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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C11D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C11D
管理番号 1362320
異議申立番号 異議2018-700249  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-03-26 
確定日 2020-03-02 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6212010号発明「安定な酵素溶液及び製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6212010号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕、5について訂正することを認める。 特許第6212010号の請求項1、3?5に係る特許を取り消す。 特許第6212010号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6212010号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成20年3月27日(パリ条約による優先権主張平成19年3月27日、デンマーク(DK))を国際出願日として出願した特願2010-500277号の一部を平成26年9月16日に新たな特許出願としたものであって、平成29年9月22日にその特許権の設定登録がされ、同年10月11日にその特許掲載公報が発行されたものである。
そして、本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 3月26日 :特許異議申立人(ビーエーエスエフ ソシ エタス・ヨーロピア)による請求項1?5 に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 6月13日付け:取消理由通知書
同年 9月13日 :特許権者(ノボザイムス アクティーゼル スカブ)による意見書及び訂正請求書の提 出
同年11月21日 :特許異議申立人による意見書の提出
平成31年 2月 7日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和 元年 6月 3日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提 出
同年 8月 7日 :特許異議申立人による意見書の提出
なお、平成30年9月13日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否

令和元年6月3日になされた訂正の請求は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?4及び請求項5を訂正の単位としてなされたものであり、当該訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下のとおり、適法になされたものと認められる。

1 訂正の内容(訂正事項)
(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、「プロテアーゼ」を、「セリンプロテアーゼ」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項3、4についても同様に訂正する。
(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1において、「及び溶解した塩成分を含む」を、「並びに塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分、を含有する」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項3、4についても同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1において、「当該塩成分が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムを含み、及び当該塩成分の含有量が、」を、「当該塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分の含有量が、」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項3、4についても同様に訂正する。
(4) 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1において、「当該フェニルボロン酸の誘導体が、【化1】・・・[式中、・・・]で表される、」を、「当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、」に訂正する。
特許請求の範囲の請求項3、4についても同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(6) 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項3において、「請求項1又は2のいずれか1項」を、「請求項1」に訂正する。
(7) 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項3において、「プロテアーゼ」を、「セリンプロテアーゼ」に訂正する。
(8) 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項3において、「当該フェニルボロン酸の誘導体が、【化2】・・・[式中、・・・]で表される、」を、「当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、」に訂正する。
(9) 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項4において、「請求項1又は2のいずれか1項」を、「請求項1」に訂正する。
(10) 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項5において、「プロテアーゼ」を、「セリンプロテアーゼ」に訂正する。
(11) 訂正事項11
特許請求の範囲の請求項5において、「当該塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムを含み、」を、「当該塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択され、」に訂正する。
(12) 訂正事項12
特許請求の範囲の請求項5において、「当該塩成分の含有量が、」を、「当該塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される塩成分の含有量が、」に訂正する。
(13) 訂正事項13
特許請求の範囲の請求項5において、「当該フェニルボロン酸の誘導体が、【化3】・・・[式中、・・・]で表される、」を、「当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、」に訂正する。
(14) 訂正事項14
特許請求の範囲の請求項1において、「フェニルボロン酸成分又はその誘導体」を、「フェニルボロン酸の誘導体」に訂正する。
(15) 訂正事項15
特許請求の範囲の請求項3において、「フェニルボロン酸成分又はそれらの誘導体」を、「フェニルボロン酸の誘導体」に訂正する。
(16) 訂正事項16
特許請求の範囲の請求項5において、「フェニルボロン酸又はその誘導体」を、「フェニルボロン酸の誘導体」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1、7、10について
訂正事項1、7、10に係る訂正は、本件訂正前の請求項2及び明細書の【0073】の記載などに基づき、請求項1、3、5に記載されていたプロテアーゼをセリンプロテアーゼに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2) 訂正事項2、3、11、12について
訂正事項2、3、11、12に係る訂正は、請求項1、5において、実質的に、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム又は酢酸ナトリウムを含むとされていた塩成分を、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択されるものに限定するとともに、当該塩成分の含有量が、上記の群から選択されるものの含有量であることを明示するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3) 訂正事項4、8、13について
訂正事項4、8、13に係る訂正は、明細書の【0043】、【0119】の記載などに基づいて、請求項1、3、5に記載されていたフェニルボロン酸の誘導体の種類を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4) 訂正事項5、6、9について
訂正事項5に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであり、また、訂正事項6、9は、当該請求項2の削除に伴い、請求項3、4において、択一的に記載されていた引用請求項の一つ(当該請求項2)を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5) 訂正事項14?16について
訂正事項14?16に係る訂正は、請求項1、3、5において「フェニルボロン酸成分又はその誘導体」、「フェニルボロン酸成分又はそれらの誘導体」あるいは「フェニルボロン酸又はその誘導体」と択一的に記載されていた選択肢の一つを削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3 小括
前記2のとおり、訂正事項1?16に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕、5について訂正することを認める。

第3 本件訂正発明

前記第2のとおり、本件訂正は適法になされたものであるから、特許請求の範囲の請求項1、3?5に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3?5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、各請求項に係る発明を項番号に合わせて「本件訂正発明1」などといい、まとめて「本件訂正発明」という。)。
「【請求項1】
セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ、フェニルボロン酸の誘導体、並びに塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分、を含有する液体アルカリ性洗剤組成物であり、当該塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分の含有量が、組成物全体の0.5?10重量%であり、当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、前記液体アルカリ性洗剤組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の液体アルカリ性洗剤組成物を製造するプロセスであり:
a) 液体を提供し;
b) a)の液体に前記塩成分を添加し;
c) a)に前記セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ、並びに前記フェニルボロン酸の誘導体を、b)と同時に、又はb)の後に添加し;そして
d) その組成物を混合させる工程を含み、当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、前記プロセス。
【請求項4】
対象を洗浄するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項5】
液体組成物におけるフェニルボロン酸の誘導体のセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進させるための塩の使用であり、当該塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択され、及び当該塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される塩成分の含有量が、組成物全体の0.5?10重量%であり、当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、前記使用。」

第4 取消理由の概要

当審は、平成31年2月7日付けの取消理由通知(決定の予告)において、次の理由により、本件訂正前の請求項1、3?5に係る特許は、特許法第113条第2号及び第4号に該当するため取り消すべきものであるとした。

1 (サポート要件)本件訂正前の請求項1、3?5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(特許法第113条第4号)。

2 (実施可能要件)本件訂正前の請求項1、3?5に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(特許法第113条第4号)。

3 (進歩性)本件訂正前の請求項1、3?5に係る発明は、後記甲1、2、5?8、10、12に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである(特許法第113条第2号)。
第5 当審の判断

前記第4の取消理由のうち、取消理由1(サポート要件)及び取消理由3(進歩性)は、本件訂正後の請求項1、3?5に係る特許に対して、取消理由2(実施可能要件)は、本件訂正後の請求項5に係る特許に対して、それぞれ妥当するものである。
その理由は以下のとおりである。

1 取消理由1(サポート要件)について
(1) 阻害剤について
本件訂正発明5は、「液体組成物におけるフェニルボロン酸の誘導体(4-FPBA)のセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進させるための塩の使用」に係るものであるが、本件明細書の【0121】【表1】には、酵素の残存活性しか示されておらず、同表から、特定の塩成分が、4-FPBAのセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進していることまでを看取することはできない。すなわち、同表からは、確かに、塩化ナトリウムなどの特定の塩成分を添加した場合と、塩不添加の場合とでは、プロテアーゼの残存活性(40℃で4週間)において差が生じていること(前者の場合の方が残存活性の数値が高いこと)が見て取れるものの、この結果は、塩成分の有無と残存活性の大小を示すにとどまり、当該差が、特定の塩成分が4-FPBAのセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進したことによるものであるのかは全く不明である。
また、発明の詳細な説明の記載全体を子細にみても、フェニルボロン酸の誘導体(4-FPBA)のセリンプロテアーゼ阻害剤作用が、特定の塩成分の配合により促進され、結果として、酵素安定性が改善されるに至るメカニズム(作用機序)について、当業者が首肯し得る十分な説明は見当たらず、当該メカニズムを示す技術常識も存しない。さらに、上記表1の試験に供された洗浄剤基材は、【0115】に記載されるとおり、NaCO_(3)をはじめとする種々のナトリウム塩を既に含有しており、これらの塩の影響や特定の塩成分との関係も否めないから、同表の結果を、単純に、特定の塩成分によるものとただちに認めることもできない。
そうすると、本件訂正発明5(特に、フェニルボロン酸の誘導体(4-FPBA)のセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進させるために、特定の塩成分を使用する点)は、実質的に発明の詳細な説明に記載したものとは認められないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものとはいえない。

なお、特許権者は令和元年6月3日付けの意見書において、特定の塩成分は、プロテアーゼの保存安定性に直接影響するものではなく、4-FPBAの阻害剤としての作用を促進するものである旨主張し、その証拠として、参考資料1(追試実験報告)を提出するが、当該参考資料1の実験報告をみても、本件訂正発明5に係る特定の塩成分(塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム又は酢酸ナトリウム)が、4-FPBAに作用し、当該4-FPBAのセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進していることまでは理解できないし、そもそも、このような実験報告のデータは、本件明細書の発明の詳細な説明に具体的に開示されていないものであるから、当該発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足するものとしてこれを参酌することは、発明の公開を前提に特許を付与するという特許制度の趣旨からみて、許されないというべきである。
また、本件明細書の【0024】?【0031】には、上記のメカニズムに関連する記載が認められるものの、その内容を正確に理解することはできないため、先の取消理由通知(決定の予告)において釈明を求めたが、特許権者からの応答はなかった。

(2) 酵素について
請求項1には、本件訂正発明1に係る液体アルカリ性洗剤組成物は、酵素として「セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ」を含有することが記載されている。
また、本件明細書の【0008】の記載などからみて、本件訂正発明1が解決しようとする課題は、「酵素安定性が改善された液体酵素組成物を提供すること」であるといえる。
これに対して、本件明細書の発明の詳細な説明の実施例において、酵素安定性の改善(すなわち上記課題が解決できること)について検証されているのは、プロテアーゼ単独の場合のみであり、アミラーゼを併用した場合については何ら検証されていない。そのため、酵素として、セリンプロテアーゼとアミラーゼを併用した場合において、特定の塩成分の添加により酵素安定性が改善されることが具体例をもって立証されているとは言い難い。
さらに、発明の詳細な説明の記載全体を子細にみても、さらには、技術常識に照らしてみても、当該実施例においてプロテアーゼの阻害剤として使用されている4-FPBAが、アミラーゼに対しても作用し、その作用が、特定の塩成分により促進されること、あるいは、当該4-FPBAがアミラーゼに対しては作用しないとしても、当該4-FPBAのプロテアーゼに対する作用及び特定の塩成分による当該作用の促進効果が阻害されることなく、アミラーゼを併用できること、を認めるに足りる証拠は見当たらない。
そうすると、発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、プロテアーゼとアミラーゼを併用した場合においても、実施例と同様に、酵素安定性の改善という効果がもたらされ、もって上記課題が解決できるとまで、当業者は認識することはできないと考えるのが合理的である。そうである以上、本件訂正発明1は、発明の詳細な説明の記載及び技術常識から、当業者において、上記課題が解決できると認識できる範囲を超えるものというほかない。
本件訂正発明1を引用する本件訂正発明3及び4も同様である。
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しない。

なお、特許権者は平成30年9月13日付けの意見書において、セリンプロテアーゼの保存安定性の改善によって、併存するアミラーゼの保存安定性も改善する旨説明していたが、その論拠が判然としなかったため、先の取消理由通知(決定の予告)において、この点について、周知文献などによる挙証の上、釈明することを求めたが、令和元年6月3日付けの意見書においてもこれに対する特許権者の応答はなかった。

(3) 小括
以上のとおり、本件訂正後の請求項1、3?5に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当するため、取り消すべきものである。

2 取消理由2(実施可能要件)について
(1) 本件訂正発明5に関して
前記1(1)のとおり、請求項5には、「液体組成物におけるフェニルボロン酸の誘導体のセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進させるための塩の使用」について記載されているところ、本件明細書の発明の詳細な説明には、その【0121】【表1】などをみても、特定の塩成分自身が、4-FPBAが有するセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進させることについて記載されているとは認められない。また、そのような技術常識も存しない。
そうである以上、当業者は、発明の詳細な説明の記載及び技術常識を参酌しても、そこには、特定の塩成分自身が、4-FPBAが有するセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進させることについて何らの教示もないのであるから、本件訂正発明5に係る「液体組成物におけるフェニルボロン酸の誘導体のセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進させるための塩の使用」を、どのように具現すれば良いのかを理解することは到底できないといわざるを得ない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件訂正発明5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。

(2) 小括
以上のとおり、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないため、このような特許出願に対してされた本件訂正発明5に係る特許は、同法第113条第4号に該当するため、取り消すべきものである。

3 取消理由3(進歩性)について
(1) 前提
前記1のとおり、本件訂正後の特許請求の範囲の記載には不備があり、本件明細書に記載された作用効果(特定の塩成分の配合による酵素安定性の改善・促進効果)を、本件訂正発明が奏する効果としてただちに受け入れることはできないから、以降の進歩性の判断に際しては、当該効果を有意なもの(先行技術に対する有利な効果)として扱わないこととした。

(2) 引用文献一覧
特許異議申立人が提出した証拠のうち、先の取消理由通知(決定の予告)における進歩性の判断において、主たる証拠あるいは従たる証拠として採用したものは、以下のとおりである(以下、甲第1号証などを単に「甲1」という。)。
甲1:特表平10-511855号公報
甲2:特表平11-507680号公報
甲5:国際公開第01/96518号
甲6:国際公開第94/29428号
甲7:特表2006-527276号公報
甲8:国際公開第2004/009752号
甲10:米国特許出願公開第2003/0109406号明細書
甲12:国際公開第2002/24851号

