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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B29C
審判 全部申し立て 2項進歩性  B29C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B29C
管理番号 1362318
異議申立番号 異議2019-700229  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-25 
確定日 2020-03-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6397114号発明「傾斜シート材、及び、傾斜シート材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6397114号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、4及び5について訂正することを認める。 特許第6397114号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6397114号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、平成29年12月14日の出願であって、平成30年9月7日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年同月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、平成31年3月25日に特許異議申立人 千種 和子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、令和1年5月23日付けで取消理由が通知され、同年7月26日に特許権者 TBカワシマ株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年8月9日に特許権者から訂正請求書を補正する手続補正書が提出され、同年同月26日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年9月24日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年11月14日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和2年1月20日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。
なお、令和1年7月26日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、特許異議申立人には、すでに意見書の提出の機会が与えられており、令和2年1月20日にされた訂正の請求によって、特許請求の範囲が相当程度減縮され、本件特許異議申立事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても、下記第2ないし6のとおり、特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断したことから、特許異議申立人に対して上記訂正の請求に対する意見書を提出する機会を与えない(審判便覧67-05.5 Pの4.(1))。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
令和2年1月20日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が160°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び/又は、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく200°以下である広角面部分(6b)が形成されていることを特徴とするシート材。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されていることを特徴とするシート材。」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシート材。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられ、前記主漸変方向(L)を有する部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記表皮材(7)は、パイルを有しておらず、前記クッション基材(2)は、合成樹脂フォームであり、この合成樹脂フォームは、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出しないことを特徴とする請求項1又は2に記載のシート材。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出しないことを特徴とするシート材。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され 、前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の平面視における凹部(3)の底と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部(5)の平面視における非凹部(4)と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲していることを特徴とするシート材。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「クッション基材(2)の表面側にエンボス凸部(11)と非エンボス凸部(12)が形成されたエンボス型材(13)を押圧するエンボス工程(E)を有し、前記クッション基材(2)の表面側に凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材を製造する製造方法であって、前記エンボス凸部(11)から非エンボス凸部(12)までに亘って、前記エンボス凸部(11)の頂 からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)を設け、前記エンボス工程(E)において、前記エンボス凸部(11)及びエンボス漸変部(14)が前記クッション基材(2)の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材(13)を押圧し、前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく200°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され、及び/又は、前記エンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部(12)の表面とのなす角(θb’)が160°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成されていることを特徴とするシート材の製造方法。」と記載されているのを、「クッション基材(2)の表面側にエンボス凸部(11)と非エンボス凸部(12)が形成されたエンボス型材(13)を押圧するエンボス工程(E)を有し、前記クッション基材(2)の表面側に凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材を製造する製造方法であって、前記エンボス凸部(11)から非エンボス凸部(12)までに亘って、前記エンボス凸部(11)の頂からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)を設け、前記エンボス工程(E)において、前記エンボス凸部(11)及びエンボス漸変部(14)が前記クッション基材(2)の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材(13)を押圧し、前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され、及び、前記エンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され、前記エンボス漸変部(14)の少なくとも一部に、前記エンボス凸部(11)の頂から非エンボス凸部(12)までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りに、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成されていることを特徴とするシート材の製造方法。」に訂正する。

(6)訂正事項6
明細書の段落【0006】に「本発明に係るシート材1は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが160°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び/又は、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく200°以下である広角面部分6bが形成されていることを第1の特徴とする。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材1は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い部分を有し、前記漸変距離Zが最も長い部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成されていることを第1の特徴とする。」に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の段落【0007】に「本発明に係るシート材1の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3から非凹部4までに亘って前記高さHが一様に漸次変化し且つ前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い方向である主漸変方向Lを有する部分が設けられている点にある。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材1の第2の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3から非凹部4までに亘って前記高さHが一様に漸次変化し且つ前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い方向である主漸変方向Lを有する部分が設けられ、前記主漸変方向Lを有する部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成され、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記表皮材7は、パイルを有しておらず、前記クッション基材2は、合成樹脂フォームであり、この合成樹脂フォームは、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部3の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部3の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している点にある。」に訂正する。

(8)訂正事項8
明細書の段落【0008】に「本発明に係るシート材1の第3の特徴は、上記第1又は2の特徴に加えて、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出しない点にある。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材1の第3の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い部分を有し、前記漸変距離Zが最も長い部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成され、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部3の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部3の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している点にある。」に訂正する。

(9)訂正事項9
明細書の段落【0009】に「本発明に係るシート材1の第4の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出しない点にある。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材1の第3の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い部分を有し、前記漸変距離Zが最も長い部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の平面視における凹部3の底と当該漸変部5の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部5の平面視における非凹部4と当該漸変部5の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲している点にある。」に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の段落【0016】に「本発明に係るシート材の製造方法は、クッション基材2の表面側にエンボス凸部11と非エンボス凸部12が形成されたエンボス型材13を押圧するエンボス工程Eを有し、前記クッション基材2の表面側に凹部3と非凹部4が形成されたシート材を製造する製造方法であって、前記エンボス凸部11から非エンボス凸部12までに亘って、前記エンボス凸部11の頂からの深さDが漸次変化するエンボス漸変部14を設け、前記エンボス工程Eにおいて、前記エンボス凸部11及びエンボス漸変部14が前記クッション基材2の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材13を押圧し、前記エンボス漸変部14のエンボス凸部11の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部11の頂表面とのなす角θa’が180°より大きく200°以下であるエンボス広角面部分15aが形成され、及び/又は、前記エンボス漸変部14の非エンボス凸部12寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部12の表面とのなす角θb’が160°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bが形成されていることを第1の特徴とする。」と記載されているのを、「本発明に係るシート材の製造方法は、クッション基材2の表面側にエンボス凸部11と非エンボス凸部12が形成されたエンボス型材13を押圧するエンボス工程Eを有し、前記クッション基材2の表面側に凹部3と非凹部4が形成されたシート材を製造する製造方法であって、前記エンボス凸部11から非エンボス凸部12までに亘って、前記エンボス凸部11の頂からの深さDが漸次変化するエンボス漸変部14を設け、前記エンボス工程Eにおいて、前記エンボス凸部11及びエンボス漸変部14が前記クッション基材2の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材13を押圧し、前記エンボス漸変部14のエンボス凸部11の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部11の頂表面とのなす角θa’が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分15aが形成され、及び、前記エンボス漸変部14の非エンボス凸部12寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部12の基部13aにおける表面13cとのなす角θb’が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bが形成され、前記エンボス漸変部14の少なくとも一部に、前記エンボス凸部11の頂から非エンボス凸部12までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部14の非エンボス凸部12寄りに、当該非エンボス凸部12の基部13aにおける表面13cとのなす角θb’が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bが形成されていることを第1の特徴とする。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1において、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材」とされていたのを「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)」として、表面側にパイルを有したシート材を除くものとし、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が160°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び/又は」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく200°以下である広角面部分(6b)が形成されている」とされていたのを、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され」として、角度をさらに限定し、「及び/又は」とされていたのを「及び」として、「又は」という択一的な記載を削除するとともに、「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」ているという事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が訂正前の請求項1を引用するものであったのを、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めると共に、訂正前の請求項1において、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が160°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び/又は」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく200°以下である広角面部分(6b)が形成されている」とされていたのを、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され」として、角度をさらに限定し、「及び/又は」とされていたのを「及び」として、「又は」という択一的な記載を削除するとともに、「前記主漸変方向(L)を有する部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、前記表皮材(7)は、パイルを有しておらず、前記クッション基材(2)は、合成樹脂フォームであり、この合成樹脂フォームは、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲して」いるという事項を追加するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が訂正前の請求項1又は2を引用するものであったのを、訂正前の請求項2を引用するものを削除し、訂正前の請求項1を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項に改めると共に、訂正前の請求項1において、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が160°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び/又は」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく200°以下である広角面部分(6b)が形成されている」とされていたのを、「当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」「及び」「当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され」として、角度をさらに限定し、「及び/又は」とされていたのを「及び」として、「又は」という択一的な記載を削除するとともに、「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」ているという事項を追加するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項4に、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、前記漸変部(5)の平面視における凹部(3)の底と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部(5)の平面視における非凹部(4)と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲している」という事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項5において、「当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく200以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され」「及び/又は」「当該非エンボス凸部(12)の表面とのなす角(θb’)が160以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され」とされていたのを、「当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され」「及び」「当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され」として、「基部(13a)における」及び「(13c)」という記載を補いつつ、角度をさらに限定し、さらに、「及び/又は」とされていたのを「及び」として、「又は」という択一的な記載を削除するとともに、「前記エンボス漸変部(14)の少なくとも一部に、前記エンボス凸部(11)の頂から非エンボス凸部(12)までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りに、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され」という事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)訂正事項6ないし10について
訂正事項6ないし10は、訂正事項1ないし5による訂正に伴い、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるためのものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項6ないし10は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし10は、それぞれ、特許法120条の5第2項ただし書第1、3又は4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし10は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。

なお、訂正前の請求項2及び3は訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし3は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし3は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正事項6ないし10は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、当該明細書に係る請求項の全てについて、本件訂正の請求は行われているので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、4及び5について訂正することを認める。

第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕、4及び5のとおり訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、令和2年1月20日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されていることを特徴とするシート材。
【請求項2】
クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられ、
前記主漸変方向(L)を有する部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、
前記表皮材(7)は、パイルを有しておらず、
前記クッション基材(2)は、合成樹脂フォームであり、
この合成樹脂フォームは、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、
前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。
【請求項3】
クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、
前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、
このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、
前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。
【請求項4】
クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、
前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、
このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、
前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の平面視における凹部(3)の底と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部(5)の平面視における非凹部(4)と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲していることを特徴とするシート材。
【請求項5】
クッション基材(2)の表面側にエンボス凸部(11)と非エンボス凸部(12)が形成されたエンボス型材(13)を押圧するエンボス工程(E)を有し、前記クッション基材(2)の表面側に凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材を製造する製造方法であって、
前記エンボス凸部(11)から非エンボス凸部(12)までに亘って、前記エンボス凸部(11)の頂からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)を設け、
前記エンボス工程(E)において、
前記エンボス凸部(11)及びエンボス漸変部(14)が前記クッション基材(2)の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材(13)を押圧し、
前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され、及び、
前記エンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され、
前記エンボス漸変部(14)の少なくとも一部に、前記エンボス凸部(11)の頂から非エンボス凸部(12)までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、
前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りに、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成されていることを特徴とするシート材の製造方法。」

第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由(決定の予告)の概要
1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
平成31年3月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。

(1)申立理由1(1)(甲第1号証を主引用文献とし、甲第2及び3号証を副引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(2)申立理由1(2)(甲第1号証に基づく新規性)
本件特許の請求項4に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(3)申立理由1(3)(甲第2号証を主引用文献とし、甲第3号証を副引用文献とする進歩性)
本件特許の請求項5に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

(4)申立理由2(明確性)
本件特許の請求項2に「漸変距離(Z)が最も長い方向」とあるが、何と比較して「最も長い」のか明確でなく、このことは、本件特許の請求項3についても同様なので、本件特許の請求項2及び3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(5)証拠方法
甲第1号証:特開2017-213865号公報
甲第2号証:国際公開第2016/079816号
甲第3号証:特開2011-88349号公報
(以下、順に「甲1」のようにいう。)

2 令和1年11月14日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要
令和1年11月14日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。

(参考資料1に基づく新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、下記の本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

参考資料1:特開2015-204936号公報
参考資料2:特開2008-169517号公報
参考資料3:特開平6-285278号公報
参考資料4:特許第5757597号公報 (特許掲載公報発行日:平成27年7月29日)
(令和1年9月24日に特許異議申立人が提出した意見書に添付された参考資料1ないし4である。)

第5 当審の判断
1 取消理由(決定の予告)について
取消理由(決定の予告)について検討する。

(1)参考資料1ないし4に記載された事項等
ア 参考資料1に記載された事項及び参考1発明
(ア)参考資料1に記載された事項
参考資料1には、「濃淡視感性カーペット」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。他の文献についても同様。

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内外の出入口に置き敷きして出入口を通過する歩行者の靴裏に付着している塵埃を捕捉するために使用されるタフテッドパイル布帛を表面材とするカーペットに関するものである。」

・「【0008】
そこで本発明は、パイル長Hが5mm以上のタフテッドパイル布帛のパイル面にヘタラシ技法による図柄と同様に視感的濃淡差による図柄模様を描出することを目的とする。」

・「【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカーペットは、(1) 熱可塑性合成繊維に成るパイル繊維11で構成されるパイル糸を基布19に差し込んでパイルを形成したパイル布帛を表面材とし、(2) そのパイル面15に、レーザー光線に加熱されてパイル繊維の先端が熱溶融して窪み、その溶融塊が表面に固着した凹部17が形成されており、(3) その凹部に、基布に対して20度以下の傾斜角度θで傾斜し、その傾斜方向Sに傾斜の頂点26から傾斜の底点27へと続く長さLが15mm以上の斜面23が形成されていることを特徴とする(図1?5,図13参照)。
【発明の効果】
【0010】
熱可塑性合成繊維(11)は、加熱されて溶融し溶融塊を形成する過程では、熱溶融した繊維ポリマーに作用する表面張力によって溶融塊が丸味を帯びて脹らみ、その脹らんだ分だけパイル繊維11の先端が短くなって窪みが発生する。
その溶融塊とパイル面のレーザー光線に加熱されない部分の未加熱パイル繊維の先端とは形状が相異し、未加熱パイル繊維の先端に比して太く丸味を帯びた溶融塊は光沢を帯び、溶融塊が固着した凹部17とレーザー光線に加熱されずに残って凹部に対して相対的に隆起している凹部の周囲の凸部18の間には少なくとも光沢差による視感的濃淡が発生する。」

