• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1362871
審判番号 不服2019-6115  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-10 
確定日 2020-06-02 
事件の表示 特願2018-500909「シングルインターレースモードおよびマルチインターレースモードをサポートする時分割複信(TDD)サブフレーム構造」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月26日国際公開,WO2017/014912,平成30年 8月16日国内公表,特表2018-523405〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2016年(平成28年)6月24日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2015年7月20日 米国,2016年2月24日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 9月 7日 手続補正書の提出
平成30年 9月27日付け 拒絶理由通知書
平成30年12月26日 意見書,及び手続補正書の提出
平成31年 1月 9日付け 拒絶査定
令和 元年 5月10日 拒絶査定不服審判の請求,
及び手続補正書の提出
令和 元年10月 1日 上申書の提出


第2 本願発明
本願の請求項に係る発明は,令和元年5月10日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし48に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。令和元年5月10日の手続補正では請求項1は補正されていない。)は,以下のとおりのものと認める。

「 スケジューリングエンティティが時分割複信(TDD)キャリアを利用して1つまたは複数の下位エンティティのセットと通信するための,ワイヤレス通信ネットワーク内のワイヤレス通信の方法であって,前記TDDキャリアが,各々がTDDサブフレーム構造を有する複数のサブフレームを含み,前記方法が,
制御情報,データ情報,および前記データ情報に対応する確認応答情報が単一のサブフレーム内に含まれるシングルインターレース動作モードを提供するステップと,
前記制御情報,前記データ情報,または前記データ情報に対応する前記確認応答情報のうちの少なくとも1つが,前記制御情報,前記データ情報,および前記データ情報に対応する前記確認応答情報のうちの他のものとは異なるサブフレーム内に含まれる,マルチインターレース動作モードを提供するステップと,
第1のサブフレームに関して1つまたは複数の下位エンティティの前記セット内の各下位エンティティに関するそれぞれのスケジューリングモードを決定するステップであって,前記それぞれのスケジューリングモードが,前記シングルインターレース動作モードまたは前記マルチインターレース動作モードを含む,決定するステップと,
前記シングルインターレース動作モードと前記マルチインターレース動作モードの両方を含むように下位エンティティの前記セットの各下位エンティティの前記それぞれのスケジューリングモードを前記第1のサブフレームの前記TDDサブフレーム構造内で多重化することによって,前記スケジューリングエンティティと1つまたは複数の下位エンティティの前記セットとの間の送信をスケジュールするステップと
を含む,方法。」


第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,「(拡大先願)この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願の日前の日本語特許出願であって,その出願後に国際公開がされた下記の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく,またこの出願の時において,その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない(同法第184条の13参照)。」というものであり,本願の請求項1に係る発明に対して,以下の先願が引用されている。

先願:PCT/JP2016/061553号(国際出願日 2016年(平成28年)4月8日,国内優先権主張 2015年(平成27年)4月28日,出願人 株式会社NTTドコモ,国際公開第2016/175015号,再公表特許第2016/175015号公報)


第4 先願発明
原査定の拒絶の理由で引用されたPCT/JP2016/061553号(以下,「先願」という。)の国際出願日における国際出願の明細書,請求の範囲又は図面(以下,「先願明細書等」という。)には,以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)
当該事項は,本願の優先日以前の2015年4月28日に出願された先願の国内優先権の基礎出願にも記載されている。
ここで,先願に係る発明をした者と本願の発明者とは同一ではなく,また本願の出願時において,本願の出願人と先願の出願人とは同一ではない。


