ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C03C 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C03C |
---|---|
管理番号 | 1362314 |
異議申立番号 | 異議2019-700730 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-09-13 |
確定日 | 2020-03-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6480722号発明「ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6480722号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 特許第6480722号の請求項1?6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6480722号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成26年12月10日に出願され、平成31年2月15日にその特許権の設定登録がされ、平成31年3月13日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、請求項1?6に係る特許に対して、令和1年9月13日付けで特許異議申立人宮園祐爾による特許異議の申立てがされ、令和1年11月7日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和2年1月10日付けで意見書及び訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)の提出がされ、本件訂正請求書に対して特許異議申立人に意見を求めたところ、意見書の提出はされなかったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求書による訂正の内容は、以下のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「P^(5+)含有量は10?45カチオン%であり」との記載を、「P^(5+)含有量は10?30カチオン%であり」に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1における「Al^(3+)およびP^(3+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))」との記載を、「Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))」に訂正する。 (3)訂正事項3 明細書の段落【0009】における「Al^(3+)およびP^(3+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))」との記載を、「Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))」に訂正する。 (4)訂正事項4 明細書の段落【0036】における「Al^(3+)とP^(3+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))を、0.39未満とする。モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))の上限は、0.14以下、0.10以下、0.08以下の順に好ましい。また、上述のガラスは、上記の通りR’^(+)含有量(Li^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量)は0%でもよいため、モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))」との記載を、「Al^(3+)とP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))を、0.39未満とする。モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))の上限は、0.14以下、0.10以下、0.08以下の順に好ましい。また、上述のガラスは、上記の通りR’^(+)含有量(Li^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量)は0%でもよいため、モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))」に訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0073】における「Al^(3+)およびP^(3+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))」との記載を、「Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))」に訂正する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0088】における「Al^(3+)およびP^(3+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))」との記載を、「Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))」に訂正する。 ここで、訂正前の請求項1?6について、同請求項2?6が、訂正事項1及び2によって訂正される請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正事項1及び2の特許請求の範囲に係る訂正は、一群の請求項〔1?6〕に対して請求されたものであり、また、訂正事項3?6の明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1?6〕について請求されたものである。 なお、本件訂正請求書に添付された訂正明細書の段落【0032】には、 との取り消し線が付された記載があるが、当該取り消し線は明らかな誤記であって、「更に、上述のガラスにおいては、ガラスの熱的安定性および均質性向上の観点」との記載が正しい記載であると認める。 2 訂正要件の判断 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「P^(5+)含有量」の数値範囲を「10?45カチオン%」から「10?30カチオン%」に減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。そして、願書に添付した明細書の段落【0021】には、「P^(5+)含有量は、ガラスの均質性、耐酸性向上の観点から、好ましくは45%以下であり、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは35%以下であり、一層好ましくは30%以下である。」と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものである。 (2)訂正事項2?6について 願書に最初に添付された特許請求の範囲の請求項1、並びに、願書に最初に添付された明細書の段落【0009】、【0036】、【0073】及び【0088】には、「モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))」と記載され、一方、同明細書の【表1】、【表2】及び【表3】には、「(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))」と記載されていることからみて、「P^(3+)」あるいは「P^(5+)」のいずれかは誤記であることは明らかである。 そして、願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲の記載において、上記「モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))」に係る箇所以外のリンカチオンは、「P^(5+)」と記載されていること、さらに、ガラス成分としてのリンを5価のカチオン成分として取り扱うことが当該技術分野の技術常識であることからして、「P^(3+)」との記載は誤りであり、「P^(5+)」との記載が正しい記載であるといえる。 よって、訂正事項2?6は、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてなされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 本件発明 本件訂正請求書により訂正された請求項1?6に係る発明(以下、「本件発明1?6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 カチオン成分として、P^(5+)、Al^(3+)、Ba^(2+)およびR^(2+)(R^(2+)は、Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびZn^(2+)からなる群から選択される一種以上)を少なくとも含み、 アニオン成分として、O^(2-)およびF^(-)を少なくとも含み、 P^(5+)含有量は10?30カチオン%であり、 Al^(3+)含有量は25?40カチオン%であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量(Ba^(2+)+R^(2+))は30?60カチオン%であり、 F^(-)含有量は58アニオン%以上であり、 カチオン成分比率において、 Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は0.56?0.75の範囲であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.58以上であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するBa^(2+)およびSr^(2+)の合計含有量のモル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.60以上であり、 Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は0.39未満であり、 屈折率ndが1.47超1.53以下の範囲であり、かつアッベ数νdが80?95の範囲であるガラス。 