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審決分類 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  F21S
審判 全部申し立て 特許請求の範囲の実質的変更  F21S
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F21S
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21S
審判 全部申し立て 2項進歩性  F21S
管理番号 1363169
異議申立番号 異議2018-700293  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-09 
確定日 2020-04-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6210880号発明「自動車用機能部品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6210880号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12〕について訂正することを認める。 特許第6210880号の請求項1ないし5、8ないし11に係る特許を取り消す。 同請求項6、7、12に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6210880号の請求項1?12に係る特許についての出願は、2012年8月8日(優先権主張2011年8月8日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年9月22日にその特許権の設定登録がされ、平成29年10月11日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
平成30年 4月 9日 :特許異議申立人栗暢行(以下「異議申立人」という。)による請求項1?12に係る特許に対する特許異議の申立て
平成30年 8月 6日付け:取消理由通知書
平成30年10月15日 :特許権者による訂正請求書の提出
平成31年 1月 9日付け:訂正請求があった旨の通知
平成31年 2月13日 :異議申立人による意見書の提出
平成31年 3月19日 :訂正拒絶理由通知
令和 1年 7月24日付け:取消理由通知<決定の予告>
令和 1年 9月27日 :特許権者による訂正請求書の提出
令和 1年10月30日付け:訂正請求があった旨の通知
令和 1年12月 3日 :異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和1年9月27日付けの訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6210880号(以下「本件特許」という。)の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?12について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである(なお、下線部が訂正箇所である。)。
なお、平成30年10月15日付け訂正請求書は、取り下げられたものとみなされる。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「自動車に付属する部品の表面形状に成形された成形カバーと、
成形カバーの裏面に沿って接着又は嵌入固定された面発光素子とからなる自動車用部品であって、
成形カバーは、透光性の樹脂成形材が、電鋳処理されることなく、透光性フィルムで加飾成形された不透明の加飾成形品からなり、
面発光素子からの光が不透明の加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がることを特徴とする自動車用部品。」と記載されているのを、
「自動車に付属する部品の表面形状に成形された成形カバーと、
成形カバーの裏面に沿って接着又は嵌入固定された面発光素子とからなる自動車用機能部品であって、
成形カバーは、光透過性の樹脂成形材が、電鋳処理されることなく、光透過性フィルムで加飾(型内加飾を除く)成形された、面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品からなり、
面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用機能部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がることを特徴とする自動車用機能部品。」
に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12についても同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「透光性フィルムによって不透明に加飾成形したものであって、かつ、自動車本体に取り付けられる支持枠の表面に覆設されるものであり、
前記面発光素子は、この支持枠の内部に形成されたステーに支持されて、成形カバーとの距離を保持したまま支持枠内に固定される請求項1記載の自動車用部品。」と記載されているのを、
「光透過性フィルムによって面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであって、かつ、自動車本体に取り付けられる支持枠の表面に覆設されるものであり、
前記面発光素子は、この支持枠の内部に形成されたステーに支持されて、成形カバーとの距離を保持したまま支持枠内に固定される請求項1記載の自動車用機能部品。」
に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項3、4、5、6、7、8、9、10、11、及び12についても同様に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「自動車用部品」と記載されているのを、「自動車用機能部品」に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項4、5、6、7、8、9、10、11、及び12についても同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「配線孔33と」と記載されているのを、「配線孔と」に訂正する。
請求項4の記載を引用する請求項5、8、9、10、11、及び12についても同様に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項10に
「一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の透光性フィルムによって不透明に加飾成形したものであり、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非透光性に構成されてなり、
この非透光性の構成によって、面発光素子の発光領域を制限する請求項1ないし9のいずれか記載の自動車用機能部品。」と記載されているのを、
「一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであり、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成されてなり、
この非光透過性の構成によって、面発光素子の発光領域を制限する請求項1ないし9のいずれか記載の自動車用機能部品。」に訂正する。
請求項10の記載を引用する請求項11、及び12についても同様に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12に
「発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材を、発光領域の形状に抜き加工した不透明の樹脂成形材の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなる請求項1ないし10のいずれか記載の自動車用機能部品。」と記載されているのを、
「発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材を、発光領域の形状に抜き加工した、透明でない樹脂成形材の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなる請求項1ないし10のいずれか記載の自動車用機能部品。」に訂正する。

