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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01J |
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管理番号 | 1363110 |
審判番号 | 不服2019-15285 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-14 |
確定日 | 2020-06-30 |
事件の表示 | 特願2017-567622「改良された防爆熱撮像システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月 5日国際公開、WO2017/003758、平成30年 7月19日国内公表、特表2018-519521、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)6月21日(パリ条約による優先権主張 2015年6月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月14日付けで拒絶理由が通知され、令和元年6月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年7月8日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたところ、同年11月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、令和2年1月31日に前置報告がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1?11に係る発明は、以下の引用文献1?5に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 特に、本願の請求項1に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明、及び引用文献5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2015-23412号公報 2.特表2010-514149号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2005-179113号公報(周知技術を示す文献) 4.特開昭47-180号(特開昭46-38563号公報は誤記)(周知技術を示す文献) 5.特表2011-507036号公報(周知技術を示す文献) 第3 本願発明 本願の請求項1?11に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」?「本願発明11」という。)は、令和元年11月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 熱撮像システムであって、 少なくとも1つの防爆規格に適合する防爆ハウジングであって、光学窓を含む金属の防爆ハウジングと、ここで、前記光学窓は電磁的熱エネルギーが通過することを可能にする、 前記防爆ハウジング内に配置された熱撮像センサと、 前記熱撮像センサに結合され且つ前記熱撮像センサからの信号に基づいて少なくとも1つの熱画像を提供するように構成された熱撮像エレクトロニクスと、 前記防爆ハウジングの外部で、前記光学窓の少なくとも前方に配置されたレンズアセンブリと、 前記レンズアセンブリの外側に配置された1インチよりも小さい直径を有するシュラウドと、を含み、 前記光学窓が、第2の材料で形成された第1のIR透過性層と第2の材料で形成された第2のIR透過性層とに挟まれた第1の材料からなるIR透過性、耐衝撃性層で形成される、 上記熱撮像システム。 【請求項2】 前記レンズアセンブリは、前記光学窓の前方に配置された第1及び第2のレンズを含み、 第1のレンズが防爆ハウジングの外部にある、 請求項1に記載の熱撮像システム。 【請求項3】 前記レンズアセンブリは、前記防爆ハウジング内に配置された少なくとも1つのレンズを含み、かつ前記電磁的熱エネルギーを前記熱撮像センサ上に合焦するよう構成されている、請求項1に記載の熱撮像システム。 【請求項4】 前記光学窓は、セレン化亜鉛で形成されている、請求項1に記載の熱撮像システム。 【請求項5】 前記レンズアセンブリは、1インチ未満の直径を有するハウジングを含んでいる、請求項1に記載の熱撮像システム。 【請求項6】 前記光学窓は、消炎通路を少なくとも部分において規定している、請求項1に記載の熱撮像システム。 【請求項7】 前記光学窓は、セレン化亜鉛の2つの層の間に挟まれたポリアミドで形成されている、請求項1に記載の熱撮像システム。 【請求項8】 前記熱撮像エレクトロニクスは、前記防爆ハウジング内に配置されている、請求項1に記載の熱撮像システム。 