・「【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明において、斜面23の傾斜角度θが20度以下、即ち、傾斜方向Sにおける斜面の頂点26から底面28の底点27に到る傾斜長さLで頂点26から底点27に到る底面28の深さKを除して示される傾斜角度θの正接函数tanθが0.3639702(=tan20°)以下とは、45度以上の傾斜角度をもってパイル層に刻み込まれるV字形切込溝によって描出される所謂”カービング”は、本発明の予期する効果をもたらさず、本発明の対象外になることを意味する。
【0015】
斜面の頂部26と底部27との間の光沢変化と濃淡変化をなだらかにするためには、傾斜角度θを10度以下、即ちtanθ=0.176(=tan10°)以下に、更に好ましくは、傾斜角度θを5度以下、即ちtanθ=0.0875(=tan5°)以下にすることが望ましい。
【0016】
そのように傾斜角度θの少ない凹部は浅く、斜面に分布する溶融塊の粒径が細かく、分布量も少なく、パイル面の真上からは凹部17と凸部18との間の濃淡差が看取されても、視線とパイル面との間の視覚が30度以下となる遠方からは凹部17と凸部18との間の濃淡差は左程看取されず、歩行者が凹部17を通過する過程で凹部17によってパイル面に描かれた図柄が見え隠れする度合いが大きくなり、カーペットの美観が高まる。
【0017】
見え隠れする度合いの大きい図柄は、歩行者の注意を喚起し、塵埃の拭き取りを促す点でもダストコントロールマットに適した塵埃捕捉機能の高いカーペットが得られる。
従って、斜面23の傾斜角度θは凹部17と凸部18との段差(K)が感じられない程度に極僅か、即ち5度(tan5°=0.0875)以下にすることが望ましい。
車椅子やキャリヤカーの移動の妨げにならないようにするには、凹部17と凸部18との段差(K)を5mm以下にすることが望ましい(図1参照)。
原着パイル繊維が形成する溶融塊は、その質量に応じて原着顔料の含有量も変化するので、斜面の頂点26と底点27の間には色相上のなだらかな濃淡差も生じる。
そして斜面23の傾斜角度θに応じて光の反射角度も変化する。
【0018】
このように光沢と濃淡が変化し且つその変化の度合いの異なる斜面23a・23b・23c・23d・23e………が散在し、それらの斜面23の形成されている凹部17と凸部18とでは光沢だけではなく色調にも濃淡差が生じ、それらの間の光沢と濃淡差によって、ヘタラシ図柄と同様の視感的図柄が描出され、カーペットの美観が高まる(図1?5参照)。
凹部の内部の入隅24と出隅25や下坂30と上坂29では光の反射方向が変化するので、歩行者が凹部17の上を通過する過程で目に映るパイル面の美観が刻々変化する(図2参照)。
【0019】
従って、本発明の好ましい第1の実施態様は、傾斜方向Sが異なる複数種類の何れかの斜面23a・23b・23c・23dが内部に形成されている複数種類の凹部17をパイル面15に形成することである。その複数種類の凹部は、傾斜方向Sが異なる複数種類の斜面が一緒に介在する凹部であってもよいし、例えば、ある凹部の斜面は左向き、別の凹部の斜面は右向き、他の別の凹部の斜面は後ろ向きと言うように、傾斜方向Sがそれぞれ異なる複数種類の斜面が個々に介在する複数の凹部であってもよい(図2参照)。」

・「【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によって得られるパイル布帛は、カーマット(車両足元マット)、ダストコントロールマット、カーペット、タイルカーペット等の敷物類に利用される。」

・「【符号の説明】
【0051】
11:パイル繊維
14:パイル布帛
15:パイル面
17:凹部
18:凸部
19:基布
20:レーザー光線
23:斜面
24:入隅
25:出隅
26:頂点
27:底点
28:底面
29:上坂
30:下坂
31:走査地帯
32:丘陵
33:区画
53:発振器
54:照射レンズ
55:反射板
56:演算装置
61:スプレー装置
62:乾燥機
63:照射装置
64:洗浄装置
65:乾燥機
81:ボーダー柄
82:連続柄
91:点字標識
E :ボーダー幅
F :ボーダー間隔
G :間隔
H :パイル長
K :深さ
L :傾斜長さ
R :内接円直径
S :傾斜方向
W :搬送方向の直角方向(幅方向)
X :走査方向
Y :直角方向
Z :搬送方向(長さ方向)
θ :傾斜角度」

・「【図1】

」(当審注:時計回りに90度回転させている。)

・「【図2】

」(当審注:時計回りに90度回転させている。)

(イ)参考1発明
参考資料1の【0009】並びに図1及び2によると、「斜面23」は、「凹部17」から「凸部18」までに亘って、「凹部17」の「底面28」からの高さが漸次変化しているといえる。
また、参考資料1の【0015】並びに図1及び2によると、「前記斜面23」の「底点27」又は「底面28」寄りの少なくとも一部に、「該凹部17」の「底面28」とのなす角が170°以上180°より小さい角度の部分が形成されているといえる。
さらに、参考資料1の【0015】並びに図1及び2によると、「前記斜面23」の「頂点26」又は「凸部18」寄りの少なくとも一部に、「当該凸部118」の表面とのなす角が180°より大きく190°以下である角度の部分が形成されているといえる。
さらにまた、参考資料1の【0017】並びに図1及び2によると、「前記斜面23」の少なくとも一部に、「凹部17」の「底点27」から「頂点26」までの平面視における傾斜長さが最も長い「下坂30」を有し、傾斜長さが最も長い「下坂30」が設けられた「斜面23」の「凸部18」寄りに、「当該凸部18」の表面とのなす角が180°より大きく185°以下である角度の部分が形成されているといえる。

以上の事項を踏まえ、参考資料1に記載された事項を整理すると、参考資料1には次の発明(以下、「参考1発明」という。)が記載されていると認める。

<参考1発明>
「タフテッドパイル布帛14を表面材とし、そのパイル面15に、凹部17と凸部18が形成されたカーペットであって、
前記凹部17から凸部18までに亘って、前記凹部17の底面28からの高さが漸次変化する斜面23を有し、
前記斜面23の底点27又は底面28寄りの少なくとも一部に、当該凹部17の底面28とのなす角が170°以上180°より小さい角度の部分が形成され、及び、
前記斜面23の頂点26又は凸部18寄りの少なくとも一部に、当該凸部118の表面とのなす角が180°より大きく190°以下である角度の部分が形成され、
前記斜面23の少なくとも一部に、凹部17の底点27から頂点26までの平面視における傾斜長さLが最も長い下坂30を有し、
傾斜長さLが最も長い下坂30が設けられた斜面23の凸部18寄りに、当該凸部18の表面とのなす角が180°より大きく185°以下である角度の部分が形成されているカーペット。」

イ 参考資料2に記載された事項
参考資料2には、「パイル布帛」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0002】
パイル面を部分的に加熱押圧して凹凸模様を描出することは公知である(例えば、特許文献1参照)。パイル面は、基布に植設されたパイルによって構成されており、パイルがクッション性に富むことから、加熱押圧してセットされた凹部のパイルは、その弾性復元力によって次第に元の直立状態に復元し易く、パイル面に描出された凹凸模様が消失し易い。」

・「【0007】
そこで本発明は、パイル面に加熱押圧して描出される凹凸模様の凹部の谷底の溶融皮膜を基布に密着させて剥離脱落し難くし、絶えずパイル面が擦られて使用される車両座席の表面材に適したパイル布帛を得ることを目的とする。」

ウ 参考資料3に記載された事項
参考資料3には、「車両椅子張地」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0008】
【発明の目的】そこで本発明は、パイル面が平らに綺麗に揃い、車両椅子張地としてのクッション性、耐摩耗性、耐光性、染色堅牢度等の物性品質を具備し耐久性に富み、吸湿性を有していて静電気が発生し難くベトツキ蒸れ感を与えない車両椅子張地に適したパイル布帛を得ることを目的とする。」

エ 参考資料4に記載された事項
参考資料4には、「ダストコントロールマット」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【0005】
パイルを加熱溶融して剛直にすれば、パイル層は剣山のように硬くなり、靴裏に付着している塵埃の掻き取り機能が付与されてダストコントロールマットの塵埃捕捉効果は高まるが、素足が触れて負傷する危険であり、パイル自体もクッション性を失って折れ曲がり易くなり、ダストコントロールマットの耐用性が損なわれる。
【0006】
そこで本発明は、クッション性を損なうことなくダストコントロールマットの塵埃捕捉性を高めることを目的とする。」

・「【0022】
本発明によって得られるパイル布帛は、ダストコントロールマットのほか、カーマット(車両足元マット)、カーペット、タイルカーペット等の敷物類に利用される。」

(2)対比・判断
本件特許発明1と参考1発明を対比する。
参考資料2ないし4によると、パイル布帛はクッション性を有するものであるから、参考1発明における「タフテッドパイル布帛14を表面材とし、そのパイル面15に、凹部17と凸部18が形成されたカーペット」は本件特許発明1における「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)」と、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材」という限りにおいて一致する。
また、参考1発明における「前記凹部17から凸部18までに亘って、前記凹部17の底面28からの高さが漸次変化する斜面23」は本件特許発明1における「前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)」に相当し、以下同様に、「前記斜面23の底点27又は底面28寄りの少なくとも一部に、当該凹部17の底面28とのなす角が170°以上180°より小さい角度の部分が形成され」は「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され」に、「前記斜面23の頂点26又は凸部18寄りの少なくとも一部に、当該凸部118の表面とのなす角が180°より大きく190°以下である角度の部分が形成され」は「前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され」に、「前記斜面23の少なくとも一部に、凹部17の底点27から頂点26までの平面視における傾斜長さLが最も長い下坂30を有し、
傾斜長さLが最も長い下坂30が設けられた斜面23の凸部18寄りに、当該凸部18の表面とのなす角が180°より大きく185°以下である角度の部分が形成されている」は「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されている」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、次の点で一致する。
<一致点>
「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されているシート材。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材」に関して、本件特許発明1においては、「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材が除く)」であるのに対し、参考例1発明においては、「タフテッドパイル布帛14を表面材とし、そのパイル面15に、凹部17と凸部18が形成されたカーペット」である、すなわち表面側にパイルを有したシート材である点。

そして、相違点1は実質的な相違点であることは明らかである。
したがって、本件特許発明1は、参考1発明、すなわち参考資料1に記載された発明であるとはいえない。

(3)取消理由(決定の予告)についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、取消理由(決定の予告)によっては、本件特許の請求項1に係る特許を取り消すことはできない。

2 特許異議申立ての理由について
(1)甲1ないし3に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項等
甲1は、「表皮材及び構造体並びに表皮材の製造方法」に関するものである。
甲1の図1、3、4、8及び9によると、甲1の「基布層(2)」の「凹状の熱変形部(4)」の周囲の部分は、凹状となっていないことから、「非凹部」であるといえる。
また、甲1の【0025】並びに図1、3、4、8及び9によると、「基布層(2)」は、「非凹部」の表面から「凹状の熱変形部(4)」の中心に向かって徐々に「基布層(2)」の厚みが小さくなっていることから、「凹状の熱変形部(4)」から「非凹部」までに亘って、「凹状の熱変形部(4)の底からの高さが漸次変化する漸変部」を有しているといえる。
さらに、甲1の【0025】並びに図1、3、4、8及び9によると、「基布層(2)」は、「表皮層(3)」に覆われて、「表皮材(1)」の使用時に露出しないといえる。
以上の事項を踏まえて、甲1の【0006】、【0007】、【0010】ないし【0013】、【0022】ないし【0027】、【0034】、【0036】及び【0040】並びに図1、3、4、8及び9に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1発明>
「クッション性を有する基布層(2)の一面側に、凹状の熱変形部(4)と非凹部が形成された表皮材(1)であって、
前記凹状の熱変形部(4)は、前記非凹部までに亘って、前記凹状の熱変形部(4)の底からの高さが漸次変化する漸変部を有し、
前記基布層(2)の一面側には、表皮層(3)が積層され、
前記基布層(2)は、ダブルラッセル編み機を用いて編成された立体編み地であり、
この基布層(2)は、前記表皮層(3)に覆われて、前記表皮材(1)の使用時に露出しない表皮材(1)。」