(7)訂正事項7
明細書の【0006】に
「自動車用部品であって、
成形カバー(1)は、透光性の樹脂成形材が透光性フィルムで加飾成形されてなり、
面発光素子(2)からの光が成形カバー(1)を透過して、自動車用部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がることを特徴とする。」と記載されているのを、
「自動車用機能部品であって、
成形カバー(1)は、光透過性の樹脂成形材が、電鋳処理されることなく、光透過性フィルムで加飾(型内加飾を除く)成形された、面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品からなり、
面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用機能部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がることを特徴とする」に訂正する。

(8)訂正事項8
明細書の【0007】に
「(2)上記記載の自動車用部品において、前記成形カバー(1)は、自動車本体に取り付けられる支持枠(3)の表面に覆設されるものであり、
前記面発光素子(2)は、この支持枠(3)の内部に形成されたステー(31/351、352)に支持されて、成形カバー(1)との距離を保持したまま支持枠(3)内に固定されることが好ましい。
(3)上記いずれか記載の自動車用部品において、成形カバー(1)の裏面側と面発光素子(2)の表面側との間に、光拡散効果を有する光透過性フィルム(4)を配してなり、面発光素子(2)からの光は光透過性フィルム(4)を通り、拡散した状態で成形カバー(1)の表面側に透過することが好ましい。」と記載されているのを、
「(2)上記記載の自動車用機能部品において、前記成形カバー(1)は、樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであって、かつ、自動車本体に取り付けられる支持枠(3)の表面に覆設されるものであり、前記面発光素子(2)は、この支持枠(3)の内部に形成されたステー(31/351、352)に支持されて、成形カバー(1)との距離を保持したまま支持枠(3)内に固定されることが好ましい。
(3)上記いずれか記載の自動車用機能部品において、成形カバー(1)の裏面側と面発光素子(2)の表面側との間に、光拡散効果を有する光透過性フィルム(4)を配してなり、面発光素子(2)からの光は光透過性フィルム(4)を通り、拡散した状態で成形カバー(1)の表面側に透過することが好ましい。」に訂正する。

(9)訂正事項9
明細書の【0008】に
「(4)上記いずれか記載の自動車用部品において、前記面発光素子(2)は、シート状の基板(21)と、この基板(21)の表面側に配された複数の面発光源(22)と、基板(21)上で前記各面発光源(22)間を亘って配線される基板配線(23)と、この基板配線(23)と電気的に繋がって基板(21)の一端から延長する延長配線(24)とを有してなり、
支持枠(3)は、前記基板(21)を収容可能な収容空間(32)と、前記収容空間(32)の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔33とを有してなり、」と記載されているのを、
「(4)上記いずれか記載の自動車用機能部品において、前記面発光素子(2)は、シート状の基板(21)と、この基板(21)の表面側に配された複数の面発光源(22)と、基板(21)上で前記各面発光源(22)間を亘って配線される基板配線(23)と、この基板配線(23)と電気的に繋がって基板(21)の一端から延長する延長配線(24)とを有してなり、
支持枠(3)は、前記基板(21)を収容可能な収容空間(32)と、前記収容空間(32)の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔(33)とを有してなり、」に訂正する。

