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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 F24F 審判 全部申し立て 2項進歩性 F24F |
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管理番号 | 1362332 |
異議申立番号 | 異議2019-700019 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-01-15 |
確定日 | 2020-03-09 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6361904号発明「空調システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6361904号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6361904号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許6361904号(以下「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成25年2月6日に出願され、平成30年7月6日にその特許権の設定登録がされ、平成30年7月25日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 平成31年1月15日:特許異議申立人藤井由香里による請求項1?6に 係る特許に対する特許異議の申立て 平成31年4月22日:取消理由通知書 令和1年7月8日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和1年8月9日 :特許異議申立人藤井由香里による意見書の提出 令和1年9月24日 :取消理由通知書(決定の予告) 令和1年11月25日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和1年12月26日:特許異議申立人藤井由香里による意見書の提出 なお、令和1年11月25日付けで訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、令和1年7月8日付けの訂正請求は取り下げられたものとみなす。 2 訂正の適否 (1)訂正の内容 特許権者は、以下のとおり訂正することを請求する(下線は訂正箇所である。この訂正を「訂正事項1」という)。 特許請求の範囲の請求項1における 「室外機と室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システムであって、」を、 「建物全体を対象とする空調システムであって、建物全体の負荷に見合う熱源を用いることなく、建物内の各所に少なくとも室外機と室内機を備える空調機を複数分散配置して、それらを独立に運転し制御する空調システムにおいて、 前記室外機と前記室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システムであって、」 と訂正する(請求項1を引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。 (2)訂正の目的、新規事項の有無、特許請求の拡張・変更について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「空調システム」に関して「建物全体を対象とする空調システムであって、建物全体の負荷に見合う熱源を用いることなく、建物内の各所に少なくとも室外機と室内機を備える空調機を複数分散配置して、それらを独立に運転し制御する空調システムにおいて、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書の段落【0002】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 (3)まとめ 上記のとおり、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?6について訂正することを認める。 3 本件発明について 本件特許の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明6」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 建物全体を対象とする空調システムであって、建物全体の負荷に見合う熱源を用いることなく、建物内の各所に少なくとも室外機と室内機を備える空調機を複数分散配置して、それらを独立に運転し制御する空調システムにおいて、 前記室外機と前記室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システムであって、 前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室に天井面に設置した天井放射パネルに循環供給することにより該空調対象室に対して天井面から輻射冷暖房を行う構成とされ、 前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記天井放射パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記冷水または温水の熱膨張を吸収するための膨張タンクと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備してなることを特徴とする空調システム。 【請求項2】 前記熱交換器ユニットの前記熱交換器本体、前記ポンプ、前記膨張タンク、および前記制御手段は、一のケーシング内に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。 【請求項3】 前記熱交換器ユニットは、非居室の天井裏空間に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空調システム。 