イ 甲2に記載された事項等
甲2は、「座席用表皮材、座席用表皮材の製造方法、及びエンボスロール」に関するものである。
甲2の図10及び11によると、甲2の「座席用表皮材P」の「凹部60」の周囲の部分は、凹状となっていないことから、「非凹部」であるといえる。
また、甲2の[0063]ないし[0066]、[0068]ないし[0070]及び図10によると、「座席用表皮材P」は、「凹部60」の底面から「非凹部」の表面に向かって厚みが緩やかに増加する傾斜面が形成されているから、「凹部60」から「非凹部」までに亘って、「凹部60の底からの高さが漸次変化する漸変部」を有しているといえ、「型押部51」は、「型押部51」の「頂面56」から「ベース面52」に向かって高さが低くなっている「斜面53」が形成されているから、「型押部51」の「頂面56」から「ベース面52」までに亘って、「型押部51の頂面56からの深さが漸次変化する漸変部」を有しているといえる。
さらに、甲2の[0052]に「第2加熱押圧部21bの水平距離、つまり、第1加熱押圧部21a端部と非加熱押圧部22端部との水平距離をcとすると、第2加熱押圧部31bの形状は、例えば、
0.2≦(a-b)/c≦2 ・・・・・ (2)
の関係式を満たしている。」と記載され、tan^(-1)0.2=11°及びtan^(-1)2=63°であり、180°-11°=169°、360°-169°=191°、180°-63°=117°及び360°-117°=243°という計算が成り立つから、甲2の図7に記載された「第1加熱押圧部21a」と「第2加熱押圧部21b」のなす角度は、117℃以上169°以下となり、第2実施形態の場合にこの角度と対応する「型押部51」の「頂面56」と「傾斜面53」とのなす角度は、191°以上243°以下となる。
さらにまた、甲2の図1、5、6、10及び11によると、「クッション材4」は、「表地2」に覆われて、「座席用表皮材P」の使用時に露出しないといえる。
以上の事項を踏まえて、甲2の[0002]、[0008]、[0027]ないし[0033]、[0035]ないし[0038]、[0041]ないし[0046]、[0049]、[0063]ないし[0066]、[0068]ないし[0070]、[0074]及び図1ないし11に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

<甲2発明>
「クッション材4の表地2側に型押部51とベース面52が形成されたエンボスロール50を押圧する工程を有し、前記クッション材4の表地2側に凹部60と非凹部が形成された座席用表皮材Pを製造する製造方法であって、
前記型押部51からベース面52までに亘って、前記型押部51の頂面56からの深さが漸次変化する漸変部を設け、
前記押圧する工程において、
前記型押部51及び型押部51の漸変部が前記クッション材4の表面側に当接した状態で、前記型押部51を押圧し、
前記型押部51の漸変部の前記型押部51の頂面56寄りの少なくとも一部に、当該型押部51の頂面56の表面とのなす角が191°以上243°以下である部分が形成されている座席用表皮材Pを製造する製造方法。」

ウ 甲3に記載された事項
甲3には、「多層繊維構造体およびそれからなるフィルターろ材」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項1】
下層、中間層、上層の少なくとも3層からなる多層繊維構造体であって、中間層が直径10?500nmの超極細繊維からなる繊維構造体、上層と下層が直径1?100μmの繊維からなる不織布であり、エンボス加工により上層と下層とが部分的に熱圧着しており、熱圧着により形成された凹部の断面において、底部より上開口部が大きく、凹部の側面に接する接線と底部とのなす角度が140?170°であることを特徴とする多層繊維構造体。」

・「【0023】
さらに多層繊維構造体の全面積に対する熱圧着している凹部の底部分の面積比率は1?15%が好ましく、3?8%がより好ましい。該当部分の面積比率が1%未満の場合には、十分な接着強度が得られず、多層繊維構造体の取扱性に劣る。一方、該当部分の面積比率が15%を超える場合には、圧力損失が高くなるため、好ましくない。上記凹部の底部分の形状は特に限定されるものではなく、円形、楕円形、長方形等が上げられる。」

・「【0031】
上層または下層の繊維構造体の上に超極細繊維の繊維構造体からなる中間層を形成した後、さらにその上に反対の層を積層、すなわち上層の繊維構造体上に中間層を形成した場合はその上に下層を、下層の繊維構造体上に中間層を形成した場合はその上に上層を積層し、これらをエンボス加工により、部分的に熱圧着する。エンボスロール温度は、上層および/または下層に含まれる熱可塑性繊維あるいは樹脂の融点±20℃となる温度領域が好ましく、該融点±10℃の温度領域がより好ましい。
【0032】
また、熱圧着により形成された凹部の断面において、底部より上開口部が大きく、凹部の側面に接する接線と底部とのなす角度を140?170°とするには、図2にエンボスロールに設けられた多数の円錐台形状凸部のうち1つ凸部断面の概略図を示すが、この図に示したエンボス角度θ’を約50?80°に設計することで上記範囲とすることができる。また、多層繊維構造体の全面積に対する凹部の底部の面積の比率は、エンボスの頂上部の面積を所望の面積となるようエンボス形状を設計することで前述した望ましい範囲とすることができる。さらに、多層繊維構造体の厚みに対する凹部の底部の厚みの比率は、上下ロールのクリアランスを調整することによって前述した望ましい範囲とすることができる。」

・「【0042】
次にこの積層体を、多数の凸部分を有し、加熱された彫刻ローラ(上ローラ)と平滑な耐熱性樹脂ローラ(下ローラ)を用いて、上ローラの表面温度を160℃、上下ローラ間の線圧を0.5t/30cm、クリアランス0.7mmの条件で、エンボス加工を行い、上層および下層を熱圧着させた。前記加熱ローラは、多数の凸部分を有する彫刻ロールであり、1つの該凸部は円錐台形状、すなわち、凸部断面が図2に示す台形でかつ凸部の頂上部が円形である形状を有し、1つの凸部頂上部の面積が0.2cm^(2)、図2に示す凸部断面のエンボス角度θ’が55°であり、多層繊維構造体の全面積に対する、エンボス凸部の頂上部の合計面積、すなわち、多層繊維構造体に形成された熱圧着している凹部底部の合計面積の比率が8%となるローラを使用した。結果を表1に示す。」

(2)申立理由1(1)(甲第1号証を主引用文献とし、甲第2及び3号証を副引用文献とする進歩性)について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「クッション性を有する基布層(2)」は本件特許発明1における「クッション基材(2)」に相当し、以下、同様に、「一面側」は「表面側」に、「凹状の熱変形部(4)」は「凹部(3)」に、「非凹部」は「非凹部(4)」に、「表皮材(1)」は「シート材」に、「前記凹状の熱変形部(4)の底からの高さが漸次変化する漸変部」は「前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有するシート材。」

そして、次の点で相違する。
<相違点1-1>
「シート材」に関して、本件特許発明1においては、「(表面側にパイルを有したシート材を除く)」と特定されているのに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点1-2>
本件特許発明1においては、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されている」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
事案の鑑み、相違点1-2から検討する。
甲1の図8及び9からみて、甲1発明において、「漸変部」の「凹状の熱変形部(4)」の底寄りの一部が「凹状の熱変形部(4)」の底表面とのなす角が170°以上180°より小さい鈍角面部分を形成しているとはいえない。
また、甲2の図7に記載された「第1加熱押圧部21a」と「第2加熱押圧部21b」のなす角度は、117℃以上169°以下であるから、甲2には、表皮材の凹部と漸変部のなす角を170°以上180°より小さい鈍角面部分とすることは記載も示唆もされていない。
さらに、甲3は、そもそも、表皮材に関する文献ではなく、当然のことながら、表皮材の凹部と漸変部のなす角を170°以上180°より小さい鈍角面部分とすることは記載も示唆もされていない。
したがって、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できる(本件特許明細書の【0018】)という格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明並びに甲2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件特許発明2について
(ア)対比
本件特許発明2と甲1発明を対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲1発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
また、甲1発明における「表皮層(3)」は本件特許発明2における「表皮材(7)」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。

<一致点>
「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層されているシート材。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明2においては、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられ、
前記主漸変方向(L)を有する部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2-2>
本件特許発明2においては、「前記表皮材(7)は、パイルを有しておらず、
前記クッション基材(2)は、合成樹脂フォームであり、
この合成樹脂フォームは、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点2-3>
本件特許発明2においては、「前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
まず、相違点2-1について検討する。
上記ア(イ)と同様であり、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明2は本件特許発明1と同様に「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できるという格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点2-2及び2-3について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲1発明並びに甲2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件特許発明3について
(ア)対比
本件特許発明3と甲1発明を対比するに、両者の間には、本件特許発明1と甲1発明との間と同様の相当関係が成り立つ。
また、甲1発明における「表皮層(3)」は本件特許発明3における「表皮材(7)」に相当し、「ダブルラッセル編み機を用いて編成された立体網み地」である「基布層(2)」は「ダブルラッセル網地」である「クッション基材(2)」に相当する。
したがって、両者は次の点で一致する。

<一致点>
「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、
前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、
このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出しないシート材。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明3においては、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点3-2>
本件特許発明3においては、「前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
まず、相違点3-1について検討する。
上記ア(イ)と同様であり、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点3-1に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明3は本件特許発明1と同様に「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できるという格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点3-2について検討するまでもなく、本件特許発明3は甲1発明並びに甲2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ 本件特許発明4について
(ア)対比
本件特許発明4と甲1発明を対比するに、両者の間には、本件特許発明3と甲1発明との間と同様の相当関係が成り立つから、両者は次の点で一致する。

<一致点>
「クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、
前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、
このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出しないシート材。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明4においては、「前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

<相違点4-2>
本件特許発明4においては、「前記漸変部(5)の平面視における凹部(3)の底と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部(5)の平面視における非凹部(4)と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲している」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。

(イ)判断
まず、相違点4-1から検討する。
上記ア(イ)と同様であり、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点4-1に係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、甲1発明において、甲2及び3に記載された事項を適用して、相違点4-1に係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明4は本件特許発明1と同様に「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できるという格別顕著な効果を奏するものである。
よって、相違点4-2について検討するまでもなく、本件特許発明4は甲1発明並びに甲2及び3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 申立理由1(1)についてのむすび
したがって、申立理由1(1)によっては、本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。

(3)申立理由1(2)(甲第1号証に基づく新規性)について
ア 対比・判断
本件特許発明4と甲1発明を対比するに、両者は上記(2)エ(ア)のとおりの一致点並びに相違点4-1及び4-2を有する。
そして、上記相違点4-1及び4-2のうち、少なくとも相違点4-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲1発明であるとはいえない。

イ 申立理由1(2)についてのむすび
したがって、申立理由1(2)によっては、本件特許の請求項4に係る特許を取り消すことはできない。

(4)申立理由1(3)(甲第2号証を主引用文献とし、甲第3号証を副引用文献とする進歩性)について
ア 対比
本件特許発明5と甲2発明を対比する。
甲2発明における「クッション材4」は本件特許発明5における「クッション基材(2)」に相当し、以下、同様に、「表地2側」は「表面側」に、「型押部51」は「エンボス凸部(11)」に、「ベース面52」は「非エンボス凸部(12)」に、「エンボスロール50」は「エンボス型材(13)」に、「押圧する工程」は「押圧するエンボス工程(E)」に、「凹部60」は「凹部(3)」に、「非凹部」は「非凹部(4)」に、「座席用表示材P」は「シート材」に、「型押部51の頂面56からの深さが漸次変化する漸変部」は「エンボス凸部(11)の頂からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は次の点で一致する。
「クッション基材(2)の表面側にエンボス凸部(11)と非エンボス凸部(12)が形成されたエンボス型材(13)を押圧するエンボス工程(E)を有し、前記クッション基材(2)の表面側に凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材を製造する製造方法であって、
前記エンボス凸部(11)から非エンボス凸部(12)までに亘って、前記エンボス凸部(11)の頂からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)を設け、
前記エンボス工程(E)において、
前記エンボス凸部(11)及びエンボス漸変部(14)が前記クッション基材(2)の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材(13)を押圧するシート材の製造方法。」

そして、両者は次の点で相違する。
<相違点5>
本件特許発明5においては、「前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され、及び、
前記エンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され、
前記エンボス漸変部(14)の少なくとも一部に、前記エンボス凸部(11)の頂から非エンボス凸部(12)までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、
前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りに、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成されている」と特定されているのに対し、甲2発明においては、「前記漸変部の前記型押部51の頂寄りの少なくとも一部に、当該型押部51の頂表面とのなす角が191°以上243°以下である部分が形成されている」と特定されている点。

イ 判断
そこで、相違点5について検討する。
甲2発明の「前記漸変部の前記型押部51の頂寄りの少なくとも一部に、当該型押部51の頂表面とのなす角が191°以上243°以下である部分が形成されている」という特定事項における「191°以上243°以下」は、本件特許発明5の「前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)」という特定事項における「180°より大きく190°以下」と、重ならないし、甲2には、「191°以上243°以下」に代えて「180°より大きく190°以下」とすることの動機付けとなるような記載もない。
また、甲3は、そもそも、表皮材に関する文献ではなく、当然のことながら、座席用表皮材を製造するエンボスロールにおいて、エンボス漸変部のエンボス凸部の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部の頂表面とのなす角が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分を形成することは記載も示唆もされていない。
したがって、甲2発明において、甲3に記載された事項を適用して、相違点5に係る本件特許発明5の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明5は「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できる(本件特許明細書の【0018】)という格別顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明5は甲2発明及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 申立理由1(3)についてのむすび
したがって、申立理由1(3)によっては、本件特許の請求項5に係る特許を取り消すことはできない。

(5)申立理由2(明確性)について
明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。

明確性要件の判断
本件特許明細書の【0043】の「尚、一様な略平面である漸変部5の平面視において、凹部3から非凹部4までに亘って高さHが一様に漸次変化し且つ凹部3の底3aから非凹部4までの漸変距離Zが最も長い方向を、主漸変方向Lとする。」及び【0044】の「その他、凹部3の底3aから、当該底3aを囲む非凹部4までの漸変距離Zが何れの方向でも略同じ場合(凹部3の底3aを囲む漸変部5の平面視形状の内形と外形が、当該底3aの平面視形状と略相似である場合など)には、何れの方向も主漸変方向Lとなるため、1個の漸変部5が主漸変方向Lのみを有することとなる。」という記載によると、本件特許の請求項2に記載された「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられ」における「漸変距離(Z)が最も長い方向」がそれよりも長い方向がないことを意味していることは当業者に明らかである。
また、本件特許の請求項3に記載された「前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し」における「漸変距離(Z)が最も長い部分」がそれよりも長い部分がないことを意味していることも当業者に明らかである。
したがって、本件特許発明2及び3に関して、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。