(10)訂正事項10
明細書の【0009】に
「自動車用部品において」と記載されているのを、
「自動車用機能部品において」
に訂正する。

(11)訂正事項11
明細書の【0010】に
「自動車用部品において」と記載されているのを、
「自動車用機能部品において」に訂正する。

(12)訂正事項12
明細書の【0011】に
「自動車用部品において」と記載されているのを、
「自動車用機能部品において」に訂正する。

(13)訂正事項13
明細書の【0012】に
「自動車用部品において」と記載されているのを、
「自動車用機能部品において」に訂正する。

(14)訂正事項14
明細書の【0013】に
「自動車用部品において」と記載されているのを、
「自動車用機能部品において」に訂正する。

(15)訂正事項15
明細書の【0014】に
「自動車用部品において、成形カバー(1)は、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、透光性フィルムによって加飾成形したものであり、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子(2)が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非透光性に構成されてなり、
この非透光性の構成によって」と記載されているのを、
「自動車用機能部品において、成形カバー(1)は、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子(2)の非発光時に透明でないように加飾成形したものであり、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子(2)が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成されてなり、
この非光透過性の構成によって」に訂正する。

(16)訂正事項16
明細書の【0015】に
「自動車用部品において」と記載されているのを、
「自動車用機能部品において」に訂正する。

(17)訂正事項17
明細書の【0016】に
「自動車用部品において、発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材(11)を、発光領域の形状に抜き加工した不透明の樹脂成形材(1)の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなることが好ましい。」と記載されているのを、
「自動車用機能部品において、発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材(11)を、発光領域の形状に抜き加工した、透明でない樹脂成形材(11)の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなることが好ましい。」に訂正する。

(18)訂正事項18
明細書の【0020】に
「ここで成形カバー1は、成形加工された透光性樹脂からなる樹脂成形材10を、透光性を有する加飾フィルム1Fで加飾成形した加飾成形品であって、メッキ等の電鋳処理がされたものを除く。すなわち従来のメッキ処理品では光不透過性材となってしまうところ、加飾フィルム1Fの加飾によって表面形成された成形カバー1であれば、樹脂成形材10や加飾フィルム1Fの選択によって光透過の可否や光の透過度を自由に設定することができる。また、成形カバー1からの光透過範囲は、成形カバー1へのマスキング処理、或いは、不透明の樹脂成形材と透明の樹脂成形材との埋め込み/組み込み成型のいずれかによってコントロールされるほか、面発光素子2の発光位置、発光方向、指向性(発光範囲)によってもコントロールされる。なお、ここでいうマスキング処理とは、成形カバー1の表面又は裏面への不透明色の塗布膜の形成のほか、成形カバー1の裏面へのマスキング材5の覆設、或いは成形カバー1自体の厚さの調節すなわち肉厚部或いはリブの形成、嵌めこみ用スタッドやリブの形成等の様々な手段を含む。また、不透明の樹脂成形材と透明の樹脂成形材との埋め込み成型とは、不透明の樹脂成形材の一部を発光領域の形状に抜き加工し、当該抜き加工部分に透明の樹脂成形材を埋め込んでモールド成型することを含む。また組み込み成型とは、一部を発光領域の形状に抜き加工した不透明の樹脂成形材と、当該抜き加工部分の形状に合わせて予め成形した透明の樹脂成形材とを組み込んで一体化させることを含む。」と記載されているのを、
「ここで成形カバー1は、成形加工された樹脂からなる光透過性の樹脂成形材10を、光透過性を有する加飾フィルム1Fで加飾(型内加飾を除く)成形した加飾成形品であって、メッキ等の電鋳処理がされたものを除く。すなわち従来のメッキ処理品では光不透過性材となってしまうところ、加飾フィルム1Fの加飾(型内加飾を除く)によって表面形成された加飾成形品の成形カバー1であれば、樹脂成形材10や加飾フィルム1Fの選択によって光透過の可否や光の透過度を自由に設定することができる。また、成形カバー1からの光透過範囲は、成形カバー1へのマスキング処理、或いは、非光透過性の樹脂成形材と光透過性の樹脂成形材との埋め込み/組み込み成型のいずれかによってコントロールされるほか、面発光素子2の発光位置、発光方向、指向性(発光範囲)によってもコントロールされる。なお、ここでいうマスキング処理とは、成形カバー1の表面又は裏面への不透明色の塗布膜の形成のほか、成形カバー1の裏面へのマスキング材5の覆設、或いは成形カバー1自体の厚さの調節すなわち肉厚部或いはリブの形成、嵌めこみ用スタッドやリブの形成等の様々な手段を含む。また、非光透過性の樹脂成形材と光透過性の樹脂成形材との埋め込み成型とは、非光透過性の樹脂成形材の一部を発光領域の形状に抜き加工し、当該抜き加工部分に光透過性の樹脂成形材を埋め込んでモールド成型することを含む。また組み込み成型とは、一部を発光領域の形状に抜き加工した非光透過性の樹脂成形材と、当該抜き加工部分の形状に合わせて予め成形した光透過性の樹脂成形材とを組み込んで一体化させることを含む。」に訂正する。

