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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  H05B
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  H05B
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  H05B
管理番号 1363149
異議申立番号 異議2019-700193  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-03-11 
確定日 2020-04-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6393626号発明「誘導加熱調理器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6393626号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。 特許第6393626号の請求項1、2に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6393626号の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成27年1月19日に出願され、平成30年8月31日にその特許権の設定登録がされ、平成30年9月19日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成31年 3月11日 特許異議申立人井澤幹(以下申立人Aという。)による請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 3月18日 特許異議申立人星野裕司(以下申立人Bという。)による請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 元年 6月19日 取消理由通知書
同年 8月 9日 訂正請求書及び意見書(特許権者)
同年 9月13日 意見書(申立人B)
同年 9月17日 意見書(申立人A)
同年12月12日 取消理由通知書(決定の予告)
令和 2年 2月14日 意見書(特許権者)

第2 訂正について
1 訂正の内容(下線は訂正箇所を示す。)
令和元年8月9日付け訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求めるものであり、具体的な訂正事項は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
請求項1の「赤外線を透過する窓材」を「非結晶化ガラスまたは結晶化ガラスで構成され、可視光線および赤外線を透過する窓材」に訂正する。

(2)訂正事項2
明細書の段落【0007】の「赤外線を透過する窓材」を「非結晶化ガラスまたは結晶化ガラスで構成され、可視光線および赤外線を透過する窓材」に訂正する。

2 訂正の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「赤外線を透過する窓材」について、非結晶化ガラスまたは結晶化ガラスで構成されること、及び、可視光線を透過することの限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、請求項1を引用する請求項2についても、同様に特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、本件明細書に、「光学フィルタ25の非結晶化ガラスの光学特性は一点破線で示すように、0.4?2.7μmの波長の光を80%以上透過し、3?4.0μmの波長の光を最大50%程度透過し、4.0μmよりも長い波長、及び、0.3μmよりも短い波長の光をほとんど透過しない。」(【0056】)、「光学フィルタ25に結晶化ガラスを用いた場合も同様に、光学フィルタ25を透過した可視光線を赤外線センサ19のレンズ70で遮光する」(【0060】)と記載されているから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項2は、訂正事項1に伴い明細書の記載を整合させる訂正であるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)小括
したがって、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、各発明を「本件発明1」、「本件発明2」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、上記訂正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

【請求項1】
調理鍋を上面に置くトッププレートと、
該トッププレートの下に設けられ、前記調理鍋を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、
該加熱コイルに電力を供給するインバータ手段と、
前記加熱コイルを冷却するための冷却風路に外気を導入するファンと、
前記鍋底より放射される赤外線を透過する前記トッププレートに設けた赤外線透過窓と、
前記トッププレートに設けた前記赤外線透過窓を透過した前記鍋底より放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、
