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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L |
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管理番号 | 1362657 |
審判番号 | 不服2018-4516 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-04 |
確定日 | 2020-05-20 |
事件の表示 | 特願2016-549743「高効率ワイヤレスネットワークにおける向上した通信効率のためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日国際公開、WO2015/120172、平成29年 4月 6日国内公表、特表2017-510165〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯及び本願発明 1 手続の経緯 本願は,2015年(平成27年)2月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年2月5日,2015年2月4日,いずれも米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 2月 6日 :手続補正書の提出 平成29年 2月14日付け:拒絶理由通知書 平成29年 5月22日 :意見書,手続補正書の提出 平成29年 6月 1日付け:拒絶理由通知書 平成29年 9月 8日 :意見書,手続補正書の提出 平成29年12月 1日付け:拒絶査定 平成30年 4月 4日 :拒絶査定不服審判の請求 平成31年 3月12日付け:拒絶理由通知書 令和 元年 5月16日 :意見書,手続補正書の提出 令和 元年 7月17日付け:拒絶理由通知書 令和 元年10月15日 :意見書,手続補正書の提出 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は,令和元年5月16日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された,次のとおりのものである。 「ワイヤレス通信のための装置であって, レガシープロトコルに比べて高い効率のプロトコルを利用する複数のデバイスの各々へのワイヤレス通信のために異なるリソースを割り当てることであって,前記リソースは,全ての割り当てられたリソースにわたって共通の単一のアップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内のデータトーンのサブセットを少なくとも備え,前記単一のアップリンクまたはダウンリンクトーンプランは前記複数のデバイスと他のデバイスとの間の同時レガシー動作が必要とされない場合に使用される,割り当てることと, 前記複数のデバイスへの前記リソースの割り当てを提供することと, 前記割り当てられたサブセットに関連付けられたアップリンクまたはダウンリンクトーンプランに従ってメッセージを処理することであって,前記割り当てられたサブセットの各々は,1つまたは複数のパイロットトーンを備える,処理することと, を行うように構成された処理システム, を備える,ワイヤレス通信のための装置。」 第2 当審の拒絶理由通知書の概要 当審の拒絶の理由である,令和元年7月17日付け拒絶理由通知の理由は,概略,次のとおりである。 この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 請求項1に「複数のデバイスの各々へのワイヤレス通信のために異なるリソースを割り当てることであって,前記リソースは,全ての割り当てられたリソースにわたって共通の単一のアップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内のデータトーンのサブセットを少なくとも備え」と記載されているが,発明の詳細な説明に,「単一のアップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内のデータトーンのサブセットを少なくとも備え」る「リソース」を,「複数のデバイスの各々」に「割り当てる」ことを,どのように行うのかについて,当業者がそれを実施することができる程度に記載されていない。 