現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1363030
審判番号 不服2018-11787  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-09-03 
確定日 2020-06-09 
事件の表示 特願2015-545896「ドコサペンタエン酸を含む組成物の投与」拒絶査定不服審判事件〔2014年6月12日 国際公開、WO2014/089511、平成28年1月18日 国内公表、特表2016-501249〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、2013年12月6日(パリ条約による優先権主張 2012年12月6日(以下「本願優先日」という。)、米国(US)、2013年3月13日、米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年 9月26日付け : 拒絶理由の通知
平成30年 4月 4日 : 意見書及び手続補正書の提出
平成30年 4月20日付け : 拒絶査定
平成30年 9月 3日 : 審判請求書及び手続補正書の提出

第2 平成30年9月3日提出の手続補正書による手続補正についての補正
の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年9月3日提出の手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正の内容

本件補正は、特許法第17条の2第1項ただし書第4号に掲げる場合の、拒絶査定不服審判の請求と同時になされた補正であって、本件補正前の特許請求の範囲(平成30年4月4日提出の手続補正書を参照。)に記載された請求項1:

「【請求項1】
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、および任意でドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、対象におけるトリグリセリドレベルをベースライントリグリセリドレベルから減少させるための組成物であって、EPAおよびDPAの量が、前記組成物中に存在する脂肪酸の総量に対して約55重量%以上であり、ならびに前記組成物が、ドコサペンタエン酸が160mg/日?約600mg/日の量で対象に投与されるように用いられる、前記組成物。」
(当審注:本件補正による変更箇所の変更前の記載に、当審合議体が下線を付した。)

を、本件補正後の特許請求の範囲(平成30年9月3日提出の手続補正書を参照。)に記載された請求項1:

「【請求項1】
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、および任意でドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、対象におけるトリグリセリドレベルをベースライントリグリセリドレベルから減少させるための組成物であって、EPAおよびDPAの量が、前記組成物中に存在する脂肪酸の総量に対して約55重量%以上であり、DHA:EPAの比が、1:20未満の比であり、ならびに前記組成物が、ドコサペンタエン酸が160mg/日?約600mg/日の量で対象に投与されるように用いられる、前記組成物。」
(当審注:下線部は本件補正による変更箇所であり、上記手続補正書に記載されたとおりである。)

とする補正を含むものである。

2 本件補正の適否

(1)本件補正の目的について

本件補正のうち、上記請求項1についての補正は、上記「1 補正の内容」で摘示したとおり、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、組成物の含有成分の「エイコサペンタエン酸(EPA)」と「ドコサヘキサエン酸(DHA)」について、本件補正後の請求項1では、その含有量の比を「DHA:EPAの比が、1:20未満の比」に限定する補正事項を含むものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が、同法同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(2)引用文献の記載事項等

ア 引用文献1の記載事項

原査定の拒絶の理由において、「引用文献1」として引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である、「Lipids, 2010, Vol.45, p.669-681」には、以下の事項が記載されている。なお、原文は英語のため、当審合議体による和訳で摘記する。また、下線は当審合議体が付した。

(摘記1a)
「健康な被験者における血小板パラメータ及び血漿脂質に及ぼすアザラシ油及びマグロ魚油の影響」
「要約 魚は、心血管に有益な 2つの長鎖多価不飽和 n-3 脂肪酸(LC n-3 PUFA)である、エイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の豊富な供給源である。関連するがあまり調査されていない LC n-3 PUFA であるドコサペンタエン酸(DPA)は、アザラシ油及び牧草飼育赤身肉に、より多くみられる。本研究では、これらの異なる脂肪酸(FA)を含むサプリメントを14日間投与された健康なボランティアの血小板機能及び血漿脂質の指標を比較した。各10名の 3つの群にランダムに分けられた被験者は、マグロ油(210mg EPA、30mg DPA、810mg DHA)、アザラシ油(340mg EPA、230mg DPA、450mg DHA)又はプラセボ(sunola)油、の各カプセルを摂取した。サプリメントの LC n-3 PUFA のレベルは、魚油とアザラシ油のいずれの群でも、約1g/日とした。ベースラインの食事性 FA 及び他の栄養素の投与量は、全ての群で同様とした。魚油とアザラシ油のいずれもが、血小板 DHA レベルを上昇させた(P < 0.01)。アザラシ油は、血小板の DPA と EPA のレベルも上昇させ(P = 0.01)、また、血小板活性化マーカーである p-セレクチン(P = 0.01)を減少させたが、これは、DPA(P = 0.03)及び EPA(P < 0.01)と負の関連があり、DHA とは関連がなかった。アザラシ油群のみ、血漿トリアシルグリセロールが減少し(P = 0.03)、HDL-コレステロールレベルが増加した(P = 0.01)。したがって、恐らく EPA と同様に高い DPA の含有量のため、アザラシ油は、魚油よりも、健康的な血漿脂質プロファイルを促進し、血栓リスクを低下させるのに、より効率的である可能性がある。」
「略語
・・・・
ANOVA 分散分析
・・・・
CVD 心血管疾患
・・・・」
(669頁「表題」、同頁「Abstract」、同頁右欄「Abbreviations」)

(摘記1b)
「緒言
・・・・。
EPA と DHA は、いずれも、HDL-コレステロールのレベルを増大させるとともに [16]、CVD の独立危険因子である血漿トリアシルグリセロールレベルを低下させることが示されている [15]。・・・・。
赤身肉には、比較的少量の EPA と DHA が含まれているが、別の LC n-3 PUFA である:ドコサペンタエン酸 C22:5n-3(DPA)が豊富であり、これは数種の脂っこい魚に少量しか存在しない [20]。・・・・。
DPA の、EPA と DHA との分子構造の類似性が、心血管パラメーターに関して、DPA が、DHA と EPA と類似の有益な効果を持つことを実現可能としている。これらの 3つの LC n-3 PUFA は全て、頸動脈中内膜肥厚と有意に逆相関があり [22]、DPA は、EPA や DHA と同様に、血小板に対して抗凝集作用があることが示されている [26,27]。健康な男性を対象とした大規模な予測研究において、EPA の血清レベルは急性冠動脈イベントのリスク低下と関連していなかったが、最高のレベルで DHA と DPA を併用摂取した被験者は、最低のレベルで摂取した者と比較して、リスクが低下した [28]。サプリメントのアザラシ油は、(魚油と比べて)DPA が比較的豊富であり、正常な男性における LC n-3 PUFA 状態の血清リン脂質の増大を誘導することが見いだされており、このことは血漿の凝固促進と抗凝固の活性のバランスの好ましい転換を示唆している [29]。・・・・。
純粋な食品グレードの DPA の市販量は、現在のところ臨床試験での使用には入手できない。アザラシ油(EPA と幾分かの DHA も含む)は、DPA の商業的に入手可能な最も豊富な供給源であるが、我々の知る限り、血小板の活性化に対するその効果の報告は、以前に発表されていない。本研究では、健康なボランティアを対象に、血中脂質と血小板因子に及ぼすアザラシ油の効果を、マグロ魚油(アザラシ油に対し、極僅かな DPA、40% 未満の EPA、2倍の DHA を含む)の当該効果と比較して調査した。このランダム二重盲検並行介入試験では、LC n-3 PUFA を含んでいないプラセボ油を、コントロールとして使用した。」
(670頁左欄3行、同頁左欄下3?1行、同頁右欄7?10行、同頁右欄20?36行、同頁右欄42行?末行)

(摘記1c)
「試験方法
・・・・。
試験計画
本研究は、ランダム二重盲検プラセボ対照臨床試験であり、14日間(完全な血小板の代謝回転に十分)にわたって実施した。当初14日間のウォッシュアウト期間(LC n-3 PUFA が非常に少ない一般的な食事)の後、被験者を、次の3群のいずれかにランダムに割り当てた:プラセボ油(Sunola-高オレイン酸ヒマワリ油)、マグロ魚油、又は、アザラシ油、の群。各群は、試験の期間中、各群用のサプリメント脂肪酸の組み合わせを、1日あたり10個のソフトジェルカプセルの形態で、摂取した。被験者は、それぞれの食事サプリメントカプセルを、朝食と同時又はその後に摂取するよう指示された。
プラセボ群は、sunola油(85% 18:1n9、5% 18:2n6、5% 16:0)のカプセル(Nu-Mega Ingredients Pty. Ltd.、オーストラリア)500mgを、1日に10個、投与された。同カプセルは、EPA、DPA、DHA、その他の LC PUFA を欠いているが、1日に約4gのモノ不飽和油を供給した(表1)。魚油の被験者は、4個のプラセボカプセルに加えて、DHA が豊富で、EPA と少量の DPA も含む、マグロ魚油のカプセル(Nu-MegaIngredients Pty. Ltd.、オーストラリア)500mgを6個、1日に摂取した。第3の群は、EPA、DHA 及び相当量の DPA(魚油の7倍以上)を含有する、アザラシ油のカプセル(BGI Atlantic Marine Product Inc.、カナダ)500mgを、1日に10個、投与された。マグロ魚油群とアザラシ油群の両方に、ちょうど合計で1g超/日のサプリメントの LC n-3 PUFA が投与された(表2)。」
(671頁左欄1行、同頁左欄24行?同頁右欄26行)

(摘記1d)
「表1 本研究で使用されたサプリメント油の主な脂肪酸の組成
(mg FA / 500mg 油)
脂肪酸 プラセボ 魚 アザラシ
(sunola)油 油 油
C18:1n-9 425 61 142
C20:5n-3(EPA) 0 35 34
C22:5n-3(DPA) 0 5 23
C22:6n-3(DHA) 0 135 45
500mgカプセルあたり 0 175 102
LC n-3 PUFA の合計
被験者は、1日に、10個のsunola油カプセル、又は、6個の魚油カプセルと
4個のsunola油カプセル、又は、10個のアザラシ油カプセルを摂取した。」
(671頁右欄「Table 1」)

(摘記1e)
「表2 各試験群の被験者に投与されたサプリメントのオレイン酸と主要な 長鎖 n-3 PUFA の総量(mg / 日)( 1日あたり10個のソフトゲル
カプセルの摂取による)
脂肪酸 プラセボ 魚油 アザラシ油
(sunola)油群 群 群
C18:1n-9 4,250 1,944 1,420
C20:5n-3(EPA) 0 210 340
C22:5n-3(DPA) 0 30 230
C22:6n-3(DHA) 0 810 450
LC n-3 PUFA 合計 0 1,050 1,020 」
(671頁右欄「Table 2」)

(摘記1f)
「結果
被験者
当初30名の被験者のうち、3名は、時間的制約又は瀉血困難のため、試験から撤退したが、その全員が偶然にもプラセボ群のメンバーであった。残りの被験者は、年齢と体重がよく適合していた(表3)。」
(673頁左欄下13?7行)

(摘記1g)
「表3 ベースライン時の3つの試験群における試験参加者の記述的特性
(n = 27)
人口統計学 プラセボ 魚油 アザラシ油
パラメータ (n = 7) (n = 10) (n = 10)
性別: 5/2 5/5 8/2
女性/男性
年齢(歳) 29±5(23-36) 30±8(21-43) 31±6(23-41)
重量(kg) 68±17(50-98) 72±14(48-88) 78±14(60-99)
数値は、平均値±SD(範囲)である。 nは、参加者の数である。 」
(673頁右欄「Table 3」)

(摘記1h)



(675頁「Table 5」)
(和訳(表の説明、項目名及び注釈の部分のみ):
表5 サプリメントのプラセボ(sunola油)、マグロ魚油又はアザラシ油
のカプセルを投与される被験者の1日あたりの脂肪酸の摂取の平均
ベースライン(g/日)

脂肪酸 プラセボ(n = 6)^(a) 魚油(n = 10) アザラシ油(n = 8)^(a)

数値は、平均値±標準偏差である。
^(a) 不十分な食餌データのため被験者数を減らした(本文参照)。
プラセボ、魚油及びアザラシ油の各群の男女構成は、それぞれ、
女性5/男性1、女性5/男性5、女性7/男性1であった。
・・・・ )

(摘記1i)
「血中脂質プロファイルとC反応性タンパク質
ベースラインの血中脂質プロファイルパラメーター(総コレステロール、HDL-及び LDL-コレステロール、及びトリアシルグリセロール)、並びに、C反応性タンパク質(CRP)のレベルは、群の間で有意な差はなかった(表7)。サプリメント投与の14日目では、総コレステロールと LDL-コレステロールは、全ての治療群でベースラインと比較して変化はなかった。 HDL-コレステロールは、14日間のアザラシ油の投与後、有意に増加し(P = 0.01)、魚油群での増加は有意には至らなかった(P = 0.06)。このパターンは、トリアシルグリセロールの結果も同様であり、アザラシ油の投与により有意な減少が誘導されたが(P = 0.03)、魚油群では減少する傾向のみが観察された(P = 0.06)。CRPは、どの群内でも大きく変化しなかった。」
(675頁左欄下17?4行)

(摘記1j)



(677頁「Table 7」)
(和訳(数値以外の部分):
表7 サプリメントの、プラセボ(sunola油)、マグロ魚油、又は、アザ
ラシ油の各カプセルの消費の 0日目 及び 14日目の被験者における
血小板及び血清のパラメータ

脂肪酸 プラセボ 魚油 アザラシ油 分散分析^(b)
(FA) (n = 7) (n = 10) (n = 10)
0日 14日 差^(a) 0日 14日 差^(a) 0日 14日 差^(a) P値

血小板量(MPV、fL)
血小板数(9109 L-1)
血小板活性化(P セレクチン発現、%)
血小板凝集(s)
勾配(Ω/s)
血小板 ATP 放出(1M)
コレステロール(mmol/L)
LDL-コレステロール(mmol/L)
HDL-コレステロール(mmol/L)
トリアシルグリセロール(mmol/L)
C反応性タンパク質(CRP)(mg/dL)

数値は、平均値±標準偏差である。* 0日目と14日目との間の差について P<0.05、グループ内分析、対応ある両側 t 検定
n 各群の参加者
^(a) 0日目と14日目の数値差の平均
^(b) 血小板及び血清のパラメータの変化の群間の分散分析 )

(摘記1k)
「考察
本研究では、健康なボランティアに、アザラシ油、マグロ魚油、又はモノ不飽和植物(sunola)油を、14日間サプリメント投与した効果を比較した。その結果は、約 5g/日のアザラシ油と 3g/日のマグロ魚油(それぞれ約1gの LC n-3 PUFA を含有する)という、比較的少量のサプリメントの投与が、血小板中の総 LC n-3 PUFA 含有量の有意な増加を誘導するのに十分であることを示すものであった。・・・・。
・・・・。
本研究において、アザラシ油のサプリメントは、CVD を保護する別の成果も生み出した。それは、魚油では観察されなかった HDL-コレステロールの有意な増加である。・・・・。我々の研究において、魚油で HDL-コレステロールの有意な変化がなかったことは、このサプリメントにより提供される EPA(210mg/日)と DHA(810mg/日)(即ち、合計 1.02g/日)の含有量が相当低いことを反映している可能性がある 。しかし、アザラシ油におけるこれらの FA の合計投与量は、0.790g/日(EPA 340mg/日、DHA 450mg/日)とさらに低く、このことは、この低いサプリメント投与量であっても、我々の参加者の HDL-コレステロールに良い影響を与えたのは、230mg/日の DPA であった可能性を示唆している。・・・・。」
(675頁左欄下3行?同頁右欄6行、679頁左欄29?31行、同頁同欄38?46行)

(摘記1l)
「上昇したトリアシルグリセロールは CVD の危険因子であり、アザラシ油のサプリメントはトリアシルグリセロールの有意な減少を誘導した。これはアザラシ油を調査した健康な被験者での幾つかの他の研究結果 [12,47] と一致するが、全てではない [29]。興味深いことに、アザラシ油/タラ肝油の併用した投与が被験者のトリアシルグリセロールのレベルを低下させたと報告されている一方で、本研究のほぼ3倍の投与量でも、純粋なアザラシ油又はタラ肝油では、そうでなかったという報告がある [45]。6週間に渡って与えられた、我々が述べたのと同じ少なめの投与量のアザラシ油によって、高トリグリセリド血症の被験者において、HDL-コレステロールに変化なく、血圧が有意に改善するとともに、血漿トリアシルグリセロールが有意に減少した、という結果も得られている [48]。今回の研究で、マグロ魚油のサプリメントは、トリアシルグリセロールの有意な減少を誘導しなかった(P = 0.06)。アザラシ油と魚油は、いずれも、健康なボランティアに対し、約1g/日の LC n-3 PUFA を供給したため、アザラシ油中の DPA 及び/又は EPA の、より高いレベルが、HDL-コレステロール及びトリアシルグリセロールのレベルに対する、より大きな効果の原因になっている可能性がある。バックリーら [43] は、DHA が豊富であるが EPA は豊富でない油のサプリメントにより、健康な被験者においてトリアシルグリセロールの減少が見られたと報告している。彼らが使用した DHA が豊富な油には、EPA が豊富な油の6倍の量の DPA が含まれており、このことは、EPA よりもむしろ DPA が、トリアシルグリセロールのレベルの低下に有効な(低-DHA)アザラシ油の成分であるという、我々の推測への支持を加えている。 LC n-3 PUFA によるトリアシルグリセロールの減少に関し提案されたメカニズムは、カイロミクロントリアシルグリセロールクリアランス [49]、並びに、肝臓トリアシルグリセロールの減少した吸収と合成及びその異化の増加 [50]、を含んでいる。動物での研究は、DPAが、脂肪酸合成の減少により、トリアシルグリセロールを減少させる可能性があることを、具体的に示している [51]。」
(679頁右欄23行?末行)

(摘記1m)
「結論を纏めると、低用量のアザラシ油サプリメント中の DPA は、健康な被験者の心血管の健康を保護する変化を誘導するようであった。この比較的研究されていない LC n-3 PUFA は(単独で又は EPA とともに)、血清 HDL-コレステロールを増加させ、トリアシルグリセロールレベルを減少させると同時に、血小板活性化を抑制するように作用したようである。アザラシ油サプリメントの有益な効果は、同程度量の総 LC n-3 PUFA を含むが、DHA はずっと多く、EPA は少なく、DPA は極僅かである、マグロ魚油の効果より大きかった。我々の結果は、DPA が、直接的にも、 EPA への逆変換を経由しても、幾つかの CVD リスク因子の低減において、DHA よりも効率的である可能性があることを示唆している。理想的には、精製した EPA、DPA 及び DHA を単独で用いる、より大規模で恐らくより長期の対照試験が、EPA 及び DHA との比較において、特に異なる投与量での血小板機能に対する DPA の効果のメカニズムを確定するためには、必要である。・・・・。」
(680頁左欄9?25行)

イ 引用文献1に記載された発明

前記アの摘記事項より、引用文献1には、ドコサペンタエン酸(DPA)を多く含み、エイコサペンタエン酸(EPA)および幾分かのドコサヘキサエン酸(DHA)も含む、アザラシ油を、健康な被験者に14日間にわたり投与し、アザラシ油が血中脂質等に及ぼす効果を、マグロ魚油(アザラシ油に対して、DPAは極僅か、EPAは40%未満、DHAは2倍、含む)の当該効果と比較調査した試験について記載されており(摘記1a?1c)、被験者に投与されたアザラシ油を含有する食事サプリメントのソフトジェルカプセルは、1カプセルに500mgの脂肪酸が含まれており、そこには、オレイン酸(C18:1n-9)が142mg、EPAが34mg、DPAが23mg、DHAが45mg、それぞれ含まれていたこと(摘記1d:表1)、被験者は1日に10個の当該カプセルを投与されたこと(摘記1c、1e:表2)、当該カプセルを投与された被験者の血中トリアシルグリセロール濃度(mmol/L)は、0日目と14日目との差が、-0.40(P=0.03)であり、有意な減少が生じたのに対し、マグロ魚油を含有するカプセルを投与された被験者では、血中トリアシルグリセロール濃度に有意な減少がみられなかったこと(摘記1i、1j:表7)、が記載されていると認められる。
そして、上記のアザラシ油を含有するカプセルの1個には、EPAおよびDPAの量(57mg=34mg+23mg)が、脂肪酸の総量(500mg)に対して、11.4重量%の割合で含まれており、DPAが230mg/日の量(230mg/日=23mg×10個/日)で被験者に投与されたことが認められる。
また、上記の血中トリアシルグリセロール濃度の減少は、カプセルの投与0日目の血中トリアシルグリセロール濃度から減少したものであると認められる。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

≪引用発明≫
「エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、被験者における血中トリアシルグリセロール濃度を投与0日目の血中トリアシルグリセロール濃度から減少させるためのカプセルであって、EPAおよびDPAの量が、前記カプセル中に存在する脂肪酸の総量に対して11.4重量%であり、前記カプセルが、ドコサペンタエン酸が230mg/日の量で被験者に投与されるように用いられる、含まれる主な脂肪酸が以下の組成(mg FA / 500mg 油)を有する、前記カプセル。
脂肪酸(FA)
C18:1n-9(オレイン酸) 142mg
C20:5n-3(EPA) 34mg
C22:5n-3(DPA) 23mg
C22:6n-3(DHA) 45mg 」

(3)本件補正発明と引用発明との対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における、「被験者」、「血中トリアシルグリセロール濃度」、「投与0日目の血中トリアシルグリセロール濃度」、「カプセル」は、本件補正発明における、「対象」、「トリグリセリドレベル」、「ベースライントリグリセリドレベル」、「組成物」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「230mg/日の量」は、本件補正発明で規定する「160mg/日?約600mg/日の量」の範囲内である。
そうすると、本件補正発明と引用発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。

<一致点>
「エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、および任意でドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、対象におけるトリグリセリドレベルをベースライントリグリセリドレベルから減少させるための組成物であって、前記組成物が、ドコサペンタエン酸が160mg/日?約600mg/日の量で対象に投与されるように用いられる、前記組成物。」

<相違点1>
組成物中に存在する脂肪酸の総量に対する、EPAおよびDPAの量が、本件補正発明は「約55重量%以上」であるのに対し、引用発明は「11.4重量%」である点。

<相違点2>
本件補正発明は、「DHA:EPAの比が、1:20未満の比」であるとされているのに対し、引用発明は、そのような特定がなされていない点。

(4)相違点についての判断

上記各相違点について検討する。

ア 相違点1について

前記(2)イにて認定した引用文献1に記載された試験において、10個のカプセルにより1日に被験者に投与された、アザラシ油群とマグロ魚油群の長鎖多価不飽和 n-3 脂肪酸(LC n-3 PUFA)の量をみると(摘記1e:表2)、マグロ魚油群では、EPAが210mg、DPAが30mg、DHAが810mgであるのに対して、アザラシ油群では、EPAが340mg、DPAが230mg、DHAが450mgであるから、アザラシ油群では、マグロ魚油群に対して、EPAは約1.6倍、DPAは約7.7倍、DHAは約0.6倍の投与量であった。また、アザラシ油群とマグロ魚油群のいずれでも、1日に投与された10個のカプセルに、多量のオレイン酸が含まれていた(アザラシ油群では、1,420mg、マグロ魚油群では、1,944mgである)(摘記1e:表2)。
そして、引用文献1における以下の各記載:
「したがって、恐らく EPA と同様に高い DPA の含有量のため、アザラシ油は、魚油よりも、健康的な血漿脂質プロファイルを促進し、血栓リスクを低下させるのに、より効率的である可能性がある。」(摘記1a)、
「アザラシ油中の DPA 及び/又は EPA の、より高いレベルが、HDL-コレステロール及びトリアシルグリセロールのレベルに対する、より大きな効果の原因になっている可能性がある。」(摘記1l)、及び、
「我々の結果は、DPA が、直接的にも、 EPA への逆変換を経由しても、幾つかの CVD リスク因子の低減において、DHA よりも効率的である可能性があることを示唆している。」(摘記1m)
からみて、引用文献1には、アザラシ油が、EPAとともに、DPAを多く含有していることが、DPAの含有量が少なくDHAを多く含むマグロ魚油と比較して、有意な血中トリアシルグリセロール濃度の減少を誘導したことの大きな原因である可能性がある旨が記載されており、DPAが単独で又はEPAとともに、トリアシルグリセロールレベルを減少させたと推測される旨が記載されているといえる。
なお、引用文献1では、筆者らが行った試験に関する記述において、「マグロ魚油」のことを、単に「魚油」と略記している箇所があることは明らかである(摘記1h)。
このような引用文献1の記載に接した当業者ならば、上記試験において、血中トリアシルグリセロール濃度(即ち、トリグセリセリドレベル)を減少させた効果は、DPAがEPAとともに有効成分として作用したことに起因するものであると認識するといえる。
また、一般的に、医薬組成物や補助食品組成物の分野では、意図する効果への寄与が小さい成分の含有量を減らしたり、有効成分の含有割合を高めることは、通常行われていることである。
そうすると、引用発明において、アザラシ油の含有成分のうち、トリグリセリドを減少させる効果への寄与がDPA及び/又はEPAよりは小さいと推定されるオレイン酸及びDHAについて、除去するか含有量を減らすなどして、当該効果への寄与が高いと推定されるDPAについては、EPAとともに、その相対的な含有割合を高め、その結果として、EPAおよびDPAの量が、前記組成物中に存在する脂肪酸の総量に対して約55重量%以上、との条件を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

イ 相違点2について

本件補正発明における、相違点2に係る「DHA:EPAの比が1:20未満の比」という発明特定事項については、その文言からすると、DHAが1に対し、EPAが20未満である、ということを意味すると解される。
引用発明の組成物の成分の含有量において、DHA:EPAの比は、45mg:34mgであり、換算すると「1:約0.75」となり、「1:20未満」という条件を満たすことになるため、相違点2は実質的な相違点ではない。
なお、本願明細書には、【0047】に「DHA対EPAの比(DHA:EPA)が1:20未満であり」という記載があるところ、例えば、【0054】には、
「いくつかの態様では、組成物中に存在する脂肪酸の総量に対して相対的に少量のDHAが存在する。いくつかの態様では、本発明の組成物は、組成物中に存在する脂肪酸の総量に対して20%以下のDHA、・・・・、または1%以下のDHAを含む。」(下線は当審合議体が付した。以下同じ。)
という記載があることに加えて、【0127】?【0146】に記載された処方例である実施例1?13の組成物のうち、実施例1?6の組成物では、DHA(c22:6n3)の含有量が0.01%未満である一方で、EPA(c20:5n3)の含有量は最小でも55.79%(実施例5)であることも踏まえると、本件補正発明の組成物は、DHAの含有量が少ないことも想定しているとも解され、そうであるなら、上記の「DHA:EPAの比が1:20未満の比」という事項は、DHA:EPAの比の値である「DHA/EPA」が「1/20」未満である、ということを意味している可能性もあるといえる。
しかし、仮に、相違点2に係る上記発明特定事項が、DHA:EPAの比の値である「DHA/EPA」が「1/20」未満である、ということを意味しているとしても、前記アにて検討したように、引用発明において、アザラシ油の含有成分のうち、トリグリセリド減少効果への寄与が小さいと推定されるDHAについて、除去又は含有量を減らすなどして、有効成分であると推定されるDPAについては、EPAとともに、その相対的な含有割合を高め、結果として、「DHA/EPA」が「1/20」未満である、という条件も満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことである。

(5)本件補正発明の効果について

本願明細書の【0127】?【0146】、【0162】?【0169】に記載されている実施例1?13、29?32は、組成物を調製した処方例であって、これらの組成物が、実際に対象のトリグリセリドレベルをベースライントリグリセリドレベルから減少させる効果を奏することは確認されていない。
【0147】?【0161】、【0175】?【0216】に記載された実施例14?28、34?37においては、上記の実施例1?13、29?32の処方例の組成物のいずれかを用いた、ヒトを対象とした試験について述べられているが、その結果については、例えば、実施例34では、【0181】に、
「試験の結果は、組成物1が基準化合物に比べて優れたバイオアベイラビリティー(AUCおよびCmaxによって測定)を示すことを示す。この効果は絶食投与条件および/または摂食投与条件下で見られる。」
として、定性的な事項が現在形で記述されており、実際に効果を奏したことを具体的かつ客観的に確認することができないうえ、当該記述はトリグリセリドレベルの減少に関するものでもない。
実施例35及び36では、試験方法についての説明は記載されているが、その結果については何も記載されていない。
実施例37では、【0216】に、
「試験の結果は、組成物1が基準化合物に比べて優れた空腹時トリグリセリド低下効果を示すことを示す。この効果は絶食投与条件および/または摂食投与条件下で見られる。」
との記載はあるものの、やはり定性的な事項の現在形による記述に留まり、実際に効果を奏したことを具体的かつ客観的に確認することはできない。
実施例14?28では、試験についての記述が簡略なものであり、実施例14、17、19、21、23では、単に「投与する」と記載されているだけで、その結果が何も記載されておらず、実施例15、16、18、20、22、24?28では、試験の結果にも触れられており、そのうち、実施例15、16、18、20、22、24、28では、TGレベルの減少にも言及されているが、いずれも「有意な減少が生じる」等の定性的な事項の現在形による記述に過ぎない。