【請求項4】 請求項1から3のいずれか一項に記載の空調システムであって、 前記天井放射パネルにより前記空調対象室におけるインテリア負荷を処理可能とし、前記室内機により前記空調対象室におけるペリメータ負荷を処理可能としたことを特徴とする空調システム。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか一項に記載の空調システムであって、 前記室内機により前記空調対象室における外気負荷を処理可能としたことを特徴とする空調システム。 【請求項6】 請求項1から5のいずれか一項に記載の空調システムであって、 前記空調対象室へ外気を導入しつつ該空調対象室から排気を行うとともにそれら外気と排気との間で水分の交換を行うことにより前記空調対象室の湿度を制御する外気処理装置を備えたことを特徴とする空調システム。」 4 取消理由の概要 令和1年9月24日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。 請求項1ないし6に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第5号証に記載された事項に基いて、又は甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証、甲第3号証ないし甲第5号証に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 甲第1号証:特開2003-322388号公報 甲第2号証:特開平4-48138号公報 甲第3号証:特開2008-51468号公報 甲第4号証:特開2005-121280号公報 甲第5号証:特開2011-2104号公報 5 甲各号証の記載 (1)甲第1号証 取消理由通知において引用した甲第1号証(特開2003-322388号公報)には、以下の事項が記載されている(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審にて付した。以下同様。)。 (1-a)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、室外機および室内機のほかに床冷暖房用の床パネルを備えた空気調和機に関する。 ・・・ 【0006】 【発明の実施の形態】以下、この発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、室外機Aと室内機Bとが分岐ユニットDを介して相互に接続され、その分岐ユニットDに床パネルCが接続されている。 【0007】室外機Aは、圧縮機1、四方弁2、室外熱交換器3、流量調整弁4、室外ファン5、室外温度センサ6、冷媒温度センサ7、吐出冷媒温度センサ8、吸込冷媒温度センサ9、室外制御器30、インバータ31を有している。分岐ユニットDは、流量調整弁(第1流量調整弁)11、流量調整弁(第2流量調整弁)12、水熱交換器13、水タンク14、ポンプ15、水抜き栓17、冷媒温度センサ18、分岐ユニット制御器40を有している。室内機Bは、室内熱交換器21、室内ファン22、室内温度センサ23、冷媒温度センサ24、熱交換器温度センサ25、室内制御器50を有している。室内制御器50には、運転条件設定用のリモートコントロール式の操作器(以下、リモコンと略称する)51が接続されている。なお、リモコン51には、後述する各連動運転手段のいずれかの制御を選択的に実行するための操作手段としてモード選択キーが設けられるとともに、その各連動運転手段の制御により検知温度Ta,Tfが設定温度Tas,Tfsに達した後で室内機Bの運転を停止して床パネルCの単独運転に移行するか否かを設定するための操作手段として単独運転移行キーが設けられている。」 (1-b)「【0009】これら室外機A、分岐ユニットD、および室内機Bにおいて以下のヒートポンプ式冷凍サイクルが構成されるとともに、分岐ユニットDから床パネルCにかけて以下の水循環サイクルが構成されている。 【0010】圧縮機1の冷媒吐出口に四方弁2を介して室外熱交換器3が配管接続され、その室外熱交換器3にパックドバルブP1,P2を介して流量調整弁(第1,第2流量調整弁)11,12が配管接続されている。このうち、流量調整弁11にパックドバルブP3を介して室内熱交換器21が配管接続され、その室内熱交換器21にパックドバルブP4,P5,P6および上記四方弁2を介して圧縮機1の冷媒吸込口が配管接続されている。流量調整弁12には水熱交換器13が配管接続され、その水熱交換器13にパックドバルブP5,P6および四方弁2を介して圧縮機1の冷媒吸込口が配管接続されている。これら配管接続により、冷暖房が可能なヒートポンプ式冷凍サイクルが構成されている。 【0011】室外機Aの四方弁2がオンすると、圧縮機1から吐出される冷媒が四方弁2、室外熱交換器3、流量調整弁4、流量調整弁11、室内熱交換器21、四方弁2を通って圧縮機1に戻る室内冷房用の冷媒流路が形成されるとともに、圧縮機1から吐出される冷媒が四方弁2、室外熱交換器3、流量調整弁4、流量調整弁12、水熱交換器13、四方弁2を通って圧縮機1に戻る床冷房用の冷媒流路が形成される。 【0012】四方弁2がオフすると、圧縮機1から吐出される冷媒が四方弁2、室内熱交換器21、流量調整弁11、流量調整弁4、室外熱交換器3、四方弁2を通って圧縮機1に戻る室内暖房用の冷媒流路が形成されるとともに、圧縮機1から吐出される冷媒が四方弁2、水熱交換器13、流量調整弁12、流量調整弁4、室内熱交換器3、四方弁2を通って圧縮機1に戻る床暖房用の冷媒流路が形成される。」 (1-c)「【0015】ポンプ15が運転すると、水タンク14内の水が水管16を通って床パネルCの放熱用配管28に流れ、その放熱用配管28を経た水が水熱交換器13を通って水タンク14に戻る。この水の循環により、分岐ユニットDにおける冷媒の熱が床パネルCに供給される。 ・・・ 【0018】分岐ユニットDにおける冷媒温度センサ18は、床冷房時に水熱交換器13に流入する冷媒の温度TCWを検知する。分岐ユニット制御器40は、冷媒温度センサ18の検知温度TCWおよび床パネルCにおける床温度センサ29の検知温度Tfに応じて、かつ室外制御器30および室内制御器50との間でデータを送受信しながら、流量調整弁11,12の開度、ポンプ15の運転などを制御する。」 (1-d)「【0025】(a)エアコン暖房運転 四方弁2がオフ、室内ファン22がオン、流量調整弁11が最大開度、流量調整弁12が微小開度に設定される。これにより、圧縮機1から吐出される冷媒が四方弁2を介して室内熱交換器21に流れ、その室内熱交換器21を経た冷媒が流量調整弁11、流量調整弁4、室外熱交換器3、四方弁2を介して圧縮機1に戻る。室内熱交換器21では冷媒が室内空気に熱を奪われて凝縮し、その凝縮により室内空気が暖められる。 ・・・ 【0029】(b)床暖房運転 “床暖房”運転では、四方弁2がオフ、流量調整弁11が微小開度、流量調整弁12が最大開度に設定される。これにより、圧縮機1から吐出される冷媒が四方弁2を介して水熱交換器13に流れ、その水熱交換器13を経た冷媒が流量調整弁12、流量調整弁4、室外熱交換器3、四方弁2を介して圧縮機1に戻る。同時に、ポンプ15が運転され、水タンク14内の水が水熱交換器13および床パネルCの放熱用配管28を通して循環する。水熱交換器13では冷媒が水に熱を奪われて凝縮し、その凝縮により水が暖められる。暖められた水は床パネルCの放熱用配管28に流れて床上空間を暖める。 ・・・ 【0032】(c)エアコン冷房運転 四方弁2がオン、室内ファン22がオン、流量調整弁11が最大開度、流量調整弁12が全閉に設定される。これにより、圧縮機1から吐出される冷媒が四方弁2を介して室外熱交換器3に流れ、その室外熱交換器3を経た冷媒が流量調整弁4、流量調整弁11、室内熱交換器21、四方弁2を介して圧縮機1に戻る。室内熱交換器21では冷媒が室内空気から熱を奪って蒸発し、その蒸発により室内空気が冷やされる。 ・・・ 【0035】(d)床冷房運転 “床冷房”運転では、四方弁2がオン、流量調整弁11が最大開度、流量調整弁12が全閉に設定される。これにより、圧縮機1から吐出される冷媒が四方弁2を介して室外熱交換器3に流れ、その室外熱交換器3を経た冷媒が流量調整弁4、流量調整弁12、水熱交換器13、四方弁2を介して圧縮機1に戻る。同時に、ポンプ15が運転され、水タンク14内の水が水熱交換器13および床パネルCの放熱用配管28を通して循環する。水熱交換器13では冷媒が水から熱を奪って蒸発し、その蒸発により水が冷やされる。冷やされた水は床パネルCの放熱用配管28に流れて床上空間を冷却する。」 以上の事項を総合すれば、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「室外機A、分岐ユニットD、および室内機Bにおいて冷媒流路を形成したヒートポンプ式冷凍サイクルが構成され、室内機Bが有している室内熱交換器21で室内空気を暖めるか、又は室内空気を冷やす空気調和機であって、 室外機Aと室内機Bとを接続する分岐ユニットDから床パネルCにかけて水循環サイクルを構成し、床パネルCの放熱用配管28に流れた暖められた水、又は冷やされた水により床上空間を暖めるか、又は冷却し、 前記分岐ユニットDは、流量調整弁(第1流量調整弁)11、流量調整弁(第2流量調整弁)12、水熱交換器13、水タンク14、ポンプ15、水抜き栓17、冷媒温度センサ18、分岐ユニット制御器40を有しており、 ポンプ15が運転すると、水タンク14内の水が水管16を通って床パネルCの放熱用配管28に流れ、その放熱用配管28を経た水が水熱交換器13を通って水タンク14に戻り、 分岐ユニット制御器40は、流量調整弁11、12の開度、ポンプ15の運転などを制御する空気調和機。」 (2)甲第2号証 取消理由通知において引用した甲第2号証(特開平4-48138号公報)には、以下の事項が記載されている。 (2-a)「【特許請求の範囲】 (1)圧縮機及び熱源側熱交換器が組込まれた熱源側ユニットと、利用側熱交換器が組込まれた複数の利用側ユニットと、両ユニット間に設けられる高圧ガス管と低圧ガス管と液管とからなるユニット間配管と、この高圧ガス管と低圧ガス管に設けられ熱源側熱交換器と各利用側熱交換器とを凝縮器または蒸発器として作用させるための冷媒流路切換用の切換弁とを備えた空気調和装置において、複数台の利用側ユニットのうちの少なくとも1台の利用側ユニットを冷温風が吹出す循環式ユニットとすると共に、他の利用側ユニットを輻射熱が放出する輻射式ユニットとし、この輻射式ユニットと前記循環式ユニットとを同じ室内に配置したことを特徴とする空気調和装置。」 (2-b)「これらの図において、(1)は圧縮機(2)と熱源側熱交換器(3)と気液分離器(4)と送風機(5)とを有する熱源側ユニット、(6a)(6b)(6c)は利用側熱交換器(7a)(7b)(7c)を有する利用側ユニットで、熱源側熱交換器(3)を圧縮機(2)の冷媒吐出管(9)と冷媒吸込管(10)とに切換弁(1la)(llb)を介して分岐接続する一方、熱源側ユニット(1)と利用側ユニット(6a)(6b)(6c)とを接続するユニット間配管(12)を冷媒吐出管(9)と分岐接続された高圧ガス管(13)と、冷媒吸込管(10)と分岐接続された低圧ガス管(14)と、熱源側熱交換器(3)と接続された液管(15)とで構成して、高圧ガス管(13)の一端をキャピラリーチューブ(16)を介して低圧ガス管(14)に接続する一方、利用側熱交換器(7a)(7b)(7c)を高圧ガス管(13)と低圧ガス管(14)とには夫々切換弁(17a)(18a)、(17b)(18b)、(17c)(18c)を介して分岐接続すると共に液管(15)には電動式膨張弁等の冷媒減圧器(30a)(30b)(30c)を介して接続している。 (19)は液管(15)に介在させた電動式膨張弁等の補助冷媒減圧器である。 そして、利用側ユニット(6c)は水回路(20)と、この水回路(20)の熱交換器(21)と熱的に接続された熱交換器(7c)と、冷媒減圧器(30)とで輻射式ユニットとして構成されている。また、水回路(20)は熱交換器(21)と循環ポンプ(22)と輻射パネル(23)(24)(25)とで構成されている。尚、輻射パネル(23)はペリメータ部分(26)の床に配置され、輻射パネル(24)はペリメータ部分(26)の壁に配置され、輻射パネル(25)はペリメータ部分(26)の天井に配置されている。また、前記利用側ユニット(6a)(6b)は、廊下(63)側のインテリア部分(28)の天井に配置されると共に、送風機(31a)(31b)が設けられて循環式ユニットとして構成されている。」