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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C11D
審判 全部申し立て 発明同一  C11D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C11D
管理番号 1362330
異議申立番号 異議2019-700512  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-25 
確定日 2020-03-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6444245号発明「自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物および自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6444245号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-4、〔5-8〕について訂正することを認める。 特許第6444245号の請求項4ないし8に係る特許を維持する。 特許第6444245号の請求項1ないし3に対する特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
1 本件特許に係る出願は、平成27年4月6日に特許出願され、平成30年12月7日付で特許権の設定登録がされ、同年12月26日に特許掲載公報が発行された。その後、令和元年6月25日に特許異議申立人 中村 光代(以下「申立人」という。)から請求項1?8に係る発明に対して特許異議の申立てがなされたものである。
2 令和元年10月3日付(発送日は同月8日)で取消理由が通知され、同年12月9日に意見書の提出とともに、訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正の内容を以下「本件訂正」という。)がされ、同月16日付で申立人に期間を指定して通知書が送付されたところ、期間内に申立人から応答がされなかった。

第2 本件訂正について
1 本件訂正請求前の特許請求の範囲
本件訂正請求前の請求項1?8に係る発明(以下「訂正前発明1」?「訂正前発明8」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマー又はその塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?50質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項2】
金属イオン封鎖剤が、pH9?11の何れかのpHにおいて、Ca(II)に対する安定度定数が5.0以上のものである請求項1記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項3】
ポリカルボン酸型ポリマーが、重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体より選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項4】
(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=1?350である請求項1?3のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1?4のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項6】
請求項1?4のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項7】
濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する請求項5又は6記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項8】
前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2)当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ請求項5?7のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」
2 本件訂正後の特許請求の範囲
本件訂正後の特許請求の範囲に記載された発明(以下請求項4?8に係る発明を「本件発明4」?「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ということもある。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項6】
(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項7】
濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する請求項5又は6記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項8】
前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2)当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ請求項5?7のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」
3 訂正事項
本件訂正は、次の訂正事項からなるものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項4の「(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=1?350である請求項1?3のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」という記載を、
「(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」と訂正する。なお、下線は訂正前の請求項1を引用する請求項4からの訂正箇所を示すために当審が付した。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項5の「請求項1?4のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」という記載を、
「(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」と訂正する。(請求項5を直接または間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。)なお、訂正箇所を示す下線を当審が付した。
(6)訂正事項6
訂正前の請求項6の「請求項1?4のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」という記載を、
「(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。」と訂正する。(請求項6を直接または間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する。)なお、訂正箇所を示す下線を当審が付した。
(7)訂正事項7
訂正前の願書に添付した明細書の段落【0011】の「即ち本発明は、
(1)(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマー又はその塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?50質量%であり、かつ、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(2)金属イオン封鎖剤が、pH9?11の何れかのpHにおいて、Ca(II)に対する安定度定数が5.0以上のものである上記(1)記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(3)ポリカルボン酸型ポリマーが、重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体より選ばれた少なくとも1種である上記(1)又は(2)記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(4)(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=1?350である上記(1)?(3)のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(5)上記(1)?(4)のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(6)上記(1)?(4)のいずれかに記載の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(7)濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する上記(5)又は(6)記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(8)前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2)当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ請求項5?7のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、を要旨とするものである。」という記載を、
「即ち本発明は、
(1)(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体より選ばれた少なくとも1種であるポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(2)(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体より選ばれた少なくとも1種であるポリカルボン酸型ポリマー又はその塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(3)(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体より選ばれた少なくとも1種であるポリカルボン酸型ポリマー又はその塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(4)濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する上記(2)又は(3)記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(5)前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2)当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ前記(2)?(4)のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、を要旨とするものである。」と訂正する。なお、訂正箇所を示す下線は、当審が付した。
(8)別の訂正単位とする求めについて
特許権者は、訂正後の請求項5?8については、請求項5?8についての訂正が認められる場合には、他の請求項とは別途訂正することを求めている。
4 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
訂正前の請求項2?8は、いずれも請求項1を引用するものであったから、訂正前の請求項1?8は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
(2)訂正事項1?3について
訂正事項1?3は、それぞれ請求項1?3を削除する訂正であるから、これらの訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、これらの訂正事項が願書に添付した明細書、特許請求の範囲または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。
(3)訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を独立形式に書換え、(B)成分の化合物について、訂正前の「エチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤」との特定事項の選択肢の一部を削除し、塩をアルカリ金属塩に特定し、「エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤」と訂正し、(C)成分の化合物について、訂正前の請求項3の「重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体より選ばれた少なくとも1種」という特定事項の選択肢の一部を削除し、かつ塩をアルカリ金属塩に特定し、「重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩」と訂正し、本件明細書の段落【0044】の【表1】における実施例3及び段落【0045】の【表2】における実施例14の記載に基いて「(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?50質量%」を「(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%」と訂正し、本件明細書の段落【0044】の【表1】における実施例8に基いて、「(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=1?350である」という記載を、「(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である」と訂正するものである。
したがって、訂正事項4は、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合するものであるとともに、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるといえる。
また、訂正事項4は、上記のとおり、訂正前の請求項1を引用する請求項3を更に引用する請求項4の発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項5、6について
訂正事項5は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項5を独立形式にした上で、自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を前記訂正事項4と同様に限定するものである。訂正事項6は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を引用する請求項4を引用する請求項6を独立形式にした上で、自動食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を前記訂正事項4と同様に限定するものである。
したがって、訂正事項5、6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、訂正事項5、6は、上記のとおり、訂正前の請求項5、6に記載されていた自動食器洗浄機用濃縮液体洗剤組成物を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される特許請求の範囲の減縮及び特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
(5)訂正事項7について
訂正事項7は、明細書の段落【0011】の記載を訂正後の請求項4?8に合わせて明瞭化したものということができるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。また、これらの訂正が、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではないことは明らかであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
5 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?8について訂正を求めるものであり、その訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4項に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第9項で読み替えて準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1-4、〔5-8〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
1 前記第2のとおり、本件訂正は適法なものと認められるから、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明は、前記第2、2に摘記したとおりのものである。
2 本件明細書には以下の記載がある。
(1)「【技術分野】
【0001】
本発明は、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、特に業務用の自動食器洗浄機用として好適な自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物に関する。また本発明はこの自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いた食器類の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食器類の洗浄に自動食器洗浄機が広く利用されるようになっており、ホテル、レストラン、給食会社、病院、会社の食堂等においても、使用後の食器を効率よく洗浄するために、また近年の衛生意識の向上から業務用の自動食器洗浄機が広く用いられている。」
(2)「【0009】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、低濃度で優れた洗浄性を有し、節水型自動食器洗浄機で洗浄した場合でも、食器類への汚れの再付着や茶渋、スケール、バイオフィルムの発生が少なく、すすぎ性に優れるため食器類に洗浄剤の残留がないコンパクトで作業性の高い自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。また本発明はこの濃縮液体洗浄剤組成物を用いた自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討した結果、(A)成分としてアルカリ剤、(B)成分として金属イオン封鎖剤、(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマー又はその塩を特定の割合で含有し、(A)成分と(B)成分とが特定の比率となるようにした濃縮液体洗浄剤組成物が、上記従来の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。」
(3)「【0013】
本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は、従来品の2倍以上に濃縮された濃縮液体洗浄剤組成物であり、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物における(A)成分であるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等のアルカリ金属珪酸塩等が挙げられる。アルカリ剤は単独または混合して用いることができるが、これらのうち水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、オルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、日本化学工業社製の商品名:A珪酸カリウム(純分40%)(モル比SiO_(2):K_(2)O=3:1)が洗浄性とコストの理由で好ましい。本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、アルカリ剤を3?25質量%含有するが、5?24.5質量%含有することが好ましく、7?24質量%含有することがより好ましい。アルカリ剤が3質量%未満では洗浄力不足となり、25質量%を超えるとすすぎ性不良、貯蔵安定性不良、スケール付着抑制性不良となる。」
(4)「【0014】
(B)成分の金属イオン封鎖剤としては、グルタミン酸二酢酸、トリポリリン酸、アスパラギン酸二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、メチルグリシン二酢酸、3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、クエン酸、エチレンジアミンジマロン酸、イミノジコハク酸、エチレンジアミンジコハク酸、酒石酸、グルコン酸やオルトリン酸、ピロリン酸、ヘキサメタリン酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、β-アラニン二酢酸、セリン二酢酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸や、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。・・・」
(5)「【0018】
(C)成分のポリカルボン酸型ポリマー又はその塩としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体、無水マレイン酸-スチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体、無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸-アクリル酸エステル共重合体等や、これらの塩が挙げられるが、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体が好ましい。これらのポリカルボン酸型ポリマー又はその塩は、単独で用いても2種類以上組み合わせて用いても良い。・・・(C)成分のポリカルボン酸型ポリマー又はその塩は、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物中に0.1?10質量%含有されるが、0.3?8質量%が好ましく、0.5?5質量%がより好ましい。(C)成分が0.1質量%未満ではすすぎ水で薄められた洗浄機庫内のスケール付着抑制性不良となり、10質量%を超えると高温の貯蔵安定性不良となる。」
(6)【実施例】
ア 「【0029】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明する。実施例、比較例において配合に用いた(A)?(C)成分を下記に示す。」
イ 「【0030】
(A)成分
A-1:水酸化カリウム 商品名:フレーク苛性カリ、東亞合成社製
A-2:水酸化ナトリウム 商品名:粒状苛性ソーダ、旭硝子社製
A-3:炭酸カリウム 商品名:炭酸カリウム、旭硝子社製
A-4:珪酸ナトリウム(モル比SiO_(2):Na_(2)O=1:1) 商品名:無水メタ珪酸ナトリウム(純分95%)、日本化学工業社製
A-5:珪酸カリウム(モル比SiO_(2):K_(2)O=3:1) 商品名:A珪酸カリ(純分40%)、日本化学工業社製」
ウ 「【0031】
(B)成分
B-1:ニトリロ三酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon A92R、BASF社製
B-2:エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンNA、アクゾノーベル社製
B-3:グルタミン酸二酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンGL-47-S、アクゾノーベル社製
B-4:メチルグリシン二酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon M Powder、BASF社製
B-5:3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸四ナトリウム塩 商品名:HIDS、純分50%、日本触媒社製」
エ 「【0032】
(C)成分
C-1:ポリアクリル酸ナトリウム:重量平均分子量が4000 商品名:SokalanPA25CL(純分45%)、BASF社製
C-2:ポリマレイン酸ナトリウム:ポリマレイン酸(重量平均分子量が500、 商品名:Belclene200LA(純分50%)、BWA社製)を水酸化ナトリウムで中和して使用
C-3:ポリアクリル酸マレイン酸共重合体ナトリウム塩:重量平均分子量が10000 商品名:アクアリックTL213(純分36%)、日本触媒社製
C-4:ポリアクリル酸マレイン酸共重合体ナトリウム塩:重量平均分子量が1900 商品名:ACUSOL425N(純分50%)、ロームアンドハース社製
C-5:ポリアクリル酸マレイン酸共重合体ナトリウム塩:重量平均分子量が70000 商品名:SokalanCP5(純分40%)、BASF社製
【0033】
D-1:イオン交換水」
オ 「【0035】
実施例1?20、比較例1?14
表1?4に示す配合に基づき自動食器洗浄機用の濃縮液体洗浄剤組成物を調製した。各濃縮液体洗浄剤組成物を用い、自動食器洗浄機(ホシザキ電気製自動食器洗浄機:JWE-680AJ)により下記試験を行った。結果を表1?4に示す。尚、表中における実施例および比較例の各成分の配合割合は純分の質量%を表す。」
カ 「【0036】
(1)洗浄性
<被洗浄物>
・・・
<試験方法>
・・・
<洗浄条件>
・・・
<洗浄性評価>
洗浄、すすぎ後の皿を室温で乾燥後、暗室において蛍光灯光を照射、反射させて汚れの残存状況を目視判定により以下の基準で評価した。
◎:清浄な皿と比較して差がない。
○:うすい曇りのみが認められる。
△:スポットのみが認められる。
×:曇りとスポットが認められる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。」
カ 「【0037】
(2)すすぎ性
濃度が高い洗浄液を用いた場合のすすぎ性を試験した。
<被洗浄物>
・・・
<試験方法>
・・・
<洗浄条件>
・・・
<すすぎ性評価>
洗浄、すすぎ後の茶碗の糸尻に残留している水にフェノールフタレイン液を滴下しアルカリ剤の残留による変色反応を目視判定し、以下の基準で評価した。
◎:全く変色反応が認められない。
○:ほとんど変色反応が認められない。
△:僅かな変色反応が認められる。
×:顕著な変色反応が認められる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。」
キ 「【0038】
(3)茶渋洗浄性試験
<被洗浄物>
・・・
<試験方法>
・・・
<洗浄条件>
・・・
<茶渋汚れ付着>
・・・
<茶渋洗浄性評価>
洗浄工程100サイクル後の、プラスチックカップへの茶渋付着状態を目視判定し、以下の基準で評価した。
◎:茶渋の付着が認められない。
○:茶渋の付着がほとんど認められない。
△:茶渋の付着が認められる。
×:茶渋の付着が著しい。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。」
ク 「【0038】
(3)茶渋洗浄性試験
<被洗浄物>
・・・
<試験方法>
・・・
<洗浄条件>
・・・
<茶渋汚れ付着>
・・・
<茶渋洗浄性評価>
洗浄工程100サイクル後の、プラスチックカップへの茶渋付着状態を目視判定し、以下の基準で評価した。
◎:茶渋の付着が認められない。
○:茶渋の付着がほとんど認められない。
△:茶渋の付着が認められる。
×:茶渋の付着が著しい。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。」
ケ 「【0039】
(4)スケール付着抑制性試験
スケール付着抑制性試験-1
食器洗浄機の洗浄液タンク内の電熱線(ヒーター部分)および壁面へのスケール付着抑制性を、洗浄液タンク内と同様の擬似的条件下で試験した。
<試験方法>
・・・
<評価基準>
◎:スケールの付着が全く認められなかった。
○:スケールの付着がほとんど認められなかった。
△:スケールの付着が認められた。
×:著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。」
コ 「【0040】
スケール付着抑制性試験-2
食器洗浄機庫内の壁面(洗浄液タンク内は除く)の洗浄液がすすぎ水で薄まった条件でのスケール付着抑制性を、以下の方法で試験した。
<試験方法>
・・・
<洗浄条件>
・・・
<評価基準>
◎:スケールの付着が全く認められなかった。
○:スケールの付着がほとんど認められなかった。
△:スケールの付着が認められた。
×:著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。」
サ 「【0041】
<スケール付着抑制性総合評価>
スケール付着抑制性試験-1、スケール付着抑制性試験-2の両試験の結果より、以下の基準で評価した。
◎:1および2の両試験でスケールの付着が全く認められなかった。
○:1および2のどちらかの試験でスケールの付着がほとんど認められなかった。
△:1および2のどちらかの試験でスケールの付着が認められた。
×:1および2のどちらかの試験で著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。」
シ 「【0042】
(5)バイオフィルム防止性試験
<試験方法>
・・・
<評価基準>
1点:バイオフィルムがプレート壁面の0?20%未満を覆う状態。
2点:バイオフィルムがプレート壁面の20%以上40%未満を覆う状態。
3点:バイオフィルムがプレート壁面の40%以上60%未満を覆う状態。
4点:バイオフィルムがプレート壁面の60%以上を覆う状態。
として上記各菌種についてプレート壁面の状態を点数で評価し、2菌種のプレート壁面の状態を点数の平均値を求め、以下の基準でバイオフィルム防止性を評価した。
◎:平均値が1点以上1.5点未満
○:平均値が1.5点以上2.5点未満
△:平均値が2.5点以上3.5点未満
×:平均値が3.5点以上
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。」
ス 「(6)濃縮液体洗浄剤組成物の貯蔵安定性
低温安定性
<試験方法>
250ml透明ポリプロピレン製容器に濃縮液体洗浄剤組成物を250mlとり、蓋をして-5℃恒温槽に保管。1週間に1回揺り動かすことを繰り返し1ヶ月間行い、濃縮液体洗浄剤組成物の状態を以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:析出物や凍結が見られず安定である。
×:析出物もしくは凍結が見られる。
とし、○を実用性のあるものとして判定した。
高温安定性
<試験方法>
250ml透明ポリプロピレン製容器に濃縮液体洗浄剤組成物を250mlとり、蓋をして40℃恒温槽に保管し静置。6ヶ月後、濃縮液体洗浄剤組成物の状態を以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:析出物や濁りが見られず安定である。
△:析出物や濁りが、若干見られる。
×:析出物もしくは濁りが見られる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。」
セ 「【0044】
【表1】


