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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61F
管理番号 1363073
審判番号 不服2019-9099  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-05 
確定日 2020-07-03 
事件の表示 特願2017-562054「チャネル及び湿り度インジケータを有する吸収性物品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年12月 8日国際公開、WO2016/196069、平成30年 6月21日国内公表、特表2018-516134、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成28年5月24日(パリ条約による優先権主張 平成27年5月29日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年9月6日付けで拒絶理由が通知され、平成30年12月11日(受付日)で意見書及び手続補正書が提出されたが、令和1年5月10日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、令和1年7月5日(受付日)に本件拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成30年9月6日付け拒絶理由で通知した理由1、すなわち、本願請求項1?13に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
《引用文献等一覧》
引用文献1.特開2012-24418号公報
引用文献2.国際公開第2015/039062号
引用文献3.特開2010-207457号公報

3.審判請求時の補正について
(1)審判請求時の補正によって請求項1に「前記チャネルは、吸収性材料(60)を実質的に含まない前記吸収性コアの領域であり、前記コアラップの前記最上層は、前記チャネルを通じて前記コアラップの前記最下層と結合してコアラップ結合部を形成し、」という事項(以下「補正事項1」という。)を追加する補正は、「チャネル」について構造と機能を限定するものであり、また、請求項1に「前記吸収性コアが液体を吸収すると、前記コアラップ結合部によって前記吸収性コアの圧力が上昇して、より明らかな前記チャネルの窪みが形成され、前記吸収性物品の前記衣類に面する側から見たとき前記湿り度インジケータの形状が変化する」という事項(以下「補正事項2」という。)を追加する補正は、吸収性コアが液体を吸収したときの「湿り度インジケータ」の形状を限定するものであり、いずれも、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。

(2)上記補正事項1は、出願当初の請求項9の記載に基づくものである。
上記補正事項2の「前記吸収性コアが液体を吸収すると、前記コアラップ結合部によって前記吸収性コアの圧力が上昇して、より明らかな前記チャネルの窪みが形成され、」は、出願当初の明細書の段落【0032】に「吸収性コア内の三次元チャネル26’は、吸収性材料が尿などの液体を吸収して膨潤し始めると形成を開始する。コアがより多くの液体を吸収すると、これらのチャネルによって形成された窪みはより深くなり、・・・・より多くの吸収性材料は通常、より大きな膨潤を引き起こし、結合により大きな圧力をかけることになるため、・・・・」と記載されており、新規事項を追加するものではない。また、上記補正事項2の「前記吸収性物品の前記衣類に面する側から見たとき前記湿り度インジケータの形状が変化する」は、出願当初の明細書の段落【0034】に「図2に示すように、物品が尿で十分に満たされたとき、三次元チャネル26’は、一般的には物品の外側から可視であるため、湿り度インジケータはまた、物品の外側から見たとき、一般的には満たされた物品中の三次元チャネル26’内に配置されているようにも見える。」と記載され、「三次元チャネル26’」は、上記段落【0032】に記載されるように「コアがより多くの液体を吸収すると、これらのチャネルによって形成された窪みはより深くなり」、形状が変化するから、三次元チャネル26’内に配置されているように見える「湿り度インジケータ」も、図1及び図2に示すように、吸収性コアが液体を吸収するに伴い形状が変化することが明らかであり、新規事項を追加するものではない。
そして、以下の4.?6.に示すように、補正後の請求項1?12に係る発明は、いわゆる独立特許要件を満たすものである。

