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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A47K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A47K
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  A47K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A47K
管理番号 1362593
審判番号 無効2017-800156  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-12-21 
確定日 2020-04-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3877000号発明「シート状物の積層体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3877000号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第3877000号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、請求人が、被請求人が特許権者である特許第3877000号(以下「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の特許を無効とすることを求める事件であって、手続の経緯は、以下のとおりである。

平成17年 4月22日 本件出願(特願2005-125264号)
平成18年11月10日 設定登録(特許第3877000号)
平成29年12月21日 本件無効審判請求
平成30年 3月16日 被請求人より審判事件答弁書提出
平成30年 4月13日 審理事項通知書(起案日)
平成30年 5月 7日 請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成30年 5月23日 被請求人より口頭審理陳述要領書提出
平成30年 5月31日 口頭審理
平成30年 6月 6日 請求人より上申書提出(受付日)
平成30年 6月22日 被請求人より上申書提出
平成30年 8月13日 請求人より上申書提出(受付日)
平成30年 8月24日 補正許否の決定(起案日)、
審理事項通知書(起案日)
平成30年 9月 5日 審決の予告(起案日)
平成30年11月 2日 被請求人より訂正請求書、上申書提出
平成30年11月14日 弁駁指令(起案日)
平成30年12月10日 請求人より審判事件弁駁書提出
平成30年12月21日 補正許否の決定(起案日)、
答弁指令(起案日)
平成31年 1月24日 被請求人より審判事件答弁書提出

被請求人より提出された審判事件答弁書について、平成30年3月16日に提出されたものを「答弁書」といい、平成31年1月24日に提出されたものを「第2答弁書」という。

第2 本件発明
1 本件特許発明(訂正前の本件発明)
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において、
上記シート状物の各々は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と、
上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、
上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と、
上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2以下となる第2の折片とを有するように折り畳まれ、
積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、
各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせることを特徴とするシート状物の積層体。」

2 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書には、以下のとおり記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物の積層体に関し、特に、湿式のウェットティッシュの折りたたまれた状態で、このウェットティッシュを連続して取り出せるように積層したシート状物の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコール、保湿剤、界面活性剤等を含む薬液を紙、織布又は不織布の繊維素材に含浸させたウェットティッシュは、気密性や液密性を有する包装体に収容される。ウェットティッシュは、皮膚の汚れ拭き取り、化粧落とし、幼児のお尻拭き、トイレの清掃等、様々な用途に用いられている。この種の包装体は、包装体の一箇所に開閉蓋を有する取出口が設けられ、この取出口から内部に収容されたウェットティッシュを取出すことができる。また、このウェットティッシュは、様々な形に折り畳まれ、複数枚が積層され、一のウェットティッシュを持ち上げると、その下に積層されたウェットティッシュも持ち上がり、連続して取り出せるように積層した、いわゆるポップアップ式の積層体を形成している。
・・・
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述の問題点に鑑みて、包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供するとともに、包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供することを目的とする。
・・・
【発明の効果】
【0011】
本発明は、従来の積層構造にはない第2の折片が設けられているので、その第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができる。そのため、出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず、さらには、製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず、在庫スペースの変更も必要が無くなる。
【0012】
また、本発明は、各偶数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとし、同様に、各奇数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各偶数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとしている。そのため、形成されるシート状物積層体自体は、各シート状物の上記第1の折れ線及び上記第3の折れ線近傍において、第2の折片が設けられた大きさ分だけ、肉厚部分が形成され、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るシート状物積層体の最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るシート状物積層体のシート状物10の展開図を示す。図1に示すように、シート状物10は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片11と、積層方向下側に折られ、第1の中間片11の略1/2の幅に第1の中間片11に隣接して形成された第2の中間片12と、第2の中間片12から積層方向下側に折り返され第2の中間片12と略同じ幅に形成された第1の折片13と、第1の中間片11から積層方向上側に折り返され第1の中間片11の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する第2の折片14とから構成されている。また、図2に示すように、シート状物10は折られ、各シート状物10が折り重ねられ、シート状物積層体1を形成している。
【0015】
なお、説明上、本発明においては、図2に示すx軸方向、つまりシート状物10の長辺と平行する方向をシート状物10の長さ方向、図2に示すy軸方向、つまりシート状物10の長辺と直交する方向をシート状物10の幅方向、図2に示すz軸方向、つまり各シート状物10が折り重ねられ形成されるシート状物積層体1の積層される方向を各シート状物10が積層される積層方向と称する。
【0016】
シート状物10は、長辺10a、10b、及び短辺10c、10dとによって形成される略矩形の布帛からなり、例えば、天然繊維又は合成繊維が織布、不織布、編布に形成された布帛を用いる。・・・また、これら天然繊維と合成繊維とを混合させた布帛を用いることができる。本発明においては、合成繊維からなる不織布、特に、合成繊維に高圧ウォータージェット流(繊維を交絡させるための水)を施し、繊維を交絡させて、乾燥状態では使用に耐え得る十分な強度を有するとともに、液体による湿潤状態ではウェブ形状を保持し、極めて容易且つ速やかな吸水性を有するスパンレース不織布が最も好ましく用いられる。また、シート状物10は、図1に示すように、シート状物10の一方の短辺10cから長さ方向にかけて、第2の折片14、第1の中間片11、第2の中間片12、第1の折片13が順に設けられている。
【0017】
第1の中間片11は、図1に示すように、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、シート状物10の幅方向に平行な第1の折れ線15及び第3の折れ線17とによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第1の中間片11の長さにあたる部分、つまり第1の折れ線15と第3の折れ線17との距離Aは、その長さが最終的に形成されるシート状物積層体1の幅と略同一となる長さである。
【0018】
第2の中間片12は、第1の中間片11と隣接し、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、シート状物10の幅方向に平行な第1の折れ線15及び第2の折れ線16とによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第2の中間片12の長さにあたる部分、つまり第1の折れ線15と第2の折れ線との距離Bは、第1の中間片11の長さ11aの略1/2の長さである。
【0019】
第1の折片13は、第2の中間片12と隣接し、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、第2の折れ線16と、短辺10dとによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第1の折片13の長さにあたる部分、つまり第2の折れ線16と短辺10dとの距離Cは、距離Bと略同一の長さである。
【0020】
第2の折片14は、第1の中間片11と隣接し、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、第3の折れ線17と短辺10cとによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第2の折片14の長さにあたる部分、つまり第3の折れ線17と短辺10cとの距離Dは、D<Cの関係を有する。つまり、距離Dは、距離Aの半分より小さい値である。
【0021】
以上のような部分から構成されるシート状物10は、図2及び図3(A)に示すように、各折れ線15、16、17において折り返される。つまり、シート状物10は、第1の折れ線15において積層方向とは反対方向(-z方向)に折り返し第1の中間片11及び第2の中間片12を形成し、第2の折れ線16において積層方向とは反対方向(-z方向)に折り返し第1の折片13を形成し、第3の折れ線17において積層方向(z方向)に折り返し第2の折片14を形成する。
【0022】
次に、シート状物積層体1の積層構造について、図2、図3(A)及び図3(B)を用いて説明する。
【0023】
シート状物積層体1は、シート状物10が所定の位置において交差掛けされる。つまり、シート状物積層体1は、偶数番目に積層されるシート状物10Rと奇数番目に積層されるシート状物10Lとが、互いに交差掛けされる。
【0024】
なお、便宜上、シート状物10の第1の中間片11に対し、第2の中間片12及び第1の折片13が図2中の右側に設けられるシート状物をシート状物10Rとし、シート状物10の第1の中間片11に対し、第2の中間片12及び第1の折片13が図2中の左側に設けられるシート状物をシート状物10Lと称する。・・・
【0025】
具体的には、シート状物積層体1は、各シート状物10Rの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に、各シート状物10Rの次に積層されるシート状物10Lの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとし、各シート状物10Lの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に、各シート状物10Lの次に積層されるシート状物10Rの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとして積層体を形成する。
【0026】
以上のように構成されたシート状物積層体1は、従来の積層構造においてはない第2の折片14を有することで、従来と変わらない積層体の幅としても、第2の折片14の面積分だけ従来よりもサイズの大きいシート状物10を積層させることができる。具体的には、シート状物10は、従来使用されるシート状物の大きさと比較して、第2の折片14の面積分、つまり上述のD<Cの関係を有する範囲内で大きさを変更することができ、約25%まで大きいサイズのシート状物を使用することができる。そのため、積層されるシート状物の大きさを変更したとしても、シート状物積層体の製造装置の設計変更のみで、出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず、さらには、製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず、在庫スペースの変更も必要が無くなる。
【0027】
また、シート状物積層体1は、各シート状物10Rの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に、各シート状物10Rの次に積層されるシート状物10Lの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとし、各シート状物10Lの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に、各シート状物10Lの次に積層されるシート状物10Rの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとする。そのため、形成されるシート状物積層体1自体は、図3(B)に示すように、嵩高状態が第1の折れ線15及び第3の折れ線17近傍、つまりシート状物積層体1の端部近傍において、第2の折片14の大きさ分だけ積層体の嵩が高くなっている。つまり、シート状物積層体1は、第2の折片14が設けられた大きさ分だけ、各シート状物10の第1の折れ線15及び第3の折れ線17近傍において、肉厚部分が形成され、積層体の躯体部分が補強されることになり、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる。
【0028】
なお、第2の折片14は、シート状物10のサイズを大きくするとともに、シート状物積層体1の躯体部分を補強する目的で設けられ、そのため、第2の折片14の第3の折れ線17と短辺10cとの距離Dが距離Cよりも大きくなると、出来上がるシート状物積層体1において、各シート状物10R(又はシート状物10L)の第2の折片14と各シート状物10L(又はシート状物10R)の第1の折片13とが重なり合い、全体の嵩高状態が、中央部が膨らみ不安定なものとなる。従って、本発明においては、第2の折片14の第3の折れ線17と短辺10cとの距離DをD<Cとした。」

第3 訂正請求について
被請求人は、審決の予告があった後、本件特許について、平成30年11月2日に訂正請求書(当該訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。)を提出している。
本件訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件訂正発明」という。)は、上記訂正請求書に添付された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(下線は訂正箇所を示す。訂正について以下同様。)。

「【請求項1】
折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において、
上記シート状物はスパンレース不織布からなり、
上記シート状物の各々は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と、
上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、
上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と、
上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、上記第1の折片の幅より短い幅となる第2の折片とを有するように折り畳まれ、
積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、
各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせることを特徴とするシート状物の積層体。」

そこで、本件訂正の適否について検討する。

1 訂正内容
本件訂正は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「シート状物の積層体において、」とあるのを、「シート状物の積層体において、上記シート状物はスパンレース不織布からなり、」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「上記第1の中間片の幅の1/2以下となる第2の折片とを有するように折り畳まれ、」とあるのを、「上記第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、上記第1の折片の幅より短い幅となる第2の折片とを有するように折り畳まれ、」と訂正する。

(3)訂正事項3
明細書の段落【0009】に「シート状物の積層体において、」とあるのを、「シート状物の積層体において、上記シート状物はスパンレース不織布からなり、」と訂正する。

(4)訂正事項4
明細書の段落【0009】に「上記第1の中間片の幅の1/2以下となる第2の折片とを有するように折り畳まれ、」とあるのを、「上記第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、上記第1の折片の幅より短い幅となる第2の折片とを有するように折り畳まれ、」と訂正する。

2 訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、「シート状物」について、「スパンレース不織布」からなることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は、訂正前に特定されていた「シート状物」についてより具体的に特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
「シート状物」が「スパンレース不織布」からなることは、上記第2の2で摘記した本件特許の明細書(願書に添付した明細書)の段落【0016】に記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、「第2の折片」の幅について、「上記第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、上記第1の折片の幅より短い幅」であることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2は、訂正前に特定されていた「第2の折片」の幅についてより具体的に特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
上記第2の2で摘記した本件特許の明細書(願書に添付した明細書)の段落【0017】ないし【0020】に記載されているから、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

(3)訂正事項3及び4
訂正事項3及び4は、訂正事項1及び2に係る訂正に伴い特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的としているといえる。
また、訂正事項3及び4は、訂正事項1及び2と同様の訂正であるから、上記(1)及び(2)で検討したように、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、結論のとおり、本件訂正を認める。

そして、本件訂正は認められたので、本件発明は訂正された本件訂正発明である。

第4 当事者の主張
1 請求人の主張
(1)請求人が主張する無効理由の概要
請求人は、本件発明の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、概ね以下のとおり主張し(審判請求書、平成30年5月7日付け口頭審理陳述要領書、同年6月6日受付の上申書、第1回口頭審理調書を参照。)、証拠方法として甲第1号証ないし甲第15号証を提出している。

ア 無効理由1(実施可能要件違反)
本件発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、その特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
イ 無効理由2(甲第1号証を主引例とする新規性進歩性欠如)
(ア)無効理由2-1(新規性欠如)
本件発明は、その特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、その特許は無効とすべきである。
(イ)無効理由2-2(進歩性欠如)
本件発明は、その特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第6?8、11号証)に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
ウ 無効理由3(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如)
本件発明は、その特許出願前に頒布された刊行物である甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明、並びに周知技術(甲第1、9、10、11号証)に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
エ 無効理由4(明確性要件違反)
本件の特許請求の範囲の記載が不備であって、本件発明は明確でないから、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

なお、無効理由4(明確性要件違反)は、平成30年5月31日の口頭審理において審判請求の理由とすることを許可した(第1回口頭審理調書の「補正許否の決定」を参照。)。

また、請求人は、本件訂正を受けて無効理由2(甲第1号証を主引例とする新規性進歩性欠如)を次のとおりに補正することを主張し、甲第21号証を証拠として提出した(審判事件弁駁書参照。)。そして、当該補正は、平成30年12月21日(起案日)付けの補正許否の決定により許可した。

無効理由2(進歩性欠如)
本件訂正発明は、その特許出願前に頒布された刊行物である甲第1号証に記載された発明及び甲第21号証に記載された公知技術に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

さらに、審判請求人が平成30年8月10日付け(8月13日受付)で提出した上申書による請求の理由の補正については、平成30年8月24日付け補正許否の決定において、次の理由により、許可しないこととした。
審判請求人は上記上申書により、新たな証拠である甲第16号証ないし甲第20号証の4を追加し、新たな無効理由である無効理由5(公然実施された発明を主引例とする進歩性欠如)を主張した。
しかしながら、審判請求書における進歩性欠如に関する無効理由(無効理由2、3)は、刊行物である甲第1号証又は甲第2号証を主引例とするところ、上記上申書で主張する無効理由5は、新たに追加された証拠である甲第16号証ないし甲第20号証の4で立証される公然実施発明を主引例として進歩性欠如を主張するものであるから、当該無効理由を追加する請求の理由の補正は、本件特許を無効にする根拠となる主要事実を追加的に主張・立証するものであるから、請求の理由の要旨を変更するものである。