(19)訂正事項19
明細書の【0029】に
「透光性拡散粒子」と記載されているのを、
「光透過性拡散粒子」に訂正する。

(20)訂正事項20
明細書の【0034】に
「成形カバー1は、有色透明または無色透明の樹脂成形材の表面に、メッキ調の透光性フィルムによって加飾成形したものである。ここで実施例1の前記樹脂成形材の成形面の裏側には、面発光素子2の配設箇所の周囲に非透光性の塗膜層1Mとして暗色(黒色)の塗装による塗膜が部分形成される。」と記載されているのを、
「成形カバー1は、有色透明または無色透明の樹脂成形材の表面に、メッキ調の光透過性フィルムによって加飾(型内加飾を除く)成形したものである。ここで実施例1の前記樹脂成形材の成形面の裏側には、面発光素子2の配設箇所の周囲に非光透過性の塗膜層1Mとして暗色(黒色)の塗装による塗膜が部分形成される。」に訂正する。

(21)訂正事項21
明細書の【0035】に
「透過性フィルム」と記載されているのを、
「光透過性フィルム」に訂正する。

(22)訂正事項22
明細書の【0042】に
「透過性フィルム」と記載されているのを、
「光透過性フィルム」に訂正する。
また、「加飾成形」と記載されているのを、
「加飾(型内加飾を除く)成形」に訂正する。

(23)訂正事項23
明細書の【0043】に
「不透明の樹脂成形材10と、透明又は半透明の樹脂成形材11とが、インサートモールド成形によって一体成形されたものである。これは、不透明の樹脂成形材1の発光領域に相当する部分を窓状にくり抜き加工し、この不透明の樹脂成形材1の抜き加工部分に、当該発光領域を覆う成形材の形状に表面加工した透明又は半透明の樹脂成形材11を埋め込むような形でインサートモールド成型して得られる。透明又は半透明の樹脂成形材11は、不透明の樹脂成形材10の切欠き窓部分に組み込まれ、不透明の樹脂成形材10と連続する表面を形成するとともに」と記載されているのを、
「非光透過性の樹脂成形材10と、透明又は半透明の樹脂成形材11とが、インサートモールド成形によって一体成形されたものである。これは、非光透過性の樹脂成形材1の発光領域に相当する部分を窓状にくり抜き加工し、この非光透過性の樹脂成形材1の抜き加工部分に、当該発光領域を覆う成形材の形状に表面加工した透明又は半透明の樹脂成形材11を埋め込むような形でインサートモールド成型して得られる。
透明又は半透明の樹脂成形材11は、非光透過性の樹脂成形材10の切欠き窓部分に組み込まれ、非光透過性の樹脂成形材10と連続する表面を形成するとともに」に訂正する。

(24)訂正事項24
明細書の【0047】に
「実施例7では透明の樹脂成形材11の裏面の窪み面にフレネルレンズ11L を形成しており、透明の樹脂成形材11は、」と記載されているのを、
「実施例7では光透過性の樹脂成形材11の裏面の窪み面にフレネルレンズ11Lを形成しており、光透過性の樹脂成形材11は、」に訂正する。

