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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A47J 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A47J 審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正 A47J 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A47J |
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管理番号 | 1362348 |
異議申立番号 | 異議2019-700549 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-07-12 |
確定日 | 2020-04-02 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6453559号発明「真空調理器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6453559号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔4、6、7〕について訂正することを認める。 特許第6453559号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 特許6453559号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成26年5月28日に出願されたものであり、平成30年12月21日にその特許権の設定登録がされ、平成31年1月16日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和1年7月12日:特許異議申立人 松本 征二(以下、「申立人」という。)による請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立 令和1年9月6日付け:取消理由通知書 令和1年10月31日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 なお、令和1年12月4日付けで特許異議申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)をし、意見を求めたものの、何らの応答もなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和元年10月31日に提出された訂正請求書により請求された訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項4に、 「前記制御手段は、設定された目標調理温度に到達した時点での前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する」とあるのを、 「前記制御手段は、前記第1温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する」と訂正する。 そして、その結果として、請求項4を引用する請求項6及び7も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 願書に添付した明細書の段落【0019】を、 「 この構成によれば、減圧によって食材内部の熱伝導率が高くなった状態で、目標調理時間の間、食材の表面温度が目標調理温度に保たれる。食材の種類や量によって、目標調理温度や目標調理時間は異なる。従って、ユーザが食材の種類や量に応じた目標調理温度や目標調理時間を入力することにより、食材の種類や量に拘わらず食材を表面から中心部まで適切な温度で調理することができる。 また、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器である。 また、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第2温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、前記目標調理温度を補正することにより、前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器である。」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、請求項4に「前記第1温度センサの検出値が」を追加することにより、「設定された目標調理温度に到達した時点」が「前記第1温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点」であることを明瞭にするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0073】には、「ステップS11において、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達した時点(時刻t3、図5参照)における第2温度センサ5の検出温度と第1温度センサ3の検出温度の差ΔT1(図5参照)に応じて、目標調理時間tmを、ステップS2で入力された目標調理時間tmよりも長い時間または短い時間に変更する(目標調理時間tmを補正する)。」と記載されている。 そうすると、訂正事項1は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、訂正事項1に係る訂正に伴い、特許請求の範囲と本件特許明細書との整合性を図るための訂正であり、訂正事項2に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項2は、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許第6453559号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔4、6、7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正による訂正後の請求項1?7に係る発明について、訂正特許請求の範囲には、以下のとおり記載されている(以下、訂正後の本件特許に係る発明を「本件発明」、本件特許の請求項1に係る発明ないし本件特許の請求項7に係る発明を、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明7」という。)。 「 【請求項1】 食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、 前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、 前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、 前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、 前記第1温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、 前記制御手段による前記ヒータの制御では、前記減圧手段により減圧された状態の前記調理槽内の食材に対する前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御が行われる真空調理器。 【請求項2】 前記調理槽の温度を検出する第2温度センサをさらに備え、 前記制御手段は、前記第2温度センサの検出結果に基づいて、前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正することを特徴とする、請求項1に記載の真空調理器。 【請求項3】 前記制御手段は、前記第2温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータによる加熱を抑制することを特徴とする、請求項2に記載の真空調理器。 【請求項4】 食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、 前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、 前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、 前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、 前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、 前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、 前記制御手段は、前記第1温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器。 【請求項5】 食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、 前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、 前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、 前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、 前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、 前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、 前記制御手段は、前記第2温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、前記目標調理温度を補正することにより、前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器。 【請求項6】 前記調理槽内に蒸気を供給する蒸気供給手段をさらに備え、 前記蒸気供給手段は、前記減圧手段によって減圧された前記調理槽内に蒸気を供給することを特徴とする、請求項1乃至5いずれかに記載の真空調理器。 【請求項7】 少なくとも、減圧によって前記調理槽内が到達すべき圧力である目標圧力、加熱によって食材の表面が到達すべき温度である目標調理温度、および前記目標調理温度を保つべき時間である目標調理時間の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、 前記制御手段は、前記調理槽内の圧力が前記目標圧力になった状態で、前記目標調理時間の間、食材の表面温度を前記目標調理温度に保つ制御を行うことを特徴とする、請求項1乃至6いずれかに記載の真空調理器。