(証拠方法)
提出された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開平11-56666号公報
甲第2号証:特許第2951187号公報
甲第3号証:実願昭58-61896号(実開昭59-166794号)のマイクロフィルム
甲第4号証:甲第1号証に係る出願審査請求書
甲第5号証:甲第1号証に係る平成18年4月10日付け拒絶理由通知書
甲第6号証:特開平9-224872号公報
甲第7号証:特開2004-49326号公報
甲第8号証:特開平9-313393号公報
甲第9号証:特開平6-90875号公報
甲第10号証:特開2003-135305号公報
甲第11号証:実願昭48-29765号(実開昭49-130921号)のマイクロフィルム
甲第12号証:特願2000-281408に係る平成17年9月22日付け拒絶理由通知書
甲第13号証:本件特許に係る願書に最初に添付された特許請求の範囲
甲第14号証:本件特許に係る平成18年9月25日付け意見書
甲第15号証:特願2004-62859(乙第1号証に記載された先願)に係る拒絶査定
甲第21号証:特開2002-85289号公報

(2)無効理由の具体的な主張
ア 無効理由1(実施可能要件違反)
本件発明は「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」(構成E2)機能を有する物として「第2の折片」を特定するものである。
上記構成E2は、第1の解釈として、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」主体が「第2の折片」であるという意味に解釈することができるが、発明の詳細な説明の記載に従って得られる「第2の折片」は、天然繊維又は合成繊維により形成された布帛からなるシート状物の一部であるため、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」主体とはなり得ない。
また、上記構成E2は、第2の解釈として、構成E2は「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整」される際の道具として用いられる物として「第2の折片」を特定するものであると捉えることも可能であるが、発明の詳細な説明の記載に従って得られる「第2の折片」は、「第1の中間片」の幅の調整中には存在せず、調整の完了後に初めて形成される物なのであって、調整中に存在しない物を、調整の際の道具として用いることは不可能である。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が上記第1の解釈及び第2の解釈に基づく本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

イ 無効理由2(甲第1号証を主引例とする新規性進歩性欠如)
(ア)甲1発明
甲1発明は、以下のとおりである。
「連続取出しが行われるようにした多重腰折ウェットテシューにおいて、
腰折ウェットテシュー11,12の各々は、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の二の長さの、折線S1及び折線S3に挟まれた部分(以下「中間片11g,12g」という。)と、
中間片11g,12gと折線S1を介して下側に接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さの、折線S1及び折線S2に挟まれた部分(以下、「中間片11h,12h」という。)と、
中間片11h,12hと折線S2を介して下側に接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さの折り返し片11e,12eと、
中間片11g,12gと折線S3を介して上側に接続され、腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さの折り返し片11f,12fとを有するように折り畳まれ、
右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは左右対称となるように折り畳まれており、
各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bの内面に各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aの内面が重なり、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12bの内面に各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11aの内面が重なるよう積層されていることを特徴とする多重腰折ウェットテシュー。」
(イ)第2の折片に関する対比
本件発明では、「第2の折片」の幅が「第1の中間片の幅の1/2以下」という数値範囲で表現されている。一方、甲1発明では、本件発明の「第2の折片」に相当する折片である「折り返し片11f、12f」の長さが腰折ウェットテシュー11、12の幅(本件発明の「第1の中間片の幅」に相当する。)方向の「中心線Yを越えず且つこれに接近した長さ」とされている。このように、本件発明における「第2の折片」の幅が、「第1の中間片の幅の1/2以下」という数値範囲で、甲1発明においては当該数値範囲に包含される、より限定された数値範囲を指す定性的な表現で規定されている点に、本件発明と甲1発明との相違点を見出すことができる。
なお、仮に本件発明の数値範囲のうち、1/2に近い数値を選択して得られる構成とした場合には、本件発明は甲1発明と一致する。
(ウ)相違点
本件発明と甲1発明とは、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明の「折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体」(構成A)は、甲1発明の「連続取出しが行われるようにした多重腰折ウェットテシュー」(構成a)を包含している(構成Aは構成aの上位概念で表現されている)。
相違点2:本件発明の「上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され」、「上記第1の中間片の幅の1/2以下となる第2の折片」は、甲1発明の「腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さの折り返し片11f,12f」を包含している(甲1発明の数値範囲は、本件発明の数値範囲をより限定したものである)。
なお、本件発明における「シート状物」を「ウェットテシュー」とし、「第2の折片」を「第1の中間片の幅寸法の1/2以下」且つ1/2に近い幅としたものは、本件発明の下位概念であり、これはすべての構成において甲1発明と一致している(新規性欠如)。
(エ)相違点の検討
a 相違点1
積層体の構成単位として、ウェットテシューに代えて、ウェットテシュー以外のシート状物を採用することは、均等物による置換に過ぎない。
また、甲第1号証には、積層体の構成単位としてウェットテシュー以外のシート状物を採用することを阻害するような記載は見られない。
従って、相違点1は本件発明の進歩性を基礎づけるものではない。
b 相違点2
(a)設計事項であること
甲1発明は、ウェットテシューの大きさに対して、より短い誘出長や、よりコンパクトな積層体を実現するためになされた発明である(甲第1号証第2頁【0004】及び【0006】)。そして、甲1発明は、「折り返し片11f,12f」が「中心線Yを越え」ない範囲であれば、「折り返し片11f,12f」を長くすればする程、ウェットテシューの大きさに対する誘出長が短くなり、積層体のサイズがコンパクトになるというように、より優れた作用効果を奏するようになるものである。ゆえに、求める作用効果の程度に応じて「折り返し片11f,12f」の長さを変更することは、当業者が適宜採用し得る設計事項に過ぎない。すなわち、「折り返し片11f,12f」を中心線Yに接近しているとはいえない短さに設定することについても、当業者が適宜採用し得る設計事項に過ぎない。
(b)特許権侵害の回避が企図されることにより容易に想到し得たこと
甲1発明の最も特徴的な構成である「折り返し片11f,12f」を設けながら、その寸法を規定の寸法と異なるように設定するという特許回避の手段は、甲1発明を利用したい当業者であれば容易に想到し得るものである。ゆえに、「折り返し片11f,12f」の長さを「中間片11g,12g」の長さの1/2倍より明らかに短い寸法とすること、すなわち、「第2の折片」の幅を「第1の中間片の幅」の1/2倍より明らかに短い寸法とすることは、本件特許に係る特許出願前において、当業者にとって容易であった。
(c)特許出願時における技術常識
本件特許に係る特許出願前において、甲第6号証の図9(ロ)、甲第7号証の図9及び甲第8号証の図1のように、シート状物を積層する際の折り方として、シート状物の幅方向最端部に位置する片の幅寸法が、積層体の幅寸法に対して1/2未満の任意の幅である折り方は、既に開示されていた。
特に、甲第6号証図9及び甲第7号証図9は、従来技術を例示するために描かれているものであり、本件特許に係る特許出願前から、シート状物の幅方向最端部に位置する片の幅寸法が積層体の幅寸法に対して1/2未満の任意の幅であるよう折り畳まれたシート状物が周知であったことは明らかである。
このことからも、甲1発明のウェットテシューの幅方向最端部に位置する「折り返し片11f,12f」の長さを、積層体の幅寸法に対して1/2未満の任意の長さに設定することが、本件特許に係る特許出願前における当業者にとって容易であったことが伺える。
(d)周知技術
所望とする積層体の幅寸法からはみ出してしまう余分な部分を折り返すという「第2の折片」の製造方法は、そもそも、周知技術に過ぎない。
例えば、衣服をタンスのサイズに合わせて折りたたむ、ハンカチをポケットのサイズに合わせて折りたたむ、書類をファイルのサイズに合わせて折りたたむ等の日常に極ありふれた作業は、すべて、収納容器より大きいサイズのシート状物を当該収納容器に納めるために、はみ出してしまう部分を折り返して所望のサイズに合わせる作業である。
また、甲第11号証には、シート状物の一端部の所望巾を折るという技術が開示されている。この技術は「容器の頂面の面積より、より広い面の紙を収納することを狙ったものであ」(明細書1頁14?15行)り、「広い面のものを小型用器に収納することを可能にしたことを特徴と」(明細書1頁9?10行)するものである。
(e)本件発明が課題を解決していないこと
本件特許発明の課題は、先に述べたとおり、「包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供するとともに、包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供すること」である。
ここで、「包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供する」という課題について、本件特許の発明の詳細な説明においては、本件発明は、積層体の幅の約2倍の幅を有するシート状物しか積層できない構造(本件特許公報の図4(A))と比較して、この課題を解決したとしている。しかしながら、積層体の幅の約2.5倍の幅を有するシート状物を積層できる従来技術(甲1発明)が存在するため、積層体の幅の約2?2.5倍の幅を有するシート状物を積層できる構造しか提供できない本件発明は、実際には、前記課題を解決しているとはいえない。
また、「包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供する」という課題についても、本件発明が、甲1発明や本件特許公報の図4(A)に示された構造と比較して、格別の安定感をもたらすものであるとは認められず、本件発明によって解決されているとはいい難い。特に、積層体の幅方向端部の極近傍のみが嵩高になる場合には、包装体同士を積み重ねる際に、上下の包装体の位置が幅方向にずれやすくなり、逆に不安定になっているものと推察される。
したがって、本件発明は、従来技術と比較して、何ら課題を解決していない。
(f)小括
以上のとおり、本件発明における「第2の折片」の幅寸法を、甲1発明に規定された数値範囲に含まれる数値から、本件発明の数値範囲に含まれる他の値に変化させることは当業者にとって容易であるため、相違点2は本件発明の進歩性を基礎づけるものではない。
c むすび
以上のとおり、本件発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである(進歩性欠如)。
(オ)本件訂正発明の進歩性欠如について(弁駁書)
a シート状物はスパンレース不織布からなること
例えば、甲第21号証の段落【0022】における「それぞれのシート折り畳み体を構成するシート21は、紙または不織布である。例えば、(中略)スパンレースなどの不織布である。」という記載に見られるように、本件特許出願時において、スパンレース不織布はシート状物の材料として公知であった。なお、甲第21号証は、当該明細書の段落【0001】に記載されているとおり、「ウェットティッシュペーパ、ウェットな不織布、ドライのティッシュペーパ、ドライの不織布などが折り畳まれた状態で、順番に取出し自在に積層されたシート積層体に関する」文献である。
以上に述べたとおりであるので、甲1発明に対して、本件訂正発明においてはシート状物の材料がスパンレース不織布に特定されているという相違点は、公知材料の中からの最適材料の選択に過ぎない。したがって、当該相違点は、本件訂正発明の甲1発明に対する進歩性を基礎づけるものではない。
b 第2の折片の幅は第1の折片の幅より短い幅であること
「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)が、「折り返し片11e,12e」(第1の折片)の長さ(幅)より短いことは、甲第1号証から読み取ることができる事項であり、甲第1号証に実質的に記載されているということができる。

ウ 無効理由3(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如)
(ア)甲2発明
甲2発明は、以下のとおりである。
「連続取出しが行われるようにした多重腰折ウェットテシューにおいて、
腰折ウェットテシュー11,12の各々は、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略二分の一の長さの上部折片11b,12bと、
上部折片11b,12bと折線S1を介して下側に接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略四分の一の長さの、折線S1及び折線S2に挟まれた部分(以下、「中間片11e,12e」という。)と、
中間片11e,12eと折線S2を介して下側に接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略四分の一の長さの折り返し片11d,12dとを有するように折り畳まれ、
右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは左右対称となるように折り畳まれており、
各右向き腰折ウェットテシュー11(又は各左向き腰折ウェットテシュー12)の下部折片11a(又は12a)の内面に各左向き腰折ウェットテシュー12(又は各右向き腰折ウェットテシュー11)の上部折片12b(又は11b)の内面が重なるよう積層されていることを特徴とする多重腰折ウェットテシュー。」
(イ)相違点
本件発明と甲2発明とは、以下の点で相違する。
相違点1:本件発明の「折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体」(構成A)は、甲2発明の「連続取出しが行われるようにした多重腰折ウェットテシュー」(構成a)を包含している(構成Aは構成aの上位概念で表現されている)。
相違点2:本件発明は「上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され」、「上記第1の中間片の幅の1/2以下となる第2の折片」を備えているのに対し、甲2発明はそのような構成を備えていない。
(ウ)相違点1の検討
積層体の構成単位として、ウェットテシューに代えて、ウェットテシュー以外のシート状物を採用することは、均等物による置換に過ぎない。
また、甲第2号証には、積層体の構成単位としてウェットテシュー以外のシート状物を採用することを阻害するような記載は見られない。
したがって、相違点1は本件発明の進歩性を基礎づけるものではない。
(エ)相違点2の検討
a 甲2発明への甲3記載事項の適用
甲第3号証には「タオル片の端縁部に小幅な折返片を設け」るという技術(甲3記載事項)が記載されている。
甲2発明の「上部折片11b,12b」の遊離端側は、シート状物の端縁部に相当するため、ここに甲3記載事項を適用することにより、「上部折片11b,12b」の遊離端側に小幅な折返片を設けることができ、この小幅な折返片は本件発明の「第2の折片」に相当する。
甲2発明及び甲3記載事項がともに、シート状物の積層体に関する技術の分野に属している。また、甲3記載事項の課題は、シート状物の破損を未然に防止することであり、同様の課題に着目した文献として、甲第1号証(段落【0011】,【0036】)、甲第9号証(段落【0004】)、甲第10号証(段落【0019】)が存在する。
さらに、ペーパータオルホルダーや箱ティッシュ、ウェットティッシュ等の中身が一杯に詰まっている状態において、シート状物を引き出す際に、当該シート状物が破損しやすいことは、当業者でなくとも日常生活の中で誰しもが経験して知っていることである。
以上のとおり、甲2発明に甲3記載事項を適用することには十分な動機付けがあり、本件特許に係る特許出願前における当業者にとっては容易想到であった。
(オ)作用効果について
本件発明による作用効果は、「第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができる」とともに、積層体の幅方向端部近傍において「第2の折片が設けられた大きさ分だけ、肉厚部分が形成され、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる」というものである。
しかし、これらの作用効果は、「第2の折片」に相当する構成を設け、その幅寸法を「第1の中間片」に相当する折片の1/2以下とすることによって得られる当然の結果に過ぎない。すなわち、本件発明は、甲2発明の有する効果とは異質な効果を有するものの、この効果は、出願時の技術水準から当業者が容易に予測することができたものであった。
したがって、「第2の折片」が上記各作用効果を有することは、本件発明の進歩性を基礎付けない。
(カ)むすび
したがって、本件発明は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、その特許出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