[0015] <概要>
図1は,実施の形態に係る無線通信システムの構成を示す図である。図1に示すように,本実施の形態における無線通信システムは,複数のユーザ装置UEと基地局eNBとを含む無線通信システムである。また,図1の例では,5つのユーザ装置UE1?UE5が示されているが,図示の便宜上のものであり,ユーザ装置の数に制約はない。なお,以下の説明において,複数のユーザ装置UE1?UE5のうち任意のユーザ装置は「ユーザ装置UE」と表す。また,図1の例では,1つの基地局eNBが示されているが,複数の基地局eNBが含まれるようにしてもよい。
(中略)
[0020] 本実施の形態に係る無線通信システムでは,同一サブフレーム内に,下りリンクのパイロット信号がマッピングされるパイロット信号領域と,下りリンクの制御信号がマッピングされる制御信号領域と,下りリンクのユーザデータがマッピングされるユーザデータ領域と,任意の上りリンクの信号又は任意の下りリンクの信号がマッピングされる多用途領域(以下,単に「多用途領域」という)とを含み,制御信号を用いて多用途領域にマッピングされる信号の内容を指示することができる無線フレーム構成が用いられる。なお,当該無線フレーム構成の多用途領域には上りリンクの信号がマッピング可能であることから,本実施の形態に係る無線通信システムは,任意のタイミングで下りリンクと上りリンクとを切替えることができる,ダイナミックTDD(Time DivisionDuplex)による通信をサポートしているともいえる。
(中略)
[0073] (多用途領域について)
図8は,多用途領域の構成の一例を説明するための図である。図8に示すように,多用途領域には,上りリンク信号を含む様々な用途の信号を割当てることができる。なお,多用途領域にどの用途の信号を割当てるのかについては,基地局eNBの無線フレーム制御部103により決定され,制御信号に含まれる用途情報を用いてユーザ装置UEに通知される。ユーザ装置UEの制御信号処理部203は,受信した制御信号に含まれる用途情報に基づいて,同一サブフレーム内の多用途領域にマッピングされている(又はマッピングすべき)無線信号の種別及び内容等を把握する。
(中略)
[0079] 図8(c)は,多用途領域にHARQにおけるACK/NACKが割り当てられる場合の構成を示している。この場合,用途情報には,多用途領域にHARQにおけるACK/NACKを割り当てることを示す情報と多用途領域の先頭にガードピリオド(GP)を設定すべきことを示す情報とが含まれる。なお,用途情報には,ガードピリオド(GP)の長さを指定する情報が更に含まれるようにしてもよい。また,用途情報には,ACK/NACKを基地局eNBに送信するタイミングを示す情報が含まれるようにしてもよいし,更に,ACK/NACKがマッピングされるサブキャリア位置が含まれるようにしてもよい。また,用途情報には,ユーザ装置UEに,ACK/NACKを基地局eNBに送信することを一旦留保させるための情報が含まれるようにしてもよい。送信が留保されたACK/NACKは,別のタイミングで基地局eNBから送信される下りリンクの制御信号を用いて,ユーザ装置UEから基地局eNBへの送信タイミングを指示されるようにしてもよいし,他の手段により指示されるようにしてもよい。
(中略)
[0081] 図8(c)の場合,ユーザ装置UEのHARQ処理部205及び信号送信部202は,ACK/NACKを,用途情報で指示された多用途領域のリソースを用いて基地局eNBに送信することになる。
(中略)
[0089] 図10は,ACK/NACKのマッピング方法(周波数方向)の一例を説明するための図である。なお,図10において,各区間は1つのサブフレーム(1TTI)に相当する。また,各区間に振られている番号(1-1,1-2,2-2,1,2)は,図10の説明において,各サブフレームを区別するために便宜上用いられる番号である。また,ユーザ装置UE1とユーザ装置UE2とは,それぞれ異なるユーザ装置UEを示している。
[0090] 図10(a)は,基地局eNBの無線フレーム制御部103が,ユーザ装置UE1に対して,所定のサブフレーム(図10(a)ではサブフレーム1-1)で送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,1TTI後のサブフレーム(図10(a)ではサブフレーム1-2)及び当該サブフレームの所定のサブキャリア(図10(a)ではサブキャリアa)で送信するように用途情報で指示した場合における,信号のマッピング例を示している。また,基地局eNBの無線フレーム制御部103が,ユーザ装置UE2に対して,所定のサブフレーム(図10(a)ではサブフレーム2-2)で送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,同一サブフレーム及び当該サブフレームの所定のサブキャリア(図10(a)ではサブキャリアb)で送信するように用途情報で指示した場合における,信号のマッピング例を示している。
[0091] 図10(a)の例では,上りリンク信号において,ユーザ装置UE1及びユーザ装置UE2が送信するACK/NACKが周波数方向で多重(直交化)されることになる。なお,図10(a)の例では,サブキャリアを分けることで,ユーザ装置UE1及びユーザ装置UE2が送信するACK/NACKを多重させるようにしたが,異なる拡散符号を用いて,同一サブキャリアで多重させるようにしてもよい。
(中略)

[図6]

(中略)

[図10]