4.本願発明
本願請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明12」という。)は、令和1年7月5日に提出された手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
着用者に面する面と、衣類に面する面と、長手方向軸線(80)と、を有するおむつ又はトレーニングパンツなどの吸収性物品(20)であって、前記吸収性物品は、
前記着用者に面する面上のトップシート(24)、
前記衣類に面する面上のバックシート(25)、
及び前記トップシートとバックシートとの間の吸収性コア(28)を備え、前記吸収性コアは、吸収性材料(60)を封入する最上層(16)及び最下層(16’)を有するコアラップを含み、前記吸収性コアは、前記吸収性物品の前記長手方向軸線(80)を中心に対称的に配置された一対の概して長手方向に延在するチャネル(26)を備え、
前記チャネルは、吸収性材料(60)を実質的に含まない前記吸収性コアの領域であり、前記コアラップの前記最上層は、前記チャネルを通じて前記コアラップの前記最下層と結合してコアラップ結合部を形成し、
前記吸収性物品は、前記物品の前記衣類に面する面から見たとき、前記チャネルと少なくとも部分的に重なり合う、湿り度インジケータ(100)を更に備え、
前記湿り度インジケータは、前記コアラップの前記最下層と、前記バックシートと、の間に配置され、
前記湿り度インジケータは、尿と接触したときに外観を変化させる組成物を含み、
前記組成物は、前記吸収性コアに面する前記バックシートの面上にスロットコーティング又は印刷され、
前記吸収性コアは、前記長手方向軸線(80)と重なり合うチャネルを含まず、
前記吸収性コアが液体を吸収すると、前記コアラップ結合部によって前記吸収性コアの圧力が上昇して、より明らかな前記チャネルの窪みが形成され、前記吸収性物品の前記衣類に面する側から見たとき前記湿り度インジケータの形状が変化することを特徴とする、吸収性物品(20)。
【請求項2】
前記湿り度インジケータは、pHインジケータ及び/又は水溶性染料を含む組成物を含む、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記湿り度インジケータは、出現信号であり、色が乾燥状態で透明であるか白色であり、湿潤状態で認識可能な異なる色に変化する、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記湿り度インジケータは、消失信号であり、色が乾燥状態で認識可能であり、湿潤状態でより認識されない色に変化する、請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記尿インジケータは、前記湿り度インジケータが存在する前記チャネルのうちの少なくとも1つに2つ以上の湿り度インジケータ領域(100p)を備える、請求項1?4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記チャネルは、真っ直ぐであり、かつ前記吸収性物品の前記長手方向軸線と平行に配向されているか、あるいは前記チャネルは、前記吸収性物品の前記長手方向軸線に向かって湾曲している、請求項1?5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性材料は、前記吸収性材料の少なくとも70重量%、及び最大100重量%の超吸収性ポリマー粒子を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性材料は、前記吸収性材料の40重量%?80重量%の超吸収性ポリマー粒子を含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
少なくとも1つのチャネルは、前記吸収性物品の長さ(L)の少なくとも10%、及び/又は少なくとも2cm長である、前記物品の前記長手方向軸線(80)上に投影された長さ(L’)を有する、請求項1?8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
少なくとも1つのチャネルは、その部分の少なくとも一部に少なくとも2mmの幅(Wc)を有する、請求項1?9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記コアラップ内の前記吸収性材料(60)の周辺部は、吸収性材料の堆積領域(8)を画定し、前記吸収性材料の堆積領域は、長方形であるか、又は股部点(C)において前記コアの残りの部分における前記吸収性材料の堆積領域の最大幅よりも狭い幅を有するように成形されるかのいずれかであり、前記股部点は、前記コアの前記長手方向軸線(80)上の点として画定され、かつ前記吸収性物品の前縁部(10)からLの5分の2(2/5)の距離に配置され、Lは、前記吸収性物品の長手方向軸線(80)に沿って測定された前記吸収性物品の長さである、請求項1?10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記コアは、前記吸収性材料(60)と前記最上層(16)との間、及び/又は前記吸収性材料と前記コアラップの前記最下層(16’)との間に補助糊剤を含む、請求項1?11のいずれか一項に記載の吸収性物品。」