エ 無効理由4(明確性要件違反)
物の発明の請求項に製造方法によって生産物を特定しようとする記載が含まれる場合においては、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情が存在する場合を除いて、原則は特許請求の範囲の記載が不明確であるという理由で特許を受けられないはずである(最判平成27年6月5日民集69巻4号904頁)。
そして、構成E2(「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」構成)に係る製造方法によって特定される生産物は、構成E1(「第1の中間片から積層方向上側に折り返され」る構成)及び構成E3(「第1の中間片の幅の1/2以下となる」構成)に示された構造によって特定される物に他ならない。すなわち、特段の事情が存在しないので、本件特許には、特許請求の範囲の記載が明確性要件を具備しないという無効理由が存在する。

2 被請求人の主張
(1)主張の概要
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人の主張に対して、概ね以下のとおり反論し(平成30年3月16日付け審判事件答弁書、同年5月23日付け口頭審理陳述要領書、同年6月22日付け上申書を参照。)、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出している。

ア 本件明細書の「発明の詳細な説明」は、本件発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものであるため、本件特許に係る特許出願は、実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)を満たすものである。
イ 本件発明は、甲1発明と同一性はなく、新規性(特許法第29条第1項第3号)を有することは明らかであり、また、甲第1号証記載事項から当業者が容易に想到できるものであるとは言えず、本件発明は進歩性(特許法第29条第2項)を有するものである。
ウ 本件発明は、甲2発明に甲第3号証記載事項を適用する動機付けが存在しないから、当業者にとって容易想到であったということはできないので、進歩性(特許法第29条第2項)を有するものである。
エ 本件特許には明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号)はない。

また、被請求人は、本件訂正発明に係る特許は、請求人が主張する無効理由1ないし4により無効とすることはできない旨を主張している(平成30年11月2日付け上申書、第2答弁書を参照。)。

(証拠方法)
提出された証拠は、以下のとおりである。
乙第1号証:本件特許に係る平成18年8月23日付け拒絶理由通知書
乙第2号証:特開2005-245863号公報
乙第3号証:乙第2号証に係る平成21年9月17日付け拒絶理由通知書

(2)無効理由に対する具体的な反論
ア 無効理由1(実施可能要件違反)に対する反論
本件発明は、従来使用されるシート状物よりも大きなサイズのシート状物を用いて、かつ、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さとするためには、所定の幅寸法からはみ出す部分を「調整」する必要があり、この「調整」を第2の折片を形成することで行っているのである。
すなわち、例えば、折る前のシート状物の長さが「所望とする積層体の幅寸法」(第1の中間片の長さ(距離A))の2倍よりわずかに長いものであれば、第2の折片の折り返し幅(距離D)はわずかな幅で折り返し、「所望とする積層体の幅寸法」の2倍よりある程度長いものであれば、第2の折片の折り返し幅(距離D)もある程度長い幅で折り返すことで、「第1の中間片」を「所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さ」となるように「調整」するのである。
このように、本件発明では、第1の中間片の長さ(距離A)を「所望とする積層体の幅寸法」となるように設計した際に、はみ出してしまう余分な部分を第2の折片として折り返すことにより、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができるようにしたものであり、そのようにして形成された第2の折片は、シート状物の積層体として見た場合に「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」役割を果たしているものであると言える。
そして、シート状物全体の大きさを第2の折片の面積分を限度に大きいサイズに変更した場合、又は伸縮性のある繊維素材を用いたウェットシートを前提とする本件特許において(段落【0002】)、製造過程でシート全体の長さに多少のばらつきが出た場合であっても、第2の折片が、第1の中間片の幅の1/2以下というように幅を持たせた物として設計されているため、この第2の折片をもって、第1の中間片の幅を設計されている幅になるように調節しているということを意味している。このことは、発明の詳細な説明の記載を参酌すれば、当業者にとっては自明な事項である。
請求人は、「調整する」の解釈について、第2の折片が「調整する」主体であるという解釈(第1の解釈)と、第2の折片が「調整」する際の道具であるという解釈(第2の解釈)の2通りのみであるように主張しているが、上述の通り、第2の折片は、所望とする積層体の幅寸法からはみ出してしまう余分な部分を第2の折片として折り返すことにより、最終的なシート状物の積層体として見た場合に「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」役割を果たしているという解釈をとることが可能であり、そのような第2の折片の役割について、当業者であれば明細書の記載から容易に理解することが可能である。
以上より、本件発明における「第2の折片」は、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」という機能を具備するものであり、本件明細書の「発明の詳細な説明」は、本件発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。

イ 無効理由2(甲第1号証を主引例とする新規性進歩性欠如)に対する反論
(ア)新規性欠如に対する反論
甲1発明によれば、甲第1号証の明細書の【作用】の欄(【0008】)にも記載されるとおり、「各腰折ウェットテシューの上部折片と下部折片の遊離端側を折り返して上部短巾重畳端と下部短巾重畳端を形成し、この両者を相の手に組んで多重ねを行っているので、各腰折ウェットテシュー間における上記相の手組部の寸法(重畳巾の寸法)をウェットテシュー長の略五分の一に縮小でき、この結果、上位の腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端を摘持して引き出したときの容器の取出口から誘出される下位の腰折ウェットテシューの誘出寸法を上部短巾重畳端の重畳巾に短縮できる。」ことを目的として、この「折り返し片11f,12f」をウェットテシュー長の略五分の一の巾と縮小したものである。
これに対し、本件発明の「第2の折片」は、本件特許明細書の段落【0008】に記載されるとおり、「包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供するとともに、包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供することを目的」として構成されるものである。
このように、本件発明では、上述したように従来の積層構造にはない第2の折片が設けられているので、その第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、第2の折片により第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整することで、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができる。そのため、出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず、さらには、製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず、在庫スペースの変更も必要が無くなる(本件特許明細書【発明の効果】【0011】)。
一方で、甲1発明では、ウェットテシュー長を5等分して各折片や中間片を形成しているため、「折り返し片11f,12f」は必然的にウェットテシュー長の略五分の一の幅となる。すなわち、甲1発明では、どのような長さのシート状物であっても5等分して各折片や中間片を形成しているため、「折り返し片11f,12f」は、第1の中間片に相当する幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する機能を有するものではない。甲1発明の明細書には、「折り返し片11f,12f」によって、第1の中間片に相当する幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整することについて記載も示唆もされていない。
よって、本件発明の「第2の折片」は、甲1発明で開示される「折り返し片11f,12f」とは全くその目的及び構成を異にする。
以上より、甲1発明には、本件発明の特徴的な構成である「上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2以下となる第2の折片とを有するように折り畳まれ、」という構成の開示がなく、本件発明は、その動機、目的、構成を異にするので、甲1発明と同一性はなく、新規性を有することは明らかである。
(イ)進歩性欠如に対する反論
a 設計事項について
甲1発明は、上述したとおり、ウェットテシュー長を5等分し、3/5を上部折片とし、その1/3(全体の1/5)を上部重畳端における折り返し片とすることで、誘出部分の縮小を図ったものである。すなわち、甲1発明は、設計上、ウェットテシュー長を5等分にしたうえで、それぞれを折り返す折り返し寸法に設定しているため、折り返し片の長さを適宜変更することは想定されていない。また、甲1発明は、設計上、ウェットテシュー長を5等分にしたうえで、それぞれを折り返す折り返し寸法に設定しているため、本件発明の第2の折片に相当する部分のみを選択し、折り返し片の長さを適宜変更するとは考え難い。
また、本件発明は、第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができるとともに、積層体の幅方向端部近傍において第2の折片が設けられた大きさ分だけ、肉厚部分が形成され、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができるという従来の課題を解決するためになされた優れた効果を奏する発明である。(本件特許明細書【0011】、【0012】)。
したがって、甲1発明の折り返し片の幅を、他の値に変化さたせることは、当業者が適宜採用し得る設計事項に過ぎないとする請求人の主張は失当である。
b 周知技術について
請求人は、甲第6号証の図9(ロ)、甲第7号証の図9及び甲第8号証の図1を挙げて、甲1発明の「折り返し辺11f,12f」の長さを、積層体の幅寸法に対して1/2未満の任意の長さに設定することが、本件特許に係る特許出願前における当業者にとって容易である旨主張しているが、甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証は、いずれも携帯用ティッシュペーパー(ポケットティッシュ)に関するものであり、これらの積層体は、ティッシュペーパーを1枚ずつ取り出すことを目的として長手方向と幅方向の双方に多数の折り目により折り畳まれたティッシュペーパーを積層した束体が収納されているため、本件発明のように、「積層されるシート状物の偶数番目のシート状物と奇数番目のシート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の第1の中間片及び第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせる」構造とはなっておらず、甲第6号証の図9(ロ)、甲第7号証の図9及び甲第8号証の図1に記載のシート状物は、第1の中間片に対応する片から折り返された片がさらに、上記第1の中間片の端部方向に折り返されているため、端部の折片が第3の中間片とも呼ぶべき部分と第2の折片からなり、本件発明におけるシート状物とはその構造がそもそも異なるものである。
したがって、このように、対象物、シート状物の構造、及び、積層の仕方が異なる甲第6号証、甲第7号証及び甲第8号証は、引用文献としての適格性がないので、これらを周知技術とする請求人の主張はその前提を欠き失当である。
c 課題の解決について
請求人は、「包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供する」という課題について、従来技術として甲1発明が存在するため、本件発明は、前記課題を解決しているとは言えない旨主張しているが、甲1発明では、容器の小型化を達成しているのであって(甲第1号証の段落【0012】,【0027】)、本件特許出願のように、「包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供する」というものではない。
また、「包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供する」ことに関しても、本件特許明細書の図3(A)及び図3(B)に示すように、「嵩高状態が第1の折れ線15及び第3の折れ線17近傍、つまりシート状物積層体1の端部近傍において、第2の折片14の大きさ分だけ積層体の嵩が高くなっている。つまり、シート状物積層体1は、第2の折片14が設けられた大きさ分だけ、各シート状物10の第1の折れ線15及び第3の折れ線17近傍において、肉厚部分が形成され、積層体の躯体部分が補強されることになり、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる。」(本件特許明細書【0027】)の記載のとおりである。
したがって、本件発明は、甲1発明にはない課題を解決しているものであり、請求人の主張は失当である。
(ウ)弁駁書に対する反論(第2答弁書)
a シート状物はスパンレース不織布からなること
甲第21号証では、シートは、パルプから抄紙されてバインダーが含まれた非水解性の紙でもよいし、再生セルロース繊維、または再生セルロース繊維と合成樹脂繊維とで形成されたスパンレースなどの不織布でもよいし、レーヨンやパルプなどの繊維から抄紙された紙、不織布で、水解性または水膨潤性のCMCなどのバインダーが含まれているものでもよいし、繊維長が10mm以下または7mm以下のレーヨンなどを用いウォータジェットで繊維を交絡させた不織布で、多量の水が与えられたときに10mm以下の短い繊維の交絡がほぐれて水解するものでもよいし、繊維長が10mm以下または7mm以下のレーヨンなどを用いウォータジェットで繊維を交絡させた不織布で、多量の水が与えられたときに10mm以下の短い繊維の交絡がほぐれて水解するものでもよいし、レーヨンやパルプにフィブリル化レーヨンが含まれ、前記フィブリル化レーヨンをバインダーとして機能させた紙または不織布などでもよいということを単に列挙しているにすぎず、本件訂正発明のように、スパンレース不織布が特に優れていることの理由付けは記載されていない。
以上より、甲第21号証の記載からあえてスパンレース不織布を選択することの動機づけは得られず、本件訂正発明は甲1号証及び甲第21号証に係る発明に対して進歩性を有するものである。
b 第2の折片の幅は、第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、第1の折片の幅より短い幅であること
(a)本件訂正発明では、第2の折片の幅が第1の中間片の幅の1/2未満である(すなわち略2分の1の幅を超えて短い)と訂正することにより甲第1号証との差異をさらに明確にしたものである。
(b)甲第1号証に係る発明において、第2の折片が第1の中間片の略2分の1の幅となる以上、第2の折片の幅と第1の折片の幅は、略同じとなり、本件訂正発明のように第2の折片の幅が第1の折片の幅よりも短くなるということもない。
(c)甲第1号証発明の課題・目的は、多重腰折ウエットテシュー4の縮小化と、これを収容する容器3の小形化である(甲第1号証【0006】)。ここで、審決予告や請求人の指摘の通り「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2より小さい値」としてしまうと、甲第1号証発明の課題・目的である多重腰折ウエットテシュー4の縮小化と、これを収容する容器3の小形化を実現することはできない。なぜなら、最も多重腰折ウエットテシュー4を縮小化と小形化するには、「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2となる時だからである。「1/2より小さい値」は甲第1号証の記載からは想定や想到はできない。
以上の甲第1号証発明の課題・目的から、甲1号証発明の記載「腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さ」とは、「「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2より小さい値」と解すことはできず、「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2」と解すことが妥当である。

