの接触部分で接合させた。成形圧力は8MPaとした。その後、ホットプレス金型が70℃となった時点で複合体1を金型から取り出した。基材および繊維強化熱可塑性樹脂組成物を表3に示すように変更し、複合体1と同様にして、複合体2?8、10および11をそれぞれ作製した。」

・「【図1】


・「【図2】



(イ)先願発明
甲第4号証に記載された事項を、特に塗装基材1を用いた実施例について整理すると、以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認める。

「板厚が0.8mmのSUS430の表面をNo.4仕上げして塗装基材1を準備し、酸変性PP樹脂(A)の含有量が40質量部であり、ポリウレタン(PU)系樹脂(B)の含有量が55質量%である塗料2を、脱脂した塗装基材1の表面に、乾燥膜厚が2.0μmとなるように、ロールコーターで塗料2を塗布して基材Iを作製し、
繊維強化熱可塑性樹脂組成物として、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン(PP)を含有し、強化繊維としてガラス繊維を74質量%含有する市販のスタンパブルシートであるクイックフォームランダムシート(東洋紡績株式会社)を準備し、FRP2とし、
FRP2の成形体16をホットプレス成形で作製すると同時に、基材Iを用いた第1基材と、FRP2の成形体とをそれぞれの接触部分で接合させる方法。」

イ 本件発明5と先願発明との対比・判断
(ア)対比
本件発明5と先願発明とを対比する。

先願発明の「第1基材」、「塗装基材1」及び「塗料2」に関し、塗装基材1は、板厚が0.8mmのSUS430であること、塗料2の酸変性PP樹脂とポリウレタンの含有量から、それぞれ本件発明5の「半製品」、「少なくとも1つの金属板」及び「少なくとも1つの金属板熱可塑性プラスチック層」に相当する。
また、塗装基材1は、その表面をNo.4仕上げされており、SUS表面のNo.4仕上げとは、JIS G 4304に「JIS R 6010によるP150-P180で研磨して仕上げたもの。」とされ、研磨によってプラスチック層の樹脂付着性が改善する表面が得られていると認められる。
そして、先願発明の「FRP2」は、ホットプレス成形で作製すると同時に接着剤を用いることなく第1基材に接合されるので、本件発明5の、プレス成形によって材料ボンディングの形で固着され成形される「プラスチックの構造体」に相当し、先願発明の「塗料2」は、「連結層」として機能し、ホットプレス成形によって得られたものは「金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品」に相当する。
したがって、両者は、以下の点で一致する。

<一致点>
「シート状又は帯状である半製品を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品を製造するための方法において、前記半製品が
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板と
前記金属板上に少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層と
を具え、
前記金属板上の前記プラスチック層が塗布された側が、
前記プラスチック層の付着性を改善する表面を有し
前記プラスチック層が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており
プラスチックの構造体が、連結層として前記プラスチック層の上に、プレス成形によって、材料ボンディングの形で成形される方法。」

そして、次の点で相違する。
<相違点5>
本件発明5の「半製品」は、「深絞りができる」が、先願発明の「第1基材」においては、そのような特定がされていない点。

<相違点6>
本件発明5は、「少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層」の形成が「金属板上に材料ボンディングの形で塗布」することでなされるに対し、先願発明では、「ロールコーターで塗料2を塗布」することでなされる点。

<相違点7>
本件発明5は「プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4)によって三次元成形され」るのに対し、先願発明は、同時成形の特定がされない点。

(イ)判断
そこで、事案に鑑み、上記相違点7について検討する。

a 相違点7について
相違点7に関し、金属板に対する樹脂構造物のアウトサート成形時に、樹脂のアウトサート成形用のキャビティを有する金型をもってして、金属板のプレス加工も同時に行う技術は、周知技術ではなく、係る技術を先願発明に適用することは、課題解決のための具体化手段における微差ではないから、相違点7は、実質的な相違点といえる。

b 特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において「甲第4号証の上記開示によれば、甲4発明の塗装金属素形材の製造方法において、シート状の繊維強化熱可塑性樹脂組成物をホットプレス成形する際のホットプレス金型の上下動を利用して、塗装金属素形材に対しても同時にプレス成形による加工が行われてもよい([0065])。すなわち、甲4発明では、プレス成形によって、プラスチック構造体の成形と同時に、半製品に相当する金属素形材が成形され得る(構成要件5B)。」(第65ページ第4?9行)と主張している。
しかしながら、先願明細書の段落【0065】の記載は、塗装金属素形材の表面に繊維強化熱可塑性樹脂組成物の成形体を接合する第2工程(段落【0058】)における塗装金属素形材の同時加工に関するものであって、実際に、繊維強化熱可塑性樹脂組成物の成形体を作製する第3工程(段落【0063】)への適用について述べたものではない。
また、樹脂と金属板との接合と、樹脂成形体のプレス成形に求められる金型の型締条件も通常異なることから、樹脂と金属板との接合時に金属板の加工が同時に行えるからといって、そのことが樹脂成形体のプレス成形時に行えることを示しているとは認められない。
よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。

(ウ)小括
したがって、相違点5及び6について検討するまでもなく、本件発明5は、先願発明と同一ではない。

ウ 本件発明10?12及び15?17と先願発明との対比・判断
本件発明5を直接又は間接的に引用する請求項10?12及び15?17に係る発明は、本件発明5の特定事項をすべて有し、さらに限定したものであるから、本件発明5と同様に、先願発明と同一であるとはいえない。

