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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1362628
審判番号 不服2019-4849  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-11 
確定日 2020-05-21 
事件の表示 特願2016- 6292「電子部品、実装電子部品および電子部品の実装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月20日出願公開、特開2017-126715〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年1月15日に出願したものであって、平成30年7月9日付け拒絶理由通知に対して同年9月13日付けで手続補正がなされたが、平成31年1月8日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年4月11日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成30年9月13日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
長手方向を有するセラミック素体、
前記セラミック素体の長手方向における一端側に形成された一方の外部電極、および
前記セラミック素体の長手方向における他端側に形成された他方の外部電極を含み、
前記一方の外部電極は、前記セラミック素体上に形成されたNiめっき層および前記Niめっき層上に形成されたSnめっき層を含み、
前記他方の外部電極は、前記セラミック素体上に形成されたAuめっき層を含む、電子部品。」

第3 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開昭64-35905号公報
引用文献2:特開2011-108966号公報(周知技術を示す文献)

第4 当審の判断
1.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された特開昭64-35905号公報には、「回路基板に対するコンデンサの取付方法」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。)。

(1)「次に、本発明の第1の実施例に係わる回路基板に対する積層磁器コンデンサの取付け方法を説明する。第1図に示す積層磁器コンデンサ1は、誘電体磁器2と、この中に設けられた第1及び第2の内部電極3、4と、第1及び第2の内部電極3、4に接続された第1及び第2の外部電極5、6とから成る。従来、この種の積層磁器コンデンサ1を回路基板に取付けて混成集積回路装置を製作する場合には、第1及び第2の外部電極5、6に対向するように一対のランドを設け、この一対のランドに第1及び第2の外部電極5、6を半田付けした。これに対し、本実施例では、絶縁(アルミナ)回路基板7の上に第1及び第2の外部電極5、6の両方を半田付けするランドを設けず、第1の外部電極5を半田付けするランド8のみを設ける。同時に第2の外部電極6をワイヤ9で接続するためのワイヤボンディング部分10を設ける。勿論、回路基板7には他の回路部品を取付けるための配線導体及び厚膜抵抗等も設ける。」(第2頁右上欄第3行ないし左下欄第1行)

(2)「次に、回路基板7の上のランド8及びその他の必要箇所にクリーム半田を印刷する。この時、ワイヤボンディグ部分10にクリーム半田を塗布する必要はない。
次に、第1及び第2の外部電極5、6を相互に結ぶ直線が回路基板7の主面に対して直角になるように積層磁器コンデンサを縦配置し、第1の外部電極5をランド8に半田11で固着する。なお、半田11による固着はクリーム半田のリフローによって行う。同時に他の回路部品(図示せず)も回路基板7に固着させる。
積層磁器コンデンサ1を縦配置したために第2の外部電極6は回路基板7のランドには固着されない。そこで、ワイヤ9によって第2の外部電極6とワイヤボンディング部分10との間を接続する。ワイヤボンディング部分10は回路基板7上の配線導体の一部であるので、ワイヤ9のボンディングによって積層磁器コンデンサ1の電気的接続が達成され、混成集積回路が完成する。第2の外部電極6は半田によって回路基板7のランドに固着されないために、第1の外部電極5と第2の外部電極6とが半田によって短絡されることはない。」(第2頁左下欄第2行ないし右下欄第4行)

(3)「

」(第1図)

・上記(1)によれば、積層磁器コンデンサ1は、誘電体磁器2と、第1及び第2の内部電極3、4と、第1及び第2の外部電極5、6とからなるものである。また、ランド8及びワイヤボンディング部分10は、絶縁回路基板7上に設けられるものである。
・上記(2)及び(3)によれば、第1の外部電極5は、半田11でランド8に接続され、第2の外部電極6は、ワイヤ9でワイヤボンディング部分10に接続されるものである。
・上記(3)によれば、第1の外部電極5は、誘電体磁器2の一端側に形成されるものである。そして、第2の外部電極6は、誘電体磁器2の前記一端側に対向する他端側に形成されるものである。

上記摘示事項および図面を総合勘案すると、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「誘電体磁器と、第1及び第2の内部電極と、第1及び第2の外部電極とからなり、
前記第1の外部電極は、前記誘電体磁器の一端側に形成され、
前記第2の外部電極は、前記誘電体磁器の前記一端側に対向する他端側に形成され、
前記第1の外部電極は、半田で絶縁回路基板上に設けられたランドに接続され、
前記第2の外部電極は、ワイヤで前記絶縁回路基板上に設けられたワイヤボンディング部分に接続される、
積層磁器コンデンサ。」

2.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「誘電体磁器」は、磁器がセラミックの一種であるから、本願発明の「セラミック素体」に相当する。
ただし、セラミック素体について、本願発明は「長手方向を有する」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