【請求項2】 屈折率ndとアッベ数νdとが、下記式1: nd≧2.0466-0.0067×νd …(式1) を満たす請求項1に記載のガラス。 【請求項3】 P^(5+)含有量に対するO^(2-)含有量のモル比O^(2-)/P^(5+)が3.60以上である請求項1または2に記載のガラス。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載のガラスからなるプレス成形用ガラス素材。 【請求項5】 請求項1?3のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子ブランク。 【請求項6】 請求項1?3のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子。」 2 取消理由の概要 令和1年11月7日付けの取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1 訂正前の請求項1に係る発明は、「P^(5+)含有量は10?45カチオン%」であり、「Al^(3+)含有量は25?40カチオン%」であり、「Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量(Ba^(2+)+R^(2+))は30?60カチオン%」であることが特定されているから、訂正前の請求項1に係る発明のAl^(3+)及びP^(5+)の合計含有量の取り得る数値範囲は、35カチオン%?70カチオン%であるといえる。 そして、訂正前の請求項1に係る発明の「P^(5+)含有量は10?45カチオン%」との発明特定事項について検討すると、P^(5+)含有量が上限値(45カチオン%)である場合には、訂正前の請求項1に係る発明のAl^(3+)含有量の取り得る数値範囲(25?40カチオン%)とAl^(3+)及びP^(5+)の合計含有量の取り得る数値範囲(35?70カチオン%)を踏まえると、Al^(3+)含有量は25カチオン%となり、これら数値から算出されるモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は0.357(=25カチオン%/(25カチオン%+45カチオン%))となるため、訂正前の請求項1に係る発明の「Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は0.56?0.75の範囲」との発明特定事項と矛盾する。 よって、訂正前の請求項1?6に係る発明は明確でない。 (2)取消理由2 訂正前の請求項1に係る発明の「Al^(3+)およびP^(3+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(3+)+Al^(3+))は0.39未満」との発明特定事項の「P^(3+)」と、その他の発明特定事項の「P^(5+)」との関係が明確でない。 よって、訂正前の請求項1?6に係る発明は明確でない。 (3)小活 以上のとおりであるから、訂正前の請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 3 取消理由の検討 (1)取消理由1について 本件発明1では、P^(5+)含有量に係る発明特定事項は、「P^(5+)含有量は10?30カチオン%」に限定されており、その上限値(30カチオン%)である場合、本件発明1のAl^(3+)含有量の取り得る数値範囲(25?40カチオン%)を踏まえると、モル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は、0.45(=25カチオン%/(25カチオン%+30カチオン%))?0.57(=40カチオン%/(40カチオン%+30カチオン%))となるし、その下限値(10カチオン%)である場合、同じく上記Al^(3+)含有量の数値範囲を踏まえると、モル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は、0.71(=25カチオン%/(25カチオン%+10カチオン%))?0.80(=40カチオン%/(40カチオン%+10カチオン%))となるため、請求項1に係る発明の「Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は0.56?0.75の範囲」との発明特定事項と矛盾しない。 よって、取消理由1に理由はない。 (2)取消理由2について 本件発明1では、「Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は0.39未満」に特定され、つまり、「P^(3+)」が「P^(5+)」に訂正されたため、その他の発明特定事項の「P^(5+)」との関係が明確になった。 よって、取消理由2に理由はない。 4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の検討 (1)申立理由の概要 特許異議申立人は、証拠として、甲第1号証(特開2007-76958号公報)を提出し、以下の申立理由を主張している。 ア 申立理由1 訂正前の請求項1?6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 イ 申立理由2 訂正前の請求項1に係る発明のP^(5+)の含有量の上限値が45%と規定されているにも関わらず、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許発明」という。)の実施例では、20.66%までしか実験されておらず、約30%の開きがあるため、当業者が実施例に記載された限定的な組成の範囲から、物性要件を満たす組成範囲を訂正前の請求項1に係る発明で特定する数値範囲まで、拡張又は一般化して認識することができないから、訂正前の請求項1?6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明といえない。 よって、訂正前の請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)取消理由1についての検討 ア 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、 「【実施例】 【0117】 ・・・ 実施例1(光学ガラスの製造例) ガラスの原料として、各ガラス成分に相当するリン酸塩、フッ化物などを使用し、表1に示すNo.1?11の組成を有するガラスとなるように前記原料を秤量し、十分混合した。 【0118】 上記調合原料を白金坩堝を使用し850℃で1時間熔解を行った後急冷し粉砕したものをラフメルトカレットとして使用した。このラフメルトカレットを蓋により密閉された白金ルツボに10kg投入して900℃に加熱し、熔融した。次いで、白金ルツボ中に十分な乾燥ガスを導入して乾燥雰囲気を保ちつつ1100℃、2時間かけて熔融ガラスを清澄した。・・・ 【0119】 清澄後、ガラスの温度を清澄時の温度よりも低い850℃まで下げた後、ルツボ底部に接続したパイプからガラスを流出させた。・・・ 【0120】 得られた熔融ガラスを乾燥窒素雰囲気中でカーボン製金型に鋳込んだ。鋳込んだガラスを転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、転移温度付近で1時間アニールし、アニール炉内で室温まで徐冷して、表1に示すNo.1?11の各光学ガラスを得た。 【0121】 得られた各光学ガラスNo.1?11を顕微鏡によって拡大観察したところ、結晶の析出や原料の熔け残りは認められなかった。 【0122】 得られた光学ガラスNo.1?11について、屈折率(nd)、アッべ数(νd)、ガラス転移温度(Tg)を、以下のようにして測定した。測定結果を表1?2に示す。 ・・・ 【0123】 なお、屈折率ndに関しては、上記条件で測定された光学ガラスNo.1?11の各屈折率の値をnd^((1))とし、光学ガラスNo.1?11の再熔融、冷却後の屈折率nd^((2))を次のようにして測定した。 ・・・ 【0126】 【表1】 」 と記載されており、特許異議申立人が主張する上記実施例1のNo.6の光学ガラスに注目して整理すると、甲第1号証には、 「カチオン成分として、P^(5+)含有量が14.0カチオン%、Al^(3+)含有量が29.4カチオン%、Mg^(2+)含有量が3.9カチオン%、Ca^(2+)含有量が22.4カチオン%、Sr^(2+)含有量が14.5カチオン%、Ba^(2+)含有量が8.2カチオン%、Li^(+)含有量が5.0カチオン%、Y^(3+)含有量が2.6カチオン%、La^(3+)含有量が0.0カチオン%、Gd^(3+)含有量が0.0カチオン%であり、 アニオン成分として、F^(-)含有量が81.5アニオン%、O^(2-)含有量が18.5アニオン%であるガラス組成を有し、 屈折率の値ndが1.4679、アッベ数νdが89.1である光学ガラス。」 の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 イ 本件発明1について (ア)甲1発明との対比及び判断 本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「P^(5+)含有量が14.0カチオン%」、「Al^(3+)含有量が29.4カチオン%」、「F^(-)含有量が81.5アニオン%」、及び、「アッベ数νdが89.1」は、それぞれ、本件発明1の「P^(5+)含有量は10?30カチオン%」、「Al^(3+)含有量は25?40カチオン%」、「F^(-)含有量は58アニオン%以上」、及び、「アッベ数νdが80?95の範囲」に相当する。 