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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B01D
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  B01D
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01D
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  B01D
管理番号 1362323
異議申立番号 異議2019-700113  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-13 
確定日 2020-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6374351号発明「水中の懸濁物質の除去処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6374351号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?10〕について訂正することを認める。 特許第6374351号の請求項1、3?10に係る特許を維持する。 特許第6374351号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6374351号(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成27年 6月 8日(優先権主張 平成26年 6月 9日)を出願日とする出願であって、平成30年 7月27日にその請求項1?10に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年 8月15日に特許掲載公報が発行され、その後、その全請求項に係る特許について、平成31年 2月13日付けで特許異議申立人柏木 里実(以下、「申立人」という。)により、甲第1?3号証を添付して特許異議の申立てがされ、令和 1年 5月21日付けで当審より取消理由が通知され、同年 7月29日付けで特許権者より意見書が提出され、同年 8月20日付けで当審より申立人に対して審尋がされ、これに対して同年 9月 5日付けで申立人より回答書が提出され、同年11月 7日付けで当審より取消理由(決定の予告)が通知され、令和 2年 1月10日付けで特許権者より意見書の提出並びに訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年 2月17日付けで申立人より意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正請求による訂正の適否
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、以下の訂正事項からなる(当審注:下線は訂正箇所を示す。)。
(1)特許請求の範囲の訂正
(1-1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に
「該有機凝集剤が、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導されたカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、」
と記載されているのを、
「該有機凝集剤が、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導された、重量平均分子量が800万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド等量が1.2?3.4meq/gであるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3?10も同様に訂正する。)。

(1-2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(1-3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1又は2に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
と記載されているのを、
「請求項1に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
に訂正する。

(1-4)訂正事項4
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項5に
「請求項1?4のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
と記載されているのを、
「請求項1、3、4のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
に訂正する。

(1-5)訂正事項5
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項6に
「請求項1?3のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
と記載されているのを、
「請求項1、3のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
に訂正する。

(1-6)訂正事項6
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項7に
「請求項1?6のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
と記載されているのを、
「請求項1、3?6のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
に訂正する。

(1-7)訂正事項7
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項8に
「請求項1?7のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
と記載されているのを、
「請求項1、3?7のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
に訂正する。

(1-8)訂正事項8
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1?9のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
と記載されているのを、
「請求項1、3?9のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」
に訂正する。

(2)本件特許明細書の訂正
(2-1)訂正事項9
本件特許明細書の【0095】に



と記載されているのを



に訂正する。

本件訂正前の請求項2?10は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正前の請求項1?10は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
また、本件特許明細書の訂正は、一群の請求項1?10に関する訂正であり、本件訂正請求は、訂正後の請求項〔1?10〕を訂正単位とする訂正の請求をするものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)特許請求の範囲の訂正
(1-1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1では限定されていなかった「共重合体」の物性を、「重量平均分子量が800万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド等量が1.2?3.4meq/gである」と限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、願書に添付した明細書の【0024】には、
「【0024】
上記した本発明の水中の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、更に、重量平均分子量が500万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.2?3.4meq/gであることが挙げられる。」
と記載され(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)、【0095】表7の実施例7、8(前記1(2)(2-1)参照。)には、「共重合体」の「重量平均分子量」を800万とすることが記載されているから、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

(1-2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項を追加するものではないこと、及び、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(1-3)訂正事項3?8について
訂正事項3?8による訂正は、いずれも、訂正事項2による請求項2の削除に合わせて、選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3?8による訂正が、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

(2)本件特許明細書の訂正
(2-1)訂正事項9について
訂正事項9による訂正は、訂正事項1による請求項1の訂正により「共重合体」の「重量平均分子量」の下限が800万となったことに対応して、「重量平均分子量」が500万である訂正前の実施例9を参考例9とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項9による訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。

なお、本件訂正請求においては、全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

3 小括
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?10〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
前記第2に記載したとおり、本件訂正は認められるから、特許第6374351号の請求項1、3?10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明3」?「本件発明10」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3?10に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
懸濁物質の凝集・沈降剤を用い、廃水や取水等の中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための水中の懸濁物質の除去処理方法であって、
上記凝集・沈降剤として少なくとも1種のカチオン性又は両性の有機凝集剤を用い、該有機凝集剤が、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導された、重量平均分子量が800万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド等量が1.2?3.4meq/gであるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量(Mw)に、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)の2乗を乗じた値を、更に100万で除した値をNとした場合に、N値が5?60であり、且つ、該共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値をLとした場合に、L値が1.5以上であり、
少なくとも、粒径が50μm以上の金属粉又は砂の少なくともいずれかを含む、粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質と、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質とが、前記水中における、前記粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質濃度に対する前記粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比2.0以上で併存し、その流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記カチオン性又は両性の有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で一緒に凝集沈降させることを特徴とする水中の懸濁物質の除去処理方法。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立にCH_(3)又はC_(2)H_(5)を表し、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)のいずれかを表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)
【請求項2】
削除
【請求項3】
前記カチオン性又は両性の有機凝集剤を、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とが併存している、流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態である水中に添加することで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とが併存し、その流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記カチオン性又は両性の有機凝集剤が共存する状態を生じさせる請求項1に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項4】
前記水が、製鐵所において発生する廃水であり、
前記カチオン性又は両性の有機凝集剤を廃水に添加する位置が、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とが併存している廃水が発生する地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点である請求項3に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項5】
前記水が、製鐵所において発生する廃水であり、
前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で一緒に凝集沈降させ、これらの懸濁物質を前記水中から一緒に除去した後、得られた処理水を循環使用する請求項1、3、4のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項6】
前記水が、水中に前記粗大な懸濁物質をほとんど含まない水である場合に、該水に予め粒径が50μm以上の金属粉又は砂の少なくともいずれかを含む、粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質を添加して、水中における、該粗大な懸濁物質の存在量が250mg/L以上、80000mg/L以下で、且つ、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質濃度に対する前記粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比で2.0以上となるようにする請求項1、3のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項7】
前記乱流状態の水のレイノルズ数が、8000以上である請求項1、3?6のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項8】
前記水中の懸濁物質が、水砕スラグ、小石、泥、不溶性有機物、石炭粉又はコークス粉の少なくともいずれかを含む請求項1、3?7のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項9】
前記水中に、更に油分が併存している請求項8に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項10】
前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で一緒に凝集沈降させた後に、更に凝集沈降した沈殿物を除去する請求項1、3?9のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。」

第4 異議申立理由の概要
1 各甲号証
甲第1号証:特開2014-133229号公報
甲第2号証:特開2014-108394号公報
甲第3号証:特願2014-119093号の願書、明細書、特許請求の範囲、図面

2 優先権主張について
(ア)本件特許出願の優先権主張の基礎とされた先の特許出願である特願2014-119093号の願書、明細書、特許請求の範囲、図面(甲第3号証)には、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である、「共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値」、すなわち「L値」について記載されていない。
また、「共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値、更に100万で除した値」、すなわち「L値」が自明の技術事項であるともいえない。
更に、甲第3号証には、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である、「少なくとも、粒径が50μm以上の金属粉又は砂の少なくともいずれかを含む、粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質と、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質とが、前記水中における、前記粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質濃度に対する前記粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比2.0以上で併存」することは記載されていないし、前記発明特定事項が記載されているのと同然であるとはいえない。

(イ)このため、本件訂正前の請求項1に係る発明は、優先権主張の基礎とされた甲第3号証に記載されていない新規事項を含むので、優先権の主張の効果は認められない。
そして、このことは、本件訂正前の請求項2?10に係る発明についても同様であるので、特許法第29条の適用についての基準日は、現実の出願日である平成27年 6月 8日である。

3 特許法第29条第1項第3号(新規性)及び第2項(進歩性)について
(ア)本件訂正前の請求項1?5、7?10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、本件訂正前の請求項1?5、7?10に係る発明の特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(イ)本件訂正前の請求項1?10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1?10に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第5 取消理由の概要
1 令和 1年 5月21日付け取消理由通知書について
(1)優先権主張について
(ア)甲第3号証には、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である、「共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値」である「L値」自体が記載されておらず、「L値が1.5以上」であることも記載されていない。
また、このことが、甲第3号証に記載されているに等しい事項であることを示す周知技術も存在しないから、本件訂正前の請求項1に係る発明は、「L値」に関して、甲第3号証に記載されていない新たな技術事項を導入するものである。

(イ)したがって、本件特許出願の優先権の主張の効果は認められないから、本件特許出願の出願日は、現実の出願日である平成27年 6月 8日となるものである。

(2)特許法第29条第1項第3号(新規性)及び第2項(進歩性)について
(ア)本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(イ)本件訂正前の請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ウ)本件訂正前の請求項7?10に係る発明は、本件訂正前の請求項6に係る発明を引用しない場合、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件訂正前の請求項6に係る発明を引用する場合、甲第1号証に記載された発明及び甲第1号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(エ)したがって、本件訂正前の請求項1?10に係る発明に係る特許は、特許法第29条第1項及び第2項の規定に違反して特許されたものである。

2 令和 1年11月 7日付け取消理由通知書について
(1)優先権主張について
前記1(1)(ア)に記載したのと同様の理由により、本件特許出願の優先権の主張の効果は認められないから、本件特許出願の出願日は、現実の出願日である平成27年 6月 8日となるものである。

(2)特許法第29条第2項(進歩性)について
本件訂正前の請求項1?10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件訂正前の請求項1?10に係る発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。

第6 取消理由についての判断
1 令和 1年 5月21日付け取消理由通知書について
(1)優先権主張について
本件特許出願の優先権主張の基礎とされた先の特許出願である特願2014-119093号の願書、明細書、特許請求の範囲、図面である甲第3号証には、以下の記載(A)、(B)がある(当審注:「・・・」は記載の省略を表す。以下、同様である。)。
(A)「【請求項1】
凝集剤を用い、廃水や取水等の中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための水中の懸濁物質の除去処理方法であって、
上記凝集剤として少なくとも1種の有機凝集剤を用い、該有機凝集剤が、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導されたカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量とpH7におけるカチオンコロイド当量値の2乗を乗じた値をNとした場合に、N値が500万?6000万であり、
少なくとも、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたことを特徴とする水中の懸濁物質の除去処理方法。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立にCH_(3)又はC_(2)H_(5)を表し、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)のいずれかを表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)」

(B)「【0042】
本発明者らは、「粗大SSと微細なSSとが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除く」ことが達成されることによる技術的な効果が極めて大きいことから、更に工業的価値を高めるべく、使用する有機凝集剤について、より詳細な検討を行った。その結果、上記原料モノマーから誘導される共重合体の中でも、該共重合体の重量平均分子量とpH7におけるカチオンコロイド当量の2乗を乗じたN値が500万?6000万である場合に、より優れた高分子凝集剤として機能することを見出した。なお、本発明に使用するカチオンコロイド当量値は、コロイド滴定法(ポリビニル硫酸カリウム溶液で滴定する方法)により有機凝集剤中の有効成分1グラムあたりのカチオンコロイド当量値を測定した値である。また、重量平均分子量は、ポリスチレン換算によるGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法によって測定した値である。
【0043】
図6は、本発明で規定する有機凝集剤の範囲を示す図である。・・・本発明者らは、これらの結果から、本発明が目的の一つとしている「粗大SSと微細なSSとが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除くことの実現」できる有機凝集剤の範囲についての詳細な検討を行い、共重合体の重量平均分子量とpH7におけるカチオンコロイド当量の2乗を乗じたN値が500万?6000万であるものが、より顕著な効果を実現できるものであるとの結論を得た。図6中にその範囲を破線で示した。更に、この範囲内のものの中でも、重量平均分子量が200万?1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が0.7?4.1である場合、更には、重量平均分子量が400万?1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.1?3.5である場合により顕著な効果が得られる。本発明のより顕著な効果が期待できる有機凝集剤の範囲を、共重合体の重量平均分子量とカチオンコロイド当量の兼ね合いを示すN値でいえば、1500万?5500万程度であるものを使用するとよい。」

(ア)前記(A)、(B)によれば、甲第3号証には、水中の懸濁物質の除去処理方法に用いる、一般式(1)、一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導されたカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなる凝集剤において、共重合体の重量平均分子量とpH7におけるカチオンコロイド当量値の2乗を乗じた値をNとした場合に、N値が500万?6000万であるものが、より顕著な効果を実現でき、この範囲内のものの中でも、重量平均分子量が200万?1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が0.7?4.1である場合、更には、重量平均分子量が400万?1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.1?3.5である場合に、より顕著な効果が得られることが記載されている。

(イ)ところが、甲第3号証には、本件発明1の発明特定事項である、「共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値」である「L値」自体が記載されておらず、「L値が1.5以上」であることも記載されていない。
また、このことが、甲第3号証に記載されているに等しい事項であることを示す周知技術も存在しないから、本件発明1は、「L値」に関して、甲第3号証に記載されていない新たな技術事項を導入するものである。
そして、特許権者は、このことについて特段の意見を述べていない。

(ウ)したがって、本件特許出願の優先権の主張の効果は認められないから、本件特許出願の出願日は、現実の出願日である平成27年 6月 8日となるものである。

(2)特許法第29条第1項第3号(新規性)及び第2項(進歩性)について
(2-1)甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載される発明
本件特許出願の優先権の主張の効果は認められず、本件特許出願の出願日は、現実の出願日である平成27年 6月 8日となることは、前記(1)(ウ)に記載のとおりであって、本件特許出願の現実の出願日前に公開された甲第1号証には、以下の記載(1a)?(1c)がある。
(1a)「【請求項1】
凝集剤を用い、廃水中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための廃水中の懸濁物質の除去処理方法であって、
上記凝集剤として少なくとも1種の有機凝集剤を用い、
少なくとも、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたことを特徴とする廃水中の懸濁物質の除去処理方法。
・・・
【請求項6】
前記粗大な懸濁物質が、粒径が50μm以上のものであり、前記微細な懸濁物質が、粒径が50μmに満たないものであり、且つ、これらの物質の併存状態が、微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が、その質量比で0.5以上である請求項1?5のいずれか1項に記載の廃水中の懸濁物質の除去処理方法。
・・・
【請求項8】
前記有機凝集剤が、カチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が100万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上である請求項1?7のいずれか1項に記載の廃水中の懸濁物質の除去処理方法。」

(1b)「【0038】
本発明で使用する有機凝集剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系、ポリアミン系、およびジアリルアンモニウム系の化合物から選ばれる有機凝集剤を用いることができる。・・・具体的には、下記一般式(1)及び(2)を必須成分としてそれぞれ5モル%以上を含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が100万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上であるものを用いることが有効である。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、CH_(3)又はC_(2)H_(5)を、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)を表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)
・・・
【0041】
本発明者らは、・・・下記の要件を満たすものであることを要することを見出した。・・・その、より好ましい範囲は、重量平均分子量とカチオンコロイド当量値との兼ね合いによっても異なるが、重量平均分子量が200万?1100万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.2?1.9meq/gである弱カチオン?強カチオンのものを使用するとよい。
・・・
【0044】
本発明者らの検討によれば、上記した共重合体を主成分とする有機凝集剤を、例えば、製鐵工場の熱間圧延工程から大量に排出される、鉄粉等の金属や圧延油等の油分が懸濁した、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊している状態の直接冷却廃水に、該処理廃水に対して0.1mg/L以上、例えば、2mg/L程度と微少量添加するだけで、廃水中の懸濁物質が速やかに凝集沈降して、しかも、その上澄みは、目視において濁りの見られない極めて清澄なものになる。・・・」

(1c)「【0055】
<実施例1、2、比較例1>
本実施例の概要を図2に示した。・・・本実施例では、有機凝集剤2として、前記した一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分として、・・・を主成分とするカチオン性のものを用いた。その重量平均分子量は300万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.6?1.0meq/g程度であるものを用いた。・・・」