前記加熱コイルの下に配置され、非結晶化ガラスまたは結晶化ガラスで構成され、可視光線および赤外線を透過する窓材を前記赤外線検出手段の前面に持つ第一のケースを設け、前記赤外線検出手段を前記第一のケースに内蔵
し、前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成であって、
前記赤外線検出手段に前記調理鍋からの赤外線を透過するレンズを、前記第一のケースに内蔵された前記赤外線検出手段を覆うように設けられた第二のケースに設け、前記レンズは前記トッププレートの前記赤外線透過窓より可視光線の透過率が低い光学特性としたことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱調理器において、前記第二のケースに備えられた前記レンズは、シリコンで成形されたことを特徴とする誘導加熱調理器。

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2に係る特許に対して、当審が令和元年12月12日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は以下のとおりである。
(理由1:新規事項)平成30年6月5日付け手続補正書でした補正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、請求項1、2に係る特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。
(理由2:進歩性)請求項1、2に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2?6に示される周知技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1、2に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献一覧>(以下、例えば甲第1号証を甲1のように略記する。)
引用文献1:特許5653546号公報(申立人Aの甲1、申立人Bの甲2)
引用文献2:実公昭59-34881号公報(申立人Aの甲2、申立人Bの甲3)
引用文献3:特開昭61-100959号公報(申立人Aの甲3)
引用文献4:特開昭61-108935号公報(申立人Aの甲4)
引用文献5:特開2010-251332号公報(申立人Aの甲5)
引用文献6:特開2009-295456号公報(乙1)

第5 取消理由についての判断
1 理由1(新規事項)について
請求項1には「前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成」と記載されているところ、当該技術的事項は、平成30年6月5日付け手続補正書でした補正により追加されたものである。そして、上記技術的事項は、請求項1を引用する請求項2にも実質的に追加されている。
しかし、当初明細書等には、「前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成」についての直接的な記載はない。
当初明細書等には、「冷却風」に関して、「本体1内に設けたファン(図示せず)により、本体1の背面に設けた吸気口(図示せず)から吸気した冷却風を本体1内に設けた制御基板(図示せず)や加熱コイル13等に流して冷却する。本体1の後部には、本体1内部を冷却した冷却風を排気する排気口5が設けられている。」(【0028】)との記載があり、「第一のケース」(赤外線センサケース)に関して、「鍋温度検出装置18は、赤外線センサ19と反射型フォトインタラプタ20が設けられている。赤外線センサ19と反射型フォトインタラプタ20は、赤外線センサ19の出力を増幅する増幅回路と反射型フォトインタラプタ20の出力を増幅する増幅回路を実装される電子回路基板22に配置される。赤外線センサ19と反射型フォトインタラプタ20と電子回路基板22は、全体をプラスチック部材の赤外線センサケース23内に収納される。この赤外線センサケース23には赤外線を透過させるためにケース窓24が開けられ、このケース窓24にはトッププレート2を構成する非結晶化ガラスの光学特性に類似した光学フィルタ25として嵌め込んである。光学フィルタ25の下には、赤外線センサ19と反射型フォトインタラプタ20が電子回路基板22上に実装されている。」(【0037】)との記載がある。ここで、「制御基板(図示せず)」(【0028】)と、「電子回路基板22」(【0037】)は別物であり、上記記載によっても、「冷却風路」と「第一のケース」の関係は不明である。
そうすると、「前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成」との技術的事項は、当初明細書等に記載されていない。
また、例えば、特開2010-251332号公報(申立人Aの甲5)には、「図29(b)に、鍋温度検出装置18の加熱コイル7下への他の設置実施例を示す。前述した図3,図4実施例では鍋温度検出装置18を、図29(a)に示すように加熱コイル7のコイル間隙7c直下の位置でコイル上面冷却風路15aの中に配置したが、実施例2では鍋温度検出装置18をコイル上面冷却風路15aの外に配置している。・・・そしてコイル冷却風の流れを阻害せずに、かつコイル冷却風が鍋温度検出装置18に当たらないようにしている。こうすることで、鍋温度検出装置18の調理時の冷却風(外気)による急激な温度変化を防止すると共に加熱コイル7の効率的な冷却を可能にしている。」(【0105】)と記載されており、鍋温度検出装置を冷却風路の中に配置する例と、冷却風路の外に配置する例が示されていることから、赤外線センサは、冷却風路の内外いずれに配置することも知られていたといえる。そうすると、上記「前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成」との技術的事項は、技術常識に照らして自明な事項であるともいえない。