(3) 引用文献の記載事項
各引用文献には、おおよそ以下の事項が記載されている。
なお、英文の文献である甲5、甲6、甲8、甲10、甲12については、該当箇所の摘記を、特許異議申立人が提出した日本語訳により行った。
ア 甲1
(ア) 「【特許請求の範囲】
1.液体組成物であって、
(i)40μMを越える量の酵素、及び
(i i)前記液体組成物を次に組み入れる多成分組成物中における、前記酵素の貯蔵安定性を増強するのに有効な量の前記酵素の可逆阻害剤を含む前記組成物。
2.前記酵素が 500μM?50mMの量で存在する請求項1記載の組成物。
3.前記酵素に対する前記阻害剤のモル比が少なくとも5である請求項1または2記載の組成物。
4.〔I〕_(t)/K_(i)比(本明細書に定義されている)が少なくとも50である請求項1?3のいずれか1項記載の組成物。
5.〔I〕_(t)/K_(i)比が 250?5000の範囲である請求項4記載の組成物。
6.前記酵素をプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ及びオキシドレダクターゼからなる群から選択する先行する請求項のいずれか1項記載の組成物。
7.前記酵素がプロテアーゼである先行する請求項のいずれか2項記載の組成物。
8.前記阻害剤をボロン酸、ボリン酸及びそれらの塩から選択する請求項7記載の組成物。
9.酵素と酵素阻害剤とを含む洗剤組成物の製造方法であって、請求項1?8のいずれか1項記載の液体組成物と前記洗剤組成物の残りの成分とを組み合せる前記製造方法。
10.洗剤組成物が液体組成物である請求項9記載の方法。
11.請求項9または10記載の方法により製造された洗剤組成物。
12.クリーニング業の洗濯または食器洗いのための洗剤組成物の製造における請求項1?8のいずれか1項記載の液体組成物の使用。
13.液体洗剤組成物の製造のための請求項12記載の使用。」(特許請求の範囲)
(イ) 「酵素
・・・
本発明の液体組成物は少なくとも1種の酵素を含む。適当な酵素は任意の市販の酵素を含む。特に適切な酵素は、プロテアーゼ(すなわち、ペプチダーゼ、EC3.4)、アミラーゼ(EC3.2.1と分類される)、リパーゼ(3.1.1.3と分類されるものを含む)、セルラーゼ(EC3.2.1.4を包含する)及びオキシドレダクターゼ(EC1)、たとえばペルオキシダーゼ(EC1.11)及びオキシダーゼ〔EC1.10.3と分類される酵素、たとえばラッカーゼ(EC1.10.3.2.)〕及びそれらの任意の混合物からなる群から選択する酵素を包含する。同じ類からの酵素の混合物(たとえば異るプロテアーゼ、異るリパーゼ等の混合物)も包含する。
・・・
プロテアーゼ 液体組成物中で用いるのに適当ないかなるプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)も用いることができる。適切なプロテアーゼは動物、植物または微生物起原のもの、特に微生物起原のもの、並びに後者の型の1つの酵素のアミノ酸配列に関連して、1つまたはそれよりも多いアミノ酸が置換、挿入及び/または削除された、化学的に製造されたまたはタンパク質工学(遺伝子工学)による変異体であって、タンパク質分解活性を示すものを包含する。プロテアーゼは、たとえば、セリンペプチダーゼ、好ましくはアルカリ性微生物プロテアーゼまたはトリプシン様プロテアーゼである。アルカリ性プロテアーゼの例は、ズプチリシン、特にバチルス由来のもの、たとえば、ズブチリシン ノボ、ズブチリシン カールスバーグ、ズブチリシン 309、ズブチリシン 147及びズブチリシン 168(国際特許出願公開第89/06279号明細書に記載されている)である。市販のバチルス ズブチリシンの例はAlcalase(商標)、Savinase(商標)、Esperase(商標)及びDurazym(商標)製品であって、すべてノボ ノルディスク A/Sから入手できる。これらの多数のプロテアーゼ製品、たとえばAlcalase(商標)、Esperase(商標)及びSavinase(商標)は液体で入手でき(たとえばSavinase(商標)16.0L,DX型及びEX型)、本発明のプロテアーゼ含有液体組成物の調製によく適合している(下記参照)。
トリプシン様プロテアーゼの例は、トリプシン(たとえば、ブタまたはウシ起原の)及び国際特許出願公開第89/06270号明細書に記載されているフサリウム(Fusarium)プロテアーゼである。
アミラーゼ 液体組成物中で用いるのに適当ないかなるアミラーゼ(デンプン分解酵素)も用いることができる。適当なアミラーゼは、細菌及び真菌起原のもの、並びに後者の型の1つの酵素のアミノ酸配列に関連して、1つまたはそれよりも多いアミノ酸が置換、挿入及び/または削除された、化学的に製造されたまたはタンパク質工学(遺伝子工学)による変異体であって、テンプン分解活性を示すものを包含する。アミラーゼは、たとえば英国特許第 1,296,839号明細書により詳細に記載されている、バチルス リヘニホルミス(B.licheniformis)の特定の菌株から得られる、たとえばα-アミラーゼ(EC3.2.1.1)を包含する。非常に適当なα-アミラーゼはTermamyl(商標)であって、ノボ ノルディスク A/Sから入手できる(特に液体製品として)。
リパーゼ 液体組成物中で用いるのに適当ないかなるリパーゼ(脂質分解酵素)も用いることができる。適当なリパーゼは細菌及び真菌起原のもの、並びに後者の型の1つの酵素のアミノ酸配列に関連して、1つまたはそれよりも多いアミノ酸が置換、挿入及び/または削除された、化学的に製造されたか、またはタンパク質工学(遺伝子工学)で作られた変異体であって、脂質分解活性を示すものを包含する。非常に適当なリパーゼは、欧州特許第 0258068号明細書に記載されているように、フミコーラ ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)からの遺伝子をクローン化し、その遺伝子をアスペルギルス オリザエ(Aspergillus oryzae)中に発現させることにより得られたものであって、ノボ ノルディスク A/Sから、Lipolase(商標)という商品名で入手できる(特に液体製品として)。」(第6頁第9行・・・第6頁第14?22行・・・第7頁第3行?第8頁第16行)
(ウ) 「プロテアーゼ阻害剤 可逆プロテアーゼ阻害剤の特に重要な類の1つは、ボロン酸(boronic acid)〔R'B(OH)_(2)〕及びボリン酸(borinic acid)〔R'R''B(OH〕(式中、R’及びR''は有機置換基、たとえば任意に置換されたアリールまたは異節環置換基)により構成され、そのいくつかの例を上述した。
・・・
上述の型の化合物の中でも、本発明の文脈で重要な特定のボロン酸は次のものを包含する。すなわち、ベンゾフラン-2-ボロン酸、フェニルボロン酸、4-ブロムフェニルボロン酸、4-ホルミルフェニルボロン酸、3-アセトアミドフェニルボロン酸、3,5-ジクロルフェニルボロン酸、5-クロルチオフェン-2-ボロン酸、ナフタレン-1-ボロン酸、ナフタレン-2-ボロン酸及び6-ヒドロキシナフタレン-2-ボロン酸である。」(第10頁第18?21行・・・第14頁第4?9行)
(エ) 「所望なら、さらに慣用の酵素安定剤、たとえばポリオール、たとえばプロピレングリコールもしくはグリセロール、砂糖もしくは、砂糖アルコール、乳酸、ホウ酸もしくはホウ酸誘導体、たとえば芳香族ホウ酸エステルを組み入れることができる(たとえば、国際特許出願公開第92/19709号明細書及び国際特許出願公開第92/19708号明細書参照)。」(第19頁第9?13行)
(オ) 「通常洗剤は1?65%の洗剤ビルダーを含むが、いくつかの食器洗い用洗剤は90%までもの、洗剤ビルダーまたは錯化剤、たとえばゼオライト、2リン酸塩、3リン酸塩、ホスホン酸塩、クエン酸塩、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTMPA)、アルキルまたはアルケニルコハク酸、溶解性ケイ酸塩または層状化ケイ酸塩(たとえばヘキストからの SKS-6)を含有してもよい。
洗剤ビルダーをリン含有型と非リン含有型に細分できる。リン含有無機アルカリ性洗剤ビルダーの例は水溶性塩、特にアルカリ金属ピロリン酸塩、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩及びホスホン酸塩を包含する。非リン含有無機ビルダーの例は水溶性アルカリ金属カルボン酸塩、ホウ酸塩及びケイ酸塩、並びに層状化ジケイ酸塩及び種々の型の水不溶性、結晶または無定形アルミノケイ酸塩(ゼオライトが最も良く知られた典型である)を包含する。
適当な有機ビルダーの例は、コハク酸塩、マロン酸塩、脂肪酸マロン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、カルボキシメトキシコハク酸塩、ポリ酢酸塩、カルボン酸塩、ポリカルボン酸塩、アミノポリカルボン酸塩及びポリアセチルカルボン酸塩のアルカリ金属、アンモニウムまたは置換アンモニウム塩を包含する。洗剤は洗浄効果を増加していない、すなわち、本質的に洗剤ビルダーがなくてもよい。」(第17頁下から7行?第18頁10行)
(カ) 「pH(使用濃度で水溶液で測定した)は通常中性またはアルカリ性で、たとえば7?11の範囲である。」(第19頁第18?19行)
(キ) 「本発明の範囲のクリーニング業用洗剤組成物の特定の形は、次に記載のものを包含する。
1)次のものからなる水性液体洗剤組成物
2)次のものからなる水性の構造のある(structured)液体洗剤組成物
3)次のものからなる液体洗剤組成物
4)次のものからなる液体洗剤組成物
5)線状アルキルベンゼンスルホン酸のすべてまたは一部を(C_(12)?C_(18))アルキル硫酸塩で置換した1)?4)に記載された洗剤配合物。
6)付加成分またはすでに特定化された漂白系のための代用品のいずれかとして、安定化またはカプセル化過酸を含有する1)?5)に記載された洗剤配合物。
7)液体非イオン界面活性剤、たとえば線状アルコキシ化第1級アルコール、ビルダー系(たとえばリン酸塩)、酵素及びアルカリを含む、非水性洗剤液として配合された洗剤組成物。
食器洗い用及び他の多成分酵素含有組成物
この種の適切な型の配合物は次のものを包含する。
1)次のものからなる洗浄界面活性剤系を有する液体食器洗い組成物

2)次のものからなる非水性液体自動食器洗い機用組成物
3)次のものからなる非水性液体食器洗い組成物
4)次のものからなるチキソトロピー性液体自動食器洗い機用組成物
5)次のものからなる液体自動食器洗い機用組成物
6)次のものからなる保護された漂白剤粒子を含有する液体自動食器洗い機用組成物
7)過ホウ酸塩を過炭酸塩で置換した1)及び5)に記載された自動食器洗い機用組成物。
8)さらにマンガン触媒を含有する1)に記載された自動食器洗い機用組成物。」(第19頁下から3行?第27頁末行。なお、第24頁に記載された表以外の表についての摘記は省略した。)
(ク) 「最初の試験シリーズ:
最初の試験シリーズのために、等重量部の阻害剤溶液とSavinase(商標)16.0L,EX型(1g当り16KNPUのプロテアーゼを含有する液体プロテアーゼ調製物、ノボ ノルディスク A/S、バグスバード、デンマーク国)を混合して、各々2w/w%の阻害剤を含有するSavinase(商標)8 L EXを得た。各々1w/w%の上記Savinase(商標)/阻害剤調製物、98w/w%の「洗剤ベース1」(下記参照)及び1w/w%のLipolase(商標)100L,EX型(1g当り100KLUのリパーゼを含有する液体リパーゼ調製物、ノボ ノルディスク A/S、バグスバード、デンマーク国)を含有する洗剤組成物についての貯蔵安定性の結果は次のとおりであった。
残存Lipolase(商標)活性%(30℃で貯蔵)

残存Savinase(商標)活性%(30℃で7日貯蔵)

上記結果は特に洗剤組成物中のLipolase(商標)及びSavinase(商標)の活性の保持率は阻害剤の存在により著るしく改善されることを表わす。」(第34、35頁に記載された「最初の試験シリーズ」)
(ケ) 「洗剤ベースIの組成(米国型):

(第37頁に記載された「洗剤ベースIの組成(米国型)」)
イ 甲2
(ア) 「【特許請求の範囲】
1.酵素と下記式:

(上式中、Rは水素、ヒドロキシ、C_(1)?C_(6)アルキル、置換C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)アルケニルおよび置換C_(1)?C_(6)アルケニルから成る群より選ばれる)のフェニルボロン酸誘導体酵素安定剤とを含んで成る液体組成物。
2.RがC_(1)?C_(6)アルキルである、請求項1に記載の液体組成物。
3.Rが水素である、請求項1に記載の液体組成物。
4.前記酵素がプロテアーゼである、請求項1?3のいずれか一項に記載の液体組成物。
5.第二の酵素、特にアミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼもしくはオキシドレダクターゼ、またはそれらの任意の混合物を更に含んで成る、請求項1に記載の液体組成物。
6.前記第二の酵素がリパーゼである、請求項5に記載の液体組成物。
7.前記フェニルボロン酸誘導体酵素安定剤が該ボロン酸のアルカリ金属塩である、請求項1?6のいずれか一項に記載の液体組成物。
8.前記フェニルボロン酸誘導体酵素安定剤が、500 mMまでの量、好ましくは0.001 ?250 mMの量、より好ましくは0.005 ?100 mMの量、最も好ましくは0.01?10 mMの量で添加される、請求項1?7のいずれか一項に記載の液体組成物。
9.界面活性剤、酵素および下記式

