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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1362943 |
審判番号 | 不服2018-16702 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-14 |
確定日 | 2020-06-03 |
事件の表示 | 特願2016-114383「高後方散乱導波路」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 2月 9日出願公開、特開2017- 32979〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年6月8日(パリ条約による優先権主張2015年6月8日、2016年6月7日、米国)の出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。 平成28年 8月 3日:翻訳文提出書の提出 同年10月17日:出願審査請求書の提出 平成29年10月 6日付け:拒絶理由通知(同年10月17日発送) 平成30年 1月17日:期間延長請求書(2ヶ月)の提出 同年 4月17日:誤訳訂正書・意見書の提出 同年 8月 8日付け:拒絶査定(同年8月14日送達。 以下「原査定」という。) 同年12月14日:審判請求書の提出 第2 本願発明 本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成30年4月17日付けの誤訳訂正書の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項12に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項12】 屈折率の摂動を作り出す空間パターンを適用することによって生じる変更した屈折率を有する高後方散乱ファイバであって、 伝送ファイバに接続される場合に0.5デシベル(dB)よりも小さい結合損失、及びレイリー散乱を上回る3dBよりも大きい相対的な光パワーの反射(Rp→r(λ,z,l))をもたらす屈折率摂動(Δn(x,y,z))を備える摂動を受ける区間を備える高後方散乱ファイバ。」 第3 刊行物の記載 (1)原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2013/136247号(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(なお、下線は、当審が付したものである。)。 ア 「 ![]() 」(第1頁第3行ないし第2頁第9行) (訳: 技術背景 多くの低侵襲ヘルスケア処置において、ガイドワイヤ及びカテーテルのような医療装置を追跡することが有益である。光学的な形状感知は、細長い医療装置に組み込まれたマルチコア光ファイバの全ての位置から反射された光を測定及び分析することによって、これを可能にする。干渉計が使用される場合には、形状に変換され得るファイバに沿った変形、歪み又は曲がりの完全な分布が得られる。この方法の説明は、“Optical position and/or shape sensing”と表題が付けられた米国特許出願公開公報US2011/0109898A1(特許文献1)に見ることができる。光ファイバ内の光の後方散乱は、(1)内在的な現象すなわちレイリー散乱、及び(2)外来的な現象すなわちブラッグ格子の二つの分類に分類されることができる。そのとき第三の散乱作用すなわちブルリアン散乱は無視されることに留意されたい。ブルリアン散乱は、干渉計測技術に用いることができず、不十分な空間的解像度に導く。光学的形状感知の一つの実施は、レイリー散乱を用いる。これは、ファイバの引き上げ工程の後に追加的な製造ステップなしで光ファイバを使用するという利点を有する。 レイリー散乱の信号強度 遠隔通信ファイバの製造者らは、伝送損失は小さく、主にレイリー散乱によるという程度にまで、彼らの製品の品質を長年に渡って向上させてきた。このことは、形状感知のためには、信号強度がかなり低いという不都合をもつ。付記Iにおいて、ノイズ比への次の信号と一緒にその大きさが計算される。ノイズ比への小さな信号は、干渉測定システム内に追加的な予防措置を取るように駆り立てる。 ファイバの遠位端部の反射は、他の全ての信号を覆い隠し、大き過ぎ、少なくとも80dbまで低減されなければならない。そうするために、吸収ガラスが遠位端部へ癒着接続される。しかしながら、この末端は壊れやすく容易に破損してしまい、医療装置内へのファイバの統合は低い収率を持つ。