段落【0099】の記載に関し,4個のデバイスである「STA106A-106D」のそれぞれに「4パイロットトーン」を割り当てるには,16個のパイロットトーンが必要であるから,「8の利用可能なパイロットトーン」を「分割」して,「各デバイス」に「4パイロットトーン」を割り当てることは不可能であり,また,「分割」前の「234の利用可能なデータトーン,および8の利用可能なパイロットトーン」にはガードトーンが存在しないから,それらを「分割」して「各デバイス」に「2ガードトーン」を割り当てることも不可能である。そして,それらの割り当てが何故可能であるのか,発明の詳細な説明の記載から理解することができない。 第3 当審の判断 1 本願の発明の詳細な説明の記載事項 本願の発明の詳細な説明には,以下の記載がある(令和元年10月15日提出の手続補正書による補正後のもの。下線は当審による。)。 (1)「【0004】 [0004] ワイヤレスネットワークにおけるデバイスは,互いの間で情報を送信/受信し得る。デバイス送信は互いに干渉し得,ある特定の送信は他の送信を選択的にブロックし得る。多くのデバイスが通信ネットワークを共有する場合,輻輳および非効率なリンク使用に帰着し得る。そのため,高効率ワイヤレス通信ネットワークにおける通信効率を改善するためのシステム,方法,および非一時的コンピュータ可読媒体が必要とされる。」 (2)「【0060】 [0065] 図4は,一態様に従った,実例的なトーンプラン400を示す。ある態様では,トーンプラン400が,16ポイントIFFTを使用して生成される,周波数ドメインにおける,OFDMトーンに対応する。トーンプラン400は,-8から7のインデックスを付けられる16OFDMトーンを含む。トーンプラン400は,2セットのガードトーン410,2セットのデータ/パイロット400,および1セットの直流(DC)トーン430を含む。様々な例において,ガードトーン410およびDC430はヌルであり得る。ある態様では,データ/パイロットトーン420が,10データトーンおよび2パイロットトーンを含み得る。様々な態様において,トーンプラン400は,別の適した数のパイロットトーンを含む,および/または他の適したトーン位置においてパイロットトーンを含む。 【0061】 [0066] 16トーンプラン400が図4に示されるものの,(32-,48-,64-,96-,128-,192-,256-,320-,384-,448-,512-,768-,1024,1280-,1536-,1792-,および2048-トーンプランのような)同様のトーンプランが使用され得る。以下の表2は,様々な態様に従った,様々なFFTサイズのための例示的なトーンプランを示す。当業者は,データ,パイロット,DC,およびガードトーンの他の組み合わせが使用され得ることを認識するであろう。」 (3)「【0082】 [0086] いくつかの態様では,AP104が,ULおよびDL通信の各々のために,HEW STAに単一トーンプランのサブセットを割り当てることによって,ワイヤレス媒体へのアクセスを制御し得る。例えば,図1に関して,STA106A-106Dは,HEW STAであり得る。この態様では,OFDMAゾーン中で,データ/パイロットトーンの総数を増加させることが望ましいことであり得る。いくつかの態様では,単一トーンプラン内の向上した効率が,同時レガシー動作を不可能にさせ得る。いくつかの態様では,AP104が,STA106A-106Dの各々に,単一アップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内の別個のトーンサブセットを割り当てるように構成され得る。従って,各STA106A-106Dは,単一トーンプラン(トーンマップとも称され得る)に従ってその割り当てられたトーンのサブセットにアクセスするように構成され得る。 【0083】 [0087] 図6は,一態様に従った,実例的な帯域幅割り当て600の図である。図6に示されるように,OFDMAゾーンは,帯域幅610を含み得る。帯域幅610全体が,アップリンク通信のための単一トーンプラン630,およびダウンリンク通信のための単一トーンプラン630,に関連付けられ得る。単一トーンプラン630は,HEW STA106A-106Dのような,複数のデバイス間で分けられ得る。 【0084】 [0088] 図1および6を参照すると,AP104は,STA106A-106Dの各々に,単一トーンプラン630におけるデータ/パイロットトーンのサブセットを割り当て得る。4つのSTA106A-106Dが示されるものの,単一トーンプラン630は,任意の数のトーンサブセットに分割され得る。様々な態様において,割り当てられたサブセットは,単一トーンプラン630において定義されたデータ/パイロットトーン間で,連続し得るか,均等に隔てられ得るか,または断続的に隔てられ得る。いくつかの態様では,単一トーンプラン630が,STA106A-106Dの間で均等に分割され得る。