(ア)前記(1a)によれば、甲第1号証には、「廃水中の懸濁物質の除去処理方法」が記載されており、当該「廃水中の懸濁物質の除去処理方法」は、凝集剤を用い、廃水中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くためのものであって、前記凝集剤として少なくとも1種の有機凝集剤を用い、少なくとも、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたものであり、前記粗大な懸濁物質が粒径50μm以上のものであり、前記微細な懸濁物質が粒径50μmに満たないものであり、且つ、これらの物質の併存状態が、微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が、その質量比で0.5以上であるものである。
また、前記(1a)、(1b)によれば、前記有機凝集剤は、【0038】の一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分としてそれぞれ5モル%以上を含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が100万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上であるものを用いるものであり、更に、廃水は、鉄粉等の金属や圧延油等の油分が懸濁した、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊しているものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第1号証には、
「凝集剤を用い、廃水中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための廃水中の懸濁物質の除去処理方法であって、
前記凝集剤として少なくとも1種の有機凝集剤を用い、
少なくとも、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたものであり、
前記粗大な懸濁物質が粒径50μm以上のものであり、前記微細な懸濁物質が粒径50μmに満たないものであり、且つ、これらの物質の併存状態が、微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が、その質量比で0.5以上であるものであり、
前記有機凝集剤は、下記一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分としてそれぞれ5モル%以上を含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が100万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上であるものを用い、
廃水は、鉄粉等の金属や圧延油等の油分が懸濁した、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊しているものである、廃水中の懸濁物質の除去処理方法。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、CH_(3)又はC_(2)H_(5)を、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)を表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)」の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(2-2)本件発明1について
ア 対比
(ア)本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「凝集剤を用い、廃水中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための廃水中の懸濁物質の除去処理方法」は、本件発明1における「懸濁物質の凝集・沈降剤を用い、廃水や取水等の中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための水中の懸濁物質の除去処理方法」に相当する。

(イ)また、甲1発明における一般式(1)、(2)は、本件発明1における一般式(1)、(2)と合致し、甲1発明において、「共重合体の重量平均分子量が100万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上である」ことは、本件発明1において、「共重合体」の「重量平均分子量が800万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gである」ことに合致するから、甲1発明において、「有機凝集剤」が、「一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分としてそれぞれ5モル%以上を含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が100万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上である」ことは、本件発明1において、「凝集・沈降剤として少なくとも1種のカチオン性又は両性の有機凝集剤を用い、該有機凝集剤が、一般式(1)、一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導された、量平均分子量が800万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gであるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてな」ることに一応相当する。
更に、甲1発明において、「少なくとも、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたものであり、前記粗大な懸濁物質が粒径50μm以上のものであり、前記微細な懸濁物質が粒径50μmに満たないものであり、且つ、これらの物質の併存状態が、微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が、その質量比で0.5以上であ」ること、及び「廃水は、鉄粉等の金属や圧延油等の油分が懸濁した、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊しているものである」ことは、本件発明1において、「少なくとも、粒径が50μm以上の金属粉又は砂の少なくともいずれかを含む、粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質と、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質とが、前記水中における、前記粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質濃度に対する前記粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比2.0以上で併存し、その流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記カチオン性又は両性の有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で一緒に凝集沈降させる」ことに相当する。

(ウ)そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「懸濁物質の凝集・沈降剤を用い、廃水や取水等の中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための水中の懸濁物質の除去処理方法であって、
上記凝集・沈降剤として少なくとも1種のカチオン性又は両性の有機凝集剤を用い、該有機凝集剤が、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導された、重量平均分子量が800万?1,100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gであるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、
少なくとも、粒径が50μm以上の金属粉又は砂の少なくともいずれかを含む、粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質と、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質とが、前記水中における、前記粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質濃度に対する前記粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比2.0以上で併存し、その流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記カチオン性又は両性の有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で一緒に凝集沈降させる、水中の懸濁物質の除去処理方法。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立にCH_(3)又はC_(2)H_(5)を表し、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)のいずれかを表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1-1:本件発明1は、「共重合体の重量平均分子量(Mw)に、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)の2乗を乗じた値を、更に100万で除した値をNとした場合に、N値が5?60であり、且つ、該共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値をLとした場合に、L値が1.5以上であ」る、との発明特定事項を有するのに対して、甲1発明における「N値」及び「L値」は明らかでない点。

イ 判断
(ア)以下、前記ア(ウ)の相違点1-1について検討すると、甲1発明においては、「共重合体の重量平均分子量が100万?1,300万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.1meq/g以上」であるところ、これから、「共重合体の重量平均分子量(Mw)に、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)の2乗を乗じた値を、更に100万で除した値」である「N値」及び「共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値」である「L値」を具体的に求めることはできない。
そうすると、甲1発明において、「N値が5?60であり、且つ」、「L値が1.5以上であ」るということはできず、前記相違点1-1は実質的な相違点であるので、本件発明1が甲1発明であるとはいえない。

(イ)次に、甲1発明において、前記相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを当業者が容易になし得るか否かについて検討するにあたり、本件発明1をみたとき、これは、「共重合体」が、「重量平均分子量が800万?1,100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gである」との発明特定事項を満足した上で、「N値が5?60であり、且つ」、「L値が1.5以上であ」る、とするものである。

(ウ)ここで、前記(2-1)(1c)によれば、甲第1号証には、甲1発明における「共重合体」の実施例として、「重量平均分子量」が300万であり、「pH7におけるカチオンコロイド当量値」が0.6?1.0meq/g程度のものが記載されているが、前記実施例の「共重合体」は、「重量平均分子量が800万?1,100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gである」との発明特定事項を満足しない。
更に、甲第1号証は、そのほかに、「重量平均分子量が800万?1,100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gである」との発明特定事項、及び、「N値が5?60であり、且つ」、「L値が1.5以上であ」る、との発明特定事項を全て満足する「共重合体」が記載されるものではない。

(エ)そうすると、甲第1号証には、「重量平均分子量が800万?1,100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gである」との発明特定事項、及び、「N値が5?60であり、且つ」、「L値が1.5以上であ」る、との発明特定事項を全て満足する「共重合体」は記載も示唆もされるものではなく、「懸濁物質の高分子凝集・沈降剤」において「N値」及び「L値」を併せて設定することが技術常識であったともいえないから、甲1発明において、「水中の懸濁物質の除去処理方法」を、「共重合体の重量平均分子量(Mw)に、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)の2乗を乗じた値を、更に100万で除した値をNとした場合に、N値が5?60であり、且つ、該共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値をLとした場合に、L値が1.5以上であ」るものとする、つまり、前記相違点1-1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることを、甲第1号証の記載事項に基づいて当業者が容易になし得るとはいえない。

(オ)したがって、本件発明1は甲1発明であるとはいえないし、本件発明1を、甲1発明及び甲第1号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

(2-3)本件発明3?10について
(ア)本件発明3?10は、いずれも、本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明3?10と甲1発明とを対比した場合、いずれの場合であっても、少なくとも前記相違点1-1の点で相違するものである。

(イ)そして、前記(2-2)イ(ア)?(エ)に示した理由と同様の理由により、本件発明3?10も、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明及び甲第1号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

(3)申立人提出の回答書(以下、「回答書」という。)について
(3-1)回答書の主張の概要
ア 相違点1-1の判断(新規性)について
甲第1号証の【0041】の記載に基づけば、甲第1号証には、「重量平均分子量が1100万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド等量値が1.9meq/g」である有機凝集剤が記載されており、当該有機凝集剤の「N値」は39.7で「L値」は5.8であるから、本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載される発明を包含するものである。
また、特許権者は、甲第1号証に好ましい値として明記されている具体的な数値を採用しない合理的な理由を何ら示していない。
したがって、本件訂正前の請求項1に係る発明は取り消されるべきものである。

イ 相違点1-1(N値)の判断(進歩性)について
本件特許明細書の表1?5は、甲第1号証の表1?5と完全同一であり、本件発明が奏する効果は、甲1発明に対して何ら優れた効果でも予測困難な効果でもないから、本件訂正前の請求項1に係る発明における「N値」の設定は、当業者が適宜行い得る設計的事項の採用に過ぎない。

ウ 相違点1-1(L値)の判断(進歩性)について
特許権者は、「N値が5?60であることに加えてL値が1.5以上であることを満足する有機凝集剤を使用することで、より高いレベルの凝集、沈降効果を安定して得られる」ことを主張するが、この点には重大な疑義がある。
すなわち、本件特許明細書【0098】で用いられる「L値」が0.9と1.1の共重合体は「N値が5?60」を満たしていないことが強く推認され、【0095】の表7においても、「N値」を満たし、「L値」を満たさない比較例はないから、「N値」の値さえ満たしてしまえば、「L値」の限定は何ら意味をなさない。
よって、本件訂正前の請求項1に係る発明における「L値」の設定は、技術的意義がなく、当業者が適宜行い得る設計的事項の採用に過ぎない。

進歩性についてまとめ
(ア)本件特許図面の【図6】に基づいてみても、「N値」の範囲を外れる甲第1号証の実施例の凝集剤と、「N値」の範囲に入る本件特許に係る発明の実施例1?5の凝集剤の効果は同一であるから、本件訂正前の請求項1に係る発明の「N値」の範囲により、何ら優れた効果も予測困難な効果もない。

(イ)「N値が50?60」を満たす範囲の中で「L値が1.5以上」とすることでより高いレベルの凝集・沈降効果を安定して得る、との特許権者の主張は本件特許明細書に裏付けがない誤った主張である。
本件特許明細書には、「N値」を満たし「L値」を満たさない比較例がなく、「N値」の値さえ満たしてしまえば、「L値」の限定は何ら意味をなさないので、「L値」の範囲設定に何ら技術的意義もない。

(ウ)したがって、「N値」及び「L値」の設定は、甲1発明に対して何ら優れた効果も予測困難な効果も及ぼすことがなく、当業者が適宜行い得る設計的事項の採用に過ぎないから、本件訂正前の請求項1に係る発明は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、このことは、本件訂正前の請求項2?10に係る発明についても同様である。

(3-2)判断
ア 相違点1-1の判断(新規性)について
(ア)前記相違点1-1は実質的な相違点であるので、本件発明1が甲1発明であるとはいえないことは、前記(2)(2-2)イ(ア)に記載のとおりである。

(イ)甲第1号証の【0041】((2)(2-1)(1b))の記載は、甲1発明における「共重合体」は、「重量平均分子量」が200万?1100万であり、且つ、「pH7におけるカチオンコロイド当量値」が0.2?1.9meq/gであることが好ましいことをいうものに過ぎず、甲第1号証に、「共重合体」の「重量平均分子量」が1100万であり、且つ、「pH7におけるカチオンコロイド当量値」が1.9meq/gであることが好ましいことが記載されていると直ちにはいえない。
このため、甲1発明における「有機凝集剤」に、「重量平均分子量」が1100万であり、且つ、「pH7におけるカチオンコロイド等量値」が1.9meq/gのものが含まれるとはいえないから、前記【0041】の記載があるからといって、本件発明1が甲1発明を包含するということはできないし、本件発明1が、甲第1号証において好ましいとされる数値を採用するものともいえない。

(ウ)したがって、申立人の前記(3-1)アの主張は採用できない。

イ 「N値」、「L値」の判断(進歩性)、「進歩性についてまとめ」について
(ア)甲第1号証には、「重量平均分子量が800万?1,100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gである」との発明特定事項、及び、「N値が5?60であり、且つ」、「L値が1.5以上であ」る、との発明特定事項を全て満足する「共重合体」は記載も示唆もされるものではないことは、前記(2)(2-2)イ(エ)で示したとおりである。
そして、上記からすれば、申立人の前記(3-1)イ?エの主張をもって、前記2(3)イ(エ)で示した判断が覆ることになるとはいえない。

(イ)したがって、申立人の前記(3-1)イ?エの主張はいずれも採用できない。

ウ まとめ
これらのことから、回答書の主張はいずれも採用できない。

(4)小括
以上のとおりであるので、前記第5の1の取消理由は理由がない。

2 令和 1年11月 7日付け取消理由通知書について
(1)特許法第29条第2項(進歩性)について
(1-1)甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載される発明
本件特許出願の優先権の主張の効果は認められず、本件特許出願の出願日は、現実の出願日である平成27年 6月 8日となることは、前記1(1)(ウ)に記載のとおりであって、本件特許出願の現実の出願日前に公開された甲第2号証には、以下の記載(2a)?(2f)がある。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除く際に使用される高分子凝集剤であって、
下記一般式(1)及び(2)を必須成分としてそれぞれ5モル%以上を含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が200万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.4meq/g以上であることを特徴とする高分子凝集剤。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、CH_(3)又はC_(2)H_(5)を、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)を表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)
・・・
【請求項3】
前記粗大な懸濁物質が少なくとも粒径が50μm以上のものであり、微細な懸濁物質が粒径が50μmに満たないものである請求項1又は2に記載の高分子凝集剤。」

(2b)「【0002】
例えば、製鉄工場等からの廃水には、金属粉や石炭・コークス粉や油分等の粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質(以下、粗大SSとも呼ぶ)が含まれているが、通常、これらの廃水の処理は、粗大な懸濁物質を沈降分離等の方法で予め除去した後、除去後の廃水を処理して、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質(以下、微細SSとも呼ぶ)をさらに除去処理することが行われている。」

(2c)「【0020】
本発明者らは、・・・下記の要件を満たすものであることが必要であることを見出した。具体的には、本発明の高分子凝集剤は、上記原料モノマーから誘導される共重合体の中でも、重量平均分子量が200万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.4meq/g以上であるであることが必要である。その好ましい範囲は、重量平均分子量とカチオンコロイド当量値との兼ね合いによっても異なるが、重量平均分子量が200万?500万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.4?4.8meq/gである弱カチオン?強カチオンのものを使用するとよい。」

(2d)「【0022】
本発明者らの検討によれば、上記したような共重合体を主成分とする本発明の高分子凝集剤を、例えば、製鉄工場の熱間圧延工程から大量に排出される、鉄粉等の金属や圧延油等の油分が懸濁した、粗大SSと微細SSとが共存して浮遊している状態の使用済み冷却水(廃水)に、該処理廃水に対して0.5mg/L以上、例えば、2mg/L程度と微少量添加することで、廃水中の懸濁物質が速やかに凝集沈降して、その上澄みは、目視において濁りの見られない極めて清澄なものになる。・・・
【0023】
さらに、・・・それなりの効果が得られるが、より好ましくは、例えば、上記熱間圧延工程で使用した使用済み冷却水(廃水)が、上記の「スケールピット」に至るまでの廃水が激しく流動している溝や液路に添加するとより高い効果が得られることがわかった。・・・」

(2e)「【0026】
<高分子凝集剤>
用意した3種類の廃水に、下記の本発明の高分子凝集剤(凝集剤A)を使用してその効果を確認した。具体的には、凝集剤Aは、本発明で規定する一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分として、それぞれ20モル%ずつ含む原料モノマーから誘導した、アクリルアミド/[2-(アクリロイルオキシ)エチル]ベンジルジメチルアンモニウム・クロリド/[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・クロリド共重合体(モル比=60/20/20)を主成分とするカチオン性のものを用いた。その重量平均分子量は300万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量値が2.0meq/gであるものを用いた。」

(2f)「【0030】
[凝集試験例-2]
先の凝集試験例1で使用した高分子凝集剤(凝集剤A)を合成した際に使用したと同様の原料モノマーを用い、各モノマーのモル比と重合度を変化させて、表2に示した重量平均分子量とカチオンコロイド当量の性状の異なる高分子凝集剤をそれぞれ用意した。・・・
・・・
【0033】



