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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B65D
管理番号 1362649
審判番号 不服2019-14306  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-28 
確定日 2020-06-15 
事件の表示 特願2015-137816「ロール製品パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年1月26日出願公開、特開2017-19521、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年7月9日の出願であって、平成30年12月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成31年2月18日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年7月29日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、令和元年10月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1-2に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2015-101388号公報
2.特開2011-189965号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は、請求項1に「(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.038?0.084(mm/(g/m^(2)))である」を追加するとともに、ロール製品の巻長を「127?160m」、1ロールの質量を「266?337g」、巻き硬さを「1.1?2.4mm」、フィルムの坪量を「25.8?34.7g/m^(2)」、包装袋の傾斜角θを「28?40度」、長辺同士の間隔Wを「112?127mm」に、その範囲を狭めるものであるから、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。
また、「(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.038?0.084(mm/(g/m^(2)))である」とする事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書」という。)の請求項2及び段落0039に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。さらに、ロール製品の巻長、質量及び巻き硬さ、フィルムの坪量、包装袋の傾斜角及び長編同士の間隔を所定の範囲とする事項は、当初明細書の段落0039に記載された事項であり、新規事項を追加するものではない。
そして、以下の「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は、令和元年10月28日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の1plyのシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段または3段重ねて前記包装袋に包装してなり、
前記包装袋は筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部と、を有し、
前記把持部には指掛け穴が形成されており、
前記ロール製品の巻長が127?160m、コアを除く1ロールの質量が266?337g、巻き硬さが1.1?2.4mmであり、
前記フィルムの坪量が25.8?34.7g/m^(2)であり、
前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが28?40度であり、
前記長辺同士の間隔Wが112?127mm
(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.038?0.084(mm/(g/m^(2)))であるロール製品パッケージ。
【請求項2】
前記シートの1枚当たりの坪量が16?22g/m^(2)である請求項1記載のロール製品パッケージ。」

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した長巻のロール製品は1個のロール当りの重量が大きいため、ロール製品を包装したパッケージを消費者が持ち運ぶ際、持ち手部や包装袋の底面に荷重がかかる。そこで、包装袋の本体や持ち手部等の強度を確保するために、包装袋を厚くすることが考えられる。ところが、包装袋を厚くして強度を高くすると、ロール製品を包装した際、ロール製品を締め付ける力が増してロールが潰れやすくなったり、フィルムがゴワゴワしてフィルムの触感が悪くなるという問題がある。また、ロールが潰れにくくなるようにロールを固く巻くと、ロールを持った時の柔らかさが劣るという問題がある。
従って、本発明は、長巻のロール製品を包装袋に収納したロール製品パッケージにおいて、持ち運ぶ際に破れにくくてゴワゴワせず、かつ適度な巻き硬さを有するロール製品を包装した場合にロール製品が潰れ難いロール製品パッケージの提供を目的とする。」

イ 「【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るロール製品パッケージ100の斜視図を示す。ロール製品パッケージ100は、チューブ状フィルムからなる包装袋2と、包装袋2に収納された複数個のロール製品6と、包装袋2の上端側に取り付けられた持手部4とを備えている。ロール製品パッケージ100は上面が略正方形の箱状をなしている。
【0010】
ロール製品6は、衛生薄葉紙のシートを巻いてなり、例えばトイレットペーパーのロール体である。ロール製品が2plyの場合、巻長が65?95m、コア(芯)を除く質量が200?350g、巻き硬さが1.0?3.0mmである。ロール製品が1plyの場合、巻長が125?185m、コアを除く質量が250?430g、巻き硬さが0.5?2.5mmである。」

ウ「【0013】
包装袋2は、例えば、チューブ状フィルムの内部に複数個のロール製品6を配置し、公知の包装方法(例えば、キャラメル包装、ガゼット包装等)で包装されている。なお、図1の例では、ロール製品6は、平面上に縦2個、横2個で配置され、これを包装袋2で包装している。
ロール製品パッケージ100に収納されるロール製品6のロール数は特に制限されないが、好ましくは2?12個、より好ましくは4?8個、さらに好ましくは4?6個、最も好ましくは4個である。ロール数が少ないと、ロールを購入する頻度が多くなり面倒となる。また、ロール数が多くなると、重量が重くなるため持ち運びが大変である。
【0014】
包装袋2を構成するフィルムの坪量が25?45g/m^(2)である。
フィルムの坪量が25g/m^(2)未満であると、強度が低下し、パッケージの運搬時等に包装袋が破れる。フィルムの坪量が45g/m^(2)を超えると、強度が高くなり過ぎ、ロール製品を包装した際、ロール製品を締め付ける力が増してロール製品が潰れやすくなったり、フィルムがゴワゴワする。フィルムの坪量は、好ましくは30?45g/m^(2)、より好ましくは30?38g/m^(2)である。・・・」

エ「【0015】
上記した巻長、質量、巻き硬さを有する長巻のトイレットペーパーは、通常のトイレットペーパーに比べて1ロールの重量が重いため、通常のトイレットペーパー用のフィルムで包装すると、フィルムが破れやすい。一方、フィルムの坪量を高めて強度を高くすると、ロール製品を締め付ける力が強くなり、ロール製品が潰れやすくなる。そこで、本発明はフィルムの強度(坪量)を適正な範囲に規定している。
特に、ロール製品の巻き硬さ/フィルムの坪量をコントロールすると、ロール製品がさらに潰れにくく、かつ、フィルムの強度を適正にすることができる。
【0016】
具体的には、ロール製品が2plyの場合、(巻き硬さ(mm)/フィルムの坪量(g/m^(2)))を好ましくは0.020?0.100(mm/(g/m^(2)))、より好ましくは0.040?0.070(mm/(g/m^(2)))とする。また、ロール製品が1plyの場合、(巻き硬さ/フィルムの坪量)を好ましくは0.015?0.080(mm/(g/m^(2)) より好ましくは0.025?0.050(mm/(g/m^(2)))とする。・・・」

オ「【0017】
ロール製品が2plyの場合、シートの坪量が13.1?17.0g/m^(2)であることが好ましい。ロール製品が1plyの場合、シートの1plyの坪量が16.5?21.5g/m^(2)であることが好ましい。なお、シートが複数プライの衛生薄葉紙からなる場合、シートの坪量は、シート1枚(ply)当りの坪量で表す。・・・なお、巻直径は100?135mmであることが好ましく、100?125mmであることがより好ましい。・・・」

カ「【0024】
図2は、本発明の第2の実施形態に係るロール製品パッケージ102の斜視図を示す。ロール製品パッケージ102は、4個のロール製品6を1段当り2個並べたものを2段に配置し、これを包装袋20で包装してなる。ロール製品パッケージ102は上面が略矩形の箱状をなしている。・・・」

キ 【0033】には、実施例8、9として以下の点が記載されている。
実施例8
トイレットロール製品(1ply):巻長 150m、巻直径 120mm、コアを除く質量 325g、巻き硬さ 1.3mm、シート1枚あたりの坪量 19.0g/m^(2)
フィルム:坪量 32.6g/m^(2)
(巻き硬さ/フィルムの坪量):0.040mm/(g/m^(2))

(イ)実施例9
トイレットロール製品(1ply):巻長 128m、巻直径 120mm、コアを除く質量 277g、巻き硬さ 1.8mm、シート1枚あたりの坪量 19.0g/m^(2)
フィルム:坪量 32.6g/m^(2)
(巻き硬さ/フィルムの坪量):0.055mm/(g/m^(2))

ク 図2の記載からみて、上面視略矩形の箱状のロール製品パッケージの長辺同士の間隔は、ロール直径と同様のものと認められる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の1plyのシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してなり、前記包装袋はチューブ状の袋から構成され、前記ロール製品を囲む上面視略矩形の箱状の部分と持手部と、を有し、前記ロールの巻長が128?150m、コアを除く1ロールの質量が277?325g、巻き硬さが1.3?1.8mmであり、前記フィルムの坪量が32.6g/m^(2)であり、上面視略矩形の箱状の部分の互いに対向する長辺同士に間隔が120mm、(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.040?0.055であり、前記シート1枚当たりの坪量が19.0g/m^(2)であるロール製品パッケージ。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落[0013]-[0014]、段落[0021]-段落[0024]及び[図6]の記載からみて、当該引用文献2には、フィルムからなる包装袋に、ロール製品を8個収納してなるロール製品パッケージであって、ロール製品が軸方向を上下にして縦横2列に2個ずつ並べた段を2段重ねて包装袋に包装してなり、包装袋は、筒状のガゼット袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、前記本体部の一対の上辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に伸びて接合された持手部とを有し、持手部にはスリットが形成されており、前記上辺から持手部までの前記包装袋のパネル部の傾斜角が20?50度であるロール製品パッケージ、という技術的事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「上面視略矩形の箱状の部分」は、本願発明1の「本体部」に相当し、以下同様に、「持手部」は「把持部」に、「チューブ状」は「筒状」に相当する。また、引用発明1におけるロール製品の巻長、コアを除く1ロールの質量及び巻き硬さ、フィルムの坪量、ロール製品パッケージの長辺同士の間隔及び(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))は、全て本願発明1の数値範囲内に包含されるものである。

してみると、本願発明1と引用発明とは、
「フィルムからなる包装袋に、衛生薄葉紙の1plyのシートを巻いたロール製品を複数個収納してなるロール製品パッケージであって、
前記ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段重ねて前記包装袋に包装してなり、
前記包装袋は筒状の袋から構成され、前記ロール製品を囲む略直方体状の本体部と、把持部と、を有し、
前記ロール製品の巻長が127?160m、コアを除く1ロールの質量が266?337g、巻き硬さが1.1?2.4mmであり、
前記フィルムの坪量が25.8?34.7g/m^(2)であり、
前記長辺同士の間隔Wが112?127mm
(前記巻き硬さ(mm)/前記フィルムの坪量(g/m^(2)))が0.038?0.084(mm/(g/m^(2)))であるロール製品パッケージ。」
である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本願発明1では、筒状の袋が「ガゼット袋」であるのに対して、引用発明ではガゼット袋であるかどうか不明な点。

(相違点2)
本願発明1では、「前記本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に延びて接合された把持部」であって「前記把持部には指掛け穴が形成されて」いるのに対して、引用発明では、そのような構成がない点。

(相違点3)
本願発明1では、「前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが28?40度」であるのに対して、引用発明では、そのような構成がない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1?3について検討する。

ア 相違点1については、引用文献1の段落[0013]に「包装袋2は、例えば、チューブ状フィルムの内部に複数個のロール製品6を配置し、公知の包装方法(例えば、キャラメル包装、ガゼット包装等)で包装されている。」と記載されており、ガゼット袋で包装することが示唆されている。そして、引用文献2には、ロール製品をガゼット袋で包装したロール製品パッケージが記載されており、引用文献2記載事項に触れた当業者が、引用発明1における包装袋をガゼット袋とすることは、容易になし得たものというべきである。

イ 相違点2について検討すると、引用文献2には、筒状のガセット袋から構成された包装袋の本体部の一対の上辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に伸びて接合された持手部とを有し、持手部にはスリットが形成されているロール製品パッケージが記載されている。ここで、引用文献2記載事項のスリットは本願発明1の指掛け穴に相当するものである。そして、上述のとおり、引用文献1には包装袋をガゼット袋とすることが示唆されており、引用文献2記載事項に触れた当業者が、引用発明の包装袋において、本体部の一対の上辺から上方に向かってそれぞれ切妻屋根型に伸びて接合された持手部とを有し持手部に指掛け穴を形成することは、容易になし得たものというべきである。さらに、引用発明に引用文献2記載事項を組み合わせる際、「本体部の上辺のうち、互いに対向する長辺」から上方に向かって、それぞれ切妻屋根型に延ばすように構成することは、当業者が適宜なし得た設計変更というべきである。

ウ 相違点3について検討すると、引用文献2記載事項は、本体部の上辺から持手部までの包装袋のパネル部の傾斜角が20?50度とするのみであって、傾斜角を28?40度とすることまでは記載されていない。また引用文献2記載事項は、ロール製品が軸方向を上下にして縦横2列に2個ずつ並べた段を2段重ねて包装袋に収納したロール製品パッケージにおける傾斜角を示しているのみであって、本願発明1のごとく、ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段又は3段重ねて前記包装袋に包装したロール製品パッケージの傾斜角度については、なんら開示するものではない。
そして、本願発明1は、ロール製品が軸方向を上下にして一列に2個並べた段を2段又は3段重ねて前記包装袋に包装したロール製品パッケージにおいて、本体部の長辺から把持部までの傾斜角を28?40度とすることで、特に有利な効果を奏するもの(段落[0008]、[0019]、[0040])と認められることから、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2記載事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。


2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の構成を全て備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2記載事項に基いて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-2は「前記長辺から前記把持部までの前記包装袋の傾斜角θが28?40度」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-2に記載された発明に基いて、容易に発明をすることができたものとはいえない。したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。












 
審決日 2020-05-27 
出願番号 特願2015-137816(P2015-137816)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B65D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西山 智宏田中 佑果  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 佐々木 正章
間中 耕治
発明の名称 ロール製品パッケージ  
代理人 赤尾 謙一郎  

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