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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F02D
管理番号 1362830
審判番号 不服2019-9366  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-12 
確定日 2020-06-16 
事件の表示 特願2017- 79325「燃料噴射装置の駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月13日出願公開、特開2017-122462、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)9月25日を出願日とする出願である特願2013-197792号の一部を平成29年4月13日に新たな出願としたものであって、その手続は以下のとおりである。
平成29年5月8日 :上申書、手続補正書の提出
平成30年3月1日付け(発送日:同年3月13日):拒絶理由通知書
平成30年5月9日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年9月6日付け(発送日:同年9月18日):拒絶理由通知書
平成31年1月17日:意見書、手続補正書の提出
平成31年4月5日付け(発送日:同年4月16日):拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和元年7月12日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
「この出願については、平成30年9月6日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
備考
理由1(特許法第29条第2項)について

・請求項1
・引用文献等1?3、9

・請求項2
・引用文献等1?6、9

・請求項3
・引用文献等1?3、7?9

<引用文献等一覧>
1.特開2013-108422号公報
2.特開2002-201992号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2002-81358号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2008-297965号公報
5.特開2009-62946号公報
6.特開2006-266137号公報
7.特開2006-104989号公報
8.特開2013-104402号公報
9.特開2011-190784号公報」


第3 本願発明
本願の請求項1ないし2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明2」という。)は、令和元年7月12日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定された、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
ガソリンエンジンに用いられ、1燃焼サイクル中に燃料を複数回に分割して噴射する分割噴射を行う燃料噴射装置の駆動装置において、
前記1燃焼サイクル中に、
弁体または可動子が、前記弁体または前記可動子の開弁方向の変位を前記弁体の開度が目標開度となる変位に規制する規制部に到達する前記目標開度での目標開度燃料噴射と、
前記弁体の開度が前記目標開度に到達しないようにして前記目標開度に到達しない中間開度で燃料を噴射する中間開度燃料噴射と、
を含むようにして燃料噴射を行い、
前記目標開度燃料噴射での燃料噴射量は、前記中間開度燃料噴射での燃料噴射量よりも多く設定され、
前記中間開度燃料噴射を前記目標開度燃料噴射の前後に行い、
前記目標開度燃料噴射と前記目標開度燃料噴射の前に行われる中間開度燃料噴射とを吸気行程に行い、前記吸気行程に続く圧縮行程において前記目標開度燃料噴射の後に行われる中間開度燃料噴射を行い、
前記目標開度燃料噴射及び前記中間開度燃料噴射をファストアイドル完了までの期間に行うことを特徴とする燃料噴射装置の駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料噴射装置の駆動装置において、
前記目標開度燃料噴射の後に行う前記中間開度燃料噴射を複数回実行し、回を追うごとに燃料噴射量を少なくすることを特徴とする燃料噴射装置の駆動装置。」


第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2013-108422号公報(以下「引用文献1」という。)には、「内燃機関の燃料噴射制御装置」に関して、図面(特に図2及び図8ないし10を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)。

ア 「【0002】
一般に、内燃機関の燃料噴射制御システムでは、内燃機関の運転状態に応じて要求噴射量を算出し、この要求噴射量に相当するパルス幅の噴射パルスで燃料噴射弁を開弁駆動して要求噴射量分の燃料を噴射するようにしている。
【0003】
しかし、高圧の燃料を筒内に噴射する筒内噴射式の内燃機関の燃料噴射弁は、図3に示すように、噴射パルス幅に対する実噴射量の変化特性のリニアリティ(直線性)がパーシャルリフト領域(噴射パルス幅が短くて弁体のリフト量がフルリフト位置に到達しないパーシャルリフト状態となる領域)で悪化する傾向がある。このパーシャルリフト領域では、弁体(例えばニードル弁)のリフト量のばらつきが大きくなって噴射量ばらつきが大きくなる傾向があり、噴射量ばらつきが大きくなると、排気エミッションやドライバビリティが悪化する可能性がある。」

イ 「【0008】
ところで、図4に示すように、パーシャルリフト領域では、噴射パルスのオンによる駆動電流(駆動コイルに流れる電流)の増加に伴って弁体のリフト量が増加し始める頃に噴射パルスがオフされるため、噴射パルスのオフ後に弁体のリフト量が一旦増加してから減少するという挙動を示す。しかし、上記特許文献1,2の技術では、パーシャルリフト領域でのリフト量の挙動を全く考慮していないため、パーシャルリフト領域でのリフト量ばらつきに起因する噴射量ばらつきを精度良く補正することができない。
【0009】
また、図5に示すように、駆動コイルは、駆動電流(駆動コイルに流れる電流)に応じてインダクタンスが変化するという直流重畳特性を有するが、上記特許文献3の技術では、駆動コイルの直流重畳特性を全く考慮していないため、逆起電圧の収束時間に基づいてインダクタンスを精度良く算出することが困難であり、このインダクタンスに基づいてプランジャ位置(弁体の位置)を精度良く検出することは困難である。このため、パーシャルリフト領域でのリフト量ばらつきに起因する噴射量ばらつきを精度良く補正することができない。
【0010】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、パーシャルリフト領域でのリフト量ばらつきに起因する噴射量ばらつきを精度良く補正することができ、パーシャルリフト領域での噴射量制御精度を向上させることができる内燃機関の燃料噴射制御装置を提供することにある。」