本願明細書において、唯一、試験結果が具体的なデータによって示されているのは、【0170】?【0174】に記載された実施例33であるが、同実施例における、「インスリン抵抗性、耐糖能障害、高インスリン血症、肥満、および脂質異常症の特徴を示すことが知られている Charles Riverズッカーfa/fa非糖尿病ラット(系統コード185)」を用いた薬力学効果の試験では、被検物質として、遊離脂肪酸である「DPA」ではなく、そのエチルエステルである「DPAエチルエステル」が、試験開始から14日目までは単独で経口投与され(第1段階)、15日目からは28日目までは高脂血症治療薬「アトルバスタチン」と併用して経口投与されている(第2段階)。このような試験の結果のうち、7日間の投与後の空腹時血漿脂質の値が示された、【図1】:

の記載によれば、「DPAエチルエステル」を単独で投与したことにより、未処置対照群(ビヒクル群)と比べて、トリアシルグリセリドレベルが低くなったことについては、確認することができる。
しかしながら、当該実施例33の試験は、本件補正発明に該当する組成物を用いたものではないから、そのような試験の結果をもって、本件補正発明の成分や含有割合等の特定に基づいた特有の効果を把握することはできないし、前記(4)イにて説示したとおり、引用文献1の記載から、DPAが、EPAとともに、トリアシルグリセリドレベルを減少させる効果を奏することを、当業者は認識できるといえるから、本件補正発明は、当業者が予測できない程の効果を奏したものとは認められない。

(6)請求人の主張について


請求人は、審判請求書において、引用文献1に記載されているアザラシ油には、DHA及びEPAが、それぞれ450mg及び340mg、含まれており、両者の比(DHA:EPA)は、約1.3:1であるので、本願発明で規定される「1:20未満の比」と根本的に異なるのは明らかである、と主張している。
しかしながら、前記(4)イで説示したとおり、引用発明の組成物の成分の含有量において、DHA:EPAの比は、45mg:34mgであり、換算すると「1:約0.75」となるから、本件補正発明で規定する「DHA:EPAの比が、1:20未満の比」との条件を満たすものであり、仮に、当該規定が、「DHA/EPA」が「1/20」未満である、という条件を意味していると解したとしても、引用発明において、アザラシ油の含有成分のうち、トリグリセリドの減少効果への寄与が小さいと推定されるDHAについて、除去又は含有量を減らすなどして、有効成分と推定されるDPAについて、EPAとともに、その相対的な含有割合を高め、その結果として、当該条件を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことである。


請求人は、審判請求書において、引用文献1における前記(2)イ(摘記1l)に該当する箇所を引用し、その記載の要点は、
(ア)トリアシルグリセロールの上昇は、脳血管障害のリスク要因の1つであり、アザラシ油によって健常人のトリアシルグリセロールが減少すること;
(イ)アザラシ油/タラ肝油を組み合わせると患者のトリアシルグリセロールが減少するが、アザラシ油とタラ肝油をそれぞれ単独で使用しても効果はないこと;
(ウ)引用文献1の筆者らの研究によると、トリアシルグリセロールのレベルがツナ油では殆ど変化せず、結果、アザラシ油のDPAおよび/またはEPAが有効であることが示されたこと;
(エ)健常人に、DPAリッチであって且つEPAリッチでないオイルを投与すると、トリアシルグリセロールの減少が認められること;
(オ)EPAではなく、DPAが有効であると考えられること
との技術的事項であるとしたうえで、当業者が引用文献1の記載から理解し得るのは、トリアシルグリセロール等の脂質パラメータに対する、EPA、DPA及びDHAの効果は、試験の条件が異なると全く異なる結果となり、効果が一致しないため、単純に有効性を予測することが不可能であることであって、EPA、DPA及びDHAの効果は、実際に試験を行って確認することで、はじめて理解可能である、と主張している。
しかしながら、まず、上記(ア)及び(ウ)の事項は、引用文献1に記載された試験の結果について言及している部分であり、その内容も実際の試験の結果と整合しており、何ら矛盾はない。
上記(イ)の事項は、引用文献1の著者らと異なる者の先行研究について言及している部分であって、アザラシ油を単独で投与しても、被験者のトリアシルグリセロールが減少しなかったとの結果は、引用文献1に記載された結果と整合しないが、試験の詳細な条件等が異なれば、必ずしも同じ結果にならないことは、あり得ることであり、そのことのみをもって、引用文献1に記載された試験の結果からみて、DPAが、EPAとともに、トリグリセリドレベルを減少させる有効成分であると、当業者が認識できることが否定されるわけではない。
上記(エ)の事項も、引用文献1の著者らと異なる者の先行研究について言及している部分であるが、その後続の部分では、「彼らが使用した DHA が豊富な油には、EPA が豊富な油の6倍の量の DPA が含まれており、このことは、EPA よりもむしろ DPA が、トリアシルグリセロールのレベルの低下に有効な(低-DHA)アザラシ油の成分であるという、我々の推測への支持を加えている。」(摘記1l)、という考察が述べられており、引用文献1に記載された試験結果と何ら矛盾するものではない。
上記(オ)の事項は、EPAよりもDPAのほうがトリグリセリドレベルを減少させるのに、より有効である旨を述べているに過ぎず、EPAの効果を否定しているわけではない。実際に、引用文献1の他の箇所には、
「アザラシ油中の DPA 及び/又は EPA の、より高いレベルが、HDL-コレステロール及びトリアシルグリセロールのレベルに対する、より大きな効果の原因になっている可能性がある」(摘記1l)、及び、
「この比較的研究されていない LC n-3 PUFA は(単独で又は EPA とともに)、・・・・、トリアシルグリセロールレベルを減少させると同時に、血小板活性化を抑制するように作用したようである。アザラシ油サプリメントの有益な効果は、同程度量の総 LC n-3 PUFA を含むが、DHA はずっと多く、EPA は少なく、DPA は最小限である、マグロ魚油の効果より大きかった。我々の結果は、DPA が、直接的にも、 EPA への逆変換を経由しても、幾つかの CVD リスク因子の低減において、DHA よりも効率的である可能性があることを示唆している。」(摘記1m)
と記載され、DPAがEPAとともに有効であると推定される旨が述べられている。
そして、引用発明が、血中トリアシルグリセロール濃度を減少させるものであることは、前記(2)イ及び(4)アでも説示したとおりである。