(ア)前記(2a)によれば、甲第2号証には「高分子凝集剤」が記載されており、前記「高分子凝集剤」は、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除くものであり、一般式(1)及び(2)を必須成分としてそれぞれ5モル%以上を含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が200万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.4meq/g以上であり、前記粗大な懸濁物質が少なくとも粒径50μm以上のものであり、微細な懸濁物質が粒径50μmに満たないものである。
また、前記(2b)?(2d)によれば、前記「高分子凝集剤」による廃水処理は、金属粉や石炭・コークス粉や油分等の粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質が含まれ、製鉄工場の熱間圧延工程から大量に排出される、粗大SSと微細SSとが共存して浮遊している状態の使用済み冷却水(廃水)が、スケールピットに至るまでの激しく流動している溝や液路の廃水に対して、前記「高分子凝集剤」を0.5mg/L以上添加することで、廃水中の懸濁物質が速やかに凝集沈降して、その上澄みを、目視において濁りの見られない極めて清澄なものとするものである。

(イ)前記(ア)によれば、甲第2号証には、
「高分子凝集剤により、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除く方法であって、
高分子凝集剤が、下記一般式(1)及び(2)を必須成分としてそれぞれ5モル%以上を含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量が200万?1,300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が0.4meq/g以上であり、
前記粗大な懸濁物質が少なくとも粒径50μm以上であり、微細な懸濁物質が粒径50μmに満たないものであり、
金属粉や石炭・コークス粉や油分等の粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質が含まれ、製鉄工場の熱間圧延工程から大量に排出される、粗大SSと微細SSとが共存して浮遊している状態の使用済み冷却水(廃水)が、スケールピットに至るまでの激しく流動している溝や液路の廃水に対して、前記高分子凝集剤を0.5mg/L以上添加することで、廃水中の懸濁物質が速やかに凝集沈降して、その上澄みを、目視において濁りの見られない極めて清澄なものとする、廃水中の懸濁物質の除去処理方法。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、CH_(3)又はC_(2)H_(5)を、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)を表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)」の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。

(1-2)対比・判断
前記1(2)(2-2)イ(エ)に示したとおり、甲第1号証には、「重量平均分子量が800万?1,100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gである」との発明特定事項、及び、「N値が5?60であり、且つ」、「L値が1.5以上であ」る、との発明特定事項を全て満足する「共重合体」が記載も示唆もされるものではなく、このことは、甲第2号証についても同様であるので、甲第1号証を主引用例にすることに代えて、甲第2号証を主引用例にしたとしても、甲第1号証を主引用例にした場合と同じく、本件発明1、3?10は、甲第2号証に記載された発明ではなく、また、甲2発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(2)申立人提出の意見書(以下、「申立人意見書」という。)について
(2-1)申立人意見書の主張の概要
(ア)本件発明1における「原料モノマーから誘導された、重量平均分子量が800万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド等量が1.2?3.4meq/gであるカチオン性又は両性の共重合体」との発明特定事項は、甲2発明に対して、令和 1年11月 7日付け取消理由通知書で認定された相違点1及び2以外の新たな相違点とはならない。

(イ)甲第2号証には、【0031】に、「共重合体」の「重量平均分子量」が200万以上であって、且つ、「カチオンコロイド当量」が0.4meq/g以上であることが記載され、甲第2号証の【0020】、【0033】の記載は、本件発明1の構成を想起する際の阻害要因にはならない。
また、甲第1号証には、【0041】に、「共重合体」の「重量平均分子量」が200万?1100万、「pH7におけるカチオンコロイド等量値」が0.2?1.9meq/gか好ましい旨の記載があるから、甲2発明に係る「懸濁物質の高分子凝集・沈降剤」において、甲第1?2号証の記載に基づいて、「重量平均分子量が800万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド等量が1.2?3.4meq/gであるカチオン性又は両性の共重合体」とすることは、設計的事項に過ぎない。

(ウ)本件特許明細書において目標としている処理水SS濃度は、甲2発明の実施例で目標としているSS濃度と同じ<10mg/lであり、本件発明1は、甲2発明に対して、特に好適な高分子凝集・沈降剤の構成を見いだしたものとはいえない。
また、本件特許明細書の【0095】には、実施例6?8の処理水のSS濃度が参考例9よりも低いことが示されており、本件発明1の「重量平均分子量が800万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド等量が1.2?3.4meq/gであるカチオン性又は両性の共重合体」との発明特定事項は、特に好適な高分子凝集・沈降剤の構成とはいえない。

(エ)本件発明1の「微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比2.0以上で併存し、その流速が0.5m/秒以上である」との発明特定事項は、製鐵所において一般的に発生する廃水を含むものであり、本件訂正明細書には、製鐵所において発生する廃水における粗大SSと微細SSとの比として本件特許明細書にて言及する質量比に含まれない範囲において、顕著な効果が得られることを示す実施例はないから、微細な懸濁物質濃度に対する粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比2.0以上で併存し、その流速が0.5m/秒以上である」との発明特定事項により顕著な効果が得られるとはいえない。

(オ)よって、本件発明1は、甲2発明及び甲第1?2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、当業者の予測を超える優れた効果を奏するものではないから、取り消されるべきものである。

(2-2)判断
(ア)甲第1?2号証には、「重量平均分子量が800万?1,100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gである」との発明特定事項、及び、「N値が5?60であり、且つ」、「L値が1.5以上であ」る、との発明特定事項を全て満足する「共重合体」は記載も示唆もされるものではないことは、前記(1)(1-2)で示したとおりである。
そして、上記からすれば、申立人意見書の主張をもって、前記(1)(1-2)で示した判断が覆ることになるとはいえない。

(イ)したがって、申立人意見書の主張はいずれも採用できない。

(3)小括
以上のとおりであるので、前記第5の2の取消理由は理由がない。

第7 採用しなかった異議申立理由についての判断
1 特許法第29条第2項(進歩性)について
(ア)本件発明1と甲1発明とは、前記相違点1-1の点で相違しており、前記相違点1-1が実質的な相違点であることは、前記第6の1(2)(2-2)ア(ウ)、イ(ア)で示したとおりである。

(イ)そして、甲第2号証には、「重量平均分子量が800万?1,100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量値が1.2?3.4meq/gである」との発明特定事項、及び、「N値が5?60であり、且つ」、「L値が1.5以上であ」る、との発明特定事項を全て満足する「共重合体」は記載も示唆もされるものではないことは、前記第6の2(1)(1-2)で示したとおりであるから、前記第6の1(2)(2-2)イ(エ)で示した理由と同様の理由により、本件発明1を、甲1発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
そして、このことは、本件発明1を引用する本件発明3?10についても同様である。

