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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06N |
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管理番号 | 1362957 |
審判番号 | 不服2019-4831 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-11 |
確定日 | 2020-06-23 |
事件の表示 | 特願2018- 41368「データ出力装置、データ出力方法及びプログラム」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 9月19日出願公開、特開2019-159435、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,平成30年3月8日の出願であって,同年11月26日付けで審査請求がされ,平成30年12月25日付けで拒絶理由通知(平成31年1月8日発送)がなされ,平成31年1月31日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたが,同年2月8日付けで拒絶査定(同年2月19日謄本送達)がなされた。 これに対して,「原査定を取り消す。本願の発明は特許すべきものとする、との審決を求める。」ことを請求の趣旨として,平成31年4月11日付けで審判請求がなされるとともに,同日付けで手続補正がなされ,令和元年6月3日付けで審査官により特許法第164条第3項に定める報告(前置報告)がなされた。 そして,令和2年2月14日付けで当審拒絶理由通知(同年2月18日発送)がなされ,令和2年4月6日付けで意見書が提出されるとともに,同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成31年2月8日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願の請求項1ないし7に係る発明は,以下の引用文献AないしCに基づいて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 A.特開2012-068965号公報 B.特開2005-227794号公報 C.国際公開第2016/189905号 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 本願の請求項1ないし6に係る発明は,以下の引用文献1ないし3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2005-227794号公報(原査定の引用文献B) 2.特開2012-068965号公報(原査定の引用文献A) 3.国際公開第2016/189905号(原査定の引用文献C) 第4 本願発明 ア 本願請求項1?6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は,令和2年4月6日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。 「複数の処理モジュールのいずれかによって生成された出力データを、該出力データの利用主体へ出力するように構成された出力部を備え、 前記複数の処理モジュールの各々は、前記利用主体の属性毎に用意された相互に異なる学習済みモデルであって、少なくとも1つの入力データに基づいて前記入力データとは異なる出力データを生成するように構成されており、 前記属性に関する指定を前記利用主体から受け付けるように構成された受付部と、 前記利用主体へ出力データを出力する処理モジュールを、前記指定に基づいて前記複数の処理モジュールから選択するように構成された選択部とをさらに備え、 前記複数の処理モジュールは、第1及び第2の処理モジュールを含み、 前記第1及び第2の処理モジュールの各々は、対象の観測結果を?す出力データを生成するように構成されており、 前記第1及び第2の処理モジュールの一方による前記対象の観測精度は、他方による前記対象の観測精度よりも高く、 前記出力データは、前記利用主体が認識可能な状態に加工可能である、データ出力装置。」 イ なお,本願発明2?本願発明4は,本願発明1を直接・間接に減縮した発明であり,本願発明5及び本願発明6は,本願発明1をそれぞれ,「方法の発明」及び「プログラムの発明」として特定したものである。 第5 引用文献に記載されている技術的事項及び引用発明の認定 1 引用文献1について ア 本願の出願日前に頒布(又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である)され,原審の拒絶の査定の理由である上記平成30年12月25日付けの拒絶理由通知において引用された上記引用文献Bには,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「【0235】 また、近傍指示パラメータGは、対象とする事象や標準モデルの出力分布によって異なってもよいし、繰り返し回数Rによって変化させてもよい。 (第4の実施の形態) 図19は、本発明の第4の実施の形態における標準モデル作成装置の全体構成を示すブロック図である。ここでは、本発明に係る標準モデル作成装置がコンピュータシステムにおけるサーバ401に組み込まれた例が示されている。本実施の形態では顔認識用の標準モデルを作成する場合を例にして説明する。 【0236】 サーバ401は、通信システムにおけるコンピュータ装置等であり、事象の出力確率によって定義される顔認識用の標準モデルを作成する標準モデル作成装置として、カメラ411と、画像データ蓄積部412と、参照モデル準備部402と、参照モデル記憶部403と、利用情報受信部404と、参照モデル選択部405と、標準モデル作成部406と、書き込み部413とを備える。 【0237】 カメラ411により、顔の画像データが収集され、画像データ蓄積部412に顔画像データが蓄積される。参照モデル準備部402は、画像データ蓄積部412が蓄積した顔画像データを用いて話者ごとに参照モデル421を作成し、参照モデル記憶部403に記憶する。 【0238】 利用情報受信部404は、利用者が希望する顔認識の対象となる人間の年齢の年代と性別の情報を利用情報424として電話414により受信する。参照モデル選択部405は、利用情報受信部404が受信した利用情報424に基づいて、参照モデル記憶部403が記憶している参照モデル421の中から、利用情報424が示す年代と性別の話者に対応する参照モデル423を選択する。 【0239】 標準モデル作成部406は、参照モデル選択部405が選択した話者の顔画像の参照モデル423に対する確率又は尤度を最大化又は極大化するように標準モデル422を作成する処理部であり、第2の実施の形態における標準モデル作成部206と同一の機能を有するとともに、第1の実施の形態における第1近似部104eと第3の実施の形態における第2近似部306eの機能を有する。つまり、第1?第3の実施の形態で示された3種類の近似計算を組み合わせた計算を行う。 【0240】 書き込み部413は、標準モデル作成部406が作成した標準モデル422をCD-ROMなどのストレージデバイスに書き込む。」 B 「【0249】 次に、本実施の形態を、行動予測に基づいてお店などを紹介する情報提供システムに適用した具体例を説明する。この情報提供システムは、通信ネットワークで接続されたカーナビゲーション装置と情報提供サーバ装置から構成される。カーナビゲーション装置は、本実施の形態における標準モデル作成装置401によって予め作成された標準モデルを行動予測モデルとして利用することで、人の行動(つまり、車による行先等)を予測し、その行動に関連した情報(行先の近くに位置するレストランなどのお店の情報など)を提供する機能を備える。 【0250】 まず、利用者は、カーナビゲーション装置を用いて、電話回線414で接続されたサーバ401に対して、自分用の行動予測モデルの作成を依頼する。 【0251】 具体的には、利用者は、カーナビゲーション装置が表示する項目選択画面で、「らくらく推薦機能」のボタンを押す。すると、利用者の住所(利用場所)、年齢、性別、趣味などを入力する画面になる。 (中略) 【0255】 次に、サーバ401は、転送されてきた個人情報(利用情報)に基づいて、お父さんとお母さんの2個の行動予測モデルを作成する。ここで、行動予測モデルは、確率モデルで表現され、その入力は、曜日、時刻、現在地などで、出力は、お店Aの情報を提示する確率、お店Bの情報を提示する確率、お店Cの情報を提示する確率、駐車場の情報を提示する確率などである。」 C 「【0261】 また、参照モデル準備部402は、必要に応じて新たな参照モデルを作成して参照モデル記憶部403に追加・更新してもよいし、参照モデル記憶部403に格納されている不要な参照モデルを削除してもよい。 【0262】 また、標準モデルを作成したのちに、さらにデータにより学習してもよい。(以下略)」 イ 上記Aの記載内容からすると,引用文献1には,次のとおりの発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「参照モデル記憶部,利用情報受信部,参照モデル選択部,標準モデル作成部,書き込み部を備える標準モデル作成装置であって, 利用情報受信部は,利用者の年代と性別の情報を利用情報として受信し, 参照モデル選択部は,前記利用情報受信部が受信した前記利用情報に基づいて,参照モデル記憶部が記憶している参照モデルの中から,前記利用情報が示す年代と性別に対応する参照モデルを選択し, 標準モデル作成部は,参照モデル選択部が選択した参照モデルに対する標準モデルを作成し, 書き込み部は,標準モデル作成部が作成した標準モデルをデバイスに書き込むことを特徴とする標準モデル作成装置。」 