上記記載及び当業者の技術常識を考慮すると,先願明細書等には,次の技術事項が記載されている。

ア 上記段落0015の記載によると,無線通信システムは,複数のユーザ装置UEと基地局eNBとを含むものであるから,基地局eNBは複数のユーザ装置UEと無線通信するものであることが明らかである。そして,上記段落0020の記載によると,無線通信システムでは,同一サブフレーム内に,下りリンクのパイロット信号がマッピングされるパイロット信号領域と,下りリンクの制御信号がマッピングされる制御信号領域と,下りリンクのユーザデータがマッピングされるユーザデータ領域と,任意の上りリンクの信号又は任意の下りリンクの信号がマッピングされる多用途領域とを含む,無線フレーム構成を用いるものであるから,基地局eNBは複数のユーザ装置との無線通信のために,当該無線フレーム構成を用いることは明らかである。
また,上記図6によると,パイロット信号領域と,制御信号領域と,ユーザデータ領域と,多用途領域とは,TTI内において時間軸方向に分割された領域であることが見てとれ,上記段落0020の記載に照らせば,当該TTIが,サブフレームに対応することは明らかである。
したがって,先願明細書等には,「基地局eNBが複数のユーザ装置UEと通信するための無線通信方法において,同一サブフレーム内の時間軸方向に分割された領域である,下りリンクのパイロット信号がマッピングされるパイロット信号領域と,下りリンクの制御信号がマッピングされる制御信号領域と,下りリンクのユーザデータがマッピングされるユーザデータ領域と,任意の上りリンクの信号又は任意の下りリンクの信号がマッピングされる多用途領域とを含む,無線フレーム構成を用いる」ことが記載されているといえる。

イ 上記段落0073,0079,0081の記載によると,多用途領域には、ユーザ装置UEから送信される信号であるACK/NACKが,割り当てられるといえる。
そして,上記段落0090-0091,図10(a)の記載によると,基地局eNBは,ユーザ装置UE1に対して,所定のサブフレーム1-1で送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,後のサブフレーム1-2内で送信するように指示し,更に,ユーザ装置UE2に対して,所定のサブフレーム2-2で送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,前記所定のサブフレーム2-2内で送信するように指示するものであるといえる。
ここで,上記段落0091によると,ユーザ装置UE1が送信するサブフレーム1-2のACK/NACKと,ユーザ装置UE2が送信するサブフレーム2-2のACK/NACKとは多重化されるものであるといえるから,ユーザ装置UE2に対する所定のサブフレーム2-2は,ユーザ装置UE1に対する後のサブフレーム1-2と,同一のサブフレームであることは明らかである。
したがって,先願明細書等には,「基地局eNBは,ユーザ装置UE1に対して,所定のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,後のサブフレーム内の多用途領域で送信するように指示し,更に,ユーザ装置UE2に対して,前記後のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,前記後のサブフレームの多用途領域で送信するよう指示し,前記後のサブフレーム内のユーザ装置UE1及びユーザ装置UE2が送信するACK/NACKは多重化される」ことが記載されているといえる。

したがって,先願明細書等には以下の発明(以下,「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

「基地局eNBが複数のユーザ装置UEと無線通信するための無線通信方法において,
同一サブフレーム内の時間軸方向に分割された領域である,下りリンクのパイロット信号がマッピングされるパイロット信号領域と,下りリンクの制御信号がマッピングされる制御信号領域と,下りリンクのユーザデータがマッピングされるユーザデータ領域と,任意の上りリンクの信号又は任意の下りリンクの信号がマッピングされる多用途領域とを含む,無線フレーム構成を用い,
基地局eNBは,ユーザ装置UE1に対して,所定のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,前記後のサブフレーム内の多用途領域で送信するように指示し,更に,ユーザ装置UE2に対して,後のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,後のサブフレームの多用途領域で送信するよう指示し,前記後のサブフレーム内のユーザ装置UE1及びユーザ装置UE2が送信するACK/NACKは多重化される方法。」


第6 先願発明との対比
本願発明と先願発明とを対比する。

(1)先願発明の「基地局eNB」は,ユーザ装置UEのためにスケジューリングを行うものであるから,本願発明の「スケジューリングエンティティ」に相当し,本願発明の「下位エンティティ」は,基地局に対してスケジューリングされる側を含むことは明らかであるから,先願発明の「ユーザ装置UE」は,本願発明の「下位エンティティ」に相当する。
また,先願発明の「制御信号」「ユーザデータ」「ユーザデータに対するACK/NACK」は,それぞれ本願発明の「制御情報」「データ情報」「データ情報に対応する確認応答情報」に相当し,先願発明の「無線通信」と本願発明の「ワイヤレス通信」とは,表記が異なるのみであって差異は無い。
そして,先願発明の「ユーザ装置UE2に対して,後のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,後のサブフレームの多用途領域で送信するよう指示」することは,基地局eNBとユーザ装置UE2の間の通信とにおいて,「制御信号」と「ユーザデータ」と前記ユーザデータに対する「ACK/NACK」とを含む単一のサブフレームを用いるものといえるから,本願発明の「シングルインターレース動作モード」に対応する。
したがって,先願発明の「ユーザ装置UE2に対して,後のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,後のサブフレームの多用途領域で送信するよう指示」することは,本願発明の「制御情報,データ情報,および前記データ情報に対応する確認応答情報が単一のサブフレーム内に含まれるシングルインターレース動作モードを提供するステップ」に相当する。

