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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01R
管理番号 1362624
審判番号 不服2019-1999  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-13 
確定日 2020-05-21 
事件の表示 特願2016-208785「磁場検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月10日出願公開、特開2018- 72026〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)10月25日の特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 3月15日付け:拒絶理由通知書
平成30年 5月28日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年10月25日付け:拒絶査定
(平成30年11月13日 :査定の謄本の送達日)
平成31年 2月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 1年11月15日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 1月16日 :意見書、手続補正書の提出


第2 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、令和2年1月16日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1は以下のとおりである。

「【請求項1】
第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向の双方を含む第1の面に沿って広がると共に、前記第1の方向および前記第2の方向の双方と直交する第3の方向において対向配置された第1の軟磁性体および第2の軟磁性体と、
前記第3の方向において前記第1の軟磁性体と前記第2の軟磁性体との間に設けられた磁気検出素子と、
前記第3の方向において前記磁気検出素子を挟むと共に前記磁気検出素子にセンス電流を供給可能に設けられた一対のリードと
を有し、
前記第1の軟磁性体は、前記第2の軟磁性体と対向する第1の対向面を含み、
前記第2の軟磁性体は、前記第1の軟磁性体と対向する第2の対向面を含み、
前記第1の対向面および前記第2の対向面のうちの少なくとも一方には、複数の突起部が形成されており、
前記磁気検出素子は、前記第1の面に沿った感磁方向を有し、前記第3の方向において前記複数の突起部のいずれかと重なり合う位置と異なる位置に設けられ、
前記第1の面に沿った方向における前記磁気検出素子の中心点は、前記第1の面に沿った方向において隣り合う2つの前記突起部同士の中間点から外れた位置にあり、
前記磁気検出素子および前記一対のリードは、前記第1の方向および前記第2の方向の双方において前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられている
磁場検出装置。」


第3 当審が通知した拒絶の理由
当審が令和1年11月15日付けで通知した拒絶の理由のうち理由5(進歩性)は、概略以下のとおりである。

平成31年2月13日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-8に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許公開第2015/0028863号明細書


第4 当審の判断
(1)引用文献、引用発明等
ア 引用文献
以下に掲げる引用文献1、2は、本願の出願前に公知とされた文献である。引用文献1は、上記「第3 当審が通知した拒絶の理由」で示した引用文献1であり、また、引用文献2-4は、当審で新たに引用した文献である。

引用文献1:米国特許公開第2015/0028863号明細書
引用文献2:特開2003-318461号公報
(当審において新たに引用した文献、周知技術を示す文献)
引用文献3:特開2003-69108号公報
(当審において新たに引用した文献、周知技術を示す文献)
引用文献4:特開2007-194322号公報
(当審において新たに引用した文献、周知技術を示す文献)

イ 引用文献1について
引用文献1には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付した。また、翻訳文は当審で作成した。)

「The systems and methods described below are directed to a magnetic field sensor which has enhanced performance attributes for the detection or measurement of an externally applied magnetic field.」([0013])
(翻訳文:以下に説明するシステム及び方法は、外部から印加された磁界の検出または測定のために強化された性能特性を有する磁界センサに関するものである。)

「Permalloy may be used to create the flux guides, although it should be understood that other permeable materials may also be used.」([0038])
(翻訳文:パーマロイは、磁束ガイドを形成するために使用することができるが、他の透磁性材料を使用することもできることを理解されたい。)