(ウ)したがって、前記第4の3(イ)の異議申立理由は理由がない。

第8 むすび
以上のとおり、異議申立書に記載された申立理由及び取消理由通知書で通知された取消理由によっては、本件発明1、3?10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、3?10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、本件発明2に係る特許に対して異議申立人がした特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水中の懸濁物質の除去処理方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中の懸濁物質の除去処理方法に関し、より詳しくは、例えば、製鐵所において大量に発生する、粒径が50μm以上の金属粉や砂や油分等の粗大な懸濁物質を含む廃水中から、有機凝集剤を利用して、これらの粗大な懸濁物質を含んだままの状態で懸濁物質を一挙に、速やかに、しかも極めて効率よく凝集沈降させ、これらを同時に除去することを達成した水中の懸濁物質の除去処理技術に関する。なお、本発明は、製鐵所の各種廃水中の懸濁物質の除去処理に有用であるので、主に、当該廃水を例にとって説明するが、これに限定されるものでなく、同様の状態にある、或いは同様の状態にした水中からの懸濁物質の除去処理にも適用可能な技術である。
【背景技術】
【0002】
例えば、製鐵所において発生する廃水としては、連続鋳造工程における直接冷却廃水、圧延工程における直接冷却廃水、高炉、転炉、電炉工程における集塵廃水、屋外原料貯蔵ヤードから発生する雨水廃水などがあるが、その量は大量である。また、これらの廃水中には、下記に述べるように、いずれも、微細な懸濁物質のみならず、鉄等の金属粉や、水砕スラグ、石炭粉・コークス粉等の粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質(以下、粗大SSと呼ぶ)が含まれている。後述するように、このような廃水から懸濁物質を除去する場合は、先ず、粗大SSを沈降分離等の方法で予め除去した後、除去後の廃水を種々の凝集剤を用いて更に処理して、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質(以下、微細SSと呼ぶ)を、凝集沈降させて除去している。
【0003】
図5に、廃水中に含有されている上記したような粗大SSと微細SSとを含む懸濁物質(SS)を除去処理する従来の方法の一例として、鋼材圧延ラインの圧延工程における直接冷却廃水の処理の概要を模式的に示した。図5に示したように、直接冷却廃水は、SSが除去処理されて処理水となった後、再び直接冷却水として循環使用されている。したがって、その処理水は、懸濁物質の少ない、より清澄なものであることが望まれ、更に、このような循環使用可能な清澄な処理水をより経済的な処理によって得ることが望まれる。以下に、図5を参照して、従来の直接冷却廃水の処理手順を説明する。先ず、圧延工程では、冷却水がスプレーノズル等から鋼材表面へ噴射されて、鋼材を冷却する。その際に使用された冷却水は、鋼材圧延ラインの下に作られた、図5中に1で示したスケールスルースと呼ばれる開放樋に流れ落ちる。これが、直接冷却廃水と呼ばれているものであり、種々の懸濁物質を含むものになる。具体的には、この廃水中には、鋼材表面から剥がれ落ちたスケールと呼ばれる50μm以上の粒径を持つ大き目の懸濁物質や、鋳造や圧延に用いられるロールの軸用潤滑油や圧延油や、これらのロールと鋼材との摩擦により生じる微細な鉄粉等が含まれており、粗大SSと微細SSとが混在したものとなっている。なお、鋼材製造ラインにおける連続鋳造工程で生じる直接冷却廃水も同様の性状のものであり、その処理も、上記と同様に行われることが多い。
【0004】
上記でスケールスルース1に流れ落ちた大量の直接冷却廃水は、図5中に3で示したスケールピットと呼ばれる槽へと激しい流れによって排水されて、ピット内に貯溜される。スケールピットは、直接冷却廃水中に存在している粒径の大きなスケール(粗大SS)の沈殿分離を主目的としたものであり、Over Flow Rateが約10m/hr以上程度の比較的小さな槽である。
【0005】
先に述べたように、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水に対しての従来の処理では、先ず、このスケールピット3において、粒径の大きな粗大SSを沈殿分離し、その後に、粗大SSを取り除いた廃水について、後段に設けた凝集沈殿設備8やろ過機9、更には電磁フィルター(不図示)等において、主に粒径50μmに満たない微細SSを除去処理することが行われている。そして、上記のようにして粗大SSと微細SSを除去後、処理水を冷却塔4などに通水することで冷却して、再び直接冷却用水として工場へ給水するのが一般的である。
【0006】
上記した従来の直接冷却廃水からの懸濁物質の除去処理方法では、懸濁物質の沈降を効率よく行うことを目的として凝集剤が使用されている。また、使用される凝集剤は、廃水の性状に応じて選択されており、各種の凝集剤を組み合わせて使用することが一般的である。例えば、鉄鋼圧延廃水の水処理方法に関する特許文献1では、鉄鋼圧延に使った水を回収してなる原水に、無機凝集剤であるポリ塩化アルミニウム(PAC)及び有機凝集剤を注入する工程を有することを前提とした上で、これらの注入量を調整することで、懸濁物質濃度を、より大幅且つ有利に低減させ得るとしている。また、特許文献2では、鉄鋼業等から生じる含油廃水を、PACで処理するにあたり、有機凝集剤であるカチオン系ディスパージョン型(共)重合体を添加し、次いで凝集沈澱処理及び脱水処理に付する方法が提案されている。また、特許文献3では、自動車工業廃水等の鉱油が混入した廃水において、特有のカチオン性有機凝集剤を添加した後、アニオン性有機凝集剤を添加し凝集させフロックを分離することが提案されている。
【0007】
更に、特許文献4では、圧延工程における直接冷却廃水の水処理方法において、無機凝集剤の硫酸バンドやPACを使用すると、冷却水中の硫酸イオンや塩素イオンが増加し、冷却水と接触する、圧延機やロール等の機器類の腐食を促進し、冷却水中に微細な酸化鉄(Fe_(2)O_(3))を発生させるという問題があり、このような酸化鉄は、凝集処理によっても十分に除去することはできないとしている。そして、その対策として、アンモニア、脂肪族第一アミン、脂肪族第二アミン又はアルキレンジアミンとエピクロルヒドリンとの重縮合物等のカチオン系有機凝集剤を用いて凝集処理し、該処理水に特有のスケール防止剤を添加することが有効であるとしている。
【0008】
また、特許文献5には、製鐵所において発生する廃水の一つである転炉排ガス集塵水の処理に関し、湿式集塵器にて湿式集塵処理して得られるダストを含む集塵水を粗粒分離器に導入して粗粒ダストを分離した後、シックナーで凝集沈殿処理する際に、湿式集塵器の出口から該粗粒分離器の間の集塵水及び/又は粗粒分離器に高分子凝集剤を添加することが提案されている。そして、上記構成とすることで、粗粒分離器での粗粒ダストの回収率を高め、転炉排ガスダストのリサイクルコストの低減、リサイクル効率の向上を図ることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-139633号公報
【特許文献2】特開2008-006382号公報
【特許文献3】特許第4072075号公報
【特許文献4】特許第3868521号公報
【特許文献5】特許第4134914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記したように、例えば、製鐵所において大量に発生する直接冷却廃水中から懸濁物質を除去する処理では、無機系や有機系の各種凝集剤から選択された複数種類の凝集剤が使用されている。製鐵所における直接冷却廃水は大量であるため、凝集剤にかかる費用も多大になる。このため、より安価で且つ少ない量で、高い凝集沈降効率を達成する凝集剤の開発が要望されている。また、従来のSSの除去処理は、凝集剤にかかる費用のみならず、下記に述べるように、設備費やその維持費がかかるという実用上の大きな課題がある。まず、従来の技術では、用いられる複数種類の凝集剤は別々に廃水に添加されることが多く、その添加地点は水処理設備内に入ってからである。図5に示した例でいえば、水処理設備における最初の処理槽である先に述べたスケールピット3内に、粗大SSの沈殿をより早める目的で凝集剤を添加することもあるが、この場合の凝集剤には、通常、無機凝集剤が用いられている。一方、有機凝集剤は、微細SSを凝集させて大きなフロックとし凝集沈降するために用いられており、図5に示した例では、スケールピット3内で粗大SSを沈殿した後の廃水中の微細SSを凝集沈殿させる目的で、使用されている。このため、図5に示した例では、有機凝集剤は、凝集沈殿設備を構成する広大な沈殿池8に添加されている。この場合に、撹拌機を用いて、直接冷却廃水等の被処理水と凝集剤との混合を促進させることも行われている。また、混合を促進させる目的で、沈殿池内に撹拌機を設置してもよいが、沈殿池が広大な場合には、沈殿池の前段に撹拌槽を設け、該撹拌槽で予め被処理水と凝集剤とを混合させた後、沈殿池に導入するといったことも行われている。このため、使用する凝集剤にかかる費用に加えて、広大な沈澱池や、撹拌機や撹拌槽にかかる設備費及び維持費が別途必要となっている。
【0011】
また、従来の処理方法では、粗大SSを取り除いた廃水に対して凝集沈殿設備で処理を行っており、沈殿池や撹拌槽に流入する廃水中のSSは、粒径50μmに満たない微細SSである。このため、有機凝集剤を用いてフロックとしたとしても、その沈降速度は、大きくても2?3m/hr程度で、迅速なものではない。したがって、従来の処理方法では、この微細SSからなるフロックの沈降速度を下回るOver Flow Rateを持つ大きさの広大な沈殿池が必要となる。このことは、処理設備の規模が極めて大きくなることを意味している。
【0012】
このため、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水のような、鉄を主成分とするSSを含む廃水の場合は、大きな沈殿池の代わりに、電磁フィルターやろ過機を懸濁物質の除去に用いることもある。図5に例示した設備では、沈殿池8を有する凝集沈殿設備と、ろ過機9を併用している。しかし、電磁フィルターやろ過機は、設備費がかかることに加えて、その維持管理が煩雑で高額である上に、これらに捕捉された懸濁物質を定期的に排出することを目的とした逆流洗浄が必須になる。この逆流洗浄の廃水の処理には、更に設備も薬品も必要となる。
【0013】
また、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水における懸濁物質の除去では、通常、無機凝集剤のみ、または、無機凝集剤と有機凝集剤とを併用するため、先に述べたように、無機凝集剤に由来するCl^(-)やSO_(4)^(2-)といった腐食性陰イオンが処理水に混入することが起こる。一般的に、これらの処理水は、冷却された後、再び冷却水として工場へ給水されるため、上記した腐食性陰イオンの濃度が、冷却塔等で水分が蒸発することで上昇すると、循環系統の配管やスプレーノズルの腐食を促進する恐れがある。
【0014】
また、こうした直接冷却廃水における懸濁物質の除去処理では、油分と微細な鉄粉等の懸濁物質とが強固に吸着し合った高油分スラッジが沈殿池において大量に発生する。この高油分スラッジは、産業廃棄物として廃棄処理されるか、製鐵原料としてリサイクルされており、殆どの場合、濃縮、脱水する工程が必要となる。しかし、特開2002-275549号公報にも記載されているように、高油分スラッジは、濃縮不良や脱水不良が起こり易い上に、燃焼性が非常に悪いため、含まれる油分が焼結機内で充分に燃焼できずに油蒸気が発生し、排ガスの集塵装置内に蓄積されて自然発火や爆発を引き起こすことが懸念される。
【0015】
上記した高油分スラッジにおける濃縮不良や脱水不良といった課題に対する解決策としては、油分の含有量が少ない他のスラッジと混合させた後に濃縮脱水処理する方法や、焼却処理する方法がある。しかし、これらの方法は、高油分スラッジに混合させるための低油分スラッジの量に限りがある場合や、焼却炉の余力が大きくない場合は、採用することができない。このため、高油分スラッジの濃縮不良や脱水不良における問題に対する根本的な解決策とはなっていない。したがって、従来の方法で大量に発生する高油分スラッジにおける課題の根本的な解決策を見出すことができれば、極めて有用である。
【0016】
また、前記した特許文献5に記載の技術は、上記に挙げた技術とは処理対象とする廃水が異なり、転炉排ガス集塵水の処理に関するが、その目的は、微粒を凝集沈澱処理する前に粗粒分離器で行う、粗粒ダストの分離の回収率を高めることである。この方法によっても、その後にシックナーで凝集沈殿処理して粗粒分離器で、分離できない微粒を処理することを必須としており、粗粒分離器で分離した粗粒ダストの回収効率を高める以上の効果を得てはいない。更に、その向上の程度は、粗粒分離器に高分子凝集剤を使用しない場合に比べて1.1?1.3倍であるとされており、その向上効果は十分とは言い難い。
【0017】
上記したように、上記の技術を含め、従来技術では、粗大SSと微細SSとが混在している廃水等に対しては、粗大SSを除去後に微細SSを処理しており、従来の技術常識は、粗大SSと微細SSとを一括して良好な状態に処理することはできないとしたものであるといえ、このような技術常識に対して、粗大SSと微細SSとを同時に一括して良好な状態に処理でき、しかも迅速に除去処理できる技術が開発されれば、極めて有用である。
【0018】
上記のような状況に対し、本発明者らは、特に、製鐵所において発生するような多様な懸濁物質を含む廃水中の懸濁物質を除去処理する方法において、下記の効果が得られ、しかも、少なくとも廃水中に粗大SSと微細SSとが混在(併存)し、更には油分を含むものであったとしても、これらを、同時に一括して、スケールピット等のOver Flow Rateが10m/hr以上となる比較的小さな水槽で、分離、除去処理することを可能にする技術が提供できれば、極めて有用であるとの認識をもった。例えば、製鐵所において、循環使用されることが多い、連続鋳造工程や圧延工程から発生する直接冷却廃水等の懸濁物質を含有する各種廃水に対して、(1)簡略化された設備で処理して迅速に清澄な処理水を得ることができ、(2)維持管理費が低く、(3)できれば処理水への悪影響が懸念される無機凝集剤を用いることなく、(4)廃水中に、金属やコークス等の懸濁物質に加えて油分が懸濁していたとしても、処理によってリサイクル困難なスラッジを発生せず、リサイクルに適した凝集・沈殿物になる、経済的で簡便な廃水中の懸濁物質の除去方法が望まれる。
【0019】
したがって、本発明の目的は、従来技術に比べて凝集剤の使用量の増大を伴うことなく、無機凝集剤との併用を必ずしも必要とせず、粗大SSと微細SSが混在(併存)している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって迅速に且つ容易に取り除くことができ、しかも、その処理水が、濁りのない清澄な性状のものであり、凝集沈降した沈殿物の処理が容易となる、これまでの、水中のSSの除去処理方法における技術常識を覆すことができる新たな技術を提供することにある。本発明の実用上の目的は、例えば、製鐵所において発生する、粗大SSと微細SSとが併存している各種廃水中の懸濁物質を分離除去する際に下記の点が達成できる、工業上、極めて有用な廃水中の懸濁物質の除去処理方法を提供することにある。すなわち、本発明は、懸濁物質の除去処理に際し、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させた場合に、別々に処理していた従来の処理方法で達成していたのと同等以上の清澄な水質の処理水を迅速に得ることが可能で、同一処理することで、凝集剤の総使用量の低減、設備の大幅な簡略化によって設備費及び維持管理費の縮小、更に、発生する凝集沈降した沈殿物のリサイクルにかかる費用の低減、無機凝集剤を使用することに起因して生じるおそれのある配管の腐食の問題の低減もできる新たな技術の提供を目的とする。更に、本発明は、上記で例示した製鐵所の各種廃水処理に限定されず、例えば、上水処理においての適用が予想される、水中から、粗大SSを含んだままの状態で懸濁物質を一挙に、速やかに効率よく、凝集・沈降・除去処理できる画期的な技術の開発を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、凝集剤を用い、廃水や取水等の中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための水中の懸濁物質の除去処理方法であって、少なくとも前記水中に、粗大な懸濁物質が、250mg/L以上、80000mg/L以下存在し、且つ、微細な懸濁物質濃度に対する前記粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比で2.0以上である、粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが併存する、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態である水の中に、有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で凝集沈降させ、これらの懸濁物質を同時に除去することを特徴とする水中の懸濁物質の除去処理方法を提供する。その好ましい形態としては、前記水中における粗大な懸濁物質の存在量が、2000mg/L以上、20000mg/L以下であることが挙げられる。
【0021】
また、本発明は、廃水や取水等の中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための水中の懸濁物質の除去処理方法であって、上記凝集剤として少なくとも1種の有機凝集剤を用い、該有機凝集剤が、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導されたカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量(Mw)に、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)の2乗を乗じた値を、更に100万で除した値をNとした場合に、N値が5?60であり、少なくとも、粗大SSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大SSと前記微細SSとを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたことを特徴とする水中の懸濁物質の除去処理方法を提供する。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立にCH_(3)又はC_(2)H_(5)を表し、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)のいずれかを表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)
【0022】
上記した本発明の水中の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、更に、重量平均分子量が200万?1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が0.7?4.1meq/gであることが挙げられる。
【0023】
また、本発明は、凝集剤を用い、廃水や取水等の中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための水中の懸濁物質の除去処理方法であって、上記凝集剤として少なくとも1種の有機凝集剤を用い、該有機凝集剤が、上記一般式(1)、上記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導されたカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量(Mw)に、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)の2乗を乗じた値を、更に100万で除した値をNとした場合に、N値が5?60であり、且つ、該共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値をLとした場合に、L値が1.5以上であり、少なくとも、粗大SSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大SSと前記微細SSとを同一の処理で凝集沈降させ、これらを同時に除去できるようにしたことを特徴とする水中の懸濁物質の除去処理方法を提供する。
【0024】
上記した本発明の水中の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、更に、重量平均分子量が500万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.2?3.4meq/gであることが挙げられる。
【0025】
また、上記したいずれかの本発明の水中の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、前記有機凝集剤を、粗大SSと微細SSとが併存している、流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態である水中に添加することで、粗大SSと微細SSとが併存し、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることが挙げられる。
【0026】
本発明の水中の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、下記に挙げる実際の廃水に対する種々の適用方法が挙げられる。前記水が、製鐵所において発生する廃水であり、前記有機凝集剤を廃水に添加する位置が、粗大SSと微細SSとが併存している廃水が発生する地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点であること;前記水が、製鐵所において発生する廃水であり、前記粗大SSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水に予め前記有機凝集剤を添加しておき、更にこの水を使用することで、粗大SSと微細SSとが併存し、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせること;前記水が、製鐵所において発生する廃水であり、前記粗大SSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水が、前記粗大SSと前記微細SSとを、前記有機凝集剤の存在下、同一の処理で凝集沈降させて、これらを同時に除去処理した後に得られる処理水であり、該処理水を循環使用する系で、前記予め行う有機凝集剤の添加を、その使用基準を満たすまでに用水の処理がなされた地点から、該用水を使用する給水地点に至るまでのいずれかの地点で行うこと;前記水が、水中に粗大SSをほとんど含まない水に予め粗大SSを添加して、該粗大SSの存在量が250mg/L以上、80000mg/L以下となるようにして、粗大SSと微細SSとが併存する状態とした水であること;が挙げられる。
【0027】
また、上記したいずれかの本発明の水中の懸濁物質の除去処理方法の好ましい形態としては、前記粗大SSが、粒径が50μm以上のものであり、前記微細SSが、粒径が50μmに満たないものであり、且つ、これらの物質の併存状態が、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)が、その質量比で2.0以上であること;前記乱流状態の水のレイノルズ数が、8000以上であること;前記粗大SSと前記微細SSが、金属粉、水砕スラグ、小石、砂、泥、不溶性有機物、石炭粉又はコークス粉の少なくともいずれかであり、場合によっては更にこれらいずれかの物質と油分とが併存していること;前記粗大SSと前記微細SSとを同一の処理で凝集沈降させた後に、更に凝集沈降した沈殿物を除去することが挙げられる。
【0028】
本発明の水中の懸濁物質の除去処理方法によって処理する廃水は、粗大SSと微細SSとが併存した状態にあるものであれば、いずれのものも対象とすることができる。例えば、大量処理が必要となる下記に挙げるような廃水や取水を処理対象とした場合に、本発明によってもたらされる顕著な効果の工業的価値は、多大なものになる。その理由は、本発明は、粗大SSと微細SSとが併存する水から、同一の処理で凝集沈降させ、これらの懸濁物質を同時に除去するものであるが、その際に、粗大SSと微細SSと有機凝集剤とを、本発明で規定する「粗大SSと微細SSとが併存し、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態である水の中に、有機凝集剤が共存する状態を生じさせる」必要があるが、下記に挙げる廃水は、特別な設備や装置を設けることなく、本発明で規定する要件を満たす状態に容易になるので、この状態を巧みに利用することで、本発明の顕著な効果を容易に得ることができるからである。
【0029】
例えば、製鐵所の連続鋳造工程における鋼材の直接冷却廃水、製鐵所の圧延工程における鋼材の直接冷却廃水、製鐵所の高炉、転炉、電炉工程における集塵廃水、製鐵所の屋外原料貯蔵ヤードから発生する雨水廃水、製鐵所の高炉滓から水砕を得る際に発生する冷却廃水等の製鐵所における廃水は、粗大SSと微細SSとが併存(混在)しており、これらの廃水の流路には、本発明で規定する流動状態になる箇所が多く存在し、本発明の顕著な効果は、このような地点で、有機凝集剤を共存させるだけで、極めて容易に得られる。更に、処理水は、そのまま冷却水に再利用できる程度に極めて清澄なものになるので、循環使用される冷却廃水の処理に極めて好適である。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、例えば、製鐵所等において発生する、粗大SSと微細SSとが併存している各種廃水中の懸濁物質を分離除去する際に、例えば、Over Flow Rateが10m/hr以上の比較的小さな槽のみで、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、従来技術で処理した場合と比べてSSをより速やかに沈降させることができ、しかも、得られる処理水が、これらの懸濁物質を別々に処理していた従来の処理方法で達成していたのと同等以上の清澄な水質のものになる、工業上、極めて有用な廃水中の懸濁物質の除去処理方法が提供される。すなわち、本発明の処理プロセスを採用することで、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、しかも従来技術と比べて明らかに迅速に凝集沈降させることが可能になったことで、凝集剤の総使用量を従来よりも低減することが可能になり、更に設備を大幅に簡略化することもできるので、設備費及び維持管理費を縮小できる。更に、これらの効果に加えて、発生する凝集沈降した凝集・沈殿物は、水離れのよい取り扱い易いもので、リサイクルに適しており、沈殿物の処理やリサイクルにかかる費用の低減が可能になり、また、無機凝集剤を使用することに起因して処理水に混入される配管の腐食を促進する物質の低減をも達成できる。本発明の処理プロセスによって得られる処理水は、従来の処理方法で達成していたのと同等以上の清澄な水質を示すので、そのまま、例えば、冷却水として循環使用することが可能であるといった、工業上、極めて有用な利点もある。
【0031】
上記効果は、製鐵所における廃水処理を例にとって説明したが、本発明の活用例は、これに限るものでなく、粗大SSと微細SSとが併存した状態の水から、これらを取り除くことを、より経済的に行う要請のある分野への適用も期待できる。例えば、図8に示したように、上水処理工程では、小石や砂や泥や不溶性有機物等が含まれる河川からの取水に対して、沈砂池で粗大な砂を除いた後、PAC等の無機凝集剤や、必要に応じて有機凝集剤を用いて、撹拌槽、フロック形成池、沈殿池、ろ過池等の設備を駆使した処理を行って、粗大SSと微細SSを除去することが行われており、上記で説明した製鐵所の廃水中からの懸濁物質の分離除去の場合と同様の課題がある。この際に、本発明の水中の懸濁物質の除去処理方法を適用することで、粗大SSと微細SSとを一挙に凝集・沈降・凝結・沈殿させることが可能になるので、本発明の効果を得ることができる。
【0032】
また、本発明の顕著な効果は、水中に粗大SSをほとんど含まない水を対象とする場合にも、このような水に予め砂等を添加して、粗大SSと微細SSとの存在量を本発明で規定する状態とし、本発明で規定する流動状態とすることで、当然のことながら本発明によって達成される種々の効果を得ることができる。なお、原水に砂等を添加して処理する技術として、「アクティフロ(登録商標)」と呼ばれる処理方法が知られているが、本発明の方法は、これとは明確に異なる技術である。すなわち、この処理技術では、ポリ塩化アルミニウム(PAC)等の無機凝集剤を廃水に添加することでフロックを生成した混合物中に、沈澱槽のスラッジを液体サイクロンで分級した「マイクロサンド」等と呼ばれる砂を混合し、その後に有機凝集剤を注入し、成長させたフロックを砂に吸着させることで沈降さており、少なくとも無機凝集剤を必須とする処理である点のみでも本発明の技術とは全く異なる。また、後述するが、この方法によるSSの除去と比べても、本発明の処理方法は、凝集剤の使用量の点、処理工程及び設備を簡略化できる点、得られる処理水の清澄さの点等で、格段に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の懸濁物質の除去処理方法を、製鐵所の連続鋳造工程の直接冷却廃水処理に適用した場合の好適な一例を示す模式的なフロー図である。
【図2】本発明の懸濁物質の除去処理方法を、製鐵所の連続鋳造工程の直接冷却廃水処理に適用した場合の別の好適な一例を示す模式的なフロー図(実施例1)である。
【図3】本発明の懸濁物質の除去処理方法を、製鐵所の熱間圧延工程の直接冷却廃水処理に適用した場合の別の好適な一例を示す模式的なフロー図(実施例4及び5)である。
【図4】本発明の懸濁物質の除去処理方法に対する比較例(熱間圧延工程)を示す模式的なフロー図である。
【図5】従来の製鐵所の熱間圧延工程の直接冷却廃水に対する懸濁物質の除去処理方法の模式的なフロー図である。
【図6】本発明の懸濁物質の除去処理方法に好適に用いられる、本発明で規定するN値を満足する有機凝集剤の範囲を示す図である。
【図7】懸濁物質の除去処理方法に好適に用いられる有機凝集剤のL値と、有機凝集剤の添加量と、処理する廃水中の粗大SSの存在量が及ぼす処理水のSS濃度への影響を示したグラフである。
【図8】従来の上水処理を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。本発明者らは、先に述べた従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、無機凝集剤の使用を停止する一方で、有機凝集剤を添加した際に、或いは、有機凝集剤の添加が行われた以降に、該有機凝集剤と、粗大SSと微細SSとが、流速が0.5m/秒以上と速く、且つ、乱流状態となる中に共存する状態を生じさせるという極めて単純な方法によって、廃水中に存在している、或いは、廃水中に存在することとなる、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、極めて効率よく迅速に凝集沈降させることができる、という従来技術の常識を覆す驚くべき事実を見出した。この結果、上記した本発明の処理方法によれば、従来の懸濁物質の除去処理方法と比較して、下記に挙げる種々の効果を得ることができる。
【0035】
まず、従来、粗大SSの沈降の促進に用いていた無機凝集剤の使用の必要がなく、また、粗大SSの処理の後段で微細SSを取り除く必要がなくなるので、そのための設備が不要となり、その結果、従来処理の場合よりも、凝集・沈殿処理にかかる設備費及び維持管理費を縮小できる、という画期的な効果が得られる。更に、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、これらのSSを、極めて迅速に凝集・沈降・凝結・沈殿させることができることに加え、その凝集・沈殿物は、従来の処理で生じていた汚泥とは全く異なり、水離れがよく脱水性が良好で、油分の含有率も低いためリサイクルに適しており、その後の処理が極めて容易である。その結果、汚泥状の沈殿物等に対する従来の二次処理に必要とされていた設備費及び維持管理費が大幅に削減できるという画期的な効果が得られる。更に、得られる処理水は、無機凝集剤の使用に起因して混入する塩素イオンや硫酸イオンの問題がないことに加え、従来の懸濁物質の除去処理方法で得られた処理水と同等以上の清澄な水質で、懸濁物質の残留が極めて少ないものであり、後段で、更に微細SSを取り除くことなく、良好な冷却水としてそのまま再利用できるので、冷却システムの効率化が図られる画期的なものである。
【0036】
上記した効果は、水中に粗大SSをほとんど含まない水を対象とした場合にも、該水に粗大SSとして機能し得る砂等を予め添加して、粗大SSと微細SSとが併存した状態とし、本発明で規定する流動状態とする、といった簡便な手段を追加するだけで、当然のことながら同様に得ることができる。この場合は、粗大SSを添加する処理が必要になるが、それを上回る効果が得られる。具体的には、粗大SSを添加して、粗大SSが250mg/L以上、80000mg/L以下存在し、且つ、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)が質量比で2.0以上である状態にし、この水を、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に特定の有機凝集剤が共存する状態を生じさせるといった簡便な方法で、極めて迅速に、粗大SSと微細SSとを凝集・沈降・凝結・沈殿させることができ、先に述べた良好な状態の処理水と凝集・沈殿物を得ることができるので、その実用的価値は極めて大きい。
【0037】
本発明の特徴は、水中の懸濁物質の除去処理に、有機凝集剤、好ましくはカチオン性又は両性の有機凝集剤を用いた点と、該有機凝集剤によって、「粗大SSと微細SSとが併存する、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態である水の中に有機凝集剤が共存する状態を生じさせる」こととした点にあり、本発明では、これらの相乗効果によって、従来の方法では行われておらず、達成されていなかった「粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集・沈降・凝結・沈殿させ、これらの懸濁物質を同時に除去する」という画期的な効果を得た。本発明者らの検討によれば、本発明の効果をより安定して、高いレベルで得るためには、下記の要件を満たすように、処理条件を設計することが必要となる。
【0038】
まず、本発明の顕著な効果を得るためには、従来方法で行っていた、粗大SSを除去後の微細SSに対して有機凝集剤を利用して、微細SSを凝集沈降させるといった方法でなく、粗大SSが存在している状態でSSの凝集・沈殿を行う必要がある。すなわち、先に述べたように、例えば、製鐵所において発生する廃水では、通常、粒径が50μm以上のものを粗大SS、粒径が50μmに満たないものを微細SSとして扱い、粗大SSを取り除いた廃水に対して後段で、微細SSを、有機凝集剤等を利用して凝集沈殿等の処理をしていたが、本発明は、この技術常識を覆すものである。本発明者らの検討によれば、本発明の「粗大SSと微細SSが共存している水中から、同一の処理でこれらのSSを一緒に取り除く」効果は、処理する水中の粗大SSの存在量が、250mg/L以上あれば得ることができる。SSの凝集・沈降・凝結・沈殿の速やかさや、沈殿物の取扱い易さ等を考慮すると、処理する水中における粗大SSの存在量が、250mg/L以上、80000mg/L以下、より好ましくは2000?20000mg/L程度である場合に、より安定して良好な効果を得ることができる。この点についての試験結果は後述する。