(第2頁左下欄第10行?第3頁左上欄第3行) (2-c)「このように空気調和装置が制御されると、利用側ユニット(6a)(6b)から室(29)内に冷風が吹出されると共に、冷却水により冷却された輻射パネル(23)(24)(25)により室内空気が冷却されて、室内が冷房される。 ・・・ このように空気調和装置が制御されると、利用側ユニット(6a)(6b)から室(29)内に温風が吹出されると共に、室(29)内に輻射パネル(23)(24)(25)から輻射熱が放出されて、室(29)内が暖房される。」(第3頁右上欄第3行?同頁左下欄第6行) 以上の事項を総合すれば、甲第2号証には以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「圧縮機及び熱源側熱交換器が組込まれた熱源側ユニットと、利用側熱交換器が組込まれた複数の利用側ユニットと、両ユニット間に設けられる高圧ガス管と低圧ガス管と液管とからなるユニット間配管と、この高圧ガス管と低圧ガス管に設けられ熱源側熱交換器と各利用側熱交換器とを凝縮器または蒸発器として作用させるための冷媒流路切換用の切換弁とを備えた空気調和装置において、 複数台の利用側ユニットのうちの少なくとも1台の利用側ユニットを冷温風が吹出す循環式ユニットとすると共に、他の利用側ユニットを輻射熱が放出する輻射式ユニットとし、 前記輻射式ユニットは、水回路(20)と、この水回路(20)の熱交換器(21)と熱的に接続された熱交換器(7c)と、電動式電磁弁等の冷媒減圧器(30)とで構成され、前記水回路(20)は、熱交換器(21)と循環ポンプ(22)と輻射パネル(23)(24)(25)とで構成され、前記輻射パネル(25)は天井に配置され、 空気調和装置が制御されると、利用側ユニット(6a)(6b)から室内に冷風が吹出されると共に、冷却水により冷却された輻射パネルにより室内空気が冷却されて、室内が冷房されるか、又は、利用側ユニット(6a)(6b)から室内に温風が吹出されると共に、室内に輻射パネルから輻射熱が放出されて、室内が暖房される空気調和装置。」 (3)甲第3号証 取消理由通知において引用した甲第3号証(特開2008-51468号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 この発明は、流体が循環して輻射熱を放出する輻射パネルにより、室内を冷暖房する輻射式冷暖房装置に関する。 ・・・ 【0021】 二次側循環管路26は、管路が大気と連通していない閉回路として形成され、密閉式の膨張タンク62が取り付けられている。これにより、管路内に発生するスケールの原因となる水道水の補給を行う必要がない。さらに、二次側循環管路26の水温が低いので、スケールの析出、沈降を抑えることができる。また、二次側循環管路26の途中には、二次側循環ポンプ64が設けられ、熱交換器30に接続されている。 【0022】 輻射パネル40は、適宜な厚みを有し、金属及び樹脂から成る矩形のパネル状に形成され、天井裏の建物構造材36aから吊り具44などで吊支されている。そして、天井面38aを構成する他の天井部材と組み合わされて、天井38を形成している。また、天井38には、室内46の空気を換気する排気口48及び給気口50が設けられている。この排気口48及び給気口50には、天井裏にて換気配管51が各々接続され、換気装置12の室外空調機52に、換気配管51が各々接続されている。」 (4)甲第4号証 取消理由通知において引用した甲第4号証(特開2005-121280号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0019】 ここで、本実施例の空調システムにおいて適用されている空調設備について説明すると、まず、インテリアゾーン2には、図2に示すように、その天井部分に通水用の配管が配設された複数の輻射パネル5が設けられ、配管内に一定温度(15℃?20℃)の冷水を通水させ、冷水の温度と室内の空気温度とにより、空気が熱交換されてインテリアゾーン2の空気の温度調節がなされるようになっており、ペリメータゾーン3の天井には、複数の吹き出し口4が配置され、図3で示されているように、この吹き出し口4から矢印方向に吹き出される空気14によってペリメータゾーン3の空気の温度調節がなされている。」 (5)甲第5号証 取消理由通知において引用した甲第5号証(特開2011-2104号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0024】 図2および図3に示すように、タスク空調設備3は、デシカント空調機4を備えている。デシカント空調機4は、デシカントロータ(図示せず)を用いて外部から取り入れた外気を除湿するもので、外気を除湿する除湿通路41と、デシカントロータを再生させる再生通路42とを有している。そして、外部からデシカント空調機4に導入された外気OAは、除湿通路41を通過することにより、除湿され、熱交換器32に供給させることになる。そして、熱交換器32に供給された空気は、熱交換器32において熱交換され、冷却された空気(給気)SAは、床下を通って開放された吹出口31から吹き出されることになる。本説明では、デシカント空調機にて湿度調整を行っているが、当技術の実施にあたっては、デシカント空調機に限定されるものではない。 【0025】 また、デシカント空調機4は、ブロア33を介して居室の天井裏と繋がっており、ブロア33を稼働すると、居室内部の空気(還気)RAがデシカント空調機4に供給されるようになっている。そして、デシカント空調機4に供給された還気RAは、再生通路42を通過することにより、デシカントロータを再生した後、排気EAとなって外部に排出されることになる。」 6 当審の判断 6-1 本件発明1について A 甲1発明を主引例とした場合 (1)対比 ア 甲1発明の「室外機A」、「室内機B」は、それぞれ、本件発明1の「室外機」、「室内機」に相当する。 