「FIG. 1 shows a is as implified illustration of the magnetically sensitive structure with at least one permeable flux guide that routes flux from the externally applied field along the sensitive axis of the magnetically sensitive structure. The magnetically sensitive structure 150 may be, for example, and AMR or GMR multilayer structure, which is fabricated on the surface of a substrate. In either case, the magnetically sensitive structure 150 has a single axis, or direction, along which it is most sensitive to applied magnetic fields. That is, when the magnetic field is applied parallel to this sensitive axis, the output of the transducer is a maximum. The transducer sensitive axis is shown with an arrow in FIG. 1, and is along the x-axis as shown. The external magnetic field M is applied orthogonally to this axis in FIG. 1, and is directed vertically from the top of the page to the bottom of the page, that is, along the y-axis. At least one flux guide is disposed also on the surface of the substrate, and is patterned lithographically to have the approximate shape shown in FIG. 1. The flux guide comprises a permeable material, wherein “permeable” is defined as having a relative permeability, with respect to air, of at least 100 .」([0042])
(翻訳文:図1は、磁気感知構造の感知軸に沿った外部から加えられた磁界からの磁束を送る少なくとも1つの透磁性磁束ガイドと磁気感知構造の簡略図を示している。磁気感知構造150は、例えば、AMR又はGMR多層構造であり、それは、基板の表面上に形成される。いずれの場合も、磁気感知構造150は、加えられる磁界に対して最も感度が高いものに沿っている単一の軸または方向を有している。すなわち、その磁界がこの感知軸に平行に加えられると、トランスデューサの出力は最大である。トランスデューサ感知軸は、図1中の矢印で示されており、x軸に沿っている。外部磁界Mは、図1のこの軸に直交するように適用され、ページの上からページに下に垂直に、すなわち、y軸に沿うように向けられている。少なくとも1個の磁束ガイドは基板の表面上にも配置されており、図1に示される概略の形状を有するようにリソグラフィでパターニングされている。磁束ガイドは透磁性材料から構成され、「透磁性」は、空気に関して相対的な透磁率を少なくとも100有するものとして定義される。)

「FIG. 1 shows flux guides 110, including an upper flux guide 111 and a lower flux guide 115. The flux is accepted by the large dimension at the top of the flux guide 111 and flows to the bottom of the flux guide 115, exiting the bottom edge of flux guide 115. Between the top flux guide 111 and the bottom flux guide 115 is a gap that contains the magnetically sensitive structure 150. In this gap, the flux guide 111 has a protrusion 112 which extends from the lower edge of flux guide 111. Similarly, flux guide 115 has a protrusion 116 that extends into the gap. The purpose of protrusions 112 and 116 are to route the lines of vertical flux horizontally across the magnetically sensitive device 150, and therefore parallel to its sensitive axis. The flux guides 111 and 115 accomplish this by having a protruding portion 112 and 116 respectively, and a rectangular extensive portion 113 and 117 adjacent to the protruding portion, wherein the protruding portions 112 and 116 are closer to the magnetically sensitive structure 150 than the extensive portions 113 and 117. In this way, flux from the externally applied vertical field is applied horizontally to the magnetically sensitive structure 150. The heavy arrows in FIG. 1 show the routing of the lines of flux from the externally applied magnetic field M. As can be seen in FIG. 1, as long as the distance B between the extensive portions 113 and 117 is substantially greater than the distance A between the protrusions 112 and 116 and the magnetically sensitive structure 150, the flux will flow across the gap A and through the magnetically sensitive structure 150. Accordingly, the flux guides 110 may have the feature that A (翻訳文:図1は、上側の磁束ガイド111及び下側の磁束ガイド115を含む磁束ガイド110を示している。磁束は磁束ガイド111の上部の大きな寸法で入り、磁束ガイド115の底部に流れて、磁束ガイド115の底部のエッジを出る。上部の磁束ガイド111と底部の磁束ガイド115との間は、磁気感知構造150を含むギャップである。このギャップでは、磁束ガイド111は、磁束ガイド111の下側のエッジから延出する突起部112を有している。同様に、磁束ガイド115はギャップ内に伸びる突起部116を有している。突起部112および116の目的は、磁気感知素子150を横切って水平に垂直磁束線を送ることと、そして、その感知軸に平行にすることである。磁束ガイド111及び115はそれぞれ、突起部112及び116と、突起部に隣接する矩形の広域部分113及び117を有することにより、これを達成し、突起部112及び116は広域部分113及び117よりも磁気感知構造150に接近している。このようにして、外部から印加される垂直磁界からの磁束は、磁気感知構造150に水平方向に適用される。図1の太い矢印は、外部磁界Mからの磁束線のルーティングを示している。図1に見られるように、広域部分113及び117の間の距離Bが、突起部112及び116と磁気感知構造150との間の距離Aよりも十分に大きい限り、磁束はギャップAを横切り、磁気感知構造150を通って流れる。したがって、磁束ガイド110はA<Bの特徴を有し得る。)