5.引用文献、引用発明等
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2012-24418号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、身体側およびその反対側とを有するシャーシと、吸液性のコアを有する吸液構造体とを含む物品本体を有し、前記シャーシには、前記吸液構造体と重なる位置に前記反対側から視認可能な表示部が形成された使い捨て吸収性物品において、
前記吸液構造体には、前記表示部に重なる位置に前記コアの非存在領域が形成され、前記非存在領域を介して前記身体側から前記表示部が視認可能であることを特徴とする前記使い捨て吸収性物品。」
イ「【背景技術】
【0002】
従来、内面シートと、外面シートと、これら内外面シートの間に位置する吸収体とを有する使い捨て吸収性物品が公知である。例えば、特許文献1には、外面シートから視認可能な直線状の太線形図柄模様が印刷された吸収性物品が開示され、特許文献2には、内面シートから視認可能な前後表記層が印刷された尿パッドが開示されている。このような特許文献1および2によれば、印刷された図柄模様等によって、吸収性物品の内外面を識別することができる。」
ウ「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1および2では、内外面両側から視認可能な図柄模様等を形成しようとすれば、内外面シートのそれぞれに図柄等を印刷しなければならず、図柄模様等の形成工程が煩雑になる。
【0005】
この発明では、内外面の両側から視認可能な表示部を有するとともに、その形成工程が容易である使い捨て吸収性物品を提供することを課題とする。」
エ「【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る第1の実施形態の使い捨て吸収性物品の一例として示す、使い捨てのおむつ1の斜視図、図2は、おむつ1の展開平面図であって身体側から見た図、図3は、おむつ1の分解斜視図、図4は、おむつ1の展開平面図であって着衣側から見た図、図5は、図4のV-V線端面図である。図2?5において、各弾性要素は、その収縮力に抗して伸長させた状態で示し、図2および3において説明のためその一部を破断している。
【0020】
おむつ1は、着用者の身体側およびその反対側である着衣側と、第1ウエスト域である前ウエスト域2と、第2ウエスト域である後ウエスト域3と、前後ウエスト域2,3間に位置するクロッチ域4とを有するシャーシ10と、吸液性の吸液構造体20と、シャーシ10の身体側に位置する一対の漏れバリアカフ60とを有する。おむつ1は、横方向Xの長さ寸法を二等分した仮想縦中心線P-P、縦方向Yの長さ寸法を二等分した仮想横中心線Q-Qを有し、仮想縦中心線P-Pに関してほぼ対称とされている。
・・・・
【0022】
シャーシ10は、身体側に位置する内面シート14と、着衣側に位置する外面シート15とを有する。・・・・
【0023】
外面シート15は、内面シート14とほぼ同形同大の第1外面シート16と、第1外面シート16の内側に位置する第2外面シート17とを有する。
・・・・
【0027】
内外面シート14,15の間には、吸液構造体20が配置されている。吸液構造体20は、身体側に位置する第1面21と、これとは反対側の第2面22と、吸液性のコア23と、コア23を覆う被覆シート24とを有する。・・・・
【0028】
吸液構造体20には、部分的にコア23を構成する芯材が存在しない中央非存在領域41と側部非存在領域42とが形成されている。芯材が存在しないとは、その領域に全く存在しない場合と、僅かに存在するが実質的には非存在である場合とを含む。中央非存在領域41は、縦方向Yに延びるスリット状に形成され、複数配置されている。具体的には、中央非存在領域41は、仮想縦中心線P-Pに沿って形成されるとともに、前後ウエスト域2,3およびクロッチ域4のそれぞれに縦方向Yに離間して形成されている。側部非存在領域42は、縦方向Yに延びるスリット状に形成され、複数配置されている。具体的には、中央非存在領域41の横方向X両側に位置するとともに、前後ウエスト域2,3およびクロッチ域4のそれぞれに縦方向Yに離間して形成されている。