また、甲1発明の「Mg^(2+)含有量が3.9カチオン%、Ca^(2+)含有量が22.4カチオン%、Sr^(2+)含有量が14.5カチオン%、Ba^(2+)含有量が8.2カチオン%」であることは、これらの合計含有量が「49カチオン%」になり、また、甲1発明のガラス組成にZn^(2+)が含有していないことから、本件発明1の「Ba^(2+)およびR^(2+)〔Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびZn^(2+)からなる群から選択される一種以上〕の合計含有量(Ba^(2+)+R^(2+))は30?60カチオン%」を満足する。 さらに、甲1発明のガラス組成は、Zn^(2+)、Na^(+)及びK^(+)を含有しておらず、当該ガラス組成の各カチオン成分の含有量から、本件発明1のカチオン成分比率を算出すると、モル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は「0.68」、モル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))は「0.60」、モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は「0.12」になることから、本件発明1の「モル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は0.56?0.75の範囲」、「モル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.58以上」、「モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は0.39未満」を満足する。 したがって、本件発明1は、甲1発明と、 「カチオン成分として、P^(5+)、Al^(3+)、Ba^(2+)およびR^(2+)(R^(2+)は、Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびZn^(2+)からなる群から選択される一種以上)を少なくとも含み、 アニオン成分として、O^(2-)およびF^(-)を少なくとも含み、 P^(5+)含有量は10?30カチオン%であり、 Al^(3+)含有量は25?40カチオン%であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量(Ba^(2+)+R^(2+))は30?60カチオン%であり、 F^(-)含有量は58アニオン%以上であり、 カチオン成分比率において、 Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は0.56?0.75の範囲であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.58以上であり、 Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は0.39未満であり、 アッベ数νdが80?95の範囲であるガラス」である点で一致し、以下の点で相違している。 (相違点1) 本件発明1では、「Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するBa^(2+)およびSr^(2+)の合計含有量のモル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.60以上」であることが特定されているのに対して、甲1発明では、これのガラス組成の各カチオン成分の含有量から当該モル比を算出した値は「0.46」である点。 (相違点2) 本件発明1では、屈折率ndが「1.47超1.53以下の範囲」であるのに対して、甲1発明は、屈折率ndが「1.4679」である点。 まず、相違点1について検討するに、モル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))をパラメータとする技術思想は、甲第1号証に記載も示唆もされていないし、このような技術思想が本件特許に係る出願時の技術常識であるともいえないから、甲1発明において、そもそも、モル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))を0.60以上にすることは、当業者が想起し得ることではない。 したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)特許異議申立人の主張について 上記相違点1に関して、特許異議申立人は、甲第1号証には、実施例のガラスが、Ba^(2+)、Mg^(2+)、Sr^(2+)及びCa^(2+)を含むことが記載されていること、甲第1号証の段落【0040】には、Ba^(2+)、Mg^(2+)、Sr^(2+)及びCa^(2+)を調整できることが記載されていること、及び、甲第1号証のすべての実施例の各ガラス組成から算出したモル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))の範囲は0.46?0.74になり、訂正前の請求項1に係る発明の数値範囲と重複することを根拠にして、甲1発明において、モル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))を0.06以上にすることは、単なる設計事項である旨を主張している(特許異議申立書第6?8頁の「(4-2-1)」参照)。 当該主張について検討するに、甲第1号証の段落【0035】?【0040】の記載からして、甲第1号証には、Ba^(2+)、Mg^(2+)、Sr^(2+)及びCa^(2+)は、それぞれが置換可能な成分であり、また、低分散を保ちつつ高屈折率の光学ガラスを得る観点から、Mg^(2+)、Sr^(2+)又はCa^(2+)含有量の一部をBa^(2+)に置換して、Ba^(2+)含有量を増やすことは示唆されているといえるものの、上記(ア)で検討したとおり、甲1発明において、そもそも、モル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))を「0.60以上」とすることは、当業者が想起し得ることではなく、設計事項になり得ないものである。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。 ウ 本件発明2?6について 本件発明2?6は、本件発明1を更に限定するものであるから、本件発明1に対する検討と同様に、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえない。 エ 小活 以上で検討したとおり、請求項1?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、特許異議申立人の主張する申立理由1に理由はない。 (3)申立理由2についての検討 本件発明1では、P^(5+)含有量に係る発明特定事項は「P^(5+)含有量は10?30カチオン%」となっている。 そして、P^(5+)成分は、本件特許明細書の段落【0021】に記載されているとおり、ネットワーク形成成分であるところ、例えば、本件発明1のP^(5+)含有量の上限値(30カチオン%)に最も近い実施例(No.5)のガラス(P^(5+)含有量が20.66カチオン%、屈折率1.52066、アッベ数80.22)において、ガラス製造において通常行われる試行錯誤の範囲内で、ネットワーク形成成分であって低分散特性に寄与する成分であるAl^(3+)成分(段落【0022】)の一部、及び、低分散特性に寄与する成分であるBa^(2+)成分及び/又はSr^(2+)成分(段落【0024】、【0029】)の一部を、P^(5+)成分に置き換えると共に、低分散特性に寄与するアニオン成分であるF^(-)成分(段落【0019】)の含有量を調整することで、P^(5+)含有量が30カチオン%であるガラス組成にしても、本件発明1の「屈折率ndが1.47超1.53以下の範囲であり、かつアッベ数νdが80?95の範囲である」との物性要件を満たすガラスが得られることを当業者であれば認識できる。 したがって、当業者が実施例に記載されたガラス組成範囲を、本件発明1で特定するガラス組成の数値範囲まで拡張又は一般化することを当業者が認識できるから、特許異議申立人の主張する申立理由2に理由はない。 5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、本件請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。 そして、他に本件請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子 【技術分野】 【0001】 本発明は、ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子に関する。 【背景技術】 【0002】 高屈折低分散ガラスとして、リンとフッ素とを含むガラス(フツリン酸系ガラス)が知られている(特許文献1?4参照)。 【特許文献】 【0003】 【特許文献1】特開2012-153602号公報 【特許文献2】特開平2-149445号公報 【特許文献3】特開平5-208842号公報 【特許文献4】特開平7-157330号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 高屈折率低分散ガラスは、各種レンズなどの光学素子材料として需要が高い。例えば、高屈折率低分散性のレンズは、高屈折率高分散性のレンズと組合せることにより、コンパクトで高機能な色収差補正用の光学系を構成することができるからである。更に、高屈折率低分散性のレンズの光学機能面を非球面化することにより、各種光学系の一層の高機能化、コンパクト化を図ることができる。 【0005】 上記のように光学素子材料として需要が高い高屈折率低分散ガラスの有用性を更に高めるためには、その耐酸性を一層向上することが望まれる。詳しくは、次の通りである。 近年、光学素子が用いられる環境は屋内に限られず、屋外で用いられることも多くなってきている。例えば屋外で使用される光学素子としては、車載カメラ用のレンズ、屋外に設置される監視カメラ用のレンズ等が挙げられる。これら光学素子は、屋外において、近年問題となっている酸性雨に晒されることになるが、耐酸性が高いガラスからなる光学素子であれば、酸性雨に晒されても変質されにくい。