「FIG. 2 shows another embodiment of the magnetic sensor sensitive to an external magnetic field. In FIG. 2, the lower (or upper) flux guide is equipped with two additional features 118. These features 118 are patterned with a longer edge 118a and a shorter edge 118b. The longer edge accepts lines of flux that are travelling horizontally along the x-axis. These flux lines would otherwise enter the magnetically sensitive structure 150 and be a source of noise to the measurement of the applied external magnetic field M. Instead, these horizontal lines of flux enter the permeable flux guide 115 and travel under and around the magnetically sensitive device. It should be understood that features 118 may alternatively be associated with the top flux guide 111 rather than the lower flux guide 115. It should also be understood that only a single feature 118 may be required to provide the suppression of horizontal flux lines around the magnetically sensitive structure 150. While any of a number of shapes may be used for flux guides 111 and 115, the distinguishing feature may be that at least one flux guide has a second protruding portion, wherein the second protruding portion accepts the undesired components and routes the undesired components around the magnetically sensitive structure. The protruding portion 118 typically has a region of closest approach to the opposite flux guide, and an adjacent region that tapers away from the opposite flux guide, such that C (翻訳文:図2は、外部磁界に感応する磁気センサの別の実施形態を示している。図2において、下側(又は上側)の磁束ガイドは2つの追加の特徴118を備えている。これらの特徴118は、長辺118aと短辺118bを備えている。長辺はx軸に沿って水平方向に移動する磁束線を受け入れる。これらの磁束線は磁気感知構造150に入り、印加された外部磁界Mの測定ノイズの要因となる代わりに、これらの水平方向の磁束線は、透磁性磁束ガイド115に入り、磁気感知素子の下及び周りに移動する。特徴118は、下側磁束ガイド115よりはむしろ上部磁束ガイド111と関連付けられてもよいことが理解されるべきである。また、唯一の特徴118は、磁気感知構造150の周りに水平方向の磁束線の抑制を提供するために必要とされ得ることが理解されるべきである。多くの形状のうちのいずれかが磁束ガイド111及び115のために使用され得るが、その顕著な特徴は、少なくとも1個の磁束ガイドが第2の突起部を有し、第2の突起部は、好ましくない成分を受け入れ、磁気感知構造の周囲に望ましくない成分を送ることを特徴としてもよい。突起部118はC<Dのように、典型的には反対側の磁束ガイドに最も接近する領域と、反対側の磁束ガイドから離れて先細りになる隣接領域とを有する。)

「Accordingly, the magnetic transducer in FIG. 2 has at least one flux guide which is configured to suppress undesired components of the external magnetic field which are not parallel to the one axis of the magnetically sensitive structure. Furthermore, the magnetic transducer of FIG. 2 may comprise a first flux guide and a second flux guide wherein the second flux guide has a second protruding portion and a second extensive portion, wherein the second protruding portion accepts the undesired components and the second extensive portion routes the undesired components around the magnetically sensitive structure.」([0046])
(翻訳文:したがって、図2の磁気トランスデューサは、磁気感知構造のその1つの軸に平行でない外部磁界の望ましくない成分を抑制するように構成された少なくとも1つの磁束ガイドを有する。さらに、図2の磁気トランスデューサは、第1の磁束ガイドと第2の磁束ガイドで構成され、第2の磁束ガイドは第2の突起部と第2の広域部分を有し、第2突起部は好ましくない成分を受け入れ、磁気感知構造の周囲に望ましくない成分を送るように構成され得る。)

引用文献1には以下の図が示されている。

Fig.2


また、Fig.2から以下の事項が見て取れる。

「磁束ガイド111の底部が、x軸方向と、x軸方向とy軸方向と直交する方向(以下、「z軸方向」という。)を含む平面に沿って広がっている矩形の広域部分113を有し、磁束ガイド115の上部が、x軸方向とz軸方向を含む平面に沿って広がっている矩形の広域部分117を有していること」