(5)申立理由3-2(甲5に基づく拡大先願)について
取消理由において採用しなかった、甲5に基づく拡大先願にかかる申立理由3-2の対象であった、訂正前の請求項1?2、10?13及び15に係る発明について、本件訂正請求による訂正によって、請求項1及び2は削除され、訂正前の請求項10?13及び15に係る発明は、いずれも甲5に基づく拡大先願に係る特許異議申立理由とされなかった請求項4?6を直接又は間接的に引用する請求項に係る発明となった。
そして、本件発明4及び6は、上記「第2 2(2)」で述べたように、それぞれ、独立特許要件を満たしており、本件発明5は、取消理由の理由がなく、その他に特許を取り消すべき理由を発見しないものである。
そうすると、本件特許10?13、15及び16は、本件発明4?6の発明特定事項をすべて含み、さらに限定するものであるから、申立理由3-2は理由がない。


第7 結語
以上のとおりであるから、当審において通知した取消理由及び特許異議申立人が主張する申立理由によっては、本件特許の請求項5、10ないし13及び15ないし17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項5、10ないし13及び15ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、上記「第2 1(1)」のとおり、本件訂正請求により削除された。これにより、請求項1?3に係る特許に対する特許異議申立人による特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】削除
【請求項2】削除
【請求項3】削除
【請求項4】
シート状又は帯状であって深絞りができる半製品(1、1’)を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品(5)を製造するための方法において、前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板(1.1)と;
前記金属板上に材料ボンディングの形で塗布された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)と;
を具え、
前記金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)を有し;
前記プラスチック層(1.2、1.4)が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体(2)を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体(2)が、連結層として前記プラスチック層(1.2、1.4)の上に、射出成形によって、材料ボンディングの形で成形され;
前記プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4’)によって三次元成形され、前記成形金型が、少なくとも1つの一体型射出成形キャビティ(4.1)と、前記射出成形キャビティ(4.1)に入る少なくとも1つの射出成型チャネルを有することを特徴とする方法。
【請求項5】
シート状又は帯状であって深絞りができる半製品(1、1’)を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品(5)を製造するための方法において前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板(1.1)と;
前記金属板上に材料ボンディングの形で塗布された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)と;
を具え、
前記金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)を有し;
前記プラスチック層(1.2、1.4)が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体(2)を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体(2)が、連結層として前記プラスチック層(1.2、1.4)の上に、プレス成形によって、材料ボンディングの形で成形され;
前記プラスチックの構造体(2)の成形と同時に、前記半製品(1、1’)が成形金型(4)によって三次元成形されて、前記成形金型が、プレスしてプラスチック化合物(3)を三次元成形する少なくとも1つの一体型キャビティ(4.1)を持つ形状を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
シート状又は帯状であって深絞りができる半製品(1、1’)を用いることによって金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品(5)を製造するための方法において、前記半製品が:
シート状又は帯状の少なくとも1つの金属板(1.1)と;
前記金属板上に材料ボンディングの形で塗布された少なくとも1つの熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)と;
を具え、
前記金属板(1.1)上の前記プラスチック層(1.2、1.4)が塗布された側が、前記プラスチック層(1.2、1.4)の付着性を改善する表面(1.3、1.5)を有し;
前記プラスチック層(1.2、1.4)が、プラスチックで作られた又は作られる少なくとも1つの構造体(2)を材料ボンディングにより接着剤無しで固着するための連結層として、形成されており;
プラスチックの構造体(2)が、連結層として前記プラスチック層(1.2、1.4)の上に、プレス成形によって、材料ボンディングの形で成形され;
半製品(1、1’)が、ロール成形による成形加工を受け、この半製品の成形中又は成形後に、回転可能なホイール状のツールが、構造体(2)のプレス成形のために使用され、前記ツールには、プラスチック化合物(3)のプレス加工および三次元成形のための少なくとも1つのキャビティを有する形状が与えられていることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれか一項に記載の方法において、連結層として成形されている前記熱可塑性プラスチック層(1.2)を有する少なくとも1つの一体型フランジが、前記ハイブリッド部品(5)上に成形されており、かつ金属/プラスチック複合材として構成されている更なるハイブリッド部品(5)又は有機金属板が前記プラスチック層(1.2)上に溶接によって接合されていることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記2つのハイブリッド部品(5)を組み立てて、中空のチャネル又は閉じた形材を成形することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記ハイブリッド部品と前記有機金属板を組み立てて、中空のチャネル又は閉じた形材を成形することを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項4乃至9のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記金属板(1.1)が、0.1乃至2.5 mmの範囲の厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項4乃至10のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、又は、これらの混合物から製造されることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項4乃至11のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、0.01乃至1.2 mmの範囲の厚さを有することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項4乃至12のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、前記金属板(1.1)上の当該プラスチック層が適用される側を、部分的に被覆していることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項4乃至13のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記熱可塑性プラスチック層(1.2、1.4)が二重に作られていて、当該2つのプラスチック層間に、熱可塑性プラスチック発泡体層が配置されていることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項4乃至14のいずれか一項に記載の方法において、用いられる前記半製品(1、1’)の前記プラスチック層(1.2、1.4)が、少なくとも1つの有機金属板で部分的に被覆されていることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項4、5、7?15のいずれか一項に記載の方法において、前記構造体(2)が成形される前に、前記半製品を三次元構造へと成形することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記成形の工程が、深絞り又はロール成形によって行われることを特徴とする方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-10 
出願番号 特願2016-539463(P2016-539463)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (B29C)
P 1 652・ 113- YAA (B29C)
P 1 652・ 161- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 越本 秀幸  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 加藤 友也
大畑 通隆
登録日 2018-11-22 
登録番号 特許第6438481号(P6438481)
権利者 ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アーゲー
発明の名称 金属/プラスチック複合材の三次元形状ハイブリッド部品を製造するための半製品及び方法、及びその半製品の使用  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  
代理人 特許業務法人北青山インターナショナル  
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