他の態様では,異なる数のトーンが,STA106A-106Dの間で割り当てられ得る。 【0085】 [0089] 様々な態様において,単一トーンプラン630は,OFDMAゾーンの帯域幅610に基づいて,様々な高速フーリエ変換(FFT)サイズを有し得る。本明細書においてFFTという用語が使用されるものの,当業者は,離散フーリエ変換(DFT),逆DFT(IDFT),および逆FFT(IFFT)のような他の変換が,様々な状況で使用され得ることを認識するであろう。上記の表1は,様々な態様に従った,様々なシンボル持続時間モードのための実例的なトーンプランサイズを示す。 【0086】 [0090] 従って,帯域幅610が80MHzである実例的な態様では,STA106A-106Dが,256トーンプランに従って1xシンボル持続時間メッセージを送信および/または受信し得,1024トーンプランに従って4xシンボル持続時間メッセージを送信および/または受信し得る。さらに,STA106A-106Dの各々が物理チャネルを共有するので,HEW STA106A-106Dは,単一トーンプラン630内でSTAと相互動作しないことがある。 【0087】 [0091] 上で表1に示されたFFTサイズの各々は,ULおよびDLのための単一トーンプラン630に関連付けられ得る。いくつかの態様では,単一トーンプラン630が,ULおよびDL通信に関して同じである。他の態様では,単一トーンプラン630が,ULに関して,DL通信とは異なり得る。実例的なトーンプランは,図4に関連して上で論じられている。STA106A-106Dの各々が,同じ単一トーンプラン630に従ってメッセージを送信および/または受信するので,(図3に関連して上で論じられたマルチキャリアトーン割り当てと比較されると)1または複数のミッドトーン(例えば,サブバンドガードトーン),サブバンドDCトーン,およびサブバンドパイロットトーンは,データトーンと置き換えられ得る。」 (4)「【0096】 0098] 様々な態様において,UL通信では,単一トーンプラン630が,デバイスごとのパイロットトーンを含み得る。様々な態様において,UL通信では,単一トーンプラン630が,サブバンドDCトーンを省略し得る。様々な態様において,UL通信では,単一トーンプラン630が,デバイス割り当て間に1または複数のガードトーンを含み得る。例えば,単一トーンプラン630は,トーンの各サブセット間に2ガードトーンを含み得る。表4は,2ガード(およびそれにより6ビットガードトーン)を各々が有する4つのサブセットを想定するものの,単一トーンプラン630は,異なる数のトーンサブセットに分割され得る。様々な態様において,DL通信では,サブバンド送信マスクが適用され得る。」 (5)「【0097】 [0099] 図7は,図1のワイヤレス通信システム100内で用いられ得るワイヤレス通信の別の実例的な方法のためのフローチャート700を示す。方法は,全体としてまたは部分的に,図2に示されるワイヤレスデバイス202のような,本明細書で説明されるデバイスによって実施され得る。例示される方法は,図1に関連して上で論じられたワイヤレス通信システム100,図2に関連して上で論じられたワイヤレスデバイス202,図3に関連して上で論じられた帯域幅割り当て300,および図4に関連して上で論じられたトーンプラン400,を参照して説明されるものの,当業者は,例示される方法が,本明細書で説明される別のデバイス,または任意の他の適したデバイスによって実施され得ることを認識するであろう。例示される方法が特定の順序を参照して本明細書で説明されるものの,様々な態様において,本明細書におけるブロックは,異なる順序で行われ得るまたは省略され得る,およびさらなるブロックが追加され得る。 【0098】 [00100] まず,ブロック710で,デバイス202は,複数のデバイスの各々に,ワイヤレス通信のために,単一アップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内のデータトーンのサブセットを割り当てる。例えば,AP104は,STA106A-106Dに,上で表3および4に示されたサブセットの任意の組み合わせを割り当て得る。様々な態様において,単一トーンプランは,表1に関連して上で論じられた帯域幅のいずれかを占有し得,表2に関連して上で論じられたいずれかのFFTサイズを有するトーンプランに関連付けられ得る。いくつかの態様では,デバイス202が,単一アップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内のデータトーンのサブセット,および周波数のサブバンドの両方を含むリソースを割り当て得る。 