ソ 「【0045】
【表2】



第4 取消理由通知における理由について
1 本件訂正前の請求項1?8に対して、当審が、令和元年10月3日付で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
(1)本件特許出願は、特許請求の範囲の記載が後記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。したがって、本件特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきである。
(2)本件特許の請求項1?8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記1、2の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明並びに同下記3、4の刊行物に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、請求項1?8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。
<引用文献一覧>
1.特開2000-63894号公報(甲1)
2.特表2011-522086号公報(甲2)
3.特開2006-124646号公報(甲4)
4.特開2010-47731号公報(甲5)
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
(1)取消理由について
ア 本件発明の課題
本件発明の課題は、前記第3、2(2)で摘記したように、本件発明の課題は、「低濃度で優れた洗浄性を有し、節水型自動食器洗浄機で洗浄した場合でも、食器類への汚れの再付着や茶渋、スケール、バイオフィルムの発生が少なく、すすぎ性に優れるため食器類に洗浄剤の残留がないコンパクトで作業性の高い自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を提供する」ことといえる。
イ ここで、前記ア(オ)に摘記したように、「本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、アルカリ剤を3?25質量%含有するが、5?24.5質量%含有することが好ましく、7?24質量%含有することがより好ましい。アルカリ剤が3質量%未満では洗浄力不足となり、25質量%を超えるとすすぎ性不良、貯蔵安定性不良、スケール付着抑制性不良となる。」とされている。
ウ 本件発明1の(B)及び(C)成分について
(ア)本件発明1は、(B)成分として、「エチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤」を特定し、(C)成分として、「ポリカルボン酸型ポリマー又はその塩」を規定するものである。
(イ)前記第2、2(5)において摘記したように、本件特許明細書の実施例においては、(B)成分も(C)成分もアルカリ金属塩で用いられており、その効果が確認されている。
(ウ)一方、本件出願時の技術常識に照らすと、本件発明1における(B)成分または(C)成分として遊離酸を選択して用いた場合には、(A)成分であるアルカリ剤が中和され、前記(イ)に摘記したように洗浄力不足になると考えられる。
(エ)そうすると、上記(ア)の本件発明の課題を解決できるとはいえないから、訂正前発明1における(B)及び(C)において、「酸」を選択した発明は、サポート要件を欠くから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない。
エ これに対して、本件発明においては、(B)、(C)成分のいずれについても遊離酸を用いる構成は削除され、塩のうちアルカリ金属塩を用いる構成に限定されている。それにより、本件発明においては、(A)成分であるアルカリ剤が(B)、(C)成分により中和されることがないから、前記アの課題が解決できることが理解できる。
(2)小括
したがって、本件発明が特許法第36条第6項第1号の規定を満たさないといえないから、本件発明に係る特許は特許法第113条第4号の規定により取り消すべきであるということはできない。
3 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
引用文献1には、次のように記載されている(当審注:原文中の半角文字は、一部を全角文字に変換した。)。
(ア)特許請求の範囲
a 「【請求項1】 アルカリ塩と、一般式
【化1】

(式中、MはH、Na、K、またはアルカノールアミンである)
で示されるグルタミン酸ジ酢酸またはその塩とを必須成分として含有し、1重量パーセント水溶液のpH値が9以上を呈することを特徴とする自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」
b 「【請求項3】 請求項1において、アルカリ塩の含有量が全組成物中10?25重量パーセントであり、グルタミン酸ジ酢酸またはその塩の含有量が全組成物中、1?35重量パーセントであり、かつ、1重量パーセント水溶液のpH値が12以上を呈し、さらに該組成物が液状を呈し、主に業務用自動食器洗浄機に適した請求項1に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」
c 「【請求項4】 請求項1ないし3において、アルカリ塩が水酸化アルカリ金属塩、炭酸アルカリ塩、ケイ酸アルカリ塩およびエタノールアミン類の群から選択された一種またはそれ以上である請求項1ないし3のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」
d 「【請求項8】 請求項1ないし7において、さらに、ポリカルボン酸アルカリ塩および/またはホスホン酸アルカリ塩を含有してなる請求項1ないし7のいずれかに記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」
e 「【請求項9】 請求項8において、ポリカルボン酸アルカリ塩および/またはホスホン酸アルカリ塩の含有量が全組成物中、0.02重量パーセント以上である請求項8に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」
f 「【請求項10】 請求項8において、ポリカルボン酸アルカリ塩がアクリル酸とマレイン酸の共重合体のアルカリ金属塩である請求項8に記載の自動食器洗浄機用洗浄剤組成物。」
(イ)【発明の詳細な説明】
a 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は自動食器洗浄機に用いられる洗浄剤組成物に係り、詳しくは家庭用ないし業務用の洗浄機に適したものであり、特に洗浄力が高く、しかも、洗浄の後、食器表面にウオータースポットや、フイルム等の汚れが残らず、洗浄仕上がり効果に優れ、かつ微生物分解性にも優れた自動食器洗浄機用洗浄剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動食器洗浄機用洗浄剤は家庭用ないしは業務用の自動食器洗浄機に供給され、汚れの付着した洗浄すべき食器類の表面に噴射スプレーして汚れを分解ないしは可溶化することにより食器類を洗浄している。
【0003】
このような洗浄剤は通常、アルカリ金属水酸化物等のアルカリ剤と、金属イオン封鎖剤(ビルダー)とから構成される。このうち、アルカリ剤は主に汚れの分解や可溶化を達成するものであり、また、ビルダーは洗浄効果を低下させるようなカルシウム、マグネシウム等の因子を除去して洗浄性を高めるものである。
【0004】
この種の洗浄剤として、従来、アルカリ剤としての水酸化ナトリウム、およびビルダーとしてのリン酸塩、例えばトリポリ燐酸ナトリウム、ピロ燐酸カリウム等を配合したものが知られている。しかし、リン酸塩の使用は環境への問題から非常に難しい。」
b 「【0026】
(II)業務用の自動食器洗浄機に適した洗浄剤組成物。
この組成物は上述のとおり、アルカリ塩と、グルタミン酸ジ酢酸またはその塩とを必須成分として含有し、1重量%水溶液のpH値が12以上を呈する液体である。
【0027】
アルカリ塩は上述と同様、汚れの分解や可溶化を行なう成分であって、具体的には上述の列挙成分と同じであるが、特に、水溶性が高く、しかもアルカリ度の高い水酸化アルカリ金属塩や珪酸アルカリ塩の使用が好ましく、この中でも特に、水酸化ナトリウムの使用が好ましい。なお、珪酸アルカリ塩は含有量が多い場合には、ガラス、陶器等の食器表面に珪酸が付着して曇りが発生したり、陶器の光沢が低下したり等が起こるので、多量の使用は好ましくない。
【0028】
上述アルカリ塩の含有量(配合量)は全組成物中、好ましくは10?25重量%、より好ましくは12?20重量%である。これが10重量%以下では、得られる組成物の1重量%水溶液のpHを12以上に維持することが難しく、また、25重量%以上では液体組成物の安定性がやや劣るが、実用上問題となるほどではない。
【0029】
さらに、上述のグルタミン酸ジ酢酸またはその塩(GLDA)は前述と同様、カルシウム、マグネシウム等の洗浄効果を低下せしめる因子を除去して洗浄性を高める成分(ビルダー)であって、上述の化2で示される一般式を有し、具体的には上述と同様、L-グルタミン酸ジ酢酸塩(L-GLDA)、特に、L-GLDAナトリウム塩が挙げられる。なお、この合成方法は上述と同様である。
【0030】
GLDAの含有量(配合量)は全組成物中、1?35重量%、好ましくは2?30重量%である。これが1重量%以下では、充分な洗浄力が得られず、また、35重量%以上では安定な液体組成物の調製が難しい。
【0031】
このようにしてなる洗浄剤組成物は1重量%水溶液のpH値が12以上の強アルカリ性であって、液状を呈するものであるから、洗浄効果が著しく高いとともに、粉体等のような面倒な操作を省くことができ、ホテル、レストラン等における業務用の自動食器洗浄機に適した洗浄剤であるということができる。
・・・
【0033】
上述洗浄剤組成物(I)および(II)はさらに、ポリカルボン酸アルカリ塩およびホスホン酸アルカリ塩のいずれか一方または両方を含有せしめ、これにより除去された汚れによる食器表面への再汚染を防止して食器洗浄後の仕上がりを良好にすることができ、さらに、食器洗浄槽内へのスケール析出をも防止することができる。この含有量は全組成物中、0.02重量%以上である。これが0.02重量%以下では、上述効果が得られない。
【0034】
ポリカルボン酸アルカリ塩としては、特に限定されないが、アルカリ水溶液中への溶解性ならびに洗浄効果を考慮してアクリル酸とマレイン酸の共重合体のアルカリ金属塩が好ましく、特に分子量2,000?5,000のものが好ましい。」
c 「【0041】
本発明の洗浄剤組成物(II)については、これが0.5?1重量%程度の濃度で使用される場合、1重量%水溶液のpH値が12以上になるようにアルカリ塩の量を調整することが必要である。このpH値が12以下では、洗浄力は大きく低下する。
【0042】
上記知見より、本発明洗浄剤組成物(II)の具体的な好ましい組成割合は、一例を示せば次のとおりである。
【0043】
GLDANa塩 2?30重量%
水酸化ナトリウム 12?20 〃
メタ珪酸ナトリウム 0? 5 〃
グルコン酸ナトリウム 0.5?4 〃
ポリカルボン酸ナトリウム(アクリル酸とマレイン酸の共重合体。
分子量3,000) 0.02重量%
上水道水 残り(バランス)
【0044】
このような本発明にかかる洗浄剤組成物(II)は水で希釈して0.5?1重量%の洗浄剤水溶液とし、これを液温50?80℃に調整してホテル、レストラン等の業務用自動食器洗浄機の洗浄液噴出ノズルから食器にスプレーし、食器洗浄を行なう。」
d 「【0061】
実施例2
表2に示す各試料組成の1重量%水溶液を試験試料とし、これら各試料についてpH値測定および各試料組成物の原液の外観観察を行なうとともに、洗浄性試験を行い、結果を表2に示した。稀釈に用いた水は炭酸カルシウム硬度として80ppmの人工硬水である。
【0062】
pH値の測定は常温における各試料のpH値をpH計で測定することにより行なった。また、組成物の原液の外観観察は試料を室温、-5℃の低温、50℃の高温で1週間放置の後、試料の外観を目視で観察し、試料の「溶液安定性」を評価した。
【0063】
洗浄性試験は各試料につき、自動食器洗浄機としてナショナル食器洗い乾燥機〔松下電器産業(株)製。品番NP-5800M〕を用い、洗浄温度80℃、洗浄時間60秒、すすぎ時間60秒の条件で、被洗物として実施例1と同様の被洗物1、および被洗物2を洗浄することにより行なった。なお、表2の各成分はいずれも表1と同様であり、かつ表1と同様に純分換算量である。また、評価の判定基準についても表1と同様である。」
e 「【0064】
【表2】