ウ 申立理由2についてのむすび
したがって、申立理由2によっては、本件特許の請求項2及び3に係る特許を取り消すことはできない。

第6 結語
上記第5のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
傾斜シート材、及び、傾斜シート材の製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、クッション基材の表面側に凹部と非凹部が形成されたシート材、及び、そのシート材を製造する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素材シートを、成形凹部を備えた成形型に加熱しながら加圧して、素材シートの賦形面に突状のエンボス模様を形成する表装材の製造方法が知られている(特許文献1参照)。
この表装材の製造方法は、成形型には、原画像をコンピュータに取り込んで調整した彫刻データに基づき、型素材にレーザー加工を施して、原画像に対応する成形凹部が形成されており、成形型と、熱可塑性樹脂で形成した素材シートを固定電極台上に重ねて載置する準備工程と、加熱した可動電極台を素材シートに押し付け、固定電極台と可動電極台の間に高周波電流を供給しながら素材シートを成形型に加圧する加圧工程を含んで表装材を形成しており、加圧工程において、成形凹部と正対していない素材シートのシート面を、成形凹部の最大深さ寸法以上に圧縮して、素材シートを成形凹部の内面に密着させ、素材シートに突状のエンボス模様を表出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-165062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された表装材の製造方法は、エンボス模様を明確化にするために、特許文献1の図1に示されたように、当該エンボス模様の凸部の何れもが、凹面から約90°立設しているなどから、メリハリがきついエンボス模様しか表出できない。
更に、特許文献1の表装材の製造方法では、原画像をコンピュータに取り込んで調整した彫刻データや、型素材に施すレーザー加工装置、熱可塑性樹脂で形成した素材シートを重ねて載置する固定電極台、素材シートに押し付ける加熱された可動電極台、固定電極台と可動電極台の間に高周波電流を供給する装置などが必須となることで、装置構造の複雑化・製造効率の低下・製造コストの上昇などを招く。
【0005】
本発明は、このような点に鑑み、凹部から非凹部までに亘って凹部の底からの高さが漸次変化する漸変部を有する等によって、「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現するシート材、シート材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るシート材1は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い部分を有し、前記漸変距離Zが最も長い部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成されていることを第1の特徴とする。
【0007】
本発明に係るシート材1の第2の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3から非凹部4までに亘って前記高さHが一様に漸次変化し且つ前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い方向である主漸変方向Lを有する部分が設けられ、前記主漸変方向Lを有する部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成され、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記表皮材7は、パイルを有しておらず、前記クッション基材2は、合成樹脂フォームであり、この合成樹脂フォームは、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部3の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部3の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している点にある。
【0008】
本発明に係るシート材1の第3の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い部分を有し、前記漸変距離Zが最も長い部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成され、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記凹部3の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部3の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲している点にある。
【0009】
本発明に係るシート材1の第4の特徴は、クッション基材2の表面側に、凹部3と非凹部4が形成されたシート材であって、前記凹部3から非凹部4までに亘って、前記凹部3の底からの高さHが漸次変化する漸変部5を有し、前記クッション基材2の表面側には、表皮材7が積層され、前記クッション基材2は、ダブルラッセル編地であり、このダブルラッセル編地は、前記表皮材7に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、前記漸変部5の凹部3の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部3の底表面とのなす角θaが170°以上180°より小さい鈍角面部分6aが形成され、及び、前記漸変部5の非凹部4寄りの少なくとも一部に、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく190°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の少なくとも一部に、前記凹部3の底から非凹部4までの平面視における漸変距離Zが最も長い部分を有し、前記漸変距離Zが最も長い部分が設けられた漸変部5の非凹部4寄りに、当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく185°以下である広角面部分6bが形成され、前記漸変部5の平面視における凹部3の底と当該漸変部5の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部5の平面視における非凹部4と当該漸変部5の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲している点にある。
【0011】
これらの特徴により、凹部3から非凹部4までに亘って、凹部3の底3aからの高さHが漸次変化する漸変部5を設けることによって、特許文献1とは異なり、図2?7で示したように、凹部3と非凹部4の間が緩やかになると共に、漸変部5と非凹部4との境界が視認し難く又は視認できなくなり(つまり、境界を消すとも言える)、一部のメリハリを抑えた「凹部3から非凹部4にかけてのグラデーション」が実現できる。
尚、凹部3から非凹部4にかけてのグラデーションを実現したシート材1は、「傾斜シート材」とも言え、グラデーションとは、凹部3が徐々に消えていくことであるとも言える。
又、本発明における「凹部3の底3aからの高さHが漸次変化する」とは、凹部3の底3aから非凹部4に近づくにつれて徐々に高さHが高くなることを意味したり、凹部3の底3aから非凹部4に到達するまでの間に、高さHが徐々に高くなった後、徐々に低くなり、再び徐々に高くなることなどを意味し、高さHが急激に変化する部分(屈曲する部分)を含まない。
【0012】
又、漸変部5の凹部3の底3a寄りに当該凹部3の底3a表面とのなす角θaが160°以上180°より小さい鈍角面部分6aを形成したり、漸変部5の非凹部4寄りに当該非凹部4の表面とのなす角θbが180°より大きく200°以下の広角面部分6bを形成することによって、凹部3と漸変部5の境界や、非凹部4と漸変部5の境界が、更に視認し難く又は視認できなくなり、「凹部3から非凹部4にかけてのグラデーション」がより滑らかとなる。
【0013】
更に、クッション基材2の表面側に積層された表皮材7と共にクッション基材2を凹ませて凹部3を形成することによって、クッション基材2として同じ素材を用いたとしても、表皮材7を変えるだけで、シート材1の表面性状(色・素材等)を様々に選択可能となると共に、表皮材7に対しても「凹部3から非凹部4にかけてのグラデーション」が実現できる。
【0014】
そして、表皮材7を熱可塑性の素材で形成し、非凹部4を表皮材7が変性していない部分とすることによって、「凹部3からのグラデーション」を実現できると共に、表皮材7の非凹部4において、その表面性状(例えば、毛羽や風合い等)を保持できる。
尚、本発明における「表皮材7の変性」とは、熱等により表皮材7が溶融や軟化することで、表皮材7の表面性状(光沢、凹凸など)が変化することを意味する。
【0015】
又、クッション基材2をダブルラッセル編地とすることによって、シート材1としてのクッション性の向上や、底つき感の低減、耐久性の向上が図れる。
【0016】
本発明に係るシート材の製造方法は、クッション基材2の表面側にエンボス凸部11と非エンボス凸部12が形成されたエンボス型材13を押圧するエンボス工程Eを有し、前記クッション基材2の表面側に凹部3と非凹部4が形成されたシート材を製造する製造方法であって、前記エンボス凸部11から非エンボス凸部12までに亘って、前記エンボス凸部11の頂からの深さDが漸次変化するエンボス漸変部14を設け、前記エンボス工程Eにおいて、前記エンボス凸部11及びエンボス漸変部14が前記クッション基材2の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材13を押圧し、前記エンボス漸変部14のエンボス凸部11の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部11の頂表面とのなす角θa’が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分15aが形成され、及び、前記エンボス漸変部14の非エンボス凸部12寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部12の基部13aにおける表面13cとのなす角θb’が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bが形成され、前記エンボス漸変部14の少なくとも一部に、前記エンボス凸部11の頂から非エンボス凸部12までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部14の非エンボス凸部12寄りに、当該非エンボス凸部12の基部13aにおける表面13cとのなす角θb’が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bが形成されていることを第1の特徴とする。
【0017】
この特徴により、エンボス凸部11から非エンボス凸部12までに亘ってエンボス凸部11の頂11aからの深さDが漸次変化するエンボス漸変部14を設け、エンボス凸部11及びエンボス漸変部14がクッション基材2の表面側に当接した状態で、エンボス凸部11を押圧することによって、図2?7で示したように、凹部3と非凹部4の間を緩やかにして、漸変部5と非凹部4との境界が視認し難く又は視認できなくなって、「凹部3から非凹部4にかけてのグラデーション」が実現できる。
これと同時に、特許文献1とは異なり、彫刻データやレーザー加工装置、固定電極台、可動電極台などが不要となり、装置構造の簡略化・製造効率の向上・製造コストの低減などを図ることが出来る。
尚、凹部3から非凹部4にかけてのグラデーションを実現したシート材1の製造方法は、「傾斜シート材の製造方法」とも言える。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るシート材によると、凹部から非凹部までに亘って凹部の底からの高さが漸次変化する漸変部を有することによって、「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できる。
又、本発明に係るシート材の製造方法によると、エンボス凸部から非エンボス凸部までに亘ってエンボス凸部の頂からの深さが漸次変化する漸変部を設け、エンボス凸部及び漸変部がクッション基材の表面側に当接した状態でエンボス型材を押圧することによって、「凹部から非凹部にかけてのグラデーション」などを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るシート材を示す断面図であって、(a)は第1実施形態を示し、(b)は第2実施形態を示し、(c)は第3実施形態を示し、(d)は第4実施形態を示す。
【図2】シート材の実施例1の平面視を示す図面代用写真である。
【図3】シート材の実施例2の平面視を示す図面代用写真である。
【図4】シート材の実施例3の平面視を示す図面代用写真である。
【図5】シート材の実施例4の平面視を示す図面代用写真である。
【図6】シート材の実施例5の平面視を示す図面代用写真である。
【図7】シート材の実施例6の平面視を示す図面代用写真である。
【図8】本発明に係るシート材の製造方法の第1実施形態を示す断面図であって、(a)はエンボス工程前の状態を示し、(b)エンボス工程中の状態を示す。
【図9】本発明に係るシート材の製造方法の第2実施形態を示す断面図であって、(a)はエンボス工程前の状態を示し、(b)エンボス工程中の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<シート材1の全体構成>
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1?7には、本発明に係るシート材1が示されており、このシート材1は、クッション基材2の表面2a側(シート材1としての表面1a側とも言える)に凹部3と非凹部4が形成されたシート状物である。
【0021】
シート材1は、凹部3から非凹部4までに亘って、後述する漸変部5を有している。
又、シート材1における漸変部5は、後述する鈍角面部分6aや広角面部分6bが形成されていても良い。
更に、シート材1は、クッション基材2の表面2a側(シート材1の表面1a側)に、表皮材7が積層されていても良い。
【0022】
ここで、シート材1の「表面1a」とは、自動車等のオーナメント(ドアトリムなど)やアームレスト、インパネ(instrument panel)等の内装材、シート(椅子)を覆うシートカバーなどに使用する時に露出する側の面であるとも言える。