【0099】 [00101] 一態様では,プロセッサ204が,トーンの利用可能な量,およびワイヤレス媒体へのアクセスをリクエストするデバイスの数を決定し得る。プロセッサ204は,利用可能な帯域幅が越えられることのないように各デバイスに最大サブセットサイズを割り当て得る。例えば,AP104は,STA106A-106Dの数(4)で80MHz OFDMAゾーン310を分割し,各STA106A-106Dに20MHzサブバンド320A-320Bを割り当て得る。様々な他の態様において,プロセッサ204は,例えばSTA106A-106Dの優先度または能力に基づいて,ある特定のデバイスにより大きなサブバンドを割り得て得る。従って,DL通信では,AP104が,234の利用可能なデータトーンを分割し,各デバイスに,単一DLトーンプラン630の52データトーンを割り当て得る。UL通信では,AP104が,234の利用可能なデータトーンを分割し,各デバイスに,単一トーンプラン630の46データトーン,4パイロットトーン,および2ガードトーンを割り当て得る。 【0100】 [00102] 次に,ブロック720で,デバイス202は,デバイスへのサブセット割り当てを提供する。例えば,AP104は,各STA106A-106Dにサブセット割り当てのインジケーションを送信し得る。特に,プロセッサ204は,送信機210に,STA106A-106Dにサブバンド割り当てを送信させ得る。 【0101】 [00103] その後,ブロック730で,デバイス202は,単一トーンプランおよび割り当てられたデータトーンのサブセットに従ってメッセージを処理する。例えば,AP104は,単一DLトーンプラン630に従って,STA106AにDLメッセージを送信し得る。ある態様ではOFDMAゾーンが80MHzを占有するので,AP104は,256トーンプランに従ってDLメッセージを符号化および/または送信し得る。ある態様では割り当てられたデータトーンのサブセットが20MHzを占有するので,AP104は,STA106Aに関して256トーンプランにおける52データトーンを含み得る。様々な態様において,プロセッサ204は,送信機210に,割り当てられたデータトーンのサブセットに従って,DLメッセージを符号化および/または送信させ得る。いくつかの態様では,トーンプランが,割り当てられた周波数のサブバンド,および割り当てられたデータトーンのサブセットの両方に関連付けられ得る。」 2 判断 (1)請求項1に記載されている「複数のデバイスの各々へのワイヤレス通信のために異なるリソースを割り当てることであって,前記リソースは,全ての割り当てられたリソースにわたって共通の単一のアップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内のデータトーンのサブセットを少なくとも備え」に関し,発明の詳細な説明には,「単一のアップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内のデータトーンのサブセットを少なくとも備え」る「リソース」を,「複数のデバイスの各々」に「割り当てる」ことを,どのように行うのかについて,当業者がそれを実施することができる程度に記載されていない。その理由は以下のとおりである。 ア 段落【0060】及び【0061】の記載から,「トーンプラン」とは,例えば「10データトーンおよび2パイロットトーン」を「2セット」含む,あるいは,「別の適した数のパイロットトーン」を含むといった,異なる種類のトーンが所定個数ずつ組み合わされたものを指す用語であり,トーンの種類ごとの個数に応じて,各々の「トーンプラン」が生成されると理解される。 そうすると,請求項1の「単一のアップリンクまたはダウンリンクトーンプラン」は,アップリンクまたはダウンリンク全体を単一の「トーンプラン」とした,所定個数のデータトーンと所定個数のパイロットトーンとの組み合わせを意味していると認められる。 イ また,段落【0083】の「単一トーンプラン630は,HEW STA106A-106Dのような,複数のデバイス間で分けられ得る。」との記載や,段落【0084】の「AP104は,STA106A-106Dの各々に,単一トーンプラン630におけるデータ/パイロットトーンのサブセットを割り当て得る。4つのSTA106A-106Dが示されるものの,単一トーンプラン630は,任意の数のトーンサブセットに分割され得る。」との記載によれば,サブセットは,単一トーンプランを分割して得られるものである。 ウ しかしながら,請求項1の「単一のアップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内のデータトーンのサブセット」に関して,単一のトーンプランをどのように分割して「サブセット」とするのかについては,発明の詳細な説明の記載を参照しても理解することができない。