(2)上記(1)を踏まえると、引用発明の「第1の外部電極」は、誘電体磁器の一端側に形成されるものであるから、本願発明の「前記セラミック素体の」「一端側に形成された一方の外部電極」に相当する。
ただし、セラミック素体の一端側について、本願発明は「前記セラミック素体の長手方向における一端側」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。
また、一方の外部電極について、本願発明は「前記セラミック素体上に形成されたNiめっき層および前記Niめっき層上に形成されたSnめっき層を含」むのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

(3)上記(1)を踏まえると、引用発明の「第2の外部電極」は、誘電体磁器の一端側に対向する他端側に形成されるものであるから、本願発明の「前記セラミック素体の」「他端側に形成された他方の外部電極」に相当する。
ただし、セラミック素体の他端側について、本願発明は「前記セラミック素体の長手方向における他端側」であるのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。
また、他方の外部電極について、本願発明は「前記セラミック素体上に形成されたAuめっき層を含む」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点で相違する。

(4)引用発明の「積層磁器コンデンサ」は、本願発明の「電子部品」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「セラミック素体、
前記セラミック素体の一端側に形成された一方の外部電極、および
前記セラミック素体の他端側に形成された他方の外部電極を含む、電子部品。」の点で一致し、
以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明においては、セラミック素体が「長手方向を有する」とともに、一方の外部電極が形成されたセラミック素体の一端側が「前記セラミック素体の長手方向における一端側」であり、他方の外部電極が形成されたセラミック素体の他端側が「前記セラミック素体の長手方向における他端側」であるのに対し、引用発明においては、その旨の特定はされていない点。

<相違点2>
一方の外部電極について、本願発明は「前記セラミック素体上に形成されたNiめっき層および前記Niめっき層上に形成されたSnめっき層を含」むのに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点。

<相違点3>
他方の外部電極について、本願発明は「前記セラミック素体上に形成されたAuめっき層を含む」のに対し、引用発明にはその旨の特定はされていない点。

3.判断
上記相違点について検討する。

(1)<相違点1>について
積層セラミックコンデンサのような電子部品のセラミック素体について、内部電極が積層された方向の長さよりも、外部電極間の長さを長くすることは、ごく普通に行われていることにすぎない。
したがって、引用発明のセラミック素体について、内部電極が積層された方向の長さよりも、一方の外部電極と他方の外部電極との間の長さを長くして上記相違点1の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

(2)<相違点2>及び<相違点3>について
電子部品をはんだ接続する場合には、該電子部品の外部電極を、セラミック素体上に形成されたNiめっき層及び前記Niめっき層上に形成されたSnめっき層を含む構成とし、電子部品をワイヤボンディング接続する場合には、該電子部品の外部電極を、セラミック素体上に形成されたAuめっき層を含む構成として、接続しやすさを考慮して電子部品の接続形態に応じた適切な材料を選択することは、例えば特開2011-108966号公報(原査定において周知技術を示す文献として引用された引用文献2。段落【0031】ないし【0033】、【0036】ないし【0039】及び図4を参照。以下「周知例1」という。)及び特開2009-283597号公報(段落【0027】、【0031】、【0032】及び図4を参照。以下「周知例2」という。)に記載されているように、周知の技術事項である。
したがって、引用発明の、半田でランドに接続される一方の外部電極、及びワイヤでワイヤボンディング部分に接続される他方の外部電極について、周知の技術事項のように接続しやすさを考慮して、該一方の外部電極を、セラミック素体上に形成されたNiめっき層及び前記Niめっき層上に形成されたSnめっき層を含む構成とし、該他方の外部電極を、セラミック素体上に形成されたAuめっき層を含む構成として上記相違点2及び3の構成とすることは、当業者が容易になし得た事項である。

この点について、審判請求人は、審判請求書にて「通常は、電子部品を製造する場合、工数やコストの関係から、いわゆる当業者であれば、1つの電子部品に対して異なるめっき構成を有する外部電極を形成することを避けるようにして、電子部品を製造するものと考えます。・・・(中略)・・・従いまして、引用文献1に対して引用文献2に開示される技術を組み合わせる動機付けが存在せず、本願発明に想到することは困難であると思料いたします。」旨を主張している。
しかしながら、電子部品を設計する際に、工数やコストを優先して材料を選択するか、接続しやすさを優先して接続形態に応じた適切な材料を選択するかは、当業者が適宜選択し得る事項であるから、引用発明の一方の外部電極及び他方の外部電極の材料を選択する場合においても、接続しやすさを優先して接続形態に応じた適切な材料を選択することに格別の技術的困難性は認められない。
よって、請求人の主張は採用できない。

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項から当業者が容易になし得たものである。
そして、本願発明の作用効果も、引用文献1及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-03-13 
結審通知日 2020-03-17 
審決日 2020-03-30 
出願番号 特願2016-6292(P2016-6292)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 堀 拓也  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 山澤 宏
佐々木 洋
発明の名称 電子部品、実装電子部品および電子部品の実装方法  
代理人 岡田 全啓  

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