逆に、シート材1の「裏面1b」とは、オーナメントやアームレスト、インパネなどに使用する時に露出しない側の面であるとも言える。
【0023】
シート材1の厚さ1wは、何れの値でも良いが、例えば、1mm以上100mm以下、好ましくは1mm以上50mm以下、更に好ましくは2mm以上40mm以下(2mm、3mm、4mm、5mm、10mm、30mmなど)であっても良い。尚、シート材1の厚さ1wが2mmなどの場合(薄い場合)、オーナメント(ドアトリムなど)としてはスポーティ用となるとも言える。
シート材1の厚さ1wのうち、凹部3の底3aからシート材1の裏面1bまでの厚さは、当然、シート材1の厚さ1wから、凹部3の深さ(シート材1の表面1aから凹部3の底3aまでの深さ)3dを引いた値となる。
【0024】
尚、シート材1が分厚い(厚さ1wが所定値(例えば、30mmなど)以上である)場合には、シート材1は、略直方体状であるとも言える。
このようなシート材1を構成するクッション基材2について、以下に述べる。
【0025】
<クッション基材2>
図1?7に示したように、クッション基材2は、上述したシート材1の基材となるクッション性(緩衝性や可撓性)を有した部材であり、その表面2a側には、凹部3と非凹部4が形成されている。
尚、クッション基材2の「表面2a」とは、自動車等のオーナメント(ドアトリム)やアームレスト、インパネなどにシート材1を使用する場合は、後述する表皮材7が積層されていなければ、使用時に露出する側の面であり、表皮材7が積層されていれば、使用時に露出する側に近い側の面であるとも言える。
【0026】
逆に、クッション基材2の「裏面2b」とは、オーナメントやアームレスト、インパネなどにシート材1を使用する時に露出しない側の面、又は、露出しない側に近い側の面であるとも言える。
更に、クッション基材2の「表面2a側」とは、クッション基材2の上述した表面2aの側を意味する以外に、後述する表皮材7が積層されていれば、使用時に露出する表皮材7の表面7aに近い側、更には、表皮材7の表面7a自体の側も意味する。
【0027】
クッション基材2の厚さ2wも、何れの値でも良いが、例えば、1mm以上100mm以下、好ましくは1mm以上50mm以下、更に好ましくは2mm以上40mm以下(2mm、3mm、3.5mm、4mm、5mm、10mm、30mmなど)であっても良い。
クッション基材2の構成・素材についても、特に限定はないが、例えば、表経編地と裏経編地を連結糸で連結し、表経編地と裏経編地の間にスペースを有したダブルラッセル編地(スペーサラッセル編地)などの編地(編物)や、二重織、二重以上の多重織などの織地(織物)等を含む布帛であっても良い。
これらの布帛を構成(編成、織成等)する繊維についても、その素材に特に限定はないが、例えば、熱可塑性の素材であるポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維でも良く、その他、ガラス繊維、羊毛、絹などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
又、これらの布帛を構成(編成、織成等)する繊維の繊度も、何れの値でも良いが、例えば、総繊度で、20dtex以上3000dtex以下であっても良い。
【0028】
その他、クッション基材2の構成・素材としては、例えば、ポリウレタンフォーム(PUF)や、ポリスチレンフォーム(PSF)、ポリエチレンフォーム(PEF)、ポリプロピレンフォーム(PPF)等の発泡させた合成樹脂(合成樹脂フォーム)であっても良い。
更に、クッション基材2の構成・素材としては、例えば、合成樹脂の不織布であっても良く、この不織布を構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維であったり、その他、綿、絹、ガラス繊維、羊毛などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
これら以外に、クッション基材2の構成・素材としては、例えば、合成皮革であっても良く、この合成皮革とは、織物(織地)や編物(編地)、不織布の布帛(布地)を基材とし、この基材に合成樹脂を塗布や含浸させたものであっても良い。尚、合成皮革のうち、基材が不織布で、合成樹脂は含浸によるものを人工皮革とも言う。
更に他には、クッション基材2の構成・素材として、例えば、フィルムなどのシート状物であっても良く、それを構成する素材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂などの合成樹脂などや、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。又、クッション基材2がフィルムなどのシート状物であれば、その外観(表面7a)は、本革状(本皮様、天然皮革様)であっても良い。
その他、クッション基材2の構成・素材としては、本皮(天然皮革)そのものなどであっても良い。
【0029】
<凹部3>
図1?7に示したように、凹部3は、クッション基材2の表面(表面2aや、後述の表皮材7が積層されていれば、その表面7a)側に形成された凹みである。
凹部3は、底3aを備えている。
【0030】
凹部3は、1個のクッション基材2に対して、1個だけ形成されていたり、複数個形成されていても良い。
凹部3の平面視形状は、特に限定はないが、例えば、略帯状や略筋状、略線状などであったり、ジグザグ状や、点線状、略X字状、略円形状、湾曲線状の他、略三角形状、略正五角形状、略正六角形状、略正方形状、略円形状(略真円形状)などであっても良い。
又、凹部3の平面視形状は、例えば、略矩形状(長方形状)や略楕円形状、略ひし形状などであったり、長手方向や短手方向を有しても良い。
【0031】
凹部3の深さ3dは、シート材1の表面1a(又は、クッション基材2の表面2aや、表皮材7の表面7a)から凹部3の底3aまでの深さであったり、逆に、凹部3の底3aからシート材1の表面1aまでの高さHであるとも言え、その値には特に限定はなく、例えば、0.1mm以上20mm以下、好ましくは0.3mm以上10mm以下、更に好ましくは0.5mm以上7mm以下(0.028mm、0.056mm、0.084mm、0.1mm、0.112mm、0.140mm、0.168mm、0.196mm、0.2mm、0.224mm、0.25m、0.252mm、0.280mm、0.308mm、0.336mm、0.5mm、0.75mm、1.0mm、3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mmなど)であっても良い。
【0032】
このような凹部3が、上述したように複数個である場合には、これら複数個の凹部3は、それぞれの長手方向同士が略平行で且つ短手方向同士が略平行となるように、長手方向及び短手方向に略沿って繰り返し並んで形成されていても良い。
この他、複数個の凹部3は、それぞれの長手方向同士や短手方向同士の略平行か等を無視してランダムに並べられていても良い。
【0033】
<凹部3の底3a>
図1?7に示したように、凹部3の底(底面)3aは、凹部3において最も下方(シート材1の裏面1b(クッション基材2の裏面2b)の最も近く)に位置し、後述する漸変部5に隣接する部分であるとも言える。
凹部3の底3aは、略平坦な面(略平面)でも良いし、湾曲した面(曲面)でも良い。
【0034】
凹部3の底3aの平面視形状も、特に限定はないが、例えば、略帯状や略筋状、略線状、ジグザグ状や、点線状、略X字状、略円形状、湾曲線状、略三角形状、略正五角形状、略正六角形状、略正方形状、略円形状(略真円形状)、略矩形状(長方形状)や略楕円形状、略ひし形状などであったり、長手方向や短手方向を有しても良い。
その他、凹部3の底3aの平面視形状は、上述した凹部3の平面視形状に略相似且つ縮小した形状であったり、逆に、上述した凹部3の平面視形状に略相似していなくても(例えば、凹部3の平面視形状は略矩形状であるが、底3aの平面視形状は略楕円形状などであっても)良い。
凹部3の底3aの厚さ3awは、凹部3の底3aからシート材1の裏面1bまでの厚さであって、シート材1の厚さ1wから凹部3の深さ3dを引いた値であるとも言え、この厚さ3awも、特に限定はないが、例えば、0.1mm以上2.0mm以下、好ましくは0.2mm以上1.5mm以下、更に好ましくは0.3mm以上1.0mm以下(0.5mmや0.8mmなど)であっても良い。
【0035】
<非凹部4>
図1?7に示したように、非凹部4は、凹部3ではない部分であって、凹部3の周りを囲む部分であるとも言え、凹部3が複数個形成されている場合には、隣接する2個の凹部3間に存在する隙間であって、非凹部4は、シート材1の表面1aから凹部3を除いた部分であるとも言える。
又、クッション基材2の表面2aにおいて、所定範囲(ある程度広い範囲)を一旦凹ませた後に、当該一旦凹ませた部分のうち、更に凹ませた部分を凹部3とした場合などには、一旦凹ませた部分のうち、更に凹ませた部分以外が、非凹部4となるとも言える。
非凹部4の平面視形状は、シート材1の表面1a(クッション基材2の表面2a、表皮材7の表面7a)から、1個又は複数個の凹部3を抜いた形状となる。
【0036】
非凹部4は、後述する表皮材7が熱可塑性の素材で形成されている場合には、非凹部4は、表皮材7が変性していない部分(非変性部分)7’であっても良い。尚、非変性部分7’については後に詳解する。
又、凹部3が後述するシート材の製造方法(エンボス工程E)によって形成されている場合には、非凹部4は、クッション基材2や表皮材7において、後述するエンボス型材13が押圧されていない部分(謂わば、非エンボス部分)であるとも言える。
【0037】
<漸変部5>
図1?7に示したように、漸変部5は、凹部3の底3aからの高さHが漸次変化する部分であって、凹部3から非凹部4までに亘って設けられた傾斜した面(漸変面)であるとも言える。
ここで、「凹部3の底3aからの高さHが漸次変化する」とは、上述したように、凹部3の底3aから非凹部4に近づくにつれて徐々に高さHが高くなることを意味したり、凹部3の底3aから非凹部4に到達するまでの間に、高さHが徐々に高くなった後、徐々に低くなり、再び徐々に高くなることなどを意味し、高さHが急激に変化する部分(屈曲する部分)を含まない(換言すれば、漸変部5は、その側断面形状が屈曲点(接線が一意に決まらない点)を有さず、又、凹部3の底3aに対して略90°に交わる部分も含まない)。
【0038】
尚、漸変部5は、凹部3の底3aから非凹部4に到達するまでの間に、高さHが常に変化するだけでなく、高さHの変化量が0(ゼロ)の部分、つまり、水平方向(シート材1の表面1aや、凹部3の底3aなど)に略沿った略平坦な部分を含んでいても良い(略平坦な部分においても、接線は一意に決まる)。
又、漸変部5は、上述したように、凹部3から非凹部4までに亘って設けられているが、これは、<1>凹部3の底3aと漸変部5の境界、及び、非凹部4と漸変部5の境界の両方において屈曲する第1実施形態(図1(a)参照)と、<2>凹部3の底3aと漸変部5の境界においては屈曲しないが、非凹部4と漸変部5の境界においては屈曲する第2実施形態(図1(b)参照)と、<3>凹部3の底3aと漸変部5の境界においては屈曲するが、非凹部4と漸変部5の境界においては屈曲しない第3実施形態(図1(c)参照)と、<4>凹部3の底3aと漸変部5の境界、及び、非凹部4と漸変部5の境界の両方において屈曲しない第4実施形態(図1(d)参照)の4つを含む。
ここで、各境界において屈曲しないとは、各境界が側断面視において丸みを帯びているとも言える。
【0039】
その他、漸変部5は、凹部3の底3a寄りに、後述する鈍角面部分6aが形成され、非凹部4寄りに、後述する広角面部分6bが形成されていても良く、これら鈍角面部分6aと広角面部分6bが、両方とも形成されていたり、何れか一方のみが形成されていたり、両方ともが形成されていなくとも構わない。
尚、これら鈍角面部分6aや広角面部分6bを漸変部5が有している場合における、凹部3の底3aと漸変部5の境界や、非凹部4と漸変部5の境界において屈曲するか否かは、まず鈍角面部分6aや広角面部分6bを詳解した後に述べる。
【0040】
漸変部5は、凹部3の底3aから非凹部4にかけて一様な略平面であっても良いが、その他、湾曲した面(曲面)であっても良い。
ここで、漸変部5が一様な略平面である場合、この漸変部5が水平方向となす角を、漸変角θとする。
【0041】
尚、一様な略平面である漸変部5が水平方向となす漸変角θにおける「水平方向」とは、シート材1が略水平に載置されている場合には、文字通りの略水平方向を意味し、シート材1がオーナメントやアームレスト、インパネなどに使用されて、略水平に載置されていない箇所が生じる場合には、シート材1の表面1a(クッション基材2の表面2a、又は、表皮材7の表面7a)に略沿う方向を意味したり、凹部3の底3aが略平面であれば、当該底3aに略沿う方向を意味する。
又、漸変角θは、0°より大きく、90°より小さい鋭角であれば、その値に特に限定はないが、例えば、0°より大きく45°以下、好ましくは0°より大きく20°以下、更に好ましくは0°より大きく10°以下(0.3°、1.0°、1.1°、1.4°、1.6°、3.2°、4.8°、5.7°、6.3°、7.9°、9.5°、11.0°、11.3°、12.5°、14.0°、15.5°、17.0°、18.4°、26.6°など)であっても良い。
【0042】
一方、漸変部5が曲面である場合には、凹部3の底3aと非凹部4の間において、上方に(非凹部4側に)膨出する部分(凸曲面部分)を有していたり、逆に下方に(凹部3側に)膨出する部分(凹曲面部分)を有していたり、凸曲面部分と凹曲面部分の両方を有するなど、凹部3の底3aからの高さHが漸次変化するのであれば、上下方向への膨出率が変化しても良い。
漸変部5の側断面形状について述べれば、漸変部5が一様な略平面である場合には、その側断面形状は略直線状となり、漸変部5が曲面であれば、曲線状となる。
より詳しくは、漸変部5が凸曲面部分を有する場合には、その側断面形状は上に凸の曲線部分を有することとなり、漸変部5が凹曲面部分を有する場合には、その側断面形状は下に凸の曲線部分を有することとなり、漸変部5が凸曲面部分と凹曲面部分を有する場合には、その側断面形状は上に凸の曲線部分と下に凸の曲線部分を有することとなる。
【0043】
漸変部5の設けられる平面位置(シート材1の表面1a側を上方から視た時の位置)についても、特に限定はないが、凹部3とその凹部3の周りを囲む非凹部4の間において、凹部3の周りのうち一部だけに漸変部5を設けていたり、凹部3の周り全てを囲むように漸変部5が設けられていても良い。
尚、一様な略平面である漸変部5の平面視において、凹部3から非凹部4までに亘って高さHが一様に漸次変化し且つ凹部3の底3aから非凹部4までの漸変距離Zが最も長い方向を、主漸変方向Lとする。
尚、漸変距離Zは、その値に特に限定はないが、例えば、0.1mm以上300mm以下、好ましくは0.2mm以上200mm以下、更に好ましくは0.3mm以上100mm以下(1mm、3mm、40mm、60mm、180mmなど)であっても良い。