具体的には,以下の(ア)及び(イ)がいずれも不明である。 (ア)段落【0004】の記載によれば,請求項1に係る発明は,「通信効率を改善する」ことを目的とするものと解されるが,発明の詳細な説明の記載からは,「通信効率を改善する」ことが可能な単一のトーンプランの分割をどのように行うのか不明である。 本願発明において「通信効率を改善する」ことが可能であると理解するためには, a 従来例の通信効率と本願発明の通信効率とを比較することで以前よりも通信効率が改善したと理解されること b 本願発明は,理論限界値に匹敵する通信効率を実現できるので,他と比較するまでもなく改善していることが明らかであること の少なくともいずれかが満たされることが必要である。 そこで,まず上記aについて検討する。 発明の詳細な説明には,従来例が記載されておらず,以前はどのような通信効率であったのかが不明であるから,本願発明において以前よりも「通信効率を改善する」ことが可能であると判断することはできない。 もっとも,段落【0052】に,「高効率ワイヤレス(HEW)局,(802.11axのような)802.11高効率プロトコルを利用する局,および(802.11bのような)より旧型(older)またはレガシー802.11プロトコルを使用する局の両方は,ワイヤレス媒体へのアクセスのために競合または協調し得る。」と記載されていることから,「レガシーSTA」が従来例に相当し,「HEW STA」が本願発明に相当するとみて,以下,さらに検討する。 段落【0058】の記載及び図3によれば,3つのHEW STA(106A-106C)及び1つのレガシーSTA(106D)にそれぞれ別個のトーンプランを割り当てる具体例として,帯域幅が20MHzの64トーンプランを割り当てることが理解される。また,当該具体例において,段落【0057】の表1によれば,帯域幅が20MHzの64トーンプランはFFTサイズが64であることに対応すること,段落【0063】の表2によれば,FFTサイズが64のトーンプランは,52データトーン,4パイロットトーン,1DCトーン及び7ガードトーンからなること,段落【0065】の記載によれば,ダウンリンクもアップリンクも同じトーンプランであること,がさらに理解される。 しかしながら,上記図3の具体例では,レガシーSTAとHEW STAに対して共通の64トーンプランの割り当てが行われているから,HEW STAではレガシーSTAよりも「通信効率を改善する」ことができたと理解することはできない。 一方,段落【0083】?【0084】の記載及び図6によれば,4つのHEW STA(106A-106D)にそれぞれ単一トーンプラン630のサブセットを割り当てる具体例が示されていることが理解される。また,当該具体例において,各HEW STAへのサブセットの割り当ては,ダウンリンクについては,段落【0089】,【0099】の記載及び段落【0091】の表3を参照すれば,52データトーンであり,アップリンクについては,段落【0093】,【0099】の記載及び段落【0095】の表4を参照すれば,46データトーン,4パイロットトーン,2ガードトーンであることがさらに理解される。 そうすると,上記図3の具体例との比較では,ダウンリンクに関しては,レガシーSTA,HEW STAともに52データトーンを割り当てる点で違いがなく,アップリンクに関しては,レガシーSTAに52データトーンを割り当てるのに対して,HEW STAに46データトーンを割り当てる点で,かえって,HEW STAの方がデータトーンの割り当て数が少ない。 そうすると,図3の具体例におけるレガシーSTAへのトーン割り当てと比較して,単一のトーンプラン内のサブセットを割り当てる図6の具体例におけるHEW STAの方が「通信効率を改善」していると理解することはできない。また,本願発明の構成から離れて図3の具体例の中で比較しても,レガシーSTAよりもHEW STAの方が「通信効率を改善」していると理解することはできない。したがって,発明の詳細な説明は,本願発明が「高効率ワイヤレス通信ネットワークにおける通信効率を改善」していると理解できるように記載されていない。 次に,上記bについて検討する。 上記aにおいて検討した図6の具体例における,アップリンクについて4つのHEW STAのそれぞれに割り当てるサブセットである「46データトーン,4パイロットトーン,2ガードトーン」は,段落【0099】の記載によれば,「234の利用可能なデータトーン」を分割したものであるところ,1つのHEW STAに対して最大58データトーンが割り当て可能であるにもかかわらず「46データトーン」しか割り当てられていないから,理論限界値に匹敵する数のデータトーンの割り当てが行われているとはいえない。