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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N
管理番号 1362610
審判番号 不服2018-8573  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-06-22 
確定日 2020-05-18 
事件の表示 特願2015-550048「データをレンダリングする方法、モバイル装置及びネットワーク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年7月3日国際公開、WO2014/102196、平成28年2月25日国内公表、特表2016-506175〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年12月28日、フランス)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年 6月30日 :手続補正書の提出
平成28年12月12日 :手続補正書の提出
平成29年10月12日付け:拒絶理由通知書
平成30年 1月11日 :意見書、手続補正書の提出
同年 3月 7日付け:拒絶査定
同年 6月22日 :審判請求書、手続補正書の提出
同年 9月 4日 :上申書の提出
令和 元年 6月11日付け:拒絶理由通知書(当審)
同年 8月21日 :意見書、手続補正書の提出

第2 当審による拒絶の理由
当審により令和元年6月11日付けで通知された拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、本件出願は、特許請求の範囲の請求項1、9、13に記載の「一時的なタグ」が、明確なものでないし、発明の詳細な説明に記載したものでもないから、特許請求の範囲の請求項1?13の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができない、というものである。

第3 本件補正について
上記当審拒絶理由に対して、令和元年8月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成30年6月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1、9、13について、「一時的なタグ」との記載から「一時的な」を削除して「タグ」としたものである。
本件補正は、当審拒絶理由において明確なものでないし、発明の詳細な説明に記載したものでもないとされた記載を一部削除するものであるから、特許法第17条の2第5項第4号の「明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものに該当する。
よって、本件補正は適法になされたものである。

第4 本願発明
令和元年8月21日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項9に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
なお、各構成の符号(A)?(E)は、説明のために当審で付したものであり、以下、構成A?構成Eと称する。

〔本願発明〕【請求項9】
(A)ネットワークにおいてデータをレンダリングするように形成されるモバイル装置であって、
(B)前記ネットワークは少なくとも1つのレンダリング装置と前記モバイル装置とを有し、
(A)前記モバイル装置は、
(C)前記レンダリング装置の少なくとも画像を取得するように形成される、レンダリング装置を検出するモジュールと、
(D)(D1)前記少なくとも1つのレンダリング装置の中で検出されたレンダリング装置を、前記データをレンダリングするために識別するモジュールであって、
(D2)当該レンダリング装置を表すタグの形式における識別子を認識するように構成され、
(D3)前記タグは、前記モバイル装置からのリクエストで前記レンダリング装置により表示され
(D4)且つ前記レンダリング装置の前記画像に存在する、モジュールと、
(E)識別されたレンダリング装置を表す情報項目を前記ネットワークに送信するモジュールと、
(A)を有するモバイル装置。

第5 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献3に記載された技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2011-114591号公報
引用文献3:特開2012-249023号公報

第6 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。
なお、以下の下線は、強調のために当審で付したものである。

「【0020】
図1は、本発明を適用したホームネットワークシステム(システムとは、複数の装置が論理的に集合した物をいい、各構成の装置が同一筐体中にあるか否かは、問わない)の一実施の形態の構成例を示す図である。
【0021】
図1において、ホームネットワークシステムは、レコーダ11、ディジタルTV(ディジタルテレビジョン受像機)12及び13、アクセスポイント14、並びに、携帯端末21を有する。
【0022】
ネットワーク10は、例えば、有線LAN(Local Area Network)であり、ネットワーク10には、レコーダ11、ディジタルTV12及び13、アクセスポイント14が接続されている。レコーダ11、ディジタルTV12及び13、アクセスポイント14は、ネットワーク10を介して、相互に通信を行うことができる。」

「【0025】
ディジタルTV12及び13は、レコーダ11と同様に、コンテンツを受信し、そのコンテンツ(に対応する画像)を表示する。」

「【0030】
携帯端末21は、ユーザの操作等に応じて、レコーダ11や、ディジタルTV12及び13に所定の処理を行わせるコマンド等を、無線LANによって送信する。
【0031】
携帯端末21が送信するコマンド等は、アクセスポイント14、及び、ネットワーク10を経由して、レコーダ11や、ディジタルTV12及び13に送信される。」

「【0034】
携帯端末21からのコマンドは、アクセスポイント14、及び、ネットワーク10を経由して、レコーダ11や、ディジタルTV12及び13に送信され、レコーダ11や、ディジタルTV12及び13では、携帯端末21からのコマンドに従い、電源のオン/オフや、チャンネルの選択、音量の調整等の所定の処理が行われる。」