また、排気ガスには酸性雨の原因物質と言われている各種酸性ガスが含まれる。日々排気ガスに晒される車載カメラ用のレンズは、これらの酸性ガスに起因する変質を低減する上でも、耐酸性が高いガラスからなることが望ましい。加えて、大気中には排気ガス等に起因する各種酸性ガスが混入しているため、光学素子は大気中の酸性ガスに晒されることになる。大気中の酸性ガスに起因するガラスの変質は通常ごくわずかであり実用に影響のない程度ではあるが、ガラスの耐酸性を一層向上することにより、このようなわずかな変質さえも低減された極めて高品質な光学素子を提供することも可能となる。 このように、高屈折率低分散ガラスの有用性を更に高める上で、耐酸性を更に向上することは望ましい。 【0006】 加えて光学素子材料として用いられるガラスには、 ・熱的安定性を向上することにより、ガラス製造中の結晶化を抑制すること、 ・脈理の発生を抑制することにより、その均質性を高めること、 も望まれる。 【0007】 しかるに本発明者の検討によれば、従来の高屈折低分散フツリン酸系ガラスは、優れた熱的安定性と均質性を実現しつつ耐酸性を一層向上するためには、更なる改善が求められるものであった。 【0008】 本発明の一態様は、熱的安定性、均質性および耐酸性に優れる高屈折率低分散フツリン酸系ガラスを提供することを目的とする。 【0009】 本発明の一態様は、 カチオン成分として、P^(5+)、Al^(3+)、Ba^(2+)およびR^(2+)(R^(2+)は、Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびZn^(2+)からなる群から選択される一種以上)を少なくとも含み、 アニオン成分として、O^(2-)およびF^(-)を少なくとも含み、 カチオン成分比率において、 Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は0.56?0.75の範囲であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.58以上であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するBa^(2+)およびSr^(2+)の合計含有量のモル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.60以上であり、 Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は0.39未満であり、 屈折率ndが1.47超1.53以下の範囲であり、かつアッベ数νdが80?95の範囲であるガラス、 に関する。 【0010】 上記ガラスは、カチオン成分として、P^(5+)、Al^(3+)、Ba^(2+)およびR^(2+)(R^(2+)は、Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびZn^(2+)からなる群から選択される一種以上)を少なくとも含み、アニオン成分として、O^(2-)およびF^(-)を少なくとも含むフツリン酸系ガラスである。かかるフツリン酸系ガラスにおいて、上記各種成分の含有量・合計含有量の割合を上記範囲内とすることにより、屈折率ndが1.47超1.53以下の範囲かつアッベ数νdが80?95の範囲である高屈折率低分散特性とともに、優れた熱的安定性、均質性および耐酸性を実現することが可能となる。 【発明の効果】 【0011】 本発明の一態様によれば、熱的安定性、均質性および耐酸性に優れる高屈折率低分散フツリン酸系ガラスを提供することができる。更に、本発明の一態様によれば、上記ガラスからなるプレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子を提供することができる。 【発明を実施するための形態】 【0012】 [ガラス] 本発明の一態様にかかるガラスは、上記ガラス組成を有し、屈折率ndが1.47超1.53以下の範囲であり、かつアッベ数νdが80?95の範囲であるガラスである。以下、上記ガラスの詳細について説明する。 【0013】 なお以下において、屈折率は、特記しない限り、ヘリウムのd線(波長587.56nm)における屈折率ndをいうものとする。 また、アッベ数νdは、分散に関する性質を表す値として用いられるものであり、以下の式で表されるものとする。ここで、nFは青色水素のF線(波長486.13nm)における屈折率、nCは赤色水素のC線(656.27nm)における屈折率である。 νd=(nd-1)/nF-nC 【0014】 本発明におけるガラス組成は、特にカチオン%成分の含有量は、例えばICP-AES(Inductively Coupled Plasma - Atomic Emission Spectrometry)などの方法により求めることができる。定量分析は、ICP-AESを用い、各元素別に行われる。その後、分析値はカチオン%表示に換算される。ICP-AESによる分析値は、例えば、分析値の±5%程度の測定誤差を含んでいることがある。したがって、分析値から換算されたカチオン%表記の値についても、同様に±5%程度の誤差を含んでいることがある。 また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%または含まないもしくは導入しないとは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、この構成成分の含有量が不純物レベル程度以下であることを指す。 【0015】 ガラス組成については、特記しない限り、カチオン成分の含有量および合計含有量は、カチオン%表示のガラス組成におけるカチオン%(カチオン成分比率)で表示し、アニオン成分の含有量および合計含有量は、アニオン%表示のガラス組成におけるアニオン%(アニオン成分比率)で表示する。また、カチオン成分の割合は、カチオン%表示のガラス組成におけるモル比、アニオン成分の割合は、アニオン%表示のガラス組成におけるモル比、カチオン成分とアニオン成分との割合は、原子%表示のガラス組成におけるモル比で表示する。なお、周知のように、ガラスは電気的に中性であることから、カチオン成分比率とアニオン成分比率により表示されるガラス組成から、原子%表示のガラス組成を一義的に導くことができ、原子%表示のガラス組成から、カチオン成分比率とアニオン成分比率により表示されるガラス組成を一義的に導くこともできる。 【0016】 本明細書中で用いる、ガラスの熱的安定性と耐失透性とは、ともに、ガラス中における結晶の析出しにくさを意味する。ガラス中における結晶の析出しにくさには、融液状態のガラスにおける結晶の析出しにくさと、固化したガラスにおける結晶の析出しにくさ、中でも固化したガラスを再加熱したときの結晶の析出のしにくさが含まれ、熱的安定性、耐失透性ともに、相互の意味を含むが、熱的安定性は主として前者、耐失透性は主として後者を指すものとする。 【0017】 <ガラス組成> (アニオン成分) O^(2-)は必須のアニオン成分であり、耐酸性を維持する働きを有する。その含有量は、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましい。また、熱的安定性を維持する観点からは、60%以下であることが好ましい。 【0018】 上述の光学ガラスは、均質性の向上(脈理の更なる低減)、光学特性の安定化等の観点から、必須のアニオン成分であるO^(2-)を、後述する必須のカチオン成分であるP^(5+)とのモル比O^(2-)/P^(5+)が3.60以上となる量で含むことが好ましい。モル比O^(2-)/P^(5+)は、より好ましくは3.65以上である。モル比O^(2-)/P^(5+)の上限は、熱的安定性の観点からは、4.00以下であることが好ましい。 【0019】 一方、F^(-)は、低分散特性を有するガラスを得る上で必須のアニオン成分であり、その含有量は、58%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。また、耐酸性の更なる向上、および研削、研磨等の加工に適したガラス(加工性に優れたガラス)を得る観点からは、90%以下であることが好ましく、85%以下であることがより好ましく、80%以下であることが更に好ましい。 【0020】 以上説明した通り、上述の光学ガラスは、アニオン成分として、O^(2-)およびF^(-)を必須成分として含むフツリン酸ガラスである。任意のアニオン成分として、Cl^(-)、Br^(-)、I^(-)、S^(2-)、Se^(2-)、N^(3-)、NO_(3)^(-)、SO_(4)^(2-)等が含まれていてもよい。O^(2-)およびF^(-)以外のアニオン成分の合計含有量は、例えば0?10%とすることができる。O^(2-)およびF^(-)の合計含有量は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが更に好ましく、99%以上であることが一層好ましい。 上述の任意のアニオン成分の中で、Cl^(-)、Br^(-)、I^(-)は、パイプから熔融ガラスを流出する際、パイプ外周へのガラス濡れ上がりを抑制し、濡れ上がりによるガラスの品質低下を抑制することに寄与し得る。また、Cl^(-)は脱泡剤としての効果もある。その含有量は、好ましくは0?2%、更に好ましくは0?1%である。 【0021】 (カチオン成分) P^(5+)は、ガラスネットワーク形成成分である。P^(5+)とO^(2-)とのモル比O^(2-)/P^(5+)の好ましい範囲については、先に説明した通りである。また、Al^(3+)とP^(5+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+ P^(5+))については、後述する。 P^(5+)含有量は、ガラスの均質性、耐酸性向上の観点から、好ましくは45%以下であり、より好ましくは40%以下であり、更に好ましくは35%以下であり、一層好ましくは30%以下である。ガラスの熱的安定性向上の観点からは、P^(5+)含有量は10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましい。 【0022】 Al^(3+)は、ガラスネットワーク形成成分であり、また耐酸性、加工性の向上、ガラスの低分散化等に寄与する成分である。