f 「【0065】
表2から次のことがわかる。本発明にかかる実施例試料Nos.1?12はいずれもpH値が12以上であって、洗浄性に優れ、かついずれも均一で透明であって、試料の溶液安定にも優れている。
【0066】
一方、比較例試料No.1はGLDA-4Naを含まず、かつ、1%水溶液のpH値が12以下であって、洗浄性に劣る。また、比較例試料No.2?No.4はいずれもpH値が12以上に維持されるものの、GLDA-4Naを含まず、このため、やはり洗浄性に劣る。さらに比較例試料No.3および4は水酸化ナトリウム含有量が多いため試料に分離、晶析、固結等がみられ、溶液安定性に劣る。
【0067】
【発明の効果】
・・・
【0068】
さらに、本発明にかかる洗浄剤組成物(II)pH12以上の強アルカリを維持するため、洗浄力が非常に高く、かつ洗浄仕上がり効果にも優れ、しかも液状を呈し、特に業務用の自動食器洗浄機の使用に適している。
【0069】
さらに、上述の洗浄剤組成物(I)および(II)はいずれも、主成分が微生物に分解されやすいため、廃棄の後、廃液が微生物分解され、このため環境保全の面からも好ましい。」
イ 引用文献2
引用文献2には、次のように記載されている(当審注:原文中の半角文字は、全角文字に変換した箇所もある。)。
(ア)特許請求の範囲
a 「【請求項1】
a.少なくとも2つのスケール制御成分;
b.ヒドロトロープ;
c.アルカリ性供給源;
d.水;
を含む高濃縮アルカリ清浄組成物であって、低い使用希釈でスケール制御性を有し、維持する組成物。」
b 「【請求項2】
請求項1に記載の濃縮アルカリ清浄組成物であって、当該少なくとも2つのスケール制御成分がキレート剤と金属イオン封鎖剤の組み合わせを含む組成物。」
c 「【請求項3】
請求項2に記載の濃縮アルカリ清浄組成物であって、当該キレート剤が、メチルグリシン二酢酸;グルコヘプトン酸ナトリウム;ヒドロキシエチル二酢酸二ナトリウム;イミノジコハク酸;S.S-エチレンジアミン-N.N’-二コハク酸;またはその2または2以上の混合物を含む組成物。」
d 「【請求項4】
請求項2に記載の濃縮アルカリ清浄組成物であって、当該金属イオン封鎖剤が、ポリアスパラギン酸ナトリウム;カルボキシメチルイヌリンナトリウム、アミノトリメチレンホスホン酸塩、ポリアクリル酸、およびグルタミン酸、N,N-二酢酸四ナトリウム塩またはその2または2以上の混合物を含む組成物。」
e 「【請求項5】
請求項1に記載の濃縮アルカリ清浄組成物であって、前記アルカリ性供給源が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムまたはその混合物を含む組成物。」
(イ)発明の詳細な説明
a 「【0002】
この発明は、従来の濃縮アルカリ洗浄組成物に比べて低使用希釈濃度で硬水スケール形態の優れた制御を提供する、生分解性キレート剤と金属イオン封鎖剤とを組合せた相乗的スケール制御成分を含む超濃縮アルカリ洗浄剤製品に関する。特に、この発明は医療器具、家庭用品、他の機器および硬質表面の洗浄に使うための、ユーザに優しく、生分解性、超濃縮アルカリ洗浄組成物に向けられ、それらは低アルカリ含有量で有効な洗浄を達成し、かつ有益なスケール阻害、脱汚染および適合性特性を所有する。有効な清浄および有益な特性が、希釈においても、また例外的な硬水中であってさえも使用の間に亘って維持される。
【0003】
<発明の背景>
本発明は、特に、医療器具、家庭用品または他の装置を清浄するために手動もしくは自動適用に有用であることに関して、主に考察されるが、その使用は、これらの適用に限定されるものではない。特に、発明組成物は外科器具(外科用メス、生検器具、クランプ等)、内視鏡、直腸鏡、腹腔鏡、結腸鏡、および医療または外科手法に用いられる他の機器、他の金属機器、医療および/または歯科の実施における使用での他の金属機器および表面を洗浄するために用いられてよい。また、本発明は、例えば制約製造設備、酪農場、水リサイクル機器、食品処理、レストラン、ヘアーサロン、美容処理、獣医開業、および幾つかの他の適用、ここにおいて、ヒトまたは動物血液、タンパク質、脂質汚物または他の同様な汚物の洗浄が要求され、かつスケール制御および適用洗浄組成物での軟金属との適合性を特に必要とするような同様な洗浄要求を有する設備で器具、機器、硬質表面等を含むことを意図する。本発明組成物はそれらの脱汚染特性に対しても有用である。」
b 「【0017】
最近、市販のアルカリ洗浄製品の使用について他の欠点がある。多くの洗浄剤系は、全体的な生分解性を考慮されないテトラナトリウムエチレンジアミンテトラアセタイト(EDTA)またはニトリロトリ-アセテイト(NTA)のようなキレート剤の使用を適用している。NTAは殺虫剤抵抗性行動委員会(IRAC)の作業グループによって、人に対する発癌物質(グループ2B)の可能性として分類されている。さらに、ある成分は、規制制限のために、例えば、ヨーロッパなどのある地理的領域で用いることができない。したがって、従来の液体洗浄剤を使用して達成する清浄効果は、環境に優しくなく、かつ安全ではない成分の使用を要求するものであった。」
c 「【0045】
本発明の重要な側面は、生分解性であるスケール阻止成分およびキレート剤の相乗的系の利用である。キレート化およびスケール阻止は、組成物の洗浄性能で積極的な影響力を有する。好ましくは、キレート剤はメチルグリシン二酢酸三ナトリウム((MGDA)、TrilonMとして商業的に知られている)であるが、従来知られている他の生分解性キレート剤を使用してよい。好ましい態様において、少なくとも2つのキレート剤、金属イオン封鎖剤、または他のスケール阻止成分が組み合わされて、低使用希釈で予測外に優れたスケール阻止を生じ、これは洗浄プロセス全体に亘って維持される。」
d 「【0058】
スケール制御のための化学物質は市場において比較的新しく、生分解性である。本発明の組成物のために利用される金属イオン封鎖剤は、ポリアスパラギン酸ナトリウム(Baypure DS 100);カルボキシル化置換度(DS)が2.5であるカルボキシメチルイヌリンナトリウム(Dequest SPE 15625);アミノトリメチレンホスホン酸塩(Dequest 2006);ポリアクリル酸;およびGLDA(グルタミン酸、N,N-二酢酸、四ナトリウム塩(Dissolvine GL-45-S)を含んでよい。好ましい金属イオン封鎖剤は、カルボキシメチルイヌリンナトリウム(DS2.5)である。更に他の好ましい金属イオン封鎖剤は、アミノトリメチレンホスホン酸塩およびポリアクリル酸を含む。好ましくは、好ましい金属イオン封鎖剤の組み合わせが使用される。
【0059】
キレート剤は、また、スケール制御のために使用される。権利請求される本発明で使用するために選択されるキレート剤は、メチルグリシン二酢酸(MGDA、Trilon Mとして入手可能)、グルコへプトン酸ナトリウ(Burco BSGH-400)、ヒドロキシメチルイミノ二酢酸二ナトリウム(XUS 40855.01)、イミノジコハク酸(Baypure CX 100/34またはBaypure CX100 Solid G)、EDDS([S,S]-エチレンジアミン-N,N'-ジコハク酸)(Octaquest A65 or Octaquest E30)、クエン酸、グリコール酸および乳酸を含んでもよい。好ましいキレート剤は、イミノ二コハク酸二ナトリウム塩(imino disuccinic acid tetrasodium salt)である。もう1つの好ましいキレート剤は、メチルグリシン二酢酸三ナトリウム塩である。
【0060】
キレート剤/金属イオン封鎖剤は、本発明の配合物において、濃縮物の総重量に基づいて、約10?約50重量%、より好ましくは約20?約50重量%および最も好ましくは約30?約50重量%の範囲の量で存在する。1よりも多くのキレート剤/金属イオン封鎖剤が使用されてもよく、実際に好ましく、且つその範囲は、本発明の配合物におけるキレート剤/金属イオン封鎖剤の総量で記載する。1つの好ましい態様において、少なくとも3つのキレート剤/金属イオン封鎖剤成分が利用されて、予想外のスケール阻害を達成する。
【0061】
アルカリ性供給源
最も好ましいアルカリ性系は、組み合わされた水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムであるが、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの何れかの適切な濃度が使用されてもよい。水酸化ナトリウム/カリウムの組み合わせが、10以上の清浄組成物のpHが使用の間さえも維持し、これは、キレート剤およびスケール阻害剤のための至適性能範囲であることが見出された。更なるアルカリ性供給源は、エタノールアミンまたはトリエタノールアミン(TEA)を含むが、これらの供給源の好ましさは小さい。」
e 「【0073】
例2
実験は、種々の発明配合物のスケール阻害/制御特性を決定するために行われた。以下の表2は、試験された発明の配合物の各成分および各成分の重量%を列記する。

【0074】
上記のキレート剤/金属イオン封鎖剤の組み合わせは、アルカリ溶液中で調製され、例外的な硬水(即ち、CaCO_(3)として>約300ppm)においてそれらの組み合わされた有効性について評価された。全ての配合物は、アルカリグルコシドをヒドロトロープとして含み、残余は水であった。」
ウ 引用文献3
引用文献3には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項2】
(A)NaOH、KOH、およびM_(2)O/SiO_(2)(式中、Mは、NaまたはKを示す。)>1(モル比)で示される珪酸塩より選ばれる少なくとも1種を3?30質量%、
(B)下記一般式(1)で表される化合物を5?35質量%、
【化2】


(式中、M^(1)?M^(4)は、互いに同一でも異なっていてもよい、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアルキルアンモニウムを示す。)
(C)カルボキシル基含有水溶性ポリマーを0.5?10質量%、並びに
(D)水を残部含むことを特徴とする業務用自動洗浄機用洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)/マレイン酸共重合体(塩)、マレイン酸(塩)とα-オレフィンとの共重合体(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)/(メタ)アクリルアミドプロパンスルフォン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)と(メタ)アリルスルホン酸(塩)との共重合体(塩)、スチレンと無水マレイン酸(塩)との共重合体(塩)、およびスチレンとマレイン酸(塩)との共重合体(塩)から選ばれる少なくとも1種のポリマーであることを特徴とする請求項1または2記載の業務用自動洗浄機用洗浄剤組成物。」
(イ)「【0014】
・・・
第2の洗浄剤組成物中における(A)成分の含有量は、3?30%であり、3%未満では、充分な洗浄力が発揮されない可能性が高く、一方、30%を超えると、液体組成系の経日安定性が低下し、沈殿、液分離等の問題が生じる可能性が高い。
【0015】
上記式(1)で示される(B)成分は、3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸(塩)(以下、HIDSという)であり、第1の洗浄剤組成物中で、キレート剤として作用するものである。
式(1)において、M^(1)?M^(4)は、互いに同一でも異なっていてもよい、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムまたはアルキルアンモニウムを示すが、アンモニア臭が無く、水溶性が良好であるということから、水素原子、Na,K等のアルカリ金属が好ましく、中でも、Na,K等のアルカリ金属が好適である。
【0016】
・・・
第2の洗浄剤組成物中における(B)成分の含有量は、5?35%であり、5%未満では、スケール付着抑制効果が不充分となる可能性が高く、一方、35%を超えると、液体組成の経日安定性が低下し、沈殿、液分離等の問題が生じる可能性が高い。これらの点を考慮すると、(B)成分の含有量は、10?25%が好ましく、10?15%がより好ましい。
【0017】
(C)成分は、カルボキシル基含有水溶性ポリマーであり、カルボキシル基を含み、水溶性を示すポリマーであれば、特に限定されるものではないが、(B)成分との相乗効果により、スケールの発生および付着抑制効果をより一層高めることを考慮すると、ポリ(メタ)アクリル酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)/マレイン酸共重合体(塩)、マレイン酸(塩)とα-オレフィンとの共重合体(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)/(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸(塩)、(メタ)アクリル酸(塩)と(メタ)アリルスルホン酸(塩)との共重合体(塩)、スチレンと無水マレイン酸(塩)との共重合体(塩)、スチレンとマレイン酸(塩)との共重合体(塩)が好ましく、特に、マレイン酸(塩)とα-オレフィンとの共重合体(塩)が好適である。これらのカルボキシル基含有水溶性ポリマーは1種単独で、または2種以上混合して用いることができる。なお、(メタ)アクリルは、メタアクリルまたはアクリルを、(メタ)アリルは、メタアリルまたはアリルを表す。
【0018】
カルボキシル基含有水溶性ポリマーの重量平均分子量としては、通常、1,000?90,000程度であり、好ましくは3,000?50,000程度である。
カルボキシル基含有水溶性ポリマーとして塩を用いる場合、水溶性が良好であり、アルカリ性を示すことから、ナトリウム,カリウム等のアルカリ金属塩が好適である。なお、塩の場合、カルボキシル基の全部が中和されていてもよく、一部のみが中和されていてもよい。
【0019】
第1および第2の洗浄剤組成物中における(C)成分の含有量は、0.5?10%であり、0.5%未満では、スケール発生および付着抑制効果が不充分となる可能性が高く、一方、10%を超えても性能のさらなる向上は望めないだけでなく、コスト増を招来してしまう。これらのことを考慮すると、(C)成分の含有量は、0.5?5%であることが好ましく、1?5%がより好ましい。
本発明の洗浄剤組成物においては、(B)成分と(C)成分との併用による相乗効果により、スケール付着抑制効果がより一層高まるものである。」
(ウ)「【0026】
[実施例8?14,比較例6?11]液体洗浄剤組成物
500mlガラスビーカーにイオン交換水を添加した後、必要に応じてHIDS((株)日本触媒製:40%水溶液)、必要に応じてHEDP(BRIQUEST ADPA 60A、オルブライト ウイルソン社製)を添加し、充分にマグネットスターラーで撹拌した。続いて48%水酸化ナトリウム水溶液(鶴見曹達(株)製)または48%水酸化カリウム水溶液(旭硝子(株)製)、必要に応じて液体状の高分子(1)(40%水溶液)およびその他の成分を添加し、液体洗浄剤組成物を調製した。各成分の配合割合(%)(水溶液のものについては有効成分量を表す。)を表2に示す。なお、実施例14のKOH水溶液の配合割合はKOHとして25%であるが、HEDPの中和で5%消費されるため、真の有効量は20%である。
【0027】上記各実施例および比較例で調製した各洗浄剤組成物について、スケール付着性および洗浄力を下記方法により測定・評価した。結果を・・・表2に併せて示す。
[1]スケール付着性
上記各実施例および比較例で得られた洗浄剤組成物に、アメリカ硬度90ppmの水道水(東京都江戸川区)を加えて洗浄剤組成物として0.15%に希釈調整(固形、液体とも)した洗浄剤水溶液75mlを、100mlステンレス製ビーカーに加えた。さらに、このビーカーに、ステンレス板(SUS304、厚さ×幅×長さ=1.0×25×75mm)を入れて、ウォーターバスで加熱して溶液を蒸発させていき、液量が20?30mlになったところで、洗浄剤水溶液の残液を捨て、ステンレスビーカーにイオン交換水を約100ml入れ、10分間加熱し、すすぎを行った。
その後、ステンレス板をビーカーから取り出し、この板に付着しているスケールの量を目視判定し、下記基準にて評価した。
◎:スケールが全く付着していない
○:スケールがほとんど付着していない
△:スケールが少し付着している
×:スケールが多量に付着している
【0027】
・・・
【0028】
[2]洗浄力
〈洗浄条件〉
使用洗浄機:ドアタイプ業務用自動食器洗浄機(JWD-6型、石川島播磨重工(株)製、洗浄剤水溶液が回転ノズルから噴射され、その噴射軌道上面に設置された食器類を洗浄し、洗浄機内上方4角から仕上げすすぎを行なう形式のもの)
洗浄温度:60℃
仕上げすすぎ温度:80?85℃
洗浄用水:アメリカ硬度90ppmの水道水
洗浄濃度:0.1%(洗浄剤組成物としての濃度)
洗浄時間:40秒
仕上げすすぎ時間:12秒
【0029】
〈洗浄力評価〉蛋白汚れ洗浄力測定法
市販されている鶏卵をビーカーに割卵し、卵白、卵黄を充分均一になるまで撹拌した後、攪拌した卵3gを直径25cmの磁器皿に薄く伸ばして塗布し、室温で20時間風乾したものを4枚洗浄に供した。
洗浄後の皿に残留しているタンパク質を確認するため、タンパク質と反応するエリスロシンを用い、洗浄後の皿が着色するか否かを目視で確認し、下記基準により評価した。
○:タンパク質が完全に除去された
△:皿全面の半分程度にタンパク質の残留(着色)が認められた
×:全く洗浄されなかった」
(エ)「【0031】
【表2】