(2)先願発明の「所定のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,後ろのサブフレーム内の多用途領域で送信するように指示」することは,基地局eNBとユーザ装置UE1との間の通信とにおいて,異なるサブフレームのユーザデータに対するACK/NACKを含む「後のサブフレーム」を用いるものといえるから,本願発明の「マルチインターレース動作モード」に対応する。
したがって,本願発明の「前記制御情報,前記データ情報,または前記データ情報に対応する前記確認応答情報のうちの少なくとも1つが,前記制御情報,前記データ情報,および前記データ情報に対応する前記確認応答情報のうちの他のものとは異なるサブフレーム内に含まれる,マルチインターレース動作モードを提供するステップ」と,先願発明の「所定のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,後ろのサブフレーム内の多用途領域で送信するように指示」することは,「確認応答情報が,データ情報とは異なるサブフレーム内に含まれる,マルチインターレース動作モードを提供するステップ」の点で共通する。

(3)時分割複信(TDD)は,同一のキャリアで,下りリンクの通信と上りリンクの通信とを時間毎に切り替えて通信を行うことが,当業者の技術常識であるところ,先願発明の「後のサブフレーム」は,下りリンクの「制御信号」,及び,「ユーザデータ」と,上りリンクの「ACK/NACK」とを切り替えて通信するものであるから,「TDDサブフレーム構造」を有するサブフレームであるといえる。
したがって,先願発明の「基地局が複数のユーザ装置と無線通信するための無線通信方法」は,本願発明の「スケジューリングエンティティが時分割複信(TDD)キャリアを利用して1つまたは複数の下位エンティティのセットと通信するための,ワイヤレス通信ネットワーク内のワイヤレス通信の方法であって,前記TDDキャリアが,各々がTDDサブフレーム構造を有する複数のサブフレームを含」むことに相当する。

したがって,本願発明と先願発明とは,以下の点で一致し,また相違している。

[一致点]
「スケジューリングエンティティが時分割複信(TDD)キャリアを利用して1つまたは複数の下位エンティティのセットと通信するための,ワイヤレス通信ネットワーク内のワイヤレス通信の方法であって,前記TDDキャリアが,各々がTDDサブフレーム構造を有する複数のサブフレームを含み,前記方法が,
制御情報,データ情報,および前記データ情報に対応する確認応答情報が単一のサブフレーム内に含まれるシングルインターレース動作モードを提供するステップと,
前記制御情報,前記データ情報,または前記データ情報に対応する前記確認応答情報のうちの少なくとも1つが,前記制御情報,前記データ情報,および前記データ情報に対応する前記確認応答情報のうちの他のものとは異なるサブフレーム内に含まれる,マルチインターレース動作モードを提供するステップと,
を含む,方法。」

[相違点1]
本願発明は,「第1のサブフレームに関して1つまたは複数の下位エンティティの前記セット内の各下位エンティティに関するそれぞれのスケジューリングモードを決定するステップであって,前記それぞれのスケジューリングモードが,前記シングルインターレース動作モードまたは前記マルチインターレース動作モードを含む,決定するステップ」を備えているのに対して,先願発明は,当該ステップを特定していない点。

[相違点2]
本願発明は,「前記シングルインターレース動作モードと前記マルチインターレース動作モードの両方を含むように下位エンティティの前記セットの各下位エンティティの前記それぞれのスケジューリングモードを前記第1のサブフレームの前記TDDサブフレーム構造内で多重化することによって,前記スケジューリングエンティティと1つまたは複数の下位エンティティの前記セットとの間の送信をスケジュールするステップ」を備えているのに対して,先願発明は,当該ステップを特定していない点。