(25)訂正事項25
明細書の【0048】に
「透明の」と記載されているのを、
「光透過性の」に訂正する。

(26)訂正事項26
明細書の【0049】に
「透明の」と記載されているのを、
「光透過性の」に訂正する。

(27)訂正事項27
明細書の【0051】に
「透過性フィルム」と記載されているのを、
「光透過性フィルム」に訂正する。

(28)訂正事項28
明細書の【0052】に
「また上記いずれか記載の自動車用部品において、成形カバー1は、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、透光性フィルムによって加飾成形したものであり、前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子2が配設され、前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非透光性に構成されてなり、この非透光性の構成によって、面発光素子2の発光領域を制限することが好ましい。また発光領域の形状に抜き孔加工したマスキング材5を成形カバー1の裏面に当接したものとしてもよい。或いは発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材11を、当該発光領域の形状に抜き加工した不透明の樹脂成形材1の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなるものとしてもよい。」と記載されているのを、
「また上記いずれか記載の自動車用機能部品において、成形カバー1は、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、光透過性フィルムによって加飾成形したものであり、前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子2が配設され、前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成されてなり、この非光透過性の構成によって、面発光素子2の発光領域を制限することが好ましい。また発光領域の形状に抜き孔加工したマスキング材5を成形カバー1の裏面に当接したものとしてもよい。或いは発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材11を、当該発光領域の形状に抜き加工した非光透過性の樹脂成形材1の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなるものとしてもよい。」に訂正する。

(29)訂正事項29
明細書の【0053】に
「10 不透明の樹脂成形材」と記載されているのを、
「10 透明でない樹脂成形材」に訂正する。

特許請求の範囲の請求項1?12は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」を構成している。
本件訂正請求は、一群の請求項1?12に対して請求されたものである。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

2-1.訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の特許請求の範囲の請求項1について、
ア 訂正前の「自動車用部品」との記載を「自動車用機能部品」に訂正し(以下「訂正ア」という。)、
イ 訂正前の「透光性の樹脂成形材」「透光性フィルム」との記載を「光透過性の樹脂成形材」「光透過性フィルム」に訂正し(以下「訂正イ」という。)、
ウ 訂正前の「加飾成形」との記載を「加飾(型内加飾を除く)成形」に訂正し(以下「訂正ウ」という。)、
エ 訂正前の「不透明の加飾成形品」との記載を「面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品」に訂正し(以下「訂正エ」という。)、
オ 訂正前の「面発光素子からの光が不透明の加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して」との記載を「面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して」に訂正する(以下「訂正オ」という。)、
ものである。