「磁束ガイド111と磁束ガイド115が、y軸方向において対向して配置されていること」

「y軸方向において磁束ガイド111と磁束ガイド115との間に磁気感知構造150が設けられていること」

「磁束ガイド115の上部に突起部116と複数の追加の特徴118が形成されていること」

「磁気感知構造150が、y軸方向において突起部116、複数の追加の特徴118と重なっていないこと」

「磁気感知構造150が、x軸方向において隣り合う突起部116と追加の特徴118の中間位置に設けられていないこと」

「突起部116からx軸に沿って水平方向に移動する磁束線が磁気感知構造150に入り、磁気感知構造150から出た磁束線が突起部112へ水平方向に移動すること」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「磁束ガイド111の底部が、x軸方向とz軸方向を含む平面に沿って広がっている矩形の広域部分113を有し、磁束ガイド115の上部が、x軸方向とz軸方向を含む平面に沿って広がっている矩形の広域部分117を有し(Fig.2)、
磁束ガイド111と磁束ガイド115が、y軸方向において対向して配置され(Fig.2)、
パーマロイは、磁束ガイドを形成するために使用することができ([0038])、
y軸方向において磁束ガイド111と磁束ガイド115との間に磁気感知構造150が設けられ(Fig.2)、
磁束ガイド115の上部に突起部116と複数の追加の特徴118が形成され(Fig.2)、
突起部112および116の目的は、磁気感知素子150を横切って水平に垂直磁束線を送ることと、そして、その感知軸に平行にすることであり([0043])、
磁気感知構造150が、y軸方向において突起部116、複数の追加の特徴118と重なっておらず(Fig.2)、
磁気感知構造150が、x軸方向において隣り合う突起部116と追加の特徴118の中間位置に設けられておらず(Fig.2)、
磁気感知構造150が、GMR多層構造であり([0042])、
突起部116からx軸に沿って水平方向に移動する磁束線が磁気感知構造150に入り、磁気感知構造150から出た磁束線が突起部112へ水平方向に移動する(Fig.2)、
外部から印加された磁界の検出のための磁界センサに関するシステム([0004])。」

ウ 引用文献2-4について
引用文献2(特に、【0001】、【0065】、【0066】、【図13】参照)、引用文献3(特に、【0001】、【0002】、【0008】、【図11】、【図12】参照)、及び、引用文献4(特に、【0001】、【0022】参照)に見られるように、巨大磁気抵抗効果(GMR)を有する磁気検出素子において、磁気検出素子にセンス電流を供給するために、垂直方向において多層構造の磁気検出素子を挟み、磁気検出素子にセンス電流を供給可能な一対のリードを設けた技術は、周知技術である。

(2)対比
本願請求項1の「前記磁気検出素子および前記一対のリードは、前記第1の方向および前記第2の方向の双方において前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられている」との記載については、本願請求項1の「前記磁気検出素子は、」「前記第3の方向において前記複数の突起部のいずれかと重なり合う位置と異なる位置に設けられ」との記載(すなわち、「前記磁気検出素子」と「前記複数の突起部のいずれか」が「前記第3の方向」から見て「重なり合う」ような位置を考えたとき、そのような位置に「前記磁気検出素子」が設けられていない構成を表す記載)と同様に、「前記磁気検出素子および前記一対のリード」と「前記複数の突起部のうちの少なくとも1つ」が「第1の方向」から見ても、「第2の方向」から見ても、「重なり合う」ような位置を考えたとき、そのような位置に「前記磁気検出素子および前記一対のリード」が設けられていない構成を意味するものとして、本願発明1を認定した。

本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明においては、「パーマロイは、磁束ガイドを形成するために使用することができ」るから、引用発明の「磁束ガイド111と磁束ガイド115」においても「パーマロイ」が使用されるものである。してみると、引用発明において、「パーマロイ」が使用された「磁束ガイド111と磁束ガイド115」は、本願発明1の「第1の軟磁性体および第2の軟磁性体」に相当する。
引用発明の「x軸方向」、「y軸方向」、「z軸方向」が、それぞれ、本願発明1の「第1の方向」、「第3の方向」、「第2の方向」に相当する。
引用発明の「底部が、x軸方向とz軸方向を含む平面に沿って広がっている矩形の広域部分113を有」する「磁束ガイド111」および「上部が、x軸方向とz軸方向を含む平面に沿って広がっている矩形の広域部分117を有」する「磁束ガイド115」は、本願発明1の「第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向の双方を含む第1の面に沿って広がる」「第1の軟磁性体および第2の軟磁性体」に相当する。
引用発明の「y軸方向において対向配置され」た「磁束ガイド111と磁束ガイド115」は、本願発明1の「前記第1の方向および前記第2の方向の双方と直交する第3の方向において対向配置された第1の軟磁性体および第2の軟磁性体」に相当する。