NaOH:48%水酸化ナトリウム水溶液、鶴見曹達(株)製
KOH:48%水酸化カリウム水溶液、旭硝子(株)製
EDTA4Na:キレスト400、キレスト(株)製
NTA3Na:キレスト700、キレスト(株)製
HIDS:(株)日本触媒製
HEDP:BRIQUEST ADPA 60A、オルブライトアンドウイルソン社製
高分子(1):C5オレフィン/無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩(クインフロー750、日本ゼオン(株)製)
【0032】
表1および2に示されるように、(A)?(C)成分の3成分を含む各実施例の洗浄剤組成物では、比較例の洗浄剤組成物に比べ、スケール抑制能および洗浄力に優れていることがわかる。」
エ 引用文献4
引用文献4には次の記載がある。
(ア)「【0023】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、使用にあっては水等で適当な濃度に希釈した洗浄液として用いられることが好ましい。
【0024】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を用いた業務用食器洗浄機による洗浄の際には、該組成物は、供給装置によって業務用食器洗浄機内部に一定量任意に移送され、適正な洗浄液の濃度が維持される。食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、業務用食器洗浄機専用のチューブを食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が充填されたプラスチック等の容器の中に直接差し込み吸い上げられて、業務用食器洗浄機内部へ供給される。
【0025】
本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、洗浄液中の濃度が0.05?0.5重量%で使用されるが、経済性、洗浄性の観点から、0.05?0.3重量%が好ましく、さらに0.05?0.2重量%が好ましい。食器の洗浄時間は、洗浄性の観点から、10秒?3分が好ましく、さらに好ましくは、20秒?2分である。洗浄液の洗浄温度は、短時間での洗浄性を高めるためには、非常に重要で40℃以上が好ましく、特に40?70℃が好ましい。食器は洗浄された後、通常、同じ業務用食器洗浄機にて速やかに60?90℃の温水で濯ぎが行われる。濯ぎは60?90℃の温水のみで行うことができる。
【0026】
業務用食器洗浄機では、食器を連続洗浄する場合、洗浄液はポンプで循環させて繰り返し使用し、洗浄している。
【0027】
業務用食器洗浄機により食器を連続洗浄する場合、食器による洗浄液の持ち出しや、洗浄槽への濯ぎ水のキャリーオーバーなどによって、洗浄回数とともに洗浄液の濃度が減少する。適切な洗浄液の濃度を維持するため、自動供給装置によって適正濃度となるように食器洗浄機用液体洗浄剤組成物が供給される。
【0028】
食器洗浄機用液体洗浄剤組成物の自動供給装置としては、特に限定されるものではないが、洗浄液の濃度をセンシングし、シグナルを受信して、チューブポンプを駆動させて、必要量の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物を供給する。
【0029】
この自動供給装置は、1日の洗浄回数が非常に多い業務用には好適に用いられ、洗浄回数毎の手投入に比べ、格段に手間が省けるという利点があり、またそれ以外に、1日中(洗浄中)適正濃度を維持することが容易となる。」
(イ)「【実施例】
【0030】
表1に示した配合組成の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物(何れもpH11.8/25℃)を調製し、以下の方法で洗浄性と抑泡性を評価した。結果を表1に示す。
・・・
【0036】
【表1】


(ウ)「【0037】
表1の結果から、本発明の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、洗浄性、抑泡性に優れていることが明らかとなった。
【0038】
また、表中の成分は以下のものである。
・ポリアクリル酸、カリウム塩:オリゴマーM3(花王(株)製)
・・・」
(2)引用文献1に記載された発明の認定
ア 前記(1)ア(イ)dに摘記した引用文献1の「実施例2」の項に存在する実施例6に注目すると、「水酸化ナトリウム(10重量%)、メタ珪酸ナトリウム(3重量%)、ポリカルボン酸ナトリウム(0.05重量%)、グルタミン酸ジ酢酸ナトリウム塩(20重量%)及び水を含有する自動食器洗浄機用洗浄剤組成物」が開示されていることが読み取れる。
イ 前記(1)ア(イ)cで摘記したように、この洗浄剤組成物は、水で希釈して洗浄剤水溶液にすることためのものであるから、「濃縮液体」であるといえる。
ウ 前記アの水酸化ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウムは、「アルカリ剤」に相当し、それらの合計は13重量%である。
エ 以上の検討及び前記アの組成物の成分を、本件発明1の成分の分類にしたがって分類し、また、計算することにより、次の発明(以下「引用発明1」という。)が認定できる。
「(A)成分として水酸化ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウム合計13重量%、
(B)成分としてグルタミン酸ジ酢酸ナトリウム塩20重量%、
(C)成分としてポリカルボン酸ナトリウム0.05重量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=33重量%であり、(A)成分と(B)成分の重量比が、(A)/(B)=0.65であり、かつ、(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=400である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」の発明。
(3)引用文献2に記載された発明の認定
ア 引用文献2から把握できる課題
引用文献2から把握できる課題は、前記(1)イ(イ)aに摘記したように、「この発明は医療器具、家庭用品、他の機器および硬質表面の洗浄に使うための、ユーザに優しく、生分解性、超濃縮アルカリ洗浄組成物に向けられ、それらは低アルカリ含有量で有効な洗浄を達成し、かつ有益なスケール阻害、脱汚染および適合性特性を所有する。」ことといえる。
イ その課題を解決するために、超濃縮アルカリ洗浄組成物において、同cで摘記した「生分解性であるスケール阻止成分およびキレート剤の相乗的系の利用」に関するものといえる。
ウ 前記(1)イ(イ)eの段落【0074】に記載されたように「残余は水」とも記載されている。
エ 引用発明2
前記(1)イ(イ)eに摘記した表2の「40A」とされた例に注目し、本件発明1の分類を利用することにより、引用発明2を以下に認定できる。
「(A)成分として水酸化ナトリウム15.00重量%、
(B)成分として生分解性のキレート剤であるMGDA29.10重量%、
(C)成分としてスケール阻止成分である生分解性のポリアクリル酸6.25重量%、
(D)成分として水、
を含有する超濃縮アルカリ洗浄組成物。」の発明。
(4)引用文献3、4に記載された事項の認定
ア 引用文献3について
(ア)引用文献3に記載の組成物の用途について
前記(1)ウ(ア)に摘記したように、「業務用自動洗浄機用洗浄剤組成物」と記載されており、同(ウ)に摘記した「0.15%に希釈調整(固形、液体とも)した洗浄剤水溶液」との記載から、引用文献3に記載されたものも、濃縮液体であるといえる。
(イ)成分について
a 前記(1)ウ(ア)の(A)成分は、アルカリ剤といえる。
b 同(B)成分は、同(イ)に摘記した【0015】段落には、「3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸(塩)(以下、HIDSという)であり、第1の洗浄剤組成物中で、キレート剤として作用する」と記載されており、キレート剤が金属イオンを封鎖することは技術常識であって、HIDSが金属イオン封鎖剤として機能することは当業者が読み取れることである。
c (C)成分は、カルボキシル基含有水溶性ポリマーであって、前記(1)ウ(ウ)の実施例においては、C5オレフィン/無水マレイン酸共重合体ナトリウム塩を用いたというのであるから、「ポリカルボン酸型ポリマー」に相当する。
(ウ)成分の量について
a 前記(1)ウ(イ)に摘記したように(A)成分は、3?30質量%とされ、(B)成分の量は、より好ましくは、「10?15質量%」とされている。
b (C)成分の含有量は、1質量%(実施例)とされ、また、前記(1)ウ(イ)の段落【0019】には、スケールの発生および付着抑制効果及びコスト考慮すると「(C)成分の含有量は、0.5?5%であることが好ましく、1?5%がより好ましい。」とされている。
(エ)引用文献3記載事項
以上から、引用文献3には、次の事項が記載されているといえる。
「(A)成分としてアルカリ剤3?30質量%、
(B)成分として、金属イオン封鎖剤である3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸(塩)10?15質量%、
(C)成分として、スケールの発生および付着抑制のためのポリカルボン酸型ポリマーであるカルボキシル基含有水溶性ポリマー1質量%または1?5質量%
(D)成分として水
を含有する業務用自動洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」
イ 引用文献4について
(ア)引用文献4に記載の組成物の用途について
前記(1)エ(ア)に摘記したように、引用文献4に記載の食器洗浄機用液体洗浄剤組成物は、希釈して用いることから、濃縮液体であるといえる。
(イ)前記(1)エ(イ)に摘記した実施例2から、次の事項が読み取れる。
「(A)成分としてアルカリ剤を14.8重量%、
(B)成分としてエチレンジアミン4酢酸のナトリウム塩10重量%
(C)成分としてポリアクリル酸カリウム塩1重量%
(D)成分として水
を含有する食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」
(5)前記(2)の引用発明1との対比・判断
ア 本件発明4について
(ア)引用発明1における重量%は、通常の条件では、本件発明4の「質量%」と同義といえる。
(イ)引用発明1における「(A)+(B)=33重量%」及び引用発明1-2における「(A)+(B)=40重量%」は、いずれも本件発明4の「20?50質量%」の範囲内である。
(ウ)引用発明1における「(A)/(B)=0.65」は、本件発明4の「0.15?0.75」の範囲内である。
(エ)引用発明1における水酸化ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウムは、本件発明4の「アルカリ剤」に相当する。
(オ)引用発明1における「グルタミン酸ジ酢酸」は、本件発明4における「グルタミン酸二酢酸」と同義であり、「グルタミン酸ジ酢酸ナトリウム」は、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩に含まれる。これが、金属イオン封鎖剤であることは、技術常識である。
(カ)引用発明1における「ポリカルボン酸ナトリウム」は、前記(1)ア(イ)cに摘記したようにアクリル酸とマレイン酸との共重合体のナトリウム塩であるから、本件発明1の「ポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩」に含まれる。
(キ)対比・判断
a 一致点
以上から、引用発明1と本件発明4との一致点は、以下のとおりである。
「(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?50質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。」
b 相違点
本件発明4と引用発明1とは、次の2つの点で相違する。
(C)成分について、本件発明4においては、1?3質量%含有するのに対して、引用発明1においては、0.05質量%含有する点。(以下「相違点1-1」という。)
(B)成分と(C)成分の質量比について、本件発明4においては、(B)/(C)=15?350であるのに対して、引用発明1においては、400である点。(以下「相違点1-2」という。)
c 相違点についての判断
(a)前記相違点1-1及び相違点1-2は、相互に関連するものであるから、まとめて検討する。
(b)前記(1)ア(イ)bに摘記した引用文献1の段落【0033】には、「ポリカルボン酸アルカリ塩・・・この含有量は全組成物中、0.02重量%以上」と記載され、その上限は規定されていないものの、具体的に「1?3質量%」とし、「B)/(C)=15?350」とすることが示唆されているとはいえない。
(c)前記(1)ウに摘記したように、引用文献3は、引用発明1における(B)成分とは異なるキレート剤(3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸(塩))を必須とするものであるから、引用発明1における(B)成分のキレート剤に対してどの程度の(C)成分を添加するか、また、(B)成分と(C)成分の質量比をどの程度にするかの参考になるとはいえないものである。
(d)前記(1)エに摘記したように、引用文献4に具体的に記載されているのは、引用発明1とは異なるキレート剤であるEDTAナトリウム塩であり、引用発明1における(B)成分のキレート剤に対してどの程度の(C)成分を添加するか、また、(B)成分と(C)成分の質量比をどの程度にするかの参考になるとはいえないものである。
(e)そして、相違点1-1及び1-2に係る本件発明4の構成により、本件発明4に係る自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は、洗浄液タンク内のスケールの発生を抑制しつつ、洗浄機壁面へのスケール発生を抑制するという格別な作用効果を奏するものである。
(f)以上のとおり、本件発明4は、引用発明1及び引用文献1?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明5?8について
本件発明5?8は、本件発明4に係る自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法であって、さらに希釈率の特定を加えた発明であるから、前記アと同様に引用発明1から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(6)前記(3)の引用発明2との対比・判断
ア 本件発明4について
(ア)引用発明2の「水酸化ナトリウム」は、本件発明4の「アルカリ剤」に相当する。
(イ)引用発明2の「生分解性のポリアクリル酸」は、本件発明4の「ポリアクリル酸」に相当する。
(ウ)引用発明2の「超濃縮アルカリ洗浄組成物」は、本件発明4の「濃縮液体洗浄剤組成物」に含まれる。
(エ)引用発明2の「MGDA」は、本件発明4の「メチルグリシン二酢酸」に相当し、金属イオン封鎖剤であることは引用文献2に記載されている。
(オ)対比・判断
a 一致点
以上から、引用発明2と本件発明4との一致点は、以下のとおりである。
「(A)成分としてアルカリ剤、
(B)成分、メチルグリシン二酢酸
(C)成分としてポリアクリル酸
(D)成分として水、
を含有する濃縮液体洗浄剤組成物。」である点。
b 相違点
本件発明4と引用発明2とは以下の点で相違する。
(a)相違点2-1
(B)成分について、本件発明4においては「エチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤」と特定されているのに対し、引用発明2においては「メチルグリシン二酢酸」とされ、アルカリ金属塩かどうか明らかでない点。
(b)相違点2-2
(C)成分のポリアクリル酸について、本件発明4においては、重量平均分子量が500?20,000と特定され、かつ、アルカリ金属塩とされているのに対して、引用発明2においては、重量平均分子量が不明であり、アルカリ金属塩かどうか明らかでない点。
(c)相違点2-3
用途について、本件発明4においては、「自動食器洗浄機用」と特定されているのに対して、引用発明2においては特定がない点。
(d)相違点2-4
量比について、本件発明4においては、(A)成分、(B)成分、(C)成分の含有量が、前記第2、2に摘記した請求項1に記載のとおり特定されているのに対して、引用発明2においては特定がない点。
c 相違点についての判断
以下、相違点2-4について検討を行う
(a)(A)+(B)について
引用発明2において、(A)+(B)を計算すると、15.00+29.10=44.10となる。本件発明4の「20?35質量%」とは相違する。
(b)(A)/(B)について
引用発明2において、(A)/(B)を計算すると、15.00/29.10=0.515となるから、本件発明4の「0.15?0.75」を充足する。
(c)(B)/(C)について
引用発明2において、(B)/(C)を計算すると、29.10/6.25=4.66となり、本件発明の「15?350」とは相違する。
(d)考察
前記(b)の一致点を維持したまま、前記(a)及び(c)の相違点を同時に解消するためには、(A)成分の含有量、(B)成分の含有量、(C)成分の含有量のいずれもを調整する必要がある。しかしながら、引用文献1?4を見ても、このような調整について示唆する記載は見受けられないので、当業者が容易に想到できるということはできない。
d 以上のとおり、本件発明4は、引用発明2及び引用文献1?4に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明5?8について
本件発明5?8は、本件発明4に係る自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いた洗浄方法であって、さらに希釈率の特定を加えた発明であるから、前記アと同様に引用発明1から当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(7)小括
前記(5)、(6)で検討したように、本件発明4?8は、引用発明1、引用発明2のいずれからも当業者が容易に発明することができたものとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明とはいえず、特許法第113条第2号の規定により、本件発明4?8に係る特許を取り消すべきとはいえない。