【0044】
又、この主漸変方向L以外の方向は、従漸変方向とも言え、この従漸変方向は、主漸変方向Lより漸変距離Zが短いものの、凹部3から非凹部4までに亘って高さHが一様に漸次変化している方向を意味する。
これら主漸変方向Lと従漸変方向の両方を、1個の漸変部5が有していても良い(例えば、凹部3や漸変部5の平面視形状が略帯状であるなど)。
その他、凹部3の底3aから、当該底3aを囲む非凹部4までの漸変距離Zが何れの方向でも略同じ場合(凹部3の底3aを囲む漸変部5の平面視形状の内形と外形が、当該底3aの平面視形状と略相似である場合など)には、何れの方向も主漸変方向Lとなるため、1個の漸変部5が主漸変方向Lのみを有することとなる。
【0045】
このような漸変部5の数は、1個の凹部3において、何れの値でも良く、例えば、1個や2個であったり、3個以上であっても構わない。
尚、漸変部5が、凹部3の周りのうち一部だけに設けられている場合、漸変部5以外のうち凹部3の底3aからの高さHが漸次変化しない部分で、凹内周3bとする。
【0046】
この凹内周3bは、凹部3の底3aからの高さHが漸次変化していなければ、何れの構成でも良いが、例えば、凹部3の底3aから非凹部4までの間(凹部3の底3aと漸変部5の境界から、非凹部4と漸変部5の境界までの間)に、高さHが急激に変化する部分を含むとも言える。
漸変部5の凹内周3bの具体例としては、凹部3の底3aから直接約90°立設して非凹部4に到達していても良い。尚、この約90°に立設した部分では、高さHは漸次変化せず、高さHが急激に変化していると言える。
その他、凹内周3bは、凹部3の底3aに対して約90°立設する部分を有するが、凹部3の底3a寄り部分や、非凹部4寄り部分などは徐々に高さHが変化する部分(丸みのある部分)を有していても良い。
【0047】
漸変部5の平面視形状の内形(凹部3の底3aと漸変部5の境界が描く形)や外形(非凹部4と漸変部5の境界が描く形)も、特に限定はないが、例えば、略帯状や略筋状、略線状、ジグザグ状や、点線状、略X字状、略円形状、湾曲線状、略三角形状、略正五角形状、略正六角形状、略正方形状、略円形状(略真円形状)、略矩形状(長方形状)や略楕円形状、略ひし形状などであったり、長手方向や短手方向を有しても良い。
その他、漸変部5の平面視形状の内形は、上述した凹部3の平面視形状と同じ形状となり、又、その外形は、上述した底3aの平面視形状と同じ形状となる。
このような漸変部5の大きさは、平面視においては、上述した凹部3の大きさから、底3aの大きさを引いたものであると言える。
【0048】
<鈍角面部分6a、凹部3の底3a表面とのなす角(凹鈍角)θa>
図1?7に示したように、鈍角面部分6aが、上述した漸変部5における凹部3の底3a寄りに形成されていても良く、この鈍角面部分6aと凹部3の底3a表面とのなす角(凹鈍角)θaは、160°以上180°より小さい。
ここで、「鈍角面部分6aが、漸変部5における凹部3の底3a寄りに形成されている」とは、凹部3の底3aと漸変部5の境界から、非凹部4側に向かって所定距離だけ離れた位置までの間が、鈍角面部分6aであることを意味する。
尚、凹鈍角θaは、好ましくは170°以上180°より小さく、更に好ましくは175°以上180°より小さくても良い。
【0049】
凹鈍角θaが160°以上180°より小さいことを換言すれば、鈍角面部分6aが水平方向となす角は、0°より大きく20°以下であって、好ましくは0°より大きく10°以下、更に好ましくは0°より大きく5°以下であるとも言える。
尚、鈍角面部分6aが水平方向となす角における「水平方向」の意味は、上述した漸変部5が水平方向となす漸変角θにおける「水平方向」と同様である。
又、凹鈍角θaは、上述した漸変角θより小さくとも良く、この場合、漸変部5においては、凹部3の底3aに近づくにつれて水平方向に対する角が小さくなる(傾斜が緩くなる)ことを意味する。
【0050】
鈍角面部分6aは、一様な略平坦な面(略平面)でも良いし、上方に(非凹部4側に)膨出したり(上に凸であったり)、逆に下方に(凹部3側に)膨出する(下に凸である)など湾曲した面(曲面)でも良い。
尚、鈍角面部分6aが下方に膨出する曲面である場合には、当該鈍角面部分6aと凹部3の底3aの境界で、高さHが急激に変化し難く(屈曲し難く)、鈍角面部分6aと凹部3の底3aの境界が視認し難くなるとも言える。
又、上述した凹鈍角θaが180°に近く(上述した鈍角面部分6aが水平方向となす角が0°に近く)なればなるほど(鈍角面部分6aが、漸変部5から凹部3の底3aにかけて緩やかに傾斜すればするほど)、鈍角面部分6aと凹部3の底3aの境界が、より視認し難くなるとも言える。
【0051】
<広角面部分6b、凸広角θb>
図1?7に示したように、広角面部分6bが、上述した漸変部5における非凹部4寄りに形成されていても良く、この広角面部分6bと非凹部4の表面とのなす角(凸広角)θbは、180°より大きく200°以下である。
ここで、「広角面部分6bが、漸変部5における非凹部4寄りに形成されている」とは、非凹部4と漸変部5の境界から、凹部3の底3a側に向かって所定距離だけ離れた位置までの間が、広角面部分6bであることを意味する。
尚、凸広角θbは、好ましくは180°より大きく190°以下であり、更に好ましくは180°より大きく185°以下であっても良い。
【0052】
凸広角θbが180°より大きく200°以下であることを換言すれば、広角面部分6bが水平方向となす角も、0°より大きく20°以下であって、好ましくは0°より大きく10°以下、更に好ましくは0°より大きく5°以下であるとも言える。
尚、広角面部分6bが水平方向となす角における「水平方向」の意味は、上述した漸変部5が水平方向となす漸変角θや、鈍角面部分6aが水平方向となす角における「水平方向」と同様である。
又、凸広角θbも、上述した漸変角θより小さくとも良く、この場合、漸変部5においては、非凹部4に近づくにつれて水平方向に対する角が小さくなる(傾斜が緩くなる)ことを意味する。
【0053】
広角面部分6bも、一様な略平坦な面(略平面)でも良いし、上方に(非凹部4側に)膨出したり(上に凸であったり)、逆に下方に(凹部3側に)膨出する(下に凸である)など湾曲した面(曲面)でも良い。
尚、広角面部分6bが上方に膨出する曲面である場合には、当該広角面部分6bと非凹部4の境界で、高さHが急激に変化し難く(屈曲し難く)、広角面部分6bと非凹部4の境界が視認し難くなるとも言える。
又、上述した凸広角θbが180°に近く(上述した広角面部分6bが水平方向となす角が0°に近く)なればなるほど(広角面部分6bが、非凹部4から漸変部5にかけて緩やかに傾斜すればするほど)、鈍角面部分6aと凹部3の底3aの境界が、より視認し難くなるとも言える。
【0054】
<表皮材7>
図1?7に示したように、表皮材7は、クッション基材2の表面2aに積層されたシート状物である。
表皮材7は、クッション基材2の表面2aに積層されるのであれば、その素材は何れでも良いが、例えば、合成皮革や、織物、編物、不織布などの布帛や、フィルム等の熱可塑性の素材であったり、その他、本皮(天然皮革)などで構成されていても良い。
尚、ここで、「表皮材7がクッション基材2の表面2aに積層された」状態とは、クッション基材2の表面2a上に、表皮材7が層状に積み重なっていれば良く、表皮材7とクッション基材2が互いに固着しているか否かを問わない。
【0055】
表皮材7が合成皮革の場合、この合成皮革とは、織物(織地)や編物(編地)、不織布の布帛(布地)を基材とし、この基材に合成樹脂を塗布や含浸させたものであっても良い。尚、合成皮革のうち、基材が不織布で、合成樹脂は含浸によるものを人工皮革とも言う。
表皮材7が織物の場合、何れの織組織でも構わないが、例えば、平織や綾織、朱子織、二重織、二重織以上の多重織などであっても良い。尚、ここまで述べた平織等はパイルを有さない。
表皮材7が織物の場合、上述以外に、モケット織やウィルトン織などのパイル織物であっても良い。
【0056】
表皮材7が編物の場合、デンビー編(トリコット編)や、ラッセル編、ダブルラッセル編、バンダイク編(アトラス編)、コード編などの経編や、平編(天竺編)、ゴム編(リブ編)、パール編などの緯編など、それぞれ何れの組織であっても構わない。尚、ここまで述べたトリコット編等は、通常はパイルを有さない。
表皮材7が編物の場合、上述以外に、1又は複数の筬で編成した経編地を起毛したもの等であっても良い。
【0057】
表皮材7が不織布である場合には、例えば、往復するニードルに繊維を引っ掛けて繊維相互間を交絡したニードルパンチ不織布であっても良く、その他、熱融着性繊維を含有し加熱により成形されたサーマルボンド不織布、アクリル樹脂やウレタン樹脂等のエマルション樹脂の吹き付け加工により成形されたケミカルボンド不織布、ノズルから紡糸された長繊維(フィラメント)を動くスクリーン上に積層して結合させたスパンボンド不織布、ステッチボンド不織布等をニードルパンチ法などによって結合させたものであっても構わない。
表皮材7が織物や編物、不織布などの布帛である場合、それらを構成(織成、編成)する繊維としては、熱可塑性の素材であるポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル繊維、ナイロン(ポリアミド)繊維、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)を主成分とするアクリル繊維、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(ビニロン繊維)、ポリウレタン(PU)繊維などの合成繊維でも良く、その他、ガラス繊維、羊毛、絹などであり、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。
【0058】
尚、表皮材7が織物や編物、不織布などの布帛である場合、それらを構成(織成、編成)する繊維の繊度も、何れの値でも良いが、例えば、総繊度で、20dtex以上3000dtex以下である。
表皮材7がフィルムなどのシート状物であれば、それを構成する素材としては、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂や、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂などの合成樹脂などや、これらを単独又は組み合わせて用いられても良い。尚、表皮材7がフィルムなどのシート状物であれば、その外観(表面7a)は、本革状(本皮様、天然皮革様)であっても良い。
【0059】
表皮材7が、上述した熱可塑性の素材で形成されている場合、この表皮材7に、エンボス型材13の押圧による加熱等をされた際には、この加熱等された部分が変性(変質)する。
ここで、本発明における「表皮材7の変性」とは、上述したように、熱や薬品等により表皮材7が溶融や軟化することで、表皮材7の表面性状(光沢、凹凸、色など)や、強度が変化することを意味し、特に、エンボス型材13の押圧により変性した表皮材7は、その表面が、他の部分より略平坦となる。
【0060】
逆に、表皮材7が熱可塑性の素材で形成されていても、非凹部4がエンボス型材13の当接(押圧)によって加熱等をされなければ、非凹部4が、表皮材7の変性していない部分(非変性部分)7’となる。
このような非変性部分7’は、凹部3が後述するシート材の製造方法(エンボス工程E)によって形成されている場合には、上述したように、後述するエンボス型材13が当接していない部分(謂わば、非エンボス部分)であるとも言える。
【0061】
上述した表皮材7は、所望により、酸化チタン、炭酸カルシウム等の体質顔料やフィラー(充填材)を任意に添加したり、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、難燃剤、撥水剤、防汚剤、着色剤、香料、発泡剤等を添加した素材を用いたり、表皮材7とした後に処理しても良い。
表皮材7は、その模様については、無地や、花や草木などの植物の柄、動物の柄、幾何学模様、表面凹凸等による模様など何れでも良い。表皮材7の色彩についても、青色系、黒色系、白色系、赤色系、橙色系、黄色系、緑色系、紫色系など何れの色調でも良く、彩度や明度についても何れの値でも構わない。
【0062】
表皮材7の「表面7a」とは、自動車等のオーナメント(ドアトリム)やアームレスト、インパネ(instrument panel)などに使用する時に露出する側の面であるとも言える。
逆に、表皮材7の「裏面1b」とは、オーナメントやアームレスト、インパネなどに使用する時に露出しない側の面であるとも言える。
表皮材7の厚さ7wも、何れの値でも良いが、例えば、0.1mm以上3.0mm以下、好ましくは0.2mm以上2.0mm以下、更に好ましくは0.3mm以上1.0mm以下(0.5mmなど)であっても良い。
【0063】
このような表皮材7がクッション基材2の表面2aに積層されている場合には、当該表皮材7と共にクッション基材2も凹むことで、凹部3が形成されることとなる。
又、表皮材7は、クッション基材2の表面2aに、接着剤等によって固着していても良く、その他、表皮材7とクッション基材2同士が熱溶着して、互いに固着していたり、表皮材7は、クッション基材2の表面2aに縫製によって固着されていても構わない。
以下、シート材1の各実施例ごとに詳解する。
【0064】
<実施例1>
図2に示したように、シート材1(漸変部5)の実施例1では、1個の凹部3に対して漸変部5を複数個(3個)有しており、これら3個の漸変部を、図2中においては5a、5b、5cとする。
又、実施例1における凹部3の平面視形状は、2本の略帯形状が右寄り逆T字型に組み合わさって構成され、この右寄り逆T字型の略帯形状の3個の端部に、その3個の漸変部5a?5cが形成されている。
【0065】
これら漸変部5a?5cは、それぞれに鈍角面部分6aと広角面部分6bの両方が形成される。尚、各漸変部5a?5cは、凹鈍角θaが160°以上180°より小さくなる箇所が存在し、その箇所が鈍角面部分6aであると言え、凸広角θbが180°より大きく200°以下となる箇所が存在し、その箇所が広角面部分6bであると言える。
又、漸変部5a?5cは、主漸変方向Lと従漸変方向の両方を有している。
更に、漸変部5a?5cの何れもが、凹部3の底3aと漸変部5の境界、及び、非凹部4と漸変部5の境界の両方において屈曲しない第4実施形態であると言える。
【0066】
実施例1における漸変部5a?5cのうち、漸変部5aは、主漸変方向Lに沿った漸変距離Zが最も長く(約180mm)、主漸変方向Lに沿った漸変角θが最も小さい(約0.3°)。
又、漸変部5bは、主漸変方向Lに沿った漸変距離Zが漸変部5aの次に長く(約60mm)、主漸変方向Lに沿った漸変角θが漸変部5aの次に最も小さく(約1.0°)、漸変部5cは、主漸変方向Lに沿った漸変距離Zが最も短く(約40mm)、主漸変方向Lに沿った漸変角θは最も大きい(約1.4°)。
【0067】
尚、実施例1におけるクッション基材2はダブルラッセル編地であり、このクッション基材2の表面側には表皮材7が積層されており、表皮材7は外観が本革状のフィルムである。