「【0592】
図24は、図1の携帯端末21の第3の構成例を示すブロック図である。」

「【0596】
すなわち、図24では、携帯端末21は、例えば、携帯電話機であり、その携帯電話機である携帯端末21が、図5の場合と同様に、リモートコマンダとしての機能と、無線LANクライアントとしての機能とを有している。」

「【0598】
特定情報取得部72は、携帯端末21のリモートコマンダとしての機能による遠隔制御の対象とする機器(以下、制御対象機器ともいう)となる機器を特定するための情報である特定情報を取得する。」

「【0601】
カメラを利用した特定情報取得部72は、機器や、その機器の周囲を撮影することで、その機器の画像や、その機器の周囲の画像を、特定情報として取得する。」

「【0604】
一方、携帯端末21が、無線LANによって、コマンドを送信する場合、そのコマンドは、ネットワーク10を介して、そのネットワーク10上のすべての機器、すなわち、図1のホームネットワークシステムでは、レコーダ11、並びに、ディジタルTV12及び13で受信される。
【0605】
したがって、ネットワーク10上の機器のうちの、例えば、ユーザの近くにある機器を、携帯端末21が送信するコマンドによって遠隔制御を行う制御対象機器として、その制御対象機器の遠隔制御を行うには、ユーザの近くにある機器が、ネットワーク10上のいずれの機器であるかを特定する必要がある。」

「【0632】
携帯端末21は、レコーダ11、並びに、ディジタルTV12及び13それぞれからのデバイス情報を受信し、そのデバイス情報を登録したリストである機器リストを作成する。」

「【0671】
図27は、携帯端末21で生成される機器リストを模式的に示す図である。
【0672】
図27において、機器リストには、3つの機器「ディジタルTV#1」、「ディジタルTV#2」、及び、「レコーダ」のそれぞれについて、デバイス情報としてのMACアドレス、機器名称、及び、機器の機能(機器種別/機能)が登録されている。
【0673】
さらに、図27では、機器「ディジタルTV#1」については、1つの登録特定情報としての画像が、デバイス情報に対応付けて登録されており、機器「ディジタルTV#2」及び「レコーダ」のそれぞれについては、2つの登録特定情報としての画像が、デバイス情報に対応付けて登録されている。」

「【0676】
図28は、リモートコマンダの機能に注目した、図24の携帯端末21の処理を説明するフローチャートである。
【0677】
ステップS521において、携帯端末21は、リモートコマンダとして機能するように、入出力機構63A(図24)が操作されたかどうかを判定し、操作されていないと判定された場合、処理は、ステップS521に戻る。
【0678】
また、ステップS521において、リモートコマンダとして機能するように、入出力機構63Aが操作されたと判定された場合、すなわち、入出力機構63Aに、図26Aのメニュー画面が表示され、そのメニュー画面から、「リモコン」のアイコンが選択された場合、処理は、ステップS522に進み、携帯端末21は、特定情報取得部72(図24)としてのカメラを起動し、画像の撮影を行う。
【0679】
そして、特定情報取得部72は、カメラが撮影した画像を、特定情報として取得し、処理は、ステップS522からS523に進み、携帯端末21は、直前のステップS522で、特定情報取得部72が取得した特定情報(以下、取得特定情報ともいう)としての画像と、メモリ62(図24)に記憶された機器リストに登録された登録特定情報としての画像とを比較し、処理は、ステップS524に進む。
【0680】
ステップS524では、携帯端末21は、ステップS523での取得特定情報としての画像と、登録特定情報としての画像との比較の結果、取得特定情報としての画像に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像が、機器リストに存在するかどうかを判定する。」

「【0684】
一方、ステップS524において、取得特定情報としての画像に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像が、機器リストに存在すると判定された場合、処理は、ステップS527に進み、携帯端末21は、機器リストにおいて、取得特定情報としての画像(カメラ画像)に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像と対応付けられているデバイス情報の機器を、制御対象機器として特定し、その制御対象機器の操作パネル(図26C)を、入出力機構63Aに表示させて、処理は、ステップS528に進む。
【0685】
ステップS528では、携帯端末21は、ユーザによる操作パネル(図26C)の操作に応じて、制御対象機器を遠隔制御するリモートコマンダとして動作し、処理は、ステップS529に進む。」

「【図1】




「【図24】




「【図27】




「【図28】




(2)引用文献1に記載の技術的事項
上記(1)に摘記した記載から、引用文献1には、以下(ア)?(タ)の技術的事項が記載されているものと認められる。

(ア)段落0021、0022によれば、引用文献1には、「ディジタルTV(ディジタルテレビジョン受像機)12及び13、アクセスポイント14が接続されているネットワーク10を有するホームネットワークシステムにおける携帯端末21」が記載されている。

(イ)段落0030、0031によれば、前記携帯端末21は、ユーザの操作に対応するコマンドを、アクセスポイント14、及び、ネットワーク10を経由して、ディジタルTV12及び13に送信するものである。

(ウ)段落0034によれば、前記ディジタルTV12及び13は、前記コマンドに従い、電源のオン/オフや、チャンネルの選択、音量の調整等の所定の処理が行われるものである。

(エ)段落0025によれば、前記ディジタルTV12及び13は、コンテンツを受信し、そのコンテンツ(に対応する画像)を表示するものである。

(オ)段落0596によれば、前記携帯端末21は、リモートコマンダとしての機能と、無線LANクライアントとしての機能とを有するものである。

(カ)段落0604によれば、前記携帯端末21が、無線LANによって、コマンドを送信する場合、そのコマンドは、ネットワーク10を介して、そのネットワーク10上のすべての機器、すなわち、ディジタルTV12及び13で受信されるものである。

(キ)段落605によれば、前記携帯端末21は、ネットワーク10上の機器のうちの、例えば、ユーザの近くにある機器を、送信するコマンドによって遠隔制御を行う制御対象機器として、その制御対象機器の遠隔制御を行うには、ユーザの近くにある機器が、ネットワーク10上のいずれの機器であるかを特定する必要があるものである。

(ク)段落0632によれば、前記携帯端末21は、ディジタルTV12及び13それぞれからのデバイス情報を受信し、そのデバイス情報を登録したリストである機器リストを作成するものである。

(ケ)段落0672によれば、前記機器リストには、「ディジタルTV#1」、「ディジタルTV#2」のそれぞれについて、デバイス情報としてのMACアドレス、機器名称、及び、機器の機能(機器種別/機能)が登録されている。

(コ)段落0673によれば、前記機器リストには、さらに、登録特定情報としての画像が、デバイス情報に対応付けて登録されている。

(サ)段落0676によれば、図28には携帯端末21の処理を説明するフローチャートが記載されており、以降の段落において、当該フローチャートにおける各ステップの処理として以下(シ)?(タ)の処理が記載されている。

(シ)段落0598、0601、0677、0678によれば、前記携帯端末21は、リモートコマンダとして機能するように操作されたと判定された場合、特定情報取得部72としてのカメラを起動し、制御対象機器の撮影を行う。

(ス)段落0598、0601、0679によれば、前記特定情報取得部72は、カメラが撮影した制御対象機器の画像を、特定情報として取得し、前記特定情報取得部72が取得した特定情報(以下、取得特定情報ともいう)としての画像と、メモリ62に記憶された機器リストに登録された登録特定情報としての画像とを比較する。

(セ)段落0680によれば、前記携帯端末21は、取得特定情報としての画像と、登録特定情報としての画像との比較の結果、取得特定情報としての画像に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像が、機器リストに存在するかどうかを判定する。

(ソ)段落0684によれば、前記携帯端末21は、取得特定情報としての画像に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像が、機器リストに存在すると判定された場合、機器リストにおいて、取得特定情報としての画像(カメラ画像)に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像と対応付けられているデバイス情報の機器を、制御対象機器として特定し、その制御対象機器の操作パネルを表示させる。

(タ)段落0685によれば、前記携帯端末21は、ユーザによる操作パネルの操作に応じて、制御対象機器を遠隔制御するリモートコマンダとして動作する。

(3)引用発明
上記(2)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、引用発明における各構成の符号(a)?(f5)は、説明のために当審が付したものであり、以下、構成a?構成f5と称する。

〔引用発明〕
(a)ディジタルTV(ディジタルテレビジョン受像機)12及び13、アクセスポイント14が接続されているネットワーク10を有するホームネットワークシステムにおける携帯端末21であって、
(b)前記携帯端末21は、ユーザの操作に対応するコマンドを、アクセスポイント14、及び、ネットワーク10を経由して、ディジタルTV12及び13に送信するものであり、
(c)
(c1)前記ディジタルTV12及び13は、前記コマンドに従い、電源のオン/オフや、チャンネルの選択、音量の調整等の所定の処理が行われるものであり、
(c2)前記ディジタルTV12及び13は、コンテンツを受信し、そのコンテンツ(に対応する画像)を表示するものであり、
(d)
(d1)前記携帯端末21は、リモートコマンダとしての機能と、無線LANクライアントとしての機能とを有するものであり、
(d2)前記携帯端末21が、無線LANによって、コマンドを送信する場合、そのコマンドは、ネットワーク10を介して、そのネットワーク10上のすべての機器、すなわち、ディジタルTV12及び13で受信されるものであり、
(d3)前記携帯端末21は、ネットワーク10上の機器のうちの、例えば、ユーザの近くにある機器を、送信するコマンドによって遠隔制御を行う制御対象機器として、その制御対象機器の遠隔制御を行うには、ユーザの近くにある機器が、ネットワーク10上のいずれの機器であるかを特定する必要があるものであり、
(d4)前記携帯端末21は、ディジタルTV12及び13それぞれからのデバイス情報を受信し、そのデバイス情報を登録したリストである機器リストを作成するものであり、
(e)
(e1)前記機器リストには、「ディジタルTV#1」、「ディジタルTV#2」のそれぞれについて、デバイス情報としてのMACアドレス、機器名称、及び、機器の機能(機器種別/機能)が登録されており、
(e2)前記機器リストには、さらに、登録特定情報としての画像が、デバイス情報に対応付けて登録されており、
(f)
(f1)前記携帯端末21は、リモートコマンダとして機能するように操作されたと判定された場合、特定情報取得部72としてのカメラを起動し、制御対象機器の撮影を行い、
(f2)前記特定情報取得部72は、カメラが撮影した制御対象機器の画像を、特定情報として取得し、前記特定情報取得部72が取得した特定情報(以下、取得特定情報ともいう)としての画像と、メモリ62に記憶された機器リストに登録された登録特定情報としての画像とを比較し、
(f3)前記携帯端末21は、取得特定情報としての画像と、登録特定情報としての画像との比較の結果、取得特定情報としての画像に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像が、機器リストに存在するかどうかを判定し、
(f4)前記携帯端末21は、取得特定情報としての画像に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像が、機器リストに存在すると判定された場合、機器リストにおいて、取得特定情報としての画像(カメラ画像)に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像と対応付けられているデバイス情報の機器を、制御対象機器として特定し、その制御対象機器の操作パネルを表示させ、
(f5)前記携帯端末21は、ユーザによる操作パネルの操作に応じて、制御対象機器を遠隔制御するリモートコマンダとして動作する、
(a)前記携帯端末21。

2 引用文献3について
(1)引用文献3の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。
なお、以下の下線は、強調のために当審で付したものである。

「【0018】
図1は、本実施形態のコンテンツ再生装置が使用される環境の具体例を示す図である。
【0019】
図1においては、家庭内等において、無線LAN(WLAN)の通信可能圏内の中に隣接する部屋A及び部屋Bが存在し、部屋A内に存在する携帯電話端末100をユーザが使用している状況を想定している。ここで、携帯電話端末100がコンテンツを再生しているコンテンツ再生装置(第1の再生機器)に相当する。また、部屋A内には、携帯電話端末100の他にコンテンツを再生可能な機器(第2の再生機器)201及び202が存在し、部屋B内には、コンテンツを再生可能な機器203が存在している。これらの携帯電話端末100、機器201、202、203は、無線LANによって互いに無線通信可能である。」

「【0025】
コンテンツ再生システムは、コンテンツ再生装置(第1の再生機器、携帯電話端末100等が該当)としての送信機110と、コンテンツの継続再生を行う代理再生機器(第2の再生機器、機器201が該当)としての受信機220とを有する。」

「【0045】
本例では、図7及び図8に示すように、送信側の機器として携帯電話端末100が存在し、受信側の機器としてコンテンツを再生可能な機器301、302、303、304が存在する場合を想定する。
【0046】
ここで、図7に示すように、4種類の機器301、302、303、304を識別できるように、携帯電話端末100から機器301、302、303、304に対して、機器固有の識別データを含む機器識別用コンテンツとして、それぞれ異なる画像のコンテンツをPUSH送信により配信する。
【0047】
これにより、機器301、302、303、304はそれぞれ配信された画像のコンテンツを自動的に再生する。例えば、機器301、302、303、304の画面には、それぞれ内容の異なる画像が図7、図8に示すように表示される。ここで、ユーザが携帯電話端末100に搭載されたカメラの撮影方向を機器301、302、303、304のいずれかの画面に向けることにより、1つの画像を撮影して入力することができる。
【0048】
図8に示す例では、携帯電話端末100が受信側の機器302の画面に表示された画像をカメラで撮影しているので、機器302に配信された機器識別用コンテンツの識別データを携帯電話端末100が取得することになる。つまり、携帯電話端末100のカメラで撮影された画像に含まれる識別データを携帯電話端末100が認識し、コンテンツの継続再生先として機器302を特定して選択する。」

「【0113】
機器識別用コンテンツに含める識別情報の具体例としては、静止画や動画等の画像情報の場合、表示色、表示輝度、QRコード、バーコードなどが想定される。すなわち、画像情報としては、色、輝度、濃淡分布などの要素のうち、少なくともいずれか一つを利用する。表示色の違いを識別情報として利用する場合には、例えば図7のように映像を再生表示可能な機器として4つの機器301?304が存在する場合に、機器301、302、303、及び304に、それぞれ黄色、ピンク、青色、及び緑色などのコンテンツ表示色を割り当てることが考えられる。濃淡分布を識別情報として利用する場合には、例えばQRコードやバーコードなどによって各機器の識別情報を設定する。」

「【図7】




「【図8】




(2)引用文献3に記載の技術的事項
上記(1)に摘記した記載から、引用文献3には、以下(ア)?(エ)の技術的事項が記載されているものと認められる。

(ア)段落0019、0025によれば、「無線LANによって互いに無線通信可能である携帯電話端末100、コンテンツを再生可能な機器を含むコンテンツ再生システムにおける携帯電話端末100」が記載されている。

(イ)段落0045?0047によれば、前記携帯電話端末100は、コンテンツを再生可能な4種類の機器301、302、303、304を識別できるように、機器301、302、303、304に対して、機器固有の識別データを含む機器識別用コンテンツとして、それぞれ異なる画像のコンテンツをPUSH送信により配信し、これにより、機器301、302、303、304はそれぞれ配信された画像のコンテンツを自動的に再生し、機器301、302、303、304の画面には、それぞれ内容の異なる画像が表示されるものである。

(ウ)段落0013によれば、前記機器識別用コンテンツに含める識別情報は、QRコード、バーコードである。

(エ)段落0048によれば、前記携帯電話端末100は、受信側の機器302の画面に表示された画像をカメラで撮影し、撮影された画像に含まれる識別データを認識し、コンテンツの継続再生先として機器302を特定して選択するものである。

(3)引用文献3に記載された技術
上記(2)より、引用文献3には、次の技術(以下、「文献3技術」という。)が記載されていると認められる。

〔文献3技術〕
無線LANによって互いに無線通信可能である携帯電話端末100、コンテンツを再生可能な機器を含むコンテンツ再生システムにおける携帯電話端末100に係る技術であって、
前記携帯電話端末100は、コンテンツを再生可能な4種類の機器301、302、303、304を識別できるように、機器301、302、303、304に対して、機器固有の識別データを含む機器識別用コンテンツとして、それぞれ異なる画像のコンテンツをPUSH送信により配信し、
これにより、機器301、302、303、304はそれぞれ配信された画像のコンテンツを自動的に再生し、機器301、302、303、304の画面には、それぞれ内容の異なる画像が表示され、
前記機器識別用コンテンツに含める識別情報は、QRコード、バーコードであり、
前記携帯電話端末100は、受信側の機器302の画面に表示された画像をカメラで撮影し、撮影された画像に含まれる識別データを認識し、コンテンツの継続再生先として機器302を特定して選択する技術。

第7 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

1 構成Aについて
構成aの「ホームネットワークシステム」及び「携帯端末21」は構成Aの「ネットワーク」及び「モバイル装置」にそれぞれ相当する。
そして、前記ホームネットワークシステムにおいて、前記携帯端末21は、構成b及び構成cにおいて電源のオン/オフや、チャンネルを選択するコマンドを、アクセスポイント14、及び、ネットワーク10を経由して、ディジタルTVに送信し、コンテンツ(に対応する画像)を表示させるから、前記携帯端末21は、ネットワークにおいてデータをレンダリングするように形成されるものであるといえる。
よって、構成aは構成Aと一致する。

2 構成Bについて
構成aの「ディジタルTV(ディジタルテレビジョン受像機)12及び13」は構成Aの「少なくとも1つのレンダリング装置」に相当する。
そして、構成aのホームネットワークシステムは、「ディジタルTV(ディジタルテレビジョン受像機)12及び13」及び「携帯端末21」を有するから、引用発明は、構成Bを備える点で本願発明と一致する。

3 構成Cについて
構成f1の「特定情報取得部72としてのカメラ」が撮影を行う「制御対象機器」は、構成b及び構成cの「ディジタルTV」に対応するから、構成f2の「制御対象機器の画像」及び当該画像を取得する構成f1の「特定情報取得部72」は、構成Cの「レンダリング装置の」「画像」及び「レンダリング装置の少なくとも画像を取得するように形成される、レンダリング装置を検出するモジュール」にそれぞれ相当する。
よって、引用発明は、構成Cを備える点で本願発明と一致する。

4 構成D1について
構成e1の「機器リスト」に登録されるデバイス情報は、2つのディジタルTVについてのものである。また、構成f5の携帯端末21により制御対象機器を遠隔制御することは、構成cの電源のオン/オフや、チャンネルを選択するコマンドをディジタルTVに送信し、コンテンツ(に対応する画像)を表示させることに対応するから、構成f4の制御対象機器の特定は、データをレンダリングするためのものといえる。
以上から、構成f4の「機器リストにおいて、取得特定情報としての画像(カメラ画像)に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像と対応付けられているデバイス情報の機器を、制御対象機器として特定」することは、構成D1の「少なくとも1つのレンダリング装置の中で検出されたレンダリング装置を、前記データをレンダリングするために識別する」ことに相当する。
そして、各種処理を行う装置において任意の処理単位をモジュールとして画定することは一般的な構成であるから、引用発明は、構成D1を備える点で、本願発明と一致する。

5 構成D2について
構成f4の「機器リストにおいて、取得特定情報としての画像(カメラ画像)に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像と対応付けられているデバイス情報の機器を、制御対象機器として特定」することは、制御対象機器を認識することといえる。
そして、構成f4において制御対象機器を特定するために用いられる「取得特定情報としての画像(カメラ画像)」は、構成f2の「制御対象機器の画像」のことであるから、「レンダリング装置を表す「認識用の画像」」である点で、構成D2の「レンダリング装置を表すタグの形式における識別子」と共通する。
そして、上記構成f4の「機器リストにおいて、取得特定情報としての画像(カメラ画像)に一致するとみなすことができる登録特定情報としての画像と対応付けられているデバイス情報の機器を、制御対象機器として特定」するモジュールは、「レンダリング装置を表す「認識用の画像」を認識する」モジュールである点で、構成D2と共通する。
しかしながら、「認識用の画像」について、本願発明は「タグの形式における識別子」であるのに対し、引用発明は「制御対象機器の画像」である点で相違する。

6 構成D3、構成D4について
上記5のとおり、「レンダリング装置を表す「認識用の画像」を認識する」際に、引用発明は、「制御対象機器の画像」を用いるものであるから、レンダリング装置により表示されるものではなく、レンダリング装置の画像に存在するものでもない。
よって、本願発明は構成D3及び構成D4を備えるのに対し、引用発明は構成D3及び構成D4を備えていない点で相違する。

7 構成Eについて
引用発明は、構成d2において、前記携帯端末21が送信するコマンドは、そのネットワーク10上のすべての機器、すなわち、ディジタルTV12及び13で受信されるものであるから、構成f4において機器リストに基づき特定された制御対象機器を、構成f5において携帯端末21が遠隔制御するためには、特定された制御対象機器の情報を送信する必要があることは当然であり、構成e1の機器リストに登録されている各ディジタルTVのMACアドレスのような、制御対象を特定するための情報項目をネットワークに送信するモジュールが、引用発明に備わっていることは、明らかであるといえる。
よって、引用発明は、構成Eを備える点で、本願発明と一致する。