また、本件特許明細書の段落【0003】には、本件発明1の「空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機」に関して、「個別方式のなかでも空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機(エアコン)によるものは、室外機と室内機との間で冷媒を循環させることにより室内機において冷風または温風を調製して空調対象室に直接送風する構成」と記載されており、甲1発明においても「室外機A、分岐ユニットD、および室内機Bにおいて冷媒流路を形成し」、「室内機Bが有している室内熱交換器21で室内空気を暖めるか、又は室内空気を冷やす」構成を有しているから、甲1発明の「室内空気を暖めるか、又は室内空気を冷やす」「ヒートポンプ式冷凍サイクルが構成され」た「空気調和機」は、本件発明1の「空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機」に相当する。 なお、パッケージ方式が業務用空調機で採用される方式であるとしても、ヒートポンプ自体の構成は、業務用空調機か否かにより何ら変わるものではないから、上記のとおり相当するとした。 また、甲1発明において、冷媒流路に冷媒を循環させ、冷風又は温風を空調対象室に給気することで室内空気を暖めるか、又は室内空気を冷やすようすることは、自明な事項である。 よって、甲1発明の「室外機A、分岐ユニットD、および室内機Bにおいて冷媒流路を形成したヒートポンプ式冷凍サイクルが構成され、室内機Bが有している室内熱交換器21で室内空気を暖めるか、又は室内空気を冷やす空気調和機」は、本件発明1の「室外機と室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システム」に相当する。 イ 甲1発明の「分岐ユニットD」は、「水熱交換器13」を有し、「室外機Aと室内機Bとを接続する」ものであるから、本件発明1の「前記空調機における冷媒配管の途中に」設置された「熱交換ユニット」に相当する。 また、甲1発明においては、「暖められた水、又は冷やされた水により床上空間を暖めるか、又は冷却」するから、「暖められた水、又は冷やされた水」を選択的に指定し、調製することは明らかである。 そして、甲1発明の「水管16」は、本件発明1の「冷温水配管」に相当し、甲1発明において「床パネルCの放熱用配管28に流れた暖められた水、又は冷やされた水」は、空調を行う空調対象室に循環供給されることは自明な事項である。 よって、甲1発明の「床パネルCの放熱用配管28に流れた暖められた水、又は冷やされた水により床上空間を暖めるか、又は冷却」する点は、本件発明1の「冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室に」「冷水または温水を冷温水配管を通して」「循環供給することにより該空調対象室に対して」「輻射冷暖房を行う」点に相当する。 そうすると、甲1発明の「室外機Aと室内機Bとを接続する分岐ユニットDから床パネルCにかけて水循環サイクルを構成し、床パネルCの放熱用配管28に流れた暖められた水、又は冷やされた水により床上空間を暖めるか、又は冷却」する点と、 本件発明1の「前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室に天井面に設置した天井放射パネルに循環供給することにより該空調対象室に対して天井面から輻射冷暖房を行う」点とは、 「前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室のパネルに循環供給することにより該空調対象室に対して輻射冷暖房を行う」点で共通する。 ウ 甲1発明の「水熱交換器13」、「ポンプ15」、「水タンク14」、「分岐ユニット制御器40」、「流量調整弁(第2流量調整弁)12」は、それぞれ、本件発明1の「熱交換器本体」、「ポンプ」、「膨張タンク」、「制御手段」、「膨張弁」に相当する。 また、甲1発明の「水熱交換器13」は、冷媒と「暖められた水、又は冷やされた水」とで熱交換すること、「ポンプ15」は、「暖められた水、又は冷やされた水」を循環させるためのものであること、及び「水タンク14」が「暖められた水、又は冷やされた水」の熱膨張を吸収することは自明な事項である。 よって、甲1発明の「前記分岐ユニットDは、流量調整弁(第1流量調整弁)11、流量調整弁(第2流量調整弁)12、水熱交換器13、水タンク14、ポンプ15、水抜き栓17、冷媒温度センサ18、分岐ユニット制御器40を有しており、ポンプ15が運転すると、水タンク14内の水が水管16を通って床パネルCの放熱用配管28に流れ、その放熱用配管28を経た水が水熱交換器13を通って水タンク14に戻り、分岐ユニット制御器40は、流量調整弁11,12の開度、ポンプ15の運転などを制御する」点と、 本件発明1の「前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記天井放射パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記冷水または温水の熱膨張を吸収するための膨張タンクと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備してなる」点とは、 「前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記冷水または温水の熱膨張を吸収するための膨張タンクと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備してなる」点で共通する。 したがって、本件発明1と甲1発明とは、 「室外機と室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システムであって、 前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室のパネルに循環供給することにより該空調対象室に対して輻射冷暖房を行う構成とされ、 前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記冷水または温水の熱膨張を吸収するための膨張タンクと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備してなることを特徴とする空調システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 本件発明1は「建物全体を対象とする空調システムであって、建物全体の負荷に見合う熱源を用いることなく、建物内の各所に少なくとも室外機と室内機を備える空調機を複数分散配置して、それらを独立に運転し制御する空調システム」であるのに対し、甲1発明は、そのようなシステムではない点。 [相違点2] 空調対象室のパネルに関して、本件発明1は「天井面に設置した天井放射パネル」であるとともに「天井面から」輻射冷暖房を行うのに対し、甲1発明は床パネルCである点。 (2)判断 ア 上記[相違点1]について 空調装置の技術分野において、建物の各部屋にヒートポンプ式の空調装置を設置することは、例えば、特開昭57-52732号公報(申立人が提出した参考資料4)、実願昭56-164962号(実開昭58-69720号)のマイクロフィルム(同参考資料5)に示すとおり周知技術(以下「周知技術1」という。)である。 ここで、甲1発明の空気調和機と周知技術1は、ともにヒートポンプ式の空調装置を用いる点で共通するとともに、甲1発明の空気調和機を建物の各部屋に設置できないとする理由もない。 そして、甲1発明の空気調和機を建物の各部屋に設置すれば、その全体について建物全体を対象とする空調システムということができ、各空気調和機は、建物全体の負荷に見合う熱源を用いるものではなく、建物内の各所に少なくとも室外機と室内機を備える空調機を複数分散配置して、それらを独立に運転し制御するものとなることは明らかである。 よって、甲1発明の空気調和機を、建物の各部屋に設置することにより、 上記相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 特許権者は、令和元年11月25日付けの意見書において、「甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明は、1つの部屋を被空調空間とする単一の空調システムに関する発明である。すなわち、ビル全体の空調システムを意識した発明ではない。」(第3頁「第5 2(3)ア」)、「そして、家庭用等の1つの空気調和機とビル全体の空調システムは技術分野が大きく異なると考えるべきである。」(第3頁「第5 2(3)イ」と主張する。 しかしながら、1つの部屋を被空調空間とする空気調和機を建物の各部屋に設置すれば建物全体の空調システムとなることは上記のとおりであるから、甲1発明が本件発明1と技術分野が大きく異なるとはいえない。 イ 上記[相違点2]について 天井放射パネルを用いた輻射式冷暖房手段は、周知技術である(甲第2号証の輻射パネル25、甲第3号証の輻射パネル40、甲第4号証の輻射パネル5を参照。以下、「周知技術2」という。)。 よって、甲1発明に周知技術2を適用し、上記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 ウ 小活 したがって、本件発明1は、甲1発明、及び周知技術1、2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 B 甲2発明を主引例とした場合 (1)対比 ア 甲2発明の「熱源側ユニット」、「利用側ユニット」は、本件発明1の「室外機」、「室内機」にそれぞれ相当し、甲2発明においては、両ユニット間に高圧ガス管と低圧ガス管が設けられ、凝縮器または蒸発器として作用させる熱源側熱交換器と利用側熱交換器が設けられており、利用側ユニットは冷温風が吹出すから、両ユニット間で冷媒を循環させることにより冷風または温風を空調対象室に対して給気することは明らかである。 そして、上記A(1)アにおける検討を踏まえると、甲2発明の「圧縮機及び熱源側熱交換器が組込まれた熱源側ユニットと、利用側熱交換器が組込まれた複数の利用側ユニットと、両ユニット間に設けられる高圧ガス管と低圧ガス管と液管とからなるユニット間配管と、この高圧ガス管と低圧ガス管に設けられ熱源側熱交換器と各利用側熱交換器とを凝縮器または蒸発器として作用させるための冷媒流路切換用の切換弁とを備えた空気調和装置において、複数台の利用側ユニットのうちの少なくとも1台の利用側ユニットを冷温風が吹出す循環式ユニットとする」点は、本件発明1の「室外機と室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システム」に相当する。 イ 甲2発明の「輻射パネル(23)(24)(25)」を除いた「輻射式ユニット」、「水回路(20)」、「輻射パネル(25)」、「熱交換器(21)」及び「熱交換器(7c)」、「循環ポンプ(22)」、「電動式電磁弁等の冷媒減圧器(30)」は、それぞれ、本件発明1の「熱交換器ユニット」、「冷温水配管」、「天井放射パネル」、「熱交換器本体」、「ポンプ」、「膨張弁」に相当する。 甲2発明の「輻射式ユニット」は、複数台の利用側ユニットの一つであり、両ユニット間にはユニット間配管が設けられているから、冷媒配管の途中に設けられていることは明らかである。 そして、甲2発明において、空気調和装置が制御されて、室内の冷房又は暖房を行う場合に冷媒の供給量を「電動式電磁弁等の冷媒減圧器(30)」(膨張弁)の操作により制御すること、及び甲2発明がそのように制御する制御手段を有することは自明な事項である。 よって、甲2発明の「他の利用側ユニットを輻射熱が放出する輻射式ユニットとし、前記輻射式ユニットは、水回路(20)と、この水回路(20)の熱交換器(21)と熱的に接続きれた熱交換器(7c)と、電動式電磁弁等の冷媒減圧器(30)とで構成され、前記水回路(20)は、熱交換器(21)と循環ポンプ(22)と輻射パネル(23)(24)(25)とで構成され、前記輻射パネル(25)はペリメータ部分(26〉の天井に配置され、空気調和装置が制御されると、利用側ユニット(6a)(6b)から室内に冷風が吹出されると共に、冷却水により冷却された輻射パネルにより室内空気が冷却されて、室内が冷房されるか、又は、利用側ユニット(6a)(6b)から室内に温風が吹出されると共に、室内に輻射パネルから輻射熱が放出されて、室内が暖房される」点と、 