低分散特性の実現(アッベ数の増加)の観点からは、Al^(3+)含有量は25%以上であることが好ましく、27%以上であることがより好ましい。良好な熱的安定性を維持する観点からは、Al^(3+)含有量は40%以下であることが好ましく、38%以下であることがより好ましい。 【0023】 上述のガラスにおいて、Al^(3+)とP^(5+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は、ガラスの熱的安定性および均質性を高める観点から、0.56?0.75の範囲とする。均質性の観点から、モル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))の下限は、0.57以上、0.60以上、0.61以上の順に好ましい。また、熱的安定性の観点から、モル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))の上限は、0.74以下、0.70以下、0.68以下の順に好ましい。 【0024】 Ba^(2+)は、屈折率を高める働きがあり、上述のガラスにおける必須成分である。また、上述の通り、耐酸性、加工性の向上やガラスの低分散化等に寄与する成分であるAl^(3+)の含有量を高め、ガラスの熱的安定性を高める上で有効な成分でもある。このような効果を得るため、Ba^(2+)含有量は10%以上であることが好ましく、12%以上であることがより好ましい。リヒートプレス法などのような再加熱時における耐失透性向上の観点からは、Ba^(2+)含有量は40%以下であることが好ましく、35%以下であることがより好ましい。 【0025】 R^(2+)は、Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびZn^(2+)からなる群から選択される一種以上である。上述の光学ガラスには、R^(2+)の一種または二種以上が必須成分として含まれる。R^(2+)含有量(二種以上含まれる場合には、それらの合計含有量)は、耐失透性向上の観点からは、45%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、38%以下であることが更に好ましい。ガラスの安定性向上の観点からは、R^(2+)含有量は5%以上であることが好ましく、10%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましい。 【0026】 ガラスの熱的安定性向上の観点からは、Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量(Ba^(2+)+R^(2+))は30%以上であることが好ましく、32%以上であることがより好ましく、35%以上であることが更に好ましい。耐失透性向上の観点からは、Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量(Ba^(2+)+R^(2+))は60%以下であることが好ましく、55%以下であることがより好ましく、50%以下であることが更に好ましい。 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量(Ba^(2+)+R^(2+))に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))、Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するBa^(2+)およびSr^(2+)の合計含有量のモル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))については、後述する。 【0027】 Mg^(2+)は、加工性や熱的安定性の向上に寄与する成分である。Mg^(2+)含有量の下限値は、例えば0%以上であり、好ましくは0.5%以上である。上限値については、熔融性向上の観点からは、10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。ガラス転移温度(Tg)が低いガラスは、プレス成形性が良好であり好ましい。低Tgの光学ガラスを得る観点からも、Mg^(2+)含有量は上述の範囲であることが好ましい。 【0028】 Ca^(2+)も、加工性や熱的安定性の向上に寄与する成分である。Ca^(2+)含有量の下限値は、例えば0%以上である。上限値については、耐失透性向上の観点からは、20%以下であることが好ましく、18%以下であることがより好ましく、17%以下であることが更に好ましい。 【0029】 Sr^(2+)は、屈折率を高める働きをする成分である。Sr^(2+)含有量の下限値は、例えば0%以上である。上限値については、耐失透性向上の観点からは、40%以下であることが好ましく、38%以下であることがより好ましく、35%以下であることが更に好ましい。 【0030】 Zn^(2+)は、屈折率を維持しつつガラス転移温度を低下させる働きをする成分である。低分散特性の実現の観点からは、Zn^(2+)含有量は5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。Zn^(2+)含有量は、0%であってもよい。 【0031】 上述のガラスにおいては、ガラスの熱的安定性の観点から、Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))を0.58以上とする。モル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))の下限は、0.59以上、0.63以上、0.65以上、0.67以上の順に好ましい。ガラスの熱的安定性の更なる向上の観点から、モル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))の上限は、0.95以下、0.90以下、0.82以下、0.76以下、0.74以下の順に好ましい。 【0032】 から、Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するBa^(2+)およびSr^(2+)含有量のモル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.60以上とする。モル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))の下限は、0.61以上、0.70以上、0.75以上、0.77以上の順に好ましい。ガラスの熱的安定性および均質性の更なる向上の観点から、モル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))の上限は、1.0以下、0.98以下、0.90以下、0.85以下の順に好ましい。 【0033】 上述のガラスは、以上説明した必須成分とともに、R’^(+)を任意成分として含むことができる。R’^(+)は、Li^(+)、Na^(+)およびK^(+)からなる群から選択される一種以上である。 R’^(+)含有量(二種以上含まれる場合には、それらの合計含有量)は、ガラスの熱的安定性、および脈理を低減し均質性の高いガラスを得る上から、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。R’^(+)含有量は0%であってもよい。熱的安定性、ガラスの粘性低下、ガラス転移温度の低下、熔融性の改善などの観点から、R’^(+)含有量は1%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましい。 【0034】 Li^(+)、Na^(+)、K^(+)は、ガラスの粘性を低下させるとともに、ガラス転移温度を低下させ、ガラスの熔融性を改善することに寄与する成分である。Li^(+)含有量は、例えば0%以上、好ましくは2%以上である。耐失透性の向上、または脈理低減の観点からは、Li^(+)含有量は10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましい。 【0035】 Na^(+)、K^(+)は、それぞれ含有量が5%以下であることが、低分散特性を実現する上から好ましく、3%以下であることがより好ましい。Na^(+)含有量、K^(+)含有量については、それぞれ0%としてもよい。 【0036】 上述のガラスにおいて、先に記載したように従来のガラスより更に優れた耐酸性を実現する観点から、Al^(3+)とP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))を、0.39未満とする。モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))の上限は、0.14以下、0.10以下、0.08以下の順に好ましい。また、上述のガラスは、上記の通りR’^(+)含有量(Li^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量)は0%でもよいため、モル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は0であってもよい。 【0037】 更に上述のガラスは、Y^(3+)、La^(3+)、Gd^(3+)およびLu^(3+)からなる群から選択される一種以上(RE^(3+)と表記する。)を含むこともできる。耐酸性の向上、高屈折率化、ガラスの揮発低減、脈理低減への寄与、ガラス原料の熔け残り防止の観点から、RE^(3+)含有量(二種以上含まれる場合には、それらの合計含有量)は、14%以下であることが好ましく、13%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましく、8%以下であることが一層好ましく、5%未満であることが一層好ましい。下限値については、例えば0%以上であり、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.3%以上であり、更に好ましくは1%以上である。 【0038】 Y^(3+)は、熱的安定性を維持しつつ屈折率を高める働きをする成分である。ガラス原料の熔け残り防止の観点から、Y^(3+)含有量は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは9%以下であり、更に好ましくは8%以下である。