イ 引用発明の「y軸方向において磁束ガイド111と磁束ガイド115との間に」「設けられ」た「磁気感知構造150」は、本願発明1の「前記第3の方向において前記第1の軟磁性体と前記第2の軟磁性体との間に設けられた磁気検出素子」に相当する。

ウ 引用発明においては、「磁束ガイド111の底部」が「矩形の広域部分113を有し」、「磁束ガイド115の上部」が「矩形の広域部分117を有し」ており、また、「磁束ガイド111と磁束ガイド115が、y軸方向において対向して配置され」ている。それゆえ、引用発明において、「磁束ガイド111」は「磁束ガイド115」と対向する「矩形の広域部分113」を有していることは、本願発明1の「前記第1の軟磁性体は、前記第2の軟磁性体と対向する第1の対向面を含」むことに相当する。

エ 引用発明において、「磁束ガイド115」は「磁束ガイド111」と対向する「矩形の広域部分117」を有していることは、本願発明1の「前記第2の軟磁性体は、前記第1の軟磁性体と対向する第2の対向面を含」むことに相当する。

オ 引用発明において、「磁束ガイド115の上部に突起部116と複数の追加の特徴118が形成され」ることは、本願発明1の「前記第1の対向面および前記第2の対向面のうちの少なくとも一方には、複数の突起部が形成されて」いることに相当する。

カ 引用文献1に記載されている「トランスデューサ感知軸は、図1中の矢印で示されており、x軸に沿っている。」という事項([0042])を考慮すると、引用発明において、「突起部112および116の目的は、磁気感知素子150を横切って水平に垂直磁束線を送ることと、そして、その感知軸に平行にすることで」あることは、「磁気感知構造150」の「感知軸」がx軸に沿っている(x軸方向である)ことを意味する。また、上記「ア」で述べたように、引用発明の「x軸方向」は、本願発明1の「第1の方向」に相当し、本願発明1の「第1の面」は「第1の方向」及び「第2の方向」を含むものであるから、引用発明において、「磁気感知構造150」の「感知軸」がx軸に沿っていることは、本願発明1の「前記磁気検出素子は、前記第1の面に沿った感磁方向を有」することに相当する。
引用発明の「磁気感知構造150が、y軸方向において突起部116、複数の追加の特徴118と重なって」いないことは、本願発明1の「前記磁気検出素子は、」「前記第3の方向において前記複数の突起部のいずれかと重なり合う位置と異なる位置に設けられ」ていることに相当する。

キ 引用発明の「磁気感知構造150が、x軸方向において隣り合う突起部116と追加の特徴118の中間位置に設けられて」いないことは、「x軸方向」における「磁気感知構造150」の中心点が、「x軸方向において隣り合う突起部116と追加の特徴118の中間位置に設けられて」いないことを意味し、上記「カ」より、「x軸方向」は「感知軸」が沿っている軸の方向であるから、このことは、本願発明1の「前記第1の面に沿った方向における前記磁気検出素子の中心点は、前記第1の面に沿った方向において隣り合う2つの前記突起部同士の中間点から外れた位置にあ」ることに相当する。

ク 引用発明の「外部から印加された磁界の検出のための磁界センサに関するシステム」は、本願発明1の「磁場検出装置」に相当する。

してみると、本願発明1と引用発明との間における一致点及び相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「第1の方向および前記第1の方向と直交する第2の方向の双方を含む第1の面に沿って広がると共に、前記第1の方向および前記第2の方向の双方と直交する第3の方向において対向配置された第1の軟磁性体および第2の軟磁性体と、
前記第3の方向において前記第1の軟磁性体と前記第2の軟磁性体との間に設けられた磁気検出素子と
を有し、
前記第1の軟磁性体は、前記第2の軟磁性体と対向する第1の対向面を含み、
前記第2の軟磁性体は、前記第1の軟磁性体と対向する第2の対向面を含み、
前記第1の対向面および前記第2の対向面のうちの少なくとも一方には、複数の突起部が形成されており、
前記磁気検出素子は、前記第1の面に沿った感磁方向を有し、前記第3の方向において前記複数の突起部のいずれかと重なり合う位置と異なる位置に設けられ、
前記第1の面に沿った方向における前記磁気検出素子の中心点は、前記第1の面に沿った方向において隣り合う2つの前記突起部同士の中間点から外れた位置にある、
磁場検出装置。」