2-1-1.訂正アについて
訂正アは、明瞭でない記載の釈明を目的として「自動車用部品」という用語を、願書に添付された明細書又は図面(以下「本件明細書」という)の【0019】、【0034】、【0038】、【0042】等に記載の「自動車用機能部品」に統一したものであるから明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-1-2.訂正イについて
訂正イは、明瞭でない記載の釈明を目的として「透光性の樹脂成形材」「透光性フィルム」の「透光性」という用語を、本件明細書の【請求項3】、【0007】等に記載の「光透過性」に統一したものであるから明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-1-3.訂正ウについて
(1)本件明細書の【0042】には、「光を部分透過させる透過窓部分のみが透明又は半透明の樹脂成形材11によってインサートモールド成形された成形カバー1」と「成形カバー1の表面全体を加飾成形する透光性フィルム1F」とを「とを有してなる(図9,図10)」自動車用機能部品の構成が記載されているが、成形カバー1がインサートモールド成形されたことが記載されている一方で、成形カバー1と透光性フィルム1Fとの一体化が型内で行われているとは記載されていないので、図9等に記載された、形成されていない平坦なシート状の加飾フィルム1Fと、予め成形品形状に成形されている基材となる樹脂成形材10で行われる加飾成形は、型内で行われていないものと解するのが相当である。
補足すると、
(a)本件明細書の図9等に記載された予め成形品形状にインサートモールド成形された成形カバー1においては、基本的に成形カバー1を再度成形する必要性はない。
(b)例えば、特開2006-213319号公報(甲第1号証)に、「【0034】・・仕上げ材32は・・・高分子材料又は織物材料等の適当な材料からできている薄膜であってもよい。・・・基板30に膜を施す別の例示的なプロセスは、ハイドログラフプロセスであり、このプロセスでは、炭素繊維に似た外観等の所望の外観を有する膜を液体上に浮かばせ、基板30を液体に浸漬させることで、基板30を液体から取り出すと膜が基板30に付着するようにする。代替的に、膜は基板30とともにインサート成形してもよい。このプロセスでは、膜を金型キャビティに挿入することができ、次に金型を閉じて材料を射出し、基板30を形成する。膜及び基板30は単一部品となり、膜が基板30の化粧的外皮として機能する。」と記載されているように、型内加飾も、型内で行わない加飾も、共に周知技術であるところ、当該文献においても、後者の型内加飾であるインサート成形では、「膜は基板30とともにインサート成形」、「金型を閉じて材料を射出し、基板30を形成する」と、膜と基板30とを一緒に金型で成形することが記載されている、一方、前者のインサートモールド成形ではないハイドログラフプロセスでは、基板30を膜と一緒に金型で成形するとは記載されていない。
そうすると、型内加飾も、型内で行わない加飾も、共に周知技術であるとの技術常識を備える当業者においては、成形カバー1を再度成形する必要性がなく、成形カバー1と透光性フィルム1Fとの一体化が型内で行われているとは記載されていない本件明細書の【0042】の「自動車用機能部品」の加飾は、型内加飾でないと理解するのが相当である。
(2)訂正ウは、「加飾成形」という用語を、本件明細書の【0019】【0020】【0034】【0036】【0038】【0042】【0052】図面3,9等の記載に基づいて「加飾(型内加飾を除く)成形」にしたものであるから特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)異議申立人の主張について
異議申立人は、令和1年12月3日付け意見書「3 (3-2)ウ.」において、
「特許権者は訂正請求書『6(3)訂正の理由イ(ア)c』において、『図9で、加飾フィルム1Fが、形成されていない平坦なシート状のものを拡げてある』、『図9で、基材となる樹脂成形材10が、予め成形品形状に成形されている』から、訂正事項1は明細書等の記載の範囲内の事項であることを主張しているが(第12頁)、成形されていない平坦なシート状のものを拡げてある点や、基材となる樹脂成形材が予め成形品形状に成形されていてインサートモールド成形ではない(加飾成形の際に金型内で成形品を射出成形するものではない)点が記載されていたとしても、これらの加飾が型内で行われていないと一義的に解釈する根拠がなく、かかる訂正を明細書等の範囲内でなされた訂正ということはできない。」旨主張しているので、当該主張について検討する。
上記(1)に記載したように、本件明細書の【0042】、図9等に記載された、形成されていない平坦なシート状の加飾フィルム1Fと、予め成形品形状に成形されている基材となる樹脂成形材10で行われる加飾成形は、型内で行われていないものと解するのが相当であるので、異議申立人の上記主張は採用できない。