(上式中、Rは水素、ヒドロキシ、C_(1)?C_(6)アルキル、置換C_(1)?C_(6)アルキル、C_(1)?C_(6)アルケニルおよび置換C_(1)?C_(6)アルケニルから成る群より選ばれる)のフェニルボロン酸誘導体酵素安定剤を含んで成る液体洗剤組成物。
10.RがC_(1)?C_(6)アルキルである、請求項9に記載の液体洗剤組成物。
11.Rが水素である、請求項9に記載の液体洗剤組成物。
12.前記酵素がプロテアーゼである、請求項9?11のいずれか一項に記載の液体洗剤組成物。
13.第二の洗剤適合酵素、特にアミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼもしくはオキシドレダクターゼ、またはそれらの任意の混合物を更に含んで成る、請求項9に記載の液体洗剤組成物。
14.前記第二の酵素がリパーゼである、請求項13に記載の液体洗剤組成物。
15.前記フェニルボロン酸誘導体酵素安定剤が該ボロン酸のアルカリ金属塩である、請求項9?14のいずれか一項に記載の液体洗剤組成物。
16.前記フェニルボロン酸誘導体酵素安定剤が、500 mMまでの量、好ましくは0.001 ?250 mMの量、より好ましくは0.005 ?100 mMの量、最も好ましくは0.01?10 mM の量で添加される、請求項9?15のいずれか一項に記載の液体洗剤組成物。」(特許請求の範囲)
(イ) 「発明の背景
1または複数の酵素を含有する液体に関する貯蔵安定性の課題は周知である。特に酵素含有液体洗剤では、洗剤がプロテアーゼを含む場合は特に、規定時間を超えて酵素活性を確保することが主な課題である。
従来技術は、例えばプロテアーゼ阻害剤を添加することにより、貯蔵安定性を改善することを広く扱っている。
ホウ酸およびボロン酸は、タンパク質分解酵素を可逆的に阻害することが知られている。セリンプロテアーゼの1つであるサブチリシンのボロン酸による阻害はMolecular & Cellular Biochemistry 51,1983,5-32頁に論じられている。メチル、ブチルまたは2-シクロヘキシルエチルのようなアルキル基のみを含有するボロン酸は貧弱な阻害剤であり、メチルボロン酸が最も貧弱な阻害剤であるが、一方でフェニル、4-メトキシフェニルまたは3,5-ジクロロフェニルのような芳香族基を含むボロン酸は優良な阻害剤であり、3,5-ジクロロフェニルボロン酸が特に有効な阻害剤である(Keller他,Biochem.Biophys.Res.Com.176, 401-405頁を参照のこと)。
ホウ素に関して3位に置換を有するアリールボロン酸が意外にも良好な可逆的プロテアーゼ阻害剤であることも開示されている。特に、アセトアミドフェニルボロン酸はタンパク質分解酵素の有力な阻害剤であると開示されている(WO 92/19707 参照)。
阻害定数(K_(i))は元来、酵素活性を阻害する能力の尺度として使われ、低いK_(i)値ほど有力な阻害剤を示す。しかしながら、ボロン酸のK_(i)値がどれくらい有効な阻害剤であるかを常に表すわけではないことは以前から認識されている(例えばWO 92/19707 参照)。
発明の要約
驚くべきことに、本発明では、フェニルボロン酸に隣接した>C=Oによりパラ位で置換されたフェニルボロン酸誘導体が、液体中で酵素安定剤として非常に優秀な能力を有することが発見された。」(第4頁第6行?第5頁第4行)
(ウ) 「酵素
本発明によれば、液体組成物は少なくとも1種の酵素を含む。この酵素は任意の市販の酵素であることができ、特にプロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、オキシドレダクターゼおよびそれらの任意の混合物から成る群より選ばれた酵素であることができる。同じ酵素分類(例えばプロテアーゼ)からの酵素の混合物も包含される。
本発明によれは、プロテアーゼを含んで成る液体組成物が好ましく、より好ましいのは、第一の酵素がプロテアーゼでありそして第二の酵素がアミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼおよびオキシドレダクターゼから成る群より選ばれる2以上の酵素を含んで成る液体組成物であり、更により好ましいのは、第一の酵素がプロテアーゼでありそして第二の酵素がリパーゼである液体組成物である。
液体組成物において使われる酵素の量は酵素のタイプによって異なる。各酵素の量は典型的には、純粋酵素タンパク質として計算して0.04?40μM であり、特に0.2 ?30μM、特に0.4 ?20μM(通常1?1000mg/l、特に5?750mg/l、特に10?500mg/l)である。
プロテアーゼ:適当なプロテアーゼとしては動物、植物または微生物起源のものが挙げられる。微生物起源が好ましい。化学修飾されたまたは遺伝子修飾された変異体も含まれる。プロテアーゼはセリンプロテアーゼ、好ましくはアルカリ性微生物プロテアーゼまたはトリプシン様プロテアーゼであることができる。アルカリ性プロテアーゼの例はサブチリシン、特にバシラス菌(Bacillus)由来のもの、例えばサブチリシン Novo、サブチリシン Carlsberg、サブチリシン 309、サブチリシン 147およびサブチリシン 168(WO 89/06279 中に記載)である。トリプシン様プロテアーゼの例はトリプシン(例えばブタまたはウシ起源のもの)およびWO 89/06270 中に記載のフザリウム(Fusarium)プロテアーゼである。
好ましい市販のプロテアーゼ酵素としては、Novo Nordisk A/S(デンマーク国)により商品名 Alcalase,Savinase,Primase,Durazym およびEsperaseのもとに販売されているもの、Gist-Brocades により商品名 Maxatase,Maxacal,Maxapem およびProperase のもとに販売されているもの、Genencor Internationalにより商品名PurafectおよびPurafect OXPのもとに販売されているもの、並びにSolvay Enzymesにより商品名Opticlean およびOpti-maseのもとに販売されているものが挙げられる。
・・・
アミラーゼ:適当なアミラーゼ(αおよび/またはβ)としては、細菌または真菌起源のものが挙げられる。化学的にまたは遺伝子的に修飾された変異体も含まれる。アミラーゼとしては、例えば、英国特許第1,296,839 号明細書に詳細に記載されているB.リヘニフォルミス(B. licheniformis)の特殊株から得られるα-アミラーゼが挙げられる。市販のアミラーゼは Duramyl^(TM),Termamyl^(TM),Fungamyl^(TM)および BAN^(TM)(Novo Nordisk A/Sから入手可能)並びにRapidase^(TM)およびMaxamyl P ^(TM)(Gist-Brocades から入手可能)である。」(第6頁最下行?第8頁第3行・・・第9頁第9?15行)
(エ) 「洗剤は通常1?65%の洗剤ビルダー(ある食器洗い用洗剤は90%までもの洗剤ビルダーを含むことがある)、または錯生成剤、例えばゼオライト、ジホスフェート、トリホスフェート、ホスホネート、シトレート、ニトリロ三酢酸(NTA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTMPA)、アルキル-もしくはアルケニル-コハク酸、可溶性シリケートまたは積層シリケート(例えばHoechst からのSKS-6 )を含んでもよい。
洗剤ビルダーは含リン型と無リン型に細分することができる。含リン型無機アルカリ洗剤ビルダーの例としては、水溶性塩、特にアルカリ金属のピロリン酸塩、オルトリン酸塩、ポリリン酸塩およびホスホン酸塩が挙げられる。無リン型無機ビルダーの例としては、水溶性アルカリ金属炭酸塩、ホウ酸塩およびケイ酸塩並びに積層ジシリケート、更には様々な種類の水不溶性結晶質または非晶質アルミノシリケート(その中でゼオライトが最も良く知られている代表例である)が挙げられる。
適当な有機ビルダーの例としては、スクシネート、マロネート、脂肪酸マロネート、脂肪酸スルホネート、カルボキシメトキシスクシネート、ポリアセテート、カルボキシレート、ポリカルボキシレート、アミノポリカルボキシレートおよびポリアセチルカルボキシレートのアルカリ金属塩、アンモニウム塩または置換アンモニウム塩が挙げられる。洗剤はビルダー無添加(unbuilt)であってもよく、即ち洗剤ビルダーを本質的に含まなくてもよい。」(第11頁第3?21行)
(オ) 「本発明の洗剤組成物の酵素は、常用の安定化剤、例えばポリオール(例えばプロピレングリコールもしくはグリセロール)、糖もしくは糖アルコール、または乳酸を使って更に安定化することができる。」(第12頁第18?20行)
(カ) 「pH(使用濃度の水溶液中で測定した時の)は通常は中性またはアルカリ性、例えば7?11の範囲であろう。」(第12頁下から2、3行)
(キ) 「本発明の範囲内の洗濯用洗剤組成物の特定形態としては下記のものが挙げられる:
1)下記の成分を含んで成る水性液体洗剤
2)下記の成分を含んで成る水性液体洗剤
3)下記の成分を含んで成る水性液体洗剤組成物
4)下記の成分を含んで成る水性液体洗剤組成物
5)直鎖アルキルベンゼンスルホネートの全部または一部が(C_(12)?C_(18))アルキルスルフェートに置き換えられている、1)?4)に記載の洗剤組成物。
6)追加の成分としてまたは既に明記してある漂白系の代替物として、安定化されたまたはカプセル化された過酸を含有する、1)?5)に記載の洗剤組成物。
7)液体非イオン性界面活性剤(例えば直鎖アルコキシル化第一級アルコール)、ビルダー系(例えばホスフェート)、酵素およびアルカリを含んで成る非水性液体洗剤として製剤化された洗剤組成物。この洗剤はアニオン性界面活性剤および/または漂白系を含んでもよい。
本発明の範囲内の食器洗い用洗剤組成物の特定態様としては次のものが挙げられる:
1)洗浄界面活性剤系を有する食器洗い用液体組成物

2)自動食器洗い機用非水性液体組成物
3)非水性食器洗い用液体組成物
4)自動食器洗い機用チキソトロープ液体組成物
5)自動食器洗い機用液体組成物
6)保護された漂白粒子を含有する自動食器洗い機用液体組成物
7)過ホウ酸塩が過炭酸塩に置き換えられている、1)と5)に記載の自動食器洗い機用組成物。
8)更にマンガン触媒を含有する1)に記載の自動食器洗い機用組成物。」(第12頁末行?第20頁下から2行。なお、第17頁に記載された表以外の表については摘記は割愛した。)
(ク) 「実施例3
液体洗剤を使った貯蔵安定性試験
フェニルボロン酸誘導体を下記条件下で前述した方法を使って液体洗剤の貯蔵安定性試験においても試験した。
洗剤基剤(US型)
重量%(純粋成分として)
Nansa 1169/p 10.3
(直鎖アルキルベンゼンスルホネート,LAS)
Berol 452 3.5
(アルキルエーテルスルフェート,AES)
オレイン酸 0.5
ヤシ脂肪酸 0.5
Dobanol 25-7 6.4
(アルコールエトキシレート,AEO)
キシレンスルホン酸ナトリウム 5.1
エタノール 0.7
MPG 2.7
(モノプロピレングリコール)
グリセロール 0.5
硫酸ナトリウム 0.4
炭酸ナトリウム 2.7
クエン酸ナトリウム 4.4
クエン酸 1.5
水 60.8
酵素量: 1%(w/w)Savinase(14 KNPU/g)
酵素安定剤量: 5ミリモル/kg
(ホウ酸の場合は160ミリモル/kg)
貯蔵: 30℃で0,3,7および14日間
試験したフェニルボロン酸酵素安定剤の阻害効力IF_(I)の結果を下記に示す。

比較目的で同じ系においてアセトアミドフェニルボロン酸、2-ホルミルフェニルボロン酸および3-ホルミルフェニルボロン酸(全てLancaster で購入)も試験した。その結果を下記に示す。