本件発明1の「前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室に天井面に設置した天井放射パネルに循環供給することにより該空調対象室に対して天井面から輻射冷暖房を行う構成とされ、前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記天井放射パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記冷水または温水の熱膨張を吸収するための膨張タンクと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備」する点とは、 「前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室に天井面に設置した天井放射パネルに循環供給することにより該空調対象室に対して天井面から輻射冷暖房を行う構成とされ、前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記天井放射パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備」する点で共通する。 したがって、本件発明1と甲2発明とは、 「室外機と室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システムであって、 前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室に天井面に設置した天井放射パネルに循環供給することにより該空調対象室に対して天井面から輻射冷暖房を行う構成とされ、 前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記天井放射パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備してなる空調システム。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1’] 本件発明1は「建物全体を対象とする空調システムであって、建物全体の負荷に見合う熱源を用いることなく、建物内の各所に少なくとも室外機と室内機を備える空調機を複数分散配置して、それらを独立に運転し制御する空調システム」であるのに対し、甲2発明は、そのようなシステムではない点。 [相違点2’] 熱交換器ユニットに関して、本件発明1は「前記冷水または温水の熱膨張を吸収するための膨張タンク」を具備するのに対し、甲2発明はそのように特定されていない点。 (2)判断 ア 上記[相違点1’]について 甲2発明の空気調和装置と周知技術1は、ともにヒートポンプ式の空調装置を用いる点で共通するとともに、甲2発明の空気調和機を建物の各部屋に設置できないとする理由もない。 よって、上記A(2)アにおける検討と同様に、甲2発明の空気調和装置を、建物の各所に設置することにより、上記相違点1’に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 イ 上記[相違点2’]について 冷水または温水の流れる配管に膨張タンクを設けることは周知技術である(甲第1号証の水タンク14、甲第3号証の膨張タンク62を参照。以下、「周知技術3」という。)。 よって、甲2発明に周知技術3を適用し、上記相違点2’に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。 ウ 小活 したがって、本件発明1は、甲2発明、周知技術1、3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6-2 本件発明2について 本件発明1に加えて、本件発明2で特定する事項について検討すると、ユニットを一つのケーシング内に収容して構成することは、当業者が技術の具体化の際に適宜なし得たことである。 したがって、本件発明2は、甲1発明、及び周知技術1、2に基いて、又は甲2発明、及び周知技術1、3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6-3 本件発明3について 本件発明1または2に加えて、本件発明3で特定する事項について検討すると、輻射パネルを天井へ配置する空調システムにおいて、輻射パネルと連続して構成されるユニットを、天井裏空間の適宜位置とすることに、当業者の格別の創意工夫は要しないといえる。 特許権者は、令和元年7月8日付けの意見書において、熱交換ユニットを天井裏空間に設置することが容易想到であるとしても、非居室の天井裏空間とすることは、証拠もなく、当業者が容易に想到できるものではなく、熱交換ユニットを非居室の天井裏空間に設置することにより、漏水したとしてもその被害を最小限に食い止める効果を奏する旨主張する。 しかし、水を循環させるユニットの漏水による被害を最小限化することは当業者にとって自明な課題であるから、そのような課題解決のために漏水の可能性がある熱交換器の配置を非居室の天井裏空間とすることは当業者が容易に想起し得ることといえる。 したがって、本件発明3は、甲1発明、及び周知技術1、2に基いて、又は甲2発明、及び周知技術1、3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6-4 本件発明4及び5について 本件発明1から3のいずれか一項に加えて、本件発明4で特定する事項、並びに本件発明1から4のいずれか一項に加えて、本件発明5で特定する事項について検討する。 甲第4号証には、天井輻射パネル5により空調対象室のインテリアゾーンにおける空気の温度調節をすることに加え、吹き出し口4により空調対象室のペリメータゾーンにおける空気の温度調節をすることが記載されている(段落【0015】、【0019】、図1、図3、以下「甲4記載の事項」という。)。 そして、甲第4号証には通風などの外的要因でペリメータゾーンの空気の温度が変化しやすいことも記載されている(段落【0018】)。 よって、甲1発明又は甲2発明に上記甲4記載の事項を適用し、本件発明4で特定する事項又は本件発明5で特定する事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 したがって、本件発明4ないし本件発明5は、甲1発明、甲4記載の事項及び周知技術1、2に基いて、又は甲2発明、甲4記載の事項及び周知技術1、3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6-5 本件発明6について 本件発明1から5のいずれか一項に加えて、本件発明6で特定する事項について検討する。 