下限値については、例えば0%以上であり、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.3%以上であり、更に好ましくは1%以上である。 【0039】 La^(3+)、Gd^(3+)、Lu^(3+)は、屈折率を高める働きをする成分である。ガラス原料の熔け残り防止、熱的安定性の観点から、La^(3+)、Gd^(3+)、Lu^(3+)のそれぞれの含有量は、好ましくは10%以下であり、より好ましくは8%以下であり、更に好ましくは6%以下であり、一層好ましくは4%以下である。下限値については、例えば0%以上であり、好ましくは0.1%以上であり、より好ましくは0.3%以上であり、更に好ましくは1%以上である。 【0040】 上述の光学ガラスは、以上説明したカチオン成分に加えて、Si^(4+)を含むこともできる。熔融性や熱的安定性の維持、揮発性の低減という観点から、Si^(4+)含有量は、好ましくは5%以下であり、より好ましくは3%以下であり、更に好ましくは1%以下である。Si^(4+)含有量は0%でもよい。 【0041】 上述の光学ガラスは、B^(3+)を含むこともできる。熔融性や熱的安定性の観点、ガラスの揮発性抑制という観点から、B^(3+)含有量は、好ましくは7%以下であり、より好ましくは6%以下、更に好ましくは5.5%以下である。B^(3+)含有量は0%でもよい。 【0042】 更に、上述のガラスは、Ga^(3+)、Zr^(4+)、Nb^(5+)、Ta^(5+)、W^(6+)を含むこともできる。 含有量については、Ga^(3+)含有量は、例えば2%以下であり、好ましくは1.5%以下であり、更に好ましくは1%以下であり、0%であってもよい。 Zr^(4+)含有量は、例えば5%以下であり、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下であり、0%でもよい。 Nb^(5+)含有量は、例えば5%以下であり、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下であり、0%でもよい。 Ta^(5+)含有量は、例えば5%以下であり、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下であり、0%でもよい。 W^(6+)含有量は、例えば5%以下であり、好ましくは3%以下であり、より好ましくは1%以下であり、0%でもよい。 【0043】 Sbは、清澄剤として添加可能である。ガラスの着色や、その酸化作用による成形型の成形面劣化を抑制する観点から、Sbの添加量は、Sb_(2)O_(3)に換算して外割りで0?1質量%が好ましく、より好ましくは0?0.5質量%、更に好ましくは0?0.1質量%である。なお外割りとは、Sb_(2)O_(3)に換算し、酸化物基準のガラス組成において、Sb_(2)O_(3)以外のガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSb_(2)O_(3)含有量をいう。ここで、「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されてガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいうものとする。 【0044】 Snも清澄剤として添加可能である。ガラスの着色や、その酸化作用による成形型の成形面劣化を抑制する観点から、Snの添加量は、SnO_(2)に換算して外割りで0?1質量%が好ましく、より好ましくは0?0.5質量%である。なお外割りについては、上記と同様である。 【0045】 上述の成分の他に、Ce酸化物、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、フッ化物を清澄剤として少量、添加することもできる。 【0046】 また、環境影響に配慮し、Pb、As、Cd、U、Thは導入しないことが好ましい。 更に、ガラスの優れた光線透過性を活かす上から、Cu、Er、Eu、Tb、Cr、Co、Ni、Ndなどの着色の要因となる物質を導入しないことが好ましい。 【0047】 以上、上述の光学ガラスのガラス組成について説明した。次に、上述の光学ガラスのガラス特性について説明する。 【0048】 <ガラス特性> 上述の光学ガラスは、低分散特性を有する光学ガラスであり、そのアッベ数νdは80以上、好ましくは81以上である。ただし、アッベ数νdは95以下とする。好ましくは93以下、より好ましくは90以下、更に好ましくは88以下である。 【0049】 上述の光学ガラスは、先に記載した低分散特性とともに、高い屈折率を有する高屈折率低分散ガラスである。屈折率ndは、1.47超である。更に、1.475以上、1.48以上、1.485以上、1.49以上の順に好ましい。また、屈折率ndは、1.53以下である。更に、1.525以下、1.515以下、1.51以下の順に好ましい。 【0050】 ところで、光学素子用のガラスについては、光学特性の分布を示すために、光学特性マップ(またはアッベ図表とも呼ばれる)が広く使用されている。光学特性マップは、横軸にアッベ数νd、縦軸に屈折率ndを取り、アッベ数νdは横軸の右側から左側に向かうにしたがい増加し、屈折率は縦軸の下方から上方に向かうにしたがい増加するように作成される。 一方、光学系の設計において、屈折率が高く、アッベ数も大きい(分散の低い)ガラスは、色収差の補正、光学系の高機能化、コンパクト化のために極めて有効な光学素子用の材料である。したがって、光学特性マップ上で右肩上がりの直線を設定し、この直線上および直線よりも屈折率が高い(マップ上、直線よりも左側の領域に位置する)ガラスを提供することの意義は非常に大きい。ただし、従来の高屈折率低分散フツリン酸系ガラスのガラス組成では、そのような光学特性を有するガラスにおいて、優れた熱的安定性、均質性および耐酸性を実現することは困難であった。これに対し先に記載した組成調整を行うことにより、上述のガラスは、優れた熱的安定性、均質性および耐酸性とともに、下記式1を満たす高屈折率低分散特性を示すことができる。更には、下記式2を満たす高屈折率低分散特性を示すこともできる。このような光学特性を示すガラスは、光学系において有用な高屈折率低分散ガラスである。 nd≧2.0466-0.0067×νd …(式1) nd≧1.4952-0.0054×νd …(式2) 【0051】 上述の光学ガラスは、高屈折率・低分散特性を有するとともに、優れた耐失透性を示すこともできる。耐失透明性、中でもリヒートプレス時の結晶の析出しにくさについては、ガラス転移温度Tgに対して結晶化温度Tcが十分高いほど、耐失透性に優れる光学ガラスと言うことができる。これは、リヒートプレス時の加熱は、ガラス転移温度近傍で行われることが多いためである。この耐失透性に関して、上述の光学ガラスは、下記(1)式を満たす耐失透性を示すことができる。 90℃≦(Tc-Tg) …(1) 下記(1)式は、好ましくは下記(2)式であり、より好ましくは下記(3)式である。 95℃≦(Tc-Tg) …(2) 100℃≦(Tc-Tg) …(3) 【0052】 ガラス転移温度は、良好なプレス成形性を得る観点からは、ガラス転移温度は低いことが好ましく、例えば550℃以下であることが好適である。 【0053】 以上説明した本発明の一態様にかかるガラスは、屈折率ndおよびアッベ数νdが大きく、光学素子用のガラス材料として有用である。 ところで、レンズなどの光学素子を作製する方法としては、光学素子の形状に近似した光学素子ブランクと呼ばれる中間製品を作り、この中間製品に研削、研磨加工を施して光学素子を製造する方法が知られている。このような中間製品の作製方法の一態様としては、適量の熔融ガラスをプレス成形して中間製品とする方法(ダイレクトプレス法という)がある。また、他の態様としては、熔融ガラスを鋳型に鋳込みガラス板に成形し、このガラス板を切断して複数個のガラス片とし、このガラス片を再加熱、軟化してプレス成形により中間製品にする方法、適量の熔融ガラスをガラスゴブと呼ばれるガラス塊に成形し、このガラス塊を再加熱、軟化してプレス成形し、中間製品を得る方法などがある。ガラスを再加熱、軟化してプレス成形する方法は、ダイレクトプレス法に対してリヒートプレス法と呼ばれる。 また、光学素子を作製する方法としては、熔融ガラスからプレス成形用ガラス素材を作製し、このプレス成形用ガラス素材を成形型により精密プレス成形することにより光学素子を得る方法(精密プレス成形法という)も知られている。精密プレス成形法では、成形型成形面形状を転写することにより、研磨、研削等の機械加工を経ることなく、光学素子の光学機能面を形成することができる。 上述の本発明の一態様にかかるガラスは、以上記載したダイレクトプレス法、リヒートプレス法、精密プレス成形法のいずれの方法にも好適なガラスである。また、上述の本発明の一態様にかかるガラスは、高い均質性を示すことができるため、光学ガラスとして好適である。 【0054】 <ガラスの製造方法> 上述のガラスは、目的のガラス組成が得られるように、原料であるリン酸塩、フッ化物、酸化物などを秤量、調合し、十分に混合して混合バッチとし、熔融容器内で加熱、熔融し、脱泡、攪拌を行い均質かつ泡を含まない熔融ガラスを作り、これを成形することによって得ることができる。具体的には公知の熔融法を用いて作ることができる。 【0055】 [プレス成型用ガラス素材、光学素子ブランク、およびそれらの製造方法] 本発明の他の一態様は、 上述のガラスからなるプレス成形用ガラス素材; 上述のガラスからなる光学素子ブランク; 上述のガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法;および、 上述のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法、 に関する。 【0056】 光学素子ブランクとは、目的とする光学素子の形状に近似し、光学素子の形状に研削、研磨しろを加えた光学素子母材である。光学素子ブランクの表面を研削、研磨することにより、光学素子が仕上げられる。上述の光学ガラスからなるプレス成形用ガラス素材を加熱により軟化した状態で、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製することができる。 