上記に与えた結果から、4-ホルミルフェニルボロン酸の貯蔵安定性はアセトアミドフェニルボロン酸のそれの少なくとも3倍、3-ホルミルフェニルボロン酸のそれの少なくとも4倍、そして2-ホルミルフェニルボロン酸のそれの少なくとも25倍(全てモルを基準にして計算した)優れていることは明らかである。」(第24?26頁に記載された「実施例3」)
ウ 甲5
(ア) 「特許請求の範囲
1.(a)アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性イオン性活性洗剤材料又はそれらの混合物を10?70%、
(b)プロテアーゼを0.0001?10%、
(c)オリゴ糖、多糖及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1種の炭水化物を2?40%、並びに
(d)アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ金属重亜硫酸塩、アルカリメタ重亜硫酸塩又はアルカリ金属チオ硫酸塩からなる群から選択される酸化防止剤を3%未満含む、物理的に安定な濃縮等方性液体洗剤組成物。
2.炭水化物が、二糖及びその誘導体、三糖及びその誘導体並びにそれらの混合物から好ましくは選択される少なくとも1種のオリゴ糖を含む、請求項1に記載の組成物。
3.更に、ホウ素化合物を0.1%超5%未満、好ましくは3%未満、より好ましくは2.5%未満含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
4.洗剤材料を15重量%?40重量%含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
5.更に、リパーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ、アミラーゼ及びそれらの混合物からなる群から選択される酵素を少なくとも0.0001%?10%含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれかー項に記載の組成物。
6.炭水化物を5?30%、好ましくは8%?25%含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
7.炭水化物が、スクロース又はトレハロースを含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
8.物理的に安定な濃縮等方性液体洗剤組成物においてプロテアーゼを安定化させる方法であって、
(I)(a)アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性イオン性活性洗剤材料又はそれらの混合物を10?70%、 (b)プロテアーゼを0.0001?10%、及び
(c)アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ金属重亜硫酸塩、アルカリメタ重亜硫酸塩又はアルカリ金属チオ硫酸塩からなる群から選択される酸化防止剤を3%未満含む前記組成物を配合するステップと、
(II)ステップ(I)で調製した組成物に、オリゴ糖、多糖及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1種の炭水化物を2?40%加えるステップとを含む、方法。
9.組成物が、請求項2から7のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする、請求項8に記載の方法。」
(イ) 「技術分野
本発明は、良好な酵素安定性を有する酵素液体洗剤組成物に関する。特に、本発明は、織物品を洗浄するのに適した良好なプロテアーゼ安定性を有する、物理的に安定な濃縮等方性液体洗剤組成物に関する。」(第1頁第2?8行)
(ウ) 「追加の酵素安定化系
ほとんどの場合、本発明の組成物は、酵素を安定化させるための追加の手段を必要としない。しかし、必要であれば、洗剤組成物の種類及び物理的形状に応じた様々な安定化の問題に対処するために設計された少量の追加の安定化系、例えばホウ酸、プロピレングリコール、短鎖カルボン酸、ボロン酸及びそれらの混合物を含むもの、を加えることができる。
別の安定化アプローチは、ボレート種の使用によるものである。Severson、U.S.4,537,706参照。ボレート安定剤を使用するとき、これは、ホウ酸0.1重量%超5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2.5重量%未満の量で好ましくは存在する。他のボレート化合物、例えば液体洗剤用途に適したホウ砂又はオルトボレートを使用してもよい。置換ホウ酸、例えばフェニルボロン酸、ブタンボロン酸、p-ブロモフェニルボロン酸等をホウ酸の代わりに使用して、洗剤組成物中で全ホウ素レベルを低下させてもよく、これは、このような置換ホウ素誘導体の使用により可能となり得る。」(第5頁第23行?第6頁第8行)
(エ) 「酵素
本明細書で使用する「洗浄性酵素」とは、洗浄、しみ抜き又は洗濯用途において他の有益な効果を有する任意の酵素を意味する。酵素は、タンパク質系、炭水化物系又はトリグリセリド系のしみ抜き、浮遊染料移動の防止のため、及び生地の復元のためを含め様々な目的のために、本発明の洗剤組成物に含まれる。適当な酵素としては、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ペルオキシダーゼ及びそれらの混合物が挙げられる。酵素は、任意の適当な起源、例えば、植物起源、動物起源、細菌起源、真菌起源及び酵母起源のものであってよい。好ましい選択は、因子、例えばpH活性及び/又は至適安定性、熱的安定性並びに活性洗剤、ビルダー等に対する安定性により左右される。これに関連して、細菌又は真菌の酵素、例えば細菌アミラーゼ及び細菌プロテアーゼ、並びに真菌セルラーゼが好ましい。」(第6頁第10?22行)
(オ) 「好ましいタンパク質分解酵素はまた、修飾された細菌性セリンプロテアーゼ、例えば、EP-A-251446(特に、17、24及び98頁)に記載されており、本明細書で「プロテアーゼB」と呼ばれるもの、及びEP-A-199404に記載されており、本明細書で「プロテアーゼA」と呼ばれる修飾された細菌性セリンタンパク質分解酵素と称するものもあり、プロテアーゼAはEP-A-130756に開示されている通りである。」(第7頁第30行?第8頁第2行)
(カ) 「所望であれば、可溶性マグネシウム塩、例えば、MgCl_(2)、MgSO_(4)等を、更なる泡をもたらすために、及び油除去性能を向上させるために、通常0.1%?2%の濃度で加えることができる。」(第14頁第26?29行)
(キ) 「本明細書の洗剤組成物は、水性洗浄操作での使用中、洗浄水が、約6.0?約11の間、好ましくは約7.0?10.0の間のpHを有するように好ましくは配合される。
洗濯用液体製品は、典型的にはpH7?9である。推奨使用レベルでpHを制御するための技術は、バッファー、アルカリ、酸等の使用を含み、当業者に周知である。」(第15頁第25?30行)
エ 甲6
(ア) 「特許請求の範囲
1.濃縮粘弾性チキソトロピック液体自動食器洗浄組成物であって、重量で:
(a)5%?50%の、水溶性のアルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウムの炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、ポリヒドロキシスルホン酸塩、ポリ酢酸塩、カルボン酸塩、ポリカルボン酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される非リン酸洗剤ビルダー;
(b)0.0001%?5%の、好ましくはプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ及びそれらの混合物からなる群から選択される活性洗浄酵素;
(c)0.1%?10%の、好ましくは少なくとも500,000の分子量を有する架橋ポリカルボン酸ポリマー、天然ゴム、粘土、セルロース系ポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される粘弾性チキソトロピック増粘剤;
(d)前記組成物に7?11の製品pHを与えるのに十分なpH調節剤;
(e)0.001%?20%の、カルシウムイオン、プロピレングリコール、短鎖カルボン酸、ポリヒドロキシル化合物、ホウ酸、ボロン酸、ペプチドアルデヒド及びそれらの混合物からなる群から選択される酵素安定化系;
(f)水;
を含み、
水相がカリウム及びナトリウムのイオンを少なくとも0.01、好ましくは0.01?10のK/Na重量比で含み、
前記組成物が実質的に塩素系漂白剤、ケイ酸塩、及びリン酸塩を含まない、組成物。」(請求項1)
(イ) 「洗剤ビルダー
使用される洗剤ビルダーは、本分野で知られた非リン酸洗剤ビルダーのいずれであることもでき、これは、多様な水溶性の、アルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウムの炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、ポリヒドロキシスルホン酸塩、ポリ酢酸塩、カルボン酸塩(例えば、クエン酸塩)及びポリカルボン酸塩を含む。好ましいのは、上記のアルカリ金属塩、特に、ナトリウム及びカリウム塩及びその混合物である。
ビルダーの量は、自動食器洗浄用洗剤組成物の約5重量%から約50重量%、好ましくは、約8重量%から約40重量%、最も好ましくは、約10重量%から約30重量%である。
非リン系無機ビルダーの例は、ナトリウム及びカリウム炭酸塩、重炭酸塩及びセスキ炭酸塩である。
本明細書において有用な水溶性の非リン系有機ビルダーは、多様なアルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウムのポリ酢酸塩、カルボン酸塩(例えば、クエン酸塩)、ポリカルボン酸塩及びポリヒドロキシスルホン酸塩を含む。ポリ酢酸塩及びポリカルボン酸塩ビルダーの例は、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、酒石酸モノコハク酸塩、酒石酸ジコハク酸塩、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、メリト酸、ベンゼンポリカルボン酸及びクエン酸のナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム及び置換アンモニウム塩である。」(第4頁第4?21行)
(ウ) 「洗浄酵素
本発明の組成物は、約0.0001重量%から約5重量%、より好ましくは、約0.001重量%から約1重量%、最も好ましくは、約0.005重量%から約0.5重量%の活性洗浄酵素を含有することができる。「活性洗浄酵素」の重量パーセントは、組成物中に存在する酵素の実際の重量パーセントにより定義され-これは、市販の酵素供給原料(例えば、溶媒、安定化剤、その他)に一般的に含まれる他の材料の重量パーセントを含まない。
好ましい洗浄性酵素は、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ及びそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましいのは、プロテアーゼ若しくはアミラーゼ又はそれらの混合物である。
タンパク質分解酵素は、動物、植物又は微生物(好ましい)起源であり得る。より好ましいのは、細菌起源のセリンタンパク質分解酵素である。
・・・
食器洗浄用洗剤組成物における使用に好適な任意のアミラーゼが、これらの組成物において使用され得る。アミラーゼは、例えば、英国特許明細書第1,296,839号により詳細に記載されたB.リケニホルミス(B.licheniforms)の特定の菌株から得られたa-アミラーゼを含む。アミロース分解酵素は、例えば、Rapidase(商標)、Maxamyl(商標)、Termamyl(商標)及びBAN(商標)を含む。」(第5頁第21?31行・・・第7頁第9?12行)
(エ) 「酵素安定化系
本明細書における好ましい組成物は、約0.001重量%?約20重量%、好ましくは約0.01重量%?約15重量%、最も好ましくは約0.5重量%?約12重量%の酵素安定化系を含む。酵素安定化系は、本発明の酵素と適合性である任意の安定化系であり得る。そのような安定化系は、カルシウムイオン、ホウ酸、プロピレングリコール、短鎖カルボン酸、ボロン酸、ポリヒドロキシル化合物、ペプチドアルデヒド及びそれらの混合物を含むことができる。カルシウムイオンのレベルは、ビルダーとの複合体形成などの後、酵素のためにいくらかの最小レベルが組成物中で常に利用可能であるように選択されるべきである。任意の水溶性カルシウム塩、例えば塩化カルシウム、ギ酸カルシウム及び酢酸カルシウムをカルシウムイオン源として使用することができる。酵素及び配合水(formula water)中のカルシウムによって、一般に、1リットルあたり約0.05から約0.4ミリモルの少量のカルシウムイオンも、組成物中に存在することが多い。カルシウムイオンは、約7から約9の間の製品pHを有する組成物中で、ホウ酸又は以下に記載する好適なホウ酸の塩とともに使用され得る。しかしながら、カルシウムイオン及びホウ酸の塩は、結合して、冷水に不溶性で、一定の製品条件下では約pH9超で不溶性であり得る、ホウ酸カルシウムを形成することができる。この沈殿は、相の不安定性、効果的な酵素安定化の低減及び望ましくない製品美観をもたらし得る。したがって、相安定性、酵素安定性又は美観に悪影響を及ぼすことなく、酵素安定性を達成するために十分量のカルシウムイオン及びホウ酸又はホウ酸の塩が使用されるべきである。約0%?約1%、より好ましくは約0.05%?約0.45%のギ酸カルシウムが好ましい。」(第7頁第13行?下から2行)
(オ) 「組成物は、参照することにより本明細書に組み込まれる、1982年3月9日に付与された米国特許第4,318,818号、Lettonらに記載された水溶性の短鎖カルボン酸塩も含有することができる。ギ酸塩が好ましく、0重量%から約5重量%、好ましくは約0.075重量%から約2.5重量%、最も好ましくは、約0.1重量%から約1.5重量%のレベルで使用され得る。ギ酸ナトリウムが好ましい。」(第8頁第7?11行)
(カ) 「置換ホウ酸(例えば、フェニルボロン酸、ブタンボロン酸、及びp-ブロモフェニルボロン酸)をホウ酸の代わりに使用することもできる。」(第8頁第26、27行)
(キ) 「組成物のpHを約7から約11の間、好ましくは、約8から約10.5の間に維持すると、活性酵素の望ましくない分解が最小になる。この特定のpH範囲を維持すると、汚れ及びしみの除去性能が最大となり、本組成物の使用中のスポッティング及びフィルミングが防止される。」(第12頁第1?4行)
(ク) 「塩素捕捉剤
上で列記した酵素安定化剤に加えて、0?約10重量%、好ましくは約0.01重量%?約6重量%の塩素系漂白剤捕捉剤を、多くの上水道中に存在する塩素漂白種が特にアルカリ性条件下で酵素を攻撃及び不活性化させることを防止するために、加えることができる。水中の塩素レベルが、典型的に約0.5ppmから約1.75ppmと低い可能性がある一方、食器洗浄中に酵素と接触する水の総体積中の利用可能な塩素は、通常多く;したがって、使用中の酵素安定性が問題となり得る。
8未満のpHを有する本発明の組成物のための適切な塩素捕捉剤アニオンはアンモニウムカチオンを含む塩である。これらは、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、チオ亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヨウ化物などの還元性物質、カルバミン酸塩、アスコルビン酸塩などの抗酸化剤からなる群から選択され得る。他の通常の捕捉剤アニオン、例えば、硫酸塩、重硫酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、過炭酸塩、硝酸塩、塩化物、ホウ酸塩、過ホウ酸ナトリウム四水和物、過ホウ酸ナトリウムー水和物、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、サリチル酸塩など、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの有機アミン又はそのアルカリ金属塩及びモノエタノールアミン(MEA)及びそれらの混合物、好ましくはモノエタノールアミンを使用することもできる。上記の塩素系捕捉剤のいくつかは、さらに、洗剤ビルダー、pH調整剤及び/又は漂白剤として働く。」(第15頁下から4行目?第16頁第14行)
オ 甲7
(ア) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アニオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの界面活性剤;
(b)少なくとも1つの酵素、及びホウ素を含む酵素安定化系;
(c)少なくとも1つの、布地洗浄成分ではない布地ケア成分;及び
(d)少なくとも1つの、布地ケア成分のための変性カチオン性多糖類系付着助剤;
を含む、液体洗濯洗剤組成物であって、
変性前に、前記カチオン性付着助剤が少なくとも1対のシスヒドロキシ基を含有し、前記カチオン性付着助剤が、前記酵素安定化系が前記カチオン性付着助剤とシスヒドロキシ基相互作用を示さないような態様で変性されている、液体洗濯洗剤組成物。
・・・
【請求項12】
前記ホウ素系酵素安定化系が、ホウ酸及び/又はその塩類を含み、及びホウ酸として表したとき、組成物の0.01重量%?10重量%、好ましくは0.05重量%?6.0重量%、より好ましくは0.1重量%?3.0重量%の濃度で存在する、請求項1?11のいずれか1項に記載の洗濯洗剤組成物。」
(イ) 「【0039】
(B)酵素及び酵素安定化系
(B1)酵素
本組成物は別の必須構成成分として、少なくとも1つの酵素を含んでいる。酵素類は、その技術分野で教示される濃度、例えば、ノボ(Novo)及びジェネンコア(Genencor)のような供給元によって推奨される濃度で使用することができる。本発明の組成物における純粋な酵素の典型的な濃度は、組成物の0.0001重量%?10重量%、好ましくは0.0005重量%?5.0重量%、より好ましくは0.001重量%?2.5重量%である。本発明の洗濯洗剤組成物中に組み込むのに好適な酵素には、植物,動物、細菌、真菌及び酵母起源などのあらゆる好適な起源の、ペルオキシダーゼ類、プロテアーゼ類、グルコアミラーゼ類、アミラーゼ類、キシラナーゼ類、セルラーゼ類、リパーゼ類、ホスホリパーゼ類、エステラーゼ類、クチナーゼ類、ペクチナーゼ類、ケラタナーゼ類、レダクターゼ類、オキシダーゼ類、フェノールオキシダーゼ類、リポキシゲナーゼ類、リグニナーゼ類、プルラナーゼ類、タンナーゼ類、ペントサナーゼ類、マラナーゼ類、β-グルカナーゼ類、アラビノシダーゼ類、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチナーゼ、デキストラナーゼ、トランスフェラーゼ、ラッカーゼ、マンナナーゼ、キシログルカナーゼ類、これらの誘導体及びそれらの混合物から成る群から選択できる。
【0040】
以下の酵素は本発明の組成物に組み込むのに好ましい。
【0041】
バチルス属からのサブチリシン類[例えば、サブチリス、レンタス、リケニフォルミス、アミロリクエファシエンス(BPN、BPN’)、アルカロフィラス]のようなプロテアーゼ類、例えばエスペラーゼ(Esperase)(登録商標)、アルカラーゼ(Alcalase)(登録商標)、エバーラーゼ(Everlase)(登録商標)及びサビナーゼ(Savinase)(登録商標)(ノボザイムス(Novozymes)、BLAP及び変異型[ヘンケル(Henkel)]。更にプロテアーゼ類が、EP130756、PCT国際公開特許WO91/06637、WO95/10591及びWO99/20726に記載されている。アミラーゼ類(α及び/又はβ)は、PCT国際公開特許WO94/02597及びWO96/23873に記載されている。市販の例は、ピューラフェクト Ox Am(Purafect Ox Am)(登録商標)[ジェネンコア(Genencor)]、及びターマミル(Termamyl)(登録商標)、ナタラーゼ(Natalase)(登録商標)、バン(Ban)(登録商標)、ファンガミル(Fungamyl)(登録商標)、及びデュラミル(Duramyl)(登録商標)[すべてノボザイムズ(Novozymes)より]である。セルラーゼ類としては、細菌性又は真菌性セルラーゼ類、例えばヒューミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)により生成されるもの、特にDSM1800、例えば50Kda、及び43kD[ケアザイム(Carezyme)(登録商標)]が挙げられる。また好適なセルラーゼ類は、トリコデルマ・ロンギプラチアタム(Trichoderma longibrachiatum)からのEGIIIセルラーゼ類である。好適なリパーゼ類にはシュードモナス及びクロモバクテル(Chromobacter)属により生成されるものが挙げられる。例えば、ノボザイムス(Novozymes)からのリポラーゼ(Lipolase)(登録商標)、リポラーゼ・ウルトラ(Lipolase Ultra)(登録商標)、リポプライム(Lipoprime)(登録商標)、及びリペックス(Lipex)(登録商標)がより好ましい。クチナーゼ類[EC3.1.1.50]及びエステラーゼ類もまた好適である。カルボヒドラーゼ類、例えばマンナナーゼ(米国特許第6,060,299号)、ペクテート・リアーゼ(pectate lyase)(PCT国際公開特許WO99/27083)、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(cyclomaltodextringlucanotransferase)(PCT国際公開特許WO96/33267)、キシログルカナーゼ(PCT国際公開特許WO99/02663)。最終的にエンハンサーを伴う漂白酵素には、例えば、ペルオキシダーゼ類、ラッカーゼ類、オキシゲナーゼ類(例えば、カテコール1,2ジオキシゲナーゼ、リポキシゲナーゼ)(PCT国際公開特許WO95/26393)、(非ヘム(non-heme))ハロペルオキシダーゼ類(haloperoxidases)が挙げられる。」
(ウ) 「【0043】
(B2)酵素安定化系
本組成物は、別の必須構成成分として、少なくとも1つのホウ素系酵素安定化系を含む。ホウ素系酵素安定化系は典型的に、ホウ酸として表した場合に、組成物の0.01重量%?10重量%、好ましくは0.05重量%?6.0重量%、より好ましくは0.1重量%?3.0重量%の濃度で用いられる。酵素安定化系は1つ以上の構成成分を含有することができる。典型的には、本発明の酵素安定化系は、ホウ酸又は、好ましくは組成物中でホウ酸を形成できるホウ酸の塩類を含有する。ホウ酸が好ましいが、酸化ホウ素、ホウ砂、及び他のアルカリ金属ボラート(例えば、オルトホウ酸ナトリウム、メタホウ酸アルカリ金属塩、ピロホウ酸アルカリ金属塩、五ホウ酸ナトリウム)のような他の化合物が好適である。置換されたホウ酸類(例えば、フェニルボロン酸、ブタンボロン酸、及びp-ブロモフェニルボロン酸)もまた、ホウ酸の替わりに用いることができる。」
(エ) 「【0110】
(液体洗濯洗剤組成物の調製方法)
本発明の液体洗濯洗剤組成物は、いずれかの好適な方法で調製することができ、一般に、組成物構成成分のあらゆる順序での混合又は添加を伴うことができる。」
(オ) 「【0114】
本発明の目的及び意図のためには、本発明の組成物は典型的に、pH7?pH14、好ましくはpH7.5?pH11の範囲のpHを有する。」
(カ) 「【0125】
(組成物の実施例)
実施例3
最終的な液体洗濯洗剤組成物を、布地ケア剤と2つのプレミックス、すなわち、以下の配合A1、A2、若しくはA3に従う布地洗浄プレミックスA1、A2、若しくはA3と、以下の布地ケアプレミックスBと、布地ケア剤とを組み合わせることによって配合する。
【表2】