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由 1 取消理由の概要 当審が令和1年9月6日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 訂正前の請求項4に係る発明の「設定された目標調理温度に到達した時点」が、何の温度が「設定された目標調理温度に到達した時点」であるのかを明確に特定できないので、本件特許の請求項4、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消すべきものである。 2 当審の判断 訂正後の本件発明4は、「前記第1温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点」と特定されたことにより、「前記第1温度センサの検出値が」「設定された目標調理温度に到達」した時点であることが明確となった。したがって、本件特許の請求項4、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たさない特許出願に対してされたものではないから、取り消すことはできない。 第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由 1 申立理由1(特許法第29条第2項) 本件発明1ないし7は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証ないし甲第9号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、その発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、取り消すべきものである。2 申立理由2(特許法第36条第6項第1号) 本件発明1ないし3、6及び7は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、その発明に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 3 申立理由3(特許法第36条第4項第1号) 本件発明1ないし3、6及び7は、発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、その発明に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 4 申立理由4(特許法第17条の2第3項) 本件発明1ないし3、6及び7に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 記 甲第1号証:特開2008-73309号公報 甲第2号証:特開平8-136355号公報 甲第3号証:特開平8-94081号公報 甲第4号証:特開2012-2462号公報 甲第5号証:特開2008-260558号公報 甲第6号証:特開2003-83544号公報 甲第7号証:特開2013-50298号公報 甲第8号証:特開2014-32004号公報 甲第9号証:特開2007-222314号公報 (以下、甲第1号証ないし甲第9号証を、「甲1」?「甲9」という。) 第6 申立理由1(特許法第29条第2項)について 1 甲1ないし甲9の記載事項及び記載された発明 (1)甲1 甲1には、「調理器」に関して、図面と共に次の記載がある(下線は、参考のため、当審で付与したものである。)。 「【請求項1】 密閉された調理空間を具備した調理容器と、 前記調理空間と接続され、該調理空間内の空気を吸引して負圧にすることが可能な減圧手段と、 前記調理空間内を昇圧可能な増圧手段とを備え、 前記調理空間内に調味材とともに食材を収容した後、前記減圧手段により前記調理空間内において負圧を発生させる減圧状態と、前記増圧手段により減圧状態から再び昇圧させる増圧状態とを交互に複数回繰り返すことにより、食材に調味材を浸透させる調理を施し、 2回目以降の減圧状態のうち、少なくとも1回は、その継続時間をそれ以前に設けられた減圧状態の継続時間よりも長くすることを特徴とする調理器。」 「【請求項6】 調味材は水溶液状の調味液であって、 調理中の前記調理空間内を加熱する調理空間加熱手段と、 前記調理空間内の温度を検出する調理空間測温手段と、 前記調理空間測温手段による検出値に基づいて、前記調理空間内の温度が、前記調理空間加熱手段によって調味液が加熱されて発生する飽和水蒸気圧が、減圧状態における前記調理空間内の目標圧力となる温度を超えないように、前記調理空間加熱手段を制御する温度制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の調理器。」 「【0024】 <実施形態3> 次に、図6乃至図8に基づいて、実施形態3による調理器21について説明する。本実施形態は、実施形態1による調理器1と同様の構成をレンジ22内に設けたものである。レンジ22は通常のレンジと同様のものであり、図6に示すように、箱型のレンジ庫23を備え、レンジ庫23の下部には、マイクロ波発生用のマグネトロン24と、マグネトロン24と接続され、発生したマイクロ波を伝送する導波管25と、導波管25に取り付けられ、マイクロ波をレンジ庫23内に放射するマイクロ波アンテナ26とが設けられ、レンジ庫23内を下方から加熱することができるようになっている。なお、マグネトロン24、導波管25およびマイクロ波アンテナ26は、本発明の調理空間加熱手段に該当する。 【0025】 レンジ庫23内の床面には、実施形態1と同様に、食材(図示せず)が浸された調味液27が収容された下側容器28が載置され、下側容器28には蓋体29が液密的に取り付けられることにより、内部には密閉された調理空間30が形成されている。蓋体29には空気通路31の一端が取り付けられており、空気通路31はレンジ庫23の側壁を貫通している。空気通路31の他端には、レンジ庫23外にあるバキュームポンプ32および大気開放弁33が接続され、これらは空気通路31を介して調理空間30と連通している。また、レンジ庫23内の天井面には赤外線温度センサ34が取り付けられており、これにより、調理空間30内の温度が検出可能となっている。赤外線温度センサ34は、本発明の調理空間測温手段に該当する。 【0026】 バキュームポンプ32および大気開放弁33には、制御装置35が電気的に接続されており、バキュームポンプ32の作動および大気開放弁33の切換えを、それぞれ制御している。また、制御装置35にはマグネトロン24および赤外線温度センサ34が接続されており、制御装置35は赤外線温度センサ34による検出値に基づいて、マグネトロン24をリニア制御して調理空間30内の温度を制御する。なお、制御装置35は本発明の温度制御手段に該当する。 【0027】 次に、調理器21による調理方法について説明する。実施形態1と同様に、調理が開始すると制御装置35はバキュームポンプ32の作動および大気開放弁33の切換えを制御して、調理空間30内において、減圧状態と増圧状態とをそれぞれ複数回繰り返して、食材に調味液27を浸透させていく(図7示)。これについては、実施形態1の場合と同様であるため、詳細な説明は省略する。 【0028】 一方、制御装置35は調理開始とともにマグネトロン24を常時作動させて、レンジ庫23内にある下側容器28を加熱していき、調理空間30内の温度を上昇させていく。制御装置35は、調理空間30内において、減圧状態と増圧状態とを繰り返しながら、赤外線温度センサ34による検出値に基づいて、調理空間30内の温度が一定(本実施形態においては85℃)になるようにマグネトロン24の作動を制御する(図7において、fにて示す)。詳細に説明すれば、制御装置35は、図8に示すように、調理空間30内の温度が、調味液27が加熱されて発生する飽和水蒸気圧が、減圧状態における調理空間30内の目標圧力である0.6気圧となる温度を超えないように(約85℃に)、マグネトロン24を制御する。 【0029】 本実施形態によれば、調理空間30内において、減圧状態と増圧状態とを繰り返しながら、調理空間30内を加熱することにより、よりいっそう食材への調味液27の浸透を促進できる。また、調理空間30内の温度が、調味液27が加熱されて発生する飽和水蒸気圧が、減圧状態における調理空間30内の目標圧力となる温度を超えないように制御する ことにより、調味液27の加熱による水蒸気の発生があっても、調理空間30内の圧力が上昇しすぎることなく、調理空間30内を適正な減圧状態にすることが可能である。」 「 ![]() 」 上記記載及び図面を総合すると、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「 食材を収容した密閉された調理空間を具備した調理容器と、 該調理空間内の空気を吸引して負圧にすることが可能な減圧手段と、 前記調理空間内の温度を検出する調理空間測温手段と、 減圧状態で調理中の前記調理空間内を加熱する調理空間加熱手段と、 前記調理空間測温手段による検出値に基づいて、前記調理空間加熱手段を制御する温度制御手段と、を備えた調理器。」 (2)甲2 甲2には、「食材内部の温度推定方法」に関して、図面と共に次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、電子レンジやオーブン等の加熱調理装置を用いて食材を加熱調理する際の食材、特に、食材内部の温度変化を推定する方法に関するものである。」 「【0043】本発明の計測と並行したリアルタイムでの温度推定の手順は次のようになる。前述の例と同様に、最初に、入力手段8を用いて食材情報を入力する(手順12)。次に、加熱情報を入力する(手順13)。これらの入力内容や方法は第三の温度推定方法の場合と同様である。入力された食材情報より食材名が分かれば、使うべき演算係数35が決まる。さらに、初期温度と重量が食材情報より得られ、加熱出力が加熱情報より得られるので、温度検出手段34により角部表面の温度を検出すれば(手順36)、演算処理手順32にしたがって、中心部の温度変化率が簡単に求まる(手順30)。ここで、計算時間間隔ΔTを決め(手順20)、ΔT後の中心部温度を求める(手順37)。 【0044】1回目の表面温度検出からΔT後に、再度、角部表面の温度を検出し、その温度と先に求めた中心温度を用いて中心部の温度変化率、さらに、中心部温度を求める。このようにして、ΔT間隔でリアルタイムに中心温度を推定することができるので、中心温度をパラメータにした加熱の制御が容易に行なえる。本発明の方法では表面温度を直接検出しているので、2点を推定する第三の方法よりも精度良く中心部温度を推定することが可能になる。さらに、表面温度の計測は赤外線センサを用いれば非接触で、かつ、高周波加熱の環境下でも可能であり、中心温度を直接測るよりも数段容易である。 【0045】【発明の効果】以上実施例で説明したように本発明の温度推定方法によれば、加熱時の温度むらを持った食材の温度を1点、あるいは、複数点知ることができる。具体的には、第一の温度推定方法においては、高周波が食材表面から浸透するにつれて減衰する現象を表現して食材内部の温度分布を求めることができる。第二の方法は、食材の中央よりも端のほうが加熱されやすいという形状に起因する加熱むらを捉える温度推定方法である。また、これら第一、第二の方法を組み合わせることにより、さらに精度を上げることができる。第三の温度推定方法は、あらかじめ指定した2点について、温度変化率を求める演算係数を用意しておく方法で、非常に高速に温度を推定することができる。第四の温度推定方法は、実際に加熱調理を行ないながらリアルタイムに中心温度を推定する方法で、温度検出手段により表面角部の温度を検出することによって、高い精度で中心温度が推定される。 