6 一致点、相違点について
以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
(A)ネットワークにおいてデータをレンダリングするように形成されるモバイル装置であって、
(B)前記ネットワークは少なくとも1つのレンダリング装置と前記モバイル装置とを有し、
(A)前記モバイル装置は、
(C)前記レンダリング装置の少なくとも画像を取得するように形成される、レンダリング装置を検出するモジュールと、
(D)(D1)前記少なくとも1つのレンダリング装置の中で検出されたレンダリング装置を、前記データをレンダリングするために識別するモジュールであって、
(D2’)当該レンダリング装置を表す「認識用の画像」を認識するように構成され、
(E)識別されたレンダリング装置を表す情報項目を前記ネットワークに送信するモジュールと、
(A)を有するモバイル装置。

(相違点)
識別するモジュールが認識する「認識用の画像」について、本願発明は、
(D2)「タグの形式における識別子」であって、
(D3)前記タグは、前記モバイル装置からのリクエストで前記レンダリング装置により表示され
(D4)且つ前記レンダリング装置の前記画像に存在する、のに対し、
引用発明は、「制御対象機器の画像」である点。

第8 判断
上記相違点について、以下に検討する。

(1)文献3技術の「コンテンツを再生可能な4種類の機器301、302、303、304」、「携帯電話端末100」及び「無線LAN」は、引用発明の「ディジタルTV12及び13」、「携帯端末21」及び「ネットワーク10」に相当し、文献3技術の「コンテンツ再生システム」と引用発明の「ホームネットワークシステム」は、いずれも携帯端末が送信するコマンドに従い、コンテンツを再生するシステムである点で、技術分野が共通する。
また、両者は、複数の機器からコンテンツを再生する機器を特定して選択するという課題、及び、携帯端末がカメラで撮影し、撮影された画像を認識することにより機器を特定して選択するという機能が共通する。

(2)よって、引用発明と文献3技術は、属する技術分野が共通し、その課題及び機能も共通するから、引用発明に文献3技術を適用することは、当業者であれば容易に想到しうることである。

(3)ここで、引用発明に文献3技術を適用してなしうる発明を検討する。
引用発明に文献3技術を適用した当該発明は、「識別するモジュール」が認識する「認識用の画像」については、
(D2)複数の機器を識別できる「機器固有の識別データを含む機器識別用コンテンツ」となるように構成され、前記「機器識別用コンテンツに含める識別情報」としては、「QRコード、バーコード」であり、
(D3)前記「機器識別用コンテンツに含める識別情報」は、携帯端末がPUSH送信により配信し、複数の機器はそれぞれ配信された画像のコンテンツを自動的に再生し、
(D4)複数の機器の画面には、それぞれ内容の異なる画像が表示されるものとなる。

(4)引用発明に文献3技術を適用した当該発明の「機器固有の識別データを含む機器識別用コンテンツ」は「QRコード、バーコード」であるから、「タグの形式」を有するといえるものであり、当該「機器固有の識別データ」は「識別子」といえる。
よって、引用発明に文献3技術を適用した当該発明の「識別するモジュール」が認識する「認識用の画像」は、「(D2)当該レンダリング装置を表すタグの形式における識別子」であるといえる。

(5)また、引用発明に文献3技術を適用した当該発明の「機器固有の識別データを含む機器識別用コンテンツ」は、携帯端末がPUSH送信により配信し、複数の機器はそれぞれ配信された画像のコンテンツを自動的に再生するから、「前記モバイル装置からのリクエストで前記レンダリング装置により表示され」るものといえるし、「前記レンダリング装置の前記画像に存在する」ものといえる。
よって、引用発明に文献3技術を適用した当該発明の「識別するモジュール」が認識する「認識用の画像」は、「(D3)前記タグは、前記モバイル装置からのリクエストで前記レンダリング装置により表示され(D4)且つ前記レンダリング装置の前記画像に存在する」といえる。

(6)以上のことから、引用発明に文献3技術を適用した当該発明は、上記相違点に係る構成を全て備えているといえる。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び文献3技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(7)したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献3に記載の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第9 むすび
以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項9に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-12-19 
結審通知日 2019-12-20 
審決日 2020-01-07 
出願番号 特願2015-550048(P2015-550048)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 州一郎牛丸 太希  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 藤原 敬利
樫本 剛
発明の名称 データをレンダリングする方法、モバイル装置及びネットワーク装置  
代理人 大貫 敏史  
代理人 阿部 豊隆  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 内藤 和彦  

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