カ 甲8
(ア) 「特許請求の範囲
1.1?60重量%の界面活性剤、0.001?1.0重量%の酵素阻害剤としてのアリールボロン酸、0.1?20重量%の、ギ酸、ホウ酸、及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上の他の酵素阻害剤、0.1?5.0重量%のプロテアーゼ、並びに100重量%までの水である残部を含むアルカリ性液体洗剤組成物。
・・・
5.アリールボロン酸が、3-ニトロフェニルボロン酸、フェニルボロン酸、又は3,5-ジクロロフェニルボロン酸である、請求項4に記載の液体洗剤組成物。
6.プロテアーゼが、サブチリシンプロテアーゼ、受託番号KCTC0088BPの好アルカリ性ビブリオ・メチニコフ株RH530から得た細胞外アルカリプロテアーゼ、alcalase(商標)、esperase(商標)、savinase(商標)、maxatase(商標)、maxacal(商標)、又はMaxacalの改変タンパク質であるmaxapem(商標)である、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
7.液体洗剤組成物が、8.5?11.0のpHを有する、請求項1に記載の液体洗剤組成物。
8.アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、酸化還元酵素、及びそれらの混合物からなる群から選択される第2の洗剤相溶性酵素;プロピレングリコール、エチレングリコール、及びポリオキシエチレングリコールからなる群から選択される酵素安定剤;エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、クメンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、及び尿素からなる群から選択される酵素溶解剤;並びに炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、ジェクノールアミン、及びモノエタノールアミンからなる群から選択される助剤をさらに含む、請求項1に記載の液体洗剤組成物。」
(イ) 「発明の開示
本発明は、酵素阻害剤の組合せを使用することにより酵素安定性を改善することが可能な、アルカリ性液体洗剤組成物を提供する。
本発明の態様によれば、1?60重量%の界面活性剤、0.001?1.0重量%の酵素阻害剤としてのアリールボロン酸、0.1?20重量%の、ギ酸、ホウ酸、及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上の他の酵素阻害剤、0.1?4.0重量%のプロテアーゼ、並びに100重量%までの水である残部を含む液体洗剤組成物を提供する。液体洗剤組成物は、アルカリ性のpHを有する。」(第3頁第5?12行)
(ウ) 「酵素阻害剤
一般的に、ホウ酸、ボロン酸、ホウ酸塩、及び酸化ホウ素などのホウ素化合物は、可逆的プロテアーゼ阻害剤として広く使用される。例として、Molecular & Cellular Biochemistry、1983,51,pp.5-32は、ボロン酸がサブチリシン系セリンプロテアーゼを阻害することを開示している。特に、Biochem.Biophys. Res. Com.,1991,176,pp.401-405は、フェニル、4-メトキシフェニル、及び3,5-ジクロロフェニルなどの芳香族基を伴うボロン酸が、メチル、ブチル、及び2-シクロヘキシルエチルなどのアルキル基を伴うボロン酸よりも、より強力なプロテアーゼ阻害活性を有することを開示している。加えて、WO92/19707は、可逆的サブチリシンプロテアーゼ阻害剤としてのアリールボロン酸を開示し、EP0478050A1は、サブチリシンプロテアーゼを阻害するリパーゼの保存安定剤としてのホウ素化合物を開示している。特に、3,5-ジクロロフェニルボロン酸は、優れたサブチリシンプロテアーゼ阻害剤である。
酵素阻害活性は従来、阻害剤が酵素に結合するための解離定数である、Kiとして表される。Kiが低い場合は、阻害剤は強力な阻害活性を有する。従って、Kiは酵素保存安定性と密接に関係する。しかしながら、Kiと酵素保存安定性との間の関係は、必ずしも直接的に比例するわけではない。
ボロン酸を含むこれらホウ素化合物は、プロテアーゼの活性部位に結合して、プロテアーゼの活性を阻害することが知られている。これらホウ素化合物は、特にセリンプロテアーゼにおいて、セリンプロテアーゼの活性部位のセリン基と共有結合することにより、及びセリンプロテアーゼの活性部位のヒスチジン基と水素結合することにより、プロテアーゼの活性を阻害する。特に、フェニルボロン酸などのアリール基を有するホウ素化合物は、セリンプロテアーゼの活性部位のセリン基との強い共有結合により、優れたセリンプロテアーゼ阻害活性を有することが知られている。
本発明の液体洗剤組成物は、0.001?1.0重量%の酵素阻害剤としてのアリールボロン酸、並びに0.1?20重量%の、ギ酸、ホウ酸、及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上の他の酵素阻害剤を含む。すなわち、本明細書中で使用する酵素阻害剤は、アリールボロン酸並びにギ酸、ホウ酸、及びそれらの塩から選択される1種以上との組合せである。そのために、酵素安定性の相乗的効果が得られる。」(第5頁第31行?第7頁第1行)
(エ) 「また、本発明の液体洗浄剤組成物は、上記プロテアーゼ以外に、デンプン分解酵素としてのアミラーゼ及びセルラーゼ、脂質分解酵素としてのリパーゼ、オキシドレダククーゼ、及びこれらの混合物などの第2の洗剤適合性酵素をさらに含むことができる。」(第10頁第1?5行)
(オ) 「好ましくは、本発明の液体洗浄剤組成物の最終pHは、8.5?11.0の範囲である。pHが8.5未満であると、洗浄力が低下し、pHが11.0を超えると酵素の安定性が確保されない。」(第10頁第23?26行)
(カ) 「実施例1:酵素阻害剤を変化させる酵素保存安定性試験
この実施例では、アリールボロン酸及び他の種類のプロテアーゼ阻害剤の組合せによる洗剤組成物の酵素保存安定性を測定した。
このために、アリールボロン酸と、ホウ酸又はギ酸ナトリウムとを組み合わせた洗剤組成物を、表6及び表7の組成比に従って調製し、次いで酵素保存安定性を高温で測定した。」(第15頁11?19行。第16、17頁に記載された表6、7の摘記は省略した。)
キ 甲10
(ア) 「特許請求の範囲
1.酵素系、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、水混和性溶媒系、水、ボロン化合物を含む酵素安定化剤系、及び1種以上の金属腐食阻害剤を含み、非酵素成分が、酵素系と適合性であり且つ水混和性である、保存安定性洗浄溶液組成物。
2.約66?約58重量%の濃度の範囲の水を含む濃縮液である、請求項1に記載の洗浄溶液組成物。
3.酵素系が、少なくとも1種のプロテアーゼ及び少なくとも1種のアミラーゼを含む、請求項1に記載の洗浄溶液組成物。
4.ボロン化合物を含む、請求項1に記載の洗浄溶液組成物。
5.ボロン化合物が、ボロン酸、ホウ酸、ホウ酸塩、ポリホウ酸塩、及びそれらの組合せからなる群から選択され、ボロン化合物が約0.2重量%?約10重量%の濃度で存在する、請求項3に記載の洗浄溶液組成物。
6.酵素安定化剤系が、カルシウム塩、アルキレングリコール、アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択される作用剤をさらに含む、請求項1に記載の洗浄溶液組成物。」
(イ) 「[0026]酵素系には、非限定的に、プロテアーゼ及びアミラーゼが含まれる。」
(ウ) 「[0030]好適なプロテアーゼ酵素は、こうした生物のほんの数例を挙げれば、例えば、枯草菌(Bacillus subtilis)、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)及びストレプトマイセス・グリゼウス(Streptomyces griseus)から得られる酵素である。より好ましくは、酵素は、1種以上の市販のセリンエンドプロテアーゼである。これらの酵素は、好ましくは、疎水性アミノ酸残基のカルボキシル側のタンパク質連結を開裂するが、大部分のペプチド連結を開裂することができる。これらの酵素はその基質を、洗浄溶液に容易に溶解又は分散する小さな断片に変換する。」
(エ) 「[0045]酵素の安定化を含む機能を有するアルキレングリコール及びアルカノールアミンに加えて、追加的な酵素安定化剤が提供される。
[0046]本発明の酵素系水性洗浄組成物はカルシウムイオンを更に含み、これは存在する酵素の安定性を強化すると信じられる。カルシウムイオンは好ましくは水溶性塩、例えばハロゲン化物塩(塩化カルシウム等)として存在する。カルシウムイオン濃度は、約0.01重量%?約2.0重量%未満である。好ましい実施形態では、カルシウムイオン濃度は、約1.0重量%?約0.05重量%である。
[0047]ある種のさらに好ましい実施形態では、塩化カルシウムはホウ素の化合物と組み合わせて使用される。好ましくは酵素安定化剤として含まれるボロン化合物には、
RB(OH)_(2)
[0048](式中、Rは、置換された又は無置換のアルキル又はアリールである)の式を有するボロン酸などの水溶性のものが含まれる。」
(オ) 「[0052]本発明の酵素をベースとする水性洗浄用組成物は、アルカノールアミンをさらに含む。アルカノールアミンは、以下の2つの理由、すなわち物質のpHを調整するため、及び例えば酵素を適合性の状態にしながら、脂質をベースとする除去すべき物質を切断することによる洗浄利益の増強を実現するために、本発明による組成物に有用である。酵素をベースとする水性洗浄濃縮溶液は、好ましくは、約pH7?約pH8、より好ましくは約pH7.3?約pH7.7の範囲のpHを有する。アルカノールアミンはまた、洗浄溶液のpHを約pH7.5に維持する緩衝液としても働く。」
ク 甲12
(ア) 「特許請求の範囲
1.水性酵素含有洗濯促進組成物であって、重量で:
(a)約0.05%?約5%のプロテアーゼ及び/又はアミラーゼ酵素;
(b)
(1)約0.005%?約3.0%の、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸アルカリ金属及びそれらの混合物から選択されるボロン化合物、
(2)約5.0%?約20%の、1?4個のヒドロキシ基及び4?8個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロキシジ-又はヒドロキシトリ-カルボン酸のアルカリ金属塩、及び
(3)約2%?約15%の塩化アルカリ金属、
を含み、前記%が組成物全体に基づくものである酵素安定化系;及び
(c)7.0?8.5のpHを得るのに十分な量のアルカリ水酸化物;
を含む、組成物。
2.酵素安定化剤系(b)がさらに、
(4)約3?6モルのエチレンオキシドによりアルコキシ化されたC_(8)?C_(18)アルコールを約0.05%?約5%
含有する、請求項1に記載の洗濯促進組成物。
3.さらに、
(d)それぞれが炭素数1?8の、アルコール、ジオール、グリコール及びグリコールエーテルから選択される有機溶媒を約0.5%?10%
含む、請求項1又は2に記載の洗濯促進組成物。
4.酵素がプロテアーゼ酵素である、請求項1から3のいずれかに記載の洗濯促進組成物。
5.(a)酵素を0.1%?1.0%、
(b)(1)ボロン化合物を0.1%?2.0%、
(b)(2)脂肪族ヒドロキシジ又はヒドロキシトリカルボン酸のアルカリ金属塩を8%?15%、
(b)(3)塩化アルカリ金属を4%?12%、
(b)(4)アルコキシ化アルコールを0.1%?3%、及び
(d)有機溶媒を1%?8%
含む、請求項3又は4に記載の洗濯促進組成物。
6.(a)プロテアーゼ酵素を0.2%?0.5%、
(b)(l)ボロン化合物を0.3%?1.0%、
(b)(2)脂肪族ヒドロキシジ又はヒドロキシトリカルボン酸のアルカリ金属塩を10%?13%、
(b)(3)塩化アルカリ金属を5%?8%、
(b)(4)アルコキシ化アルコールを0.3%?1.0%、
(d)有機溶媒を2%?5%
含む、請求項5に記載の洗濯促進組成物。
7.pHを7.0?7.5の範囲にするために十分な水酸化ナトリウムが添加される、請求項1から6のいずれかに記載の洗濯促進組成物。
8.ボロン化合物(b)(1)がホウ酸であり、脂肪族ヒドロキシジ又はヒドロキシトリカルボン酸のアルカリ金属塩(b)(2)がクエン酸ナトリウムであり、塩化アルカリ金属(b)(3)が塩化ナトリウムであり、アルコキシ化アルコール(b)(4)が約5モルのエチレンオキシドによりアルコキシ化されたC_(12)?C_(15)アルコールであり、アルカリ金属水酸化物(c)が水酸化ナトリウムであり、有機溶媒(d)がプロピレングリコールである、請求項6に記載の洗濯促進組成物。
9.さらに、
(a)酵素の安定化を向上することができる固体コア成分、
(b)洗浄サイクル中に到達する温度で融解するコーティング剤、及び
(c)色素
を含むスペックルを約0.01%?約1.0%含む、請求項1から8のいずれかに記載の洗濯促進組成物。
10.スペックルが、水素化植物性脂肪によりコーティングされたクエン酸を含む、請求項9に記載の洗濯促進組成物。」(特許請求の範囲)
(イ) 「本組成物において使用するのに適した酵素には、プロテアーゼ及びアミラーゼ酵素が挙げられる。
本組成物に適したタンパク質分解酵素には、洗剤組成物と連携して使用するようになされた様々な市販の液状酵素調製物が挙げられる。粉末形態の酵素調製物も有用であるが、一般に、液状組成物への配合にはそれほど便利ではない。適当な液体酵素製剤は、「Alcalase」、「Savinase」及び「Esperase」(すべて、Novo Industries、Copenhagen、デンマークによって商標登録されている製品である)、並びに「Maxatase」、「Maxacal」及び「AZ‐Protease」及び「Properase」(Gist‐Brocades、Delft、オランダにより販売されている)を含む。
適切なアルファ‐アミラーゼ液状酵素調製物の1つは、それぞれ、「Termamyl」及び「Maxamyl」という商標名でNovo Industries 及び Gist-Brocadesによって販売されているものである。
タンパク質分解酵素及びアミラーゼ酵素の混合物は、様々なタイプの染みの除去を助力するために使用することができ、使用されることが多い。
タンパク質分解酵素及び/又はアミラーゼ酵素は、通常、組成物の重量基準で、約0.05%?約5%、好ましくは約0.5%?約2%の範囲の有効量で組成物中に存在する。一般に、アミラーゼのレベルはより低いことが要求される。」(第3頁第27行?第4頁第25行)
(ウ) 「酵素安定化系において必要なボロン化合物は、ホウ酸を生じることが可能な化合物であり、好ましくはホウ酸自体である。ホウ酸を生成することが可能な化合物の例は、酸化ホウ素及びホウ酸ナトリウム(ホウ砂)である。ボロン化合物は、全酵素含有組成物の重量に対して、約0.05?約3.0重量%の量で導入される。好ましくは、ボロン化合物は、0.1%?2.0%の量で、より好ましくは、0.3%?1.0%の量で使用される。」(第4頁第27行?第5頁第4行)
(エ) 「酵素安定化系で使用される塩化アルカリ金属は好ましくは塩化ナトリウムである。この成分は、全酵素含有組成物の重量に対して、約2%?約15%の量で使用され、好ましくは、塩化物イオンの成分は、4%?12%、より好ましくは5%?8%の範囲の量で使用される。」(第5頁第26?32行)
(オ) 「7.0?8.5の所望の範囲内にpHを調整するために、十分な量のアルカリ水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムが加えられる。」(第6頁第20?22行)
(カ) 「実施例2
以下の成分を有する水性酵素組成物を調製した。