第5 取消理由として採用しなかった特許異議申立て理由について
1 甲第3号証について
(1)申立人は、特許異議申立書において、甲第3号証として、特開2014-114337号公報を提示し、本件発明は、甲第3号証に記載された比較例3に基いて当業者が容易に発明でき、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であると主張している。
(2)甲第3号証の記載事項
ア 「【請求項1】
(A)水酸化物、珪酸塩、及び炭酸塩から選ばれる少なくとも1種のアルカリ剤を1質量%?30質量%と、(B)キレート剤を1質量%?30質量%と、(C)カチオン化多糖類及びカチオン化高分子化合物の少なくともいずれかを0.1質量%?3質量%と、を含有し、
組成物中の総ナトリウムイオン量が5.0質量%未満であることを特徴とする液体食器洗浄機用洗浄剤組成物。」
イ 「【0011】
<(A)成分>
前記(A)成分のアルカリ剤としては、水酸化物、珪酸塩、及び炭酸塩から選ばれる少なくとも1種である。前記液体食器洗浄機用洗浄剤組成物が、前記(A)成分を含有することで、洗浄力に優れる。
【0012】
・・・
【0013】
前記(A)成分としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。
【0014】
前記液体食器洗浄機用洗浄剤組成物中の前記(A)成分の含有量は、1質量%?30質量%であるが、3質量%?25質量%が好ましい。」
ウ 「【0015】
<(B)成分>
前記液体食器洗浄機用洗浄剤組成物が、前記(B)成分としてのキレート剤を含有することで、洗浄力、特に油脂洗浄力及びスケール付着抑制性に優れる。
【0016】
・・・
【0017】
・・・長期保存安定性の点から、アルカリ金属塩、有機アミン塩が好ましく、カリウム塩がより好ましい。
【0018】
これらの中でも、前記(B)成分は、ヒドロキシカルボン酸又はその塩、アミノカルボン酸又はその塩、ポリアクリル酸又はその塩が好ましく、ニトリロ三酢酸、グルタミン酸二酢酸、メチルグリシン二酢酸、クエン酸、ポリアクリル酸又はその塩がより好ましく、洗浄力、仕上り性に優れる点で、ニトリロ三酢酸が特に好ましい。
【0019】
前記液体食器洗浄機用洗浄剤組成物中の前記(B)成分の含有量は、1質量%?30質量%であるが、洗浄力、スケール付着抑制性の点で、2.5質量%?20質量%が好ましい。」
エ 「【0031】
<<総ナトリウムイオン量>>
前記液体食器洗浄機用洗浄剤組成物中の総ナトリウムイオン量は、5.0質量%未満であるが、4.0質量%以下が好ましく、実質的にナトリウムイオンを含有しないことが特に好ましい。前記総ナトリウムイオン量が、5.0質量%を超えると、保存安定性が悪くなる。
前記総ナトリウムイオン量とは、前記液体食器洗浄機用洗浄剤組成物に含まれる成分の分子式、分子量及び配合量に基づき、下記計算式(I)からそれぞれの成分のナトリウムイオン量を算出し、各成分のナトリウムイオン量(%)の総和を示す。
<<計算式(I)>>
洗浄剤成分中のナトリウムイオン量(%)=ナトリウム含有成分の配合量(%)×ナトリウムイオン原子量(22.99g/mol)/成分の分子量(g/mol)
・・・」
オ 「【実施例】
【0035】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、特に明記しない限り、「%」は「質量%」を表す。また、各成分の数値は、純分換算した値を表す。
【0036】
(実施例1?7及び比較例1?6)
下記表1?表2に示す(C)成分を、それぞれ70℃のイオン交換水に添加し、30分間攪拌して3.5%水溶液を調製した。
次いで、下記表1?表2に示す(A)成分、(B)成分、及び前記(C)成分の3.5%水溶液の順で、下記表1?表2に示す組成及び配合量となるように添加し、実施例及び比較例の各液体食器洗浄機用洗浄剤組成物を調製した。」
カ 「【0042】
<<保存安定性の評価>>
実施例及び比較例の各液体食器洗浄機用洗浄剤組成物を、透明なプラスチック製容器に充填し、50℃、25℃、及び-5℃の条件で2週間保存した。2週間保存後の各液体食器洗浄機用洗浄剤組成物の外観を目視にて、下記評価基準に基づき評価した。
[評価基準]
○:透明
△:ゲル化した
×:分離若しくは固化した」
キ 「【0043】
【表1】


ク 「【0044】
【表2】


(3)当審の判断
ア 前記(2)キで摘記した甲第3号証の実施例については、いずれも、アルカリ(A)成分の合計含有量が、キレート剤(B)成分の合計含有量を上回っているから、明らかに本件発明の「(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75」という要件を満たさない。
イ 申立人の主張する比較例3においては、確かにアルカリ(A)成分とキレート剤(B)成分の質量比は、0.67程度である。しかしながら、比較例3は、保存時に「×:分離若しくは固化した」とされるものであって、実用できない例である。
ウ したがって、甲第3号証に接した当業者が、比較例3を主引用例とすることに阻害事由があって、本件発明が甲第3号証の比較例3に基いて当業者が容易に発明し得ないものである。
2 甲第6号証について
(1)申立人は、特許異議申立書において、甲第6号証として、特願2013-215088号(特開2015-67833号公報)を提示し、本件発明は、甲第6号証に記載された先願発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない発明であると主張する。
(2)甲第6号証の記載事項
ア 「【0015】
本発明の(B)成分は、5.0?50.0質量%の範囲にあることが好ましい。
すなわち、5.0質量%未満ではスケールの抑制効果及び油汚れに対する十分な洗浄力が得られず、また、50.0質量%を超えると、他成分とのバランスが悪く、銅、銅合金への腐食防止効果が低下する。そして、特に、15.0?35.0質量%の範囲にあることが効果の点で好適である。」
イ 【実施例】
(ア)「【0032】
〔実施例1?15、比較例1?4〕
後記の表1?表4に示す組成(各表の数値の単位は質量%である)の自動洗浄機用洗浄剤組成物を調製し、洗浄性、砲金の腐食防止、スケール生成抑制の3項目について評価した。その結果を後記の表1?表4に併せて示す。なお、各項目の試験方法、評価方法は、以下に示すとおりである。」
(イ)「【0036】
なお、後記の表1?表4において、用いた成分とその有効純分(%)の詳細は、下記のとおりであり、表中の数値は各成分の有姿のまま示したものである。
【0037】
[アルカリ剤](A成分)
・アルカリ剤1
水酸化ナトリウム
純分:98.5%以上
商品名:トーソーパール(東ソー社製)
・アルカリ剤2
3号珪酸ナトリウム
純分:38.5%
商品名:珪酸ソーダ3号(鈴川化学社製)
・アルカリ剤3
無水メタケイ酸ナトリウム
商品名:無水メタ珪酸ナトリウム(日本化学工業社製)
・アルカリ剤4
オルソケイ酸ナトリウム
純分:65%
商品名:オルソ65(東洋珪酸曹達社製)
・アルカリ剤5
炭酸ナトリウム
純分:99.2%
商品名:ライトソーダ灰(徳山化学社製)
【0038】
[無リン系水溶性金属イオン封鎖剤](B成分)
・無リン系水溶性金属イオン封鎖剤1
ニトリロ三酢酸酸ナトリウム
純分:92%
商品名:トリロンA92R(BASF社製)
・無リン系水溶性金属イオン封鎖剤2
メチルグリシンジ酢酸ナトリウム塩
純分:82%
商品名:トリロンMコンパクテート(BASF社製)
【0039】
[ベンゾトリアゾール誘導体](C成分)
・ベンゾトリアゾール誘導体1
1-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチル-4-メチル-1H-ベンゾトリアゾールと1-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノメチル-5-メチル-1H-ベンゾトリアゾールの混合物
純分:80%
商品名:ベルゾンTT-250A(大和化成社製)
・ベンゾトリアゾール誘導体2
1,2,3-ベンゾトリアゾール
純分:99.5%以上
商品名:BT-120(城北化学社製)
【0040】
[任意成分]
・任意成分1-1:非イオン界面活性剤1
ポリオキシエチレン(p=3)ポリオキシプロピレン(q=10)直鎖アルキル(C=14、15)エーテル
曇点=9℃
試作品
・任意成分1-2:非イオン界面活性剤2
ポリオキシエチレン(p=11)ポリオキシプロピレン(q=30)ブロックポリマー(プルロック型ブロックポリマー)
曇点=32℃
商品名:プルロニックPE6200(BASF社製)
・任意成分2-1:高分子電解質重合体1
ポリアクリル酸
純分:48%
製品名:アキュゾール445(DOWケミカルズ社製)
・任意成分2-2:高分子電解質重合体2
マレイン酸とアクリル酸との共重合体
純分:92%
製品名:ソカランCP45G(BASF社製)
・任意成分3:塩素系酸化剤
ジクロロインシアヌル酸ナトリウム
(有効塩素濃度55%)
商品名:ハイライト55G(日産化学工業社製)
・任意成分4:ビルダー
1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸
純分:60%
製品名:ディクエスト2010(サーモフォスジャパン社製)
・任意成分5:硫酸塩
無水硫酸ナトリウム
商品名:中性無水ボウ硝(四国化成社製)」
(ウ)「【0041】
【表1】