特許権者は、当初明細書等の【0035】、【0037】、図2?図4から、加熱コイル13に設けられた隙間15にセンサ視野筒40が設けられ、その直下に鍋温度検出装置18の赤外線センサケース23(第一のケース)が設置されているので、第一のケースはコイル近傍を流れる冷却風にさらされる、すなわち、「第一のケースを前記冷却風路に配置した構成」になっていることがわかる、と主張する(令和元年8月9日付け意見書6ページ6?11行)。
しかし、加熱コイル直下に第一のケースが設置されていても、必ずしも、第一のケースが加熱コイルを冷却するための冷却風路に配置されているとはいえないから、上記主張は採用できない。この点に関し、例えば、特開2008-226573号公報(審査段階の平成29年11月27日付け拒絶理由通知書における引用文献1)に開示された誘導加熱調理器は、加熱コイル6の直下に赤外線センサ10を内蔵する金属ケース26が設置されているが、金属ケース26は加熱コイル6を冷却するための冷却風路Aに配置されているとはいえない。なお、上記拒絶理由通知書に対し、特許権者は、平成30年1月25日の意見書で、上記特開2008-226573号公報に開示の構成では、赤外線センサケースに向かう風の流れが形成されにくい点で本件発明と相違する旨を主張していた。
また、特許権者は、特開2010-251332号公報(申立人Aの甲5)からは、「赤外線センサは、冷却風路の内外いずれに配置することも知られていた」とはいえず、「そうすると、上記『前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成』との事項は、技術常識に照らして自明な事項であるともいえない」とはいえない旨を主張する(令和元年8月9日付け意見書6?8ページ)。
しかし、上記特許権者の主張は、「前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成」との技術的事項が、技術常識に照らして自明な事項であることを何ら立証するものではない。また、上述のとおり、特開2010-251332号公報には、「コイル冷却風が鍋温度検出装置18に当たらないようにしている。」と明記されているし、上記特開2008-226573号公報にも赤外線センサが冷却風路の外に配置された構成が開示されているから、「赤外線センサは、冷却風路の内外いずれに配置することも知られていた」ということができる。よって、上記特許権者の主張は採用できない。
さらに、特許権者は、当初明細書等の記載から理解されることとして、部品の配置や冷却風の流れを説明するとともに、乙2?乙10を提出して、内外コイル間の隙間を冷却風が上向きに流れ、その後、冷却風がトッププレートと加熱コイルの間を流れて加熱コイル上面を冷却することは技術常識である旨を主張し、鍋温度検出装置18の金属ケース26が冷却風路に配置されていることは当初明細書等の記載及び技術常識から理解される事項である旨を主張する(令和2年2月14日付け意見書7?12ページ)。
乙2:特公平7-11983号公報
乙3:特開2004-214217号公報
乙4:特開2004-362945号公報
乙5:特開2010-199000号公報
乙6:特開2011-14415号公報
乙7:特開2011-14417号公報
乙8:特開2011-243407号公報
乙9:特開2012-14835号公報
乙10:特開2014-75324号公報
しかし、特許権者が説明する冷却風の流れは、当初明細書等に記載されたものではなく、可能性の一つを説明するものにすぎない。また、内外コイル間の隙間を冷却風が上向きに流れることを示す文献が多数存在するとしても、内外コイル間に隙間があれば冷却風がその間を流れることが技術常識であるとまではいえない。さらに、上記乙4の「鍋の材質もしくは大きさに応じて加熱に用いる誘導加熱コイルを切替え可能とするため、複数個に分割された誘導加熱コイルに適用できる特許文献2に開示された冷却方式は、誘導加熱コイルを内周側と外周側に分割し、この内周側コイルと外周側コイルとの間の巻線中間部に形成した通気穴に冷却ファンから供給される冷却風を通気する構成とし、誘導加熱コイルの冷却性能を向上したものである」(【0010】)との記載によれば、コイルを分割するのは鍋の材質もしくは大きさに応じて加熱に用いる誘導加熱コイルを切替え可能とするためであり、必ずしも内外コイル間の隙間に冷却風を流すためではないと理解される。また、乙4には、内外コイル間の隙間に冷却風が流れない例も示されている(図7?図15、図18、図19等参照。)。よって、上記特許権者の主張は採用できない。
以上のとおり、請求項1及び請求項2に実質的に追加された、上記「前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成」との技術的事項は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項というべきものであり、当該事項を導入した平成30年6月5日付けの補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
したがって、請求項1、2に係る特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、特許法113条1号に該当し、取り消されるべきものである。

第6 むすび
以上のとおり、請求項1、2に係る特許は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、特許法113条1号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
誘導加熱調理器
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱調理器には、ラジエントヒータと誘導加熱コイルの2種類の加熱源を用いてトッププレートに載置された鍋を加熱するものがある。ラジエントヒータはトッププレート自体も高温に加熱するため、トッププレートには耐熱温度の高い結晶化ガラスを採用する必要があった。
【0003】
特許文献1では、トッププレート下方に設けた赤外線センサの光学フィルタをトッププレートと同じく結晶化ガラスとすることで両者の光学特性を同一にして赤外線センサ温度の測定精度を高めた誘導加熱調理器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-295456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、従来の誘導加熱調理器では、結晶化ガラスをトッププレートに使用しているが、可視光領域の透過率が高く(透明度が高く)、かつ、安価な非結晶化ガラスをトッププレートに使用できれば、誘導加熱調理器としても、デザイン性をより高め、価格もより安価にできる。
【0006】
しかしながら、トッププレートに非結晶化ガラスを使用した場合、特許文献1に倣い、赤外線センサの光学フィルタにも非結晶化ガラスをそのまま使用すると、赤外線センサには、鍋底からの赤外線に加え、外乱となる可視光の入射量も多くなり、赤外線センサの鍋底温度測定精度が悪化するという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の誘導加熱調理器は、上記の課題を解決するためになされたものであり、調理鍋を上面に置くトッププレートと、該トッププレートの下に設けられ、前記調理鍋を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、該加熱コイルに電力を供給するインバータ手段と、前記加熱コイルを冷却するための冷却風路に外気を導入するファンと、前記鍋底より放射される赤外線を透過する前記トッププレートに設けた赤外線透過窓と、前記トッププレートに設けた前記赤外線透過窓を透過した前記鍋底より放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、前記加熱コイルの下に配置され、非結晶化ガラスまたは結晶化ガラスで構成され、可視光線および赤外線を透過する窓材を前記赤外線検出手段の前面に持つ第一のケースを設け、前記赤外線検出手段を前記第一のケースに内蔵し、前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成であって、前記赤外線検出手段に前記調理鍋からの赤外線を透過するレンズを、前記第一のケースに内蔵された前記赤外線検出手段を覆うように設けられた第二のケースに設け、前記レンズは前記トッププレートの前記赤外線透過窓より可視光線の透過率が低い光学特性としたことにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明感のある非結晶化ガラスを使用することで、高級感のあるデザインを施した誘導加熱調理器の提供が可能となった。また、非結晶化ガラス製トッププレートを備えた誘導加熱調理器において、遮光効果を有する赤外線検出手段を設け、調理鍋からの赤外線検知の外乱となる可視光線を低減することで、調理鍋の温度検出精度の良い誘導加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係わる実施例1の誘導加熱調理器の構成を示す斜視図
【図2】本発明に係わる実施例1の誘導加熱調理器のトッププレートを除いた上面図
【図3】本発明に係わる実施例1の誘導加熱調理器の左右の加熱コイルを主体とした鍋温度検知手段を説明するブロック図
【図4】本発明に係わる実施例1の誘導加熱調理器の鍋温度検出装置の断面図
【図5】本発明に係わる実施例1の誘導加熱調理器の赤外線センサの断面図
【図6】本発明に係わる実施例1の誘導加熱調理器の反射型フォトインタラプタを示す図
【図7】本発明に係わる実施例1のプランクの分布則による分光放射エネルギーを示す図
【図8】本発明に係わる実施例1の誘導加熱調理器のトッププレート、光学フィルタ、赤外線センサのレンズなどの光学特性を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。図1は実施例1の誘導加熱調理器の本体1の傾斜図、図2は誘導加熱調理器のトッププレート2を除いた上面図、図3は誘導加熱調理器の左右の加熱コイル3を主体とした構成を示すブロック図である。
【0011】
以下では、誘導加熱が可能な鍋置き場所が3口有る誘導加熱調理器を例に挙げ説明を行うが、本発明の適用対象はこれに限られず、中央後部の1口をラジエントヒータやハロゲンヒータ等のヒータ(加熱源)の放射熱で加熱可能な鍋置き場所であっても良い。なお、調理鍋30は、誘導加熱に適した磁性体の鉄鍋であっても良いし、非磁性体のアルミ鍋、銅鍋であっても良い。
【0012】
図1において、誘導加熱調理器の本体1の上面にはトッププレート2が配置されている。
【0013】
トッププレート2は、少なくとも耐熱温度が3百数十度の耐熱塗料を用いて文字や略全面の塗装を裏面に施し、表面には鍋の滑り止めとなる印刷を施した非結晶化ガラスを基材とする耐熱ガラスである。本実施例で説明する非結晶化ガラスとは、石英ガラス、高ケイ酸ガラスとホウケイ酸ガラスが含まれ、特に本実施例では、ケイ素が略80%、ホウ酸が10?15%程度含まれ、熱衝撃温度300℃以上かつ500℃以下のホウケイ酸ガラスをいう。
【0014】
調理を行う際の被加熱物の調理鍋30は、本体1上面のトッププレート2上に載置される。調理鍋30は、トッププレート2に描かれた載置部3に載置されることで調理可能となる。載置部3は、トッププレート2の上面手前に右載置部3aと左載置部3bが配置され、これら両載置部3aおよび3bの間の奥(中央後部)に中央載置部3cが配置されている。そして、トッププレート2を挟んで各載置部3の下に調理鍋30を加熱するための後述する図2に示す加熱コイルユニット25がそれぞれ設置されている。
【0015】
中央載置部中央3cは位置的に調理者の手の届きにくい場所である。このため、手前の右載置部右3a、左載置部左3bに調理鍋が置かれた状態で、中央載置部中央3c部に手を伸ばすと、右載置部右3a、左載置部左3bに置かれた調理鍋から調理中に発生する蒸気により、中央載置部中央3cで手を動かす調理は行いにくい。したがって、中央載置部中央3cで行う調理の種類は調理者があまり手を動かさなくても良い料理、主に煮込みや保温などの調理に適している。また、煮込みや保温は火力も弱くて済み、最大消費電力も限りがあることからを抑制するため、中央載置部中央3cの火力を、右載置部右3a及び左載置部左3bより弱くし小さくし、消費電力が小さくなるよう設定されている。
【0016】
トッププレート2上の右載置部3aと左載置部3bに赤外線透過窓16を設けている。赤外線透過窓16は、調理鍋の底から放射される赤外線を透過するところである。本体1では赤外線透過窓16を透過した赤外線エネルギー量を検出して鍋温度を測定している。本来トッププレート2は、本体1の内部が見えないように全体を特定の意匠で塗装や印刷が施されている。赤外線透過窓16は、調理鍋の鍋底から放射される赤外線をトッププレート2の下部へ透過するために、前記塗装を一部施さずトッププレート2の素材の状態や赤外線を透過する塗料を施したところである。
【0017】
本体1の後部には、本体1内部を冷却した冷却風を排気する排気口5が設けられている。
【0018】
本体1の左部下方には、魚やピザ等を焼くロースター6が設けられており、ロースター6は、前面が開口した箱型をしていて、内部の調理庫内にシーズヒータ等の発熱体(図示せず)と内部の温度を検出するサーミスタ(図示せず)が設けられ、前面部はハンドル6aが取り付けられたドア6bにより塞がれている。ドア6bは、その裏側に受け皿(図示せず)が取り付けられており、調理庫内に前面開口部から出し入れ自在に収納され、載置された焼網や受け皿の上に魚やピザ等の食材を載せて調理する。
【0019】
本体1の前面右部には、本体1へ供給する電源の主電源スイッチ9が設けられている。
【0020】
図2は、誘導加熱調理器のトッププレート2を除いた上面図である。
【0021】
トッププレート2下方で本体1内上部の左右および中央後部には、環状に形成された加熱コイルユニット25が夫々配置されており、トッププレート2に載置された調理鍋を加熱コイル13により誘導加熱する。
【0022】
左右及び中央後部に配置された加熱コイル13は、夫々環状の内側加熱コイル14と、その外側に環状の隙間15を設けて配置された環状の外側加熱コイル16とで構成されている。
【0023】
加熱コイル13に隙間15を設ける理由は、内側加熱コイル14と外側加熱コイル16とで発生する磁束を分散させて調理鍋の温度を均一化するためである。
【0024】
なお、各加熱コイル13は隙間15を設ける構成としたが、特にこれに限定されることはない。例えば内側加熱コイル14と外側加熱コイル16を隙間無く巻回した隙間15の無い加熱コイル13とする構成であってもよい。
【0025】
トッププレート2の前面側の上面には、夫々の加熱コイル13に対応した上面操作部7a、7b、7cが設けられていて、加熱コイル13の通電状態の設定や操作を行う。また、各上面操作部7a、7b、7cの近傍には、対応した上面表示部8a、8b、8cが設けられており、夫々の加熱コイル13の通電状態などを表示する。
【0026】
上面操作部7aは、本体1右側の加熱コイル13aの火力等の入力を行い、上面操作部7cは本体1中央後部の加熱コイル13cの火力等の入力を行い、上面操作部7bは本体1左側の加熱コイル13bの火力等の入力を行う。
【0027】
赤外線透過窓16は、調理鍋30の底から放射される赤外線を透過するところである。本来トッププレート2は、本体1の内部が見えないように全体を特定の意匠で塗装が施されている。赤外線透過窓16は、調理鍋30の鍋底から放射される赤外線をトッププレート2の下部へ透過するために、前記塗装を一部施さずトッププレート2の素材の状態や赤外線を透過する塗料を施したところである。本実施例では左右の加熱コイル13の下部に夫々赤外線センサ19が設けられているので、赤外線透過窓16も後述するそれぞれの赤外線センサ19の受光面上に設けられている。
【0028】
本体1内に設けたファン(図示せず)により、本体1の背面に設けた吸気口(図示せず)から吸気した冷却風を本体1内に設けた制御基板(図示せず)や加熱コイル13等に流して冷却する。本体1の後部には、本体1内部を冷却した冷却風を排気する排気口5が設けられている。
【0029】
本体1の前面左部には、魚やピザ等を焼くグリル庫6が設けられており、グリル庫6は、前面が開口した箱型をしていて、内部の調理庫内にシーズヒータ等の発熱体と内部の温度を検出するサーミスタが設けられ、前面部はハンドル6aが取り付けられたグリルドア6bにより塞がれている。グリルドア6bは、その裏側に受け皿が取り付けられており、調理庫内に前面開口部から出し入れ自在に収納され、受皿の上に載置された焼網の上に魚やピザ等の食材を載せて調理する。
【0030】
本体1の前面右部には、本体1へ供給する電源の主電源スイッチ9と、グリル庫6の加熱調理条件等を入力する前面操作部10が設けられている。前面操作部10は、下方に設けられた回転軸を中心として操作パネルの上方が前面側に倒れ、操作キーが上方側に向かって露出する所謂カンガルーポケット形態のものである。
【0031】
図3は、左右の加熱コイルを主体とする鍋温度検出手段のブロック図である。
図3に示すように加熱コイル13は、コイルベース17上に設置されている。また、ギャップスペーサー31が、コイルベース17の外周縁部に取り付けられた支持部材32によりコイルベース17の外周から中心側に向けて適宜間隔を保持して設けられており、コイルベース17が複数のバネ(図示せず)によりトッププレート2方向に付勢されることにより、加熱コイル13がトッププレート2に対し略並行となり、かつ、トッププレート2に載置される調理鍋30と加熱コイル13とのギャップが一定に保持されている。
【0032】
加熱コイル3は、表皮効果を抑制するためリッツ線を採用していて、インバータ手段100により数十kHzの高周波で数百Vの電圧が印加され、調理鍋30に対して高周波磁界を印加して調理鍋30に渦電流を発生させ、調理鍋30を自己発熱させて加熱する。
【0033】
左右に配設された加熱コイル13の中心部近傍には、サーミスタで構成された複数の温度センサ12がトッププレート2の下面に密着して設けられており、トッププレート2の温度を検知する。本実施例では温度センサ12にサーミスタを用いるが、特にこれに限定されず熱電対などの検出器を用いても良い。また、同様に加熱コイル13の隙間15にもサーミスタによって構成された温度センサ12が緩衝材(図示せず)を介して設けられ、トッププレート2の下面に密着することによりトッププレート2の温度を検知する。
【0034】
なお、温度センサ12は、加熱コイル13の隙間15に設ける構成としたが、特にこれに限定されることはない。例えば外側加熱コイル16の外周近傍や、または、内側加熱コイル14と外側加熱コイル16を隙間無く巻回した隙間15の無い加熱コイル13とした構成の外周近傍に設ける構成であってもよい。また、温度センサ12は2個に限定されることはなく、1個または2個以上であってもよい。
【0035】
左右に配設された加熱コイル13の隙間15には、センサ視野筒40が設けられ、このセンサ視野筒40の下に鍋温度検出装置18が設置される。鍋温度検出装置18は、調理鍋30の底面から放射される赤外線をトッププレート2の赤外線透過窓16を通して、その受光した赤外線のエネルギーから温度を検知する赤外線センサ19が設けられている。赤外線センサ19は、熱型検出素子を使用したサーモパイルである。
【0036】
図4は鍋温度検出装置を説明する図である。
【0037】
鍋温度検出装置18は、赤外線センサ19と反射型フォトインタラプタ20が設けられている。赤外線センサ19と反射型フォトインタラプタ20は、赤外線センサ19の出力を増幅する増幅回路と反射型フォトインタラプタ20の出力を増幅する増幅回路を実装される電子回路基板22に配置される。赤外線センサ19と反射型フォトインタラプタ20と電子回路基板22は、全体をプラスチック部材の赤外線センサケース23内に収納される。この赤外線センサケース23には赤外線を透過させるためにケース窓24が開けられ、このケース窓24にはトッププレート2を構成する非結晶化ガラスの光学特性に類似した光学フィルタ25として嵌め込んである。光学フィルタ25の下には、赤外線センサ19と反射型フォトインタラプタ20が電子回路基板22上に実装されている。
【0038】
赤外線センサケース23は周りをアルミなどの透磁率がほぼ1の金属ケース26で覆っており、先のケース窓24の所は開口されている。そして、鍋温度検出装置18は、ケース窓24がセンサ視野筒40内を望むように設置される。
【0039】
図5に赤外線センサ19の詳細を示す。図5(a)は赤外線センサ側面側の断面図であり、図5(b)は平面側の断面図である。なお、熱電対が見えるように、赤外線吸収膜を省略して示してある。
【0040】
赤外線センサ19は熱電対(サーモカップル)を多数縦列接続した(パイリング)したもので、ニッケルめっき鋼板等の金属キャン60と金属ステム61からなる金属ケース内にこれが内蔵されている。およそ300μm厚のシリコン基材62表面に電気的および熱的に絶縁するためシリコン酸化膜63を形成し、この上にポリシリコン、アルミを順次パターン蒸着しポリシリコン蒸着膜64、アルミ蒸着膜65で熱電対を多数作成し、これを縦列接続する。ポリシリコン、アルミ接合点(測温接点)のあるシリコン基材25-4中央部には、黒体に近い酸化ルビジウム膜等の赤外線吸収膜67を形成する。ポリシリコンおよびアルミ蒸着膜の一端は冷接点71であり、これはシリコン基材62周囲のシリコン酸化膜63上に配置する。シリコン基材62の裏面(冷接点部)を残して290μmまでエッチングし、測温接点部分のあるシリコン基材の厚みを10μmに形成する。これは熱電導の良好なシリコンを薄くすることで、測温接点部72と冷接点部71の熱伝導を少なくし測温接点部と冷接点部を熱的に絶縁するためである。
【0041】
このシリコン基材62を金属ステム61にボンド等の接着材で固定する。同時に金属ステム61にはセラミック上に膜形成したNTCサーミスタ66を同様に配置する。これは金属ケース内にある熱電対の雰囲気温度を検出し、熱電対の熱起電力を補正するためである。金属ステム61には絶縁シールされた4本の金属ピン68が貫通配置されており、この金属ピンに先の熱電対の出力とNTCサーミスタ66がワイヤ接続される。金属ステム61には、筒状の金属キャン60が窒素等の不活性ガス中で被せられ溶着される。この金属キャン60の上面には小穴の窓69が開けられ、ここに内側からレンズ70が装着されている。レンズ70は、詳細は後述するがトッププレート2や光学フィルタ25に使用した非結晶化ガラスに比べ、可視光透過率が小さい。この小穴の垂直下に先の測温接点部72(赤外線吸収膜67の下にある)が位置するようにシリコン基材62が固定される。このレンズ70は赤外線透過窓16の視野範囲が赤外線吸収膜67に結像するように設計される。
【0042】
赤外線センサ19内の熱電対測温接点部72(赤外線吸収膜67の下にある)にはレンズ70で集光された赤外線で加熱され、この加熱温度上昇は通過した赤外線エネルギに比例し、熱電対の冷接点部71と測温接点部72の温度差に比例した電圧が熱電対出力の金属ピン68に出力される。
【0043】
図6は反射型フォトインタラプタ20を説明する図である。図に示すように反射型フォトインタラプタ20は、赤外線発光手段としての赤外線LED20aと、赤外線受光手段としての赤外線フォトトランジスタ20bで構成している。
【0044】
赤外線LED20aの発光面上にはプラスチックによるレンズが構成され、細いビームの赤外光をトッププレート2に設けた赤外線透過窓16の上方に照射する。また、赤外線フォトトランジスタ20bの受光面上には可視光阻止のプラスチックレンズを装着しており、先の照射した赤外光が赤外線透過窓16を覆う物体(鍋底面)にて反射した赤外光を受光し、その受光量に比例した電流を出力する。
【0045】
この反射型フォトインタラプタ20の赤外線フォトトランジスタ20bの出力から反射率計測手段27へと入力される。
【0046】
調理鍋30の温度を検出するためには、同じ温度の調理鍋30でも鍋底の材質や色,傷などの違いによって底から放射される赤外線量が異なるため、赤外線センサ19で検出した赤外線量から調理鍋30の温度を一義的に求めることはできない。そこで、放射率を知ることで検出した赤外線量から正確な調理鍋30の温度を検出することができる。
【0047】
放射率は、金属物質の表面から放射される赤外線エネルギ(E=εσT^(4))の放射率εと表面の反射率ρの間に成立するキルヒホフの法則による式(ε+ρ=1)より(但し、透過率α=0とする)、調理鍋30の反射率ρを知ることができれば、鍋30の放射率εを算出できることができる。σはステファン・ボルツマン係数、Tは絶対温度である。
【0048】
反射率計測手段27では、その調理鍋30の反射率を検出するためのものであり、トッププレート2上に置かれた調理鍋30底面の反射率を計測し、制御手段50に入力する。
【0049】
上面操作部7aは、火力を設定する火力設定手段51と調理メニューを選択するメニュー設定手段52とを備えている。
【0050】
インバータ手段100は、数十kHzの高周波で数百Vの電圧を生成し加熱コイル3に供給するものである。
【0051】
制御手段50は、火力設定手段51より設定された火力で調理鍋30を加熱できるようにインバータ手段100を制御したり、メニュー設定手段52で事前に組み込まれた自動メニューの中から選ばれたメニューに基づいてインバータ手段100を制御する。また、鍋温度を換算するため調理鍋30の温度を正確に検出するために反射率計測手段27の信号から放射率を求め赤外線センサ19からの信号を補正したり、センサ視野筒40の近傍に配置した温度センサ12の信号に基づいてトッププレート2を含む調理鍋30以外の熱外乱となる赤外線放射エネルギーを求め赤外線センサ19からの信号を補正する。調理鍋30の温度を決められた温度に維持するため前記補正した信号に基づいてインバータ手段100から加熱コイル3に供給する電力を制御する。また、温度センサ12の信号に基づいてインバータ手段100から加熱コイル13に供給する電力を制御するものである。
【0052】
トッププレート2上に置かれた調理鍋30は、誘導加熱により発熱する。この加熱により調理鍋30底面からは赤外線が放射される。この全放射エネルギーEは鍋温度Tの4乗に比例したものである(E=εσT^(4);ステファン・ボルツマンの法則)。
【0053】
図7にプランクの分布則から算出される黒体温度の分光放射エネルギーを示す。この分光放射エネルギーを全波長域で積分すれば全放射エネルギーが求まり、これは温度(絶対温度)の4乗に比例する。これが前述のステファン・ボルツマンの法則であり、この係数σがステファン・ボルツマン係数である。分光放射エネルギーのピーク波長はウィーンの変移則から、調理温度100?300℃で5μm?8μmである。
【0054】
誘導加熱された鍋底は、黒体温度の全放射エネルギーEに鍋底の放射率εを乗じた全放射エネルギーを温度に応じて放出する。すなわち、黒体温度の全放射エネルギーEと鍋底温度のそれ(E´=εσT^(4))との比が放射率εである。
【0055】
図8に、トッププレート2、光学フィルタ25、赤外線センサ19のレンズ70の光学特性を示す。
【0056】
トッププレート2の非結晶化ガラスの光学特性は細線で示すように、0.4?2.7μmの波長の光を80%以上透過し、3?4.0μmの波長の光を最大25%程度透過し、4.0μmよりも長い波長、及び、0.3μmよりも短い波長の光をほとんど透過しない。光学フィルタ25の非結晶化ガラスの光学特性は一点破線で示すように、0.4?2.7μmの波長の光を80%以上透過し、3?4.0μmの波長の光を最大50%程度透過し、4.0μmよりも長い波長、及び、0.3μmよりも短い波長の光をほとんど透過しない。トッププレート2と光学フィルタ25は非結晶化ガラスで同じ材質のガラスであるが、トッププレート2の板厚4mm、光学フィルタ25の板厚約2mmと板厚が異なることで、赤外線の透過率が差異を生じる光学特性となっている。なお、トッププレート2と光学フィルタ25は、ホウケイ酸ガラスを用いている。赤外線センサ19のレンズ70の光学特性は太線で示すように、1.0?6μmの波長の光を50%以上透過し、0.8μmよりも短い波長の光をほとんど透過しない。本実施例に用いる赤外線センサ19のレンズ17はシリコン素材である。
【0057】
ここで赤外線センサ19に入射する調理鍋30からの赤外線の特性について説明する。誘導加熱された鍋底より放射される赤外線放射エネルギーは、トッププレート2の赤外線透過窓16、光学フィルタ25、赤外線センサ19のレンズ70の3種類の光学特性の各透過率の積で赤外線センサ19に受光される。このため、調理鍋30から放射される赤外線放射エネルギーの大部分(波長4μm以上、及び0.9μm以下)は赤外線センサ19では受光できない。
【0058】
赤外線透過窓16と調理鍋30のすき間、もしくは赤外線透過窓16に調理鍋30が無い場合、照明や太陽光などの可視光線が赤外線透過窓16を透過する。可視光線は0.38?0.8μmの波長域である。赤外線透過窓16を透過した可視光線は、光学フィルタ25の光学特性により光学フィルタ25も透過する。赤外線センサ19のレンズ70は、0.8μm以下の波長をほとんど透過しないため、赤外線センサ19が受光する可視光線量を低減する遮光効果が得られる。仮に赤外線センサ19がレンズに遮光効果が無い場合、可視光線の受光により赤外線センサ19のセンサ出力が上昇してしまい、調理鍋30の温度を正しく検出できない。
【0059】
上記より、トッププレート2、光学フィルタ25に非結晶化ガラスを用いても赤外線センサ19は可視光線を遮光できるため、調理鍋30の温度検知の外乱となる可視光線の影響を低減でき、調理鍋30の温度を精度良く検出することができる。
【0060】
また、図8に結晶化ガラスの光学特性を破線で示す。光学フィルタ25に結晶化ガラスを用いた場合も同様に、光学フィルタ25を透過した可視光線を赤外線センサ19のレンズ70で遮光するため、可視光線の外乱を抑制でき、調理鍋30を精度良く検出できる。
【0061】
また、本実施例の赤外線センサ19のレンズ70の素材をシリコンを用いた例で説明したが、特にこれに限定するものではなく、遮光効果を有するレンズを用いれば良い。
【0062】
また、本実施例の赤外線センサ19は、サーモパイルを用いた例で説明したが、特にこれに限定されることはなく、レンズを設けて赤外線を検知する温度検知センサのレンズに遮光効果を有することで、本実施例と同等の効果が得られる。
【符号の説明】
【0063】
1…誘導加熱調理器の本体
2…トッププレート、2a…トッププレートの下面
3…載置部
5…排気口
6…グリル庫
6a…ハンドル、6b…グリルドア
7a、7b、7c…上面操作部
8a、8b、8c…上面表示部
9…主電源スイッチ
10…前面操作部
12…温度センサ
13…加熱コイル
14…内側加熱コイル
15…隙間
16…外側加熱コイル
17…コイルベース
18…鍋温度検出装置
19…赤外線センサ
20…反射型フォトインタラプタ
22…電子回路基板
23…赤外線センサケース
24…ケース窓
25…光学フィルタ
27…反射率計測手段
34…センサガイド
40…センサ視野筒
50…制御手段
70…レンズ
100…インバータ手段
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理鍋を上面に置くトッププレートと、
該トッププレートの下に設けられ、前記調理鍋を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、
該加熱コイルに電力を供給するインバータ手段と、
前記加熱コイルを冷却するための冷却風路に外気を導入するファンと、
前記鍋底より放射される赤外線を透過する前記トッププレートに設けた赤外線透過窓と、
前記トッププレートに設けた前記赤外線透過窓を透過した前記鍋底より放射される赤外線を検出する赤外線検出手段と、
前記加熱コイルの下に配置され、非結晶化ガラスまたは結晶化ガラスで構成され、可視光線および赤外線を透過する窓材を前記赤外線検出手段の前面に持つ第一のケースを設け、前記赤外線検出手段を前記第一のケースに内蔵し、前記第一のケースを前記冷却風路に配置した構成であって、
前記赤外線検出手段に前記調理鍋からの赤外線を透過するレンズを、前記第一のケースに内蔵された前記赤外線検出手段を覆うように設けられた第二のケースに設け、前記レンズは前記トッププレートの前記赤外線透過窓より可視光線の透過率が低い光学特性としたことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱調理器において、前記第二のケースに備えられた前記レンズは、シリコンで成形されたことを特徴とする誘導加熱調理器。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-04 
出願番号 特願2015-7365(P2015-7365)
審決分類 P 1 651・ 853- ZAA (H05B)
P 1 651・ 55- ZAA (H05B)
P 1 651・ 851- ZAA (H05B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岩瀬 昌治  
特許庁審判長 松下 聡
特許庁審判官 紀本 孝
槙原 進
登録日 2018-08-31 
登録番号 特許第6393626号(P6393626)
権利者 日立グローバルライフソリューションズ株式会社
発明の名称 誘導加熱調理器  
代理人 ポレール特許業務法人  
代理人 ポレール特許業務法人  
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