」(第9頁第5?13行)

(4) 周知技術の整理
ア 一般に、洗剤組成物には、界面活性剤の効果を高め、そして洗浄力を高める成分として、ビルダーが使用されているところ、硫酸ナトリウムや炭酸ナトリウムは、当該ビルダー(無機ビルダー)の代表的なものである(参考文献:皆川基ら編「洗剤・洗浄百科事典、2004年1月10日初版第2刷発行、株式会社朝倉書店、第78?81頁の「無機ビルダー」の項、特に「(3)炭酸塩」、「(4)硫酸塩」の項参照)。
イ サブチリシン(スブシリシン)などのセリンプロテアーゼは、洗剤用酵素として使用されるプロテアーゼの代表的なものであるとともに、洗剤組成物において、当該プロテアーゼを、アミラーゼなどの他の酵素と併用して使用すること(対象とする汚れの種類に合わせて適宜の酵素を組み合わせて使用すること)は、当業者がよく知るところである(甲1の摘記事項(イ)など)。
ウ フェニルボロン酸成分又は4-FPBAは、ホウ酸に代わるプロテアーゼ阻害剤として、よく知られた化合物であり、特に、4-FPBAは、ホウ酸よりも優れた特性を示すものである(甲2の摘記事項(イ)(ク)など)。

(5) 甲1に基づく進歩性の判断
ア 甲1発明
甲1の請求項1、9?11などによると(前記(3)アにおいて摘記した摘記事項(ア)参照)、甲1には、酵素と酵素阻害剤を含む液体洗剤組成物が記載されているといえる。そして、その具体例として、「最初の試験シリーズ」(摘記事項(ク)参照)には、「洗剤ベースI」を98w/w%含有し、酵素として、Savinase(商標)及びLipolase(商標)を、酵素阻害剤として、フェニルボロン酸や4-FPBAなどを、それぞれ用いたものが記載されている。ここで、当該「洗剤ベースI」の組成は、「洗剤ベースIの組成(米国型)」(摘記事項(ケ)参照)によると、硫酸ナトリウム(0.4w/w%)及び炭酸ナトリウム(2.7w/w%)を含むものであるから、甲1には、具体的な液体洗剤組成物として、次のものが記載されているといえる(以下、「甲1発明」という。)。
「・硫酸ナトリウム(0.4重量%)及び炭酸ナトリウム(2.7重量%)を含む「洗剤ベースI」を98w/w%、
・酵素として、Savinase(商標)及びLipolase(商標)、
・酵素阻害剤として、フェニルボロン酸又は4-FPBA
を含有する液体洗剤組成物。」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
甲1発明における「硫酸ナトリウム」は、本件訂正発明1において塩成分の一つとして挙げられたものであり、甲1発明における「4-FPBA」は、本件訂正発明1におけるフェニルボロン酸の誘導体である「4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)」に該当するものである。
そして、甲1発明における「Savinase(商標)」は、甲1の摘記事項(イ)の記載からみて、本件訂正発明1の「セリンプロテアーゼ」に相当するものと認められる(さらに、本件明細書の【0076】?【0078】、特に【0078】には、Savinase(商標)がセリンプロテアーゼに属するものとして説明されていることを参酌した。)。
また、甲1発明における「Lipolase(商標)」は、甲1の摘記事項(イ)の記載からみて、酵素の種類としては、リパーゼに該当するものであることが分かる。
そうすると、本件訂正発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりであると認められる。
・一致点:
「セリンプロテアーゼ、フェニルボロン酸の誘導体、並びに溶解した塩成分である硫酸ナトリウム、を含有する液体洗剤組成物であり、当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、前記液体洗剤組成物。」
・相違点1:酵素として、本件訂正発明1は、「セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ」を含有するのに対して、甲1発明は、「セリンプロテアーゼ及びリパーゼ」を含有する点。
・相違点2:塩成分である硫酸ナトリウムの含有量に関し、本件訂正発明1は、「組成物全体の0.5?10重量%」と特定しているのに対して、甲1発明は、0.4質量%未満であり(0.4×0.98=0.392w/w%)、本件訂正発明1が規定する範囲内にない点。
・相違点3:本件訂正発明1は、アルカリ性の液体洗剤組成物であるのに対して、甲1発明は、アルカリ性か否かが不明である点。
(イ) 相違点の検討
・相違点1について
甲1の摘記事項(イ)には、酵素として、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼなどの任意の混合物を選択し得ることが記載されているし、前記(4)イにおいて整理したとおり、対象とする汚れの種類に合わせて適宜の酵素を組み合わせて使用することは、当業者がよく知る周知の技術的事項であるといえるから、甲1発明における酵素に代えて、「セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ」を併用したものを用いることは、当業者にとって容易なことというべきである。そして、本件明細書を子細にみても、当該併用による顕著な作用効果は認められない。
・相違点2について
甲1の摘記事項(キ)には、種々の用途に使用する洗浄組成物が列記されているところ、「硫酸ナトリウム」を含有するものとしては、「硫酸ナトリウム 0-12.5%」、「炭酸ナトリウム 0-20%」などからなる洗浄界面活性剤系を有する液体食器洗い組成物が記載されている(第24頁の表参照)。
甲1には、甲1発明及び上記液体食器洗い組成物における、硫酸ナトリウムの使用目的についての記載はなく、甲1の摘記事項(オ)をみても、無機ビルダーとして硫酸ナトリウムは挙げられていないから、当該硫酸ナトリウムの使用目的は定かではないが、前記(4)アにおいて整理したとおり、硫酸ナトリウムや炭酸ナトリウムは、無機ビルダーとして一般的なものであることを踏まえると、甲1発明及び上記液体食器洗い組成物中の硫酸ナトリウムは、無機ビルダーとしての使用を予定したものと解するのが合理的である。この点は、炭酸ナトリウムについても同じであると解される。
そして、当該無機ビルダーは、界面活性剤の効果を高め、そして洗浄力を高める成分として、当業者が適宜配合量を調整して使用するものであること、さらには、甲1発明は、上記液体食器洗い組成物の配合成分と比較的類似したものであることを併せ考えると、甲1発明における「硫酸ナトリウム」や「炭酸ナトリウム」の含有量を、上記液体食器洗い組成物中の「硫酸ナトリウム 0-12.5%」、「炭酸ナトリウム 0-20%」の範囲内で、適宜調整し、本件特許発明1の当該相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものと認められる(ここで、当該相違点2に係る構成による効果は、前記(1)の前提のとおり、本件訂正発明1全般にわたり奏される有意な効果(先行技術に対する有利な効果)として扱わない。)。
なお、先の取消理由通知(決定の予告)において、以下の点について釈明を求めたが、特許権者からの応答はなかった。
「意見書において、当該相違点2に係る構成による効果について十分に釈明されたい。その際、上記の認定・判断では、甲1発明(「最初の試験シリーズ」に供された具体例)は、上記液体食器洗い組成物と類似の成分組成を有していること(甲1発明も、液体食器洗い組成物を想定していること)を前提に、甲1発明の硫酸ナトリウム量を、当該液体食器洗い組成物中の「硫酸ナトリウム 0-12.5%」という範囲内で調整可能としたが、当該前提に誤りがあれば、その点について説明されたい。また、無機ビルダーとして「硫酸ナトリウム」を使用する場合の一般的な配合量は、本件訂正発明1が規定する量とは異なっているのであれば、その点についても説明されたい。」
・相違点3について
甲1の摘記事項(カ)を参酌すると、甲1発明は、pHを7?11とすることを予定して配合されたものと解されるから、当該相違点3は、実質的なものではないか、容易想到の事項ということができる。
(ウ) まとめ
前記相違点の検討をふまえると、本件訂正発明1は、当業者が甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものと認められる。
ウ 本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3は、本件訂正発明1に係る液体アルカリ性洗剤組成物を製造するプロセスを特定したものであるが、前記甲1発明に係る液体洗剤組成物を製造する際にも、当然のことながら、各成分を順次配合(添加)していくことになり、その順序は当業者が適宜決定すべきものと解されるし、本件訂正発明3のプロセス(工程順)を採用することによる効果については、本件明細書に何ら記載されていないから、本件訂正発明3は、甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものと認められる。
また、本件訂正発明4は、本件訂正発明1に係る液体アルカリ性洗剤組成物を、なにがしかの対象を洗浄するために使用することを特定したものであるが、甲1に記載された洗剤組成物も、同様の使用を予定したものであることは明らかであるから、本件訂正発明4についても、甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものと認められる。
さらに、本件訂正発明5についていうと、確かに、甲1に記載された硫酸ナトリウムは、4-FPBAのセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進させるために使用されたものとまではいえないかもしれないが、本件訂正発明5が意図する当該促進作用については、前記1(1)において指摘したとおり、本件明細書の記載から看取できず、ただちに当該促進作用を有意なものとして受け入れることはできないし、調合された液体組成物において、硫酸ナトリウムを、ビルダーとして使用しているのか、当該促進のために使用しているのかは、使用形態として区別できるものではないから、本件訂正発明5が特定する、塩成分(硫酸ナトリウム)の使用目的の存在により、本件訂正発明5の進歩性を認めることはできない。