[相違点]
[相違点1]
本願発明1は、「前記第3の方向において前記磁気検出素子を挟むと共に前記磁気検出素子にセンス電流を供給可能に設けられた一対のリード」を有しているのに対して、引用発明は、このような一対のリードを有しているか否かが不明である点。

[相違点2]
本願発明1は、「前記磁気検出素子および前記一対のリードは、前記第1の方向および前記第2の方向の双方において前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられている」のに対して、引用発明は、一対のリードを有しているか否かが不明であり、さらに、磁気感知構造150(「磁気検出素子」に相当。)および当該一対のリードが、x軸方向およびz軸方向(「前記第1の方向」および「前記第2の方向」に相当。)の双方において、突起部116と複数の追加の特徴118(「複数の突起部」に相当。)のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられているか否かが不明である点。

(3)相違点についての判断
ア 相違点1について
(ア)引用発明は、上記「(2)カ」で述べたように、「磁気感知構造150」の「感知軸」はx軸に沿っており、また、「磁気感知構造150」は「GMR多層構造」である。
巨大磁気抵抗効果(GMR)を有する磁気検出素子においては、感磁方向と、磁気検出素子を構成する多層構造が積層される方向が直交すること、そして、磁気検出素子へセンス電流を流す手段を備えていることが技術常識である。
それゆえ、引用発明は、「磁気感知構造150」の「感知軸」はx軸に沿っている(すなわち、感磁方向がx軸方向である)から、「磁気感知構造150」を構成する「GMR多層構造」が積層される方向がy軸方向であり、「磁気感知構造150」へセンス電流を流す手段を備えているものと認められる。

(イ)上記「(1)ウ」で述べたように、巨大磁気抵抗効果(GMR)を有する磁気検出素子において、磁気検出素子にセンス電流を供給するために、垂直方向において多層構造の磁気検出素子を挟み、磁気検出素子にセンス電流を供給可能な一対のリードを設けた技術は、周知技術である。
当該周知技術を知る当業者であれば、引用発明において、「磁気感知構造150」へセンス電流を流す手段として、垂直方向において「GMR多層構造」の「磁気感知構造150」を挟み、「磁気感知構造150」にセンス電流を供給可能な一対のリード、すなわち、上記相違点1に係る構成である「前記第3の方向において前記磁気検出素子を挟むと共に前記磁気検出素子にセンス電流を供給可能に設けられた一対のリード」を設けることは、適宜設計し得たことである。

イ 相違点2について
(ア)一対のリードを有する点については、上記「ア 相違点1について」で述べたとおりである。

(イ)引用発明では、「突起部116からx軸に沿って水平方向に移動する磁束線が磁気感知構造150に入り、磁気感知構造150から出た磁束線が突起部112へ水平方向に移動する」ことから、「磁気感知構造150」は、「x軸方向」において「突起部112」と「突起部116」と重なっていると認められる。一方、引用文献1には、「磁気感知構造150」が、z軸方向において、突起部と重なっているか否かについて明記されておらず、引用発明がこのように構成されているかは不明である。
ここで、上記「(2)カ」で述べたように、引用発明においては、「突起部112および116の目的は、磁気感知素子150を横切って水平に垂直磁束線を送ることと、そして、その感知軸に平行にすることで」あり、「磁気感知構造150」の「感知軸」はx軸に沿っていること、そして、引用発明は、「突起部116からx軸に沿って水平方向に移動する磁束線が磁気感知構造150に入り、磁気感知構造150から出た磁束線が突起部112に入る」ことを踏まえると、引用発明では、「感知軸」となる「x軸方向」のみにおいて、「磁気感知構造150」が、「突起部112」や「突起部116」と重なるように配置されれば足りるから、引用発明では、「x軸方向」以外の方向において、「磁気感知構造150」が、「突起部112」や「突起部116」のような突起部と重なるように配置する必然性はなく、むしろ重なるようには設けていないと考えるのが自然である。
してみると、引用発明は、「磁気感知構造150」が、x軸方向以外の方向(z軸方向を含む。)において突起部と重なり合うように設けられていないと認められるから、引用発明は、当該「磁気感知構造150」は、x軸方向およびz軸方向において突起部と重なり合う位置に設けられていない構成、すなわち、本願発明1の、「前記磁気検出素子」は、「前記第1の方向および前記第2の方向の双方において前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられている」構成を有しているといえる。