請求人は、審判請求書において、DPAの投与量を、160mg/日?約600mg/日にすることが最適であることや、DHA:EPAの比を、1:20未満の比とすることに想到するには、本願発明に係る発明特定事項を事後分析的に含めない限り、当業者といえども不可能ないし困難であって、これが当業者の予測を超えた本願発明の格別顕著な効果にほかならないとも主張している。
しかしながら、前記(3)で説示したとおり、引用発明は、DPAの投与量が「230mg/日」であるから、本件補正発明で規定する「160mg/日?約600mg/日」の条件を満たしているうえ、「DHA:EPAの比が、1:20未満の比」という本件補正発明の条件についても、前記アで改めて説示したとおり、引用発明の組成物が既に満たしているか、当業者が容易に想到し得るものである。そして、本件補正発明が、当業者が予測し得ない程の効果を奏するものではないことも、前記(5)で説示したとおりである。

(7)小括

したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 補正の却下の決定のむすび

以上のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、他の補正事項について検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

前記第2のとおり、平成30年9月3日提出の手続補正書による手続補正は、却下されたので、本願に係る発明は、当該補正前の平成30年4月4日提出の手続補正書による手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?39に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1に記載した、次のとおりのものである。

「【請求項1】
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサペンタエン酸(DPA)、および任意でドコサヘキサエン酸(DHA)を含む、対象におけるトリグリセリドレベルをベースライントリグリセリドレベルから減少させるための組成物であって、EPAおよびDPAの量が、前記組成物中に存在する脂肪酸の総量に対して約55重量%以上であり、ならびに前記組成物が、ドコサペンタエン酸が160mg/日?約600mg/日の量で対象に投与されるように用いられる、前記組成物。」

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものであり、その対象とされた請求項1に係る発明とは、前記1で認定した本願発明である。

3 当審の判断

(1)引用文献の記載事項等

原査定の拒絶の理由で引用された「引用文献1」は、前記第2[理由]2(2)アで引用した引用文献1(「Lipids, 2010, Vol.45, p.669-681」)であって、その記載事項は、同第2[理由]2(2)アに摘記したとおりであり、引用発明は、同第2[理由]2(2)イで認定したとおりである。

(2)対比・判断

前記2[理由]2(1)で認定したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当するから、本件補正前の請求項1に記載された発明である本願発明は、本件補正発明の発明特定事項を全て包含するものであり、本件補正発明とは、「DHA:EPAの比が、1:20未満の比であり、」という組成を限定する条件が付されていない、という関係を有するものとなっている。
そして、前記2[理由]2(3)で説示したとおり、DHA:EPAの比が、1:20未満の比であり、」との限定条件が付された本件補正発明が、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該限定条件が付されていない、本件補正発明を包含する関係にある本願発明も、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、本願優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-01-10 
結審通知日 2020-01-15 
審決日 2020-01-28 
出願番号 特願2015-545896(P2015-545896)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小堀 麻子  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 井上 典之
前田 佳与子
発明の名称 ドコサペンタエン酸を含む組成物の投与  
代理人 五十嵐 義弘  
代理人 井上 隆一  
代理人 川本 和弥  
代理人 刑部 俊  
代理人 清水 初志  
代理人 小寺 秀紀  
代理人 山口 裕孝  
代理人 佐藤 利光  
代理人 新見 浩一  
代理人 大関 雅人  
代理人 春名 雅夫  
代理人 小林 智彦  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