(エ)「【0042】
【表2】


(オ)「【0043】
【表3】


(カ)「【0044】
【表4】


(キ)「【0045】
上記の結果から、実施例品はいずれも、どの評価項目においても、「○」もしくは「◎」の良好な評価が得られたが、比較例品は、いずれかの評価項目において「△」や「×」の評価があり、実用上問題があることがわかる。」
(3)当審の判断
ア 申立人は、甲第6号証の実施例7が本件発明と実質的に同一である旨主張する。
イ 前記(2)イ(エ)に摘記した【表2】の実施例7(以下「甲6実施例7」という。)は、前記(2)イ(イ)も参照すると、アルカリ剤1(水酸化ナトリウム、純分98.5%)、アルカリ剤5(炭酸ナトリウム、純分99.2%)、無リン系水溶性金属イオン封止剤2(メチルグリシンジ酢酸ナトリウム、純分82%)、任意成分2-1(ポリアクリル酸、アキュゾール445、純分48%)を含有するものである。
ウ 前記第3、2(6)オに摘記したように、本件発明においては、「表中における実施例および比較例の各成分の配合割合は純分の質量%を表す」ものである一方、前記(2)イ(イ)に摘記したように、「表中の数値は各成分の有姿のまま示した」ものであるから、対比するためには、甲6実施例7の含有量は純分に換算する必要がある。
エ 換算すると、甲6実施例7には、水酸化ナトリウムが2.2質量%、炭酸ナトリウムが3.0質量%、メチルグリシンジ炭酸ナトリウムが12.3質量%、アキュゾール445が2.4%含有されていると認められる。
オ アキュゾール445は、甲第7号証によると、重量平均分子量が4500のポリアクリル酸をナトリウムで部分中和したものであるから、重量平均分子量が4500のポリアクリル酸のナトリウム塩であるといえる。
オ 甲6実施例7を、本件発明の成分の分類により表現すると次のとおりとなる。「(A)成分としてアルカリ剤5.2(=2.2+3.0)質量%
、(B)成分としてメチルグリシンジ酢酸ナトリウム12.3質量%、(C)成分として、重量平均分子量が4500のアクリル酸のナトリウム塩2.4%、(D)成分として水、を含有し、(A)成分と(B)成分の合計、(A)+(B)=17.5質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.42であり、かつ、(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=5.1である自動食器洗浄用洗浄剤組成物。」
カ 本件発明においては、「(A)成分と(B)成分の合計、(A)+(B)=20?35質量%」であるのに対し、甲6実施例6においては、17.5質量%であって、本件発明と同一であるということはできない。
キ 申立人は、前記(2)アに摘記した甲第6号証の段落【0015】に(B)成分の含有量を調整することが記載されているから、本件発明と甲6実施例7との相違は、課題解決手段における微差であると主張していると解される。
ク 検討
(ア)しかしながら、前記第3、2(6)ソに摘記した本件明細書の【表2】に記載された本件発明の実施例19と表記された参考例に注目すると、(A)成分を5質量%、(B)成分を12質量%含有し、(A)成分と(B)成分の合計、(A)+(B)=17質量%となる例であるが、その評価結果は、茶渋洗浄性(0.05質量%)において△となっているから、洗浄後に茶渋が残ることがわかる。
(イ)一方、前記第3、2(6)セ?ソの本件明細書の【表1】及び【表2】に記載された例のうち、本件発明の実際の実施例と認められる、実施例1、3、4、13、14においては、その評価結果は、茶渋洗浄性(0.05質量%)において◎となっており、相違点に係る構成である「A)成分と(B)成分の合計、(A)+(B)=20?35質量%」には技術的な意義があると評価でき、この相違は課題解決手段における微差であるといえないから、申立人の主張は採用できない。
3 記載要件について
申立人は、特許異議申立書において以下の主張をする。
(1)申立人は、「(A)成分としてアルカリ剤」に重曹が含まれるか否かが明らかでなく、含まれるとすると、本件特許請求の範囲の記載は、課題を解決できずサポート要件を満たさないと主張する。
しかしながら、水中でのpHが、8.2程度である重曹がアルカリ剤の範ちゅうに含まれるとはいえないから、本件特許請求の範囲の記載がサポート要件を満たさないとはいえない。
(2)申立人は、「アルカリ剤」の定義が本件明細書にされていないから、特許請求の範囲の記載が不明確であり、明確性要件を満たさないと主張する。
しかしながら、前記第3、2(2)に摘記した本件明細書の段落【0013】には、アルカリ剤の例が列挙されており、列挙された各種アルカリ剤と同程度の強度のアルカリ剤が本件発明における「アルカリ剤」に相当すると解されるから、特許請求の範囲が不明確であるとはいえない。
(3)申立人は、「アルカリ剤」として、例えば、炭酸ナトリウムの一水和物を用いた際に、どのように質量%を計算するか不明であり、特許請求の範囲の記載が不明確と主張する。
しかしながら、前記第3、2(5)オに摘記した本件明細書の段落【0035】には、「実施例および比較例の各成分の配合割合は純分の質量%」とされており、溶解させた後の純分に水和分が含まれないことは明らかであるから、本件特許請求の範囲が不明確となっているといえない。
(4)申立人は、ポリアクリル酸の「重量平均分子量」について、本件明細書に具体的な試験条件が記載されておらず、試験条件によっては、値が変動するものであるから、本件特許請求の範囲の記載が不明確となっていると主張する。
しかしながら、前記第3、2(5)エに摘記した本件明細書の段落【0031】に記載されているように、本件明細書の(C)成分の「C-1:ポリアクリル酸ナトリウム:重量平均分子量が4000 商品名:SokalanPA25CL(純分45%)、BASF社製」は、カタログスペックとして重量平均分子量が表示されていると推認できる。したがって、本件明細書に重量平均分子量の試験条件が記載されていなくとも、明確に理解ができるものである。また、試験条件によって値が変動するというが、高分子の分子量分布の測定には、規格があるから、それほど変動しないと考えられるから、申立人の主張は採用できない。
(5)申立人は、本件発明4においては、「(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350」と規定するが、(B)成分の上限と(C)成分の下限との関係で、35を超える数値は取り得ないから特許請求の範囲の記載は不明確である旨を主張する。
しかしながら、取り得ない数値範囲が存在したとしても、取り得ない数値範囲は実質的に特許請求の範囲から取り除かれているのであるから、第三者に不測の不利益を及ぼすことはないから、特許法第36条第6項第2号の規定を満たさないということはできない。申立人の主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明4?8に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件発明4?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1?3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1?3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物および自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、特に業務用の自動食器洗浄機用として好適な自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物に関する。また本発明はこの自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を用いた食器類の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食器類の洗浄に自動食器洗浄機が広く利用されるようになっており、ホテル、レストラン、給食会社、病院、会社の食堂等においても、使用後の食器を効率よく洗浄するために、また近年の衛生意識の向上から業務用の自動食器洗浄機が広く用いられている。
【0003】
自動食器洗浄機、特に業務用の自動食器洗浄機により食器類を洗浄する場合、所定濃度に調製した洗浄液を洗浄液タンク内で加熱保持し、次いで洗浄液タンク内の洗浄液をノズルから洗浄機庫内に一定量を噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄した後、すすぎ液を洗浄機のノズルから一定量噴射してすすぎを行い、乾燥するという工程を経て洗浄が行われる。自動食器洗浄機用の洗浄剤としては、従来、液状、粒状、粉末状、固体状のものが用いられており、液状のものはポンプ等による供給が容易であり、粉末状、粒状、固形状のものは高濃度で少容積化が可能であるという利点を有する。
【0004】
自動食器洗浄機用の洗浄剤として、アルカリ金属水酸化物、腐食防止剤、界面活性剤を含む洗浄剤組成物と、水及びキレート化酸を含むすすぎ溶液とからなるもの(特許文献1)、アルカリ金属水酸化物、オルソケイ酸塩、メタケイ酸ナトリウムを必須成分とするもの(特許文献2)、アルカリ剤20?60重量%含むアルカリ液体洗浄剤組成物中にホスホノブタントリカルボン酸あるいはその塩を配合した高濃度アルカリ液体洗浄剤組成物(特許文献3)、グルタミン酸系、アスパラギン酸系、ポリアスパラギン酸系、イミノジコハク酸系、イミノジ酢酸系の生分解性金属イオン封鎖剤を含み、固形分濃度を60?76重量%とした液体洗浄剤組成物(特許文献4)、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを合計で30?40重量%、ケイ酸ナトリウムを2?8重量%、水溶性高分子キレート形成剤2?7重量%含み、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムと、ケイ酸ナトリウムの合計の割合、ケイ酸ナトリウムと水溶性高分子キレート形成剤とが特定の割合となるようにした液体洗剤(特許文献5)、アルカリ剤0.5?30重量%、金属イオン捕捉能を有するポリアクリル酸又はマレイン酸系高分子物質0.5?30重量%、漂白剤0.1?10重量%を含有する洗浄剤(特許文献6)、ポリオキシアルキレンエーテル型非イオン界面活性剤0.1?3重量%、その他の非イオン界面活性剤を、ポリオキシアルキレンエーテル型非イオン界面活性剤との合計量の20重量%以下含む液体洗浄剤(特許文献7)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、珪酸塩の少なくとも1種を10?50質量%、3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸あるいはその塩を10?50質量%、カルボキシル基含有水溶性ポリマーを0.5?10質量%含む洗浄剤(特許文献8)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物を1?20質量%、アルカリ化合物2?60質量%含有し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物に対するアルカリ化合物の割合を、2?6となるようにした洗浄剤(特許文献9)が知られている。また特許文献10には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物用いて節水型食器洗浄機で洗浄する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2013-528679号公報
【特許文献2】特許第3609532号公報
【特許文献3】特開平6-346099号公報
【特許文献4】特許第4015778号公報
【特許文献5】特開2002-38193号公報
【特許文献6】特開平8-199194号公報
【特許文献7】特開2012-193228号公報
【特許文献8】特開2006-124646号公報
【特許文献9】特開2014-101427号公報
【特許文献10】特開2014-100239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2に記載されている洗浄剤は、固体状又は粉末状であるため水又は湯を噴射して溶解させて調製した洗浄液を洗浄液タンクに供給し、洗浄液タンク内の洗浄液濃度が低下すると固体状又は粉末状洗浄剤を水又は湯で溶解して洗浄液タンクに供給するということを繰り返す。しかしながら複数の成分を含む固体状又は粉末状の洗浄剤は、配合された各成分が必ずしも均一分布しているとは言えないため、洗浄液中の成分濃度にバラつきが生じやすいという問題があった。特許文献3、4に記載されている洗浄剤は液状であるためポンプ供給が容易であり、また各成分濃度は常に均一に保たれるが、洗浄力を高めるためにアルカリ剤を高濃度で配合しており、洗浄液タンク内で加熱保持されている間に空気中の二酸化炭素を吸収して不溶性塩が生成され、これが洗浄機庫内にスケールとして付着残存する虞があり、特に洗浄液を加熱保持している洗浄液タンク内の電熱線(ヒーター部分)でのスケールが生じやすく、アルカリ金属水酸化物やケイ酸ナトリウム等のアルカリ剤を多量に含有する特許文献5記載の洗浄剤もスケールが生じやすいという問題があった。
【0007】
更に特許文献6に記載の洗浄剤は、洗浄機タンク内の汚れによって塩素が失活し茶渋等の汚れ除去に十分な作用を発揮できない虞があり、スケール付着の抑制効果も十分ではなかった。また特許文献7記載の洗浄剤は繰り返し洗浄した際に食器に茶渋汚れが蓄積していくのを防止することを目的としているが、食器に茶渋汚れが付着してしまうと除去が困難であり、またスケール付着抑制効果も不十分であった。特許文献8記載の洗浄剤は、スケールの付着を抑制することを目的としているが、金属イオン封鎖性能が不十分であり、洗浄機庫内にスケールを生じやすいという問題があった。また特許文献9、10に記載の洗浄剤は、すすぎ水の量の少ない節水型自動食器洗浄機で洗浄した場合でもウォータースポットが生じにくいことを目的としているが、洗浄剤成分を残留させるため汚れの多い条件下では食器類に曇を生じ易いという問題があった。
【0008】
自動食器洗浄機では、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内の食器類に噴射して洗浄した後、洗浄後の洗浄液と、洗浄工程後のすすぎ工程で用いたすすぎ水とが洗浄液タンクで混合され、汚れを含んだ所定量以上の混合液を洗浄液タンクからオーバーフローして排水し、残りの混合液(排水とともに排出された残りの汚れを含む)の洗浄成分濃度を調整して再度洗浄に使用している。自動食器洗浄機として、近年、食器類洗浄後のすすぎ工程におけるすすぎ水量を減少させた節水型自動食器洗浄機が普及しているが、すすぎ水量の少ない節水型自動食器洗浄機では、洗浄後のオーバーフロー量も少ないため、洗浄液タンク内の汚れ負荷が著しく増加する。このため食器類の再汚染や洗浄機庫内にスケールやバイオフィルムが生じやすいという問題があった。また、すすぎ水が少ないため食器類に洗浄剤が残留しやすいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題を解決するためになされたもので、低濃度で優れた洗浄性を有し、節水型自動食器洗浄機で洗浄した場合でも、食器類への汚れの再付着や茶渋、スケール、バイオフィルムの発生が少なく、すすぎ性に優れるため食器類に洗浄剤の残留がないコンパクトで作業性の高い自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を提供することを目的とする。また本発明はこの濃縮液体洗浄剤組成物を用いた自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討した結果、(A)成分としてアルカリ剤、(B)成分として金属イオン封鎖剤、(C)成分としてポリカルボン酸型ポリマー又はその塩を特定の割合で含有し、(A)成分と(B)成分とが特定の比率となるようにした濃縮液体洗浄剤組成物が、上記従来の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち本発明は、
(1)(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物、
(2)(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(3)(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(4)濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する前記(2)又は(3)記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、