2 引用文献2について ア 本願の出願日前に頒布(又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である)され,原審の拒絶の査定の理由である上記平成30年12月25日付けの拒絶理由通知において引用された上記引用文献Aには,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) D 「【要約】 【課題】検知対象物を検知する性能が向上した画像認識装置の提供。 【解決手段】赤外線カメラ10によって生成される前方画像50から、前方領域に存在する歩行者を表す画像50aを検知する画像認識装置100である。赤外線カメラ10は、前方領域の明るさに応じてカメラゲインを変更することによりコントラストの調整された前方画像50を生成する。そのため、画像認識装置100は、複数群のサンプル画像61a?63aのコントラストに応じて作成された複数の事前学習モデル31?33を記憶するデータベース30と、当該カメラゲインに対応する事前学習モデル31?33をデータベース30に記憶された複数の事前学習モデル31?33から選択する最適モデル選択部27と、選択された事前学習モデル34に基づいて前方画像50から歩行者を表す画像50aを検知する歩行者認識部21と、を備える。」 E 「【0049】 上述した事前学習モデル31?33を生成する際に設定される認識率及び誤認識率の目標値は、事前学習モデル31?33毎に異なっていてもよい。認識率は、事前学習モデルを作成するためのサンプル画像のコントラストが高くなるほど、高い値が設定されてよい。一方、誤認識率は、事前学習モデルを作成するためのサンプル画像のコントラストが低くなるほど、低い値が設定されてよい。」 イ 上記D及びEの記載内容からすると,引用文献2には,次のとおりの技術が記載されているものと認められる。 「複数の事前学習モデルごとに,認識率及び誤認識率の目標値が異なるように複数の事前学習モデルを構成する」技術。 3 引用文献3について ア 本願の出願日前に頒布(又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である)され,原審の拒絶の査定の理由である上記平成30年12月25日付けの拒絶理由通知において引用された上記引用文献Cには,図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。 (当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) F 「[0068] <<4.動作処理例>> 図11は、本実施形態に係る情報処理システム1において実行される情報提供処理の流れの一例を示すシーケンス図である。図11に示すように、本シーケンスには、端末装置100及びサーバ200が関与する。 [0069] まず、端末装置100は、コンテキストを示す情報を収集する(ステップS102)。例えば、端末装置100は、タッチパネル等へのユーザ入力、又は内蔵するジャイロセンサ、加速度センサ、生体情報センサ、カメラ、マイク等のセンサ装置により、ユーザのコンテキストを示す情報を取得する。他にも、コンテキストを示す情報は、SNSへの投稿等の、端末装置100以外の装置により取得される情報であってもよく、例えばサーバ200により取得されてもよい。また、コンテキストを示す情報は、GPS、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)又は基地局等により特定される端末装置100の位置情報を含んでいてもよいし、時間情報等を含んでいてもよい。次いで、端末装置100は、コンテキストを示す情報をサーバ200へ送信する(ステップS104)。 [0070] 次に、サーバ200は、モデル選択アルゴリズムに選択対象の複数のモデルを割り当てる(ステップS106)。モデルの割り当ては、コンテキストを示す情報の受信前に行われてもよい。次いで、サーバ200は、モデル選択アルゴリズムによりモデルを選択して(ステップS108)、選択したモデルを用いてアイテムを生成する(ステップS110)。そして、サーバ200は、生成したアイテムを示す情報を端末装置100へ送信する(ステップS112)。 [0071] 次に、端末装置100は、サーバ200から受信したアイテムをユーザへ出力する(ステップS114)。例えば、端末装置100は、図7?図10に一例を示したようなUIを表示してもよいし、表示と共に又は表示に代えて音声又は振動等によりアイテムを出力してもよい。次いで、端末装置100は、アイテムに対するユーザからのフィードバックを取得して、取得したユーザフィードバックを示す情報をサーバ200へ送信する(ステップS116)。 [0072] そして、サーバ200は、端末装置100から受信したユーザフィードバックを示す情報に基づいて、モデル選択アルゴリズムに割り当てられたモデルの各々のパラメータを更新することで、学習を行う(ステップS118)。」 