実施例1におけるシート材1としての厚さ1wは約4.0mmであり、クッション基材2の厚さ2wは約3.5mmであり、凹部3の深さ3dは約1.0mmであり、表皮材7の厚さ7wは約0.5mmである。
【0068】
<実施例2>
図3に示したように、シート材1(漸変部5)の実施例2では、1個の凹部3に対して漸変部5を複数個(2個)有しており、これら2個の漸変部を、図3中においては5a、5bとする。
又、実施例2における凹部3の平面視形状は、1本の略帯形状となっており、その両端に、2個の漸変部5a、5bが形成されている。
【0069】
これら漸変部5a、5bは、それぞれに鈍角面部分6aと広角面部分6bの両方が形成される。尚、漸変部5aは、主漸変方向Lと従漸変方向の両方を有しているが、漸変部5bは、その漸変距離Zが一様であるため、何れの方向が主漸変方向Lや従漸変方向であるとは決まらない。
又、漸変部5a、5bの何れもが、凹部3の底3aと漸変部5の境界、及び、非凹部4と漸変部5の境界の両方において屈曲しない第4実施形態であると言える。
【0070】
尚、実施例2における凹部3は、一方から他方に向かって、深さ3dが段階的に浅くなって(段差が形成されて)おり、それぞれの段の深さ3dは、深い方から順に、約1.00mm、約0.75mm、約0.50mm、約0.25mmである。
実施例2における漸変部5a、5bのうち、漸変部5aは、主漸変方向Lに沿った漸変距離Zが漸変部5bより長く(約50mm)、主漸変方向Lに沿った漸変角θが漸変部5bより小さい(約1.1°)。
【0071】
又、漸変部5bは、一様な漸変距離Zが漸変部5aより短く(約1.0mm)、その漸変角θが漸変部5aより大きい(約14.0°)。
その他のシート材1や漸変部5の構成、作用効果及び使用態様は、実施例1と同様である。
【0072】
<実施例3>
図4に示したように、シート材1(漸変部5)の実施例3では、複数個(12個)の凹部3を有しており、各凹部3に対して漸変部5を1個ずつ有している。
又、実施例3における凹部3の平面視形状は、4個の凹部3が集まって、略X字状、又は、略正方形ダイヤ状を成している。
【0073】
これらの各漸変部5は、それぞれに鈍角面部分6aと広角面部分6bの両方が形成されるが、方向については、各漸変部5ごとにその漸変距離Zが一様であるため、何れの方向が主漸変方向Lや従漸変方向であるとは決まらない。
尚、実施例3における各凹部3は、略X字状又は略正方形ダイヤ状に集まった4個の凹部3ごとに、深さ3dが異なっており、それぞれの段の深さ3dは、浅い方から順で6個ごとに、約0.1mm、約0.2mmである。
この実施例3(図4)においては、深さ3dが約0.1mmの凹部3に隣接した漸変部を、5aとし、深さ3dが約0.2mmの凹部3に隣接した漸変部を、5bとする。
【0074】
又、各漸変部5a、5bのうち、漸変部5aは、凹部3の底3aと漸変部5の境界、及び、非凹部4と漸変部5の境界の両方において屈曲しない第4実施形態であるが、漸変部5bは、凹部3の底3aと漸変部5の境界においては屈曲するが、非凹部4と漸変部5の境界においては屈曲しない第3実施形態であると言える。
実施例3における漸変部5a、5bのうち、漸変部5aは、一様な漸変距離Zが約1.0mmであり、その漸変角θが漸変部5bより小さい(約5.7°)。
【0075】
又、漸変部5bも、一様な漸変距離Zは約1.0mmであるが、その漸変角θは漸変部5aより大きい(約11.3°)。
ここで、図4中の符号3’で示した凹部は、当該凹部3’の底3aから立設する部分を有しており、本発明における漸変部5は有さない。
【0076】
又、シート材の何れかに、本発明における漸変部5を有した凹部3が1つでも形成されていれば、本発明のシート材1と言える。
その他のシート材1や漸変部5の構成、作用効果及び使用態様は、実施例1、2と同様である。
【0077】
<実施例4>
図5に示したように、シート材1(漸変部5)の実施例4では、複数個(2個)の凹部3を有しており、各凹部3に対して漸変部5を1個ずつ有している。
又、実施例4における各凹部3の平面視形状は、略帯状であるが、一方から他方に向かって、幅が段階的に広くなっている。
【0078】
これらの各漸変部5は、それぞれに鈍角面部分6aと広角面部分6bの両方が形成されるが、方向については、各漸変部5ごとにその漸変距離Zが一様であるため、何れの方向が主漸変方向Lや従漸変方向であるとは決まらない。
尚、実施例4における各凹部3は、互いに深さ3dが異なっており、それぞれの段の深さ3dは、浅い方から順に、約0.25mm、約0.50mmである。
この実施例4(図5)においては、深さ3dが約0.25mmの凹部3に隣接した漸変部を、5aとし、深さ3dが約0.50mmの凹部3に隣接した漸変部を、5bとする。
【0079】
又、何れの漸変部5a、5bも、凹部3の底3aと漸変部5の境界、及び、非凹部4と漸変部5の境界の両方において屈曲しない第4実施形態である。尚、漸変部5bにおいて最も幅狭となった一端には、当該凹部3の底3aから立設する部分(凹内周3b)が形成されている。
実施例4における漸変部5a、5bのうち、漸変部5aは、一様な漸変距離Zが約1.0mmであり、その漸変角θが漸変部5bより小さい(約14.0°)。
【0080】
又、漸変部5bも、一様な漸変距離Zは約1.0mmであるが、その漸変角θは漸変部5aより大きい(約26.6°)。
その他のシート材1や漸変部5の構成、作用効果及び使用態様は、実施例1?3と同様である。
【0081】
<実施例5>
図6に示したように、シート材1(漸変部5)の実施例5では、複数個(2個)の凹部3を有しており、各凹部3に対して漸変部5を1個ずつ有している。
又、実施例5における各凹部3の平面視形状は、一方の凹部3が略円形で、他方の凹部3の両端部が丸い略棒状である。
【0082】
これらの各漸変部5は、それぞれに鈍角面部分6aと広角面部分6bの両方が形成されるが、方向については、各漸変部5ごとにその漸変距離Zが一様であるため、何れの方向が主漸変方向Lや従漸変方向であるとは決まらない。
尚、実施例5における各凹部3は、底3aが曲面となっている(又は、明確な底3aが視認し難い)とも言えるが、各凹部3の最も深い地点における深さ3dは、約1.0mmである。
この実施例5(図6)においては、略棒状の凹部3に隣接した漸変部を、5aとし、略円形状の凹部3に隣接した漸変部を、5bとする。
【0083】
又、何れの漸変部5a、5bも、凹部3の底3aと漸変部5の境界、及び、非凹部4と漸変部5の境界の両方において屈曲しない第4実施形態である。
実施例5における漸変部5a、5bのうち、漸変部5aは、一様な漸変距離Zが約3.0mmであり、その漸変角θは漸変部5bと略同じである(約18.4°)。
【0084】
又、漸変部5bも、一様な漸変距離Zは約3.0mmであり、その漸変角θは漸変部5aと略同じである(約18.4°)。
その他のシート材1や漸変部5の構成、作用効果及び使用態様は、実施例1?4と同様である。
【0085】
<実施例6>
図7に示したように、シート材1(漸変部5)の実施例6では、複数個(12個)の凹部3を有しており、各凹部3に対して漸変部5を1個ずつ有している。
又、実施例6における各凹部3の平面視形状は、全て両端部が丸い略棒状である。
【0086】
これらの各漸変部5は、それぞれに鈍角面部分6aと広角面部分6bの両方が形成されるが、方向については、各漸変部5ごとにその漸変距離Zが一様であるため、何れの方向が主漸変方向Lや従漸変方向であるとは決まらない。
尚、実施例6における各凹部3は、互いに深さ3dが異なっており、それぞれの段の深さ3dは、約0.028mmから約0.336mmまで、約0.028mm刻みで徐々に深くなっている(換言すれば、浅い方から順に、約0.028mm、約0.056mm、約0.084mm、約0.112mm、約0.140mm、約0.168mm、約0.196mm、約0.224mm、約0.252mm、約0.280mm、約0.308mm、約0.336mmである)。
【0087】
又、12個の漸変部5のうち、深さ3dが最も深い約0.336mmである凹部3と、その次に深さ3dが深い約0.308mmである凹部3は、凹部3の底3aと漸変部5の境界においては屈曲するが、非凹部4と漸変部5の境界においては屈曲しない第3実施形態であると言え、それら以外の残り10個の凹部3は、凹部3の底3aと漸変部5の境界、及び、非凹部4と漸変部5の境界の両方において屈曲しない第4実施形態であると言える。
実施例6における各漸変部5は、一様な漸変距離Zが約1.0mmであり、それらの漸変角θは、深さ3dが最も浅い凹部3に隣接した漸変部5から、深さ3dが最も深い凹部3に隣接した漸変部5まで徐々に大きくなる(約1.6°、約3.2°、約4.8°、約6.3°、約7.9°、約9.5°、約11.0°、約12.5°、約14.0°、約15.5°、約17.0°、約18.4°)。
その他のシート材1や漸変部5の構成、作用効果及び使用態様は、実施例1?5と同様である。
【0088】
<シート材の製造方法、エンボス工程E>
図8、9に示したように、シート材の製造方法は、クッション基材2の表面(表面2aや、表皮材7の表面7a)側にエンボス型材13を押圧するエンボス工程Eを有し、クッション基材2の表面2a側に凹部3と非凹部4が形成されたシート材1を製造する方法である。
エンボス工程Eにおいては、エンボス凸部11や、後述するエンボス漸変部14が、クッション基材2の表面2a側や、表皮材7の表面7a側に当接した状態で、エンボス型材13を押圧することで、上述した凹部3、漸変部5等を設ける。
【0089】
エンボス工程Eについて詳解すれば、エンボス凸部11と非エンボス凸部12を有するエンボス型材13と、これを受けるエンボス受型20との間に、凹部3を形成する前のクッション基材2や表皮材7を挟み、所定の条件で、エンボス型材13(つまり、エンボス凸部11等)を、クッション基材2の表面2a側からエンボス受型20方向へ押圧して、凹部3等を形成する。
エンボス工程Eにおける上述の条件は、凹部3等が形成されるのであれば、特に限定はないが、押圧する(エンボスする)対象であるクッション基材2や表皮材7の素材に応じた所定の値であっても良く、例えば、エンボス型材13やエンボス受型20の温度(エンボス温度)は、エンボス型材13が140℃で、エンボス受型20が180℃など、押圧時間が30秒などであっても良い。
【0090】
尚、これらエンボス工程Eの条件(エンボス温度や押圧時間など)について、クッション基材2をダブルラッセル編地にした場合は、クッション基材2をウレタンフォーム等にした場合と比べて、エンボス温度の低減や、押圧時間の短縮などが可能となるとも言える。
又、クッション基材2をダブルラッセル編地にした場合には、上述したように、シート材1としてのクッション性の向上や、底つき感の低減、耐久性の向上も図れる。
【0091】
エンボス型材13やエンボス受型20の構成についても、凹部3や漸変部5等が形成されるのであれば、特に限定はないが、例えば、エンボス型材13とエンボス受型20がフラット形状であったり、ロール形状であっても良い。
例えば、エンボス型材13やエンボス受型20がロール形状である場合には、エンボス凸部11の長手方向や、後述するエンボス漸変部14のエンボス主漸変方向を、ロール周方向やロール軸方向に略沿わしても良い。
【0092】
その他、エンボス型材13とエンボス受型20がロール形状である場合、エンボス型材13側のロール端部(少なくとも一方か両方のロール端部)を、エンボス凸部11の高さと略同じにし且つこの略同じ高さにしたロール端部に当たらない幅のクッション基材2や表皮材7を用いて、エンボス受型20側のロールとは、主にロール端部が当接することで、エンボス型材13側のロールと、エンボス受型20側のロールの間隔や、押圧力を略一定に保ちながら、クッション基材2等に、凹部3等を形成し易くなる。
又、エンボス工程Eにおいては、クッション基材2の下(クッション基材2の裏面2b側)に、シリコーン樹脂等の耐熱性を有したエラストマー素材のシート状物(下敷シート)30を敷いた状態で、エンボス凸部11を押圧しても良い。
【0093】
<エンボス凸部11、非エンボス凸部12、エンボス型材13>
図8、9に示したように、エンボス凸部11は、エンボス型材13の基部13aから立設するように(立設状に)設けられた凸状部分(山部分)であって、エンボス型材13におけるエンボス凸部11は、シート材1における凹部3に相当するとも言える。
尚、エンボス凸部11は、エンボス型材13の基部13aから約90°に立設した段差13bを介して立設している(図8参照)と、エンボス型材13の基部13aから直接立設している場合(図9参照)がある。
【0094】
エンボス凸部11には、後述するエンボス漸変部14が設けられており、このエンボス漸変部14には、後述するエンボス広角面部分15aやエンボス鈍角面部分15bが形成されていても良い。
その他、エンボス凸部11、非エンボス凸部12、エンボス型材13等においては、上述したシート材1における凹部3はエンボス凸部11に相当するとも言える。
以下同様に、エンボス凸部11、非エンボス凸部12、エンボス型材13等においては、シート材1における凹部3の底3aはエンボス凸部11の頂11aに、凹部3の凹内周3bはエンボス凸部11の凸外周に、凹部3の深さ3dはエンボス凸部11の高さ11hに、非凹部4は非エンボス凸部12に、漸変部5はエンボス漸変部14に、高さH(凹部3の底3aからの高さH)は深さD(エンボス凸部11の頂11aからの深さD)に、凹部3の底3a表面とのなす角(凹鈍角)θaが160°以上180°より小さい鈍角面部分はエンボス凸部11の頂11a表面とのなす角(凸広角)θa’が180°より大きく200°以下であるエンボス広角面部分15aに、非凹部4の表面とのなす角(凸広角)θbが180°より大きく200°以下である広角面部分6bは非エンボス凸部12の表面との(段差13cを有する場合、水平方向との)なす角(凹鈍角)θb’が160°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bに相当するとも言える。
【0095】
<非エンボス凸部12など>
図8、9に示したように、非エンボス凸部12は、エンボス型材13において、上述したエンボス凸部11以外の部分である。
従って、非エンボス凸部12とは、エンボス型材13の基部13aから約90°に立設した段差13bを介してエンボス凸部11が立設している場合(図8参照)には、エンボス型材13の基部13aにおける表面13cだけでなく、段差13bも含み、エンボス凸部11がエンボス型材13の基部13aから直接立設している場合(図9参照)は、エンボス型材13の基部13aにおける表面13cのみを指す。
【0096】
非エンボス凸部12は、平面視において、エンボス凸部11の周りを囲む部分であるとも言え、エンボス凸部11が複数個形成されている場合には、隣接する2個の凹部3間に存在する隙間であって、非エンボス凸部12は、エンボス型材13におけるエンボス面(クッション基材2や表皮材7に当接する面であって、エンボス凸部11やエンボス漸変部14、エンボス型材13の基部13aにおける表面13cなどを合わせた部分側の面)からエンボス凸部11を除いた部分であるとも言える。