ウ 無効理由3(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如)に対する反論
(ア)技術分野の共通性に対する反論
甲3発明は、ペーパータオルに関する発明であり、ペーパータオルは、使用者が手を拭くために濡れた手で端部を摘み下方へ引っ張ってタオル片を引き出すものである。
一方で、甲2発明は多重腰折ウェットテシューに関するものである。ウェットテシューは家庭用の殺菌液を含侵させるものであり、一般的には除菌等を目的として使用されるものであって、濡れた手を拭くために使用されるものではない。また、甲2発明に係る多重腰折ウェットテシューは上方に掴み上げて使用するものに対して、甲3発明に係るペーパータオルは、下方へ引っ張って使用するものである。
したがって、甲2発明と甲3発明とは、具体的な対象物や使用態様が異なるため、技術分野が共通するものではない。
(イ)課題の共通性に対する反論
甲3発明は、タオル片の端部を小幅に折り返すことで引き出す際に摘む部分が二重となることで「シート状物の破損を未然に防止する」という課題を解決しているが、甲2発明には、「第2の折片」に相当する折片がなく、端部の摘む部分が二重にはなっていないため、「シート状物の破損を未然に防止する」課題を解決できていない。
甲2発明の解決しようとする課題は、「多重腰折ウェットテシューにおける各腰折ウェットテシューの上部折片の誘出量を可及的に短縮すると共に、各腰折ウェットテシュー間の相の手組部が多重腰折ウェットテシューの局部に集中しないようにし、更には容器の取出口から引き出された腰折ウェットテシューに下位の腰折ウェットテシュー全体又は上部折片全体が友連れされて引き出される問題」であり、甲2発明によって「シート状物の破損を未然に防止する」ことができるということは、甲第2号証の明細書のどこにも記載されていない。
したがって、甲2発明と甲3発明とは、課題が共通するものではない。
(ウ)作用効果に関する反論
請求人は、本件発明の作用効果である「その第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができる」とともに、積層体の幅方向端部近傍において「第2の折片が設けられた大きさ分だけ、肉厚部分が形成され、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる」ことは、「第2の折片」に相当する構成を設け、その幅寸法を「第1の中間片」に相当する折片の2分の1以下とすることによって得られる当然の結果に過ぎない旨主張しているが、甲2発明には、そもそも「第2の折片」に相当する折片がないため、本件発明の作用効果を得ることはできず、また、甲3発明の作用効果は、各タオル片の端縁部を小幅に折り返すことで、タオル片を引き出す際に掴む部分を2重としたことにより、該部の耐水強度が大きくなり、タオル片を破損することなく確実かつスムーズに引き出すことができる点であり、本件発明の作用効果とは全く異なるものである。
また、請求人は、甲2発明及び甲3発明とは関係なく、本件発明の効果は、出願時の技術水準から当業者が容易に予測することができたものであると主張しているがその根拠を何ら示していない。
したがって、作用効果に関する請求人の主張は根拠がなく失当である。

エ 無効理由4(明確性要件違反)に対する反論
請求人は、被請求人の解釈が「上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」という記載が、製造方法によって生産物を規定する、いわゆるプロダクトバイプロセスクレームであるため、明確性要件違反の無効理由が存在する旨主張しているが、第2の折片の構成要件の意味は、第2の折片をもって、第1の中間片の幅を設計されている幅になるように調節しているということを意味しているため、製造方法によって物を特定するものではない。
したがって、本件特許には明確性要件違反(特許法第36条6項2号違反)の無効理由が存在するとする請求人の主張は失当である。

第5 当審の判断
1 証拠について
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第1号証には、次の事項が記載されている(下線は審決で付加した。以下同じ。)。
(ア)発明の詳細な説明
「【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は多重腰折ウェットテシューを容器に収容し、容器に設けた取出口より各腰折ウェットテシューを順次連続して取出し得るようにした多重腰折ウェットテシューの連続取出し構造に関する。・・・
【発明が解決しようとする課題】・・・
【0006】
又上記ウエットテシュー長の略二分の一の腰折巾を有する多重腰折ウエットテシュー4の縮小化と、これを収容する容器3の小形化が要望されている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は上記課題を解決する手段として、各右向き腰折ウェットテシューと左向き腰折ウェットテシューとを相の手に組んで多重腰折ウェットテシューを形成し、この多重腰折ウェットテシューを容器内に収容して上部折片を摘出し連続取出しを行うようにする場合に、上記各右向きと左向き腰折ウェットテシューの上部折片と下部折片の遊離端側を各腰折ウェットテシューの腰折り方向とは逆方向に折り返して短巾の上部重畳端と下部重畳端を形成し、上記各右向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端と各左向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端とを上位の腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端と相の手に組むようにして各腰折ウェットテシューの上部折片の誘出量を充分に短縮できるようにすると共に、上記右向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端及び左向き腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端と左向き腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端及び右向き腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端とが多重腰折ウェットテシューの左半部側と右半部側に按分されるようにし、各上位の腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端を摘持して容器に設けた取出口より連続的に取出す構成としたものである。
【0008】
【作用】
この発明によれば、各腰折ウェットテシューの上部折片と下部折片の遊離端側を折り返して上部短巾重畳端と下部短巾重畳端を形成し、この両者を相の手に組んで多重ねを行っているので、各腰折ウェットテシュー間における上記相の手組部の寸法(重畳巾の寸法)をウェットテシュー長の略五分の一に縮小でき、この結果、上位の腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端を摘持して引き出したときの容器の取出口から誘出される下位の腰折ウェットテシューの誘出寸法を上部短巾重畳端の重畳巾に短縮できる。この時各下位の腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端は、各上位の腰折ウェットテシューの下部短巾重畳端とウェットテシュー長の略五分の一の巾で薬液により接着しているのみで他の五分の四には引張力が作用しない。
【0009】
又各腰折ウェットテシューの下部折片と各下位の腰折ウェットテシューの上部折片の相の手組部の寸法を縮小して、上位の腰折ウェットテシューの取出しに伴って下位の腰折ウェットテシューの上部折片が過度に引き出されたり、或いは下位の腰折ウェットテシュー全体が引き出されてしまう問題点を有効に解消できる。
【0010】
よって、多重腰折ウェットテシューにおける各腰折ウェットテシューの上部折片の誘出量を縮小し、併せて上記誘出された上部短巾重畳端の重ね合わせ部内面における薬液の乾燥が極力抑えられる。
【0011】
又誘出された上部短巾重畳端を摘持してウェットテシューの連続取出しを行うことができ、この摘持部に上部短巾重畳端による強度を持たせることができる。
【0012】
又上記腰折ウエットテシューの腰折巾を縮小できるため、これを収容する容器の小形化を達成できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下この発明の実施形態例を図2乃至図4に基づき説明する。
【0014】
多重腰折ウェットテシュー14は、右向きの腰折ウェットテシュー11と左向きの腰折ウェットテシュー12とから成り、各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aとを相の手に組んで多重ねにしている。換言すると各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bの内面に各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aの内面が重なるように交叉掛けにする。これを相の手と称する。
【0015】
又右向き腰折ウェットテシュー11とは左側に腰折り用の折線S1を有して右オープンとなされた腰折ウェットテシューを意味し、左向き腰折ウェットテシュー12とは右側に腰折り用の折線S1を有して左オープンとなされた腰折ウェットテシューを意味する。
【0016】
尚上記相の手組みした各腰折ウェットテシュー11,12を上記右向き又は左向きと定義したが、相の手組みの左右を逆にしても上記と同一組手の多重腰折ウェットテシュー14が形成される。
【0017】
上記多重腰折ウェットテシュー14は容器13に収容され、容器13の天板に設けた取出口13aより順次腰折ウェットテシュー11,12が引き出されて使用に供される。
【0018】
図2、図3に示すように、上記各右向きと左向き腰折ウェットテシュー11,12の上部折片11a,12aの遊離端側を各腰折ウェットテシュー11,12の腰折り方向とは逆方向に折り返して短巾の上部重畳端11c,12cを形成し、この各上部短巾重畳端11c,12cを各腰折ウェットテシュー11,12の上記取出し手段とする。即ち上部短巾重畳端11c,12cを摘持して腰折ウェットテシュー11,12の取出しを行うようにする。
【0019】
更に上記各右向きと左向き腰折ウェットテシュー11,12の下部折片11b,12bの遊離端側を各腰折ウェットテシュー11,12の腰折り方向とは逆方向に折り返して短巾の下部重畳端11d,12dを形成する。
【0020】
上記上部短巾重畳端11c,12cは各右向きと左向きの腰折ウェットテシュー11,12の上部折片11a,12aの遊離端側を同折片の基部側外面へ折り返し形成する。又は同折片の基部側内面へ折り返し形成することもできる。同様に下部短巾重畳端11d,12dは各右向きと左向きの腰折ウェットテシュー11,12の下部折片11b,12bの遊離端側を同折片の基部側外面へ折り返し形成する。又は同折片の基部側内面へ折り返し形成することもできる。
【0021】
図4は上記各腰折ウェットテシュー11,12の展開図を示し、S1は腰折り用の折線、S2は上記下部折片11b,12bを折り返して下部短巾重畳端11d,12dを形成するための折り返し用の折線、S3は上記上部折片11a,12aを折り返して上部短巾重畳端11c,12cを形成するための折り返し用の折線を夫々示す。
【0022】
上記折線S1はウェットテシューを略五等分して五分の三の位置に設定し、該五分の三の長さの折片で上部折片11a,12aを形成し、残りの五分の二の長さの折片で下部折片11b,12bを形成する。
【0023】
又折線S2は上記下部折片11b,12bを更に略二等分する位置に設定し、折線S3は上部折片11a,12aを略三等分し遊離端から三分の一の位置に設定する。従って折線S2によって折り返された折り返し片11e,12eは腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さとなり、折線S3によって折り返された折り返し片11f,12fは同様に腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さになる。
【0024】
製造工程としては、各ウェットテシューの一端部をウェットテシュー長の略五分の一に相当する長さだけ外側へ折り返して上部短巾重畳端11c,12cを形成し、同様に各ウェットテシューの他端部をウェットテシュー長の上記略五分の一に相当する長さだけ外側へ折り返して下部短巾重畳端11d,12dは形成し、上部短巾重畳端11c,12cと下部短巾重畳端11d,12dは何れか一方を形成した後、他方を形成し、次いでウェットテシュー長の上記略五分の三に相当する長さで腰折して各腰折ウェットテシュー11,12を形成する。
【0025】
こうして上記各右向き腰折ウェットテシュー11の上部短巾重畳端11cを上位の各左向き腰折ウェットテシュー12の下部短巾重畳端12dと相の手に組み、更に上記各左向き腰折ウェットテシュー12の上部短巾重畳端12cを上位の各右向き腰折ウェットテシュー11の下部短巾重畳端11dと相の手に組んで、図2に示すように多重腰折ウェットテシュー14を形成する。
【0026】
この時、上記各右向き腰折ウェットテシュー11の上部短巾重畳端11c及び各左向き腰折ウェットテシュー12の下部短巾重畳端12dと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部短巾重畳端12c及び各右向き腰折ウェットテシュー11の下部短巾重畳端11dとが多重腰折ウェットテシュー14の左半部側と右半部側とに按分される。又この時各腰折ウェットテシュー11,12の上部短巾重畳端11c,12cの折り返し片11f,12fの先端が多重腰折ウェットテシュー14の中心線Y付近、好ましくは図3Aに示すように、上記折り返し片11f,12fを中心線Yを越えず且つこれに接近した折り返し寸法に設定する。
【0027】
上記多重腰折ウエットテシュー14はウエットテシュー長の略五分の二の腰折巾Wに形成され、従来の如き多重腰折ウエットテシューに比べ、その腰折巾が縮小される。従って、容器の巾と従来の腰折巾がウエットテシューの略二分の一であるのに対し、この発明では同五分の二の巾に縮小できる。」
(イ)図面
a 図2及び3からみて、複数枚の右向きの腰折ウェットテシュー11と複数枚の左向きの腰折ウェットテシュー12が重ねられていることが看取できる。
b 図4には、腰折ウェットテシューの展開図が図示されており、上記(ア)で摘記した段落【0022】及び【0023】の記載事項を踏まえると、次の事項が理解できる。
(a)折線S1と一側端(図面左側端)に挟まれた上部折片11a,12aは、ウェットテシューの展開長の略五分の三の長さである。
(b)折線S3と一側端に挟まれた折り返し片11f,12fは、ウェットテシューの展開長の略五分の一の長さである。
(c)折線S1と折線S3に挟まれた上部中間片は、ウェットテシューの展開長の略五分の二の長さ(上部折片11a,12a長さ-折り返し片11f,12f長さ)である。
(d)折線S1と他側端(図面右側端)に挟まれた下部折片11b,12bは、ウェットテシューの展開長の略五分の二の長さである。
(e)折線S2と他側端に挟まれた折り返し片11e,12eは、ウェットテシューの展開長の略五分の一の長さである。
(f)折線S1と折線S2に挟まれた下部中間片は、ウェットテシューの展開長の略五分の一の長さ(下部折片11b,12b長さ-折り返し片11e,12e長さ)である。
c 上記(ア)で摘記した段落【0014】、【0018】ないし【0025】の記載事項、及び上記bで述べたことを踏まえると、図2及び3からみて、次の事項が看取でき、また理解できる。
(a)折線S1及び折線S2に挟まれた下部中間片は、上部中間片と折線S1を介して下側に折り返されて接続されている。
(b)折り返し片11e,12eは、下部中間片と折線S2を介して下側に折り返されて接続されている。
(c)折り返し片11f,12fは、上部中間片と折線S3を介して上側に折り返されて接続されている。
(d)右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは左右対称となるように折り畳まれている。
(e)各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bの内面に各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aの内面が重なり、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12bの内面に各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11aの内面が重なるよう積層されている。

イ 甲第1号証に記載の発明の認定
甲第1号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数枚の右向きの腰折ウェットテシュー11と複数枚の左向きの腰折ウェットテシュー12とから成り、各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aと、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12bと各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11aとを相の手に組んで多重ねにし、各腰折ウェットテシュー11,12を順次連続して取出し得るようにした多重腰折ウェットテシューにおいて、
腰折ウェットテシュー11,12の各々は、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の二の長さの、折線S1及び折線S3に挟まれた上部中間片と、
上部中間片と折線S1を介して下側に折り返されて接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さの、折線S1及び折線S2に挟まれた下部中間片と、
下部中間片と折線S2を介して下側に折り返されて接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さの折り返し片11e,12eと、
上部中間片と折線S3を介して上側に折り返されて接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さ、又は腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さの折り返し片11f,12fとを有するように折り畳まれ、
右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは左右対称となるように折り畳まれており、
各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bの内面に各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aの内面が重なり、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12bの内面に各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11aの内面が重なるよう積層されている、
多重腰折ウェットテシュー。」