甲第5号証には、空調対象室へ外気を導入しつつ該空調対象室から排気を行うとともにそれら外気と排気との間でデシカントロータにより水分の交換を行うことにより空調対象室の湿度を制御するデシカント空調機4を備えた空調システムが記載されている(段落【0024】、【0025】、図2、図3、以下「甲5記載の事項」という。)。 そして、甲1発明又は甲2発明に上記甲5記載の事項を適用し、本件発明6で特定する事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。 したがって、本件発明6は、甲1発明、甲4記載の事項、甲5記載の事項及び周知技術1、2に基いて、又は甲2発明、甲4記載の事項、甲5記載の事項及び周知技術1、3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 7 むすび 以上のとおり、本件発明1ないし本件発明3は、甲1発明、及び周知技術1、2に基いて、又は甲2発明、及び周知技術1、3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、本件発明4ないし本件発明5は、甲1発明、甲4記載の事項及び周知技術1、2に基いて、又は甲2発明、甲4記載の事項及び周知技術1、3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 そして、本件発明6は、甲1発明、甲4記載の事項、甲5記載の事項及び周知技術1、2に基いて、又は甲2発明、甲4記載の事項、甲5記載の事項及び周知技術1、3に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件発明1ないし本件発明6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 建物全体を対象とする空調システムであって、建物全体の負荷に見合う熱源を用いることなく、建物内の各所に少なくとも室外機と室内機を備える空調機を複数分散配置して、それらを独立に運転し制御する空調システムにおいて、 前記室外機と前記室内機との間で冷媒を循環させることにより前記室内機において冷風または温風を調製する構成の空冷ヒートポンプパッケージ方式の空調機を主体として構成され、前記室内機により調製した冷風または温風を空調対象室に対して給気することにより該空調対象室に対する空調を行う構成の空調システムであって、 前記空調機における冷媒配管の途中に前記冷媒との熱交換により選択的に指定した冷水または温水を調製する熱交換器ユニットを設置し、該熱交換器ユニットにより調製した冷水または温水を冷温水配管を通して前記空調対象室に天井面に設置した天井放射パネルに循環供給することにより該空調対象室に対して天井面から輻射冷暖房を行う構成とされ、 前記熱交換器ユニットは、前記冷媒と前記冷水または温水との間で熱交換を行う熱交換器本体と、前記冷水または温水を前記冷温水配管を通して前記熱交換器本体と前記天井放射パネルとの間で循環させるためのポンプと、前記冷水または温水の熱膨張を吸収するための膨張タンクと、前記熱交換器本体への前記冷媒の供給量を膨張弁の操作により制御することによって前記冷水または温水の温度を制御するための制御手段とを具備してなることを特徴とする空調システム。 【請求項2】 前記熱交換器ユニットの前記熱交換器本体、前記ポンプ、前記膨張タンク、および前記制御手段は、一のケーシング内に収納されていることを特徴とする請求項1に記載の空調システム。 【請求項3】 前記熱交換器ユニットは、非居室の天井裏空間に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の空調システム。 【請求項4】 請求項1から3のいずれか一項に記載の空調システムであって、 前記天井放射パネルにより前記空調対象室におけるインテリア負荷を処理可能とし、前記室内機により前記空調対象室におけるペリメータ負荷を処理可能としたことを特徴とする空調システム。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか一項に記載の空調システムであって、 前記室内機により前記空調対象室における外気負荷を処理可能としたことを特徴とする空調システム。 【請求項6】 請求項1から5のいずれか一項に記載の空調システムであって、 前記空調対象室へ外気を導入しつつ該空調対象室から排気を行うとともにそれら外気と排気との間で水分の交換を行うことにより前記空調対象室の湿度を制御する外気処理装置を備えたことを特徴とする空調システム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-01-30 |
出願番号 | 特願2013-21720(P2013-21720) |
審決分類 |
P
1
651・
851-
ZAA
(F24F)
P 1 651・ 121- ZAA (F24F) |
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 岡澤 洋 |
特許庁審判長 |
紀本 孝 |
特許庁審判官 |
平城 俊雅 槙原 進 |
登録日 | 2018-07-06 |
登録番号 | 特許第6361904号(P6361904) |
権利者 | 清水建設株式会社 |
発明の名称 | 空調システム |
代理人 | 川渕 健一 |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 佐伯 義文 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 西澤 和純 |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 高橋 詔男 |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 川渕 健一 |
代理人 | 西澤 和純 |
代理人 | 佐伯 義文 |
代理人 | 川渕 健一 |
代理人 | 高橋 詔男 |