非エンボス凸部12の平面視形状は、エンボス型材13のエンボス面から、1個又は複数個のエンボス凸部11を抜いた形状となる。
【0097】
又、非エンボス凸部12は、シート材1における非凹部4に相当するとも言えるところ、非エンボス凸部12は、クッション基材2や表皮材7と非接触(非当接・非押圧)の場合(図8参照)もあり、この場合、クッション基材2や表皮材7において、後述するエンボス型材13が押圧されていない部分(謂わば、非エンボス部分)が生じる。
ここで、図8で示したように、エンボス工程Eにおいて、上述したエンボス型材13とエンボス受型20との距離が、エンボス工程E前のシート材1の厚さ(エンボス前厚さ)1w’(つまり、クッション基材2単独の厚さ2wや、これに表皮材7の厚さ7wを加えた厚さ)より大きければ、非エンボス凸部12がクッション基材2や表皮材7と非接触である場合を、シート材の製造方法の「第1実施形態」とする。
尚、図8中では段差13bを有したエンボス型材13が示されているが、シート材の製造方法の第1実施形態においては、段差13bを有さず、エンボス型材13の基部13aから直接エンボス凸部11が立設しているエンボス型材13を使用しても良い。
【0098】
一方、図9で示したように、エンボス工程Eにおいて、エンボス型材13とエンボス受型20との距離が、エンボス前厚さ1w’以下であれば、非エンボス凸部12がクッション基材2や表皮材7と接触する場合を、シート材の製造方法の「第2実施形態」する。
尚、この第2実施形態においては、段差13bを有したエンボス型材13は使用できないとも言える(もしエンボス型材13の基部13aとエンボス凸部11との間に段差13bが存在していれば、製造されるシート材における凹部3と非凹部4の間で高さHが急激に変化する部分が形成されることになるため)。
【0099】
<エンボス漸変部14、エンボス広角面部分15a、エンボス鈍角面部分15bなど>
図8、9に示したように、エンボス漸変部14は、上述したシート材1の漸変部5のように、エンボス凸部11の頂11aからの深さDが漸次変化する部分であって、エンボス凸部11から非エンボス凸部12までに亘って設けられた傾斜した面(漸変面)であるとも言える。
ここで、「エンボス凸部11の頂11aからの深さDが漸次変化する」とは、エンボス凸部11の頂11aから非エンボス凸部12に近づくにつれて徐々に深さDが深くなることを意味したり、エンボス凸部11の頂11aから非エンボス凸部12に到達するまでの間に、深さDが徐々に深くなった後、徐々に浅くなり、再び徐々に深くなることなどを意味し、深さDが急激に変化する部分(屈曲する部分)を含まない(換言すれば、エンボス漸変部14は、その側断面形状が屈曲点(接線が一意に決まらない点)を有さず、又、エンボス凸部11の頂11aに対して略90°に交わる部分も含まない)。
【0100】
又、「エンボス凸部11から非エンボス凸部12までに亘って」とは、上述した非エンボス凸部12がエンボス型材13の基部13aにおける表面13cと段差13bを含む場合には、エンボス凸部11からエンボス型材13の段差13bまでに亘ることを意味し、非エンボス凸部12がエンボス型材13の基部13aにおける表面13cのみを指す場合には、エンボス凸部11からエンボス型材13の基部13aにおける表面13cまでに亘ることを意味する。
更に、エンボス漸変部14は、エンボス凸部11の頂11a寄りに、エンボス広角面部分15aが形成され、非エンボス凸部12寄りに、エンボス鈍角面部分15bが形成されていても良く、これらエンボス広角面部分15aとエンボス鈍角面部分15bが、両方とも形成されていたり、何れか一方のみが形成されていたり、両方ともが形成されていなくとも構わない。
【0101】
その他、エンボス漸変部14や、エンボス広角面部分15a、エンボス鈍角面部分15b等においては、上述したシート材1における凹部3はエンボス凸部11に相当するとも言える。
以下同様に、エンボス漸変部14や、エンボス広角面部分15a、エンボス鈍角面部分15b等においては、シート材1における凹部3の底3aはエンボス凸部11の頂11aに、凹部3の凹内周3bはエンボス凸部11の凸外周に、非凹部4は非エンボス凸部12に、漸変部5はエンボス漸変部14に、高さH(凹部3の底3aからの高さH)は深さD(エンボス凸部11の頂11aからの深さD)に、主漸変方向Lはエンボス主漸変方向に、従漸変方向はエンボス従漸変方向に、漸変距離Zはエンボス漸変距離に、漸変角θはエンボス漸変角θ’に、凹部3の底3a表面とのなす角(凹鈍角)θaが160°以上180°より小さい鈍角面部分はエンボス凸部11の頂11a表面とのなす角(凸広角)θa’が180°より大きく200°以下であるエンボス広角面部分15aに、凹部3の底3a表面とのなす角(凹鈍角)θaはエンボス凸部11の頂11a表面とのなす角(凸広角)θa’に、非凹部4の表面とのなす角(凸広角)θbが180°より大きく200°以下である広角面部分6bは非エンボス凸部12の表面とのなす角(凹鈍角)θb’が160°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分15bに、非凹部4の表面とのなす角(凸広角)θbは非エンボス凸部12の表面とのなす角(凹鈍角)θb’に相当するとも言える。
【0102】
<その他>
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。シート材1、シート材の製造方法等の各構成又は全体の構造、形状、寸法などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することが出来る。
シート材1は、上述した表皮材7の他、クッション基材2の裏面2b側に、裏打ち材などが積層されていても良い。
シート材1は、漸変部5に、上述した鈍角面部分6aや広角面部分6bが形成されていなくとも良い。
シート材1は、表皮材7を有さなくとも良く、シート材1の表面1a側にパイルを有していても構わない。
漸変部5は、上述したように、凹部3の底3aから非凹部4に到達するまでの間に、高さHの変化量が0で水平方向に略沿った略平坦な部分を有していても良く、このような略平坦な部分を複数有していても良い。
【0103】
シート材1における凹部3や非凹部4、漸変部5を有しているのであれば、上述したシート材の製造方法におけるエンボス工程Eにて形成される以外に、例えば、クッション基材2や表皮材7等を切削したり、溶融する等によって形成しても良い。
シート材の製造方法におけるエンボス工程Eにて、下敷シート30を、クッション基材2の下に敷かずに、エンボス凸部11をクッション基材2の表面(表面2aや、表皮材7の表面7a)側に押圧しても良い。
シート材の製造方法は、エンボス工程E以外に、エンボス工程E前に、エンボス受型20上で、クッション基材2の表面2a側に表皮材7を積層する積層工程や、エンボス工程E後に、凹部3が形成されたシート材1を裁断する裁断工程などの工程を含んでいても良い。
シート材の製造方法において、エンボス漸変部14に、上述したエンボス広角面部分15aやエンボス鈍角面部分15bが形成されていなくとも良い。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明に係るシート材は、自動車や船舶、鉄道車両、航空機等のオーナメント(ドアトリムなど)やアームレスト、インパネ(instrument panel)等の内装材、シート(椅子)を覆うシートカバーなど乗物内装用途の製品として利用可能である他、産業資材用途、インテリア用途、衣料用途、衣料資材用途などに利用しても良い。
本発明に係るシート材の製造方法も、当該製造方法にて製造されたシート材を、自動車や船舶、鉄道車両、航空機等のオーナメント(ドアトリムなど)やアームレスト、インパネ等の内装材に用いたり、シート(椅子)を覆うシートカバーなど乗物内装用途の製品として利用したり、その他、産業資材用途、インテリア用途、衣料用途、衣料資材用途などに利用しても良い。
【符号の説明】
【0105】
1 シート材
2 クッション基材
3 凹部
4 非凹部
5 漸変部
6a 鈍角面部分
6b 広角面部分
7 表皮材
11 エンボス凸部
12 非エンボス凸部
13 エンボス型材
14 エンボス漸変部
H 凹部の底からの高さ
θa 鈍角面部分が凹部の表面となす角
θb 広角面部分が非凹部の表面となす角
E エンボス工程
D エンボス凸部の頂からの深さ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材(表面側にパイルを有したシート材を除く)であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成されていることを特徴とするシート材。
【請求項2】
クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って前記高さ(H)が一様に漸次変化し且つ前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い方向である主漸変方向(L)を有する部分が設けられ、
前記主漸変方向(L)を有する部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、
前記表皮材(7)は、パイルを有しておらず、
前記クッション基材(2)は、合成樹脂フォームであり、
この合成樹脂フォームは、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、
前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。
【請求項3】
クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、
前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、
このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、
前記凹部(3)の平面視形状の少なくとも一部、及び/又は、前記凹部(3)の底の平面視形状の少なくとも一部は、湾曲していることを特徴とするシート材。
【請求項4】
クッション基材(2)の表面側に、凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材であって、
前記凹部(3)から非凹部(4)までに亘って、前記凹部(3)の底からの高さ(H)が漸次変化する漸変部(5)を有し、
前記クッション基材(2)の表面側には、表皮材(7)が積層され、
前記クッション基材(2)は、ダブルラッセル編地であり、
このダブルラッセル編地は、前記表皮材(7)に覆われて、当該シート材の使用時に露出せず、
前記漸変部(5)の凹部(3)の底寄りの少なくとも一部に、当該凹部(3)の底表面とのなす角(θa)が170°以上180°より小さい鈍角面部分(6a)が形成され、及び、
前記漸変部(5)の非凹部(4)寄りの少なくとも一部に、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく190°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の少なくとも一部に、前記凹部(3)の底から非凹部(4)までの平面視における漸変距離(Z)が最も長い部分を有し、
前記漸変距離(Z)が最も長い部分が設けられた漸変部(5)の非凹部(4)寄りに、当該非凹部(4)の表面とのなす角(θb)が180°より大きく185°以下である広角面部分(6b)が形成され、
前記漸変部(5)の平面視における凹部(3)の底と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形、及び/又は、前記漸変部(5)の平面視における非凹部(4)と当該漸変部(5)の境界の少なくとも一部が描く形は、湾曲していることを特徴とするシート材。
【請求項5】
クッション基材(2)の表面側にエンボス凸部(11)と非エンボス凸部(12)が形成されたエンボス型材(13)を押圧するエンボス工程(E)を有し、前記クッション基材(2)の表面側に凹部(3)と非凹部(4)が形成されたシート材を製造する製造方法であって、
前記エンボス凸部(11)から非エンボス凸部(12)までに亘って、前記エンボス凸部(11)の頂からの深さ(D)が漸次変化するエンボス漸変部(14)を設け、
前記エンボス工程(E)において、
前記エンボス凸部(11)及びエンボス漸変部(14)が前記クッション基材(2)の表面側に当接した状態で、前記エンボス型材(13)を押圧し、
前記エンボス漸変部(14)のエンボス凸部(11)の頂寄りの少なくとも一部に、当該エンボス凸部(11)の頂表面とのなす角(θa’)が180°より大きく190°以下であるエンボス広角面部分(15a)が形成され、及び、
前記エンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りの少なくとも一部に、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が170°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成され、
前記エンボス漸変部(14)の少なくとも一部に、前記エンボス凸部(11)の頂から非エンボス凸部(12)までの平面視におけるエンボス漸変距離が最も長い部分を有し、
前記エンボス漸変距離が最も長い部分が設けられたエンボス漸変部(14)の非エンボス凸部(12)寄りに、当該非エンボス凸部(12)の基部(13a)における表面(13c)とのなす角(θb’)が175°以上180°より小さいエンボス鈍角面部分(15b)が形成されていることを特徴とするシート材の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-06 
出願番号 特願2017-240089(P2017-240089)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (B29C)
P 1 651・ 121- YAA (B29C)
P 1 651・ 113- YAA (B29C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 神田 和輝  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 渕野 留香
加藤 友也
登録日 2018-09-07 
登録番号 特許第6397114号(P6397114)
権利者 TBカワシマ株式会社
発明の名称 傾斜シート材、及び、傾斜シート材の製造方法  
代理人 千葉 茂雄  
代理人 千葉 茂雄  
代理人 堀家 和博  
代理人 堀家 和博  
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