(5)前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2)当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ前記(2)?(4)のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法、を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の自動食器用濃縮液体洗浄剤組成物は、低濃度で使用した場合でも汚れに優れた洗浄性を有し、茶渋等の付着抑制性や洗浄性を有し、スケール付着抑制性、バイオフィルム抑制性に優れる。また、すすぎ水量を少なくし、汚れの負荷が大きくなるような節水型自動食器洗浄機で洗浄した場合でも、すすぎ性に優れるため、食器類への汚れの再付着やスケール、バイオフィルムの発生が少なく、すすぎ性に優れるため、食器類への洗浄剤成分の付着残留が少ない等の効果を有する。本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は安定性に優れ、冬季の低温下及び夏季の高温下においても保存中に析出物の発生や分離等が生じる虞がない。また本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は高濃度に濃縮することによりコンパクトな容器に保存でき、洗浄剤組成物の補充・交換頻度も少なくて済むため、効率よくかつ良好に食器類の洗浄を行うことができる等の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は、従来品の2倍以上に濃縮された濃縮液体洗浄剤組成物であり、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物における(A)成分であるアルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム等のアルカリ金属珪酸塩等が挙げられる。アルカリ剤は単独または混合して用いることができるが、これらのうち水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、オルソ珪酸ナトリウム、オルソ珪酸カリウム、メタ珪酸ナトリウム、3号珪酸ナトリウム、日本化学工業社製の商品名:A珪酸カリウム(純分40%)(モル比SiO2:K2O=3:1)が洗浄性とコストの理由で好ましい。本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、アルカリ剤を3?25質量%含有するが、5?24.5質量%含有することが好ましく、7?24質量%含有することがより好ましい。アルカリ剤が3質量%未満では洗浄力不足となり、25質量%を超えるとすすぎ性不良、貯蔵安定性不良、スケール付着抑制性不良となる。
【0014】
(B)成分の金属イオン封鎖剤としては、グルタミン酸二酢酸、トリポリリン酸、アスパラギン酸二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、メチルグリシン二酢酸、3-ヒドロキシ-2,2′-イミノジコハク酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、イミノ二酢酸、クエン酸、エチレンジアミンジマロン酸、イミノジコハク酸、エチレンジアミンジコハク酸、酒石酸、グルコン酸やオルトリン酸、ピロリン酸、ヘキサメタリン酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、β-アラニン二酢酸、セリン二酢酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸や、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン塩が挙げられる。これらのうちpH9?11の範囲のいずれかのpHにおいて、Ca(II)に対する安定度定数が5.0以上のものが好ましく、pH=10?11の範囲のいずれかのpHにおいてCa(II)に対する安定度定数が5.5以上のものがより好ましい。Ca(II)に対する安定度定数とは、錯体の安定度を示す尺度であり、Ca(II)水和イオン:M、その濃度を[M]、金属イオン封鎖剤:L、その濃度を[L]、金属イオン封鎖剤のモル数:n、Ca(II)水和イオン:Mと、金属イオン封鎖剤:Lとから形成される錯体:MLn、その濃度を[MLn]とした時、下記式(1)より錯体が生成するときの平衡定数:Knを求め、この平衡定数より下記式(2)より安定度定数:βを求めることができる。
【0015】
(数1)
Kn=[MLn]/[M][L]n (1)
【0016】
(数2)
β=logKn (2)
【0017】
pH9?11の範囲のいずれかのpHにおいて、Ca(II)に対する安定度定数が5.0以上の金属イオン封鎖剤としては、例えばグルタミン酸二酢酸及びその塩(pH=9.0でのCa(II)に対する安定度定数=5.6、pH=10.0でのCa(II)に対する安定度定数=6.2、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=6.4)、トリポリリン酸及びその塩(pH=10.5でのCa(II)に対する安定度定数=5.7)、アスパラギン酸二酢酸及びその塩(pH=10.5でのCa(II)に対する安定度定数=5.8)、エチレンジアミン四酢酸及びその塩(pH=9でのCa(II)に対する安定度定数=9.6、pH=10でのCa(II)に対する安定度定数=10.4、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=10.8)、ニトリロ三酢酸及びその塩(pH=9でのCa(II)に対する安定度定数=5.8、pH=10でのCa(II)に対する安定度定数=6.4、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=6.5)、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩(pH=9でのCa(II)に対する安定度定数=9.0、pH=10でのCa(II)に対する安定度定数=10.0、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=10.6)、メチルグリシン二酢酸及びその塩(pH=9でのCa(II)に対する安定度定数=5.6、pH=10でのCa(II)に対する安定度定数=6.4、pH=11でのCa(II)に対する安定度定数=6.9)等が挙げられる。これらのなかでもグルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩、トリポリリン酸及びそのアルカリ金属塩、エチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩が好ましく、特にエチレンジアミン四酢酸及びそのアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸及びそのアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸及びそのアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸及びそのアルカリ金属塩が好ましい。これらの金属イオン封鎖剤は、単独又は2種類以上組み合わせて用いることができる。(B)成分の金属イオン封鎖剤は、濃縮液体洗浄剤組成物中に10?35質量%含有されるが、12?33質量%が好ましく、15?30質量%がより好ましい。金属イオン封鎖剤が10質量%未満ではスケール付着抑制性不良、茶渋洗浄性不良、バイオフィルム抑制性不良となり、35質量%を超えると貯蔵安定性不良となる。
【0018】
(C)成分のポリカルボン酸型ポリマー又はその塩としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体、無水マレイン酸-スチレン共重合体、無水マレイン酸-エチレン共重合体、無水マレイン酸-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸-アクリル酸エステル共重合体等や、これらの塩が挙げられるが、ポリアクリル酸又はその塩、ポリマレイン酸又はその塩、アクリル酸-メタクリル酸共重合体、アクリル酸-マレイン酸共重合体、オレフィン-マレイン酸共重合体、アクリル酸-スルホン酸共重合体が好ましい。これらのポリカルボン酸型ポリマー又はその塩は、単独で用いても2種類以上組み合わせて用いても良い。アクリル酸型共重合体、マレイン酸型共重合体、メタクリル酸型共重合体等の共重合体としては、アミド結合を含まないものが好ましい。ポリアクリル酸の重量平均分子量は500?20,000が好ましく、特に好ましくは1500?15,000である。重量平均分子量が500未満であると、スケール付着抑制性の点で好ましくなく、20,000を超えると貯蔵安定性の点で好ましくない。(C)成分のポリカルボン酸型ポリマー又はその塩は、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物中に0.1?10質量%含有されるが、0.3?8質量%が好ましく、0.5?5質量%がより好ましい。(C)成分が0.1質量%未満ではすすぎ水で薄められた洗浄機庫内のスケール付着抑制性不良となり、10質量%を超えると高温の貯蔵安定性不良となる。
【0019】
(D)成分の水としては、特に限定はなく、イオン交換水、軟水、純水、水道水などが挙げられ、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の安定性の観点から、イオン交換水又は純水が好ましい。
【0020】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物中における上記(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=13.0?60質量%であるが、(A)+(B)=15?55質量%が好ましく、20?50質量%がより好ましい。また(A)成分と(B)成分の質量比は、(A)/(B)=0.1?1.25であるが、0.13?1.15が好ましく、0.15?0.95がより好ましい。(A)+(B)が13.0質量%未満であると、洗浄性不良、スケール付着抑制性不良、バイオフィルム抑制性不良となり、60質量%を超えると貯蔵安定性不良となる。また(A)/(B)が0.1未満であると、洗浄性不良となり、1.25を超えるとスケール付着抑制性不良となる。
【0021】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=1?350であることが好ましいが、1.5?110が好ましく、3?60がより好ましい。(B)/(C)=1?350となるように(B)成分と(C)成分を含有していると、ガラス製食器に対する腐食防止性が向上する。
【0022】
本発明の濃縮液体洗浄剤組成物には、必要に応じて非イオン界面活性剤、次亜塩素酸塩、除菌剤、消泡剤、増粘剤、ハイドロトロープ剤、酵素、色素、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロックの何れでもよい)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル(エチレンオキシドとプロピレンオキシドはランダム、ブロックの何れでもよい)等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリエチレングリコールプロピレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキシド付加物、脂肪酸-N-メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキシド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、N-長鎖アルキルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。
【0023】
上記除菌剤としては、例えば、チアゾリン類、ヒダントイン類や、ヨード-2-プロピニルブチルカーバメイト、イソプロピルメチルフェノール、ヘキサクロロフェン、イルガサン、トリクロサン等が挙げられる。チアゾリン類としては、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-ベンズイソチアゾリン-3-オン等が挙げられる。ヒダントイン類としては、1,3-ジメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、1又は3-モノメチロール-5,5-ジメチルヒダントイン、ジメチルヒダントイン、1、3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1、3-ジクロロエチルメチルヒダントイン等が挙げられる。
【0024】
また消泡剤としてはシリコーンオイル、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコール共重合体、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。増粘剤としては、平均分子量200?6,000のポリエチレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、還元でんぷん糖化物等の多価アルコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体、アクリル酸系ポリマー等が挙げられる。ハイドロトロープ剤としては、2-エチルヘキサン酸及び/又はその塩、カプリル酸及び/又はその塩、アルケニルスルホコハク酸及び/又はその塩、メタキシレンスルホン酸及び/又はその塩、アルキル(C6?10)グルコシド、オクチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。酵素としては、リパーゼ、アルカリアミラーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ、プルラナーゼ等が挙げられる。色素としては例えば、天然色素、合成色素、これらの混合物が挙げられる。香料としては例えば、天然香料、合成香料、これらの調合香料等が挙げられる。
【0025】
自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物により食器類の洗浄を行う場合、本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度を0.003?0.1質量%に希釈して調製した洗浄液を用いる。好ましくは(B)成分の濃度を0.005?0.08質量%、より好ましくは(B)成分の濃度を0.008?0.05質量%に希釈して調製した洗浄液を用いる。濃縮液体洗浄剤組成物はポンプ等により洗浄液タンクに供給され、洗浄液タンク内に供給される水(通常は温水)と混合されて(B)成分の濃度を0.003?0.1質量%の濃度に希釈された洗浄液が、洗浄液タンク内で加熱保持される。次いで洗浄液は、洗浄液タンク内からポンプ等によりノズルから洗浄機庫内の食器類に噴射して食器類を洗浄する。食器類に噴射された洗浄液は、洗浄液タンクに回収される。次いですすぎ液を、ノズルより洗浄機庫内の食器類に噴射してすすぎを行う。すすぎ後のすすぎ液は洗浄液タンクに流入し、洗浄液タンク内の洗浄液濃度は低下するが、濃縮液体洗浄剤組成物を洗浄液タンクに供給して洗浄液濃度を調整する。
【0026】
自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物により食器類の洗浄を行う場合、本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を0.03?0.15質量%に希釈することで、(B)成分の濃度が0.003?0.1質量%の洗浄液として調製することができる。好ましくは0.04?0.12質量%、より好ましくは0.05?0.09質量%に希釈して調製した洗浄液を用いる。濃縮液体洗浄剤組成物はポンプ等により洗浄液タンクに供給され、洗浄液タンク内に供給される水(通常は温水)と混合されて(B)成分の濃度を0.003?0.1質量%の濃度に希釈された洗浄液が、洗浄液タンク内で加熱保持される。次いで洗浄液は、洗浄液タンク内からポンプ等によりノズルから洗浄機庫内の食器類に噴射して食器類を洗浄する。食器類に噴射された洗浄液は、洗浄液タンクに回収される。次いですすぎ液を、ノズルより洗浄機庫内の食器類に噴射してすすぎを行う。すすぎ後のすすぎ液は洗浄液タンクに流入し、洗浄液タンク内の洗浄液濃度は低下するが、濃縮液体洗浄剤組成物を洗浄液タンクに供給して洗浄液濃度を調整する。
【0027】
濃縮液体洗浄剤組成物を所定濃度に希釈調製した洗浄液は、洗浄液タンク内で通常、40?70℃で保持される。洗浄液は洗浄機庫内の食器類に対し、30?120秒噴射される。すすぎ液としては通常、水道水が用いられるがリンス剤を用いても用いなくても良い。すすぎ液は、洗浄機の食器設置平面積2500cm2当たり1L?3Lが好ましい。またすすぎ液の温度は40℃以上、95℃以下が好ましく、より好ましくは60℃以上、90℃以下である。すすぎ液の水道水としては、例えば、東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度8.1°DH(そのうち、カルシウム硬度6.3°DH、マグネシウム硬度2.1°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物13mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.1mg/L、フッ素及びその化合物0.09mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.014mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.5mg/L)が挙げられる。濃縮液体洗浄剤組成物を洗浄液タンクに供給するためのポンプとしては、ペリスタルティックポンプが好ましい。本発明の濃縮洗浄剤組成物は高濃度に濃縮されており、洗浄液タンクへの1回の供給量は少量であるため、供給量の僅かな誤差によって洗浄液濃度のバラツキが大きくなる虞があるが、ペリスタルティックポンプは少量の洗浄剤組成物を正確に供給することができる。ペリスタティックポンプから洗浄剤組成物を供給する際のチューブ径は1.0?5.0mm(内径)が標準的であるが、好ましくは2.0?4.5mm(内径)であり、より好ましくは2.5?4.0mm(内径)とすると少量の洗浄剤組成物を安定的に供給でき、洗浄液濃度の調整がより容易となる。従来の濃縮液体洗浄剤組成物は、低温環境下で濃縮液体洗浄剤組成物を保管する容器内や供給ポンプ内等で析出物が生じ易く、ペリスタルティックポンプで供給した場合、その析出物が供給チューブ内等で目詰まりを起こし易いが、本発明の濃縮液体洗浄剤組成物は、濃縮液体洗浄剤保管容器内やチューブ内で析出が生じたり目詰りを生じる虞がない。
【0028】