その上に、この種類の末端は、ファイバの最後の5‐10mmは形状を追跡することができない、という副次的影響を持つ。 形状感知ファイバは、少なくとも4本のコアを含む。各コアは、別々の干渉計に接続される。したがって、システムは、個々の単一コアファイバーが一つの多数コアファイバーに取り付けられる要素、すなわちファンアウトを含む。ファンアウト及び感知ファイバ末端で、クロストーク(混線)が起こる。すなわち、ある特定のコア内でファイバを伝播する光がこれらの点で散乱され、検出器に向かってその他の複数のコアの一つの中に戻る。このクロストークは、4つの干渉計を互い違いの配列に構成することによって軽減され得る。“Interferometric measurement with crosstalk suppression”と表題が付けられた、米国特許出願公開公報US2011/0310378A1(特許文献2)を参照されたい。干渉計を互い違いにすることは、各干渉計の腕部内にかなりの量のファイバを組み込むことを伴う。全体で、システムは500-600mの追加的なファイバを含むものであり、システムを温度変化及び機械的振動に対してより敏感にしている。) イ 「 ![]() 」(第4頁第11行ないし第5頁第5行) (訳: ファイバブラッグ格子 上述の課題の解決策は、感知ファイバの4本のコア内にブラッグ格子を書き込むことよって、外部の散乱信号を使用することである。散乱効率は、およそ1%の大きさであり、これはレイリー散乱の10^(-8)(付記Iを参照)と比較されるべきである。干渉計の信号は、この比率の平方根すなわち10^(3)又は60dBで増大する。形状感知ファイバの末端は、例えば8度の角度の研磨カットが十分であるように、少量の端部反射の抑制のみを必要とする。ファイバコア間のクロストーク、有限のサーキュレータの除去率及びマルチコアコネクタによる反射に関する全ての問題が、軽減される。さらに、リードワイヤは形状感知ファイバに対して無視できるほどの信号を持つであろう。リードワイヤの長さの増加は、同量のファイバ長を干渉計の基準アーム部に追加することによって、位相測定の統合性を損なうことなく容易に補償されることができる。 米国特許公報US7,781,724(特許文献3)は、ファイバブラッグ格子を使用する形状/位置感知装置の例である。装置は光ファイバ手段を有する。光ファイバ手段は、少なくとも二つのシングルコア光ファイバか、又は少なくとも二つのファイバコアを有するマルチコア光ファイバのいずれかを有する。いずれの場合においても、ファイバコアは、ファイバコア間のモード結合が最小化されるように離間している。複数のファイバブラッグ格子(FBGs)の配列は各ファイバコア内に配置され、周波数領域反射率計は光ファイバ手段に対して操作可能な関係に配置される。使用において、装置は物体(目的物)に貼られるか、又は取り付けられる。光ファイバ上の変形又は歪みは測定され、変形又は歪みの測定は、局所的な曲がり測定に関連付けられる。局所的な曲がり測定は、物体の位置及び/又は形状を決定するために統合される。一つの特有の不都合は、典型的なFBG構成については、スペクトル帯の“ウィング”における情報を包含するために、反射率計の検出器は比較的大きなダイナミックレンジを持たなくてはならないことである。 本発明の発明者らは、改良された形状及び/又は位置感知システムは有益であることを正しく認識し、かつそれ故に本発明を考え出した。) ウ 「 ![]() 」(第10頁第28行ないし第11頁第18行) (訳: 発明を実施するための形態 図10は、本発明による光学的位置及び/又は形状感知システム1の模式図を示す。光学的感知システム1は、関連する物体Oの位置及び/又は形状測定用に適合される。システムは、関連する物体Oの上又は表面、物体Oの中、又は物体Oのへの固定に適する、一つ又はそれ以上の光ファイバ10を有する。各光ファイバは、一つ又はそれ以上の光ファイバコアを有する(図11及び以下を参照)。 さらに、本図では図示されていない複数の光ファイバコアが、物体又は対象物Oの位置及び/又は形状が測定される光ファイバコアの全長に沿って延びる、一つ又はそれ以上のファイバブラッグ格子(FBG)を有している。 反射率計REFL12は、例えばその目的のために適合された補助光ファイバ11を介して、一本又はそれ以上の光ファイバ10に光学的に接続されている。反射率計12は、複数の光ファイバコアに沿った複数の採取点での変形の測定のために光学的に設計されている。場合により、一本より多い(2本以上の)補助的光ファイバ11が適用されてもよい(例えば、本発明のこの態様に関する更なる詳細について米国特許第7,781,724号を参照)。 