【請求項9】 前記光学窓は熱撮像のための複合光学窓であって、 前記複合光学窓は、 熱撮像電磁的放射を通過させるように構成され、しかし破砕を被るところの物質の第1層と、 熱撮像電磁的放射を通過させるようにまた構成され、しかしまた破砕を被るところの物質の第2層と、 前記第1層と前記第2層との間に配置されたポリアミドの層と、 を含む、 請求項1に記載の熱撮像システム。 【請求項10】 前記第1層及び前記第2層は、セレン化亜鉛で形成されている、請求項9に記載の複合光学窓。 【請求項11】 前記第1層及び前記第2層は、爆発圧を封じ込めるように構成されている、請求項9に記載の複合光学窓。」 第4 引用文献の記載事項、引用発明等 1 引用文献1について (1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同様。)。 (1-ア) 「【技術分野】 【0001】 本発明は、防爆ケースの内部に赤外線カメラが収納された、防爆型赤外線カメラに関する。」 (1-イ) 「【0009】 本発明は、国際整合防爆指針2008Exに適合した防爆構造を有し、かつ良好な赤外線画像が得られる防爆型赤外線カメラを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の防爆型赤外線カメラは、赤外線画像を撮影する赤外線カメラと、赤外線カメラに装着された撮影レンズとを、防爆ケースに収納したものである。 そして、防爆ケースの前面に、赤外線を通過させる窓材を有する窓を配置する。この窓材は、防爆ケースの前面の直径24mm以下の穴の後方に配置するようにした。 また、撮影レンズで撮影視野を拡大する必要がある場合には、防爆ケースの前面の窓の外側に視野拡大レンズを取り付け、この視野拡大レンズで、撮影レンズで撮影する視野を拡大するようにした。 【発明の効果】 【0011】 本発明によると、防爆ケースの前面に配置された窓材を、直径24mm以下の穴の後方に配置したことで、防爆ケースを国際整合防爆指針2008Exに適合した防爆構造にできると共に、撮影される赤外線画像の画質劣化を防止することができる。 さらに、撮影する視野を拡大する必要がある場合には、窓材が配置された窓の外側に視野拡大レンズを取り付けたことで、防爆ケースの窓のサイズに制約されない広角の赤外線画像の撮影が可能になる。」 (1-ウ) 「【0014】 [1.本例の防爆型赤外線カメラの構成] 本例の防爆型赤外線カメラは、図1に示すように、円筒形の防爆ケース100を使用する。防爆ケース100は、国際整合防爆指針2008Exに適合した防爆構造にするために、比較的厚さの厚い金属で形成されたケースである。また、防爆ケース100の各部(後述する窓など)についても、国際整合防爆指針2008Exに適合した防爆構造としてある。国際整合防爆指針2008Exでは、防爆構造の要件の1つとして、直径25mmの金属球を防爆ケースに所定の条件で衝突させても、防爆ケースが破損しないことが求められている。 図2に示すように、防爆ケース100の内部には、赤外線カメラ200が収納される。この赤外線カメラ200には、前面側に撮影レンズ210が取り付けられている。撮影レンズ210は、赤外線を通過させるレンズである。例えば、撮影レンズ210として、視野角として水平30°程度とする。この撮影レンズ210についても、防爆ケース100の内部に配置される。 【0015】 赤外線カメラ200は、赤外線画像の撮影処理を行う。そして、赤外線カメラ200で撮影して得た赤外線画像(熱画像)のデータを外部に出力する。防爆ケース100の後方には、防爆構造を満たす構造の端子部130が配置してあり、この端子部130に接続されたケーブルにより、赤外線画像のデータが防爆ケース100の外部に引き出される。なお、端子部130の具体的な構成については省略する。」 (1-エ) 「【0017】 防爆ケース100の前端101には、前面蓋110が取り付けられる。前面蓋110は、防爆ケース100の直径に合わせた円形形状である。撮影レンズ210が取り付けられた赤外線カメラ200を防爆ケース100の内部に配置する際には、図4に示すようにこの前面蓋110を防爆ケース100から外した状態で行う。 前面蓋110の外側には、この前面蓋110を防爆ケース100に固定する際に使用する固定用穴111と、後述する視野拡大レンズ300を取り付けるためのネジ穴112とを有する。これらの固定用穴111とネジ穴112は、前面蓋110の外側に配置され、貫通した穴ではない。」 (1-オ) 「【0018】 前面蓋110の中央には、図3に示すように、円形の窓113が設けてある。窓113は、比較的小径(例えば直径24mm)であり、図2に断面で示すように、内部に窓材115が配置してある。窓材115は、前面蓋110の中央に設けた直径24mmの穴による窓113の後方に配置してある。穴(窓113)を直径24mmとしたのは一例であり、直径24mm以下であるのが好ましい。図2の断面図では、前面蓋110の窓113を構成する穴が、直径24mmを維持して、窓材115と接する箇所まで形成された状態を示すが、穴が窓材115と接する箇所で直径が広くなるようにしてもよい。窓113を形成した前面蓋110の、少なくとも表面の穴の直径が24mm以下であることで、適正な防爆構造とすることができる。 窓材115は、ゲルマニウムなどの赤外線を透過する素材よりなる。この窓材115は、12mmなどの比較的厚さがある素材として、十分な強度を持たせてある。窓材115は、前面蓋110の裏側(内側)で、窓材保持枠116により前面蓋110に固定される。なお、窓材115は、前面蓋110の表面から十mm程度、奥になる位置に配置される。」 (1-カ) 「【0022】 [2.視野拡大レンズの取り付け状態] 本例の防爆ケース100の前面蓋110の外側には、図1に示すように、視野拡大レンズ300が取り付けられる。この視野拡大レンズ300は、前面蓋110の円形の窓113を覆うように取り付けられる。この場合、視野拡大レンズ300を通過する光軸の中心軸が、円形に形成された前面蓋110の中心点を通過する軸と一致する状態で、視野拡大レンズ300が前面蓋110に取り付けられる。」 (1-キ) 図1 (1-ク) 図2 (1-ケ) 図1より、視野拡大レンズ300が円筒状のレンズフレームを備えていることが見て取れる。 (2)上記(1-ア)?(1-ケ)の記載を踏まえれば、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、引用発明の認定に使用した引用文献1の段落番号等を、括弧内に付記してある。 「a)防爆型赤外線カメラであって、【0014】 b)防爆ケース100の内部に、前面側に撮影レンズ210が取り付けられている赤外線カメラ200が収納されており、【0014】 c)防爆ケース100及び防爆ケース100の各部(窓など)は、比較的厚さの厚い金属で形成されたケースであり、国際整合防爆指針2008Exに適合した防爆構造としてあり、【0014】 d)防爆ケース100の前端101には、防爆ケース100の直径に合わせた円形形状である前面蓋110が取り付けられ、【0017】 e)前面蓋110の中央には、直径24mmの円形の窓113が設けてあり、窓113の後方で、前面蓋110の表面から十mm程度、奥になる位置に、12mmの比較的厚さがある素材として、十分な強度を持たせてあるゲルマニウムの赤外線を透過する素材よりなる窓材115が配置してあり、【0018】 f)赤外線カメラ200は、赤外線画像の撮影処理を行い、撮影して得た赤外線画像(熱画像)のデータを外部に出力し、【0015】 g)防爆ケース100の前面蓋110の外側には、前面蓋110の円形の窓113を覆うように円筒状のレンズフレームを備えた視野拡大レンズ300が取り付けられる、【0022】(1-ケ) h)防爆型赤外線カメラ。」 2 引用文献5について (1)原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、次の事項が記載されている。 (5-ア) 「【0021】 図1Bに示すように、完全なカメラ組立体は、少なくともシュラウドまたはカバー112を含む。一般的に従来のレンズ系とともに使用される赤外線(IR)フィルタ(図示せず)等の他の構成要素も、光学系100に動作可能に組み込まれてもよい。」 3 前置報告で新たに引用された文献について (1)引用文献6:特表2008-526684号公報 (2)引用文献7:特開2010-39220号公報 (3)引用文献8:特開2013-57820号公報 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 熱撮像システムについて 引用発明の「a)防爆型赤外線カメラ」は、「f)赤外線カメラ200」、が「赤外線画像の撮影処理を行い、撮影して得た赤外線画像(熱画像)のデータを外部に出力」するから、本願発明1の「熱撮像システム」に相当する。 イ 防爆ハウジングにつて (ア)引用発明の「b)防爆ケース100」は、「内部に、前面側に撮影レンズ210が取り付けられている赤外線カメラ200が収納されており」、「d)防爆ケース100の前端101には、防爆ケース100の直径に合わせた円形形状である前面蓋110が取り付けられ」ている。 そして、「c)防爆ケース100及び防爆ケース100の各部(窓など)は、比較的厚さの厚い金属で形成されたケースであり、国際整合防爆指針2008Exに適合した防爆構造としてあ」ることから、引用発明の「防爆ケース100」と「前面蓋110」は、2つまとめて本願発明1の「少なくとも1つの防爆規格に適合する防爆ハウジングであって、」「金属の防爆ハウジング」に相当する。 (イ)引用発明の「e)前面蓋110」の「中央には、直径24mmの円形の窓113が設けてあり、窓113の後方で、前面蓋110の表面から十mm程度、奥になる位置に」、「ゲルマニウムの赤外線を透過する素材よりなる窓材115が配置してあ」るから、引用発明の「窓113」とその後方に「配置してあ」る「窓材115」は、2つまとめて本願発明1の「光学窓」であって、「ここで、前記光学窓は電磁的熱エネルギーが通過することを可能にする」ものに相当する。 (ウ)上記(ア)、(イ)を踏まえれば、引用発明の「b)防爆ケース100の内部に、前面側に撮影レンズ210が取り付けられている赤外線カメラ200が収納されており、 c)防爆ケース100及び防爆ケース100の各部(窓など)は、比較的厚さの厚い金属で形成されたケースであり、国際整合防爆指針2008Exに適合した防爆構造としてあり、 d)防爆ケース100の前端101には、防爆ケース100の直径に合わせた円形形状である前面蓋110が取り付けられ、 e)前面蓋110の中央には、直径24mmの円形の窓113が設けてあり、窓113の後方で、前面蓋110の表面から十mm程度、奥になる位置に、12mmの比較的厚さがある素材として、十分な強度を持たせてあるゲルマニウムの赤外線を透過する素材よりなる窓材115が配置してあ」るものは、本願発明1の「少なくとも1つの防爆規格に適合する防爆ハウジングであって、光学窓を含む金属の防爆ハウジングと、ここで、前記光学窓は電磁的熱エネルギーが通過することを可能にする」ものに相当する。 ウ 熱撮像部につて 引用発明の「b)防爆ケース100の内部に」、「収納されて」いる「赤外線カメラ200」は、「赤外線画像の撮影処理を行い、撮影して得た赤外線画像(熱画像)のデータを外部に出力」するものであるから、本願発明1の「前記防爆ハウジング内に配置された熱撮像センサと、前記熱撮像センサに結合され且つ前記熱撮像センサからの信号に基づいて少なくとも1つの熱画像を提供するように構成された熱撮像エレクトロニクス」に相当する。 エ レンズアセンブリにつて 引用発明の「e)前面蓋110の中央には、直径24mmの円形の窓113が設けてあり」、「g)防爆ケース100の前面蓋110の外側に」「前面蓋110の円形の窓113を覆うように」「取り付けられる」「円筒状のレンズフレームを備えた視野拡大レンズ300」と 本願発明1の「前記防爆ハウジングの外部で、前記光学窓の少なくとも前方に配置されたレンズアセンブリと、 前記レンズアセンブリの外側に配置された1インチよりも小さい直径を有するシュラウド」とは、 「前記防爆ハウジングの外部で、前記光学窓の少なくとも前方に配置されたレンズアセンブリと、 前記レンズアセンブリの外側に配置された円筒部材」で共通する。 オ 光学窓について 引用発明の「e)」「12mmの比較的厚さがある素材として、十分な強度を持たせてあるゲルマニウムの赤外線を透過する素材よりなる窓材115」が耐衝撃性を備えていることは自明である。 そうすると、上記イ(イ)を踏まえれば、 引用発明の「e)」「窓材115」が「12mmの比較的厚さがある素材として、十分な強度を持たせてあるゲルマニウムの赤外線を透過する素材よりなる」ことと、 本願発明1の「前記光学窓が、第2の材料で形成された第1のIR透過性層と第2の材料で形成された第2のIR透過性層とに挟まれた第1の材料からなるIR透過性、耐衝撃性層で形成される」こととは、 「前記光学窓が、IR透過性、耐衝撃性を備える材料で形成される」点で共通する。 (2)よって、本願発明1と引用発明とは、 「熱撮像システムであって、 少なくとも1つの防爆規格に適合する防爆ハウジングであって、光学窓を含む金属の防爆ハウジングと、ここで、前記光学窓は電磁的熱エネルギーが通過することを可能にする、 前記防爆ハウジング内に配置された熱撮像センサと、 前記熱撮像センサに結合され且つ前記熱撮像センサからの信号に基づいて少なくとも1つの熱画像を提供するように構成された熱撮像エレクトロニクスと、 前記防爆ハウジングの外部で、前記光学窓の少なくとも前方に配置されたレンズアセンブリと、 前記レンズアセンブリの外側に配置された円筒部材と、を含み、 前記光学窓が、IR透過性、耐衝撃性を備える材料で形成される、 上記熱撮像システム。」 の発明である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) レンズアセンブリの外側に配置された円筒部材が、本願発明1では、「1インチよりも小さい直径を有するシュラウド」であるのに対して、引用発明では、寸法が不明なレンズフレームであり、「1インチよりも小さい直径を有する」部材は、引用発明では、「直径24mmの円形の窓113」である点。 (相違点2) IR透過性、耐衝撃性を備える材料で形成される光学窓について、本願発明1では、「第2の材料で形成された第1のIR透過性層と第2の材料で形成された第2のIR透過性層とに挟まれた第1の材料からなるIR透過性、耐衝撃性層」で形成されるのに対して、引用発明では、「12mmの比較的厚さがある素材として、十分な強度を持たせてあるゲルマニウムの赤外線を透過する素材」で形成されている点。 (3)相違点についての判断 ア 相違点1について検討する。 (ア)本願発明1の「1インチよりも小さい直径を有するシュラウド」の「1インチよりも小さい直径」とすることの意味は、本願明細書【0013】を参照すると、直径1インチの球がIR窓120に衝突する前にレンズフレーム(シュラウド152)によって停止させられるようにするためであり、そうすることで、防爆規格に対する認証適合性を容易にしているという意味がある。 一方、引用発明においては、引用文献1【0026】の「防爆ケース100の前面蓋110に配置された窓113は、直径24mm以下の窓であり、防爆指針に基づいた検定基準を満たした強度の窓にすることができる。」の記載を参照するに、防爆ケース100の前面蓋110に配置された窓113を直径24mm以下としていることが、本願発明1の「1インチよりも小さい直径」とすることと同様の意味を有しているといえる。 しかしながら、配置関係を考慮すると、直径1インチの球は、本願発明1では「1インチよりも小さい直径を有するシュラウド」、つまり「防爆ハウジングの外部で、前記光学窓の少なくとも前方に配置されたレンズアセンブリ」によって停止させられるのに対し、引用発明においては、「前面蓋110の中央」の「直径24mmの円形の窓113」、つまり、「前面蓋110の円形の窓113を覆うように円筒状のレンズフレームを備えた視野拡大レンズ300」の後方である「防爆ケース100の前端101」で停止させられることになる。 してみると、直径1インチの球が衝突する際の影響は、本願発明1は「防爆ハウジングの外部」にとどまり、引用発明は「防爆ケース100の前端101」にまで及ぶという違いが生じることから、本願発明1の「1インチよりも小さい直径を有するシュラウド」との構成は、単なる設計事項程度のものとはいえない。 (イ)ところで、引用発明において、防爆指針に基づいた検定基準を満たすために、円形の窓113が、直径24mm(1インチよりも小さい直径)の条件を満たしており、引用発明の「視野拡大レンズ300」の「円筒状のレンズフレーム」の寸法がその条件を満たさなければならない理由はない。むしろ、「前面蓋110の円形の窓113を覆うように円筒状のレンズフレームを備えた視野拡大レンズ300」であることから、「窓113を覆う」寸法である「円筒状のレンズフレーム」の寸法は24mmよりも大きく、引用文献1の【0011】「窓材が配置された窓の外側に視野拡大レンズを取り付けたことで、防爆ケースの窓のサイズに制約されない広角の赤外線画像の撮影が可能になる」、【0024】の「例えば、視野拡大レンズとして、視野角を2倍に拡大するものと、視野角を3倍に拡大するものを用意」、「窓113」よりも「視野拡大レンズ300」を大きく描いた図2の記載を踏まえると、引用発明の「円筒状のレンズフレーム」の寸法を「1インチよりも小さい直径」にする動機付けがあるとはいえない。 引用文献2は、赤外線に対して透過性を有する窓の材料として、セレン化亜鉛を使用することの記載がある電気光学窓に関する文献であり、 引用文献3、4は、透明なガラスの強度を向上させるための、ガラスの間にポリアミドの中間層を挟んだ合わせガラスに関する文献であり、 引用文献6は、窓部材内部に耐衝撃性を高める効果を有するポリマー層32、34を配置した点が記載された文献であり、 引用文献7は、レンズ内部に耐衝撃性を有するポリアミド層12を配置した点が記載された文献であり、 引用文献8は、窓部材内部に耐衝撃性を高める中間樹脂層104を配置した点が記載された文献である。 また、レンズアセンブリにシュラウドを設けることが引用文献5に記載されているように周知技術であるとしても、引用文献2?8に記載された事項から、防爆規格に適合するために1インチよりも小さい直径を有するシュラウドを備えるレンズアセンブリとすることが周知技術であるとはいえない。 (ウ)そうすると、引用発明及び引用文献2?8の記載事項から、当業者であっても上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を容易に想起し得たとはいえない。 イ したがって、本願発明1は、相違点2を検討するまでもなく、当業者であっても引用発明及び引用文献2?8の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 本願発明2?11について 本願発明2?11は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても引用発明及び引用文献2?8の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1?11は、当業者が引用発明及び引用文献2?8の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-06-15 |
出願番号 | 特願2017-567622(P2017-567622) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01J)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 塚本 丈二、中澤 真吾 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
信田 昌男 ▲高▼見 重雄 |
発明の名称 | 改良された防爆熱撮像システム |
代理人 | 特許業務法人 津国 |