(6) 甲2に基づく進歩性の判断
ア 甲2発明
甲2の摘記事項(ア)の請求項9などによれば、甲2には、界面活性剤と酵素とフェニルボロン酸誘導体酵素安定剤を含んで成る液体洗剤組成物が記載されているといえる。そして、その具体例として、実施例3(甲2の摘記事項(ク)参照)には、洗剤基材(US型)(硫酸ナトリウムを0.4重量%、炭酸ナトリウムを2.7重量%含むもの)に、酵素としてSavinaseを1w/w%、フェニルボロン酸誘導体酵素安定剤として4-FPBAを5ミリモル/kg、それぞれ配合したものが記載されている。
そうすると、甲2には、具体的な液体洗剤組成物として、次のものが記載されているといえる(以下、「甲2発明」という。)。
「硫酸ナトリウム(0.4重量%)及び炭酸ナトリウム(2.7重量%)を含む「洗剤基材(US型)」に、酵素として、Savinaseを1w/w%、フェニルボロン酸誘導体酵素安定剤として、4-FPBAを5ミリモル/kg配合した液体洗剤組成物。」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
甲2発明における「硫酸ナトリウム」は、本件訂正発明1において塩成分の一つとして挙げられたものであり、甲2発明における「4-FPBA」も、本件訂正発明1における「4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)」に該当するものである。
そして、甲2発明における「Savinase」は、本件訂正発明1の「セリンプロテアーゼ」に相当するものと認められる。
そうすると、本件訂正発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりであると認められる。
・一致点:
「セリンプロテアーゼ、フェニルボロン酸の誘導体、並びに溶解した塩成分である硫酸ナトリウム、を含有する液体洗剤組成物であり、当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、前記液体洗剤組成物。」
・相違点1’:酵素として、本件訂正発明1は、「セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ」を含有するのに対して、甲2発明は、「セリンプロテアーゼ及びリパーゼ」である点。
・相違点2’:塩成分である硫酸ナトリウムの含有量に関し、本件訂正発明1は、「組成物全体の0.5?10重量%」と特定しているの対して、甲2発明は、0.4質量%未満であり、本件訂正発明1が規定する範囲内にない点。
・相違点3’:本件訂正発明1は、アルカリ性の液体洗剤組成物であるのに対して、甲2発明は、アルカリ性か否かが不明である点。
(イ) 相違点の検討
当該相違点1’?3’は、前記(5)イ(ア)における相違点1?3と同様の事項であり、また、前記甲1及び甲2の記載内容は、前記摘記のとおり酷似しており、前記(5)イ(イ)における相違点1?3についての検討結果は、当該相違点1’ ?3’の検討にも妥当するものである。以下、念のため、各相違点について説示しておく。
・相違点1’について
甲2の摘記事項(ウ)には、酵素として、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼなどの任意の混合物を選択し得ることが記載されているし、前記(4)イにおいて整理したとおり、対象とする汚れの種類に合わせて適宜の酵素を組み合わせて使用することは、当業者がよく知る周知の技術的事項であるといえるから、甲2発明における酵素に代えて、「セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ」を併用したものを用いることは、当業者にとって容易なことというべきである。そして、本件明細書を子細にみても、当該併用による顕著な作用効果は認められない。
・相違点2’について
甲2の摘記事項(キ)には、種々の用途に使用する洗浄組成物が列記されているところ、「硫酸ナトリウム」を含有するものとしては、「硫酸ナトリウム 0-12.5%」、「炭酸ナトリウム 0-20%」などからなる洗浄界面活性剤系を有する食器洗い用液体組成物が記載されている。
甲2には、甲2発明及び上記食器洗い用液体組成物における、硫酸ナトリウムの使用目的についての記載はなく、甲2の摘記事項(エ)をみても、無機ビルダーとして硫酸ナトリウムは挙げられていないから、当該硫酸ナトリウムの使用目的は定かではないが、前記(4)アにおいて整理したとおり、硫酸ナトリウムや炭酸ナトリウムは、無機ビルダーとして一般的なものであることを踏まえると、甲2発明及び上記食器洗い用液体組成物中の硫酸ナトリウムは、無機ビルダーとしての使用を予定したものと解するのが合理的である。この点は、炭酸ナトリウムについても同じであると解される。
そして、当該無機ビルダーは、界面活性剤の効果を高め、そして洗浄力を高める成分として、当業者が適宜配合量を調整して使用するものであること、さらには、甲2発明は、上記食器洗い用液体組成物の配合成分と比較的類似したものであることを併せ考えると、甲2発明における「硫酸ナトリウム」や「炭酸ナトリウム」の含有量を、上記食器洗い用液体組成物中の「硫酸ナトリウム 0-12.5%」、「炭酸ナトリウム 0-20%」の範囲内で、適宜調整し、本件特許発明1の当該相違点2’に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものと認められる(ここで、当該相違点2’に係る構成による効果は、前記2(1)の前提のとおり、本件訂正発明1全般にわたり奏される有意な効果(先行技術に対する有利な効果)として扱わない。)。
・相違点3’について
甲2の摘記事項(カ)を参酌すると、甲2発明は、pHを7?11とすることを予定して配合されたものと解されるから、当該相違点3’は、実質的なものではないか、容易想到の事項ということができる。
(ウ) まとめ
前記相違点の検討をふまえると、本件訂正発明1は、当業者が甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものと認められる。
ウ 本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5についても、前記(5)ウにおいて説示した理由と同様の理由により、甲2発明に対する進歩性を認めることはできない。

(7) 甲5に基づく進歩性の判断
ア 甲5発明
甲5の摘記事項(ア)の請求項1には、次の発明が記載されている(以下、「甲5発明」という。)。
「(a)アニオン性、非イオン性、カチオン性、両性イオン性活性洗剤材料又はそれらの混合物を10?70%、
(b)プロテアーゼを0.0001?10%、
(c)オリゴ糖、多糖及びそれらの誘導体から選択される少なくとも1種の炭水化物を2?40%、並びに
(d)アルカリ金属亜硫酸塩、アルカリ金属重亜硫酸塩、アルカリメタ重亜硫酸塩又はアルカリ金属チオ硫酸塩からなる群から選択される酸化防止剤を3%未満含む、物理的に安定な濃縮等方性液体洗剤組成物。」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲5発明とは、液体洗剤組成物である点で一致し、次の点で相違するといえる。
・相違点4:酵素として、本件訂正発明1は、「セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ」を含有するのに対して、甲5発明は、「プロテアーゼ」である点。
・相違点5:本件訂正発明1は、フェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを含有するのに対して、甲5発明は、それを含有するものではない点。
・相違点6:本件訂正発明1は、「塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分」を含有し、その含有量を「組成物全体の0.5?10重量%」と特定しているの対して、甲5発明は、そのような特定を有しない点。
・相違点7:本件訂正発明1は、アルカリ性の液体洗剤組成物であるのに対して、甲5発明は、アルカリ性か否かが不明である点。
(イ) 相違点の検討
・相違点4について
前記(4)イにおいて整理した周知技術のとおり、セリンプロテアーゼは、プロテアーゼの代表的なものであるし、これをアミラーゼと組み合わせることも、対象とする汚れの種類などに応じて当業者が適宜選択すべきものであるから、本件訂正発明1の当該相違点4に係る構成に格別の創意は認められない。
なお、甲5の摘記事項(オ)には、好ましいタンパク質分解酵素として、セリンプロテアーゼが挙げられ、摘記事項(ア)の請求項5、摘記事項(エ)には、酵素としてプロテアーゼとアミラーゼの混合物を用いることについて記載されている。
・相違点5について
甲5の摘記事項(ウ)を参酌すると、酵素を安定化させるための追加の手段として、ホウ酸やフェニルボロン酸などを使用することができる旨記載されている。また、前記(4)ウにおいて整理した周知技術のとおり、4-FPBAは、フェニルボロン酸成分と同様、プロテアーゼ阻害剤として、よく知られた化合物であり、優れた特性を示すものである。
してみると、甲5発明において、当該プロテアーゼ阻害剤としてよく知られた4-FPBAをさらに配合し、当該相違点5に係る構成とすることは当業者にとって容易なことといえる。
・相違点6について
本件訂正発明1の当該相違点5に係る構成による効果は、前記2(1)のとおり、本件訂正発明1全般にわたり奏される有意な効果(先行技術に対する有利な効果)として扱わないことを前提に考えると、前記(4)アにおいて整理したとおり、硫酸ナトリウムは、無機ビルダーとして一般的なものであり、その配合量は、当業者が適宜設定すべきものであるから、本件特許発明1の当該相違点5に係る構成は、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
・相違点7について
甲5の摘記事項(キ)を参酌すると、甲5発明は、pHを7?10とすることを予定して配合されたものと解されるから、当該相違点6は、実質的なものではないか、容易想到の事項ということができる。
(ウ) まとめ
前記相違点の検討をふまえると、本件訂正発明1は、当業者が甲5発明に基いて容易に発明をすることができたものと認められる。
ウ 本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5についても、前記(5)ウにおいて説示した理由と同様の理由により、甲5発明に対する進歩性を認めることはできない。

(8) 甲6に基づく進歩性の判断
ア 甲6発明
甲6の摘記事項(ア)の請求項1には、次の発明が記載されている(以下、「甲6発明」という。)。
「濃縮粘弾性チキソトロピック液体自動食器洗浄組成物であって、重量で:
(a)5%?50%の、水溶性のアルカリ金属、アンモニウム又は置換アンモニウムの炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、ポリヒドロキシスルホン酸塩、ポリ酢酸塩、カルボン酸塩、ポリカルボン酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される非リン酸洗剤ビルダー;
(b)0.0001%?5%の、好ましくはプロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ及びそれらの混合物からなる群から選択される活性洗浄酵素;
(c)0.1%?10%の、好ましくは少なくとも500,000の分子量を有する架橋ポリカルボン酸ポリマー、天然ゴム、粘土、セルロース系ポリマー及びそれらの混合物からなる群から選択される粘弾性チキソトロピック増粘剤;
(d)前記組成物に7?11の製品pHを与えるのに十分なpH調節剤;
(e)0.001%?20%の、カルシウムイオン、プロピレングリコール、短鎖カルボン酸、ポリヒドロキシル化合物、ホウ酸、ボロン酸、ペプチドアルデヒド及びそれらの混合物からなる群から選択される酵素安定化系;
(f)水;
を含み、
水相がカリウム及びナトリウムのイオンを少なくとも0.01、好ましくは0.01?10のK/Na重量比で含み、
前記組成物が実質的に塩素系漂白剤、ケイ酸塩、及びリン酸塩を含まない、組成物。」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲6発明とを対比すると、両者は、液体洗剤(洗浄)組成物である点で共通する。
そして、甲6発明は、酵素として、「プロテアーゼ、リパーゼ、アミラーゼ及びそれらの混合物」を用いており、さらに、甲6の摘記事項(イ)には、「最も好ましいのは、プロテアーゼ若しくはアミラーゼ又はそれらの混合物である。」と記載されているから、甲6発明は、酵素として、プロテアーゼとアミラーゼの混合物を使用することを含むものということができ、酵素の種類において、両者に違いはないといえる。
また、甲6発明は、pHを7?11としているから、本件訂正発明1の「液体アルカリ性洗剤組成物」に相当するものである。
そうすると、本件訂正発明1と甲6発明とは、プロテアーゼ及びアミラーゼを含有する液体アルカリ洗剤組成物である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。
・相違点8:本件訂正発明1は、プロテアーゼとして「セリンプロテアーゼ」を用いているのに対して、甲6発明のプロテアーゼは、セリンプロテアーゼか否かが不明である点。
・相違点9:本件訂正発明1は、フェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを含有するのに対して、甲6発明は、それを含有するものではない点。
・相違点10:本件訂正発明1は、「塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分」を含有し、その含有量を「組成物全体の0.5?10重量%」と特定しているの対して、甲6発明は、そのような特定を有しない点。
(イ) 相違点の検討
・相違点8について
甲6の摘記事項(イ)には、好ましいタンパク質分解酵素として、セリンプロテアーゼが挙げられているし、前記(4)イにおいて整理した周知技術のとおり、セリンプロテアーゼは、プロテアーゼの代表的なものであるから、本件訂正発明1の当該相違点8に係る構成に格別の創意は認められない。
・相違点9について
甲6の摘記事項(カ)には、酵素安定化系のホウ酸の代わりに、フェニルボロン酸などの置換ホウ酸を使用することができる旨記載されていること、及び、前記(4)ウにおいて整理した周知技術のとおり、4-FPBAは、フェニルボロン酸成分と同様、ホウ酸に代わるプロテアーゼ阻害剤としてよく知られた化合物であり、優れた特性を示すものであることからみて、甲6発明のホウ酸に代えて、フェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを使用し、当該相違点9に係る構成とすることは当業者にとって容易なことといえる。
・相違点10について
本件訂正発明1の当該相違点10に係る構成による効果は、前記2(1)のとおり、本件訂正発明1全般にわたり奏される有意な効果(先行技術に対する有利な効果)として扱わないことを前提に考えると、前記(4)アにおいて整理したとおり、硫酸ナトリウムは、無機ビルダーとして一般的なものであり、その配合量は、当業者が適宜設定すべきものであるから、本件特許発明1の当該相違点10に係る構成は、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
(ウ) まとめ
前記相違点の検討をふまえると、本件訂正発明1は、当業者が甲6発明に基いて容易に発明をすることができたものと認められる。
ウ 本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5についても、前記(5)ウにおいて説示した理由と同様の理由により、甲5発明に対する進歩性を認めることはできない。

(9) 甲7に基づく進歩性の判断
ア 甲7発明
甲7の摘記事項(ア)の請求項1には、次の発明が記載されている(以下、「甲7発明」という。)。
「(a)アニオン性界面活性剤、双極性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1つの界面活性剤;
(b)少なくとも1つの酵素、及びホウ素を含む酵素安定化系;
(c)少なくとも1つの、布地洗浄成分ではない布地ケア成分;及び
(d)少なくとも1つの、布地ケア成分のための変性カチオン性多糖類系付着助剤;
を含む、液体洗濯洗剤組成物であって、
変性前に、前記カチオン性付着助剤が少なくとも1対のシスヒドロキシ基を含有し、前記カチオン性付着助剤が、前記酵素安定化系が前記カチオン性付着助剤とシスヒドロキシ基相互作用を示さないような態様で変性されている、液体洗濯洗剤組成物。」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲7発明とを対比すると、両者は、酵素を含有する液体洗剤組成物である点で一致し、次の点で相違するものと認められる。
・相違点11:本件訂正発明1は、酵素の種類を、「セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ」としているのに対して、甲7発明は、当該酵素の種類が不明である点。
・相違点12:本件訂正発明1は、フェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを含有するのに対して、甲7発明は、それを含有するものではない点。
・相違点13:本件訂正発明1は、「塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分」を含有し、その含有量を「組成物全体の0.5?10重量%」と特定しているの対して、甲7発明は、そのような特定を有しない点。
・相違点14:本件訂正発明1は、アルカリ性の液体洗剤組成物であるのに対して、甲7発明は、アルカリ性か否かが不明である点。
(イ) 相違点の検討
・相違点11について
甲7の摘記事項(イ)には、酵素として、サブチリシンのようなプロテアーゼやアミラーゼが挙げられ、これらの混合物の使用についても教示されているし、前記(4)イにおいて整理した周知技術のとおり、セリンプロテアーゼは、プロテアーゼの代表的なものである上、これをアミラーゼと組み合わせることも、対象とする汚れの種類などに応じて当業者が適宜選択すべきものであるから、本件訂正発明1の当該相違点11に係る構成に格別の創意は認められない。
・相違点12について
甲7の摘記事項(ウ)には、ホウ素系酵素安定化系として、ホウ酸や、これに代わるものとしてフェニルボロン酸などが挙げられていること、及び、前記(4)ウにおいて整理した周知技術のとおり、4-FPBAは、フェニルボロン酸成分と同様、ホウ酸に代わるプロテアーゼ阻害剤としてよく知られた化合物であり、優れた特性を示すものであることからみて、甲7発明のホウ素を含む酵素安定化系として、フェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを使用し、当該相違点12に係る構成とすることは当業者にとって容易なことといえる。
・相違点13について
本件訂正発明1の当該相違点13に係る構成による効果は、前記2(1)のとおり、本件訂正発明1全般にわたり奏される有意な効果(先行技術に対する有利な効果)として扱わないことを前提に考えると、前記(4)アにおいて整理したとおり、硫酸ナトリウムは、無機ビルダーとして一般的なものであり、その配合量は、当業者が適宜設定すべきものであるから、本件特許発明1の当該相違点13に係る構成は、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
・相違点14について
甲7の摘記事項(オ)を参酌すると、甲7発明は、pHを7.5?11とすることを予定して配合されたものと解されるから、当該相違点14は、実質的なものではないか、容易想到の事項ということができる。
(ウ) まとめ
前記相違点の検討をふまえると、本件訂正発明1は、当業者が甲7発明に基いて容易に発明をすることができたものと認められる。
ウ 本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5についても、前記(5)ウにおいて説示した理由と同様の理由により、甲7発明に対する進歩性を認めることはできない。