・・・・
【0035】
上記のようなおむつ1において、表示部30は、図1および図4に示したように、第1外面シート16を介して着衣側から視認できるとともに、図2に示したように、吸液構造体20の中央非存在領域41を介して身体側からも視認可能とされている。
・・・・
【0037】
上記のおむつ1においては、少なくとも表示部30と重なる中央非存在領域41は、縦方向Yに離間して間欠的に形成されているから、表示部30は部分的に視認することができる。なお、表示部30は、中央非存在領域41以外の部分では、これを身体側から視認することはできない。このように、着衣側から視認可能な表示部30は、少なくとも中央非存在領域41を介して身体側からの視認可能であるので、表示部30を着衣側および身体側の両方にそれぞれ形成する必要がない。中央非存在領域41は、縦方向Yに離間して形成されているが、縦方向Yに連続して形成することもでき、中央非存在領域41の縦方向Yの長さ寸法を大きくすることもできる。このような場合には、表示部30をより広い範囲で視認することが可能である。ただし、その分コア23における芯材の量が減少するから、液体の吸収力が低下する可能性がある。したがって、中央非存在領域41の縦方向Yの長さ寸法、および、これらの離間寸法は、コア23の吸収力と視認される表示部30の程度とを比較考量して決めることが好ましい。
【0038】
また、表示部30は、前後フラップ71,72を介して身体側から視認可能とされている。すなわち、前後フラップ71,72では、内面シート14と外面シート15のみが積層され、内面シート14および第2外面シート17を介して表示部30を視認することができる。したがって、おむつ1の前後端においてその中心を確認することができ、着用時において着用者に対して位置あわせをすることができる。具体的には、着用の際に、後フラップ72から視認される表示部30を着用者の背骨にあわせ、前フラップ71から視認される表示部30を着用者の臍にあわせるようにすることで、おむつ1を所望の位置に配置することができる。また、着用後におむつ1が横方向Xにずれたような場合であっても、表示部30を着用者の背骨または臍に合わせるようにすることでおむつ1のずれを直すことができる。
・・・・
【0045】
この実施形態では、第2外面シート17の外面に表示部30を形成しているが、その内面に形成することもできるし、第1外面シート16の内外面のいずれかに形成することもできる。ただし、着衣への色移りを考慮すると、着衣に直接接触しない部分に形成することが望まし。また、表示部30としては、種々の印刷方法のほか、水分や体液との接触によって呈色反応を有するインジケータを用いることができる。このようなインジケータを用いることによって、排尿の有無を確認することもできる。表示部30は、おむつ1の身体側および着衣側のいずれからも視認することができるから、おむつ1の身体側および着衣側からそれぞれインジケータの変色を確認することができる。また、上記のようなインジケータを有するおむつ1は、特に、寝たきりの大人に用いる場合には以下の効果を奏する。すなわち、寝たきりの大人の場合には、表示部30を外側から見るよりも、おむつ1を展開させてその内側から見るほうが容易であり、展開させた際に、内側から見えるインジケータが変色している場合には、そのままおむつ1を交換することができるからである。
・・・・
【0048】
中央非存在領域41は、実質的にコア23が存在しない領域であり、この領域で被覆シート24が互いに接合されることによって、第1面21および第2面22から厚さ方向へとへこむ凹部が形成される。このように凹部が形成されることによって、視覚的および触覚的にもこの領域を確認することができる。中央非存在領域41を介して表示部30が視認でき、かつ、凹部の形成によって、より一層この領域を確認しやすくすることができる。」
オ「図2