したがって,上記具体例について,「他と比較するまでもなく改善していることが明らか」であるとすることはできない。 以上のとおり,発明の詳細な説明の記載からは,本願発明において「通信効率を改善する」ことが可能であると理解することはできないから,「通信効率を改善する」ことが可能な単一のトーンプランの分割をどのように行うのか不明である。 (イ)上記(ア)で検討した図6の具体例では,分割を行う前の「234の利用可能なデータトーン」にはデータトーンが234個含まれるだけで,パイロットトーン及びガードトーンは存在しないから,それを分割して「4パイロットトーン,および2ガードトーン」をどのようにして得るのか不明である。 エ 以上のことから,発明の詳細な説明には,「単一のアップリンクまたはダウンリンクトーンプラン内のデータトーンのサブセットを少なくとも備え」る「リソース」を,「複数のデバイスの各々」に「割り当てる」ことをどのように行うのかについて,当業者がそれを実施することができる程度に記載されていない。 (2)したがって,発明の詳細な説明の記載は,当業者が請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから,この出願は,発明の詳細な説明の記載が,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 (3)請求人の主張について 請求人は,令和元年10月15日提出の意見書において,同日に提出の手続補正書により補正された段落【0099】の記載に関し,UL通信では,1デバイス当たり52データトーンが分割により得られ,そのうちの46個はデータトーンとして使用され,4個はパイロットトーンとして使用され,2個はガードトーンとして使用されるから,補正後の段落【0099】の記載は段落【0084】,【0087】,【0096】と整合していること,段落【0084】,【0087】,【0096】を参照すると,各々に記載されている帯域幅に含まれるトーンの個数は任意であることが判ること,及び,段落【0088】に,「当業者は,データ,パイロット,DC,およびガードトーンの他の組み合わせが使用され得ることを認識するであろう。」と記載されていること,によれば,発明の詳細な説明は,当業者が請求項1-28に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている旨,主張する。 しかしながら,分割により得られるデータトーンの一部をパイロットトーンやガードトーンとして使用することは,段落【0084】,【0087】,【0096】を含め,発明の詳細な説明に記載も示唆もされていないから,請求人の上記主張における「UL通信では,1デバイス当たり52データトーンが分割により得られ,そのうちの46個はデータトーンとして使用され,4個はパイロットトーンとして使用され,2個はガードトーンとして使用される」という内容は,本願明細書の記載に基づいたものではない。 また,帯域幅に含まれるトーンの個数が任意であるとしても,上記(1)ウの不明点が解消するものではない。 よって,請求人の上記主張は採用できない。 第4 むすび 以上のとおり,本願は,発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから,拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-12-23 |
結審通知日 | 2019-12-24 |
審決日 | 2020-01-09 |
出願番号 | 特願2016-549743(P2016-549743) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04L)
P 1 8・ 536- WZ (H04L) P 1 8・ 537- WZ (H04L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡 裕之 |
特許庁審判長 |
吉田 隆之 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 丸山 高政 |
発明の名称 | 高効率ワイヤレスネットワークにおける向上した通信効率のためのシステムおよび方法 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 岡田 貴志 |
代理人 | 井関 守三 |
代理人 | 中丸 慶洋 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |