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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C23C
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857  C23C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C23C
審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  C23C
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C23C
管理番号 1363156
異議申立番号 異議2019-700659  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-22 
確定日 2020-04-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6483803号発明「磁性材スパッタリングターゲット及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6483803号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3?6〕について訂正することを認める。 特許第6483803号の請求項2、4?6に係る特許を維持する。 特許第6483803号の請求項1、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6483803号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)2月24日(優先権主張 平成27年3月4日(JP)日本国)を国際出願日とする出願であって、平成31年2月22日にその特許権の設定登録がされ、平成31年3月20日に特許掲載公報が発行されたものであり、その後、請求項1?6に係る特許に対して、令和1年8月22日付けで特許異議申立人神田紀子(以下、「申立人」という。)により、甲第1号証?甲第3号証を証拠方法とする特許異議の申立てがされ、令和1年12月9日付けで取消理由が通知され、令和2年1月29日付けで特許権者により、意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、令和2年3月6日付けで申立人により、参考資料1を証拠方法とする意見書(以下、「申立人意見書」という。)の提出がされたものである。
(証拠方法)
甲第1号証:特開2004-346423号公報
甲第2号証:国際公開第2011/070860号
甲第3号証:特開2002-226970号公報
参考資料1:特開2003-27224号公報

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2に
「Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であることを特徴とする請求項1記載の磁性材スパッタリングターゲット。」
と記載されているのを、
「Co及び/又はFe並びにBを少なくとも含み、Bを10?50at%含有する焼結体からなり、Al及びSiの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であり、酸素含有量が100wtppm以下であって、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であることを特徴とする磁性材スパッタリングターゲット。」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であることを特徴とする請求項3記載の磁性材スパッタリングターゲットの製造方法。」
と記載されているのを、
「Co原料及び/又はFe原料並びにB原料を溶解鋳造して合金インゴットを作製した後、合金インゴットをガスアトマイズ法により原料粉末を作製し、その後、これを焼結してターゲットとするターゲットの製造方法であって、当該ターゲットは、Co及び/又はFe並びにBを少なくとも含み、Bを10?50at%含有する焼結体からなり、Al及びSiの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であり、酸素含有量が100wtppm以下であって、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であることを特徴とする磁性材スパッタリングターゲットの製造方法。」
に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「請求項3又は4記載」と記載されているのを、「請求項4記載」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「請求項3?5のいずれか一項に記載」と記載されているのを、「請求項4又は5に記載」に訂正する。

なお、訂正事項1及び2の特許請求の範囲に係る訂正は、一群の請求項〔1、2〕に対して請求されたものである。また、訂正事項3?6の特許請求の範囲に係る訂正は、一群の請求項〔3?6〕について請求されたものである。

2 訂正要件の判断
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項2の記載が請求項1の記載を引用するものであったものを、その引用関係を解消して独立形式に改めるものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項4の記載が請求項3の記載を引用するものであったものを、その引用関係を解消して独立形式に改めると共に、訂正前の請求項3の「合金インゴットをガスアトマイズ粉により原料粉末を作製し」の記載が「合金インゴットをガスアトマイズ法により原料粉末を作製し」の誤記であることを訂正するものであるから、「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」及び「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、願書に添付された明細書の段落【0008】に「4)Co原料及び/又はFe原料並びにB原料を溶解鋳造して合金インゴットを作製した後、合金インゴットをガスアトマイズ法により原料粉末を作製し」と記載されていることから、訂正事項3は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものである。

(3)訂正事項2及び4について
訂正事項2及び4は、それぞれ、訂正前の請求項1及び3を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項5及び6について
訂正事項5及び6は、それぞれ、訂正前の請求項5及び6における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1、2〕、〔3?6〕について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2、4?6に係る発明(以下、「本件発明2、4?6」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項2、4?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項2】
Co及び/又はFe並びにBを少なくとも含み、Bを10?50at%含有する焼結体からなり、Al及びSiの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であり、酸素含有量が100wtppm以下であって、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であることを特徴とする磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項4】
Co原料及び/又はFe原料並びにB原料を溶解鋳造して合金インゴットを作製した後、合金インゴットをガスアトマイズ法により原料粉末を作製し、その後、これを焼結してターゲットとするターゲットの製造方法であって、当該ターゲットは、Co及び/又はFe並びにBを少なくとも含み、Bを10?50at%含有する焼結体からなり、Al及びSiの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であり、酸素含有量が100wtppm以下であって、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であることを特徴とする磁性材スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項5】
溶解鋳造して得られた合金インゴットの最終凝固部を切除し、インゴット残部をガスアトマイズ法により原料粉末とすることを特徴とする請求項4記載の磁性材スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項6】
原料粉末の粒径を53?300μmとすることを特徴とする請求項4又は5に記載の磁性材スパッタリングターゲットの製造方法。」

2 取消理由について
令和1年12月9日付けの取消理由は、訂正前の請求項1及び3に係る特許に対して通知されたものであるところ、上記第2で検討したとおり、訂正により請求項1及び3は削除されたため、取消理由に理由はない。

3 取消理由において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)特許法第29条第2項に関する申立理由の検討
ア 申立理由
申立人は、訂正前の請求項1?6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2号証及び甲第3号証に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである旨を主張している(特許異議申立書第8頁第1行?第17頁第1行)。

イ 甲第1号証に記載された発明について
甲第1号証には、
「【請求項1】
断面ミクロ組織においてホウ化物相の存在しない領域に描ける最大内接円の直径が30μm以下であることを特徴とするFe-Co-B系合金ターゲット材。
【請求項2】
原子比における組成式が(Fe_(X)Co_(100-X))_(100-Y)B_(Y)、5≦X≦95、5≦Y≦30であることを特徴とする請求項1に記載のFe-Co-B系合金ターゲット材。
【請求項3】
Bを含有するアトマイズ粉末の焼結体であることを特徴とする請求項1もしくは2に記載のFe-Co-B系合金ターゲット材。
【請求項4】
Fe-Co-B系合金アトマイズ粉末の焼結体であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のFe-Co-B系合金ターゲット材。
【請求項5】
Bを含有するアトマイズ粉末を焼結して作製することを特徴するFe-Co-B系合金ターゲット材の製造方法。
【請求項6】
Fe-Co-B系合金アトマイズ粉末を焼結して作製することを特徴する請求項5に記載のFe-Co-B系合金ターゲット材の製造方法。
【請求項7】
熱間静水圧プレスを用いて作製することを特徴とする請求項5もしくは6に記載のFe-Co-B系合金ターゲット材の製造方法。」、
「【0001】
本発明は、軟磁性膜を形成するためのFe-Co-B系合金ターゲット材、その製造方法およびそのFe-Co-B系合金ターゲット材で成膜した軟磁性膜を有する磁気記録媒体およびトンネル磁気抵抗効果(以下、TMRという)素子に関するものである。」、
「【0014】
本発明のターゲット材は、急冷凝固させたFe-B系合金粉末、Co-B系合金粉末やFe-Co-B系合金粉末等を所定の組成比で混合した混合粉末を使用することにより実現できる。組成的もしくは組織的にバラツキの少ないターゲット材を得るためには、所定の組成比に調整したFe-Co-B系合金の母合金を急冷凝固し原料粉末として使用することがより好ましい。」、及び、
「【0017】
本発明のターゲット材の不純物としては、軟磁気特性を低下させる酸素等のガス成分は極力低減することが好ましい。具体的にはO≦300質量ppm、N≦100質量ppmが好ましく、より好ましくはO≦150質量ppm、N≦50質量ppmである。」
ことが記載されている。
そして、甲第1号証の上記記載を、Fe-Co-B系合金ターゲット材に注目して整理すると、甲第1号証には、
「Fe-Co-B系アトマイズ粉末の焼結体からなり、原子比における組成式が(Fe_(X)Co_(100-X))_(100-Y)B_(Y)、5≦X≦95、5≦Y≦30であって、酸素含有量が150質量ppm以下である、軟磁性膜を形成するためのFe-Co-B系合金ターゲット材。」
の発明(以下、「甲1発明1」という。)が記載されているといえる。
また、甲第1号証の上記記載を、Fe-Co-B系合金ターゲット材の製造方法に注目して整理すると、甲第1号証には、
「所定の組成比に調整したFe-Co-B系合金の母合金からガスアトマイズ法によってFe-Co-B系合金アトマイズ粉末を作製し、該合金アトマイズ粉末を熱間静水圧プレス法によって焼結体とし、機械加工してターゲット材とする、Fe-Co-B系合金ターゲット材の製造方法であって、当該Fe-Co-B系合金ターゲット材は、原子比における組成式が(Fe_(X)Co_(100-X))_(100-Y)B_(Y)、5≦X≦95、5≦Y≦30であって、酸素含有量が150質量ppm以下である、軟磁性膜を形成するためのFe-Co-B系合金ターゲット材の製造方法。」
の発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。

ウ 対比、検討
(ア)本件発明2について
本件発明2と甲1発明1を対比すると、少なくとも、本件発明2では、「Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下である」のに対して、甲1発明1では、その点が明らかでない点で相違している(相違点1)。
そこで、当該相違点1について検討するに、甲第2号証、甲第3号証及び参考資料1のいずれにも、Co及び/又はFe並びにBを含む磁性材スパッタリングターゲットの「Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量」を「50wtppm以上100wtppm以下」とすることは記載も示唆もされていない。
そうしてみると、甲第2号証、甲第3号証及び参考資料1の記載を参酌したとしても、甲1発明1において、「Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量」を「50wtppm以上100wtppm以下」とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、その他の点を検討するまでもなく、本件発明2は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2号証、甲第3号証及び参考資料1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をできたものといえない。

(申立人の相違点1に関する主張について)
上記相違点1に関して、申立人は、甲第1号証におけるAl、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量は、不純物程度のごく微量であるから、この合計含有量を「50wtppm以上100wtppm以下」とすることは、数値範囲の好適化にすぎないことを主張している(特許異議申立書第12頁下から2行?第13頁第11行)。
また、申立人は、甲第2号証の表1に記載されていないBa、Hf、Li、Mg、Sr、Ti及びZrの含有量は微量であることから、甲第2号証には、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であることが実質的に記載されていること、さらに、参考資料1の表1には、ターゲット用合金のガス成分を除く不純物の含有量が25ppmであることが記載されているから、参考資料1には、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量を100wtppm以下とすることが実質的に記載されていることを根拠にして、甲1発明1において、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量を「50wtppm以上100wtppm以下」とすることは、当業者が容易に想到し得ることであることを主張している(特許異議申立書第13頁第13?22行、申立人意見書第5頁下から8行?第6頁第14行)。
しかしながら、甲第1号証、甲第2号証及び参考資料1のいずれにも、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量を特定する技術思想は記載も示唆もされていないから、この合計含有量を「50wtppm以上100wtppm以下」とすることは、当業者が想起し得ることではない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。

(イ)本件発明4について
本件発明4と甲1発明2を対比すると、少なくとも、本件発明4では、ターゲットの「Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下である」のに対して、甲1発明2では、その点が明らかでない点で相違している(相違点2)。
そこで、上記相違点2について検討するに、上記(ア)での検討と同様に、甲第2号証、甲第3号証及び参考資料1の記載を参酌したとしても、甲1発明2において、ターゲットの「Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量」を「50wtppm以上100wtppm以下」とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。
したがって、その他の点を検討するまでもなく、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2号証、甲第3号証及び参考資料1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をできたものといえない。

(ウ)本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、本件発明4を引用するものであって、少なくとも上記相違点2が存在するから、本件発明5及び6も、上記(イ)で検討したとおり、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2号証、甲第3号証及び参考資料1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をできたものといえない。

(エ)申立人意見書における「進歩性」に係る主張について
申立人は、甲第3号証に記載された発明(甲3発明)を主引例として、本件発明2、4?6は、甲3発明、甲第2号証に記載された事項及び参考資料1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたことを主張している(申立人意見書第4頁下から10行?第9頁第4行)。
しかしながら、上記(ア)で検討したとおり、甲第3号証、甲第2号証及び参考資料1のいずれにも、Co及び/又はFe並びにBを含む磁性材スパッタリングターゲットの「Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量」を「50wtppm以上100wtppm以下」とすることは記載も示唆もされていないから、上記(ア)?(ウ)での検討と同様に、本件発明2、4?6は、甲第3号証に記載された発明、並びに、甲第2号証及び参考資料1に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をできたものといえない。
よって、申立人の上記主張は採用できない。

エ 小括
以上で検討したとおり、請求項2、4?6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものでないから、申立人の主張する申立理由に理由はない。

(2)特許法第36条第6項第2号に係る申立理由の検討
申立人は、訂正前の請求項6に係る発明の「原料粉末の粒径を53?300μmとする」との特定事項は、原料粉末の分布の最小値?最大値を示しているのか、あるいは、原料粉末の分布の代表値が53?300μmの範囲内であることを示しているのか不明確であるし、後者である場合には、その代表値が何なのか(モード径なのか、メジアン径なのか、算術平均値なのか、中央値なのか)が不明であるため、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである旨を主張している(特許異議申立書第17頁第2?12行、申立人意見書第10頁第1?11行)。
この点について検討するに、本件特許の願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の段落【0017】に「このアトマイズ粉末を窒素雰囲気のグローブボックス内で篩分けして、粒径53?300μmとなるように粒径調整を行う。」と記載されていることからして、請求項6に記載された「原料粉末の粒径を53?300μmとする」との特定事項は、篩分けされた原料粉末の粒径分布の最小値(53μm)?最大値(300μm)の範囲を示していることは明らかである。
したがって、請求項6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由に理由はない。

4 申立人意見書における「サポート要件違反」に係る主張の検討
申立人は、本件発明2、4?6では、ターゲット成分として、Bの含有量が10?50at%、Al及びSiの合計含有量が50?100wtppm、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50?100wtppmとの規定があるが、残余の部分に関して何ら規定がないところ、残余の部分にいかなる元素が用いられても、本件発明2、4?6の課題を解決できることを当業者が理解できないから、本件特許2、4?6は、発明の詳細な説明に記載したものでなく、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである旨を主張している(申立人意見書第9頁第5行?末行)。
この点について検討するに、本件発明2、4?6の課題は、本件特許明細書の段落【0002】?【0007】の記載からして、粉末焼結法によって製造されるBを含有する磁性材スパッタリングターゲットにおいて、パーティクルの発生を抑制することといえる。
そして、本件特許明細書の実施例には、Fe-Co-B、Fe-B又はCo-Bの焼結体からなり酸素含有量が40?80wtppm、Al及びSiの合計含有量が50?90wtppm、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が100wtppm以下である磁性材ターゲットが具体的に記載され、当該磁性材ターゲットを使用した場合に発生するパーティクル数が小さくなることも具体的に記載されているし、また、本件特許明細書の段落【0008】、【0009】、【0013】?【0015】には、酸素の含有量を少なく、また、酸化物を形成しやすい金属不純物(Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZr)の含有量を少なくすることによって、酸化物に起因するパーティクルの発生を抑制できることも記載され、当該パーティクルの発生はターゲット成分に直接関係していないことからして、本件発明2、4?6は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づき上記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものである。
よって、申立人の上記主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおり、請求項2及び4?6に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に請求項2及び4?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項1及び3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、請求項1及び3に係る特許に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。




 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
Co及び/又はFe並びにBを少なくとも含み、Bを10?50at%含有する焼結体からなり、Al及びSiの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であり、酸素含有量が100wtppm以下であって、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であることを特徴とする磁性材スパッタリングターゲット。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
Co原料及び/又はFe原料並びにB原料を溶解鋳造して合金インゴットを作製した後、合金インゴットをガスアトマイズ法により原料粉末を作製し、その後、これを焼結してターゲットとするターゲットの製造方法であって、当該ターゲットは、Co及び/又はFe並びにBを少なくとも含み、Bを10?50at%含有する焼結体からなり、Al及びSiの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であり、酸素含有量が100wtppm以下であって、Al、Ba、Hf、Li、Mg、Si、Sr、Ti及びZrの合計含有量が50wtppm以上100wtppm以下であることを特徴とする磁性材スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項5】
溶解鋳造して得られた合金インゴットの最終凝固部を切除し、インゴット残部をガスアトマイズ法により原料粉末とすることを特徴とする請求項4記載の磁性材スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項6】
原料粉末の粒径を53?300μmとすることを特徴とする請求項4又は5に記載の磁性材スパッタリングターゲットの製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-04-06 
出願番号 特願2017-503431(P2017-503431)
審決分類 P 1 651・ 852- YAA (C23C)
P 1 651・ 851- YAA (C23C)
P 1 651・ 113- YAA (C23C)
P 1 651・ 857- YAA (C23C)
P 1 651・ 121- YAA (C23C)
P 1 651・ 537- YAA (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 岡田 隆介  
特許庁審判長 菊地 則義
特許庁審判官 宮澤 尚之
金 公彦
登録日 2019-02-22 
登録番号 特許第6483803号(P6483803)
権利者 JX金属株式会社
発明の名称 磁性材スパッタリングターゲット及びその製造方法  
代理人 小越 一輝  
代理人 小越 勇  
代理人 小越 勇  
代理人 小越 一輝  
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