カ「図5



(2)引用文献1に記載された発明
引用文献1には、特に第1の実施形態について、次の「引用発明」が記載されている。
「シャーシ10と、吸液性の吸液構造体20を含む、吸収性物品であるおむつであって、
シャーシ10は、身体側に位置する内面シート14と、着衣側に位置する外面シート15とを有し、外面シート15は、第1外面シート16と、第1外面シート16の内側に位置する第2外面シート17とを有し、
内外面シート14,15の間には、吸液構造体20が配置され、吸液構造体20には、部分的にコア23を構成する芯材が存在しない中央非存在領域41と側部非存在領域42とが形成されており、中央非存在領域41は、仮想縦中心線P-Pに沿って形成され、中央非存在領域41は、この領域で被覆シート24が互いに接合されることによって厚さ方向へとへこむ凹部が形成され、
表示部30は、第2外面シート17の内面に表示部30を形成することができ、第1外面シート16を介して着衣側から視認でき、少なくとも中央非存在領域41を介して身体側からの視認可能であり、
表示部30としては、水分や体液との接触によって呈色反応を有するインジケータを用いることができる、吸収性物品であるおむつ。」

6.対比・判断
(1)本願発明1について
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、本願発明1と引用発明とは、次の点で相違し、その余の点で一致する。
《相違点》
本願発明1の「吸収性コア」は、「前記吸収性物品の前記長手方向軸線(80)を中心に対称的に配置された一対の概して長手方向に延在するチャネル(26)を備え」、「前記物品の前記衣類に面する面から見たとき、前記チャネルと少なくとも部分的に重なり合う、湿り度インジケータ(100)を更に備え」るのに対し、
引用発明の吸液構造体20は、部分的にコア23を構成する芯材が存在しない中央非存在領域41と側部非存在領域42とが形成されており、中央非存在領域41は、仮想縦中心線P-Pに沿って形成され、中央非存在領域41は、この領域で被覆シート24が互いに接合されることによって厚さ方向へとへこむ凹部が形成され、表示部30は、少なくとも中央非存在領域41を介して身体側からの視認可能である点。

イ 上記相違点について検討する。
本願発明1の「チャネル」は、「物品の長手方向軸線80を中心に対称的に配置された一対のチャネルを含むか、又は一対のチャネルからなり得る」ものであり、このことにより、「物品の長手方向軸線80と重なり合う、又はこれと同一の空間を占めるチャネルが存在せず、物品がこの方向で折り畳まれることを避けることが更に有利である」とされ(段落【0030】)、本願発明1の「湿り度インジケータ」は、そのような「チャネルによって画定された領域と少なくとも部分的に重なり合う」ことにより、「湿り度インジケータの侵襲流体に対するより迅速な反応を可能にする」(段落【0034】)ものである。
一方、引用発明の表示部30は、仮想縦中心線P-Pに沿って形成される中央非存在領域41の位置に設けられ、それにより、「おむつ1の前後端においてその中心を確認することができ、着用時において着用者に対して位置あわせをすることができる。具体的には、着用の際に、後フラップ72から視認される表示部30を着用者の背骨にあわせ、前フラップ71から視認される表示部30を着用者の臍にあわせるようにすることで、おむつ1を所望の位置に配置することができる。また、着用後におむつ1が横方向Xにずれたような場合であっても、表示部30を着用者の背骨または臍に合わせるようにすることでおむつ1のずれを直すことができる。」(5.(1)エの【0038】を参照。)という効果を奏するものである。
そのため、引用発明の表示部30を、中央非存在領域41の位置に加えて、中央非存在領域41の両側部にある側部非存在領域42の位置にも設けるようにすることは、中央非存在領域41の位置に表示部がすでに設けられていることで上記効果を奏しているのに、更に両側部にも設けることとなり、当業者にとって合理的な設計変更とはいえない。また、表示部を中央非存在領域41の位置から、側部非存在領域42の位置に換えて設けことには、上記効果を奏することができなくなるから、阻害要因を有するものといえる。
さらに、原査定で引用された上記引用文献2(国際公開第2015/039062号)及び上記引用文献3(特開2010-207457号公報)のいずれにも、引用発明の表示部30を側部非存在領域42の位置に設ける動機付けについて、記載も示唆もされていない。
よって、本願発明1の上記相違点に係る構成は、引用発明、並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではない。

ウ してみると、本願発明1は、引用発明、並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)本願発明2?12について
本願発明2?12は、いずれも、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2?12は、引用発明、並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7.原査定について
上記のとおり、本願発明1?12の「吸収性コア」は、「前記吸収性物品の前記長手方向軸線(80)を中心に対称的に配置された一対の概して長手方向に延在するチャネル(26)を備え」、「前記物品の前記衣類に面する面から見たとき、前記チャネルと少なくとも部分的に重なり合う、湿り度インジケータ(100)を更に備え」るとの事項を備えるものであり、この事項は、上記6.で述べたように、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1に記載された発明、並びに引用文献2及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものではないから、原査定の理由により、本願発明1?5を容易に発明できたものとすることはできない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

8.むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-06-16 
出願番号 特願2017-562054(P2017-562054)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼辻 将人  
特許庁審判長 間中 耕治
特許庁審判官 杉山 悟史
井上 茂夫
発明の名称 チャネル及び湿り度インジケータを有する吸収性物品  
代理人 中村 行孝  
代理人 朝倉 悟  
代理人 榎並 薫  
代理人 村田 卓久  
代理人 永井 浩之  
代理人 出口 智也  
代理人 小島 一真  

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