イ 上記Fの記載内容からすると,引用文献3には,次のとおりの技術が記載されているものと認められる。 「モデル選択アルゴリズムにより選択されたモデルを用いて生成されたアイテムをユーザに出力し,前記アイテムに対する前記ユーザからのフィードバックを示す情報を受信し,当該情報に基づいて,前記モデル選択アルゴリズムに係るパラメータを更新する」技術。 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 ア 本願発明1と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「参照モデル」,「標準モデル」,及び「書き込み部」は,それぞれ,本願発明1の「処理モジュール」,「出力データ」,及び「出力部」に相当する。また,引用発明の「参照モデル記憶部が記憶している参照モデルの中から」「参照モデルを選択」との記載から,引用発明の参照モデル記憶部には,複数の参照モデルが記憶されていることは明らかである。 してみると,本願発明1と引用発明とは,後記する点で相違するものの,“複数の処理モジュールのいずれかによって生成された出力データを出力するように構成された出力部を備え”る点で共通する。 (イ)引用発明の「利用者」,「利用者の年代と性別」は,それぞれ,本願発明1の「利用主体」,「属性」に相当する。そして,引用発明の「利用情報受信部は,利用者の年代と性別の情報を利用情報として受信」するとの記載,「参照モデル選択部は,前記利用情報受信部が受信した前記利用情報に基づいて,参照モデル記憶部が記憶している参照モデルの中から,前記利用情報が示す年代と性別に対応する参照モデルを選択」するとの記載からすると,引用発明の複数の「参照モデル」は,受信した利用者の年代と性別の情報に基づいて選択されるものであるから,利用者の属性に基づいて選択される相互に異なるモデルといえるものである。また,引用発明の具体例として,上記Bの段落【0255】に,「サーバ401は、転送されてきた個人情報(利用情報)に基づいて・・・行動予測モデルを作成する・・・出力は、お店Aの情報を提示する確率、お店Bの情報を提示する確率、お店Cの情報を提示する確率、駐車場の情報を提示する確率などである」と記載されるように,引用発明の標準モデル作成装置においても,入力データに基づいて,前記入力データとは異なる出力データを出力するものであるといえる。さらに,引用発明の上記Cに「参照モデル準備部402は、・・・標準モデルを作成したのちに、さらにデータにより学習してもよい」と記載されるように,引用発明の「参照モデル」は,学習済みモデルといえるものである。 してみると,本願発明1と引用発明とは,“複数の処理モジュールの各々は,利用主体の属性毎に用意された相互に異なる学習済みモデルであって,少なくとも1つの入力データに基づいて前記入力データとは異なる出力データを生成するように構成されて”いる点で共通する。 (ウ)引用発明の「利用情報受信部」及び「参照モデル選択部」は,それぞれ,本願発明1の「受信部」及び「選択部」に相当する。そうすると,引用発明の「利用情報受信部は,利用者の年代と性別の情報を利用情報として受信」するとの記載,「参照モデル選択部は,前記利用情報受信部が受信した前記利用情報に基づいて,参照モデル記憶部が記憶している参照モデルの中から,前記利用情報が示す年代と性別に対応する参照モデルを選択」するとの記載,及び上記(イ)の検討内容を踏まえると,本願発明1と引用発明とは,“属性に関する指定を利用主体から受け付けるように構成された受付部と”,“前記利用主体へ出力データを出力する処理モジュールを,前記指定に基づいて複数の処理モジュールから選択するように構成された選択部とをさらに備え”る点で共通する。 (エ)そして,上記(ア)ないし(ウ)の検討内容を踏まえると,引用発明の「標準モデル作成装置」は,入力された利用者の利用情報に基づいて,複数の参照モデルから対応する参照モデルを選択し,当該参照モデルを用いて利用者に提供する標準モデルを作成して出力するものであるから,本願発明1の「データ出力装置」に相当するといえる。 イ 以上から,本願発明1と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。 (一致点) 複数の処理モジュールのいずれかによって生成された出力データを出力するように構成された出力部を備え, 前記複数の処理モジュールの各々は,利用主体の属性毎に用意された相互に異なる学習済みモデルであって,少なくとも1つの入力データに基づいて前記入力データとは異なる出力データを生成するように構成されており, 前記属性に関する指定を前記利用主体から受け付けるように構成された受付部と, 前記利用主体へ出力データを出力する処理モジュールを,前記指定に基づいて前記複数の処理モジュールから選択するように構成された選択部とをさらに備える,データ出力装置。 (相違点1) 本願発明1の「出力部」が,「出力データの利用主体へ出力する」ものであるのに対し,引用発明の「書き込み部」は,標準モデル作成部が作成した標準モデル(請求項1記載の発明の「出力データ」に相当)をデバイスに書き込むものである点。 (相違点2) 本願発明1が「前記複数の処理モジュールは、第1及び第2の処理モジュールを含み」,「前記第1及び第2の処理モジュールの各々は、対象の観測結果を示す出力データを生成するように構成されており」,「前記第1及び第2の処理モジュールの一方による前記対象の観測精度は、他方による前記対象の観測精度よりも高い」ものであるのに対し,引用発明は,複数の「参照モデル」を含むものではあるが,これら複数の参照モデルがどのようなものであるか明記されていない点。 (相違点3) 本願発明1の「出力データ」が,「利用主体が認識可能な状態に加工可能である」のに対して,引用発明の「標準モデル」は,そのようなものであるか明記されていない点。 (2)相違点についての判断 引用発明の「書き込み部」において,CD-ROMなどのデバイスに書き込むことに替えて,通信ネットワークで接続された利用者が用いる装置へ出力するように構成すること,すなわち上記相違点1に係る構成とすることは,当業者の通常の創作能力の発揮によって容易になし得たことである。 また,引用発明において,複数の参照モデルを作成するように構成することや,学習モデルを用いて利用者にどのようなデータを出力データとして提供するかについては,設計者が必要に応じて適宜定めうる設計的事項に過ぎない。そして,上記引用文献2の上記D及び上記Eに記載されるように,複数の学習モデルの各々について,観測精度を異なるように構成する技術思想についても,本願の出願日前において,当業者には周知の技術であり,引用発明においても,上記相違点2に係る構成とすることは,当業者の通常の創作能力の発揮によって容易になし得たことである しかしながら,上記相違点1及び相違点2に加えて,利用主体に応じて,「出力データ」を「利用主体が認識可能な状態に加工可能」とする構成をさらに備える点については,引用文献1ないし引用文献3には記載されておらず,本願の出願日前において周知技術だったともいえない。 したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用発明,引用文献2及び引用文献3に記載の技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2ないし本願発明4について 本願発明2ないし本願発明4は,本願発明1を直接・間接に減縮した発明であり,本願発明1と同様に,「出力データ」が,「利用主体が認識可能な状態に加工可能である」構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2及び引用文献3に記載の技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明5及び本願発明6について 本願発明5及び本願発明6は,本願発明1をそれぞれ,「方法の発明」及び「プログラムの発明」として特定したものであり,本願発明1と同様に,「出力データ」が,「利用主体が認識可能な状態に加工可能である」構成を備えるものであるから,上記「1 本願発明1について」と同じ理由により,当業者であっても,引用発明,引用文献2及び引用文献3に記載の技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第7 原査定について 当審拒絶理由に対する応答時の令和2年4月6日付けの補正により,補正後の請求項1,5,6は,「出力データ」が,「利用主体が認識可能な状態に加工可能である」構成を備えるものとなった。 当該「出力データ」が,「利用主体が認識可能な状態に加工可能である」構成は,原査定における引用文献A,B,Cには記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1ないし6は,当業者であっても,引用文献A,B,Cに記載された発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 したがって,原査定を維持することはできない。 第8 むすび 以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。 また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-06-03 |
出願番号 | 特願2018-41368(P2018-41368) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06N)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 坂庭 剛史 |
特許庁審判長 |
仲間 晃 |
特許庁審判官 |
田中 秀人 小林 秀和 |
発明の名称 | データ出力装置、データ出力方法及びプログラム |
代理人 | 立花 顕治 |