プロセッサPROC14は、複数の光ファイバコア(本図では図示されていない)からの測定された変形に基づく物体Oの位置及び/又は形状測定のために、反射率計12に操作可能に接続されている。 反射率計12は、周波数領域で作動している場合に、位置又は形状を測定するために中心波長(λ0)の周りの第一波長(λ1)から第二波長(λ2)へ波長スキャンを実行するように設計され、一つ以上のファイバブラッグ格子(FBG)は、光ファイバコアの全長に沿って延び、一つ又はそれ以上の光ファイバコアのそれぞれは、対応する反射スペクトルが波長スキャンにおいて検出可能であるように、光ファイバコアの全長に沿って空間的に変調された反射(r)を有する。波長スキャンは、例えば以下でΔλとも呼ばれるλ1からλ2へ実行される。 図11は、本発明による4本の光ファイバコア9a,9b,9c,及び9dを含む光ファイバ10の模式的な斜視図を示す。縦縞模様の記入によって表示されるように、コア9は、全長(破線によって表示されているように左側の末端部分は図示されていない)に沿って一つ又はそれ以上のFBGsを有する。) エ 「 ![]() 」(第14頁第31行ないし第15頁第4行) (訳: 通常ブラッグ格子は、紫外線を使用してファイバコア及び位相マスクにライティングされる。位相マスクの有限な長さは、同じ有限な長さの格子を生じさせる。この長さは数cmの大きさになることができ、感知ファイバの全長と同じ長さになることはできない。したがって、複数の格子が連結又は重ね合わせられ、ファイバ位置の関数としての信号が如何なる空隙も見せないような方法でライティングされるべきである(FBSSの製造に関する当業者のために適切な更なる詳細のために、M.Sumetskyらの“Holographic methods for phase mask and fiber grating fabrication and characterization”を参照)。) オ 「 ![]() 」(第18頁第23行ないし第19頁第10行) (訳: 付記I レイリー信号強度及び信号対ノイズ比 以下は、干渉法を使用したシングルモードファイバ内でのレイリー散乱信号の推定である。この推定を検証するため、信号対ノイズ比が計算され、Luna形状取得システムを起源とする経験値と比較される。ノイズレベルには二つの原因がある。一方は、検出機器に、具体的にはトランスインピーダンス増幅器内のフィードバック抵抗器の温度ジョンソンノイズに由来する。他方は、レーザー光源の相対強度ノイズに起因する。 レイリー散乱 通信ファイバにおける損失は、合計0.15dB/kmに達し、レイリー散乱が支配的である。これは、約30kmの後には光の半分が散乱してしまい、次の増幅器が組み込まれることを意味する。我々は、下記数式2の散乱パラメータを使用することができる。 ![]() 散乱光は全立体角に分配され、小さな割合のみがファイバのモード内に捕捉される。この割合fsは、外部の開口数に対応する内角□NAによって決定される。 ![]() ファイバ内の入力パワーI0及びLのファイバ長さについて、レイリー散乱の全体の出力Irは次式のとおりである。 ![]() 幸運なことに、干渉法による測定及びレイリー散乱光による測定は、大きさにおいてファイバ上の入力パワーに類似する、基準出力と混合され、その結果として、検出器上のRF出力は次式のとおりである。 ![]() 優れたインジウムガリウムヒ素ピンダイオードは、検出器電流iRFが約0.3μAに達することができるように、約1A/Wの感度を有することができる。) カ 「 ![]() 」(第23頁第17行ないし第24頁第4行) (訳: このように、本発明は要するに、関連する物体(O)の位置及び/又は形状測定用の光学的感知システム(1)であって、システムは、一以上の光ファイバコア(9)を有するファイバ(10)を有し、光ファイバコア(9)は、物体(O)の位置及び/又は形状が測定される全長に沿って延びる、一以上のファイバブラッグ格子(FBG,8)を有する、システムに関する。反射率計(REFL,12)は、光ファイバコアに沿って複数の採取点で変形を測定し、プロセッサ(PROC,14)は、複数の光ファイバコアからの測定された変形に基づいて物体の位置及び/又は形状を測定する。(複数の)ファイバブラッグ格子(FBG,8)は光ファイバコア(9)の全長に沿って延び、ファイバコアは、対応する反射スペクトルが波長スキャンにおいて検出可能であるように、光ファイバコアの全長に沿って空間的に変調された反射(r)を有する。したがって、(複数の)ファイバブラッグ格子は、光ファイバに沿って効果的に連続的であり、ギャップが残されておらず、全ての位置が検出可能な反射を生じさせ、かつ、反射スペクトルが、反射率計内の光源の波長スパン又は“スイープ”と同等の波長スパンを包含することが達成される。) キ 上記ウで引用する図10及び図11は、以下のものである。 ![]() O…関連する物体 9a,9b,9c,及び9d…光ファイバコア 10…光ファイバ 11…補助光ファイバ 12…反射率計12 14…プロセッサPROC (2)引用文献に記載された発明 ア 上記(1)アの記載から、以下のことが理解できる。 (ア)光ファイバ内の光の後方散乱は、内在的な現象すなわちレイリー散乱と外来的な現象すなわちブラッグ格子の二つの分類に分類されること。 ※ ここで、「レイリー散乱の後方散乱光」とは、周囲(前方・後方・横方向)に散乱した光のうち、後方に散乱する光のことであり、「ブラッグ格子の後方散乱光」とは、後方に反射する特定波長の光のことであることは、当業者に明らかである(必要ならば、下記の図を参照。)。 レイリー散乱(特開2004-212325号公報の図1) ![]() ブラッグ格子(特開2014-9962号公報の図2) ![]() (イ)遠隔通信ファイバの伝送損失は、主に周囲に散乱するレイリー散乱によること。 (ウ)レイリー散乱の後方散乱光の信号強度は、低いこと。 イ 上記(1)イ及びオの記載から、以下のことが理解できる (ア)ブラッグ格子の散乱効率(反射効率)は、およそ1%(10^(-2))であり、レイリー散乱効率の10^(-8)より大きいこと。 (イ)上記「レイリー散乱効率の10^(-8)」は、摘記オの付記Iの記載からして、「散乱パラメータαs」と「開口数の二乗に依存する捕捉割合fs」の積が10^(-8)となることから、単位長さ当たりの後方に散乱する割合を意味すること。 ![]() ウ 上記(1)ウの記載を踏まえて、図10及び図11を見ると、以下のことが理解できる。 (ア)「ブラッグ格子を有する光ファイバ」は、補助光ファイバを介して反射率計と光学的に接続されていること。 以下、この光ファイバを、「ブラッグ格子付き光ファイバ」という。 (イ)「反射率計」は、中心波長(λ_(0))周りの第一波長(λ_(1))から第二波長(λ_(2))へ波長スキャンを実行するように設計されていること。 (ウ)ブラッグ格子は、特定波長を反射し、その反射スペクトルは波長スキャンにより検出されること。 エ 上記(1)エの記載から、 ブラッグ格子は、紫外線と位相差マスクを利用して形成され、長手方向に周期的に屈折率が変化することが理解できる。 必要ならば、例えば、特開平11-275020号公報(【0047】及び図3)を参照されたい。 ちなみに、図3は、以下のものである。 ![]() オ 上記(1)オの記載から、以下のことが理解できる。 周囲に散乱した光のうち、伝搬方向と逆方向に散乱する光(後方散乱光)の割合、つまり、光ファイバの入射端側に戻る割合は、「開口数NAの二乗」に比例すること。 カ 上記(1)カの記載から、 「反射率計」は、内部に光源を備えていることが理解できる。 キ 上記アないしカより、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「補助光ファイバを介して反射率計と光学的に接続されているブラッグ格子付き光ファイバであって、 前記反射率計は、中心波長(λ_(0))周りの第一波長(λ_(1))から第二波長(λ_(2))へ波長スキャンを実行するように設計され、 前記ブラッグ格子は、特定波長を反射し、その反射スペクトルは前記波長スキャンにより検出され、 前記ブラッグ格子の反射効率は、およそ1%(10^(-2))であり、レイリー散乱の10^(-8)より大きい、ブラッグ格子付き光ファイバ。」 第4 対比・判断 1 本願発明と引用発明を対比する。 (1)引用文献の記載によれば、引用発明の「ブラッグ格子」は、紫外線と位相差マスクを利用して形成され、長手方向に周期的に屈折率が変化するものであるから、引用発明の「ブラッグ格子」は、本願発明の「屈折率摂動(Δn(x,y,z))を備える摂動を受ける区間」に相当する。 (2)ア 引用発明の「ブラッグ格子付き光ファイバ」は、補助光ファイバを介して反射率計と光学的に接続されているところ、その接続箇所において、所定の結合損失を生じることは、明らかである。 イ 引用発明において、「ブラッグ格子により(反射効率1%で)入射端側に戻る光」と「レイリー散乱により(散乱効率10^(-8)で)入射端側に戻る光」の「相対的な光パワー」に関する比は、(反射効率10^(-2)/散乱効率10^(-8))=10^(6)と表すことができる。 これは、6ベル(B)、つまり、デシベル換算で「60dB」となる。 (3)上記(1)及び(2)からして、本願発明と引用発明とは、 「伝送ファイバに接続される場合に所定の結合損失、及びレイリー散乱を上回る3dBよりも大きい相対的な光パワーの反射(Rp→r(λ,z,l))をもたらす屈折率摂動(Δn(x,y,z))を備える摂動を受ける区間を備える」点で一致する。 (4)以上のことから、本願発明と引用発明とは以下の点で一致する。 <一致点> 「屈折率の摂動を作り出す空間パターンを適用することによって生じる変更した屈折率を有する光ファイバであって、 伝送ファイバに接続される場合に所定の結合損失、及びレイリー散乱を上回る3dBよりも大きい相対的な光パワーの反射(Rp→r(λ,z,l))をもたらす屈折率摂動(Δn(x,y,z))を備える摂動を受ける区間を備える光ファイバ。」 (5)一方で、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明は、「高後方散乱ファイバ」であるのに対して、 引用発明は、そのようなものであるか否か不明である点。 <相違点2> 所定の結合損失に関して、 本願発明は、「0.5デシベル(dB)よりも小さい」のに対して、 引用発明は、不明である点。 2 判断 (1)まず、上記<相違点2>について検討する。 ア 結合損失は、「光ファイバ」の物性値を表すものではなく、伝送ファイバに接続される際に生じるものであるところ、引用発明の「ブラッグ格子付き光ファイバ」を「補助光ファイバ」に接続した際に、その接合方法等を工夫することにより、結合損失を「0.5dB未満」とすることに何ら困難性は認められない。 必要ならば、下記の文献を参照。 特開2013-522677号公報(【0037】) 特開2004-279708号公報(【0037】) 特開平3-96904号公報(第2頁左下欄) 特開平2-44225号公報(第3頁左上欄) イ よって、引用発明において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を備えることは、当業者が容易になし得たことである。 (2)次に、上記<相違点1>について検討する。 ア 上記「第4 1(1)<一致点>」のとおり、引用発明も、「レイリー散乱を上回る3dBよりも大きい相対的な光パワーの反射(Rp→r(λ,z,l))をもたらす屈折率摂動(Δn(x,y,z))を備える」といえる。 イ そうすると、引用発明の「ブラッグ格子付き光ファイバ」は、本願発明と同様に、「高後方散乱ファイバ」と呼べるものである。 ウ よって、上記<相違点1>は、実質的な相違点ではない。 (3)効果 本願発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果から予測し得る範囲内のものである。 3 審判請求書における主張について (1)請求人は、本願の請求項12に係る発明について、低い結合損失と大きな後方散乱とは、トレードオフの関係にあり、両方を達成することは当業者にとって容易ではない旨主張する(第11頁中段)。 ア しかしながら、本願の請求項12の「伝送ファイバに接続される場合に0.5デシベル(dB)よりも小さい結合損失」における「結合損失」とは、 本願明細書(【0059】)の「高散乱光ファイバのある実施形態は、G.652標準に準拠する光ファイバに接続された場合、波長範囲が1450nmから1650nmの間の範囲、好ましくは1500nmから1625nmの間の範囲で、-99dB/mmよりも大きいレイリー散乱及び0.2dBよりも小さい(好ましくは0.1dBよりも小さい)結合損失を備える。光ファイバ産業においてG.652標準はよく知られているので、G.652標準のさらなる議論はここでは省略する。」等の記載からして、 高散乱光ファイバを「他の伝送ファイバ」と接続した際に生じる結合(接合)損失を意味するものと解される。 イ そして、結合(接合)損失は、「光ファイバ」の物性値を表すものではなく、伝送ファイバに接続される際に生じるものであるから、「光ファイバ」固有の値である「後方散乱」とは別個に低減可能なものである。 (2)以上のことから、請求人の主張は、上記「2」の判断を左右するものではない。 4 まとめ 本願発明は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2019-12-27 |
結審通知日 | 2020-01-07 |
審決日 | 2020-01-21 |
出願番号 | 特願2016-114383(P2016-114383) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 下村 一石、橿本 英吾 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
近藤 幸浩 星野 浩一 |
発明の名称 | 高後方散乱導波路 |
代理人 | 岡部 讓 |