2-1-4.訂正エについて
訂正エは、「不透明の加飾成形品」という用語を、本件明細書の【0019】「面発光素子2からの光が成形カバー1を透過して自動車用機能部品の表面の一部分に、透過発光部Lとして浮かび上がる」、【0036】「面発光素子2は・・・発光させたとき、図2に示す連設円状の透過発光部Lが成形カバー1の外面上に一列に浮かび上がる。」、【0038】「図6に示す・・・透過発光部Lが投影される。」等の記載に基づく、発光時の構成を根拠として、非発光時の構成を特定したものであるから、「面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品」にしたものであるから特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-1-5.訂正オについて
訂正オは、「面発光素子からの光が不透明の加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して」という用語を、本件明細書の【0019】「面発光素子2からの光が成形カバー1を透過して自動車用機能部品の表面の一部分に、透過発光部Lとして浮かび上がる」、【0036】「面発光素子2は・・・発光させたとき、図2に示す連設円状の透過発光部Lが成形カバー1の外面上に一列に浮かび上がる。」、【0038】「図6に示す・・・透過発光部Lが投影される。」等の記載に基づく、一部分が浮かび上がること、及び、上記2-1-3、2-1-4を根拠として、「面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して」にしたものであるから特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-1-6.小括
したがって、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-2.訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の特許請求の範囲の請求項2について、
ア 訂正前の「自動車用部品」との記載を「自動車用機能部品」に訂正し、
イ 訂正前の「透光性フィルム」との記載を「光透過性フィルム」に訂正し、
ウ 訂正前の「不透明に加飾成形」との記載を「面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形」に訂正する
ものである。
そして上記ア?ウの訂正は、前記「2-1.」の「訂正ア、イ、エ」と同様に、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-3.訂正事項3
訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3について、訂正前の「自動車用部品」との記載を「自動車用機能部品」に訂正するものである。
そして訂正は、前記「2-1.」の「訂正ア」と同様に、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-4.訂正事項4
訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4について、訂正前の「配線孔33と」との記載を「配線孔と」に訂正するものである。
そして訂正は、誤記の訂正を目的として「配線孔33と」という用語を、「配線孔と」に変更にしたものであり、訂正前の「33」の符号は誤記であることが明らかであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-5.訂正事項5、6
訂正事項5は、訂正前の特許請求の範囲の請求項10について、
ア 訂正前の「成形カバーは、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の透光性フィルムによって不透明に加飾成形したもの」との記載を「成形カバーは、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したもの」に訂正し(以下「訂正カ」という。)、
イ 訂正前の「前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非透光性に構成されてなり、
この非透光性の構成によって、面発光素子の発光領域を制限する」との記載を「前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成されてなり、
この非光透過性の構成によって、面発光素子の発光領域を制限する」に訂正する(以下「訂正キ」という。)、
ものである。
訂正事項6は、訂正前の特許請求の範囲の請求項12について、
ウ 訂正前の「不透明の樹脂成形材」との記載を「、透明でない樹脂成形材」に訂正する(以下「訂正ク」という。)、
ものである。

2-5-1.訂正カ?クについて
訂正カ?クは、明瞭でない記載の釈明を目的として「透光性」という用語を、本件明細書の【請求項3】、【0007】等に記載の「光透過性」に統一し、前記「2-1-4.訂正エについて」と同様に、「不透明に加飾成形」という用語を、「面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形」にし、「不透明の樹脂成形材」という用語を、「透明でない樹脂成形材」に統一したものであるから明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-5-2.小括
したがって、訂正事項5、6による訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-6.訂正事項7?17
訂正事項7?17は、訂正事項1?6に係る特許請求の範囲の訂正に合わせて、発明の詳細な説明の記載を整合させるものと位置づけられるものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項1と同様の訂正ア?オ、訂正事項2と同様の訂正ア、イ、ウ、訂正事項5と同様の訂正カ、キ、訂正事項6と同様の訂正ク、及び、訂正前の「配線孔33と」との記載を「配線孔(33)と」に訂正するものであるので、上記2-1?2-5と同様に、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-7.訂正事項18?29
訂正事項18?29は、訂正事項1?6に係る特許請求の範囲の訂正に合わせて、発明の詳細な説明の記載の【発明を実施するための形態】【符号の説明】の表現を整合させるものと位置づけられるものであるので、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、上記2-1?2-5と同様に、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

3.独立特許要件
本件においては、訂正前の全ての請求項1?12について特許異議申立てがされているので、訂正前の請求項1?12に係る訂正事項1?29に関して、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