(ウ)上記「ア(イ)」で述べたように、引用発明において、磁気抵抗効果素子へセンス電流を流す手段として、垂直方向において多層構造の磁気抵抗効果素子を挟み、磁気抵抗効果素子にセンス電流を供給可能な一対のリードを設けた際には、上記「(イ)」で述べた事項と同様に、引用発明は、磁気感知構造150および一対のリードは、x軸方向およびz軸方向において突起部と重なり合う位置に設けられていない構成、すなわち、上記相違点2に係る構成である「前記磁気検出素子および前記一対のリードは、前記第1の方向および前記第2の方向の双方において前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられている」構成を有することになる。

よって、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)請求人の主張について
ア 請求人は、令和1年1月16日に提出された意見書において、以下のように主張している。

(ア)「本願発明は、磁気検出素子および一対のリードを、第1の方向および第2の方向の双方において複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けるようにしたものである(便宜上、構成Aという)。
一方、引用文献1には、例えばFig.1に、X軸方向において磁束ガイド111に設けられた突起部112と磁束ガイド115に設けられた突起部116との間に挟まれた磁気感知構造150を備えたデバイスが開示されている。
しかしながら、引用文献1では、磁気感知構造が、X軸方向において磁束ガイドおよび突起部の少なくとも一方の重なり合う位置に配置されている。すなわち、引用文献1には、磁気感知構造150と、それにセンス電流を供給するリードとが、突起部を含む階層と異なる階層に設けられた構成について、何ら記載も示唆もなされていない。」(以下、「主張A」という。)

(イ)「本願発明は、」「構成Aを有することで、すなわち、第3の方向において、突起部が設けられた位置と磁気検出素子が設けられた位置とがずれているので、例えば第1の軟磁性体から導入されて第1の軟磁性体に設けられた突起部を通る磁束が、磁気検出素子にスムーズに導かれて第2の軟磁性体へ排出されることとなる。また、第3の方向において、突起部が設けられた位置と磁気検出素子の位置とリードの位置とが異なっているので、磁場検出装置を形成するにあたり、突起部の形成、磁気検出素子の形成、およびリードの形成がそれぞれ容易になされる。そのうえ、平面内でのリードの引き回しのレイアウトのデザインが比較的自由に実施できるなど、設計自由度が向上する。」(以下、「主張B」という。)

イ 上記主張について検討する。
(ア)上記主張Aについて
請求人が主張するように、引用文献1には、磁気感知構造150と、それにセンス電流を供給するリードとが、突起部を含む階層と異なる階層に設けられた構成について記載されていない。
しかしながら、当該構成は、特許請求の範囲において記載されていない。 また、上記「(2)対比」で述べたように、本願発明1の「前記磁気検出素子および前記一対のリードは、前記第1の方向および前記第2の方向の双方において前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられている」構成は、「前記磁気検出素子および前記一対のリード」が、「第1の方向」だけでなく「第2の方向」においても「前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置」に設けられていない構成(すなわち、「前記磁気検出素子および前記一対のリード」と「前記複数の突起部のうちの少なくとも1つ」が、「第1の方向」から見ても、「第2の方向」から見ても、「重なり合う」ような位置を考えたとき、そのような位置に「前記磁気検出素子および前記一対のリード」が設けられていないこと)を意味する。それゆえ、本願発明1の当該構成は、「前記磁気検出素子および前記一対のリード」が、「第1の方向」だけでなく「第2の方向」においても「前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合」わない位置に設けられていること、すなわち、「第3の方向」において、「前記磁気検出素子および前記一対のリード」が設けられる階層と、「前記複数の突起部のうちの少なくとも1つ」が設けられる階層が異なることを意味するものではない。
したがって、上記主張Aは採用できない。