ウ 「【0020】
更に、スロットバルブ16の下流側には、サージタンク18が設けられ、このサージタンク18に、吸気管圧力を検出する吸気管圧力センサ19が設けられている。また、サージタンク18には、エンジン11の各気筒に空気を導入する吸気マニホールド20が設けられ、エンジン11の各気筒には、それぞれ筒内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁21が取り付けられている。また、エンジン11のシリンダヘッドには、各気筒毎に点火プラグ22が取り付けられ、各気筒の点火プラグ22の火花放電によって筒内の混合気に着火される。」

エ 「【0024】
その際、ECU30は、エンジン運転状態(例えばエンジン回転速度やエンジン負荷等) に応じて要求噴射量を算出して、この要求噴射量に応じて噴射パルス幅(噴射時間)をマップ又は数式等により算出し、この噴射パルス幅で燃料噴射弁21を開弁駆動して要求噴射量分の燃料を噴射する。
【0025】
図2に示すように、燃料噴射弁21は、駆動コイル31によって生じる電磁力によってプランジャ32と一体的にニードル弁33(弁体)を開弁方向に駆動する構成となっている。(a)に示すように、噴射パルス幅が比較的長くなるフルリフト領域では、ニードル弁33のリフト量がフルリフト位置(プランジャ32がストッパ34に突き当たる位置)に到達するが、(b)に示すように、噴射パルス幅が比較的短くなるパーシャルリフト領域では、ニードル弁33のリフト量がフルリフト位置に到達しないパーシャルリフト状態(プランジャ32がストッパ34に突き当たる手前の状態)となる。」

オ 「【0071】
また、本実施例では、パーシャルリフト噴射を実行する際に、エンジン運転状態に応じた要求噴射量を、パーシャルリフト噴射の噴射量と、フルリフト噴射の噴射量(要求噴射量からパーシャルリフト噴射の噴射量を差し引いた噴射量)とに分割して噴射するようにしたので、燃料噴射弁21の合計噴射量を要求噴射量に維持しながら、パーシャルリフト噴射を実行することができる。」

カ 「【0076】
また、上記実施例では、要求噴射量分の燃料をパーシャルリフト噴射とフルリフト噴射とに分割して噴射する際に、1回のパーシャルリフト噴射と1回のフルリフト噴射とに分割するようにしたが、パーシャルリフト噴射とフルリフト噴射の噴射回数は、これに限定されず、要求噴射量等に応じて適宜変更しても良く、パーシャルリフト噴射の噴射回数を2回以上にしたり、フルリフト噴射の噴射回数を2回以上にしたりしも良い。
【0077】
その他、本発明は、図1に示すような筒内噴射式エンジンに限定されず、吸気ポート噴射式エンジンにも適用して実施できる等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。」

キ 上記ウの記載事項及び図1の図示内容並びに出願時の技術常識からみて、引用文献1記載のエンジン11はガソリンエンジンであるといえる。

ク 上記エ、オ及びカの記載事項及び図1の図示内容並びに出願時の技術常識からみて、引用文献1記載の燃料噴射弁21の分割噴射は1燃焼サイクル中に燃料を複数回に分割して噴射するものであるといえる。

ケ 上記エ及びオの記載事項並びに図8ないし10の図示内容からみて、フルリフト噴射の噴射量は、パーシャルリフト噴射の噴射量よりも多く設定されているといえる。

上記アないしケの記載事項及び図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

[引用発明1]
「ガソリンエンジン11に用いられ、1燃焼サイクル中に燃料を複数回に分割して噴射する分割噴射を行う燃料噴射弁21の駆動コイル31において、
前記1燃焼サイクル中に、
ニードル弁33またはプランジャ33が、前記ニードル弁33または前記プランジャ33の開弁方向の変位を前記ニードル弁33の開度がフルリフト位置となる変位に規制するストッパ34に到達する前記フルリフト位置でのフルリフト噴射と、
前記ニードル弁33の開度が前記フルリフト位置に到達しないようにして前記フルリフト位置に到達しないパーシャルリフト領域で燃料を噴射するパーシャルリフト噴射と、
を含むようにして燃料噴射を行い、
前記フルリフト噴射の噴射量は、前記パーシャルリフト噴射での噴射量よりも多く設定され、
前記パーシャルリフト噴射を前記フルリフト噴射の前に行う
燃料噴射弁21の駆動コイル31。」