(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第2号証には、次の事項が記載されている。
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】各右向き腰折ウェットテシュー(又は左向き腰折りウェッ
トテシュー)の下部折片と、各左向き腰折ウェットテシュー(又は右向き腰折ウェットテシュー)の上部折片とを相の手に組んで多重腰折ウェットテシューを形成し、該多重腰折ウェットテシューを容器内に収容し、該容器に設けた取出口より最上位の腰折ウェットテシューの上部折片を引き出すことにより上記相の手組部において摩擦係合する下位の腰折ウェットテシューの上部折片の遊離端を上記取出口より誘出させ連続取出しが行なわれるようにした多重腰折ウェットテシューの連続取出し構造において、上記各右向きと左向き腰折ウェットテシューの下部折片の遊離端側を各腰折ウェットテシューの腰折り方向とは逆方向に折り返して短巾の重畳端を形成し、上記各右向き腰折ウェットテシューの短巾重畳端を各左向き腰折ウェットテシューの上部折片の遊離端側と相の手に組み、上記各左向き腰折ウェットテシューの短巾重畳端を各右向き腰折ウェットテシューの上部折片の遊離端側と相の手に組み、上記右向き腰折ウェットテシューの短巾重畳端と左向き腰折ウェットテシューの短巾重畳端とが多重腰折ウェットテシューの左半部側と右半部側に按分される構成としたことを特徴とする多重腰折ウェットテシューの連続取出し構造。」
(イ)発明の詳細な説明
「【0001】
【産業上の利用分野】 この発明は多重腰折ウェットテシューを容器に収容し、容器に設けた取出口より各腰折ウェットテシューを順次連続して取出し得るようにした多重腰折ウェットテシューの連続取出し構造に関する。・・・
【0012】
【発明が解決しようとする問題点】
この発明は多重腰折ウェットテシューにおける各腰折ウェットテシューの上部折片の誘出量を可及的に短縮すると共に、各腰折ウェットテシュー間の相の手組部が多重腰折ウェットテシューの局部に集中しないようにし、更には容器の取出口から引き出された腰折ウェットテシューに下位の腰折ウェットテシュー全体又は上部折片全体が友連れされて引き出される問題を解消した多重腰折ウェットテシューの連続取出し構造を提供するものである。・・・
【0014】
【作用】
この発明によれば各腰折ウェットテシューの下部折片の遊離端側を折り返して上記短巾重畳端を形成して多重ねを行なっているので、各腰折ウェットテシュー間における下部折片と上部折片の相の手組部の寸法を腰折ウェットテシューの展開長の略四分の一に縮小でき、この結果、上位の腰折ウェットテシューの上部折片を引き出した時の下部折片の相の手組部における摩擦係合によって容器の取出口から誘出される下位腰折ウェットテシューの上部折片の寸法は最大上記略四分の一の寸法に短縮できる。・・・
【0019】
【実施例】
以下この発明の実施例を図6乃至図10に基いて説明する。
【0020】
図6はこの発明に係る多重腰折ウェットテシュー14の連続取出し構造の第1実施例を示し、図8はこの多重腰折ウェットテシュー14の加工法を説明する図である。
【0021】
図7はこの発明に係る多重腰折ウェットテシュー14の連続取出し構造の第2実施例を示し、図9はこの多重腰折ウェットテシュー14の加工法を示し、図10は各腰折ウェットテシューに共通する折線の位置を示す図である。
【0022】
図6、図7に示すように、多重腰折ウェットテシュー14は右向きの腰折ウェットテシュー11と左向きの腰折ウェットテシュー12とから成り、各右向き腰折ウェットテシュー11(又は各左向き腰折ウェットテシュー12)の下部折片11a(又は12a)と各左向き腰折ウェットテシュー12(又は各右向き腰折ウェットテシュー11)の上部折片12b(又は11b)とを相の手に組んで多重ねにしている。
【0023】
換言すると各右向き腰折ウェットテシュー11(又は各左向き腰折ウェットテシュー12)の下部折片11a(又は12a)の内面に各左向き腰折ウェットテシュー12(又は各右向き腰折ウェットテシュー11)の上部折片12b(又は11b)の内面が重なるように交叉掛けにする。これを相の手組と称する。・・・
【0026】
図6においては上記各右向きと左向きの腰折ウェットテシュー11,12の下部折片11a,12aの遊離端側を同折片の基部側外面へ折り返し上記短巾重畳端11c,12cを形成した実施例を示している。・・・
【0030】
図10は上記各腰折ウェットテシュー11,12の展開図を示し、S1は腰折り用の折線、S2は上記下部折片11a,12aの折り返し用の折線を夫々示し、上記折線S1は図示のように定長のウェットテシューを略二等分する位置に設定し、折線S2は下部折片11a,12aを更に略二等分する位置に設定する。従って折線S2によって折り返された折り返し片11d,12dは腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略四分の一の長さになる。・・・
【0037】
【発明の効果】
この発明は各上位の腰折ウェットテシューの上部折片の遊離端を、容器に設けた取出口より連続的に取出すための手段としたものであり、各上位腰折ウェットテシューの下部折片の上記短巾重畳端と各下位腰折ウェットテシューの上部接片とによる相の手組部の寸法を腰折ウェットテシューの展開長の略四分の一に縮小でき、この結果、相の手組部における摩擦係合によって容器の取出口から誘出される各腰折ウェットテシューの上部折片の寸法は最大上記略四分の一の寸法に短縮できる。・・・
【0040】
又この発明によれば上記相の手組部の寸法を縮小しながら、同相の手組部を多重腰折ウェットテシューの左側と右側に略均等に按分することができるので、多重腰折ウェットテシューの局部を嵩高にし商品性を損なったり、積上げ時に転倒する問題も併せて解消できる。」
(ウ)図面
a 図6からみて、複数枚の右向きの腰折ウェットテシュー11と複数枚の左向きの腰折ウェットテシュー12が重ねられていることが看取できる。
b 図10には、腰折ウェットテシューの展開図が図示されており、上記(ア)で摘記した段落【0022】、【0023】、【0026】及び【0030】の記載事項を踏まえると、次の事項が理解できる。
(a)折線S1と一側端(図面左側端)に挟まれた上部折片11b,12bは、ウェットテシューの展開長の略二分の一の長さである。
(b)折線S1と他側端(図面右側端)に挟まれた下部折片11a,12aは、ウェットテシューの展開長の略二分の一の長さである。
(c)折線S2と他側端に挟まれた折り返し片11d,12dは、ウェットテシューの展開長の略四分の一の長さである。
(d)折線S1と折線S2に挟まれた下部中間片は、ウェットテシューの展開長の略四分の一の長さ(下部折片11a,12a長さ-折り返し片11d,12d長さ)である。
c 上記(ア)で摘記した段落【0022】、【0023】、【0026】及び【0030】の記載事項、及び上記bで述べたことを踏まえると、図6からみて、次の事項が看取でき、また理解できる。
(a)折線S1及び折線S2に挟まれた下部中間片は、上部折片11b,12bと折線S1を介して下側に折り返されて接続されている。
(b)折り返し片11d,12dは、下部中間片と折線S2を介して下側に折り返されて接続されている。
(d)右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは左右対称となるように折り畳まれている。
(e)各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11aの内面に各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12bの内面が重なり、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12aの内面に各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11bの内面が重なるよう積層されている。

イ 甲第2号証に記載の発明の認定
甲第2号証には、上記アで摘記した事項及び図示内容からみて、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

「複数枚の右向きの腰折ウェットテシュー11と複数枚の左向きの腰折ウェットテシュー12とから成り、各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11aと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12bと、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12aと各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11bとを相の手に組んで多重ねにし、各腰折ウェットテシュー11,12を順次連続して取出し得るようにした多重腰折ウェットテシューにおいて、
腰折ウェットテシュー11,12の各々は、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略二分の一の長さの上部折片11b,12bと、
上部折片11b,12bと折線S1を介して下側に折り返されて接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略四分の一の長さの、折線S1及び折線S2に挟まれた下部中間片と、
下部中間片と折線S2を介して下側に折り返されて接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略四分の一の長さの折り返し片11d,12dとを有するように折り畳まれ、
右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは左右対称となるように折り畳まれており、
各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11aの内面に各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12bの内面が重なり、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12aの内面に各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11bの内面が重なるよう積層されている、
多重腰折ウェットテシュー。」

(3)甲第3号証について
ア 甲第3号証に記載された事項
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第3号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「一側に引出口を設けたケースに収納するペーパータオルであつて、折畳したタオル片の折畳部を隣接タオル片毎に互に掛合させて順次積層し、前記各タオル片の端縁部に小幅な折返片を設けたペーパータオル」(明細書1頁4?8行)
(イ)「この考案はケースからの引出しを容易にすることを目的としたペーパータオルに関するものである。
折畳したタオル片の複数枚をその折畳部を掛合させて順次積層し、これを一側に引出口を設けたケースに収納して連続的に引出し得るようにしたペーパータオルは従来広く知られている。
しかしながら従来のペーパータオルは、・・・使用者が手を拭くために濡れた手で端部14を摘み下方へ引張つてタオル片13を引き出そうとすると、摘んだ部分が濡れて破れる為に、タオル片13を確実に引き出せない場合があるという問題点があつた。
しかるにこの考案は、タオル片の端部を小幅に折返したので、引き出す際に摘む部分が二重となり、タオル片の破損を未然に防止し、前記従来の問題点を解決したものである。」(同1頁17行?2頁15行)。

イ 甲第3号証に記載の発明の認定
甲第3号証には、上記アで摘記した事項からみて、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。

「一側に引出口を設けたケースに収納するペーパータオルであつて、折畳したタオル片の折畳部を隣接タオル片毎に互に掛合させて順次積層し、前記各タオル片の端縁部に小幅な折返片を設けたペーパータオル。」

(4)甲第6号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第6号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、箱等の容器に収納されたり、小型の袋体に収納されて携帯用等に使用する折り畳みティッシュペーパー及びティッシュペーパーの積層方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、小型の合成樹脂製の袋等に収納された携帯用のティッシュペーパーは、袋体の大きさに合わせて矩形状のティッシュペーパーを一枚ずつ折り畳み、このような折り畳みティッシュペーパーを複数枚積層して袋体内に収納されていた。
【0003】
即ち、図9(イ)(ロ)に示すように、ティッシュペーパー21の縦方向に、4本の折り畳目線22a,22b,22c,22d を設けて、該折り畳目線22a,22b,22c,22d から折り畳んで折り畳みティッシュペーパー20を形成し、さらに該折り畳みティッシュペーパー20を縦方向に3つ折り、或いは2つ折りに折り畳んで折り畳みティシューペーパーを形成し、該折り畳みティッシュペーパー20を袋体等の収納容器に収納する。
【0004】
このようにして形成された折り畳みティッシュペーパー20は、図9(ロ)に示すように前記4本の折り目線22a,22b,22c,22d のうち内側の折り目線22a,22b が側縁として形成されており、外側の折り目線22c,22d から折り曲げられたおりまげ片23a,23b の端縁が側縁よりも内側或いは側縁と一致するように形成されている。」
(イ)図9(ロ)からは、折り畳みティッシュペーパー20の幅方向最端部に位置するおりまげ片23a,23b の幅寸法が、折り畳みティッシュペーパー20(及びそれを複数枚積層した積層体)の幅寸法の1/2未満であることが看取できる。

(5)甲第7号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第7号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0004】
更に上記包装体1の内部には、ティッシュペーパー4を1枚ずつ取り出すことを目的として図9に示すように長手方向と幅方向の双方に多数の折り目4a,4b,4c,4d,4eにより折り畳まれたティッシュペーパー4を積層した束体が収納されている・・・」
(イ)図9からは、折り畳まれたティッシュペーパー4の幅方向最端部に位置する片(折り目4a,4eにより折り畳まれた片)の幅寸法が、折り畳まれたティッシュペーパー4(及びそれを複数枚積層した積層体)の幅寸法の1/2未満であることが看取できる。

(6)甲第8号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第8号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポケットティッシュにおいて、ポケットティッシュのビニール袋の両辺にある接着部(1)のそれぞれの端を太めに、真ん中辺を細めに構成し、その中にペーパーの容器とほぼ同一面積で複数枚重ね、中央片(3)を残した両端部をそれぞれ反対側へ折り返し、更にほぼ半分位折り返したポケットティッシュペーパーを封入したことを特徴とするポケットティッシュ。」
(イ)図1からは、折り畳まれたポケットティッシュペーパーの幅方向最端部に位置する片の幅寸法が、折り畳まれたポケットティッシュペーパー(及びそれを複数枚積層した積層体)の幅寸法の1/2未満であることが看取できる。

(7)甲第9号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第9号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、一般に折り畳まれたペーパータオル製品の形状に係わり、特に既存のシートタオルディスペンサーから取り出せるようにするために折り畳んで交互に積み重ねたシートタオル配列に関する。」
(イ)「【従来技術】・・・
【0004】
ペーパータオルの取り出しに於いて生じる他の問題はタブアウト(tab-out)である。このタブアウトは使用者が濡れた手で、例えば親指と人差し指との間に挟んで取り出そうとするタオルを掴む場合に生じる。使用者がこうして濡らされたタオルの小さな部分を引っ張ると、タオルの小さな“タブ”が親指と人差し指との間で切りとれてしまい、タオルの残る部分はディスペンサーの中に残されたままとなる取り出し不具合が生じる。」

(8)甲第10号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第10号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばウェットテッィシュや乾ティッシュのようなウェブを多数枚積層させたウェブ積層体、およびそのウェブ積層体を容器内に収納した包装体に関し、特に、折り幅を小さくしながら取り出し性を良くしたウェットティッシュペーパーの折畳構造に関する。」
(イ)「【発明の実施の形態】・・・
【0019】
図4は、本発明の二回V折りウェブ積層体及びその包装体の第4実施例を示す断面説明図である。・・・このような折畳構造は、水解性ウェットティッシュのように引張強度の弱いウェブを包装容器の取出口から取出す場合に、一重では端切れが起こって取出し難い場合にも、破れることなくスムーズの取出せる利点も有している。」

(9)甲第11号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第11号証には、次の事項が記載されている。
「紙の容器は、美観上や、その占めるスペースの点などから小型化が求められているが、本考案は容器の頂面の面積より、より広い面の紙を収納することを狙つたものである。」(明細書1頁12?15行)

(10)甲第21号証について
請求人が無効理由に係る証拠として提出した、本件出願前に頒布された甲第21号証には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ウエットティッシュペーパ、ウエットな不織布、ドライのティッシュペーパ、ドライの不織布などが折り畳まれた状態で、順番に取出し自在に積層されたシート積層体に関する。」
(イ)「【0022】
それぞれのシート折り畳み体を構成するシート21は、紙または不織布である。例えば、パルプから抄紙されてバインダーが含まれた非水解性の紙、レーヨンなどの再生セルロース繊維、または再生セルロース繊維と合成樹脂繊維とで形成されたスパンレースなどの不織布である。」

2 無効理由1(実施可能要件違反)の検討
(1)本件訂正発明の構成要件
本件訂正発明は、上記第3の請求項1に記載された事項から特定されるものであって、請求人の主張に沿って分説すると次のとおりである。

A:折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において、
上記シート状物はスパンレース不織布からなり、
B:上記シート状物の各々は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と、
C:上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、
D:上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と、
E:上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、上記第1の折片の幅より短い幅となる第2の折片とを有するように折り畳まれ、
F:積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、
G:各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせること
H:を特徴とするシート状物の積層体。