第7 判断
(1)相違点1について
先願発明は,「ユーザ装置UE1に対して,所定のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,後ろのサブフレーム内の多用途領域で送信するように指示」し,及び「ユーザ装置UE2に対して,後のサブフレームで送信されるユーザデータに対するACK/NACKを,後のサブフレームの多用途領域で送信するよう指示」しており,そのために,各ユーザ装置UEに対する「制御信号」と「ユーザデータ」と前記ユーザデータに対するACK/NACKとを単一の「所定のサブフレーム」に含めるか,あるいは,「制御信号」と「ユーザデータ」とを単一の「所定のサブフレーム」に含めるとともに,前記ユーザデータに対する「ACK/NACK」は「後のサブフレーム」に含めるか,を決定する必要があるから,実質的に「後のサブフレーム」に関して,ユーザ装置UE1とユーザ装置UE2とのために「スケジューリングモードが,前記シングルインターレース動作モードまたは前記マルチインターレース動作モードを含む,決定するステップ」を備えていることは明らかである。
よって,上記相違点1は,実質的な相違点ではない。

(2)相違点2について
先願発明の「基地局eNB」は,「前記後のサブフレーム内のユーザ装置UE1及びユーザ装置UE2が送信するACK/NACKは多重化される」ようにスケジュールしていることは明らかであるから,先願発明は,「ユーザ装置UE2」のシングルインターレース動作モードに対応する「ACK/NACK」と,「ユーザ装置UE1」のマルチインターレース動作モードに対応する「ACK/NACK」との,両方を含むように「後のサブフレーム」のTDDサブフレーム構造内で多重化することで,基地局eNBと複数のユーザ装置UEとの間の送信をスケジュールするステップを実質的に備えているといえる。
よって,上記相違点2には,実質的な相違点ではない。

そして,本願発明の作用効果も,先願発明に基づいて当業者が予測し得る範囲のものであり,格別なものではない。
したがって,本願発明は,先願明細書等に記載された発明である。


[請求人の主張について]
請求人は,令和元年10月1日に提出された上申書において,以下のとおり主張する。

(1)「引用文献1は,1つまたは複数の下位エンティティのセットと通信するために各々がTDDサブフレーム構造を有する複数のサブフレームを含むTDDキャリアを開示していないかと思います。」

(2)「引用文献1は,あるサブフレームの一部の領域において時分割ではなく周波数分割または符号分割を用いてACK/NACKを多重化することができるようにスケジューリングすることは開示していますが,上述したような本願において主張の発明特定事項の各下位エンティティに関するそれぞれのスケジューリングモードを決定する構成は開示していないかと思います。」

上記(1)について検討する。
上記「先願発明との対比」(1)で述べたように,時分割複信(TDD)は,同一のキャリアで,下りリンクの通信と上りリンクの通信とを時間毎に切り替えて通信を行うことが,当業者の技術常識であるところ,先願発明の「..制御信号領域と,..ユーザデータ領域と,..多用途領域とを含む無線フレーム構造」は,通信を行うために同一のサブフレーム内において,下りリンクの通信と上りリンクの通信とを時間毎に切り替えるものであり,前記サブフレームは時分割複信を行うものであるから,ユーザ装置UEと無線通信するために用いられる,複数の前記サブフレームを含むキャリアはTDDキャリアであるといえる。
よって,先願明細書等には,「1つまたは複数の下位エンティティのセットと通信するために各々がTDDサブフレーム構造を有する複数のサブフレームを含むTDDキャリア」が記載されているといえる。

上記(2)について検討する。
本願発明の「第1のサブフレームの前記TDDサブフレーム構造内で多重化する」ことは,多重化の手法として,周波数分割または符号分割を用いるものを包含するものであるから,先願発明の「後のサブフレーム」の「多用途領域」で,「ユーザ装置UE1」と「ユーザ装置UE2」との「ACK/NACK」を多重化することに相当する。
そして,上記「(1)相違点1について」で述べたとおり,先願発明は,本願発明の「..決定するステップ」に対応する構成を備えていることは明らかである。

以上のとおりであるから,上記請求人の主張は採用できない。


第8 むすび
以上のとおり,本願発明は,先願明細書等に記載された発明であるから,特許法第29条の2の規定により,特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-12-24 
結審通知日 2020-01-06 
審決日 2020-01-17 
出願番号 特願2018-500909(P2018-500909)
審決分類 P 1 8・ 16- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 脇岡 剛
相澤 祐介
発明の名称 シングルインターレースモードおよびマルチインターレースモードをサポートする時分割複信(TDD)サブフレーム構造  
代理人 黒田 晋平  
代理人 村山 靖彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