仮に、本願発明1の「前記磁気検出素子および前記一対のリードは、前記第1の方向および前記第2の方向の双方において前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられている」構成が、上記主張Aに従って、「前記磁気検出素子および前記一対のリード」が、「第1の方向」だけでなく「第2の方向」においても「前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合」わない位置に設けられている構成、すなわち、「第3の方向」において、「前記磁気検出素子および前記一対のリード」が設けられる階層と、「前記複数の突起部のうちの少なくとも1つ」が設けられる階層が異なることを意味するとしても、以下のように、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
国際公開第2011/081197号(特に、[0042]、[0074]、[0087]、[0088]、[図15]参照)に見られるように、磁気検出装置において、磁性体と磁気検出素子を斜め方向に配置して、磁性体から磁気検出素子に対して磁束線を斜め方向に誘導する技術は周知技術であるから、引用発明において、「磁気感知素子150」を通る磁束線を斜め方向に誘導するために、「突起部112」および「突起部116」と、「磁気感知素子150」とを斜め方向に配置することは、当該周知技術を知る当業者であれば、適宜設計し得たことである。また、垂直方向において、「突起部112」および「突起部116」が設けられる階層と、「磁気感知素子150」が設けられる階層を異ならせること(すなわち、「磁気感知素子150」が、x軸方向(「第1の方向」に相当。)だけでなく、z軸方向(「第2の方向」に相当。)においても、「突起部112」や「突起部116」と重なり合わない位置に設けられているようにすること)は、当業者が、上記磁束線を誘導する斜め方向の角度をどの程度とするかを考慮しつつ、「突起部112」、「突起部116」、および、「磁気感知素子150」の配置を適宜設計して行う程度のことに過ぎない。
引用発明において、「磁気感知構造150」へセンス電流を流す手段として、垂直方向において「GMR多層構造」の「磁気感知構造150」を挟み、「磁気感知構造150」にセンス電流を供給可能な一対のリードを設けた際に、当該一対のリードについても同様に、垂直方向において、「突起部112」および「突起部116」が設けられる階層と、一対のリードが設けられる階層を異ならせること(すなわち、一対のリードが、x軸方向(「第1の方向」に相当。)だけでなく、z軸方向(「第2の方向」に相当。)においても、「突起部112」や「突起部116」と重なり合わない位置に設けられているようにすること)は、当業者が、一対のリードに電流を流す電流経路(換言すると、一対のリードの配線)を設ける際に、適宜決定すべき事項に過ぎない。
なお、本願発明1の「前記磁気検出素子および前記一対のリードは、前記第1の方向および前記第2の方向の双方において前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられている」構成以外の構成については、上記「(2)対比」、上記「(3)相違点についての判断」で検討したとおりである。

(イ)上記主張Bについて
上記「(ア)」で述べたように、本願発明1の「前記磁気検出素子および前記一対のリードは、前記第1の方向および前記第2の方向の双方において前記複数の突起部のうちの少なくとも1つと重なり合う位置と異なる位置に設けられている」構成は、「前記磁気検出素子および前記一対のリード」が設けられる階層と、「前記複数の突起部のうちの少なくとも1つ」が設けられる階層が異なること(すなわち、「第3の方向において、突起部が設けられた位置と磁気検出素子が設けられた位置とがずれている」こと)を意味するものではない。それゆえ、本願発明1の当該構成により、「磁場検出装置を形成するにあたり、突起部の形成、磁気検出素子の形成、およびリードの形成がそれぞれ容易になされる」効果や、「平面内でのリードの引き回しのレイアウトのデザインが比較的自由に実施できるなど、設計自由度が向上する」効果が発揮されるものとは認められない。
したがって、上記主張Bは採用できない。

よって、請求人の主張は、採用することができない。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-03-19 
結審通知日 2020-03-24 
審決日 2020-04-07 
出願番号 特願2016-208785(P2016-208785)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平荒井 誠  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 濱野 隆
梶田 真也
発明の名称 磁場検出装置  
代理人 特許業務法人つばさ国際特許事務所  
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