(2)適否の検討
ア 構成要件BないしE(シート状物)について
本件訂正発明の構成要件BないしE(シート状物)についての具体的な構成は、上記第2の2で摘記した本件特許明細書(段落【0009】を除き訂正されていない。)の段落【0014】、【0016】ないし【0021】に記載されている。
以下にくわしく述べる。
(ア)段落【0016】に「シート状物10は、長辺10a、10b、及び短辺10c、10dとによって形成される略矩形の布帛からなり、例えば、天然繊維又は合成繊維が織布、不織布、編布に形成された布帛を用いる。」と記載されていることから、シート状物は、長辺及び短辺とによって形成される略矩形であり、また、天然繊維又は合成繊維が織布、不織布、編布に形成された布帛からなることが理解できる。
(イ)段落【0014】に「図1に示すように、シート状物10は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片11と、積層方向下側に折られ、第1の中間片11の略1/2の幅に第1の中間片11に隣接して形成された第2の中間片12と、第2の中間片12から積層方向下側に折り返され第2の中間片12と略同じ幅に形成された第1の折片13と、第1の中間片11から積層方向上側に折り返され第1の中間片11の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する第2の折片14とから構成されている。」、段落【0016】に「シート状物10は、図1に示すように、シート状物10の一方の短辺10cから長さ方向にかけて、第2の折片14、第1の中間片11、第2の中間片12、第1の折片13が順に設けられている。」と記載されていることから、シート状物は、シート状物の一方の短辺から長さ方向にかけて、第2の折片、第1の中間片、第2の中間片、第1の折片が順に設けられ、また、シート状物は、積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と、積層方向下側に折られ、第1の中間片の略1/2の幅に第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、第2の中間片から積層方向下側に折り返され第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と、第1の中間片11から積層方向上側に折り返された第2の折片14とから構成されていることが理解できる。
(ウ)段落【0017】ないし【0021】には、各片についてより詳しい説明が記載されているから、当該記載から第1の中間片、第2の中間片、第1の折片、第2の折片のそれぞれの構成が理解できる。特に段落【0017】の「第1の中間片11は、図1に示すように、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、シート状物10の幅方向に平行な第1の折れ線15及び第3の折れ線17とによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第1の中間片11の長さにあたる部分、つまり第1の折れ線15と第3の折れ線17との距離Aは、その長さが最終的に形成されるシート状物積層体1の幅と略同一となる長さである。」及び段落【0020】の「第2の折片14は、第1の中間片11と隣接し、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、第3の折れ線17と短辺10cとによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第2の折片14の長さにあたる部分、つまり第3の折れ線17と短辺10cとの距離Dは、D<Cの関係を有する。つまり、距離Dは、距離Aの半分より小さい値である。」との記載からは、第1の中間片のシート状物の長辺側の長さ(第1の折れ線15と第3の折れ線17との距離A)は、シート状物積層体の幅と略同一となる長さであり、また、第2の折片のシート状物の長辺側の長さ(第3の折れ線17と短辺10cとの距離D)は、第1の中間片のシート状物の長辺側の長さ(距離A)の半分より小さい値であることが理解できる。加えて、段落【0018】及び【0019】の記載を踏まえると、第2の折片の長さは、第1の中間片の長さの略1/2(半分)である第1の折片の長さより小さい値であることが理解できる。
(エ)段落【0021】に「以上のような部分から構成されるシート状物10は、図2及び図3(A)に示すように、各折れ線15、16、17において折り返される。つまり、シート状物10は、第1の折れ線15において積層方向とは反対方向(-z方向)に折り返し第1の中間片11及び第2の中間片12を形成し、第2の折れ線16において積層方向とは反対方向(-z方向)に折り返し第1の折片13を形成し、第3の折れ線17において積層方向(z方向)に折り返し第2の折片14を形成する。」と記載されているから、シート状物は、第1の折れ線において積層方向とは反対方向に折り返し第1の中間片及び第2の中間片を形成し、第2の折れ線において積層方向とは反対方向に折り返し第1の折片を形成し、第3の折れ線17において積層方向に折り返し第2の折片を形成することが理解できる。
イ 構成要件F及びG(積層)について
本件訂正発明の構成要件F及びG(積層)についての具体的な構成は、上記第2の2で摘記した本件特許明細書の段落【0022】ないし【0025】に記載されている。
すなわち、段落【0022】ないし【0025】の記載から、シート状物積層体は、偶数番目に積層されるシート状物10Rと奇数番目に積層されるシート状物10Lとが、互いに交差掛けされるものであって、各シート状物10Rの第1の中間片及び第2の中間片によってできる谷部に、各シート状物10Rの次に積層されるシート状物10Lの第1の中間片及び第2の折片によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとし、各シート状物10Lの第1の中間片及び第2の中間片によってできる谷部に、各シート状物10Lの次に積層されるシート状物10Rの第1の中間片及び第2の折片によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとして積層体を形成することが理解できる。
ウ 構成要件A及びH(積層体)について
段落【0001】に「本発明は、シート状物の積層体に関し、特に、湿式のウェットティッシュの折りたたまれた状態で、このウェットティッシュを連続して取り出せるように積層したシート状物の積層体に関する。」、段落【0002】に「ウェットティッシュは、様々な形に折り畳まれ、複数枚が積層され、一のウェットティッシュを持ち上げると、その下に積層されたウェットティッシュも持ち上がり、連続して取り出せるように積層した、いわゆるポップアップ式の積層体を形成している。」と記載されており、シート状物の構成については上記アで説示したとおりであり、シート状物の積層については上記イで説示したとおりであり、また、段落【0016】に「シート状物10は、・・・スパンレース不織布が最も好ましく用いられる。」と記載されているから、本件訂正発明の構成要件A及びH(積層体)についても理解できるといえる。
エ 以上のとおりであるから、本件訂正発明は、本件特許明細書に実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。

(3)請求人の主張について
請求人は、本件発明は「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」(構成E2)機能を有する物として「第2の折片」を特定するものであるところ、上記構成E2は、第1の解釈として、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」主体が「第2の折片」であるという意味に解釈することができるが、発明の詳細な説明の記載に従って得られる「第2の折片」は、天然繊維又は合成繊維により形成された布帛からなるシート状物の一部であるため、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」主体とはなり得ず、また、上記構成E2は、第2の解釈として、構成E2は「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整」される際の道具として用いられる物として「第2の折片」を特定するものであると捉えることも可能であるが、発明の詳細な説明の記載に従って得られる「第2の折片」は、「第1の中間片」の幅の調整中には存在せず、調整の完了後に初めて形成される物なのであって、調整中に存在しない物を、調整の際の道具として用いることは不可能であるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が上記第1の解釈及び第2の解釈に基づく本件訂正発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない旨主張する。

しかしながら、上記(2)で説示したとおり、本件訂正発明は、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」(構成E2)「第2の折片」を含め、本件特許明細書に実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、請求人の主張は採用することができない。
なお、本件訂正発明の構成要件Eは、後記3で説示するとおり明確である。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明は、本件特許明細書に実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)を満たしている。

3 無効理由4(明確性要件違反)の検討
請求人は、本件発明の発明特定事項である「上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2以下となる第2の折片とを有するように折り畳まれ」(構成要件E)について、「第2の折片」が「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」との製造方法によって特定されているから、生産物である「第2の折片」が不明確であるから、本件発明は明確性要件違反として無効である旨主張する。

しかしながら、本件訂正発明は、以下のとおり明確である。
構成要件Eに係る記載から、「第2の折片」は「第1の中間片から積層方向上側に折り返され」るものであること、及び「第2の折片」の幅が「第1の中間片の幅の1/2未満」(訂正前は「第1の中間片の幅の1/2以下」)であることが明らかである。
また、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」とは、その文言から、第1の中間片の幅を積層体の幅寸法と整合(同じに)させることを意味すると解される。
ところで、「第2の中間片」は「第1の中間片の略1/2の幅」であり(構成要件C)、「第1の折片」は「第2の中間片と略同じ幅」であり(構成要件D)、上記したように「第2の折片」は「第1の中間片の幅の1/2未満」であるから、「第1の中間片」の「幅」が決まれば、「第2の中間片」、「第1の折片」、「第2の折片」のそれぞれの「幅」も決まるものであって、それら4つの片からなるシート状物が積層された積層体の幅も決まると理解できる。また、本件発明においては、「第1の中間片」、「第2の中間片」、「第1の折片」、「第2の折片」のそれぞれの「幅」の関係は特定されているが、4つの片からなるシート状物の大きさ(幅)が特定されてはいない。さらに、本件特許明細書の段落【0011】の「出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず」、及び段落【0026】の「以上のように構成されたシート状物積層体1は、従来の積層構造においてはない第2の折片14を有することで、従来と変わらない積層体の幅としても、第2の折片14の面積分だけ従来よりもサイズの大きいシート状物10を積層させることができる。・・・そのため、積層されるシート状物の大きさを変更したとしても、シート状物積層体の製造装置の設計変更のみで、出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず」との記載を参酌すると、積層体の大きさ(幅)は、積層体を包装する包装体の大きさ(幅)とほぼ同じであると解される。
そうすると、「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」とは、「第1の中間片」の「幅」を包装体の大きさ(幅)を考慮して所望の幅寸法とすることであるといえる。そして、「第2の折片」の「幅」は「第1の中間片の幅の1/2未満」であるから、「第1の中間片」の「幅」が特定されれば「第2の折片」の「幅」も特定できるといえる。なお、「第2の折片」の「幅」は「第1の中間片」の「幅」に対して一通りでなくある範囲を有するとしても、本件発明ではシート状物の大きさ(幅)が特定されていないから、「第1の中間片」(積層体)の幅寸法が変わらず、「第2の折片」の「幅」が変わればシート状物の大きさ(幅)が変わるものであることが理解できる。

よって、本件訂正発明は明確である。

4 無効理由2(甲第1号証を主引例とする進歩性欠如)の検討
(1)本件訂正発明と甲1発明との対比
ア 本件訂正発明と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)甲1発明の「腰折ウェットテシュー11,12」は、本件訂正発明の「シート状物」に相当する。
(イ)甲1発明の「複数枚の右向きの腰折ウェットテシュー11と複数枚の左向きの腰折ウェットテシュー12とから成り、各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aと、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12bと各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11aとを相の手に組んで多重ねにし、各腰折ウェットテシュー11,12を順次連続して取出し得るようにした多重腰折ウェットテシュー」は、本件訂正発明の「折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体」に相当する。
(ウ)甲1発明の「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の二の長さの、折線S1及び折線S3に挟まれた上部中間片」は、本件訂正発明の「所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片」に相当する。
(エ)甲1発明の「上部中間片と折線S1を介して下側に折り返されて接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さの、折線S1及び折線S2に挟まれた下部中間片」は、本件訂正発明の「上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片」に相当する。
(オ)甲1発明の「下部中間片と折線S2を介して下側に折り返されて接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さの折り返し片11e,12e」は、本件訂正発明の「上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片」に相当する。
(カ)甲1発明の「上部中間片と折線S3を介して上側に折り返されて接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さ、又は腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さの折り返し片11f,12f」と、本件訂正発明の「上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、上記第1の折片の幅より短い幅となる第2の折片」とは、「上記第1の中間片から積層方向上側に折り返される第2の折片」である点で共通する。
(キ)甲1発明の「複数枚の右向きの腰折ウェットテシュー11と複数枚の左向きの腰折ウェットテシュー12とから成り、各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aと、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12bと各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11aとを相の手に組んで多重ねにし」、「右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは左右対称となるように折り畳まれて」いることは、右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは交互に、すなわち一方が奇数番目に他方が偶数番目に積層されたものであるから、本件訂正発明の「積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され」たことに相当する。
(ク)甲1発明の「各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11bの内面に各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12aの内面が重なり、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12bの内面に各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11aの内面が重なるよう積層されている」ことは、上記(イ)ないし(オ)の各片の構成、及び上記(カ)の積層状態を踏まえると、本件訂正発明の「各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせること」に相当する。

イ したがって、両者は、次のとおり一致し相違する。

(一致点)
「折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において、
上記シート状物の各々は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と、
上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、
上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と、
上記第1の中間片から積層方向上側に折り返される第2の折片とを有するように折り畳まれ、
積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、
各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせた、
シート状物の積層体。」

(相違点1)
第2の折片の幅について、
本件訂正発明は、「上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、上記第1の折片の幅より短い幅となる」のに対し、
甲1発明は、「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さ、又は腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さ」である点。

(相違点2)
シート状物について、
本件訂正発明は、「スパンレース不織布」からなるのに対し、
甲1発明は、「ウェットテシュー」である点。

(2)相違点1に係る判断
ア 幅寸法の範囲について
(ア)甲1発明において、「上部中間片」は「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の二の長さ」であり、「折り返し片11f,12f」は「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の一の長さ」であるから、「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は、「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2である。
(イ)甲1発明において、「腰折ウェットテシュー11,12」の幅は「上部中間片」の幅と同等であって、「上部中間片」は「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略五分の二の長さ」であるから、「腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さ」とは、「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は、「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2より小さい値であると解される。
(ウ)上記(ア)及び(イ)のとおり、甲1発明の「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は、「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2か、それより小さい値であるから、甲1発明は本件訂正発明の「第2の折片」の幅が「上記第1の中間片の幅の1/2未満」となる点で差異はない。また、甲1発明の「略五分の一の長さの折り返し片11e,12e」(第1の折片)は「略五分の二の長さの」「上部中間片」(第1の中間片)の1/2の長さ(幅)であるから、甲1発明の「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は、「折り返し片11e,12e」(第1の折片)の長さ(幅)より短いともいえるので、甲1発明は本件訂正発明の「第2の折片」の幅が「上記第1の折片の幅より短い幅となる」点で差異はない。
イ 調整することについて
(ア)本件特許明細書(上記第2の2参照。訂正後も段落【0009】を除き変更無し。)には、「本発明は、上述の問題点に鑑みて、包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供する・・・ことを目的とする。」(段落【0008】)、「本発明は、従来の積層構造にはない第2の折片が設けられているので、その第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができる。そのため、出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず、さらには、製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず、在庫スペースの変更も必要が無くなる。」(段落【0011】)、「以上のように構成されたシート状物積層体1は、従来の積層構造においてはない第2の折片14を有することで、従来と変わらない積層体の幅としても、第2の折片14の面積分だけ従来よりもサイズの大きいシート状物10を積層させることができる。具体的には、シート状物10は、従来使用されるシート状物の大きさと比較して、第2の折片14の面積分、つまり上述のD<Cの関係を有する範囲内で大きさを変更することができ、約25%まで大きいサイズのシート状物を使用することができる。そのため、積層されるシート状物の大きさを変更したとしても、シート状物積層体の製造装置の設計変更のみで、出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず、さらには、製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず、在庫スペースの変更も必要が無くなる。」(段落【0026】)と記載されている。
(イ)甲第1号証(上記1(1)を参照。)には、「ウエットテシュー長の略二分の一の腰折巾を有する多重腰折ウエットテシュー4の縮小化と、これを収容する容器3の小形化が要望されている。」(段落【0006】)、「この発明によれば、・・・各腰折ウェットテシュー間における上記相の手組部の寸法(重畳巾の寸法)をウェットテシュー長の略五分の一に縮小でき、この結果、上位の腰折ウェットテシューの上部短巾重畳端を摘持して引き出したときの容器の取出口から誘出される下位の腰折ウェットテシューの誘出寸法を上部短巾重畳端の重畳巾に短縮できる。」(段落【0008】)、「上記多重腰折ウエットテシュー14はウエットテシュー長の略五分の二の腰折巾Wに形成され、従来の如き多重腰折ウエットテシューに比べ、その腰折巾が縮小される。従って、容器の巾と従来の腰折巾がウエットテシューの略二分の一であるのに対し、この発明では同五分の二の巾に縮小できる。」(段落【0027】)と記載されている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)より、本件訂正発明と甲1発明とは、「第2の折片」を設けることにより積層体の大きさ(幅)を変えずにシートの大きさ(幅)を大きくできる(言い換えると、シートの大きさを変えずに積層体の大きさを小さくできる)点で共通している。
(エ)そして、甲1発明において、「第2の折片」の幅を変えることは、結果としてシートの幅と積層体の幅を変えることになるので、「第2の折片」の幅は「第1の中間片」の幅を所望とする積層体の幅寸法となるように調整していると解することができる。
(オ)そうすると、甲1発明は本件訂正発明の「第2の折片」の幅を「第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する」点で差異はない。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正発明と甲1発明とは、「第2の折片」に関して構造上差異が無く、上記相違点1は、文言上は相違するとしても、実質的な差異ではない。