2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2002-201992号公報(以下「引用文献2」という。)の【0017】ないし【0021】、【0033】及び図3には、「噴射量制御方法、噴射装置および噴射システム」に関して、以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献2記載事項]
「ガソリンエンジン1の燃料噴射装置において、1サイクル中に燃料をフルリフトでの燃料噴射を含むメイン噴射303の前後に、ハーフリフトでの燃料噴射であるパイロット噴射301、プレ噴射302及びアフター噴射304が行われること。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2002-81358号公報(以下「引用文献3」という。)の【0044】ないし【0045】及び図9には、「燃料噴射装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献3記載事項]
「燃料噴射装置において、ニードル弁2の最大リフト量NLを大きくした状態の全開位置NLmaxで噴射する主燃料噴射の前後に、NLmaxに到達しない開度で噴射する副燃料噴射の近接パイロット噴射及びアフター噴射が行われること。」

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2008-297965号公報(以下「引用文献4」という。)の【0034】ないし【0035】及び【0050】には、「筒内噴射型内燃機関の制御装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献4記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献4記載事項]
「筒内噴射型エンジンにおいて、ファストアイドル期間の燃料噴射制御として、吸気行程中に複数回の分割噴射を行うこと。」

5 引用文献5
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2009-62946号公報(以下「引用文献5」という。)の【0037】ないし【0038】、【0049】及び図13には、「筒内噴射型内燃機関の制御装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献5記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献5記載事項]
「筒内噴射型エンジンにおいて、ファストアイドル期間の燃料噴射制御として、吸気行程中に複数回の分割噴射を行うこと。」

6 引用文献6
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2006-266137号公報(以下「引用文献6」という。)の【0057】ないし【0059】及び図10には、「多気筒エンジンの制御装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献6記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献6記載事項]
「エンジン10のファーストアイドル状態での燃料噴射に関し、吸気行程中に複数回の燃料噴射を行うこと。」

7 引用文献7
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2006-104989号公報(以下「引用文献7」という。)の【請求項4】、【0015】、【0017】及び図4、6には、「排ガス浄化装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献7記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献7記載事項]
「エンジン11の燃料噴射において、主噴射の後に行うポスト噴射を複数回実行し、ポスト噴射の各回の噴射量を初回以降漸次減少するように行うこと。」

8 引用文献8
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2013-104402号公報(以下「引用文献8」という。)の【請求項1】ないし【請求項2】、【0058】及び図3、5には、「ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献8記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献8記載事項]
「エンジン1の燃料噴射制御装置において、主噴射よりも後に燃料を噴射する複数回の後噴射を実行し、後段側の後噴射の噴射量を前段側の後噴射の噴射量に対して減量するように行うこと。」

9 引用文献9
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2011-190784号公報(以下「引用文献9」という。)の【0120】ないし【0124】、図25ないし27には、「筒内直接燃料噴射方式内燃機関の制御装置」に関して、以下の事項(以下「引用文献9記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献9記載事項]
「筒内噴射式内燃機関において、吸気バルブ開弁時期を遅角した場合の分割噴射制御として、吸気行程中及び吸気行程に続く圧縮行程中に、燃料を複数回分割して噴射すること。」


第5 対比・判断
1 本願発明1について
本願発明1と引用発明1とを対比すると、その機能、構成及び技術的意義からみて、後者の「ガソリンエンジン11」は前者の「ガソリンエンジン」に相当し、以下同様に、「燃料噴射弁21」は「燃料噴射装置」に、「駆動コイル31」は「駆動装置」に、「ニードル弁33」は「弁体」に、「プランジャ33」は「可動子」に、「フルリフト位置」は「目標開度」に、「ストッパ34」は「規制部」に、「フルリフト噴射」は「目標開度燃料噴射」に、「パーシャルリフト領域」は「中間開度」に、「パーシャルリフト噴射」は「中間開度燃料噴射」に、それぞれ相当する。

そうすると、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点、相違点がある。

[一致点]
「ガソリンエンジンに用いられ、1燃焼サイクル中に燃料を複数回に分割して噴射する分割噴射を行う燃料噴射装置の駆動装置において、
前記1燃焼サイクル中に、
弁体または可動子が、前記弁体または前記可動子の開弁方向の変位を前記弁体の開度が目標開度となる変位に規制する規制部に到達する前記目標開度での目標開度燃料噴射と、
前記弁体の開度が前記目標開度に到達しないようにして前記目標開度に到達しない中間開度で燃料を噴射する中間開度燃料噴射と、
を含むようにして燃料噴射を行い、
前記目標開度燃料噴射での燃料噴射量は、前記中間開度燃料噴射での燃料噴射量よりも多く設定される、
燃料噴射装置の駆動装置。」