【0039】
更に、本発明者らの検討によれば、処理対象の廃水等における水中の粗大SSと微細SSとの存在量は、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)が、その質量比で2.0以上である場合に、少ない凝集剤の量で、より安定して顕著な効果が得られることが確認された。本発明者らの検討によれば、上記した(粗/微)の比は、むしろ大きい場合に良好な処理ができ、例えば、この比が100程度であっても問題なく処理できる。本発明者らが確認したところ、製鐵所において発生する廃水の、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)は、懸濁物質の比重にもよるが、例えば、その大半が、5?100程度或いは10?70程度であった。本発明者らの検討によれば、これらのいずれの廃水に対しても、本発明の懸濁物質の除去処理方法を適用することで、廃水中の異なる大きさの懸濁物質を、同一の処理で、例えば、Over Flow Rateが10m/hr以上の比較的小さな槽のみで、極めて迅速に沈降させることができ、その処理水は、従来の処理では、一段では到底達成することができなかった清澄(透明)なものとなった。更に、この速やかな凝集・沈降・凝結によって、脱水性及び取扱い性に優れる沈殿物を得ることができた。
【0040】
本発明の特徴は、本発明で規定する粗大SSと微細SSとの併存状態に加えて、「粗大SSと微細SSとが併存する、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態である水の中に有機凝集剤が共存する状態を生じさせた」点にある。この本発明で規定する「流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態」が意味するところは、有機凝集剤の使用状態を、従来の撹拌しながらの緩やかな流動状態の中で処理するのでなく、激しい流動状態の中に、粗大SSと微細SSと有機凝集剤とを共存させることを意味しており、このような状態としたことで、初めて本発明の顕著な効果が得られる。本発明では、流速が0.5m/秒以上の速さで水が流動している状態であればよいが、より好ましくは、流速が1.0m/秒以上の速さで流動している状態となることが好ましい。更に、その流動状態が、乱流状態であることを要するが、より具体的には、水のレイノルズ数が8000以上、更に好ましくは、水のレイノルズ数が10000以上である状態となっている水の中に、粗大SSと微細SSとが併存し、更に、有機凝集剤が共存する状態を生じさせればよい。本発明の処理方法が必須とする上記構成は、従来の懸濁物の処理方法の場合のように撹拌設備等を別に設ける必要がなく、下記に述べるように、工場内で生じている廃水の激しい流れを懸濁物質の除去処理に巧みに利用することで達成できるので、その設備的なメリットは極めて大きい。
【0041】
本発明者らは、上記した構成によって優れた効果が得られた理由について、下記のように考えている。すなわち、本発明では、水中に粗大SSが少なくとも250mg/L以上存在し、更に、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)が、その質量比で2.0以上である状態の、粗大SSと微細SSとが併存する水に、その流速が0.5m/秒以上で、乱流状態である状態で、有機凝集剤を共存させる構成とした結果、まず、有機凝集剤が、粗大SSに対して高い凝集効果、更に強い凝結効果を示し、この速やかに生じる粗大SSの凝集・凝結の際に、共存している微細SSが、この凝集・凝結された粗大SS内に取り込まれ、その結果、本発明の従来にない優れた凝集沈降効果が得られたものと考えている。特に、有機凝集剤を共存させた際に、本発明で規定するように処理する水が激しく流動している場合は、微細SSが水中内で活発に動いているので、凝集剤によって速やかに凝集・凝結していく粗大SS内に取り込まれやすくなった結果、顕著な効果が得られたものと推論している。このため、本発明の処理方法で得られる凝集・凝結・沈降した沈殿物は、従来の、粗大SSの除去後の微細SSに対して有機凝集剤を添加して、沈殿槽内に沈降させることで得られた汚泥とは全く異なり、粗大で強度のある、掴み取ることができる、水離れのよい状態のものになったと考えられる。この結果、本発明の処理方法で得られる、粗大SSと微細SSとを凝集・凝結・沈降した沈殿物は、その後の処理が極めて容易になり、従来、脱水等の、沈殿物の二次処理にかかっていたコストを大幅に低減できる。
【0042】
上記したように、本発明の効果は、少なくとも粗大SSが250mg/L以上で存在し、粗大SSと微細SSが併存する状態の水を同一処理する場合に、「流速が0.5m/秒以上で、乱流状態である水の中に有機凝集剤が共存する状態を生じさせる」ことで得られるが、本発明者らの更なる検討によれば、有機凝集剤として、下記の特有のカチオン性又は両性の共重合体を主成分とする有機凝集剤を用いた場合に、少ない使用量で、安定して、より高い本発明の効果が得られる。具体的には、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量(Mw)に、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)の2乗を乗じた値を、更に100万で除した値をNとした場合に、N値が5?60である共重合体を有機凝集剤として用いることがより好ましい。すなわち、N=(Mw)×(CE)^(2)÷100万が5?60であるカチオン性又は両性の共重合体を、有機凝集剤として用いることが好ましい。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立にCH_(3)又はC_(2)H_(5)を表し、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)のいずれかを表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)
【0043】
更に、本発明者らの検討によれば、上記したN値の範囲内にある共重合体の中でも、特に、下記のL値を満足する共重合体を有機凝集剤として用いれば、より効果的に、且つ、安定して本発明の顕著な効果が得られ、より実用に適したものであることを見出した。具体的には、上記N値を満足することに加えて、上記の共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値をLとした場合に、L値が1.5以上である有機凝集剤を使用した場合により安定した効果が得られる。すなわち、本発明のより顕著な効果は、L=(Mw)÷(CE)÷100万の値が1.5以上であるカチオン性又は両性の共重合体からなる有機凝集剤を使用した場合に得ることができる。上記したように、L値によって特定される有機凝集剤の範囲は、N値によって特定される有機凝集剤の範囲に含まれるが、L値をも満足する有機凝集剤を利用することで、より安定して確実に本発明の効果を実現させることができる。これらの詳細については、後述する。
【0044】
本発明で規定する上記した水の状態を生じさせる方法としては、例えば、下記で説明する(A)のような状態の廃水中や取水中に、有機凝集剤を添加する方法や、下記で説明する(B)の、粗大SSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水に、予め上記した特有の有機凝集剤を添加する方法が挙げられる。
【0045】
また、水中に粗大SSをほとんど含まない水である場合に、該水に、粗大SSとして機能し得る砂等を予め添加して、粗大SSと微細SSとが併存した状態となるようにした水に対し、本発明で規定する「流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、有機凝集剤が共存する状態を生じさせる方法」である(C)の形態によっても本発明の顕著な効果は得られる。先に述べたように、本発明では、粗大SSと微細SSとが併存した状態の水に、更に「粗大SSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、カチオン性又は両性の有機凝集剤が共存する状態を生じさせる」ことが重要となるので、(C)の形態では、上記観点から、状況に合わせて、より容易に且つ確実に上記した状態になるように、水中に粗大SSをほとんど含まない水に予め砂等を添加する場所やタイミングを決定するとよい。このように構成することで、水中に粗大SSをほとんど含まない水に対しても、本発明の方法による効果的なSSの除去処理が可能になる。
【0046】
(A)有機凝集剤を、粗大SSと微細SSとが併存している、流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態の水中に添加する。その場合における有機凝集剤の好ましい添加の位置としては、粗大SSと微細SSとが併存している廃水等が発生する地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点が挙げられる。また、上水処理設備における有機凝集剤の好適な添加位置としては、粗大SSと微細SSとが併存している水を水処理設備に導入するための導入路内における流の強い地点や、水処理設備内への取水口等の地点が挙げられる。
(B)製鐵所の廃水に対しては、粗大SSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水に予め前記有機凝集剤を添加しておき、更にこの水を使用することで、粗大SSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記有機凝集剤が共存する状態を生じさせることができる。その場合における有機凝集剤の添加の位置の一例としては、粗大SSと微細SSとが併存した廃水になる前の用水が、前記粗大SSと微細SSとを、前記有機凝集剤の存在下、同一の処理で凝集沈降させて、これらを同時に除去処理した後に得られる処理水であり、この処理水を循環使用する系において、前記有機凝集剤の添加を、循環使用できる基準を満たすまでに用水の処理がなされた地点から、該用水を使用する給水地点に至るまでのいずれかの地点で行うことが挙げられる。
【0047】
上記に挙げた(A)及び(B)の方法について、製鐵所の連続鋳造工程や圧延工程において発生する直接冷却廃水を例にとって、より具体的に説明すれば、上記(A)でいう「粗大SSと微細SSとが併存している廃水の発生地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点」とは、以下の地点を含むものである。先ず、冷却水がスプレーノズル等から鋼材表面へ噴射されて、鋼材を冷却した時点で、冷却水は直接冷却廃水となるので、この地点が「廃水の発生地点」である。また、「廃水の発生地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点」は、鋼材を冷却後、直接冷却廃水となってスケールスルースと呼ばれる開放樋に流れ落ちて、この開放樋を流れて、水処理設備であるスケールピットに至るので、この間の一連の地点とその近傍の地点を意味している。
【0048】
上記したことから、本発明において、カチオン性又は両性の有機凝集剤の添加は、粗大SSと微細SSとが併存している廃水となっているスケールスルースに流れ落ちる地点で行っても、スケールスルースのいずれかの地点で行っても、スケールピットに排水される直前の激しい流れの中に添加させても、スケールピット入口付近に添加しても、スケールピットポンプのサクション付近に添加してもよい。
【0049】
また、上記(B)でいう「循環使用できる基準を満たすまでに用水の処理がなされた地点から、該用水の給水地点に至るまでのいずれかの地点」とは、スケールピット以降、沈殿池、ろ過機、電磁フィルター等の懸濁物質の除去設備の出口地点(すなわち処理水の排出口)から、冷却塔を通じて、上記した廃水の発生地点まで、及び、スケールピット下流側からスケールスルースへと循環流を生じさせるスケールピットポンプのサクション近傍から、先に説明した廃水の発生地点までを意味している。
【0050】
本発明者らは、検討する過程で、カチオン性又は両性の有機凝集剤を用い、該有機凝集剤が、粗大SSと微細SSとが併存し、水と共に激しく流動している状態の中に共存する状態を生じさせると、高い効果が得られるとの知見を得た。より具体的には、カチオン性又は両性の有機凝集剤を、粗大SS及び微細SSと激しい混合状態で共存させた場合に、有機凝集剤の凝集・凝結・沈降効果がより顕著に発揮され、粗大SSと微細SSが同一の処理で、従来技術では達成できていない速度で速やかに凝集・沈降して、その上澄み液が従来にない清澄なものとなることを見出した。更に、これらが共存した状態で、激しく流動している時間がある程度確保された方がより高い効果が得られることと、添加作業の容易性から、例えば、図1中に2で示したように、スケールスルースのスケールピット3からできるだけ遠い地点で有機凝集剤を添加することが好ましいこともわかった。このように構成すれば、例えば、直接冷却廃水がスケールスルースを流れていくいずれの地点でも、有機凝集剤と粗大SSと微細SSとが激しい混合状態となる。その結果、驚くべきことに、スケールピット3に排出された時点で、直接冷却廃水中の粗大SSと微細SSとを含む懸濁物質は、凝集・凝結中である、或いは、既に凝集・凝結しているため、沈殿物と清澄な処理水とに速やかに分離する。また、例えば、図1に例示したような、処理水を冷却水として循環使用する系において、スケールピット3からできるだけ遠い地点として、例えば、先に説明した廃水の発生地点の上流側の、得られた処理水を用水に使用することとなる給水地点に至るまでを選択し、廃水になる前の用水に有機凝集剤を添加することも有効である。勿論、処理水を循環使用する系でなくても、用水に予め有機凝集剤を添加し、当該用水を使用することで、本発明で規定する「粗大SSと微細SSとが併存し、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に有機凝集剤が共存する状態を生じさせる」としたものであってもよい。
【0051】
本発明の処理方法では、先に述べたように、下記一般式(1)、(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマー(以下、特定の原料モノマーと呼ぶ)から誘導されるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量(Mw)と、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)を用いて規定されるN値を満足する、或いは、N値及びL値を満足する有機凝集剤を用いることで、より安定したより高い効果を得ることができる。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立にCH_(3)又はC_(2)H_(5)を表し、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)のいずれかを表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)
【0052】
本発明に特に好適な有機凝集剤として用いることのできるカチオン性又は両性の共重合体は、上記特定の原料モノマーから誘導されるが、その際に、本発明で規定する、N値、或いは、N値及びL値の要件を満たすものとなるようにモノマー組成を設計することで得られる。具体的な合成方法としては、カチオン性の共重合体については、先に挙げた特許文献4に記載の合成方法が利用できる。また、両性の共重合体は、例えば、特許第3352835号公報に記載されているように、上記式(1)及び/又は(2)で表されるカチオン性モノマーに、その他のモノマーとしてイタコン酸やアクリル酸等のアニオン性モノマーを適宜混合して原料モノマーとすることで、同様の方法で得ることができる。
【0053】
上記式(1)で示されるモノマーの代表的なものとしては、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩酸塩等が挙げられる。また、式(2)で示されるモノマーの代表例としては、アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドが挙げられる。これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0054】
本発明者らは、上記したような原料モノマーから得られる有機凝集剤について、本発明の目的の「粗大SSと微細SSとが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除くことを実現する」という観点から詳細に検討した。その結果、より高レベルで安定して上記の目的を達成させるためには、前記した特定の原料モノマーから誘導されるカチオン性又は両性の共重合体が、下記の要件を満たす場合に、本発明の顕著な効果が、より高レベルで達成されることを見出した。本発明者らは、検討の過程で最初に、該共重合体の重量平均分子量が200万?1300万であり、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が0.4meq/g以上である場合に、本発明が目的とする高い、凝集・沈降・沈殿性が得られることを知見した。そして、更に検討していく過程で、(1)カチオンコロイド当量が小さい場合は、分子量が大きい共重合体の方が、上記した効果が大きい傾向にあり、(2)カチオンコロイド当量が大きい場合は、分子量が小さい共重合体の方が、上記した効果が大きい傾向があることがわかった。
【0055】
本発明者らは、「粗大SSと微細SSとが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって取り除く」ことが達成されることによる技術的な効果が極めて大きいことから、更に工業的価値を高めるべく、使用する有機凝集剤について、より詳細な検討を行った。その結果、上記原料モノマーから誘導される共重合体の中でも、該共重合体の重量平均分子量(Mw)と、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)によって規定されるN値、或いは、N値及びL値が特定の範囲内のものを有機凝集剤として用いることで、より高い効果が得られることがわかった。具体的には、N=(Mw)×(CE)^(2)÷100万が5?60である有機凝集剤、更に好適には、N値を満足し、且つ、L=(Mw)÷(CE)÷100万で求められるL値が1.5以上である有機凝集剤の場合に、より優れた効果が得られる。なお、本発明に使用するカチオンコロイド当量(CE)は、コロイド滴定法(ポリビニル硫酸カリウム溶液で滴定する方法)により、有機凝集剤中の有効成分1グラムあたりのカチオンコロイド当量を測定した値(meq/g)である。また、重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算によるGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)法によって測定した値である。
【0056】
図6は、本発明で規定するN値を満足する有機凝集剤の範囲を示した図である。図6は、本発明者らが行った、前記特定の原料モノマーから誘導した、重量平均分子量と、pH7におけるカチオンコロイド当量とが異なる種々の共重合体を、それぞれ有機凝集剤として使用して廃水に添加した場合に得られた凝集・沈降効果の違いをA?Dの4段階で評価した検討結果を示すものである。A?Dは、いずれも本発明の効果が認められるものであるが、相対的にA>B>C>Dの順で顕著な効果が認められた。Dは、全く凝集・沈降の効果が認められないわけではないが、実施化することを考えて不適と評価した。本発明者らは、これらの結果から、本発明が目的の一つとしている「粗大SSと微細SSとが共存している状態の廃水から、これらの懸濁物質を同一の処理によって効果的に取り除くことの実現」ができる有機凝集剤の範囲についての詳細な検討を行い、本発明で規定したN値が5?60の範囲内にある有機凝集剤が、より顕著な効果を実現できるものであるとの結論を得た。図6中にその範囲を破線で示した。更に、この範囲内のものの中でも、重量平均分子量が200万?1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が0.7?4.1meq/gである場合、更には、重量平均分子量が400万?1300万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.1?3.5meq/gである場合により顕著な効果が得られることもわかった。本発明のより顕著な効果が期待できる有機凝集剤の範囲を、共重合体の重量平均分子量とカチオンコロイド当量の兼ね合いを示すN値でいえば、15?55程度であるものを使用するとよい。
【0057】
また、図7は、N値の範囲内にある有機凝集剤の中で、更に効果的なものを見出すための検討に使用した、前記特定の原料モノマーから誘導した、L値が段階的に異なる共重合体を有機凝集剤として用い、粗大SSの存在量が異なる、粗大SSと微細なSSとが共存している3種の廃水に添加した場合に得られた、処理水中のSS濃度を示したものである。より具体的には、重量平均分子量が約400万?800万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.5?4.8meq/gである、L値が、0.9、1.1、1.6、1.9、2.6、3.5及び5.3、とそれぞれ異なる7種類のカチオン性の共重合体を主成分とする有機凝集剤を用いた。図7に示されているように、L値が1.5以上となる共重合体を有機凝集剤として用いることで、凝集剤の添加量が1.0mg/Lと少なくても、処理水のSSは20mg/L以下となり、先の凝集・沈降効果の相対的な評価基準の「A」となることが確認された。図7及び後述の表7の結果から、より好ましいL値としては2?6.7であり、このような有機凝集剤を使用すれば、得られる処理水は、SS濃度が10mg/L以下の極めて清澄なものとなることがわかった。L値がこのような範囲となる好適な共重合体としては、重量平均分子量が500万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.2?3.4meq/gのものが挙げられる。
【0058】
更に、図7に示した結果から、微細SSと共存する粗大SSの存在量が、500?1000mg/Lと少ないよりも、5000mg/L程度と、その存在量を多い廃水の方が、より高い凝集・凝結・沈降の効果が得られることがわかった。本発明者らは、上記と同様の検討を行った結果、先に述べたように、「粗大SSと微細SSが共存している水中から、同一の処理でこれらのSSを一緒に取り除く」効果は、処理する水中の粗大SSの存在量が、250mg/L以上あれば得られること、SSの凝集・凝結・沈降・沈殿の速やかさや、沈殿物の取扱い易さ等を考慮すると、処理する水中における粗大SSの存在量が、250mg/L以上、80000mg/L以下であり、より好ましくは2000?20000mg/L程度であるである場合に、少ない有機凝集剤の添加量で、良好な効果が安定して得られることがわかった。
【0059】
本発明の処理方法において、より好適に使用できるカチオン性又は両性の有機凝集剤は、重量平均分子量と、pH7におけるカチオンコロイド当量が上記した特定の範囲内にあるカチオン性や両性の共重合体を主成分とするものである。しかし、本発明者らの検討によれば、対象とする廃水や取水の種類によっては、アニオン性やノニオン性の有機凝集剤を使用した方が、より高い効果が得られる場合もあった。例えば、転炉からの集塵廃水の場合は、カチオン性の有機凝集剤を用いた場合よりも、むしろアニオン性の有機凝集剤を用いた方が、より大きな効果が認められた。また、石炭ヤードの雨水排水などからの石炭・コークス等の炭素系の粉塵を含有する廃水を処理する場合には、微アニオン性或いはノニオン性の有機凝集剤の使用の方が適している傾向も認められた。このため、本発明を特徴づける「粗大SSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、有機凝集剤が共存する状態を生じさせる」とする処理方法で上水処理における取水を処理した場合も、同様の傾向を示すと予想される。したがって、上記したような場合に、本発明の顕著な効果をより高いレベルで達成できるようにするためには、処理対象の水に応じて、より適した有機凝集剤を選択し、場合によっては、極性の異なる凝集剤を組み合わせて使用することが好ましい。
【0060】
本発明者らは、その実用化を達成するため、実際の廃水からの懸濁物質の除去処理について種々検討した。検討試験には、先に説明した本発明の処理方法に適用することが好適な共重合体を主成分とする有機凝集剤を用いた。そして、製鐵工場の熱間圧延工程から大量に排出される、鉄粉等の金属や圧延油等の油分が懸濁した、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊している状態の直接冷却廃水に、該処理廃水に対して0.1mg/L以上、具体的には、1?2mg/L程度と微少量添加するだけで、廃水中の懸濁物質が速やかに凝集沈降して、しかも、その上澄みは、目視において濁りの見られない極めて清澄なものになることを確認した。これに対し、同じ有機凝集剤を、従来のように、予め廃水中から粗大SSを除去した後に行う凝集沈降処理に使用した場合には、上記したような顕著な効果は得られず、微細SSが凝集沈降する傾向はみられるものの、その上澄みは、目視において濁りがあり、明らかに十分なものではなかった。このことは、本発明で規定した「粗大SSと微細SSが併存する状態の水を同一処理する場合に、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態である水の中に有機凝集剤が共存する状態を生じさせる」ことによってもたらされる、本発明によってもたらされる顕著なSSの凝集・凝結・沈降効果は、微細SSと共に、粒径が50μm以上の粗大SSが併存している状態で、更に、これを激しい流れの中で有機凝集剤と共存させた場合に発揮されるものであることを示している。したがって、本発明では、粗大SSと微細SSとが併存して浮遊している状態の廃水等に対して処理を行い、更に、その処理条件としては、激しく流動する水の中に有機凝集剤を共存させることが重要であることを示している。
【0061】
更に、本発明者らの検討によれば、有機凝集剤の添加を、上記熱間圧延工程からの直接冷却廃水が、水処理設備である「スケールピット」に至るまでの廃水が激しく流動している「スケールスルース」と呼ばれている溝や液路に添加すると、より高い効果が得られることを確認した。すなわち、製鐵所において発生する廃水中の懸濁物質には、比重の大きな鉄粉が多く含まれているため、懸濁物質の沈降を防止する必要があり、このスケールスルースの流れは1?5m/秒程度と極めて速いものとなっている。本発明者らの検討によれば、この速い廃水の流れ中に有機凝集剤を単に添加するだけで、先に述べた本発明で規定する要件を満たし、その結果、本発明の顕著な効果を得ることができる。また、先にも述べたように、この場合に、有機凝集剤を、水処理設備である「スケールピット」に対してより上流側に添加することがより効果的であった。特に、上記有機凝集剤の添加を廃水の発生地点の近傍で行うことで、「スケールスルース」を経由して「スケールピット」に至るまでの廃水が激しく流動している状態の時間をより長く確保できるようになるが、このようにした方が、本発明のより高い効果を得ることができる。
【0062】
これらのことは、有機凝集剤を添加する場合は、廃水が激しく流動している場所に添加し、有機凝集剤と、粗大SS及び微細SSを激しい混合状態で反応させた方が、該有機凝集剤を使用したことによる凝結・凝集・沈降効果が、より速やかにより顕著に発揮されることを示している。先述したように、スケールスルースと呼ばれている溝や液路では、廃水が速い流れの中で激しく流動しており、例えば、水処理設備に廃水が導入される前のこの地点を巧みに利用すれば、別途、撹拌装置等の設備を設ける必要がなく、有機凝集剤を添加する地点を適宜に設計するという簡便な手段によって、後述する工業上、極めて優れた種々の効果を得ることが可能になる。このため、本発明で規定する要件を達成するためには、従来のスケールスルースと呼ばれている溝や液路のままでも勿論よいが、場合によっては、例えば、溝や液路内に障害物や回転羽等を設置するといった方法で、流れがより乱流となるように工夫してもよい。いずれにしても、本発明の懸濁物質の除去処理方法においては、有機凝集剤と、除去処理の対象である粗大SS及び微細SSを激しい混合状態で反応させることがより好ましく、このようにすれば、有機凝集剤の使用量を低減できるとともに、添加した有機凝集剤によって、より高い凝結・凝集・沈降効果を得ることができる。上記したことは、本発明の懸濁物質の除去処理方法を、上水処理における取水中の粗大SS及び微細SSの除去処理に適用した場合も同様であり、本発明を特徴づける有機凝集剤を、水が激しく流動している場所を選んで添加することで、本発明の効果が得られる。
【0063】
本発明の特徴は、少なくとも、粗大SSと微細SSとが併存し、且つ、流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、有機凝集剤が共存する状態を生じさせることにあるが、有機凝集剤を添加する地点を、上記に挙げたような各地点とすることで、本発明で規定する上記要件を容易に満足する処理ができる。本発明の処理方法によれば、上記した極めて簡便な方法によって、以下に挙げる工業上極めて有用な種々の効果が得られる。本発明の処理方法によって得られる主な効果、またはメリットについて詳述する。
【0064】
(i)水処理プロセスの簡略化
有機凝集剤の添加地点を工夫するだけで、廃水中や取水中の粗大SSと微細SSが有機凝集剤とよく混合されることで、微細な鉄粉や砂や油と、粒径の大きなスケールとが極めて速やかに凝集し、沈降させることができ、従来は、粗大SSを処理するためのスケールピットでは除去できなかった微細な鉄粉や油も、スケールピット、またはそれに類する比較的小さい槽で沈殿分離でき、スケールピットの出側で、従来と同等或いはそれ以上のレベルまで懸濁物質の混入を低減した清浄な処理水が得られる、簡易且つ迅速な処理が可能になる。また、水中に粗大SSをほとんど含まない水について処理する場合は、粗大SSとして機能し得る砂等を予め添加して粗大SSと微細SSとが併存した状態とするという簡便な処理を追加するだけで、水中に粗大SSをほとんど含まない水を、本発明によって達成された、粗大SSと微細SSとが併存している廃水を処理するのと同様に処理することで、粗大SSの添加処理にかかる負荷以上の効果を得ることができる。
【0065】
上記の結果、従来の廃水中や取水中の微細SSの除去処理において必要とされていた、沈殿池や沈砂池や撹拌槽やろ過機、電磁フィルターといった、微細鉄粉や砂や泥や油の分離設備が不要となる。これに伴い、撹拌機や、ろ過機や電磁フィルターを使用した場合に必要となっていた逆流洗浄排水処理設備も不要となる。
また、本発明の廃水中や取水中の懸濁物質の除去処理方法では無機凝集剤が不要となることから、そのためのタンクやポンプ、撹拌機、送液ライン等の設備も不要となる。
したがって、製鐵所において大量に発生する、粗大SSと微細SSとが共存している状態の廃水に対して、新たに懸濁物質の除去処理設備を建設する場合には、上記に関連した設備スペース、及び建設費が大幅に削減できる。
【0066】
(ii)維持管理費の縮小
沈殿池やろ過機が不要となり、処理水を循環使用する場合には、スケールピットの出側から処理水を冷却塔へ直接送水できるため、必要なポンプの台数を減らすことができ、電気代を含む維持管理費が大幅に縮小できる。
【0067】
(iii)腐食の低減
本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法では無機凝集剤を必要としないため、ポリ塩化アルミニウムや、硫酸バンド等に代表される無機凝集剤に含まれる、腐食性陰イオンである、Cl^(-)や、SO_(4)^(2-)が処理水中に混入することを著しく低減できる。このため、凝集沈殿、及び冷却処理した処理水を、再度工場へ給水する場合、その配管系等、ならびに生産する鋼材表面の腐食を軽減することが可能となる。
【0068】
(iv)鉄スラッジのリサイクル促進
本発明の懸濁物質の除去処理方法を採用し、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させたことによってスケールピットにおいて発生する、粒径の大きなスケール、微細な鉄粉、及び油からなるスラッジは、脱水性と濃縮性がよく、重量あたりの油含有率が小さいためリサイクルに適しており、その運搬及びリサイクル可能にするための処理等が簡便になる。
【0069】
図1は、本発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法を連続鋳造工程の直接冷却廃水処理に適用した場合の好適な一実施形態を示す模式図である。図1に示したように、連続鋳造工程から発生する直接冷却廃水は、連続鋳造ラインからスケールスルース1に流れ落ち、廃水は、スケールスルース1の内部を激しく流動しながら、スケールピット3へと移動する。図1に示した例では、有機凝集剤2が、直接冷却廃水が流動していくスケールスルース1の最上流部分で添加されている。それ故、有機凝集剤2と直接冷却廃水は、スケールスルース1内の激しい流れの中で混合され、スケールピット3内に排水される。その結果、スケールピット3内では、廃水中のスケール、微粒鉄粉、油の凝結・凝集したものが極めて速やかに沈降分離される。そのため、スケールピット3内の上澄水は清澄なものとなるので、そのまま上澄水を冷却塔4へ揚水する。最後に、冷却塔4で冷却されて得られた処理水は、直接冷却水として再び工場へ給水される。
【実施例】
【0070】
実施例と比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらの実施例により本発明が限定されるものではない。
【0071】
<確認試験例>
まず、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させることの優位性について、下記のようにして確認試験を行った。検討には、図5に示した従来の熱間圧延工程において発生する、スケールピット3への流入水を採水し、これを確認試験に使用した。具体的には、採水したスケールピット流入水を2つに分け、一方のスケールピット流入水はそのままの状態で試験に用い、他方のスケールピット流入水は、その中の粒径50μm以上のSS(粗大SS)を除去したものを用いた。上記したそれぞれの水に対して、後述する実施例1で使用した有機凝集剤を同量ずつ添加して、高速撹拌してよく混合した後、複数の同じ形状の縦長の筒状容器内にそれぞれ同量ずつ入れて、一番長いもので20分間となるように静置させて、各時点における沈降状態を観察した。そして、沈降状態を客観的に評価するため、静置時間の異なる処理水を、筒状容器の底面から一定の高さから採水し、採水したそれぞれの水(処理水)について、JIS K0102に則して、SS濃度を分析した。
【0072】
表1に、上記の試験結果を示した。その結果、表1に示した通り、本発明で規定している、粗大SSと微細SSとを同一に処理した「粗大SSありの系」と、従来の処理で行われている「粗大SSなしの系」では、その沈降速度に大きな違いがあることが確認された。例えば、SS濃度が15mg/Lの処理水を得る場合の沈降時間が、「粗大SSありの系」では僅か2分間で済むのに対し、従来の処理で行われている「粗大SSなしの系」では8分間必要であった。このことから、本発明で規定した、粗大SSと微細SSとを同一に処理する「粗大SSありの系」とすることで、従来の方法に比べてSSを極めて迅速に沈降させることができることが確認された。
【0073】

【0074】
上記したように、従来の方法で行われている「粗大SSなしの系」で処理した場合と、本発明で新たに行った「粗大SSありの系」で処理した場合の比較試験で、SSの沈降速度に顕著な差が生じたが、その理由について、本発明者らは、「粗大SSありの系」で処理した場合は、粗大SSと微細SSとが共存する状態の被処理水へ有機凝集剤を添加することで、両SSの凝集体が速やかに生成されたことで、その沈降速度が、従来技術での「粗大SSなしの系」の処理を行う前に行われている粗大SSのみの処理の場合と同程度以上になったためと考えている。
【0075】
上記確認試験の結果から、従来方法での「粗大SSなしの系」で処理する場合には、粗大SSの処理には比較的小さな槽(例えば、設計Over Flow Rate:10?50m/hr程度)であるスケールピットを使用し、その後の微細SSの処理には、大きな沈殿槽(例えば、設計Over Flow Rate:0.5?4.0m/hr程度)を用い、場合によっては更にろ過機等が必要であった。これに対し、本発明で規定した「粗大SSありの系」を適用することで、上記したスケールピットのような比較的小さな槽のみを使用することで、従来の処理方法と同等以上の処理水質が得られることが示唆された。つまり、上記した試験結果は、本発明で新たに規定する「粗大SSありの系」での処理によって、従来技術の「粗大SSなしの系」で行われていた、凝集沈殿処理によっては決して得ることができなかった顕著な効果が達成されることが確認された。
【0076】
<実施例1、2、比較例1>
本実施例の概要を図2に示した。本実施例では、図1に示したものと同様に、連続鋳造工程において発生するスプレー系冷却廃水に対して、有機凝集剤2をスプレー系冷却廃水が流動していくスケールスルース1の最上流部分で添加した。そして、スケールピット3で得た上澄み水を、電磁フィルター5で処理後に、冷却塔4で冷却し、再度、冷却水として使用した。本実施例では、有機凝集剤2として、前記した一般式(1)及び(2)で表される2種類のモノマーを必須成分として、それぞれ20モル%ずつ含む原料モノマーから誘導した、アクリルアミド/[2-(アクリロイルオキシ)エチル]ベンジルジメチルアンモニウム・クロリド/[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウム・クロリド共重合体(モル比=60/20/20)を主成分とするカチオン性のものを用いた。その重量平均分子量は1100万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.7meq/gであるものを用いた。該共重合体のN値は、32、L値は、6.5となる。そして、スケールスルース1内の廃水に対し、該有機凝集剤を、0mg/L(無添加)、1mg/L、2mg/Lとなるように連続添加した。なお、上記で処理したスプレー系冷却廃水における粗大SSと微細SSとの比(粗/微)は、その質量比で、5?20程度であった。
【0077】
そして、上記の処理後に、JIS K0102に則して、スプレー戻水6(処理水A)、スプレー直送水7(処理水B)のSS濃度及びn-Hex抽出物質濃度(油分)を測定した。なお、ここでいうスプレー戻水とは、スケールピット3の出側の水(上澄み水)のことであり、スプレー直送水とは電磁フィルター5で処理後に、冷却された水(処理後の冷却水)のことである。また、比較例1として、有機凝集剤を添加しない場合についても、SS濃度及びn-Hex抽出物質濃度(油分)を測定した。
【0078】
表2に、上記の有機凝集剤の添加試験の結果を示した。実施例1として、有機凝集剤を1mg/Lとなるように添加することで、スプレー戻水のSS濃度は19mg/L、n-Hex抽出物質濃度は5mg/Lになり、無添加時(比較例1)と比べ、両汚濁物質の濃度が半減することを確認した。また、スプレー直送水においては、SS濃度が10mg/L、n-Hex抽出物質濃度が4mg/Lという良好な水質が得られた。
【0079】
更に、実施例2として、有機凝集剤を2mg/Lとなるようにして添加した以外は上記と同様にして試験したところ、スプレー戻水のSS濃度は9mg/Lになり、n-Hex抽出物質濃度は2mg/Lになった。このスプレー戻水水質は、有機凝集剤の添加濃度が1mg/Lで後段の電磁フィルター5で処理を行ったスプレー直送水と同等の水質である。したがって、有機凝集剤を2mg/Lになるように添加した場合は、電磁フィルター5による処理を停止しても、良好な水質を維持可能であると考えられる。
【0080】

【0081】
<実施例3>
本実施例では、従来のスケールピット3の後段に設ける処理設備を停止することが可能か否かを判断することを目的として、最も水質が悪化すると考えられる、スケール揚げ時の処理水質の悪化の有無を確認した。スケール揚げとは、スケールピット底層に堆積する沈殿物であるスケールスラッジをクラム重機で浚渫することである。スケール揚げ時には、堆積していたスケールの巻揚げが発生するため、一時的な水質の悪化が起こると考えられる。本実施例では、実施例1の場合と同様の構成とし、廃水量に対して、2mg/Lとなるようにスケールスルース上流で有機凝集剤を連続添加して処理した。
【0082】
スケール揚げの開始直後(開始5分後)、終了間際(終了10分前)、終了後(終了5分後)のスプレー戻水のSS及びn-Hex抽出物質の濃度を測定した。表3に、このスケール揚げ時における水質確認試験の結果をまとめて示した。スプレー戻水のSSは7?8mg/L、n-Hex抽出物質は2mg/Lとなり、最も水質が悪化すると考えられる、スケール揚げ時の前後でも、水質変動がほとんど見られないことを確認した。以上の結果から、発明の廃水中の懸濁物質の除去処理方法を採用することで、従来、必要とされていたスケールピット後段の処理設備は、停止可能になると判断した。
【0083】

【0084】
<実施例4、5、比較例2>
実施例4、5と比較例2では、製鋼工程でつくられた鋼片を熱間圧延する際に、ロール冷却、鋼材や鋼片の冷却やスケール落としなどに使用された水(直接冷却廃水)を対象とした。
比較のために、図4に示した、上記の対象水に対する通常の懸濁物質の除去処理であるプロセスで処理し、これを比較例2とした。具体的には、先ず、スケールピット3において無機凝集剤2’を添加すると共に、粗大スケールを沈降分離し、その後段に配置した沈殿池8において微粒の懸濁物質と油分を除去後、冷却塔4で冷却処理して処理水を得、これを冷却水とした。この場合の処理水A(6)と、処理水B(7)を分析し、これらの結果を表4と表5に示した。
【0085】
実施例4、5として、図3に示したプロセスで、有機凝集剤の添加量を変えた以外は同様にして廃水中の懸濁物質の除去処理を行った。具体的には、図3に示した通り、スケールピット3への無機凝集剤の添加をすることなく、実施例1及び実施例2と同様に、スケールスルース1の上流に有機凝集剤2を添加した。そして、スケールピット3の出側の処理水Aを分析した。処理水のSS濃度及びn-Hex抽出物質濃度の分析は、JIS K0102に準拠して行い、試験結果を表4に示した。
【0086】
表4に示した通り、有機凝集剤を添加したことにより、処理水AのSS及びn-Hex抽出物質は、比較例2の処理に比べて良好に除去できた。また、実施例4の方法で処理した処理水AのSS濃度は16mg/Lであり、n-Hex抽出物質濃度は2mg/Lであった。更に、実施例5の方法で処理した処理水AのSS濃度は4mg/Lであり、n-Hex抽出物質濃度は1mg/Lであった。これらの結果から、比較例2における処理水Aよりも水質が改善できた。
【0087】

【0088】
また、表4に示した実施例4、5の処理水Aと、図4で示した比較例2の従来の処理方法で処理した結果得られた処理水Bの水質を表5に示したが、これらを比較すると、実施例4、5の処理水Aは、比較例2の処理水Bに比べ、SS及びn-Hex抽出物質の濃度が同等以下であった。このことから、無機凝集剤を添加せずとも、スケールスルースに有機凝集剤を添加することにより、沈殿池を除外しても従来と同等以下まで汚濁物質を除去できると考えられる。
【0089】

【0090】
<参考例>
本発明をより明確にするため、有機凝集剤を添加する水の流速やレイノルズ数が、有機凝集剤の効果に与える影響について、圧延工場の直接冷却廃水を対象とした室内試験で、その流速条件を8通りに設定し、その処理水SS濃度を比較して評価し、本発明で規定する要件の意味するところについての確認を行った。その結果、表6に示したように、想定流速が0.5m/秒を超えると大幅に処理水濁度の改善が確認され、それ以上想定流速を上げても処理水濁度の改善効果は小さいことを確認した。
【0091】

【0092】
以上の結果から、表6に示されているように、本発明の処理方法を適用する場合は、必要量の有機凝集剤を適宜な位置で添加することで、粗大SSと微細SSとが併存し、有機凝集剤が共存している状態が、少なくとも流速が0.5m/秒以上で、且つ、レイノルズ数8000以上の乱流状態の水の中に生じている場合に、望ましくは、流速が1.0m/秒以上で、且つ、レイノルズ数10000以上の乱流状態の水の中に生じている場合に、本発明の効果がより顕著に認められることが確認できた。このため、本発明の処理方法を適用する際には、廃水の発生地点から、廃水が移動して処理設備に入るまでの各地点における廃水の流速及びレイノルズ数を測定し、上記において好適な結果が得られることが確認された測定値を有する地点を把握し、その上で、粗大SSと微細SSとが併存し、有機凝集剤が共存している状態となるように、有機凝集剤を添加する地点を決定することが好ましい。
【0093】
<凝集試験例-好適な有機凝集剤の範囲>
(試験方法-1)
実施例1、2で使用した有機凝集剤を合成した際に使用したものと同様の原料モノマーを用い、各モノマーのモル比と重合度を変化させて、表7に示した重量平均分子量とカチオンコロイド当量の性状の異なる有機凝集剤をそれぞれ用意し、これらを用いて圧延工場の直接冷却廃水を対象とした室内試験を行なった。具体的には、廃水を入れた容器内に有機凝集剤を添加し、一定時間高速撹拌し、その後に放置して凝集処理を行ない、その上澄み水を処理水として、上澄み水(処理水)のSS濃度を測定した。また、各処理水の性状を目視で観察した。結果を表7にまとめて示した。試験に用いた廃水の粗大SSの存在量は500mg/L程度であり、微細SS濃度に対する粗大SS濃度の比(粗/微)が、その質量比で10であった。
【0094】
(試験結果-1)
表7中の「凝集SSの沈降性評価」は、有機凝集剤を使用して処理した場合の凝集SSの沈降性を目視で観察し、相対的に評価した。表7に示したように、本発明の凝集効果が顕著に得られる有機凝集剤は、その重量平均分子量だけで決定されるものでも、カチオンコロイド当量だけで決定されるものでないことがわかった。本発明者らは、これらの結果から、本発明の顕著な効果が得られる有機凝集剤の範囲を決定すべく鋭意検討を行った結果、本発明で規定するN値と、或いはN値及びL値と、本発明の効果との間に相関があることがわかった。
【0095】

【0096】
(試験方法-2)
上記した結果から、更に、実施例1、2で使用した有機凝集剤を合成した際に使用したものと同様の原料モノマーを用い、各モノマーのモル比と重合度を変化させて、重量平均分子量とカチオンコロイド当量の性状の異なる有機凝集剤を作製し、これらを用いて、上記したと同様の条件で、圧延工場の直接冷却廃水を対象とした室内試験を行なった。そして、上記と同様に上澄み水(処理水)のSS濃度を測定し、各処理水の性状を目視で観察し、更に、凝集SSの沈降性を目視で観察して評価し、これらの結果から、総合的にA、B、C、Dの4段階で評価した。そして、図6に、重量平均分子量とカチオンコロイド当量と、評価結果の関係をプロットした。更に、良好な結果が得られる範囲を特定するため、先に見出したN値との関係について検討した結果、N値が、5?60の範囲内にある有機凝集剤を用いた場合に、本発明の良好な結果が得られることがわかった。図中の破線は、それぞれ、N値が5、N値が60の範囲を示している。
【0097】
(試験結果-2)
図6に示したように、本発明で規定するN値が5?60の範囲内にある有機凝集剤を用いた場合には、いずれも良好な結果が得られた。より具体的には、本発明で規定する上記構成要件を満足した有機凝集剤を用いることで、本発明が、最終的な目標としている処理水SS<10mg/Lを容易に達成できることが確認された。そして、その際に得られた処理水は、目視では濁りを認めることができない清澄(透明)なものであった。これに対し、N値が本発明で規定する要件を満たさない有機凝集剤を用いた場合は、有機凝集剤を用いない場合と比較すると凝集効果が認められたものの、本発明で規定するN値を満たす有機凝集剤を用いた場合と比較すると明らかに劣り、得られる処理水には、目視で明らかな濁りが認められた。
【0098】
(試験方法-3)
上記の試験例1、2では、いずれも粗大SSの存在量が3000mg/L程度で一定の廃水を使用して行ったが、粗大SSの存在量が低い或いは高い廃水も存在することから、この点についての検討を行った。また、同時に、凝集剤の添加量をより少なくすることについての検討も行った。具体的には、懸濁物質として、粒子径が50μm以上あり且つ200μmには満たない粗大SSと、粒子径が50μm未満の微細SSとを含む廃水を用意したが、その際、粗大SSの存在量が、500mg/L、1000mg/L、5000mg/Lと、異なる3種類の廃水を用意した。なお、処理前の廃水の微細SS濃度は、105mg/L程度で一定にした。また、凝集剤として、前記した一般式(1)、一般式(2)で表されるモノマーの両方を必須成分として5モル%以上を含む原料モノマーから誘導した、重量平均分子量が約400万?800万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.5?4.8meq/gである、L値が、0.9、1.1、1.6、1.9、2.6、3.5及び5.3、とそれぞれ異なる7種類のカチオン性の共重合体を主成分とするものを用いた。
【0099】
(試験結果-3)
そして、まず、各凝集剤の添加量を1.0mg/Lと少なくして、粗大SSの存在量が異なる上記3種類の廃水について凝集処理を行った。その結果、粗大SSの存在量によらず、図7に示したように、L値が1.3以上、好ましくは、1.8以上である場合に、高い凝集・凝結・沈降の効果が認められた。また、図7に示した結果から、微細SSと並存する粗大SSの存在量が、500?1000mg/Lと少ないよりも、5000mg/L程度と、その存在量を多い廃水の方が、高い凝集・凝結・沈降の効果が得られることがわかった。微細SSに並存する粗大SSの存在量が少ない場合は、凝集剤の添加量を増やすことで、効果の向上が図れることも確認した。
【0100】
更に、処理する水中に、微細SSと併存する粗大SSの存在量が少ない場合におけるSSの凝集・凝結・沈降の効果について検討した。その結果、250mg/L程度でも効果が認められたが、その場合は、有機凝集剤の使用量を多くする必要があった。また、併存する粗大SSの存在量が多い場合におけるSSの凝集・凝結・沈降の効果についても検討したところ、80000mg/L程度でも効果が認められたが、凝集・凝結・沈殿物の良好さを考慮すると、粗大SSの存在量は、20000mg/L程度までとすることが好ましいことがわかった。
【0101】
<実施例10?11、比較例6>
水中に粗大SSがほとんど含まれない水について処理を行い、本発明の方法と、無機凝集剤を必須として用いる従来方法との比較を行った。具体的には、粗大SSがほとんど含まれないコークス工場における工程廃水について、下記の処理をそれぞれ行った。まず、比較例6として、従来の「アクティフロ(登録商標)」と呼ばれるSSの除去処理方法での処理を行った。具体的には、コークス工場における工程廃水のpHを6.5?8.5に調整するとともに、無機凝集剤のポリ塩化アルミニウム(PAC)を50mg/L添加して、急速撹拌した。これを注入撹拌槽に導入し、沈澱槽のスラッジを液体サイクロンで分級した砂(粒径100μm程度)を混合し、更に、ノニオン性の有機凝集剤KEN-307を3mg/L添加して撹拌し、注入撹拌槽と連通しているフロック形成槽でフロックを形成させた。その後、沈澱槽で固液分離を行って処理水を得た。その結果を比較例6として、表8に示した。なお、表8中の処理水のSSは、いずれもOFR=36m/hrにおける条件で採水した。
【0102】
実施例10?11では、上記と同様のコークス工場における工程廃水に対し、下記の有機凝集剤を、それぞれ2、3mg/L添加して下記の条件で処理し、その後に沈澱槽で固液分離を行って処理水を得た。実施例では、アクリルアミド/アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合物(モル比=60/20/20)を主成分とするカチオン性の有機凝集剤を用いた。その重量平均分子量は800万であり、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.5meq/gであり、N値は18、L値は5.3となる。その際、カチオン性の有機凝集剤の使用量を、実施例10では2mg/L、実施例11では3mg/Lとなるようにした。更に、これらの実施例の処理では、上記の廃水に砂を添加して処理を行ったが、その際、砂には、比較例6で使用したと同様の液体サイクロンで分級した砂(粒径150μm程度)を用いた。そして、上記したカチオン性の有機凝集剤を添加する前に、予め廃水1Lに対して砂を5000mg加えて、流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態となるように撹拌した状態とし、流動している液中に、有機凝集剤を各条件で添加して凝集処理を行い、その後に固液分離した。実施例10、11の結果を表8に示した。
【0103】

【0104】
表8に示したように、比較例6では、凝集剤として無機凝集剤と有機凝集剤の2液を必要とするのに対し、本発明を適用した実施例10、11では、有機凝集剤単独で使用して処理した。その結果、実施例の処理の方が、少ない凝集剤の使用量で、比較例6の処理よりも水質が格段に改善することが確認できた。すなわち、表8に示したように、比較例6の処理では、PAC50mg/Lと有機凝集剤3mg/Lを添加しても、処理水SS濃度が42mg/Lであったのに対し、実施例10、11では、カチオン系有機凝集剤1を2mg/L以上添加することで、SS=4mg/L以下の極めて清澄な処理水を得ることができた。
【0105】
なお、本発明の処理方法では、無機凝集剤を必ずしも必要することなく、上記したように清澄な処理水を得ることがでるため、従来の比較例6で行っている無機凝集剤添加時のpH調整作業が不要となる。このことは、本発明の処理方法では、無機凝集剤の添加設備並びに、付随するpH制御設備が不要にできることを意味し、設備が非常に簡素化される。また、同時に、pH変動に伴う処理の不安定を解消することができ、安定な処理が可能になる。更に、本発明の処理方法では、凝集沈殿処理後に発生するスラッジには無機凝集剤に起因したスラッジ(PACであればアルミニウム、塩化鉄であれば鉄)が含まれないため、スラッジ発生量が既存技術に比べ大幅に減少するという利点もある。これらのことから、本発明の処理方法は、水中に粗大SSがほとんど含まれない水について処理を行った場合にも、工業上極めて優位な、実用化が期待される方法であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の活用例としては、製鐵所の連続鋳造工程における鋼材の直接冷却廃水、製鐵所の圧延工程における鋼材の直接冷却廃水、製鐵所の高炉、転炉、電炉工程における集塵廃水、製鐵所の屋外原料貯蔵ヤードから発生する雨水廃水、製鐵所の高炉滓から水砕スラグを得る際に発生する冷却廃水、或いは上水処理における取水、といった粗大SSと微細SSとが併存している状態の大量の廃水に対して簡便に適用可能で、具体的には、有機凝集剤を添加する位置を工夫するといった極めて簡便な方法で、従来技術ではできなかった、粗大SSと微細SSとを同一の処理で、極めて迅速に凝集沈降させて取り除くことができるようになる。上記の廃水等に本発明の処理方法を適用することで、従来の処理で必要とされてきた微細SSの処理のための沈殿池や沈砂池といった設備や、これに伴う運転や維持管理が不要となり、極めて経済的な処理が可能になるので、その利用が期待される。また、粗大SSと微細SSとを同一の処理で凝集沈降させた場合の上澄み水は、従来の方法で処理した場合の処理水と比較して、目視でも懸濁物質の残留が少なくなったことが明確に分かる濁りのない清澄なものであり、更に、従来の無機凝集剤を使用した方法において懸念されていた混入した塩素イオン等による悪影響の問題も事実上なく、そのまま再度冷却水として利用することや、浄水場への導入することができるので、この点からも極めて経済的である。更に、有機凝集剤と粗大な懸濁物質と微細な懸濁物質とが凝集・凝結してなる沈殿物(スケールスラッジ)は、取り扱い易く、クラム重機で浚渫することができ、しかも強固に凝結したものとなるので、当該作業の際における、上澄み液の水質への影響も小さく、これによって、沈殿物の処理が大幅に簡略化できるので、この点からも極めて経済的な処理が可能になる。
【0107】
上記したように、本発明の処理方法は、有機凝集剤を添加する地点を変更するといった極めて簡便なものでありながら、従来の方法と比べて、粗大SSと微細SSとを分けて処理する必要がなく、これによって、使用する凝集剤の種類や量を低減でき、更には、微細な懸濁物質の凝集沈殿に要していた広大な沈殿槽を不要とすることも可能であり、また、凝集・凝結してなる沈殿物の処理が極めて簡便になり、電磁フィルターやろ過機等の設備も不要とできる可能性があり、従来の処理方法を根底から覆し、極めて大きな経済的な効果をもたらすことが期待できる。本発明の処理方法は、粗大SSと微細SSとが併存している状態のいずれの廃水に対しても適用することが可能であるが、処理する廃水の量が極めて多い、製鐵所において発生する懸濁物質を含む廃水に適用した場合や、上水処理の取水処理に適用した場合に、特に多大な効果が期待できる。更には、水中に粗大SSをほとんど含まない水に、粗大SSとして機能し得る砂等を予め添加して、粗大SSと微細SSとが併存した状態として本発明で規定する処理をすることで、このような水を処理した場合にも上記した本発明の顕著な効果が得られるので、このような廃水への適用も期待される。
【符号の説明】
【0108】
1:スケールスルース(開放樋)
2:有機凝集剤
2’:無機凝集剤
3:スケールピット
4:冷却塔
5:電磁フィルター
6:スプレー戻水(処理水A)
7:スプレー直送水(処理水B)
8:沈殿池
9:ろ過機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物質の凝集・沈降剤を用い、廃水や取水等の中から懸濁物質を凝集沈降させて取り除くための水中の懸濁物質の除去処理方法であって、
上記凝集・沈降剤として少なくとも1種のカチオン性又は両性の有機凝集剤を用い、該有機凝集剤が、下記一般式(1)、下記一般式(2)で表されるモノマーのいずれか一方又は両方を必須成分として5モル%以上含む原料モノマーから誘導された、重量平均分子量が800万?1100万で、且つ、pH7におけるカチオンコロイド当量が1.2?3.4meq/gであるカチオン性又は両性の共重合体を主成分としてなり、該共重合体の重量平均分子量(Mw)に、pH7におけるカチオンコロイド当量(CE)の2乗を乗じた値を、更に100万で除した値をNとした場合に、N値が5?60であり、且つ、該共重合体の重量平均分子量(Mw)を、そのpH7におけるカチオンコロイド当量(CE)で除した値を、更に100万で除した値をLとした場合に、L値が1.5以上であり、
少なくとも、粒径が50μm以上の金属粉又は砂の少なくともいずれかを含む、粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質と、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質とが、前記水中における、前記粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質濃度に対する前記粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比2.0以上で併存し、その流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に、前記カチオン性又は両性の有機凝集剤が共存する状態を生じさせることで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で一緒に凝集沈降させることを特徴とする水中の懸濁物質の除去処理方法。

(上記式中の、R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立にCH_(3)又はC_(2)H_(5)を表し、R_(3)は、H、CH_(3)又はC_(2)H_(5)のいずれかを表す。X^(-)は、アニオン性対イオンを表す。)
【請求項2】
削除
【請求項3】
前記カチオン性又は両性の有機凝集剤を、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とが併存している、流速が0.5m/秒以上で、且つ、乱流状態である水中に添加することで、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とが併存し、その流速が0.5m/秒以上で、乱流状態の水の中に前記カチオン性又は両性の有機凝集剤が共存する状態を生じさせる請求項1に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項4】
前記水が、製鐵所において発生する廃水であり、
前記カチオン性又は両性の有機凝集剤を廃水に添加する位置が、前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とが併存している廃水が発生する地点から水処理設備の入口付近に至るまでのいずれかの地点である請求項3に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項5】
前記水が、製鐵所において発生する廃水であり、
前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で一緒に凝集沈降させ、これらの懸濁物質を前記水中から一緒に除去した後、得られた処理水を循環使用する請求項1、3、4のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項6】
前記水が、水中に前記粗大な懸濁物質をほとんど含まない水である場合に、該水に予め粒径が50μm以上の金属粉又は砂の少なくともいずれかを含む、粒径が50μm以上の粗大な懸濁物質を添加して、水中における、該粗大な懸濁物質の存在量が250mg/L以上、80000mg/L以下で、且つ、粒径が50μmに満たない微細な懸濁物質濃度に対する前記粗大な懸濁物質濃度の比(粗/微)が質量比で2.0以上となるようにする請求項1、3のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項7】
前記乱流状態の水のレイノルズ数が、8000以上である請求項1、3?6のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項8】
前記水中の懸濁物質が、水砕スラグ、小石、泥、不溶性有機物、石炭粉又はコークス粉の少なくともいずれかを含む請求項1、3?7のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項9】
前記水中に、更に油分が併存している請求項8に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
【請求項10】
前記粗大な懸濁物質と前記微細な懸濁物質とを同一の処理で一緒に凝集沈降させた後に、更に凝集沈降した沈殿物を除去する請求項1、3?9のいずれか1項に記載の水中の懸濁物質の除去処理方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-17 
出願番号 特願2015-115936(P2015-115936)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (B01D)
P 1 651・ 853- YAA (B01D)
P 1 651・ 851- YAA (B01D)
P 1 651・ 121- YAA (B01D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 目代 博茂  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 小川 進
金 公彦
登録日 2018-07-27 
登録番号 特許第6374351号(P6374351)
権利者 日鉄環境株式会社
発明の名称 水中の懸濁物質の除去処理方法  
代理人 竹山 圭太  
代理人 菅野 重慶  
代理人 近藤 利英子  
代理人 竹山 圭太  
代理人 菅野 重慶  
代理人 岡田 薫  
代理人 岡田 薫  
代理人 近藤 利英子  
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