【0057】 プレス成形用ガラス素材のプレス成形は、加熱して軟化した状態にあるプレス成形用ガラス素材をプレス成形型でプレスすることにより行うことができる。加熱、プレス成形は、ともに大気中で行うことができる。プレス成形用ガラス素材の表面に、窒化ホウ素などの粉末状離型剤を均一に塗布し、加熱、プレス成形すると、ガラスと成形型の融着を確実に防止できる他、プレス成形型の成形面に沿ってガラスをスムーズに延ばすことができる。プレス成形後にアニールしてガラス内部の歪を低減することにより、均質な光学素子ブランクを得ることができる。 【0058】 一方、プレス成形用ガラス素材とは、プリフォームとも呼ばれ、そのままの状態でプレス成形に供されるものに加え、切断、研削、研磨などの機械加工を施すことによりプレス成形に供されるものも含む。切断方法としては、ガラス板の表面の切断したい部分にスクライビングと呼ばれる方法で溝を形成し、溝が形成された面の裏面から溝の部分に局所的な圧力を加えて、溝の部分でガラス板を割る方法や、切断刃によってガラス板をカットする方法などがある。また、研削方法としてはカーブジェネレーターを用いた球面加工やスムージング加工などが挙げられる。研磨方法としては、酸化セリウムや酸化ジルコニウム等の砥粒を用いた研磨が挙げられる。 【0059】 [光学素子およびその製造方法] 本発明の他の一態様は、 上述の光学ガラスからなる光学素子; 上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法(以下、「方法A」という); 上述のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法(以下、「方法B」という)、 に関する。 【0060】 方法Aにおいて、研削、研磨は公知の方法を適用すればよく、加工後に光学素子表面を十分洗浄、乾燥させるなどすることにより、内部品質および表面品質の高い光学素子を得ることができる。方法Aは、各種球面レンズ、プリズムなどの光学素子を製造する方法として好適である。 【0061】 方法Bにおけるプレス成形は、光学素子の光学機能面をプレス成形型の成形面を転写することにより形成する精密プレス成形法(モールドオプティクス成形とも呼ばれる。)により行うことができる。ここで、光学素子の光線を透過したり、屈折させたり、回折させたり、反射させたりする面を光学機能面と呼ぶ。例えばレンズを例にとると、非球面レンズの非球面や球面レンズの球面などのレンズ面が光学機能面に相当する。精密プレス成形法は、プレス成形型の成形面を精密にガラスに転写することにより、プレス成形で光学機能面を形成する方法である。つまり光学機能面を仕上げるために研削や研磨などの機械加工を加える必要がない。精密プレス成形法は、レンズ、レンズアレイ、回折格子、プリズムなどの光学素子の製造に好適であり、特に非球面レンズを高生産性のもとに製造する方法として最適である。 【0062】 精密プレス成形法の一実施態様では、表面が清浄状態のプリフォームを、プリフォームを構成するガラスの粘度が10^(5)?10^(11)Pa・sの範囲を示すように再加熱し、再加熱されたプリフォームを上型、下型を備えた成形型によってプレス成形する。成形型の成形面には必要に応じて離型膜を設けてもよい。なお、プレス成形は、成形型の成形面の酸化を防止する上から、窒素ガスや不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。プレス成形品は成形型より取り出され、必要に応じて徐冷される。成形品がレンズなどの光学素子の場合には、必要に応じて表面に光学薄膜をコートしてもよい。 【0063】 このようにして、屈折率ndが1.47超1.53以下の範囲であり、アッベ数νdが80?95の範囲であって、各種成形法に好適なリン酸系ガラスからなるレンズ、レンズアレイ、回折格子、プリズムなどの光学素子を製造することができる。 【実施例】 【0064】 以下、本発明を実施例に基づき更に説明する。ただし、本発明は、実施例に示す態様に限定されるものではない。 【0065】 1.ガラスNo.1?30の作製および評価 表1に示す組成のガラスが得られるように、各ガラス成分に対応するリン酸塩、フッ化物、酸化物等のガラス原料を所定の割合に100?300g秤量し、十分に混合して調合バッチとした。これを白金ルツボに入れ、蓋をして、850?1200℃で攪拌しながら空気中または窒素雰囲気中で1?3時間、熔解を行った。熔解後、ガラス融液を40×70×15mmのカーボンの金型に流し、ガラス転移温度まで放冷してから直ちにアニール炉に入れ、ガラスの転移温度範囲で約1時間アニールして炉内で室温まで放冷することにより、No.1?No.30の組成を有する各ガラスを得た。 下記方法により、各ガラスの屈折率、アッベ数、ガラス転移温度Tg、結晶化温度Tcを測定した。 作製したガラスは、いずれも結晶の析出、泡、脈理、原料の熔け残りは認められなかった。このようにして、均質性の高いガラスを作ることができた。 【0066】 測定方法 (1)屈折率(nd)およびアッベ数(νd) 徐冷降温速度を-30℃/時にして得られた光学ガラスについて、最小偏角法により測定した。 (2)ガラス転移温度Tg 示差走査熱量計(DSC(Differential Scanning Calorimetry))により、昇温速度10℃/分にして測定した。 (3)結晶化温度Tc 示差走査熱量計(DSC(Differential Scanning Calorimetry))により、昇温速度10℃/分にして測定した。なお、ガラス試料を昇温していくと、DSC曲線に現れる最初の発熱ピークの温度を結晶化温度Tcとする。 (4)ガラス組成 誘導結合プラズマ原子発光法(ICP-AES法)、またはイオンクロマトグラフフィー法により各成分の含有量を求めた。 【0067】 結果を、表1に示す。 【0068】 【表1】 【0069】 2.比較例1?4のガラスの作製および評価 表2に示す組成のガラスが得られるように、各ガラス成分に対応するリン酸塩、フッ化物、酸化物等のガラス原料を用いた点以外、ガラスNo.1?30と同様の方法でガラスを作製した。 比較例1では、得られたガラスに多くの脈理が発生し、屈折率およびアッベ数を測定することができなかった。 比較例2?4では、得られたガラスに多数の結晶が析出し、屈折率およびアッベ数を測定することができなかった。 以上のように、比較例1?4のガラスは、いずれも熱的安定性または均質性に劣るものであった。 【0070】 【表2】 【0071】 3.比較例5のガラスの作製および評価 表3に示す組成のガラスが得られるように、各ガラス成分に対応するリン酸塩、フッ化物、酸化物等のガラス原料を用いた点以外、ガラスNo.1?30と同様の方法でガラスを作製した。表3中の屈折率、アッベ数は、ガラスNo.1?30と同様の方法で測定した。 【0072】 【表3】 【0073】 4.耐酸性の評価 上記の比較例5、およびガラスNo.29、30のガラスの耐酸性を、以下の方法によって評価した。 各ガラスについて、直径30mm、厚さ5mmの円形のガラス試料を準備し、端面をテープでシーリングした。 シーリング後のガラス試料を、液温50℃の0.01規定(0.01mol/L)硝酸500ml中に1時間浸漬し、浸漬前後の質量を測定し、質量減少率(%)を求めた。各ガラスについて、2つのガラス試料の評価を行い、2つのガラス試料の平均値を求めた。結果を表4に示す。 比較例5のガラスは、特許文献1に記載のガラスに相当するガラスであり、実用上十分に使用可能なガラスである。そのようなガラスよりもガラスNo.29、30のガラスは耐酸性に優れることが、表4に示す結果から確認できる。 以上の結果から、上述の本発明の一態様にかかるガラスが、極めて優れた耐酸性を有することが示された。これは、本発明の一態様にかかるガラスにおいて、Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は0.39未満であることが寄与していると本発明者は推察している。 【0074】 【表4】 【0075】 5.精密プレス成形用プリフォームの作製 次に、No.1?30の各ガラスが得られる高品質かつ均質化された熔融ガラスを白金合金製のパイプから連続流出させた。流出する熔融ガラスをパイプ流出口から滴下させ、複数のプリフォーム成形型で次々と受け、浮上成形法により複数個の球状のプリフォームを成形した。 No.1?30の各ガラスから得られたプリフォームは、顕微鏡で観察できる結晶はなく、透明かつ均質であった。これらのプリフォームはいずれも失透しておらず、高い質量精度のものが得られた。 【0076】 No.1?30の各ガラスから、滴下法に変えて降下切断法を用いてプリフォームを作製した。降下切断法により得られたプリフォームにも同様に失透が認められず、高質量精度のプリフォームが得られた。また、滴下法、降下切断法ともプリフォームに分離の際の痕跡は認められなかった。白金製パイプを使用しても、白金合金製パイプと同様、熔融ガラスの流出によってパイプが破損することはなかった。 【0077】 6.光学素子の作製 上述のプリフォームの表面に必要に応じてコーティングを施し、成形面に炭素系離型膜を設けたSiC製の上下型および胴型を含むプレス成形型内に導入し、窒素雰囲気中で成形型とプリフォームを一緒に加熱してプリフォームを軟化し、精密プレス成形して上記各種ガラスからなる非球面凸メニスカスレンズ、非球面凹メニスカスレンズ、非球面両凸レンズ、非球面両凹レンズの各種レンズを作製した。なお、精密プレス成形の各条件は前述の範囲で調整した。 【0078】 このようにして作製した各種レンズを観察したところ、レンズ表面に傷、クモリ、破損は全く認められなかった。 【0079】 こうしたプロセスを繰り返し行い、各種レンズの量産テストを行ったが、ガラスとプレス成形型の融着などの不具合は発生せず、表面および内部ともに高品質のレンズを高精度に生産することができた。このようにして得たレンズの表面には反射防止膜をコートしてもよい。 【0080】 次いで、上述のプリフォームと同様のものを加熱、軟化し、別途、予熱したプレス成形型に導入し、精密プレス成形して上記各種ガラスからなる非球面凸メニスカスレンズ、非球面凹メニスカスレンズ、非球面両凸レンズ、非球面両凹レンズの各種レンズを作製した。