[相違点1]
本願発明1は、「前記中間開度燃料噴射を前記目標開度燃料噴射の前後に行い、
前記目標開度燃料噴射と前記目標開度燃料噴射の前に行われる中間開度燃料噴射とを吸気行程に行い、前記吸気行程に続く圧縮行程において前記目標開度燃料噴射の後に行われる中間開度燃料噴射」を行うのに対して、引用発明1は、パーシャルリフト噴射をフルリフト噴射の前に行うもののフルリフト噴射の前後で行うものではなく、また、フルリフト噴射とパーシャルリフト噴射を行うタイミングが吸気行程と圧縮行程との関係においてどのように設定されているか不明である点。

[相違点2]
本願発明1は、「前記目標開度燃料噴射及び前記中間開度燃料噴射をファストアイドル完了までの期間に行う」のに対し、引用発明1は、フルリフト噴射及びパーシャルリフト噴射をファストアイドル完了までの期間に行うかどうか不明である点。

相違点について検討する。
事案に鑑み、上記相違点1について検討する。

上記「第4」の2ないし9で述べたとおり、引用文献2記載事項は、「ガソリンエンジン1の燃料噴射装置において、1サイクル中に燃料をフルリフトでの燃料噴射を含むメイン噴射303の前後に、ハーフリフトでの燃料噴射であるパイロット噴射301、プレ噴射302及びアフター噴射304が行われること。」であり、引用文献3記載事項は、「燃料噴射装置において、ニードル弁2の最大リフト量NLを大きくした状態の全開位置NLmaxで噴射する主燃料噴射の前後に、NLmaxに到達しない開度で噴射する副燃料噴射の近接パイロット噴射及びアフター噴射が行われること。」であり、引用文献4記載事項は、「筒内噴射型エンジンにおいて、ファストアイドル期間の燃料噴射制御として、吸気行程中に複数回の分割噴射を行うこと。」であり、引用文献5記載事項は、「筒内噴射型エンジンにおいて、ファストアイドル期間の燃料噴射制御として、吸気行程中に複数回の分割噴射を行うこと。」であり、引用文献6記載事項は、「エンジン10のファーストアイドル状態での燃料噴射に関し、吸気行程中に複数回の燃料噴射を行うこと。」であり、引用文献7記載事項は、「エンジン11の燃料噴射において、主噴射の後に行うポスト噴射を複数回実行し、ポスト噴射の各回の噴射量を初回以降漸次減少するように行うこと。」であり、引用文献8記載事項は、「エンジン1の燃料噴射制御装置において、主噴射よりも後に燃料を噴射する複数回の後噴射を実行し、後段側の後噴射の噴射量を前段側の後噴射の噴射量に対して減量するように行うこと。」であり、引用文献9記載事項は「筒内噴射式内燃機関において、吸気バルブ開弁時期を遅角した場合の分割噴射制御として、吸気行程中及び吸気行程に続く圧縮行程中に、燃料を複数回分割して噴射すること。」というものであって、いずれも上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
また、引用発明1において、目標開度燃料噴射と目標開度燃料噴射の前に行われる中間開度燃料噴射とを吸気行程に行い、吸気行程に続く圧縮行程において目標開度燃料噴射の後に行われる中間開度燃料噴射を行うことは、本願の出願前の周知技術であったというべき証拠は無く、また、当業者が適宜決定し得た設計的な事項であるともいえない。
そうすると、引用発明1において、引用文献2記載事項ないし引用文献9記載事項を参酌しても、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできず、本願発明1が有する「ピストンが上死点近くに位置していても、噴射される燃料噴霧の到達距離が短いので、ピストンへの噴霧の付着を避けることができると共に、燃料の噴射できる期間をより長く確保することができる」(明細書の【0188】参照。)及び「ファストアイドル区間では、燃料のピストン及びシリンダ壁面への燃料の付着を低減するために、ペネトレーションを抑制する」(明細書の【0197】参照。)という特有の作用効果を奏することはできない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2記載事項ないし引用文献9記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


3 本願発明2について
本願の特許請求の範囲における請求項2は、請求項1の記載を置換することなく引用するものであるから、本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2は、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明1及び引用文献2記載事項ないし引用文献9記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 小括
本願発明1ないし2は、原査定で引用された引用文献1ないし9に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-05-27 
出願番号 特願2017-79325(P2017-79325)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 戸田 耕太郎  
特許庁審判長 北村 英隆
特許庁審判官 西中村 健一
金澤 俊郎
発明の名称 燃料噴射装置の駆動装置  
代理人 ポレール特許業務法人  
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