【0046】このように、調理中の食材の温度変化を捉えることによって、希望の温度変化パターンに一致するように加熱制御することが可能になる。調理を開始するに際しては、あらかじめ、最適な加熱条件を検討することができるようになり、調理中には、食材の中心温度を基準にして火加減を調節することができる。したがって、初めての調理を行なうときにも経験に頼らずに最適な加熱パターンを設定できるし、蒸気のような間接的なパラメータで調理を進めるよりも、温度制御が容易になるので、常にうまく調理することができるという効果が得られる。」 上記記載及び図面を総合すると、甲2には以下の技術(以下、「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。 「加熱調理装置を用いて食材を加熱調理する際、非接触の温度検出手段により食材の表面角部の温度を検出し、その温度から演算処理により、中心温度を推定し、加熱制御をおこなう方法。」 (3)甲3 甲3には、「加熱調理装置」に関して、図面と共に次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、オーブンやスチームオーブン、電子レンジなどのように食材に熱を加えて料理する、加熱調理装置に関するものである。」 「【0022】【実施例】以下本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の加熱調理装置のブロック図を示したものである。加熱手段11は電気ヒータ、ガスバーナ、マグネトロンなど各種の加熱源が利用可能である。12は制御手段であり、加熱手段の入り切りや強弱を制御する。13は外部入力手段であり、調理する食材の種類や量、形状など、および、調理の食材の設定温度変化を入力する。設定温度変化は食材の部位別に、調理中の温度変化を示したもので、急速に温度を上げたり、ゆっくり温度を上げたりの指定をする条件である。設定温度変化を指定する位置(たとえば、食材の中心部や角部)は1点から数点まで調理の内容に合わせて設定可能である。ただし、複数の設定温度変化を指定した場合、すべてを満足することは困難であるので、いずれか一つを優先させることが必要である。一般的には、食材の表面ほど温度上昇が早く、中心部ほど上昇が遅いので、たとえば、表面に近い部位の設定温度変化を優先させることによって、表面の過加熱を抑えることが可能である。温度変化推定手段14は、外部入力手段13から入力された食材の情報と加熱手段の特性を考慮して食材の温度変化を推定するものである。具体的な推定方法としては、様々な食材について、いろいろな条件で調理をした時の食材の温度変化を実験により求め、それをデータベースとして蓄えておくものや、食材の熱物性値と加熱条件をもとに、熱解析を行ない時々刻々の温度変化を求めるものなどが考えられる。後者の場合、各種食材の熱物性値はデータベースとして蓄えられている必要がある。【0023】本構成の加熱調理装置を用いて調理を行なう際には、調理しようとする食材の種類や量が過去に経験のない場合であっても、加熱のスピードや温度を設定温度変化として入力すると、それに合わせた調理が自動的に行なわれる。具体的にはたとえば2kgのローストビーフを初めて調理するとき、火加減や加熱時間が全くわからなくても、始め急速に加熱して、56℃で1時間維持すれば良いということがわかっていれば、そのような温度変化を食材表面付近の部位の設定温度変化として指定すれば、それに適した制御が行われる。つまり、調理を開始する前に、調理中の食材の温度変化が推定されて、食材の温度が、入力された設定温度変化にほぼ一致するように加熱条件を設定することができるので、最適な加熱パターンが得られる。したがって、経験のない調理でも失敗なく行なうことができる。 【0024】図2は温度検出手段を備えた構成を示すブロック図である。以下、図1と同じ機能を果たす要素については同じ番号を付して説明は省略する。15は温度検出手段であり、調理中の温度を検出するものである。検出する温度T1は加熱手段としてのヒータの温度や庫内の雰囲気温度、食材の表面温度、食材の内部温度などが考えられる。16は温度検出手段15と連動した温度推定手段で、温度検出手段15から得られる温度データT1をもとに、温度が直接検出できない部分の温度T2を推定するものである。たとえば、加熱手段のヒータ温度を温度検出手段15で検出して、その値をもとに、食材内部の温度を推定するような働きをする。 【0025】本構成の加熱調理装置を用いて調理を行なう際には、調理しようとする食材の種類や量が過去に経験のない場合であっても、一般的に推奨される温度変化や温度を設定温度変化として設定して調理を開始すると、温度検出手段15から得られる温度T1(たとえば、ヒータ温度)と、それにもとづいて温度推定手段16により推定される温度T2(たとえば、食材内部の温度)が得られるので、食材の温度が入力された設定温度変化の少なくとも一つにほぼ一致するように、制御手段12が加熱手段11をコントロールする。したがって、経験のない調理でも失敗なく行なうことができる。 【0026】図3は温度検出手段を備えたオーブンの例である。17は庫内の雰囲気温度T3を検出する温度センサである。庫内空気の温度は熱伝達および熱伝導によって食材を加熱していくので、温度センサ17から得られる温度T3をもとに、温度推定手段16で食材の内部温度T4を推定することができる。この推定される内部温度T4の変化が、外部入力手段13より入力された設定温度変化の少なくとも一つにほぼ一致するように制御手段12が加熱手段11をコントロールする。したがって、経験のない調理でも一般的な温度変化や仕上がり温度の推奨値がわかれば失敗なく行なうことができる。 【0027】また、食材表面の設定温度変化も外部入力手段13より設定されている場合は、表面温度を推定することも可能であるが、庫内温度T3が食材の表面温度にほぼ等しいと考えて、加熱量を制御することもできる。複数の部位について設定温度変化が設定されており、それらを同時に満たすことができない場合は、どの条件を優先させるかを決めておけば、加熱手段11の制御は可能である。 【0028】図4は温度検出手段として、非接触で食材の表面温度を検出する手段を備えた構成の概略図である。非接触の温度検出手段18は食材の表面温度T5を検出し、その値をもとにして、温度推定手段16で食材内部の温度T4を推定する。庫内の雰囲気温度ではなく、食材表面の温度を直接検出するので、内部温度を精度よく推定することができる。また、接触式と異なり、食材を自由に動かすことができるので、たとえば、ターンテーブルなどを用いることも可能である。表面温度T5と推定温度T4をもとに、加熱手段11を制御し、最適な調理を行なえる効果は前述の例と同様である。」 上記記載及び図面を総合すると、甲3には以下の技術(以下、「甲3技術」という。)が記載されていると認められる。 「加熱調理装置を用いて食材を加熱調理する際、非接触の温度検出手段により食材の表面温度を検出し、その温度から温度推定手段16により、内部温度T4を推定し、加熱制御をおこなう方法。」 (4)甲4 甲4には、「加熱調理器および加熱調理方法」に関して、図面と共に次の記載がある。 「【0050】 この発明の加熱調理器の他の実施の形態として、図3に示すように被調理物90の温度を検知する温度検知ユニット91を加熱室20の天面側に設置したものでもよい。この加熱調理器では、温度検知ユニット91の内部を断熱構造とし、温度検知ユニット91内に放射温度センサ94を少なくとも1個以上設けることが望ましい。この放射温度センサ94は、赤外線を検知する能力を持つことを特長とし、防滴処理を行っていることが望ましい。放射温度センサ94の周りは、断熱構造で覆われているが、検知部は運転終了時に扉の開口と同時に前面カバーが取り外せてふき取りを行う構造が望ましい。なお、被調理物の内部温度は、図1と同様に針状センサにより検出する。」 「【0063】 また、図4,図5は庫内温度を100℃に調整した調理に対して優位性が出た場合の調理時間である。調理物表面の各点が分水作用開始温度に到達した後、12分?13分で調理を終了している。図示しないが、庫内温度を80℃に調整した調理で芯温75℃に達してから1分間経過した後に終了した場合でも、肉の表面温度が分水作用開始温度に到達した後、最大15分で調理を終了していた。一方、図6,図7は庫内温度を100℃に調整した調理に対して優位性が見られなかった場合の調理時間を示している。被調理物表面の各点が分水作用開始温度に到達した後、20分以上経過した後に調理を終了している。」 「【0101】 また、図3に示すように、被調理物90の表面温度を非接触で検知する放射温度センサ94を設けることにより、被調理物90を傷つけることなく、被調理物90の状態に応じて最適な加熱調理を行うことができる。」 上記記載及び図面を総合すると、甲4には以下の技術(以下、「甲4技術」という。)が記載されていると認められる。 「被調理物90の表面温度を非接触で検知する放射温度センサ94を設けることにより、被調理物90を傷つけることなく、被調理物90の状態に応じて最適な加熱調理を行うこと。」 (5)甲5 甲5には、「真空調理に用いる袋状容器」に関して、図面と共に次の記載がある。 「【0002】 近年日本でも急速に普及し始めている真空調理は、真空パックされた食品を湯煎またはスチームオーブンを用いて、55℃程度から95℃程度までの間の一定温度で加熱する調理法である。真空調理の最大の利点としては、真空であるため熱伝導が良好であり、食品全体を最も美味しい特定の温度範囲内に均一に加熱できる点にある(例えば、特許文献1参照。)。」 上記記載及び図面を総合すると、甲5には以下の技術(以下、「甲5技術」という。)が記載されていると認められる。 「真空調理では、熱伝導が良好であり、食品全体を均一に加熱できること。」 (6)甲6 甲6には、「高周波加熱装置」に関して、図面と共に次の記載がある。 「【0038】その結果、加熱中に減圧用容器内の気圧を大気圧に戻すことにより、冷凍肉まんが高い温度で蒸発をおこすようになり、冷凍肉まんの重量減少を抑えることができることが判明した。ただ、減圧中では食品の温度上昇は早い。そのため、冷凍肉まんが0°C以下の時は、減圧中で加熱した方がよい。また、冷凍肉まんの温度が15°C以上になると、冷凍肉まんからの恭発が増加するので、減圧を停止する必要がある。」 上記記載及び図面を総合すると、甲6には以下の技術(以下、「甲6技術」という。)が記載されていると認められる。 「減圧中では食品の温度上昇は早いこと。」 (7)甲7 甲7には、「加熱調理器」に関して、図面と共に次の記載がある。 「【0025】 ところで、本実施の形態においては、上記ロースター部9の上ヒータ20と下ヒータ21とを、上ヒータ室22と下ヒータ室23との中に収納している。したがって、上ヒータ室22内および下ヒータ室23内に設置した上,下温度センサの検知温度のみに基づいて加熱庫10内の温度を制御した場合には、加熱庫10内の温度と上,下温度センサによる検知温度とにはズレが生ずるために、加熱庫10内の温度管理が非常に難しい。そこで、本実施の形態においては、図3に示すように、上ヒータ室22内の温度を検出する上ヒータ室温度センサ29および下ヒータ室23内の温度を検出する下ヒータ室温度センサ30に加えて、加熱庫10内の温度を検出する加熱庫温度センサ31を設ける。」 上記記載及び図面を総合すると、甲7には以下の技術(以下、「甲7技術」という。)が記載されていると認められる。 「加熱庫10内の温度を検出する加熱庫温度センサ31、上ヒータ室22内の温度を検出する上ヒータ室温度センサ29および下ヒータ室23内の温度を検出する下ヒータ室温度センサ30を設けること。」 (8)甲8 甲8には、「電気機器」に関して、図面と共に次の記載がある。 「【0070】 [実施の形態3] 実施の形態1,2によれば、赤外線アレイセンサ71aおよびサーミスタ71bのうちのいずれか一方から受けた測定値のみに基づいて、加熱庫10内の状態をマイクロコンピュータ101は判断する。しかし、赤外線アレイセンサ71aおよびサーミスタ71bの双方から受けた測定値を基準値と比較することにより、加熱庫10内の状態が判断されてもよい。 【0071】 本実施の形態では、マイクロコンピュータ101がアドバイスを決定するための測定値として、赤外線アレイセンサ71aの測定値(すなわち食品12の温度)およびサーミスタ71bの測定値(すなわち加熱庫10内の温度)が用いられる。本実施の形態に係る加熱調理器の構成は、実施の形態1に係る加熱調理器1の構成と同様であるので、以後の説明は繰り返さない。実施の形態1と同様に、本実施の形態における食品12の加熱は、マイクロ波、加熱蒸気、または飽和水蒸気による加熱のいずれであってもよい。 【0072】 図6は、本発明の実施の形態3に係る加熱調理器における、マイクロコンピュータ101による制御を説明するためのフローチャートである。図1?図3および図6を参照して、開始状態とは、加熱調理器に電源が投入された状態、あるいは加熱調理器が待機状態から動作状態に復帰した状態である。 【0073】 ステップS61において、ユーザは扉3を開けて、食品12を加熱庫10に投入する。 【0074】 ステップS62において、食品12の温度が赤外線アレイセンサ71aにより測定される。さらに、加熱庫10内の温度がサーミスタ71bにより測定される。これら双方の測定値をマイクロコンピュータ101は受ける。 【0075】 ステップS63において、マイクロコンピュータ101は、食品12の温度を示す赤外線アレイセンサ71aの測定値と、加熱庫10内の温度を示すサーミスタ71bの測定値との差(指標値)を演算する。測定値の差が基準値以上であるか否かを、マイクロコンピュータ101は判断する。測定値の差が基準値未満の場合(ステップS63においてNO)、処理はステップS63aに進む。一方、測定値の差が基準値以上の場合(ステップS63においてYES)、処理はステップS64に進む。 【0076】 ステップS63aにおいて、赤外線アレイセンサ71aにより測定された食品12の温度と、サーミスタ71bにより測定された加熱庫10内の温度との差が基準値に相当する温度未満であるため、「食品12は冷凍食品ではない」とマイクロコンピュータ101は判断する。したがって、マイクロコンピュータ101は、食品12を温めるための「温めモード」を選択する旨を第1のアドバイスの内容として決定する。これにより、「温めモード」を選択するようにユーザにアドバイスする画像(たとえば「『温めモード』を選択して下さい」という文字)が液晶表示部6に表示される。その後、処理はステップS65に進む。 【0077】 一方、ステップS64においては、赤外線アレイセンサ71aにより測定された食品12の温度と、サーミスタ71bにより測定された加熱庫10内の温度との差が基準値に相当する温度以上であるため、「食品12は冷凍食品である」とマイクロコンピュータ101は判断する。したがって、マイクロコンピュータ101は、食品12を解凍するための「解凍モード」を選択する旨を第1のアドバイスの内容として決定する。これにより、「解凍モード」を選択するようにユーザにアドバイスする画像(たとえば「『解凍モード』を選択して下さい」という文字)が液晶表示部6に表示される。その後、処理はステップS65に進む。このように、マイクロコンピュータ101は、赤外線アレイセンサ71aの測定値とサーミスタ71bの測定値との差分を指標値として演算する。 【0078】 ステップS65において、ユーザは、食品12の加熱条件を液晶表示部6または操作ボタン7により設定する。すなわち、「解凍モード」および「温めモード」のうちのいずれか一方をユーザは選択する。ユーザにより設定された加熱モードを、マイクロコンピュータ101は受け付ける。 【0079】 ステップS66において、ステップS65でユーザにより設定された加熱モードに従って、食品12の加熱が開始される。 【0080】 実施の形態3では、赤外線アレイセンサ71aが食品12の温度を測定し、サーミスタ71bが加熱庫10の加熱庫10内の温度を測定することが、加熱庫10内の状態の測定(すなわち加熱庫10の内部に食品12が収容された状態)に対応する。上述のように、たとえば冷凍状態の食品12が加熱庫10に収容されることにより、加熱庫10の内部の温度が低下する。マイクロコンピュータ101は、食品12の温度と加熱庫10内の温度の温度差を指標値として算出する。指標値が基準値に相当する温度差以上である場合、マイクロコンピュータ101は、食品12を解凍するための「解凍モード」を選択する旨を第1のアドバイスの内容として決定する。実施の形態1,2と同様に、実施の形態3においても、ユーザがアドバイスに沿って、食品12に適切な加熱モードを選択することができる。この場合、加熱効率が良い加熱モードに従って食品12が加熱される。したがって、食品12の加熱により消費される電力量が低減される。また、加熱時間を短縮することもできる。」 上記記載及び図面を総合すると、甲8には以下の技術(以下、「甲8技術」という。)が記載されていると認められる。 「食品の温度と加熱庫内の温度を測定し、両温度の温度差を指標値として用いること」 (9)甲9 甲9には、「高周波加熱装置」に関して、図面と共に次の記載がある。 「【0030】 この加熱工程において、制御手段は、所定または不定の経過時間ごとに連続的に、その経過時間と前記温度センサによる検出温度とに基づき、その経過時間内のF値を算出し、そのF値を積算していく。そして、このようにして求めた積算F値が予め設定された目標F値以上となった場合には、被調理物の加熱調理を終了可能とする一方、積算F値が目標F値未満の場合には、被調理物の加熱調理を継続または延長する。」 「【0059】 加熱工程では、処理槽1内への蒸気供給により処理槽1内の圧力を調整することで、処理槽1内の温度を調整することができる。本実施例では、60℃から130℃の範囲にて、自由な温度に設定して加熱調理を可能としている。このようにして処理槽1の圧力を調整することで、飽和蒸気温度が調整される。」 上記記載及び図面を総合すると、甲9には以下の技術(以下、「甲9技術」という。)が記載されていると認められる。 「自由な温度に設定して加熱調理が可能であること及び経過時間と温度センサによる検出温度とに基づき加熱調理をおこなうこと。」 2 本件発明1について (1)対比 甲1発明の「食材を収容した密閉された調理空間を具備した調理容器」は、その機能、構成又は技術的意義から本件発明1の「食材を収容するとともに密閉可能な調理槽」に相当する。以下同様に、「調理空間内」が「調理槽内」に、「空気を吸引して負圧にすることが可能な減圧手段」が「大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段」に、「検出値」は「検出結果」に、「温度制御手段」は「制御手段」に、相当する。 甲1発明の「調理空間測温手段」は、調理空間内の温度を検出するものであり、非接触型の温度センサであるので、本件発明1の「非接触型の第1温度センサ」とは、測定する箇所は異なるものの、非接触型の温度センサである点で共通する。 甲1発明の「調理空間加熱手段」は、「減圧状態で調理中の」調理容器の内部である「前記調理空間内」を加熱するのに対し、本件発明1の「ヒータ」は、「前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽」を加熱するので、加熱する対象や手段は異なるものの、両者は、「調理槽」内を加熱する加熱手段という点で共通する。 よって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「 食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、 前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、 非接触型の温度センサと、 調理槽内を加熱する加熱手段と、 温度センサの検出結果に基づいて加熱手段を制御する制御手段と、 を備えた真空調理器。」 [相違点1] 非接触型の温度センサが、本件発明1は、「前記調理槽に収容された食材の温度を検出」する温度センサであるのに対し、甲1発明は、「前記調理空間内の温度を検出する」温度センサである点。 [相違点2] 調理槽内を加熱する加熱手段として、本願発明1は、「ヒータ」を備えているのに対し、甲1発明は「調理空間加熱手段」を備えている点。 [相違点3] 「制御手段」による「加熱手段」の制御として、本件発明1は、「前記減圧手段により減圧された状態の前記調理槽内の食材に対する前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御」をしているのに対し、甲1発明は、そのような制御を行っていない点。 (2)判断 ア 相違点1について 甲2技術及び甲3技術には、非接触型の温度センサを用いて、「食材の温度を検出」することが記載されている。 本件発明1、甲2技術及び甲3技術は、加熱調理装置の加熱制御に用いる温度センサに関する発明であり、本件発明1の、「前記調理空間内の温度を検出する」温度センサに代えて、甲2技術及び甲3技術の、「食材の温度を検出」する温度センサを用いることは、当業者が容易になし得た事項である。 イ 相違点2について 加熱手段として、ヒータを用いることは、当業者にとって技術常識であり、甲1発明においてヒータを用いることは、当業者が容易になし得た事項である。 ウ 相違点3について 本件発明1は、「前記減圧手段により減圧された状態の前記調理槽内の食材に対する前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御」がおこなわれる。ここで「みなした制御」とは、本件特許明細書の段落【0054】を参酌すると、「前記第1温度センサの検出結果」を実質的に「中心温度」とすることである。 甲2技術は、「加熱調理装置を用いて食材を加熱調理する際、非接触の温度検出手段により食材の表面角部の温度を検出し、その温度から演算処理により、中心温度を推定し、加熱制御をおこなう方法」であり、「演算処理」により、「中心温度」を推定しており、温度検出手段により検出した検出結果を「中心温度」とするものではない。 甲3技術も甲2技術と同様に、「温度推定手段16」により、「内部温度T4」を推定しており、温度検出手段により検出した検出結果を「中心温度」とするものではない。 甲4技術ないし甲9技術も、実質的に「中心温度」とするものではない。 さらに、甲5技術及び甲6技術より、真空調理では、熱伝導が良好であること、減圧中では食品の温度上昇が早いことが周知の事実であったとしても、「前記第1温度センサの検出結果」を実質的に「中心温度」とすることは容易に想到し得ることではない。このことは、甲2技術及び甲3技術において「中心温度」を求めるのに「演算処理」や「温度推定手段」を用いていることからも明らかである。 したがって、甲1発明において、甲2技術ないし甲9技術、周知事項を適用したとしても、本件発明1における、「前記減圧手段により減圧された状態の前記調理槽内の食材に対する前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御」という発明特定事項を有するものとはならない。 よって、本件発明1は、甲1発明、甲2技術ないし甲9技術及び周知事項に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 3 本件発明4について (1)対比 本件発明4と甲1発明とを対比する。 2 本件発明1について(1)対比で述べた相当関係を踏まえると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「 食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、 前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、 非接触型の第1温度センサと、 調理槽内を加熱する加熱手段と、 加熱手段を制御する制御手段と、 を備えた真空調理器。」 [相違点1] 「非接触型の第1温度センサ」が、本件発明1は、「前記調理槽に収容された食材の温度を検出」する温度センサであるのに対し、甲1発明は、「前記調理空間内の温度を検出する」温度センサである点。 [相違点2] 調理槽内を加熱する加熱手段として、本願発明1は、「ヒータ」を備えているのに対し、甲1発明は「調理空間加熱手段」を備えている点。 [相違点4] 本件発明4は、「前記調理槽の温度を検出する第2温度センサ」を備え、「制御手段」による「加熱手段」の制御として、「前記第1温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正」しているのに対し、甲1発明は、そのような制御を行っていない点。 (2)判断 ア 相違点4について 甲8技術は、「食品の温度と加熱庫内の温度を測定し、両温度の温度差を指標値として用いること」であり、本件発明4の「設定された目標調理温度に到達した時点での、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正」するという発明特定事項を有するものではない。 また、甲2技術ないし甲7技術及び甲9技術も当該発明特定事項を有するものではない。 よって、本件発明4は、甲1発明、甲2技術ないし甲9技術に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 4 本件発明5について (1)対比 本件発明5と甲1発明とを対比する。 2 本件発明1について(1)対比で述べた相当関係を踏まえると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「 食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、 前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、 非接触型の第1温度センサと、 調理槽内を加熱する加熱手段と、 加熱手段を制御する制御手段と、 を備えた真空調理器。」 [相違点1] 「非接触型の第1温度センサ」が、本件発明1は、「前記調理槽に収容された食材の温度を検出」する温度センサであるのに対し、甲1発明は、「前記調理空間内の温度を検出する」温度センサである点。 [相違点2] 調理槽内を加熱する加熱手段として、本願発明1は、「ヒータ」を備えているのに対し、甲1発明は「調理空間加熱手段」を備えている点。 [相違点5] 本件発明5は、「前記調理槽の温度を検出する第2温度センサ」を備え、「制御手段」による「加熱手段」の制御として、「前記第2温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正」しているのに対し、甲1発明は、そのような制御を行っていない点。 (2)判断 ア 相違点5について 甲8技術は、「食品の温度と加熱庫内の温度を測定し、両温度の温度差を指標値として用いること」であり、本件発明5の「設定された目標調理温度に到達した時点での、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正」するという発明特定事項を有するものではない。 また、甲2技術ないし甲7技術及び甲9技術も当該発明特定事項を有するものではない。 よって、本件発明5は、甲1発明、甲2技術ないし甲9技術に基いて当業者が容易に発明することができたとはいえない。 5 本件発明2、3、6及び7について 本件発明2、3、6及び7は、本件発明1、4及び5のいずれかをを引用する発明であり、その構成を全て包含する発明であるから、上記記載のとおり、当業者が容易に発明することができたとはいえない。 6 小括 したがって、本件発明1ないし本件発明7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 第7 申立理由2ないし4について 1 申立理由2について 特許異議申立人は特許異議申立書において、本件特許の請求項1の「前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御が行われる」との記載は、発明の詳細な説明に記載されたものではない、また、本件特許の請求項1を引用する請求項2、3、6及び7も同様である旨、主張する。 しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0054】には、 「【0054】 この加熱制御において、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度に基づいて、図4の(3)及び図5に示されるように食材Fの表面温度が目標調理温度Tmとなるように制御を行う。食材F内部の熱伝導率が高いため、食材Fの表面温度が目標調理温度Tmになったとき、食材Fの中心部の温度は目標調理温度Tmとほぼ同じになっている。従って、食材Fの表面温度を監視しつつ食材Fを加熱することで、実質的に食材Fの表面温度と中心温度の双方を監視しつつ食材Fを加熱することができる。」 と記載されており、「食材Fの表面温度」を監視することで、「表面温度」と「中心温度」を監視する、つまり、「表面温度」を「中心温度」とみなして監視することが記載されている。 したがって、本件特許の請求項1における上記記載は、本件特許の発明の詳細な説明に記載したものである。 よって、本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2、3、6及び7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 2 申立理由3について 特許異議申立人は特許異議申立書において、本件発明1の「前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御が行われる」点について、本件特許の発明の詳細な説明では「【0009】 本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、大気圧未満の圧力下では、大気圧以上の圧力下よりも食材内部の熱伝導率が高くなり、食材の中心温度は速やかにその表面温度に近づくことを見出し、これに着目して本発明を完成するに至った。」と開示するのみであり、実験データなどの定量的な根拠を示しておらず、本件発明1は、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない、また、本件特許の請求項1を引用する請求項2、3、6及び7に係る発明も同様である旨、主張する。 しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明の段落【0054】(上記1を参照)には、「表面温度」を「中心温度」とみなした制御を行うことが記載されており、当該制御は、実験データなどの定量的な根拠が示されていなくとも、当業者が実施することができることは明らかである。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明は、請求項に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 よって、本件特許の請求項1及び特許請求項1を引用する請求項2、3、6及び7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 3 申立理由4について 特許異議申立人は特許異議申立書において、特許権者が平成29年3月29日付けの手続補正書で追加した本件特許の請求項1の記載「前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御が行われる」は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲、又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項及び当初明細書等の記載から自明な事項ではない、また、本件特許の請求項1を引用する請求項2、3、6及び7も同様である旨、主張する。 しかしながら、上記1と同様に、当初明細書の段落【0054】には、「表面温度」を「中心温度」とみなした制御を行うことが記載されており、本件特許の請求項1における上記記載は、当初明細書等に記載された事項であるから、上記手続補正書による補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事故との関係において、新たな技術的事項を導入するものとはいえない。 よって、本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2、3、6及び7に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 真空調理器 【技術分野】 【0001】 本発明は、真空調理器に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来、大気圧未満の圧力に減圧した調理槽内で食材の加熱調理を行う真空調理器が知られている。 【0003】 真空調理器の一例として、特許文献1に記載の真空蒸気調理機がある。当該調理機は、食材を収容する処理槽と、処理槽内を減圧する減圧手段と、処理槽内へ蒸気を供給する給蒸手段と、処理槽内の圧力を計測するセンサと、センサの出力に基づいて減圧手段および給蒸手段を制御する制御手段とを備えている。 【0004】 この真空蒸気調理機では、減圧手段により処理槽内を減圧した後、センサの出力に基づいて処理槽内を大気圧未満の設定圧力に保持するように給蒸手段および減圧手段を制御することにより、大気圧未満の設定圧力下で食材の加熱調理を行うことができる。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特許第4055684号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特許文献1に記載の真空蒸気調理機では、処理槽内の圧力を計測するセンサの出力に基づいて給蒸手段および減圧手段の制御が行われるので、食材が適切な温度で調理されるとは限らない。 【0007】 一方、食材に温度センサを突き刺して食材の芯温を検出し、検出した芯温に基づいて給蒸手段および減圧手段の制御を行うことも考えられる。しかしながら、食材に温度センサを突き刺して芯温を検出することは衛生的でない上、手間がかかる。 【0008】 本発明の目的は、大気圧未満の圧力下において、容易かつ衛生的に食材を適切な温度で調理することができる真空調理器を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、大気圧未満の圧力下では、大気圧以上の圧力下よりも食材内部の熱伝導率が高くなり、食材の中心温度は速やかにその表面温度に近づくことを見出し、これに着目して本発明を完成するに至った。 【0010】 上記課題を解決するために、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記第1温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段による前記ヒータの制御では、前記減圧手段により減圧された状態の前記調理槽内の食材に対する前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御が行われる真空調理器を提供する。 【0011】 本真空調理器によれば、内部が大気圧未満の圧力に減圧された調理槽がヒータによって加熱される。ヒータは、非接触型の第1温度センサの検出結果に基づいて制御される。大気圧未満の圧力下では、大気圧以上の圧力下よりも食材内部の熱伝導率が高くなり、食材の中心温度は速やかにその表面温度に近づく。よって、第1温度センサで検出された食材の表面温度から食材の中心温度を推定することができる。従って、内部を大気圧未満の圧力に調整した調理槽内に食材を配置した状態で、第1温度センサの検出結果に基づいてヒータを制御することにより、食材を表面から中心部まで適切な温度で調理することができる。また、非接触型の温度センサで食材温度を検出するので、食材の温度を容易かつ衛生的に検出することができる。 【0012】 本発明においては、前記調理槽の温度を検出する第2温度センサをさらに備え、前記制御手段は、前記第2温度センサの検出結果に基づいて、前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正することが好ましい。 【0013】 第2温度センサの検出温度は、第1温度センサの検出温度よりも高いと考えられる。そして、食材の表面温度は、表面全体で均一ではなく食材と調理槽内面との距離によって異なり、第1温度センサの検出温度と第2温度センサの検出温度の間にあると考えられる。従って、第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を第2温度センサの検出結果に基づいて補正することにより、第1温度センサの検出結果のみに基づいてヒータ制御を行う場合よりも、食材をより適切な温度で調理することができる。 【0014】 具体的には、前記制御手段は、前記第2温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータによる加熱を抑制することが好ましい。 【0015】 この構成によれば、第2温度センサの検出結果に基づいてヒータ加熱が抑制されるので、調理槽および食材の過熱を防止することができる。 【0016】 本発明においては、前記調理槽内に蒸気を供給する蒸気供給手段をさらに備え、前記蒸気供給手段は、前記減圧手段によって減圧された前記調理槽内に蒸気を供給することが好ましい。 【0017】 この構成によれば、減圧手段によって減圧された調理槽内に蒸気が供給される。蒸気の存在下では、調理槽から食材までの熱伝導率が高くなる。従って、食材の調理時間を短縮することができる。 【0018】 本発明においては、少なくとも、減圧によって前記調理槽内が到達すべき圧力である目標圧力、加熱によって食材の表面が到達すべき温度である目標調理温度、および前記目標調理温度を保つべき時間である目標調理時間の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、前記制御手段は、前記調理槽内の圧力が前記目標圧力になった状態で、前記目標調理時間の間、食材の表面温度を前記目標調理温度に保つ制御を行うことが好ましい。 【0019】 この構成によれば、減圧によって食材内部の熱伝導率が高くなった状態で、目標調理時間の間、食材の表面温度が目標調理温度に保たれる。食材の種類や量によって、目標調理温度や目標調理時間は異なる。従って、ユーザが食材の種類や量に応じた目標調理温度や目標調理時間を入力することにより、食材の種類や量に拘わらず食材を表面から中心部まで適切な温度で調理することができる。 また、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器である。 また、本発明は、食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第2温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、前記目標調理温度を補正することにより、前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器である。 【発明の効果】 【0020】 以上説明したように、本発明によれば、大気圧未満の圧力下において、食材を適切な温度で調理することが可能な真空調理器を提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【0021】 【図1】本発明の第1実施形態に係る真空調理器の構成を示す図である。 【図2】本発明の第1実施形態における食材の調理条件の例を示す図である。 【図3】本発明の第1実施形態に係る真空調理器の動作を示すフローチャートである。 【図4】本発明の第1実施形態に係る真空調理器の動作を示すタイムチャートである。 【図5】加熱開始後における調理槽の温度変化と食材表面の温度変化とを示す図である。 【図6】本発明の第2実施形態に係る真空調理器の構成を示す図である。 【図7】本発明の第2実施形態に係る真空調理器の動作を示すフローチャートである。 【図8】本発明の第2実施形態の変形例1に係る真空調理器の動作を示すフローチャートである。 【図9】本発明の第2実施形態の変形例2に係る真空調理器の動作を示すフローチャートである。 【発明を実施するための形態】 【0022】 以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について詳述する。 【0023】 (第1実施形態) 図1は、本発明の第1実施形態に係る真空調理器100の構成を示す図である。図1において、破線の矢印は電気信号の流れを示している。 【0024】 図1に示されるように、第1実施形態に係る真空調理器100は、調理槽1と、減圧手段2と、第1温度センサ3と、ヒータ4と、蒸気供給手段6と、コントローラ7と、入力部8と、ディスプレイ9とを備えている。 【0025】 調理槽1は、上部が開口した槽本体10と、槽本体10の開口部に開閉可能に設けられた蓋部12と、蓋部12が閉じられた状態で槽本体10と蓋部12の隙間を密閉するシール部21とを備えている。 【0026】 槽本体10は、熱伝導性のよいアルミニウム等の金属素材を主材料として構成されている。蓋部12は、ガラスまたはポリカーボネート材など、耐熱素材で構成されている。槽本体10の内面には、遠赤外線発生層(図示せず)が設けられている。遠赤外線発生層は、例えば、複合酸化物などのセラミック被膜から構成される。 【0027】 槽本体10の底部13の内面には、食材Fを載せる調理台11が配置されている。調理台11は、例えば、熱伝導性のよいアルミニウム等の金属素材から構成されている。調理台11は、槽本体10の底部13および側壁部22に接触している。調理台11に食材Fを載せることにより、食材Fが調理槽1の底部13に直接接触しないので、食材Fに温度ムラが生じにくくなるとともに、食材Fが部分的に過剰加熱(過熱)されるのを防止することができる。 【0028】 槽本体10における底部13の外面には、電磁誘導により発熱する発熱体14が設けられている。発熱体14は、例えば、フェライト系ステンレスなどの磁性金属板から構成される。 【0029】 ヒータ4は、発熱体14を電磁誘導加熱する加熱コイルである。調理槽1とヒータ4とは別体に構成されている。調理槽1は、ヒータ4の上に載置された状態で使用される。調理槽1がヒータ4の上に載置された状態では、発熱体14がヒータ4に接触する。ヒータ4に高周波電流を供給すると、発熱体14が発熱する。発熱体14で発生した熱は、熱伝導により槽本体10、遠赤外線発生層、および調理台11に伝わる。食材Fは、調理台11からの熱伝導および遠赤外線発生層からの熱放射により加熱される。なお、調理槽1を加熱する方式は誘導加熱方式に限定されるものではなく、例えば、ヒータ4をニクロム線とした抵抗加熱方式にするなど、他の方式を採用してもよい。 【0030】 減圧手段2は、管路23、方向制御弁15、圧力センサ16、水分トラップ17、および真空ポンプ18を備えている。管路23の一端は、槽本体10の側壁部22に接続されている。管路23は、側壁部22側から順に、方向制御弁15、圧力センサ16、水分トラップ17、および真空ポンプ18を直列に繋いでいる。 【0031】 真空ポンプ18は、管路23を介して調理槽1内の空気を吸引し、調理槽1内を大気圧未満の圧力に減圧する。 【0032】 圧力センサ16は、調理槽1内の圧力を検出する。圧力センサ16は、検出結果に応じた信号を後述のコントローラ7へ送信する。 【0033】 水分トラップ17は、調理槽1から吸引された空気に含まれる水分を捕捉する。 【0034】 方向制御弁15は、3ポート2位置方向制御弁である。方向制御弁15は、管路23を介して調理槽1と連通する調理槽側ポートと、管路23を介して水分トラップ17と連通する水分トラップ側ポートと、外部と連通する大気導入ポートとを有している。方向制御弁15を制御することにより、調理槽側ポートと水分トラップ側ポートとが連通する第1の状態と、調理槽側ポートと大気導入ポートとが連通する第2の状態との間で流路の切換えを行うことができる。方向制御弁15を第1の状態に切り換えるとともに真空ポンプ18を作動させると、方向制御弁15を通じて調理槽1内の空気が真空ポンプ18に吸い出される。調理槽1内が減圧された状態で方向制御弁15を第2の状態に切り換えると、方向制御弁15を通じて調理槽1内に大気が導入される。方向制御弁15は、後述のコントローラ7によって制御される。 【0035】 第1温度センサ3は、非接触型の温度センサである。非接触型の温度センサとしては、例えば、赤外線を検知する放射温度センサを好適に用いることができるが、特に限定はされない。第1温度センサ3は調理槽1内に設けられ、例えば蓋部12の内面に設けられる。なお、第1温度センサ3は、他の位置に設けられてもよく、槽本体10の側壁部22の内面等に設けられてもよい。第1温度センサ3は、検出結果に応じた信号をコントローラ7へ送信する。 【0036】 蒸気供給手段6は、蒸気導入弁20、ボイラ19、及び管路24を備えている。 