(10) 甲8に基づく進歩性の判断
ア 甲8発明
甲8の摘記事項(ア)の請求項1、5、6を整理すると、甲8には、次の発明が記載されている(以下、「甲8発明」という。)。
「1?60重量%の界面活性剤、0.001?1.0重量%の酵素阻害剤としてのアリールボロン酸、0.1?20重量%の、ギ酸、ホウ酸、及びそれらの塩からなる群から選択される1種以上の他の酵素阻害剤、0.1?5.0重量%のプロテアーゼ、並びに100重量%までの水である残部を含むアルカリ性液体洗剤組成物であって、
アリールボロン酸が、フェニルボロン酸などであり、
プロテアーゼが、サブチリシンプロテアーゼなどであり、
アミラーゼなどの第2の洗剤相溶性酵素をさらに含むもの。」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲8発明とを対比すると、甲8発明の「サブチリシンプロテアーゼ」は、本件訂正発明1のセリンプロテアーゼに属するものであるし、甲8発明は、酵素阻害剤として、フェニルボロン酸などのアリールボロン酸を含み、酵素としてサブチリシンプロテアーゼとアミラーゼの混合物を使用する場合を含むものと解されるから、両者は、次の点で相違し、その余の点では一致するといえる。
・相違点15:本件訂正発明1は、酵素阻害剤として、フェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを含有するのに対して、甲8発明は、それを含有するものではない点。
・相違点16:本件訂正発明1は、「塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分」を含有し、その含有量を「組成物全体の0.5?10重量%」と特定しているのに対して、甲8発明は、そのような特定を有しない点。
(イ) 相違点の検討
・相違点15について
前記(4)ウにおいて整理した周知技術のとおり、4-FPBAは、フェニルボロン酸成分と同様、プロテアーゼ阻害剤として、よく知られた化合物であり、優れた特性を示すものであるから、甲8発明における酵素阻害剤としてこれを採用し、当該相違点15に係る構成とすることは当業者にとって容易なことといえる。
・相違点16について
本件訂正発明1の当該相違点15に係る構成による効果は、前記2(1)のとおり、本件訂正発明1全般にわたり奏される有意な効果(先行技術に対する有利な効果)として扱わないことを前提に考えると、前記(4)アにおいて整理したとおり、硫酸ナトリウムは、無機ビルダーとして一般的なものであり、その配合量は、当業者が適宜設定すべきものであるから、本件特許発明1の当該相違点16に係る構成は、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
(ウ) まとめ
前記相違点の検討をふまえると、本件訂正発明1は、当業者が甲8発明に基いて容易に発明をすることができたものと認められる。
ウ 本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5についても、前記(5)ウにおいて説示した理由と同様の理由により、甲8発明に対する進歩性を認めることはできない。

(11) 甲10に基づく進歩性の判断
ア 甲10発明
甲10の摘記事項(ア)の請求項1、3、5、6を整理すると、甲10には、次の発明が記載されている(以下、「甲10発明」という。)。
「酵素系、少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、水混和性溶媒系、水、ボロン化合物を含む酵素安定化剤系、及び1種以上の金属腐食阻害剤を含み、非酵素成分が、酵素系と適合性であり且つ水混和性である、保存安定性洗浄溶液組成物であって、
酵素系が、少なくとも1種のプロテアーゼ及び少なくとも1種のアミラーゼを含み、
ボロン化合物が、ボロン酸、ホウ酸、ホウ酸塩、ポリホウ酸塩、及びそれらの組合せからなる群から選択され、ボロン化合物が約0.2重量%?約10重量%の濃度で存在し、
酵素安定化剤系が、カルシウム塩、アルキレングリコール、アルカノールアミン、及びそれらの組合せからなる群から選択される作用剤をさらに含むもの。」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲10発明とは、酵素としてのプロテアーゼ及びアミラーゼ、並びに酵素安定化剤を含む液体洗剤組成物(洗浄溶液組成物)である点で一致するということができ、次の点で相違するといえる。
・相違点17:本件訂正発明1は、プロテアーゼとして「セリンプロテアーゼ」を用いているのに対して、甲10発明のプロテアーゼは、セリンプロテアーゼか否かが不明である点。
・相違点18:本件訂正発明1は、フェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを含有するのに対して、甲10発明は、それを含有するものではない点。
・相違点19:本件訂正発明1は、「塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分」を含有し、その含有量を「組成物全体の0.5?10重量%」と特定しているの対して、甲10発明は、そのような特定を有しない点。
・相違点20:本件訂正発明1は、アルカリ性の液体洗剤組成物であるのに対して、甲10発明は、アルカリ性か否かが不明である点。
(イ) 相違点の検討
・相違点17について
甲10の摘記事項(ウ)には、好ましいプロテアーゼとして、セリンプロテアーゼが挙げられているし、前記(4)イにおいて整理した周知技術のとおり、セリンプロテアーゼは、プロテアーゼの代表的なものであるから、本件訂正発明1の当該相違点17に係る構成に格別の創意は認められない。
・相違点18について
甲10の摘記事項(エ)の[0047]、[0048]には、フェニルボロン酸を含むボロン化合物が記載されている。また、前記(4)ウにおいて整理した周知技術のとおり、フェニルボロン酸成分又は4-FPBAは、ホウ酸に代わるプロテアーゼ阻害剤として、よく知られた化合物であり、特に、4-FPBAは、ホウ酸よりも優れた特性を示すものである。
したがって、甲10発明のボロン化合物として、あるいは、これに代えて、4-FPBAを用いることは当業者にとって容易なことといえる。
・相違点19について
本件訂正発明1の当該相違点19に係る構成による効果は、前記2(1)のとおり、本件訂正発明1全般にわたり奏される有意な効果(先行技術に対する有利な効果)として扱わないことを前提に考えると、前記(4)アにおいて整理したとおり、硫酸ナトリウムは、無機ビルダーとして一般的なものであり、その配合量は、当業者が適宜設定すべきものであるから、本件特許発明1の当該相違点19に係る構成は、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
・相違点20について
甲10の摘記事項(オ)を参酌すると、甲10発明は、pHを7?8とすることを予定して配合されたものと解されるから、当該相違点20は、実質的なものではないか、容易想到の事項ということができる。
(ウ) まとめ
前記相違点の検討をふまえると、本件訂正発明1は、当業者が甲10発明に基いて容易に発明をすることができたものと認められる。
ウ 本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5についても、前記(5)ウにおいて説示した理由と同様の理由により、甲10発明に対する進歩性を認めることはできない。

(12) 甲12に基づく進歩性の判断
ア 甲12発明
甲12の摘記事項(ア)の請求項1には、次の発明が記載されている(以下、「甲12発明」という。)。
「水性酵素含有洗濯促進組成物であって、重量で:
(a)約0.05%?約5%のプロテアーゼ及び/又はアミラーゼ酵素;
(b)
(1)約0.005%?約3.0%の、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸アルカリ金属及びそれらの混合物から選択されるボロン化合物、
(2)約5.0%?約20%の、1?4個のヒドロキシ基及び4?8個の炭素原子を有する脂肪族ヒドロキシジ-又はヒドロキシトリ-カルボン酸のアルカリ金属塩、及び
(3)約2%?約15%の塩化アルカリ金属、
を含み、前記%が組成物全体に基づくものである酵素安定化系;及び
(c)7.0?8.5のpHを得るのに十分な量のアルカリ水酸化物;
を含む、組成物。」
イ 本件訂正発明1について
(ア) 対比
本件訂正発明1と甲12発明とを対比すると、甲12発明の水性酵素含有洗濯促進組成物は、本件訂正発明1の液体洗剤組成物に相当するものといえるから、本件訂正発明1と甲12発明とは、酵素としてのプロテアーゼ及びアミラーゼ、並びに酵素安定化系を含む液体洗剤組成物である点で一致するということができ、次の点で相違するといえる。
・相違点21:本件訂正発明1は、プロテアーゼとして「セリンプロテアーゼ」を用いているのに対して、甲12発明のプロテアーゼは、セリンプロテアーゼか否かが不明である点。
・相違点22:本件訂正発明1は、フェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを含有するのに対して、甲12発明は、それを含有するものではない点。
・相違点23:本件訂正発明1は、「塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分」を含有し、その含有量を「組成物全体の0.5?10重量%」と特定しているの対して、甲12発明は、「約2%?約15%の塩化アルカリ金属」を有している点。
・相違点24:本件訂正発明1は、アルカリ性の液体洗剤組成物であるのに対して、甲12発明は、アルカリ性か否かが不明である点。
(イ) 相違点の検討
・相違点21について
甲12の摘記事項(イ)には、適当な液体酵素製剤として、Savinase(セリンプロテアーゼ)などが挙げられているし、前記(4)イにおいて整理した周知技術のとおり、セリンプロテアーゼは、プロテアーゼの代表的なものであるから、本件訂正発明1の当該相違点21に係る構成に格別の創意は認められない。
・相違点22について
甲12は、酵素安定化系においてボロン化合物を用いるものであるが、これについて、甲12の摘記事項(ウ)には、ホウ酸を生じることが可能な化合物であり、好ましくはホウ酸自体である旨記載されている。そうすると、甲12発明における当該ボロン化合物は、本件訂正発明1が含有するフェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを予定したものではないことが分かる。
しかしながら、前記(4)ウにおいて整理した周知技術のとおり、フェニルボロン酸成分又は4-FPBAは、ホウ酸に代わるプロテアーゼ阻害剤として、よく知られた化合物であり、特に、4-FPBAは、ホウ酸よりも優れた特性を示すものであることも当業者が既に認知する事項であることを踏まえると、甲12発明のボロン化合物(ホウ酸)に代えて、フェニルボロン酸の誘導体である4-FPBAを用いることは当業者にとって容易なことといえる。
・相違点23について
甲12発明の「約2%?約15%の塩化アルカリ金属」について、甲12の摘記事項(エ)には、好ましくは、塩化ナトリウムであり、塩化物イオンの成分は、より好ましくは5?8%の量である旨記載され、さらに甲12の摘記事項(カ)には、実施例2として、塩化ナトリウムを7重量%使用した具体例が記載されている。
そうすると、甲12発明は、塩化ナトリウムを5?8重量%程度配合することを既に予定したものというべきであるから、当該相違点23は、実質的なものではないか、容易想到の事項と認められる。
さらに、本件訂正発明1の当該相違点23に係る構成による効果は、前記2(1)のとおり、本件訂正発明1全般にわたり奏される有意な効果(先行技術に対する有利な効果)として扱わないことを前提に考えると、前記(4)アにおいて整理したとおり、硫酸ナトリウムは、無機ビルダーとして一般的なものであり、その配合量は、当業者が適宜設定すべきものであるから、本件特許発明1の当該相違点23に係る構成は、当業者が容易に想到し得るものと認められる。
・相違点24について
甲12の摘記事項(オ)を参酌すると、甲12発明は、pHを7?8.5とすることを予定して配合されたものと解されるから、当該相違点24は、実質的なものではないか、容易想到の事項ということができる。
(ウ) まとめ
前記相違点の検討をふまえると、本件訂正発明1は、当業者が甲12発明に基いて容易に発明をすることができたものと認められる。
ウ 本件訂正発明3?5について
本件訂正発明3?5についても、前記(5)ウにおいて説示した理由と同様の理由により、甲12発明に対する進歩性を認めることはできない。

(13) 小括
以上のとおり、本件訂正発明1、3?5は、甲1、2、5?8、10、12に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、請求項1、3?5に係る特許は、同項の規定に違反してなされたものであるから、同法第113条第2号に該当するため、取り消すべきものである。

第6 結び

以上のとおりであるから、本件訂正後の請求項1、3?5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、かつ、同法第29条第2項の規定に違反してされたものである。また、本件訂正後の請求項5に係る特許は、同法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
したがって、本件訂正後の請求項1、3?5に係る特許は、同法第113条第2号及び第4号に該当するため、取り消すべきものである。
そして、本件訂正により請求項2は削除されたため、当該請求項2に係る特許についての特許異議の申立ては、対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ、フェニルボロン酸の誘導体、並びに塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分、を含有する液体アルカリ性洗剤組成物であり、当該塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される溶解した塩成分の含有量が、組成物全体の0.5?10重量%であり、当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、前記液体アルカリ性洗剤組成物。
【請求項2】(削除)
【請求項3】
請求項1に記載の液体アルカリ性洗剤組成物を製造するプロセスであり:
a)液体を提供し;
b)a)の液体に前記塩成分を添加し;
c)a)に前記セリンプロテアーゼ及びアミラーゼ、並びに前記フェニルボロン酸の誘導体を、b)と同時に、又はb)の後に添加し;そして
d)その組成物を混合させる工程を含み、当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、前記プロセス。
【請求項4】
対象を洗浄するための、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項5】
液体組成物におけるフェニルボロン酸の誘導体のセリンプロテアーゼ阻害剤作用を促進させるための塩の使用であり、当該塩が、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択され、及び当該塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される塩成分の含有量が、組成物全体の0.5?10重量%であり、当該フェニルボロン酸の誘導体が、4-ホルミル-フェニル-ボロン酸(4-FPBA)である、前記使用。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2019-10-24 
出願番号 特願2014-187988(P2014-187988)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (C11D)
P 1 651・ 536- ZAA (C11D)
P 1 651・ 537- ZAA (C11D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 古妻 泰一  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 天野 宏樹
日比野 隆治
登録日 2017-09-22 
登録番号 特許第6212010号(P6212010)
権利者 ノボザイムス アクティーゼルスカブ
発明の名称 安定な酵素溶液及び製造方法  
代理人 福本 積  
代理人 古賀 哲次  
代理人 三橋 真二  
代理人 石田 敬  
代理人 武居 良太郎  
代理人 青木 篤  
代理人 三橋 真二  
代理人 石田 敬  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 大島 浩明  
代理人 中島 勝  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 特許業務法人平木国際特許事務所  
代理人 武居 良太郎  
代理人 渡辺 陽一  
代理人 福本 積  
代理人 中島 勝  
代理人 大島 浩明  

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