(3)相違点2に係る判断
甲第21号証には、上記1(10)で摘記したように、ウエットティッシュペーパ、ウエットな不織布などが折り畳まれた状態で、順番に取出し自在に積層されたシート積層体に関して、シート折り畳み体を構成するシートをスパンレースなどの不織布からなるものとすることが記載されていると認められる。
そして、甲1発明は、ウェットテシューに関するものであり、その材質を具体的にどのようなものとするかは当業者が適宜に選択し得るものであるから、甲1発明のウェットテシューのシートとして、甲第21号証に記載のスパンレースの不織布を採用して、本件訂正発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。

(4)被請求人の主張について
ア 折片の構成について
(ア)被請求人は、本件訂正発明では、従来の積層構造にはない第2の折片が設けられているので、その第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、第2の折片により第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整することで、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができるため、出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず、さらには、製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず、在庫スペースの変更も必要が無くなるのに対して、甲1発明では、ウェットテシュー長を5等分して各折片や中間片を形成しているため、「折り返し片11f,12f」は必然的にウェットテシュー長の略五分の一の幅となる、すなわち、甲1発明では、どのような長さのシート状物であっても5等分して各折片や中間片を形成しているため、「折り返し片11f,12f」は、第1の中間片に相当する幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する機能を有するものではないので、本件発明の「第2の折片」は、甲1発明で開示される「折り返し片11f,12f」とは全くその目的及び構成を異にするので、甲1発明と同一性はなく、新規性を有することは明らかである旨を主張する。

しかしながら、上記(2)で検討したとおり、甲1発明の「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の幅は「上部中間片」(第1の中間片)の幅を所望とする積層体の幅寸法となるように調整していると解することができ、本件訂正発明と甲1発明との相違点1は実質的なものではないから、被請求人の主張は採用することができない。

(イ)また、被請求人は甲1発明の課題・目的は、多重腰折ウエットテシュー4の縮小化と、これを収容する容器3の小形化である(甲第1号証【0006】)から、「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2より小さい値としてしまうと、甲1発明の課題・目的である多重腰折ウエットテシュー4の縮小化と、これを収容する容器3の小形化を実現することはできない、なぜなら、最も多重腰折ウエットテシュー4を縮小化と小形化するには、「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2となる時だからであるので、「1/2より小さい値」は甲第1号証の記載からは想定や想到はできない、よって、甲1発明の「腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さ」とは、「「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2より小さい値」と解すことはできず、「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)は「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2」と解すことが妥当である旨を主張する。

しかしながら、「腰折ウェットテシュー11,12の幅方向の中心線Yを越えず且つこれに接近した長さ」とは、その文言上から、中心線Yまで届かない長さ、すなわち短い長さを意味することは明らかであるから、甲1発明は、「折り返し片11f,12f」(第2の折片)の長さ(幅)が「上部中間片」(第1の中間片)の長さ(幅)の1/2であることを含むとしても、それのみに限定されていると解することはできない。また、本件訂正発明も「第1の中間片の幅の1/2未満」と特定していることから、「第1の中間片の幅の1/2」に近い幅のものを排除はしていない。よって、被請求人の主張は採用することができない。

イ スパンレース不織布であることについて
被請求人は、甲21号証では、シートは、パルプから抄紙されてバインダーが含まれた非水解性の紙でもよいし、再生セルロース繊維、または再生セルロース繊維と合成樹脂繊維とで形成されたスパンレースなどの不織布でもよいし、レーヨンやパルプなどの繊維から抄紙された紙、不織布で、水解性または水膨潤性のCMCなどのバインダーが含まれているものでもよいし、繊維長が10mm以下または7mm以下のレーヨンなどを用いウォータジェットで繊維を交絡させた不織布で、多量の水が与えられたときに10mm以下の短い繊維の交絡がほぐれて水解するものでもよいし、繊維長が10mm以下または7mm以下のレーヨンなどを用いウォータジェットで繊維を交絡させた不織布で、多量の水が与えられたときに10mm以下の短い繊維の交絡がほぐれて水解するものでもよいし、レーヨンやパルプにフィブリル化レーヨンが含まれ、前記フィブリル化レーヨンをバインダーとして機能させた紙または不織布などでもよいということを単に列挙しているにすぎず、本件訂正発明のように、スパンレース不織布が特に優れていることの理由付けは記載されていないから、甲第21号証の記載からあえてスパンレース不織布を選択することの動機づけは得られず、本件訂正発明は甲1号証及び甲第21号証に係る発明に対して進歩性を有するものである旨を主張する。

しかしながら、甲第21号証には、シートとして、スパンレース不織布を含む種々の材質のものが列挙されているから、それら列挙されているものはシートの材質として当該文献の出願時において周知であって、その採用を試みることも当業者にとって容易であったことが伺える。そうすると、上記(3)で検討したとおり、甲1発明のウェットテシューのシートとして、甲第21号証に記載のスパンレースの不織布を採用することは、当業者にとって容易に想到し得たことであるといえる。よって、被請求人の主張は採用することができない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第21号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5 無効理由3(甲第2号証を主引例とする進歩性欠如)の検討
(1)本件訂正発明と甲2発明との対比
ア 本件訂正発明と甲2発明とを対比すると、以下のとおりである。
(ア)甲2発明の「腰折ウェットテシュー11,12」は、本件訂正発明の「シート状物」に相当する。
(イ)甲2発明の「複数枚の右向きの腰折ウェットテシュー11と複数枚の左向きの腰折ウェットテシュー12とから成り、各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11aと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12bと、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12aと各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11bとを相の手に組んで多重ねにし、各腰折ウェットテシュー11,12を順次連続して取出し得るようにした多重腰折ウェットテシュー」は、本件訂正発明の「折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体」に相当する。
(ウ)甲2発明の「腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略二分の一の長さの上部折片11b,12b」は、本件訂正発明の「所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片」に相当する。
(エ)甲2発明の「上部折片11b,12bと折線S1を介して下側に折り返して接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略四分の一の長さの、折線S1及び折線S2に挟まれた下部中間片」は、本件訂正発明の「上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片」に相当する。
(オ)甲2発明の「下部中間片と折線S2を介して下側に折り返して接続され、腰折ウェットテシュー11,12の展開長の略四分の一の長さの折り返し片11d,12d」は、本件訂正発明の「上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片」に相当する。
(カ)甲2発明の「複数枚の右向きの腰折ウェットテシュー11と複数枚の左向きの腰折ウェットテシュー12とから成り、各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11aと各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12bと、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12aと各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11bとを相の手に組んで多重ねにし」、「右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは左右対称となるように折り畳まれて」いることは、右向き腰折ウェットテシュー11と左向き腰折ウェットテシュー12とは交互に、すなわち一方が奇数番目に他方が偶数番目に積層されるものであるから、本件訂正発明の「積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され」たことに相当する。
(キ)甲2発明の「各右向き腰折ウェットテシュー11の下部折片11aの内面に各左向き腰折ウェットテシュー12の上部折片12bの内面が重なり、各左向き腰折ウェットテシュー12の下部折片12aの内面に各右向き腰折ウェットテシュー11の上部折片11bの内面が重なるよう積層されている」ことと、本件訂正発明の「各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせること」とは、上記(イ)ないし(オ)の各片の構成、及び上記(カ)の積層状態を踏まえると、「各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片を重ね合わせること」で共通する。

イ したがって、両者は、次のとおり一致し相違する。

(一致点)
「折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において、
上記シート状物の各々は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と、
上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、
上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片とを有するように折り畳まれ、
積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、
各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片を重ね合わせた、
シート状物の積層体。」

(相違点A)
本件訂正発明は、「上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2以下となる第2の折片とを有するように折り畳まれ」、「上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせる」のに対し、
甲2発明は、第2の折片を備えていない点。