なお、精密プレス成形の各条件は前述の範囲で調整した。 【0081】 このようにして作製した各種レンズを観察したところ、分相による白濁等は認められず、レンズ表面に傷、クモリ、破損は全く認められなかった。 【0082】 こうしたプロセスを繰り返し行い、各種レンズの量産テストを行ったが、ガラスとプレス成形型の融着などの不具合は発生せず、表面および内部ともに高品質のレンズを高精度に生産することができた。このようにして得たレンズの表面には反射防止膜をコートしてもよい。 【0083】 プレス成形型の成形面の形状を適宜、変更し、プリズム、マイクロレンズ、レンズアレイなどの各種光学素子を作製することもできる。 これらの光学素子は、異常部分分散性を有するガラスからなり、高次の色収差補正に好適である。 【0084】 7.光学素子ブランクおよび光学素子の作製 No.1?30の各ガラスが得られる清澄、均質化した熔融ガラスを用意し、白金製パイプから一定流量で連続して流出し、パイプ下方に水平に配置した一側壁が開口した鋳型に流し込み、一定の幅および一定の厚みを有するガラス板に成形しつつ、鋳型の開口部から成形したガラス板を引き出した。引き出されたガラス板を、アニール炉内でアニール処理し、歪を低減し、脈理や異物がなく、着色の少ない上記各ガラスからなるガラス板を得た。 次に、これら各ガラス板を縦横に切断し、同一寸法を有する直方体形状のガラス片を複数個得た。更に複数個のガラス片をバレル研磨して、目的とするプレス成形品の重量にあわせ、プレス成形用ガラスゴブとした。 なお、上述の方法とは別に、熔融ガラスを一定流速で白金製ノズルから流出し、このノズルの下方に多数の受け型を次々と移送して所定質量の熔融ガラス塊を次々と受け、これら熔融ガラス塊を球または回転体形状に成形し、アニール処理してから研削、研磨加工を施して目的とするプレス成形品の質量にあわせ、プレス成形用ガラスゴブとしてもよい。 【0085】 上述各ガラスゴブの全表面に粉末状の離型剤、例えば窒化ホウ素粉末を塗布し、ヒーターで加熱、軟化してから上型および下型を備えたプレス成形型内に投入し、プレス成形型で加圧して目的とするレンズ形状に研削、研磨による取り代を加えたレンズに近似した形状の各レンズブランクを成形した。 【0086】 続いて、各レンズブランクをアニール処理して歪を低減した。冷却したレンズブランクに研削、研磨加工を施して、目的とするレンズに仕上げた。なお、一連の工程は大気中で行った。得られた各レンズとも優れた光透過性を備えていた。レンズには必要に応じて反射防止膜などの光学多層膜をコートすることもできる。 このようなレンズにより、良好な撮像光学系を構成することができる。 なお、プレス成形型の形状、ガラスゴブの体積を適宜設定することにより、プリズム等その他の光学素子を製造することもできる。 これらの光学素子は、異常部分分散性を有するガラスからなり、高次の色収差補正に好適である。 【0087】 最後に、前述の各態様を総括する。 【0088】 一態様によれば、カチオン成分として、P^(5+)、Al^(3+)、Ba^(2+)およびR^(2+)(R^(2+)は、Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびZn^(2+)からなる群から選択される一種以上)を少なくとも含み、アニオン成分として、O^(2-)およびF^(-)を少なくとも含み、カチオン成分比率において、Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は0.56?0.75の範囲であり、Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.58以上であり、Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するBa^(2+)およびSr^(2+)の合計含有量のモル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.60以上であり、Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は0.39未満であり、屈折率ndが1.47超1.53以下の範囲であり、かつアッベ数νdが80?95の範囲であるガラスであって、優れた熱的安定性、均質性および耐酸性を有するガラスを提供することができる。 【0089】 上述のガラスは、先に記載した組成調整を行うことにより、優れた熱的安定性、均質性および耐酸性とともに、屈折率ndとアッベ数νdとが、上記式1を満たす高屈折率低分散特性を示すことができる。 【0090】 上述のガラスは、脈理の更に低減、光学特性の安定化等の観点から、P^(5+)含有量に対するO^(2-)含有量のモル比O^(2-)/P^(5+)が3.60以上であることが好ましい。 【0091】 上述のガラスは、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子を得るためのガラスとして好適である。 【0092】 即ち、他の態様によれば、上述のガラスからなるプレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子が提供される。 【0093】 また、他の態様によれば、上述のガラスをプレス成形用ガラス素材に成形する工程を備えるプレス成形用ガラス素材の製造方法が提供される。 【0094】 また、他の態様によれば、上述のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子ブランクを作製する工程を備える光学素子ブランクの製造方法も提供される。 【0095】 更に他の態様によれば、上述の光学素子ブランクを研削および/または研磨することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法も提供される。 【0096】 更に別の態様によれば、上述のプレス成形用ガラス素材を、プレス成形型を用いてプレス成形することにより光学素子を作製する工程を備える光学素子の製造方法も提供される。 【0097】 今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。 例えば、上述の例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを得ることができる。 また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組合せることは、もちろん可能である。 【産業上の利用可能性】 【0098】 本発明は、ガラスレンズ、レンズアレイ、回折格子、プリズムなどの各種光学素子の製造分野において有用である。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 カチオン成分として、P^(5+)、Al^(3+)、Ba^(2+)およびR^(2+)(R^(2+)は、Mg^(2+)、Ca^(2+)、Sr^(2+)およびZn^(2+)からなる群から選択される一種以上)を少なくとも含み、 アニオン成分として、O^(2-)およびF^(-)を少なくとも含み、 P^(5+)含有量は10?30カチオン%であり、 Al^(3+)含有量は25?40カチオン%であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量(Ba^(2+)+R^(2+))は30?60カチオン%であり、 F^(-)含有量は58アニオン%以上であり、 カチオン成分比率において、 Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Al^(3+)+P^(5+))は0.56?0.75の範囲であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するAl^(3+)含有量のモル比Al^(3+)/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.58以上であり、 Ba^(2+)およびR^(2+)の合計含有量に対するBa^(2+)およびSr^(2+)の合計含有量のモル比(Ba^(2+)+Sr^(2+))/(Ba^(2+)+R^(2+))は0.60以上であり、 Al^(3+)およびP^(5+)の合計含有量に対するLi^(+)、Na^(+)およびK^(+)の合計含有量のモル比(Li^(+)+Na^(+)+K^(+))/(P^(5+)+Al^(3+))は0.39未満であり、 屈折率ndが1.47超1.53以下の範囲であり、かつアッベ数νdが80?95の範囲であるガラス。 【請求項2】 屈折率ndとアッベ数νdとが、下記式1: nd≧2.0466-0.0067×νd …(式1) を満たす請求項1に記載のガラス。 【請求項3】 P^(5+)含有量に対するO^(2-)含有量のモル比O^(2-)/P^(5+)が3.60以上である請求項1または2に記載のガラス。 【請求項4】 請求項1?3のいずれか1項に記載のガラスからなるプレス成形用ガラス素材。 【請求項5】 請求項1?3のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子ブランク。 【請求項6】 請求項1?3のいずれか1項に記載のガラスからなる光学素子。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-03-09 |
出願番号 | 特願2014-250441(P2014-250441) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
YAA
(C03C)
P 1 651・ 121- YAA (C03C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 永田 史泰 |
特許庁審判長 |
豊永 茂弘 |
特許庁審判官 |
後藤 政博 宮澤 尚之 |
登録日 | 2019-02-15 |
登録番号 | 特許第6480722号(P6480722) |
権利者 | HOYA株式会社 |
発明の名称 | ガラス、プレス成形用ガラス素材、光学素子ブランク、および光学素子 |
代理人 | 特許業務法人特許事務所サイクス |
代理人 | 特許業務法人特許事務所サイクス |