本発明の自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物は、油脂、蛋白質、でんぷん等、あらゆる汚れに対して優れた洗浄性能を示し、アルミ製、ステンレス製、銀製等の金属製、メラミン製、プラスチック製、ガラス製、磁器、漆器、陶磁器などあらゆる素材の食器等の洗浄用途に適し、家庭用自動食器洗浄機、業務用自動食器洗浄機の洗浄剤として用いることができるが、ホテル、レストラン、学校、病院、飲食店、給食会社、会社の食堂等において使用される業務用の自動食器洗浄機に好適に用いることができる。特に、すすぎ液の使用量の少ない節水型の業務用自動食器洗浄機用として好適である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例と比較例により具体的に説明する。実施例、比較例において配合に用いた(A)?(C)成分を下記に示す。
【0030】
(A)成分
A-1:水酸化カリウム 商品名:フレーク苛性カリ、東亞合成社製
A-2:水酸化ナトリウム 商品名:粒状苛性ソーダ、旭硝子社製
A-3:炭酸カリウム 商品名:炭酸カリウム、旭硝子社製
A-4:珪酸ナトリウム(モル比SiO2:Na2O=1:1) 商品名:無水メタ珪酸ナトリウム(純分95%)、日本化学工業社製
A-5:珪酸カリウム(モル比SiO2:K2O=3:1) 商品名:A珪酸カリ(純分40%)、日本化学工業社製
【0031】
(B)成分
B-1:ニトリロ三酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon A92R、BASF社製
B-2:エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンNA、アクゾノーベル社製
B-3:グルタミン酸二酢酸ナトリウム塩 商品名:ディゾルビンGL-47-S、アクゾノーベル社製
B-4:メチルグリシン二酢酸ナトリウム塩 商品名:Trilon M Powder、BASF社製
B-5:3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸四ナトリウム塩 商品名:HIDS、純分50%、日本触媒社製
【0032】
(C)成分
C-1:ポリアクリル酸ナトリウム:重量平均分子量が4000 商品名:Sokalan PA25CL(純分45%)、BASF社製
C-2:ポリマレイン酸ナトリウム:ポリマレイン酸(重量平均分子量が500、 商品名:Belclene 200LA(純分50%)、BWA社製)を水酸化ナトリウムで中和して使用
C-3:ポリアクリル酸マレイン酸共重合体ナトリウム塩:重量平均分子量が10000 商品名:アクアリック TL213(純分36%)、日本触媒社製
C-4:ポリアクリル酸マレイン酸共重合体ナトリウム塩:重量平均分子量が1900 商品名:ACUSOL 425N(純分50%)、ロームアンドハース社製
C-5:ポリアクリル酸マレイン酸共重合体ナトリウム塩:重量平均分子量が70000 商品名:Sokalan CP5(純分40%)、BASF社製
【0033】
D-1:イオン交換水
【0034】
その他成分
1:次亜塩素酸ナトリウム 商品名:次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度として12%)、昭和電工社製
2:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル:R-O-(EO)a-(PO)b-H (3)(式中、Rは炭素数12?14の2級アルキル基、a=7.0、b=8.5を示す) 商品名:ソフタノールEP7085、日本触媒社製
【0035】
実施例1?20、比較例1?14
表1?4に示す配合に基づき自動食器洗浄機用の濃縮液体洗浄剤組成物を調製した。各濃縮液体洗浄剤組成物を用い、自動食器洗浄機(ホシザキ電気製自動食器洗浄機:JWE-680AJ)により下記試験を行った。結果を表1?4に示す。尚、表中における実施例および比較例の各成分の配合割合は純分の質量%を表す。
【0036】
(1)洗浄性
<被洗浄物>
直径20cmのガラス皿にマヨネーズ2gを均一に塗布し、室温で乾燥させた汚染皿を被洗浄物とした。
<試験方法>
濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.05質量%、0.07質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄液タンクに貯留して66℃で保持し、洗浄ラックに汚染皿5枚を設置し、以下の条件で洗浄、すすぎを行った。濃縮液体洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度3°DHに調製した人工硬水を用いた。
<洗浄条件>
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
<洗浄性評価>
洗浄、すすぎ後の皿を室温で乾燥後、暗室において蛍光灯光を照射、反射させて汚れの残存状況を目視判定により以下の基準で評価した。
◎:清浄な皿と比較して差がない。
○:うすい曇りのみが認められる。
△:スポットのみが認められる。
×:曇りとスポットが認められる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0037】
(2)すすぎ性
濃度が高い洗浄液を用いた場合のすすぎ性を試験した。
<被洗浄物>
清浄な茶碗を被洗浄物とした。
<試験方法>
濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.15質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄タンクに貯留して66℃で保持し、洗浄ラックに茶碗を糸尻が上になるように5個設置し、以下の条件で洗浄、すすぎを行った。濃縮液体洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度3°DHに調製した人工硬水用いた。
<洗浄条件>
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
<すすぎ性評価>
洗浄、すすぎ後の茶碗の糸尻に残留している水にフェノールフタレイン液を滴下しアルカリ剤の残留による変色反応を目視判定し、以下の基準で評価した。
◎:全く変色反応が認められない。
○:ほとんど変色反応が認められない。
△:僅かな変色反応が認められる。
×:顕著な変色反応が認められる。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0038】
(3)茶渋洗浄性試験
<被洗浄物>
清浄なプラスチックカップを被洗浄物とした。
<試験方法>
濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.05質量%、0.07質量%に希釈した洗浄液を洗浄機の洗浄液タンクに貯留して66℃で保持し、食器洗浄機の洗浄ラックにプラスチックカップ5個を設置し、以下の条件で、茶渋汚れ付着/インターバル/洗浄/すすぎ/インターバルの工程を100サイクル繰り返し行った。濃縮液体洗浄剤組成物の希釈水、すすぎ水は塩化カルシウムを用いて硬度6°DHに調製した人工硬水を用いた。
<洗浄条件>
茶渋汚れ付着:5秒
インターバル:30秒
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
インターバル:5秒
<茶渋汚れ付着>
煮出した紅茶(紅茶葉2.5g、水100ml)をプラスチックカップに180ml注ぎ、直ちに廃棄して、所定位置に設置した。煮出した紅茶の水は、塩化カルシウムを用いて硬度10°DHに調製した人工硬水用いた。
<茶渋洗浄性評価>
洗浄工程100サイクル後の、プラスチックカップへの茶渋付着状態を目視判定し、以下の基準で評価した。
◎:茶渋の付着が認められない。
○:茶渋の付着がほとんど認められない。
△:茶渋の付着が認められる。
×:茶渋の付着が著しい。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0039】
(4)スケール付着抑制性試験
スケール付着抑制性試験-1
食器洗浄機の洗浄液タンク内の電熱線(ヒーター部分)および壁面へのスケール付着抑制性を、洗浄液タンク内と同様の擬似的条件下で試験した。
<試験方法>
塩化カルシウムで硬度6°DHに調製した人工硬水より濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.05質量%、0.07質量%に希釈した洗浄液を作成し、この洗浄液中にSUS304製のテスト板(2.5cm×7.5cm)を浸漬させ、80℃で24時間保持した。その後テスト板を取り出してイオン交換水ですすぎ、乾燥後、テスト板のスケール付着量を目視判定し、以下の基準により評価した。
<評価基準>
◎:スケールの付着が全く認められなかった。
○:スケールの付着がほとんど認められなかった。
△:スケールの付着が認められた。
×:著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0040】
スケール付着抑制性試験-2
食器洗浄機庫内の壁面(洗浄液タンク内は除く)の洗浄液がすすぎ水で薄まった条件でのスケール付着抑制性を、以下の方法で試験した。
<試験方法>
洗浄ラックに250mlのグラス36個を設置し、塩化カルシウムで硬度10°DHに調製した人工硬水より濃縮液体洗浄剤組成物の濃度を0.05質量%、0.07質量%に希釈した洗浄液により下記条件で洗浄/すすぎ/インターバルを200サイクル繰り返した後、洗浄機庫内のスケール付着量を目視判定し、以下の基準で評価した。
<洗浄条件>
洗浄温度:66℃
洗浄時間:41秒
すすぎ温度:82℃
すすぎ時間:6秒
インターバル:5秒
<評価基準>
◎:スケールの付着が全く認められなかった。
○:スケールの付着がほとんど認められなかった。
△:スケールの付着が認められた。
×:著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0041】
<スケール付着抑制性総合評価>
スケール付着抑制性試験-1、スケール付着抑制性試験-2の両試験の結果より、以下の基準で評価した。
◎:1および2の両試験でスケールの付着が全く認められなかった。
○:1および2のどちらかの試験でスケールの付着がほとんど認められなかった。
△:1および2のどちらかの試験でスケールの付着が認められた。
×:1および2のどちらかの試験で著しいスケールの付着が認められた。
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0042】
(5)バイオフィルム防止性試験
<試験方法>
各濃縮液体洗浄剤組成物5gを滅菌済みのミューラーヒントン培地〔日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製〕に添加して全量を100gにして、各濃縮液体洗浄剤組成物の5質量%コンク溶液を調製した。本コンク溶液を更に滅菌済みミューラーヒントン培地を用いて濃縮液体洗浄剤組成物の濃度として0.1質量%となるように希釈調製し、それぞれ24穴マイクロプレート〔旭テクノグラス株式会社製〕に2mL量りとった。また、汚れ成分として、3質量%ウシアルブミンをコンク溶液として調製し、24穴マイクロプレートに0.3質量%となるように添加した。
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC13275)、クレブシェラ菌(Klebsiella pneumoniae ATCC13883)をそれぞれLB培地〔日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製〕を用いて、37℃で18時間前培養して増殖した菌液を、ピペットマンを用いて当該マイクロプレート内の試験溶液に10μl接種した。これを37℃で48時間培養後に培養液を廃棄し、滅菌精製水2mLで各ウェル内を5回洗浄した。マイクロプレート壁に付着したバイオフィルムを0.1質量%クリスタルバイオレット液で染色し、滅菌水ですすいだ後、バイオフィルムの形成状態を目視判断し、バイオフィルム抑制性を以下の基準で評価した。
<評価基準>
1点:バイオフィルムがプレート壁面の0?20%未満を覆う状態。
2点:バイオフィルムがプレート壁面の20%以上40%未満を覆う状態。
3点:バイオフィルムがプレート壁面の40%以上60%未満を覆う状態。
4点:バイオフィルムがプレート壁面の60%以上を覆う状態。
として上記各菌種についてプレート壁面の状態を点数で評価し、2菌種のプレート壁面の状態を点数の平均値を求め、以下の基準でバイオフィルム防止性を評価した。
◎:平均値が1点以上1.5点未満
○:平均値が1.5点以上2.5点未満
△:平均値が2.5点以上3.5点未満
×:平均値が3.5点以上
とし、△、○、◎を実用性のあるものとして判定した。
【0043】
(6)濃縮液体洗浄剤組成物の貯蔵安定性
低温安定性
<試験方法>
250ml透明ポリプロピレン製容器に濃縮液体洗浄剤組成物を250mlとり、蓋をして-5℃恒温槽に保管。1週間に1回揺り動かすことを繰り返し1ヶ月間行い、濃縮液体洗浄剤組成物の状態を以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:析出物や凍結が見られず安定である。
×:析出物もしくは凍結が見られる。
とし、○を実用性のあるものとして判定した。
高温安定性
<試験方法>
250ml透明ポリプロピレン製容器に濃縮液体洗浄剤組成物を250mlとり、蓋をして40℃恒温槽に保管し静置。6ヶ月後、濃縮液体洗浄剤組成物の状態を以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:析出物や濁りが見られず安定である。
△:析出物や濁りが、若干見られる。
×:析出物もしくは濁りが見られる。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350であることを特徴とする自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物。
【請求項5】
(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物の(B)成分の濃度として0.003?0.1質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項6】
(A)成分としてアルカリ剤5?20質量%、
(B)成分としてエチレンジアミン四酢酸のアルカリ金属塩、ニトリロ三酢酸のアルカリ金属塩、メチルグリシン二酢酸のアルカリ金属塩、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種の金属イオン封鎖剤12?35質量%、
(C)成分として重量平均分子量500?20,000のポリアクリル酸のアルカリ金属塩、ポリマレイン酸のアルカリ金属塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体のアルカリ金属塩より選ばれた少なくとも1種のポリカルボン酸型ポリマーのアルカリ金属塩1?3質量%、
(D)成分として水、
を含有し、(A)成分と(B)成分の合計の割合、(A)+(B)=20?35質量%であり、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.15?0.75であり、かつ(B)成分と(C)成分の質量比が、(B)/(C)=15?350である自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を自動食器洗浄機の洗浄液タンクに供給し、自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物を、0.03?0.15質量%に希釈した洗浄液を自動食器洗浄機の洗浄液タンク内で加熱保持する工程、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄機庫内に噴射して洗浄機庫内の食器類を洗浄する工程、すすぎ液を洗浄機庫内に噴射して食器類をすすぐ工程、とからなることを特徴とする自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項7】
濃縮液体洗浄剤組成物をペリスタルティックポンプで洗浄液タンクに供給する請求項5又は6記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
【請求項8】
前記すすぎ液を洗浄機の平面積2500cm^(2)当たり、1L?3L噴射して食器類をすすぐ請求項5?7のいずれかに記載の自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-18 
出願番号 特願2015-77565(P2015-77565)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C11D)
P 1 651・ 161- YAA (C11D)
P 1 651・ 537- YAA (C11D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 古妻 泰一吉岡 沙織山本 悦司澤村 茂実  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 牟田 博一
門前 浩一
登録日 2018-12-07 
登録番号 特許第6444245号(P6444245)
権利者 ADEKAクリーンエイド株式会社 株式会社ADEKA
発明の名称 自動食器洗浄機用濃縮液体洗浄剤組成物および自動食器洗浄機による食器類の洗浄方法  
代理人 細井 勇  
代理人 栗田 由貴子  
代理人 細井 勇  
代理人 佐藤 太亮  
代理人 細井 勇  
代理人 栗田 由貴子  
代理人 佐藤 太亮  
代理人 佐藤 太亮  
代理人 栗田 由貴子  

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