(相違点B)
シート状物について、
本件訂正発明は、「スパンレース不織布」からなるのに対し、
甲2発明は、「ウェットテシュー」である点。

(2)相違点Aに係る判断
ア 甲2発明の課題について
甲2発明は、甲第2号証(上記1(2)参照。)に「この発明は多重腰折ウェットテシューにおける各腰折ウェットテシューの上部折片の誘出量を可及的に短縮すると共に、各腰折ウェットテシュー間の相の手組部が多重腰折ウェットテシューの局部に集中しないようにし、更には容器の取出口から引き出された腰折ウェットテシューに下位の腰折ウェットテシュー全体又は上部折片全体が友連れされて引き出される問題を解消した多重腰折ウェットテシューの連続取出し構造を提供するものである。」(段落【0012】)、「この発明によれば各腰折ウェットテシューの下部折片の遊離端側を折り返して上記短巾重畳端を形成して多重ねを行なっているので、各腰折ウェットテシュー間における下部折片と上部折片の相の手組部の寸法を腰折ウェットテシューの展開長の略四分の一に縮小でき、この結果、上位の腰折ウェットテシューの上部折片を引き出した時の下部折片の相の手組部における摩擦係合によって容器の取出口から誘出される下位腰折ウェットテシューの上部折片の寸法は最大上記略四分の一の寸法に短縮できる。」(段落【0014】)、「この発明は各上位の腰折ウェットテシューの上部折片の遊離端を、容器に設けた取出口より連続的に取出すための手段としたものであり、各上位腰折ウェットテシューの下部折片の上記短巾重畳端と各下位腰折ウェットテシューの上部接片とによる相の手組部の寸法を腰折ウェットテシューの展開長の略四分の一に縮小でき、この結果、相の手組部における摩擦係合によって容器の取出口から誘出される各腰折ウェットテシューの上部折片の寸法は最大上記略四分の一の寸法に短縮できる。・・・又この発明によれば上記相の手組部の寸法を縮小しながら、同相の手組部を多重腰折ウェットテシューの左側と右側に略均等に按分することができるので、多重腰折ウェットテシューの局部を嵩高にし商品性を損なったり、積上げ時に転倒する問題も併せて解消できる。」(段落【0037】【0040】)と記載されているように、各腰折ウェットテシューの上部折片の誘出量を可及的に短縮すると共に、各腰折ウェットテシュー間の相の手組部が多重腰折ウェットテシューの局部に集中しないようにし、また、折片を腰折ウェットテシューの展開長の略四分の一に縮小できることを課題とするものであって、甲第2号証には、第1の中間片から積層方向上側に折り返される第2の折片を備えることは何ら記載も示唆もされておらず、そのような構成を備えることの動機付けがあるとはいえない。
イ 第2の折片を設けることについて
(ア)甲第3号証には、上記1(3)で述べたように、甲3発明が記載されていると認められるが、甲3発明は「ペーパータオル」であるから甲2発明の「ウェットテシュー」とは異なるものであり、また、甲3発明において「端縁部に小幅な折返片を設けた」のは、「使用者が手を拭くために濡れた手で端部14を摘み下方へ引張つてタオル片13を引き出そうとすると、摘んだ部分が濡れて破れる為に、タオル片13を確実に引き出せない場合があるという問題点があつた。」ので「タオル片の破損を未然に防止し、前記従来の問題点を解決」するものであるから(上記1(3)イ(ア)参照。)、当業者が甲3発明に接したとしても甲2発明に第2の折片を備えることを着想し得たとはいえない。
(イ)甲第9号証(上記1(7)参照。)、甲第10号証(上記1(8)参照。)に記載されているように、ペーパータオルやティッシュにおいて、指で挟んで取り出すときに端が切れてしまうとの課題があったとしても、甲2発明に第2の折片を備えることを直ちに着想し得るものではない。
(ウ)甲第1号証には、上記1(1)で述べたように、甲1発明が記載されていると認められるが、甲1発明は、甲2発明に第2の折片を備えたものであって、甲2発明を改良したものといえるので、それらを組み合わせる意味や必要性はない。
(エ)甲第11号証(上記1(9)参照。)には「容器の頂面の面積より、広い面の紙を収納すること」が記載されているが、本件発明のように「第1の中間片から積層方向上側に折り返され」る「第2の折片」を有するように折り畳むことについては何ら記載されていないから、甲2発明に第2の折片を備えることを着想し得るものではない。
ウ まとめ
以上のとおりであるから、甲2発明に甲3発明及び周知技術(甲第1、9、10、11号証)を適用して、本件訂正発明の相違点Aに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正発明は、相違点Aに係る構成とすることが当業者にとって容易に想到し得たものではないから、甲2発明、甲3発明、及び周知技術(甲第1、9、10、11号証)に基いて、当業者が容易に発明できたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、上記第5の2、3、5において検討したとおり、請求人の主張する無効理由1、3、4には無効とする理由がないが、上記第5の4において検討したとおり、本件訂正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるので、本件訂正発明に係る特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シート状物の積層体
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状物の積層体に関し、特に、湿式のウェットティッシュの折りたたまれた状態で、このウェットティッシュを連続して取り出せるように積層したシート状物の積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アルコール、保湿剤、界面活性剤等を含む薬液を紙、織布又は不織布の繊維素材に含浸させたウェットティッシュは、気密性や液密性を有する包装体に収容される。ウェットティッシュは、皮膚の汚れ拭き取り、化粧落とし、幼児のお尻拭き、トイレの清掃等、様々な用途に用いられている。この種の包装体は、包装体の一箇所に開閉蓋を有する取出口が設けられ、この取出口から内部に収容されたウェットティッシュを取出すことができる。また、このウェットティッシュは、様々な形に折り畳まれ、複数枚が積層され、一のウェットティッシュを持ち上げると、その下に積層されたウェットティッシュも持ち上がり、連続して取り出せるように積層した、いわゆるポップアップ式の積層体を形成している。
【0003】
図4(A)に示すように、従来のウェットティッシュの積層体100は、複数のウェットティッシュ101が折り畳まれ、積層されたものである。詳述すると、ウェットティッシュ101は、折れ線102において折られて形成される上部折片103と下部折片104と、下部折片104の遊離端側を折れ線102で折られた方向とは逆の方向に折り返して短巾の重畳端105を形成している。また、上述のように折られたウェットティッシュ101は、折れ線102において折られる方向によって、右向き腰折りウェットティッシュ101Rと左向き腰折りウェットティッシュ101Lとに分けられる。ウェットティッシュの積層体100は、各右向き腰折りウェットティッシュ101Rの短巾重畳端105を各左向き腰折りウェットティッシュ101Lの上部折片103の遊離端側と相の手に組み、各左向き腰折りウェットティッシュ101Lの短巾重畳端105を各右向き腰折りウェットティッシュ101Rの上部折片103の遊離端側と相の手に組むことにより形成される。また、ウェットティッシュの積層体100は、ウェットティッシュ101の短巾重畳端105が左半部側と右半部側とに按分される構成を有している(特許文献1参照。)。
【0004】
ところで、多用途に用いられるウェットティッシュは、1枚のウェットティッシュの大きさが大きいものが望まれている。
【0005】
しかしながら、大きさが従来より大きいサイズのウェットティッシュを使用し、従来からの折り畳み構造を有する積層体を製造すると、必然的に出来上がる積層体の幅は従来のものより大きくなり包装体の大きさを変更しなければならず、ウェットティッシュの積層体の製造装置の設計変更に加え、包装体の製造装置の設計変更もしなければならない。また、包装体の大きさを変更すると、製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさも変更しなければならず、在庫スペースの変更も生じ、ウェットティッシュ1枚の大きさの変更で、規格変更をしなければならない箇所が多数でてくる。
【0006】
また、特許文献1に示す取り出し構造では、出来上がった積層体は、図4(B)に示すように、確かに、断面が略矩形状になっている。しかしながら、この積層体を内包した包装体を商品として陳列する場合に用いられる積み重ね陳列は、断面が略矩形状のため、一見して安定感があるようであるが、出来上がる商品は運搬時等の影響を受けて安定が悪いものとなることもあった。
【0007】
【特許文献1】特許第2951187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、上述の問題点に鑑みて、包装体の大きさが従来と変わらない大きさでありながら、より大きなサイズのシート状物を積層できる構造を提供するとともに、包装体同士を積み重ねた際の安定感のあるシート状物の積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るシート状物の積層体は、折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において、上記シート状物はスパンレース不織布からなり、上記シート状物の各々は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と、上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と、上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、上記第1の折片の幅より短い幅となる第2の折片とを有するように折り畳まれる。そして、積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、従来の積層構造にはない第2の折片が設けられているので、その第2の折片の面積分だけ従来と比較して大きいサイズのシート状物であっても、従来と変わらないサイズの積層体を形成することができる。そのため、出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず、さらには、製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず、在庫スペースの変更も必要が無くなる。
【0012】
また、本発明は、各偶数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとし、同様に、各奇数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各偶数番目のシート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとしている。そのため、形成されるシート状物積層体自体は、各シート状物の上記第1の折れ線及び上記第3の折れ線近傍において、第2の折片が設けられた大きさ分だけ、肉厚部分が形成され、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るシート状物積層体の最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るシート状物積層体のシート状物10の展開図を示す。図1に示すように、シート状物10は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片11と、積層方向下側に折られ、第1の中間片11の略1/2の幅に第1の中間片11に隣接して形成された第2の中間片12と、第2の中間片12から積層方向下側に折り返され第2の中間片12と略同じ幅に形成された第1の折片13と、第1の中間片11から積層方向上側に折り返され第1の中間片11の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整する第2の折片14とから構成されている。また、図2に示すように、シート状物10は折られ、各シート状物10が折り重ねられ、シート状物積層体1を形成している。
【0015】
なお、説明上、本発明においては、図2に示すx軸方向、つまりシート状物10の長辺と平行する方向をシート状物10の長さ方向、図2に示すy軸方向、つまりシート状物10の長辺と直交する方向をシート状物10の幅方向、図2に示すz軸方向、つまり各シート状物10が折り重ねられ形成されるシート状物積層体1の積層される方向を各シート状物10が積層される積層方向と称する。
【0016】
シート状物10は、長辺10a、10b、及び短辺10c、10dとによって形成される略矩形の布帛からなり、例えば、天然繊維又は合成繊維が織布、不織布、編布に形成された布帛を用いる。この中でも汎用性やコスト等から不織布からなる布帛が最も好ましく用いられる。具体的に、天然繊維としては、例えば綿、絹、麻、ウール、パルプなどが挙げられ、合成繊維としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ナイロン、ビニロン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、レーヨン等が挙げられる。また、これら天然繊維と合成繊維とを混合させた布帛を用いることができる。本発明においては、合成繊維からなる不織布、特に、合成繊維に高圧ウォータージェット流(繊維を交絡させるための水)を施し、繊維を交絡させて、乾燥状態では使用に耐え得る十分な強度を有するとともに、液体による湿潤状態ではウェブ形状を保持し、極めて容易且つ速やかな吸水性を有するスパンレース不織布が最も好ましく用いられる。また、シート状物10は、図1に示すように、シート状物10の一方の短辺10cから長さ方向にかけて、第2の折片14、第1の中間片11、第2の中間片12、第1の折片13が順に設けられている。
【0017】
第1の中間片11は、図1に示すように、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、シート状物10の幅方向に平行な第1の折れ線15及び第3の折れ線17とによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第1の中間片11の長さにあたる部分、つまり第1の折れ線15と第3の折れ線17との距離Aは、その長さが最終的に形成されるシート状物積層体1の幅と略同一となる長さである。
【0018】
第2の中間片12は、第1の中間片11と隣接し、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、シート状物10の幅方向に平行な第1の折れ線15及び第2の折れ線16とによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第2の中間片12の長さにあたる部分、つまり第1の折れ線15と第2の折れ線との距離Bは、第1の中間片11の長さ11aの略1/2の長さである。
【0019】
第1の折片13は、第2の中間片12と隣接し、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、第2の折れ線16と、短辺10dとによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第1の折片13の長さにあたる部分、つまり第2の折れ線16と短辺10dとの距離Cは、距離Bと略同一の長さである。
【0020】
第2の折片14は、第1の中間片11と隣接し、シート状物10の長さ方向に平行な長辺10a、10bと、第3の折れ線17と短辺10cとによって囲まれる部分である。シート状物10の長辺10a、10bの第2の折片14の長さにあたる部分、つまり第3の折れ線17と短辺10cとの距離Dは、D<Cの関係を有する。つまり、距離Dは、距離Aの半分より小さい値である。
【0021】
以上のような部分から構成されるシート状物10は、図2及び図3(A)に示すように、各折れ線15、16、17において折り返される。つまり、シート状物10は、第1の折れ線15において積層方向とは反対方向(-z方向)に折り返し第1の中間片11及び第2の中間片12を形成し、第2の折れ線16において積層方向とは反対方向(-z方向)に折り返し第1の折片13を形成し、第3の折れ線17において積層方向(z方向)に折り返し第2の折片14を形成する。
【0022】
次に、シート状物積層体1の積層構造について、図2、図3(A)及び図3(B)を用いて説明する。
【0023】
シート状物積層体1は、シート状物10が所定の位置において交差掛けされる。つまり、シート状物積層体1は、偶数番目に積層されるシート状物10Rと奇数番目に積層されるシート状物10Lとが、互いに交差掛けされる。
【0024】
なお、便宜上、シート状物10の第1の中間片11に対し、第2の中間片12及び第1の折片13が図2中の右側に設けられるシート状物をシート状物10Rとし、シート状物10の第1の中間片11に対し、第2の中間片12及び第1の折片13が図2中の左側に設けられるシート状物をシート状物10Lと称する。また、本説明におけるシート状物10Rとシート状物10Lとは、シート状物10を短辺10c(y軸と平行する方向)に対して対称になるように折り返されたものであり、上述したシート状物10と同様の構成を有する。また、シート状物10Rは、図2及び図3(A)に示す偶数番目に積層されるシート状物であり、シート状物10Lは、図2及び図3(A)に示す奇数番目に積層されるシート状物である。
【0025】
具体的には、シート状物積層体1は、各シート状物10Rの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に、各シート状物10Rの次に積層されるシート状物10Lの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとし、各シート状物10Lの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に、各シート状物10Lの次に積層されるシート状物10Rの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとして積層体を形成する。
【0026】
以上のように構成されたシート状物積層体1は、従来の積層構造においてはない第2の折片14を有することで、従来と変わらない積層体の幅としても、第2の折片14の面積分だけ従来よりもサイズの大きいシート状物10を積層させることができる。具体的には、シート状物10は、従来使用されるシート状物の大きさと比較して、第2の折片14の面積分、つまり上述のD<Cの関係を有する範囲内で大きさを変更することができ、約25%まで大きいサイズのシート状物を使用することができる。そのため、積層されるシート状物の大きさを変更したとしても、シート状物積層体の製造装置の設計変更のみで、出来上がる積層体を包装する包装体の製造装置の設計変更を要せず、さらには、製品出荷時に用いられる段ボール等の大きさの変更も要せず、在庫スペースの変更も必要が無くなる。
【0027】
また、シート状物積層体1は、各シート状物10Rの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に、各シート状物10Rの次に積層されるシート状物10Lの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとし、各シート状物10Lの第1の中間片11及び第2の中間片12によってできる谷部に、各シート状物10Lの次に積層されるシート状物10Rの第1の中間片11及び第2の折片14によってできる山部を重ね合わせて交差掛けとする。そのため、形成されるシート状物積層体1自体は、図3(B)に示すように、嵩高状態が第1の折れ線15及び第3の折れ線17近傍、つまりシート状物積層体1の端部近傍において、第2の折片14の大きさ分だけ積層体の嵩が高くなっている。つまり、シート状物積層体1は、第2の折片14が設けられた大きさ分だけ、各シート状物10の第1の折れ線15及び第3の折れ線17近傍において、肉厚部分が形成され、積層体の躯体部分が補強されることになり、積層体同士を重ね合わせた際の安定感を向上させることができる。
【0028】
なお、第2の折片14は、シート状物10のサイズを大きくするとともに、シート状物積層体1の躯体部分を補強する目的で設けられ、そのため、第2の折片14の第3の折れ線17と短辺10cとの距離Dが距離Cよりも大きくなると、出来上がるシート状物積層体1において、各シート状物10R(又はシート状物10L)の第2の折片14と各シート状物10L(又はシート状物10R)の第1の折片13とが重なり合い、全体の嵩高状態が、中央部が膨らみ不安定なものとなる。従って、本発明においては、第2の折片14の第3の折れ線17と短辺10cとの距離DをD<Cとした。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のシート状物積層体のシート状物の展開図である。
【図2】本発明のシート状物積層体の積層構造を説明するための斜視図である。
【図3】(A)は、本発明のシート状物積層体の積層構造を説明するための断面図であり、(B)は、このウェットティッシュの積層体の嵩高状態を示す模式図である。
【図4】(A)は、従来のウェットティッシュの積層体の積層構造を示す断面図であり、(B)は、このウェットティッシュの積層体の嵩高状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0030】
10 シート状物、10a、10b 長辺、10c、10d 短辺、11 第1の中間片、12 第2の中間片、13 第1の折片、14 第2の折片、15 第1の折れ線、16 第2の折れ線、17 第3の折れ線
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた複数枚のシート状物が連続して取り出せるように積層されたシート状物の積層体において、
上記シート状物はスパンレース不織布からなり、
上記シート状物の各々は、所望とする積層体の幅寸法と略同じ長さに形成された第1の中間片と、
上記シート状物の一辺と平行な折れ線で積層方向下側に折られ、上記第1の中間片の略1/2の幅に、上記第1の中間片に隣接して形成された第2の中間片と、
上記第2の中間片から積層方向下側に折り返され上記第2の中間片と略同じ幅に形成された第1の折片と、
上記第1の中間片から積層方向上側に折り返され上記第1の中間片の幅が所望とする積層体の幅寸法となるように調整するとともに、上記第1の中間片の幅の1/2未満で、かつ、上記第1の折片の幅より短い幅となる第2の折片とを有するように折り畳まれ、
積層される上記シート状物の偶数番目の上記シート状物と奇数番目の上記シート状物とは、左右対称となるように折り畳まれた状態で積層され、
各偶数番目(奇数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の中間片によってできる谷部に、上記シート状物の次に積層される各奇数番目(偶数番目)の上記シート状物の上記第1の中間片及び上記第2の折片によってできる山部を重ね合わせることを特徴とするシート状物の積層体。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2019-04-25 
結審通知日 2019-05-08 
審決日 2019-05-21 
出願番号 特願2005-125264(P2005-125264)
審決分類 P 1 113・ 121- ZAA (A47K)
P 1 113・ 113- ZAA (A47K)
P 1 113・ 537- ZAA (A47K)
P 1 113・ 536- ZAA (A47K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 西田 秀彦
小野 忠悦
登録日 2006-11-10 
登録番号 特許第3877000号(P3877000)
発明の名称 シート状物の積層体  
代理人 村上 浩之  
代理人 北原 明彦  
代理人 小池 晃  
代理人 北原 明彦  
代理人 河野 貴明  
代理人 小笠原 宜紀  
代理人 片木 研司  
代理人 村上 浩之  
代理人 小西 憲太郎  
代理人 西堀 拓也  
代理人 河野 貴明  
代理人 小池 晃  

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