【0037】 管路24の一端は、槽本体10の側壁部22に接続されている。管路24は、側壁部22側から順に、蒸気導入弁20、ボイラ19を直列に繋いでいる。 【0038】 ボイラ19は、外部から注水可能に構成されている。ボイラ19は、図外の熱源から得た熱で水Wを沸騰させて蒸気を発生させ、その蒸気を管路24を介して調理槽1内に供給する。 【0039】 蒸気導入弁20は開閉弁である。蒸気導入弁20を開くことにより、ボイラ19で発生した蒸気が管路24を介して調理槽1に導かれる。蒸気導入弁20を閉じることにより、管路24が遮断されて調理槽1への蒸気供給が阻止される。蒸気導入弁20の開閉は、後述のコントローラ7によって制御される。 【0040】 入力部8は、例えば、タッチパネル或いは操作ボタンである。入力部8は、少なくとも、減圧によって調理槽1内が到達すべき圧力である目標圧力Pm、加熱によって食材Fの表面が到達すべき温度である目標調理温度Tm、および目標調理温度Tmを保つべき時間である目標調理時間tmの入力を受け付ける。入力部8は、入力された情報に応じた信号をコントローラ7へ送信する。 【0041】 目標圧力Pmは、特に限定されるものではないが、例えば0.2気圧とされる。 【0042】 目標調理温度Tmは、調理する食材Fの種類や量によって異なるが、例えば、図2に示される値とされる。図2は、食材Fの調理条件(レシピ)の例を示す図である。図2には、調理条件の例1?5が示されており、調理条件の例毎に「調理内容」、「目標調理温度Tm」、「目標調理時間tm」、「蒸気供給の有無」が示されている。調理内容には、料理の名前、必要とされる食材とその量などが含まれる。食材Fの調理条件の例は、図外の記憶部に記憶されている。 【0043】 なお、調理内容、目標調理温度Tm、目標調理時間tm、蒸気供給の有無は、図2に示したものに限定されず、適宜変更されてもよい。 【0044】 また、調理条件の例3?5においては、「蒸気供給」が「無」になっている。これは、調理条件の例3?5については蒸気供給しなくても食材Fを適切な温度で真空調理できることを示している。図2における(4)根野菜への調味料含浸、(5)りんごの乾燥など、料理の種類によっては蒸気の供給を必要としないからである。 【0045】 ディスプレイ9は、例えば液晶ディスプレイである。ディスプレイ9は、入力部8で入力された情報や、調理状態を表示する。 【0046】 制御手段としてのコントローラ7は、ROM、RAM、CPU等を備えており、ROMに記憶されたプログラムを実行することにより下記の制御を行う。コントローラ7は、第1温度センサ3の検出結果に基づいて、ヒータ4による加熱を制御する。 【0047】 次に、真空調理器100の動作について、図3?5を参照しつつ説明する。図3は、真空調理器100の動作の一例を示すフローチャートである。図4は、真空調理器100の動作の一例を示すタイミングチャートである。図5は、調理槽1の加熱が開始されてからの調理槽1の温度変化および食材Fの表面の温度変化を示す図である。なお、図4に示されるS2、S3、S5、S7、S9は、それぞれ、図3に示されるS2、S3、S5、S7、S9に対応している。また、図5に示されるt2、t3は、図4に示されるt2、t3に対応している。 【0048】 まず、図3に示されるように、ユーザによって蓋部12が開けられて、食材Fが調理台11上に載置され、蓋部12が閉じられる(ステップS1)。調理条件表示ボタンが押下されると、コントローラ7は、食材Fの調理条件の例(図2参照)をディスプレイ9に表示する制御を行う。 【0049】 次いで、ユーザにより、入力部8を介して「目標圧力Pm」、「目標調理温度Tm」、「目標調理時間tm」、「蒸気供給の有無」等の調理条件が入力される(ステップS2)。ユーザは、ディスプレイ9に表示された食材Fの調理条件の例を参照しながら調理条件を入力することができる。コントローラ7は、入力された調理条件をディスプレイ9に表示する制御を行う。 【0050】 調理条件が入力されて、スタートボタンが押下されると、コントローラ7は、真空ポンプ18を作動させるとともに、方向制御弁15を第1の状態に切り替えて、調理槽1内を減圧する制御を開始する(ステップS3)。図4の(1)に示されるように、時刻t1に、コントローラ7は減圧制御を開始する。この減圧制御は、調理槽1内の圧力を目標圧力Pmに減圧してその圧力を維持する制御である。コントローラ7は、減圧が開始された旨をディスプレイ9に表示する制御を行う。 【0051】 減圧制御開始後、コントローラ7は、圧力センサ16の検出結果に基づいて、調理槽1内が目標圧力Pmまで減圧されたか否かを判断する(ステップS4)。 【0052】 調理槽1内が目標圧力Pmまで減圧されたと判断した場合には(YESと判断)、コントローラ7は、ヒータ4の電源をオンして調理槽1を加熱する制御を開始する(ステップS5)。この加熱制御は、食材Fをその表面温度が目標調理温度Tmになるまで加熱してその表面温度を維持する制御である。コントローラ7は、加熱が開始された旨をディスプレイ9に表示する制御を行う。 【0053】 図4の(2)及び図5に示されるように、コントローラ7は、時刻t2に、調理槽1の加熱制御を開始する。調理槽1を加熱することにより、図5に示されるように調理槽1の温度が上昇し、その温度上昇に伴って食材Fの表面温度も上昇する(図4の(3)及び図5参照)。この加熱制御は、大気圧未満の圧力下で行われるため、大気圧以上の圧力下で加熱する場合よりも食材F内部の熱伝導率が高くなり、食材Fの中心温度は速やかにその表面温度に近づく。このため、加熱中における食材Fの中心温度は、食材Fの表面温度とほぼ同じであると推定することができる。 【0054】 この加熱制御において、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度に基づいて、図4の(3)及び図5に示されるように食材Fの表面温度が目標調理温度Tmとなるように制御を行う。食材F内部の熱伝導率が高いため、食材Fの表面温度が目標調理温度Tmになったとき、食材Fの中心部の温度は目標調理温度Tmとほぼ同じになっている。従って、食材Fの表面温度を監視しつつ食材Fを加熱することで、実質的に食材Fの表面温度と中心温度の双方を監視しつつ食材Fを加熱することができる。 【0055】 この加熱制御においては、図5に示されるように、時刻t2に加熱制御を開始した後、暫くの間は、調理槽1の温度上昇率は食材Fの温度上昇率よりも大きく、調理槽1の温度と食材Fの表面温度の差は次第に開いていく。しかしながら、調理槽1を加熱し続けると、調理槽1の温度がピーク温度Tpに到達する辺りから双方の温度差は次第に小さくなっていく。そして、食材Fの表面温度が目標調理温度Tmに到達する頃には、調理槽1の温度と食材Fの表面温度がそれぞれ一定温度に収束しつつ、双方の温度差ΔTはかなり小さくなる(例えば10℃程度)。 【0056】 ステップS5の加熱制御開始後、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度(食材Fの表面温度)が目標調理温度Tmに到達したか否かを判断する(ステップS6)。 【0057】 第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達したと判断された場合には(YESと判断)、コントローラ7は、ステップS2で入力された調理条件「蒸気供給の有無」に基づいて、蒸気供給が必要か否かを判断する(ステップS7)。 【0058】 蒸気供給が必要と判断した場合には(YESと判断)、コントローラ7は、蒸気導入弁20を開く制御を行う(ステップS8)。図4の(4)に示されるように、コントローラ7は、時刻t3に蒸気導入弁20の開放制御を行う。蒸気導入弁20を開くことにより、ボイラ19から調理槽1内に蒸気が供給される。蒸気の供給量は、例えば、入力された調理条件に応じた値とされる。この値は、例えば、予め実験やシミュレーションを行うことで設定しておくことができる。コントローラ7は、蒸気供給が開始された旨をディスプレイ9に表示する制御を行う。 【0059】 蒸気供給の開始後、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達してからの経過時間が目標調理時間tmに到達したか否かを判断する(ステップS9)。図4の(5)及び図5に示されるように、コントローラ7は、時刻t3からの経過時間(調理時間)が、目標調理時間tmになったか否かを判断する。 【0060】 調理時間が目標調理時間tmに到達したと判断した場合には(YESと判断)、コントローラ7は、方向制御弁15を第2の状態に切り替えて調理槽1に大気を導入するとともに真空ポンプ18を停止することで減圧制御を終了し、ヒータ4の電源をオフすることで調理槽1の加熱制御を終了し、さらに蒸気導入弁20を閉じることで蒸気供給制御を終了する(ステップS10)。図4の(6)に示されるように、時刻t4にこれらの動作を行う。ステップS10の制御により、調理槽1内に大気が導入され、調理が完了する。コントローラ7は、調理が終了した旨をディスプレイ9に表示する制御を行う。 【0061】 なお、ステップS4において、調理槽1内が目標圧力Pmまで減圧されていないと判断された場合には、ステップS4に戻って再度判断を行う。 【0062】 また、ステップS6において、第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達していないと判断された場合には、ステップS6に戻って再度判断を行う。 【0063】 また、ステップS9において、調理時間が目標調理時間tmに到達していないと判断された場合には、ステップS9に戻って再度判断を行う。 【0064】 以上説明したように、本実施形態に係る真空調理器100では、内部が大気圧未満の圧力に減圧された調理槽1がヒータ4によって加熱される。ヒータ4は、非接触型の第1温度センサ3の検出結果に基づいて制御される。大気圧未満の圧力下では、大気圧以上の圧力下よりも食材F内部の熱伝導率が高くなり、食材Fの中心温度は速やかにその表面温度に近づく。よって、第1温度センサ3で検出された食材Fの表面温度から食材Fの中心温度を推定することができる。従って、内部が大気圧未満の圧力に調整された調理槽1内に食材Fを配置した状態で、第1温度センサ3の検出結果に基づいてヒータ4を制御することにより、食材Fを表面から中心部まで適切な温度で調理することができる。また、非接触型の温度センサ3で食材温度を検出するので、食材Fの温度を容易かつ衛生的に検出することができる。 【0065】 また、減圧された調理槽1内に蒸気が供給されるため、食材Fの加熱を促進して調理時間を短縮することができる。 【0066】 また、調理槽1内の圧力が目標圧力Pmに到達した後に加熱制御を開始するので(ステップS5)、調理槽1内の圧力が目標圧力Pmに到達する前に加熱制御を開始する場合と比べて、調理槽1内を目標圧力Pmまで減圧することが容易となり、目標圧力Pmまで速やかに減圧することができる。 【0067】 また、食材Fの表面温度が目標調理温度Tmに到達した後に蒸気供給を開始するので(ステップS8)、供給した蒸気が調理槽1内で結露するのを防止することができる。 【0068】 なお、上記の説明では、真空調理器100を食材Fの加熱調理(焼く、蒸す、調味料含浸、乾燥)に用いているが、これに限定されるものではない。例えば、目標圧力Pm、目標調理温度Tm、目標調理時間tmの少なくともいずれか一つの条件を適宜変更することにより、食材Fの解凍、殺菌などを行うことができる。また、目標圧力Pmを変更するとともに、加熱を行わないことにより、食材Fの真空冷却を行うことができる。 【0069】 (第2実施形態) 図6は、本発明の第2実施形態に係る真空調理器200の構成を示す図である。ここでは、第1実施形態と異なる構成要素および動作について説明し、その他の構成要素および動作については説明を省略する。 【0070】 第2実施形態においては、図6に示されるように第2温度センサ5が設けられている。第2温度センサ5は、接触型の温度センサである。接触型の温度センサとしては、例えば、熱電対温度センサやサーミスタ温度センサを挙げることができるが、特に限定はされない。第2温度センサ5は、例えば、槽本体10の底部13の外面または内面に設けられる。なお、第2温度センサ5を設ける位置は槽本体10の底部13に限定されず、槽本体10の側壁部22の外面または内面であってもよい。第2温度センサ5は、検出結果に応じた信号をコントローラ7へ送信する。 【0071】 次に、第2実施形態に係る真空調理器200の動作について、図7を参照しつつ説明する。図7は、真空調理器200の動作を示すフローチャートである。図7においては、図3における動作と同じ動作については、図3と同じ参照符号を付してその説明を省略する。 【0072】 第2実施形態においては、第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達しているか否かを判断し(ステップS6)、到達していればステップS11に移行する。 【0073】 ステップS11において、コントローラ7は、第1温度センサ3の検出温度が目標調理温度Tmに到達した時点(時刻t3、図5参照)における第2温度センサ5の検出温度と第1温度センサ3の検出温度の差ΔT1(図5参照)に応じて、目標調理時間tmを、ステップS2で入力された目標調理時間tmよりも長い時間または短い時間に変更する(目標調理時間tmを補正する)。 【0074】 食材Fの表面温度は、表面全体で均一であるとは限らず食材Fと調理槽1内面との距離によって異なることがある。例えば、食材Fにおける調理台11との接触部分と、それ以外の部分とで表面温度が異なる。しかしながら、食材Fの表面温度は、第1温度センサ3の検出温度と第2温度センサ5の検出温度の間にあると考えられる。従って、第2温度センサ5の検出温度と第1温度センサ3の検出温度の差ΔT1に応じて目標調理時間tmを補正することにより、第1温度センサ3の検出温度のみに基づいて加熱制御を行う場合よりも、食材Fをより適切に調理することができる。 【0075】 (第2実施形態の変形例1) なお、上記第2実施形態では目標調理時間tmを補正しているが、これに限られない。図8は、第2実施形態の変形例1に係る真空調理器200の動作を示すフローチャートである。図8においては、図3における動作と同じ動作については、図3と同じ参照符号を付してその説明を省略する。 【0076】 本変形例では、図8に示されるように、調理槽1の加熱制御開始(ステップS5)後、コントローラ7は、第2温度センサ5の検出温度が目標調理温度Tmに到達したか否かを判断する(ステップS12)。第2温度センサ5の検出温度が目標調理温度Tmに到達したと判断した場合には(YESと判断)、コントローラ7は、第2温度センサ5の検出温度が目標調理温度Tmに到達した時点(時刻t5、図5参照)における第2温度センサ5の検出温度と第1温度センサ3の検出温度の差ΔT2(図5参照)に応じて、目標調理温度Tmを補正する(ステップS13)。 【0077】 時刻t5における第2温度センサ5の検出温度と第1温度センサ3の検出温度の差ΔT2が大きければ大きい程、食材Fは温まりにくい食材であると考えられ、また、温度差ΔT2が小さければ小さい程、食材Fは温まり易い食材であると考えられる。従って、温度差ΔT2に応じて目標調理温度Tmを補正することにより、食材Fの温まり易さおよび温まりにくさを反映させた目標調理温度Tmで食材Fを加熱調理することができ、食材Fをより適切に調理することができる。 【0078】 (第2実施形態の変形例2) 図9は、第2実施形態の変形例2に係る真空調理器200の動作を示すフローチャートである。図9においては、図3における動作と同じ動作については、図3と同じ参照符号を付してその説明を省略する。 【0079】 本変形例では、図9に示されるように、調理槽1の加熱制御開始(ステップS5)後、コントローラ7は、調理槽1の加熱中に第2温度センサ5の検出温度に基づいて、ヒータ4による加熱を抑制する制御(加熱抑制制御)を開始する(ステップS14)。この加熱抑制制御は、第2温度センサ5の検出温度が閾値以上である場合にヒータ4による加熱を抑制する制御である。第2温度センサ5の検出温度が閾値未満である場合には、ヒータ4による加熱を抑制しない。加熱抑制制御において、コントローラ7は、第2温度センサ5の検出温度が閾値以上である場合に、第2温度センサ5の検出温度が当該閾値未満となるようにヒータ4の加熱温度を下げる。閾値は、例えば、調理槽1が過熱状態となる温度に設定される。コントローラ7は、目標調理時間tmが経過したか否かの判断(ステップS9)後、加熱抑制制御を終了する(ステップS15)。なお、加熱抑制制御の例はこれに限られない。例えば、コントローラ7は、第2温度センサ5の検出温度が閾値以上である場合に、ヒータ4による加熱を中止して加熱制御を強制的に終了することで、加熱抑制制御を行ってもよい。 【0080】 本変形例によれば、調理槽1の過熱による真空調理器1の故障や食材Fの焦げ付き等を防止することができる。 【符号の説明】 【0081】 1 調理槽 2 減圧手段 3 第1温度センサ 4 ヒータ 5 第2温度センサ 6 蒸気供給手段 7 コントローラ 8 入力部 9 ディスプレイ 10 槽本体 11 調理台 12 蓋部 13 底部 14 発熱体 15 方向制御弁 16 圧力センサ 17 水分トラップ 18 真空ポンプ 19 ボイラ 20 蒸気導入弁 21 シール部 22 側壁部 23,24 管路 100,200 真空調理器 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、 前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、 前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、 前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、 前記第1温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、 前記制御手段による前記ヒータの制御では、前記減圧手段により減圧された状態の前記調理槽内の食材に対する前記第1温度センサの検出結果を前記食材の中心温度とみなした制御が行われる真空調理器。 【請求項2】 前記調理槽の温度を検出する第2温度センサをさらに備え、 前記制御手段は、前記第2温度センサの検出結果に基づいて、前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正することを特徴とする、請求項1に記載の真空調理器。 【請求項3】 前記制御手段は、前記第2温度センサの検出結果に基づいて前記ヒータによる加熱を抑制することを特徴とする、請求項2に記載の真空調理器。 【請求項4】 食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、 前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、 前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、 前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、 前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、 前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、 前記制御手段は、前記第1温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での、前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、設定された目標調理時間を補正することにより前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器。 【請求項5】 食材を収容するとともに密閉可能な調理槽と、 前記調理槽内を大気圧未満の圧力に減圧する減圧手段と、 前記調理槽に収容された食材の温度を検出する非接触型の第1温度センサと、 前記調理槽の温度を検出する第2温度センサと、 前記減圧手段により内部が減圧された前記調理槽を加熱するヒータと、 前記ヒータを制御する制御手段と、を備え、 前記制御手段は、前記第2温度センサの検出値が、設定された目標調理温度に到達した時点での前記第2温度センサの検出値と前記第1温度センサの検出値の差に基づいて、前記目標調理温度を補正することにより、前記第1温度センサの検出結果に基づくヒータ制御を補正する真空調理器。 【請求項6】 前記調理槽内に蒸気を供給する蒸気供給手段をさらに備え、 前記蒸気供給手段は、前記減圧手段によって減圧された前記調理槽内に蒸気を供給することを特徴とする、請求項1乃至5いずれかに記載の真空調理器。 【請求項7】 少なくとも、減圧によって前記調理槽内が到達すべき圧力である目標圧力、加熱によって食材の表面が到達すべき温度である目標調理温度、および前記目標調理温度を保つべき時間である目標調理時間の入力を受け付ける入力手段をさらに備え、 前記制御手段は、前記調理槽内の圧力が前記目標圧力になった状態で、前記目標調理時間の間、食材の表面温度を前記目標調理温度に保つ制御を行うことを特徴とする、請求項1乃至6いずれかに記載の真空調理器。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-03-24 |
出願番号 | 特願2014-109836(P2014-109836) |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YAA
(A47J)
P 1 651・ 561- YAA (A47J) P 1 651・ 537- YAA (A47J) P 1 651・ 121- YAA (A47J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 宮崎 光治、土屋 正志、黒田 正法 |
特許庁審判長 |
平城 俊雅 |
特許庁審判官 |
槙原 進 塚本 英隆 |
登録日 | 2018-12-21 |
登録番号 | 特許第6453559号(P6453559) |
権利者 | エスペック株式会社 |
発明の名称 | 真空調理器 |
代理人 | 小谷 昌崇 |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 小谷 悦司 |
代理人 | 玉串 幸久 |
代理人 | 小谷 昌崇 |
代理人 | 玉串 幸久 |