4.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?12〕について訂正することを認める。


第3 取消理由の概要
令和1年7月24日に特許権者に通知した取消理由<決定の予告>の概要
訂正前の請求項1-12に係る特許に対して、当審が令和1年7月24日に特許権者に通知した取消理由<決定の予告>の要旨は、次のとおりである。
1.取消理由1
「本件発明1、2、10、11は、引用発明、及び引用文献2記載の事項に基いて、本件発明3は、引用発明、及び引用文献2?4記載の事項に基いて、本件発明4、5、8、9は、引用発明、及び引用文献2、6記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。そうすると、本件発明1?5、8?11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。」
2.取消理由2
「本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確でなく、発明の詳細な説明の記載は、請求項1?12記載の発明の実施をすることができる程度に明確でなく、特許法第36条第4項第1号及び第6項に規定する要件を満たしていないので、本件発明1?12に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。」

<引用文献等一覧>
1.特開2006-213319号公報(甲第1号証)
2.特開2006- 95690号公報(甲第2号証)
3.特開2009- 18747号公報(甲第3号証)
4.国際公開2011/078988号(甲第4号証)
仮訳特表2013-515289号(甲第5号証)
5.実用新案登録第3113521号公報(甲第6号証)
6.特開2010-209609号公報(甲第7号証)
7.特開2005-282205号公報(甲第8号証)
8.特開2007-83740号公報(甲第9号証)」
以下、それぞれ「引用文献1」?「引用文献8」という(甲第1?9号証は、異議申立人が提出した甲号証である。異議申立人の主張では「甲1」等とされていることもある。)。

第4 訂正請求項1?12に係る発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、訂正請求項1?12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明12」という。)は、令和1年9月27日付け訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
自動車に付属する部品の表面形状に成形された成形カバーと、
成形カバーの裏面に沿って接着又は嵌入固定された面発光素子とからなる自動車用機能部品であって、
成形カバーは、光透過性の樹脂成形材が、電鋳処理されることなく、光透過性フィルムで加飾(型内加飾を除く)成形された、面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品からなり、
面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用機能部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がることを特徴とする自動車用機能部品。
【請求項2】
前記成形カバーは、樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであって、かつ、自動車本体に取り付けられる支持枠の表面に覆設されるものであり、
前記面発光素子は、この支持枠の内部に形成されたステーに支持されて、成形カバーとの距離を保持したまま支持枠内に固定される請求項1記載の自動車用機能部品。
【請求項3】
成形カバーの裏面側と面発光素子の表面側との間に、光拡散効果を有する光透過性フィルムを配してなり、面発光素子からの光は光透過性フィルムを通り、拡散した状態で成形カバーの表面側に透過する請求項1又は2記載の自動車用機能部品。
【請求項4】
前記面発光素子は、シート状の基板と、この基板の表面側に配された複数の面発光源と、
基板上で前記各面発光源間を亘って配線される基板配線と、この基板配線と電気的に繋がって基板の一端から延長する延長配線とを有してなり、
支持枠は、前記基板を収容可能な収容空間と、前記収容空間の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有してなり、
前記収容空間に収容した基板の延長配線は、前記配線孔に挿通され、自動車本体内又は収容空間内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれる請求項1,2又は3のいずれか記載の自動車用機能部品。
【請求項5】
前記支持枠の収容空間は、前記面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容するものであり、
前記スイッチ回路は、前記検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子を点滅又は点灯させる請求項4記載の自動車用機能部品。
【請求項6】
前記面発光素子は、上面を光導出面とする板状の導光体と、この導光体の側面側に配されて導光体内に入光する発光源と、この発光源と電気的に繋がって導光体の側部から延長する延長配線とを有してなり、
支持枠は、前記導光体及び発光源をそれぞれ所定高さに並べて支持可能な支持構造と、
前記支持構造の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有してなり、
前記所定高さに支持した発光源の延長配線は、前記配線孔に挿通され、自動車本体内又は支持構造内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれる請求項1, 2又は3のいずれか記載の自動車用機能部品。
【請求項7】
前記支持枠の支持構造は、前記面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を支持するものであり、
前記スイッチ回路は、前記検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子を点滅又は点灯させる請求項6記載の自動車用機能部品。
【請求項8】
前記支持枠は、成形カバーを覆設した状態で自動車ドアハンドル、ドアハンドル用取付枠、サイドピラー、又はサイドモールのいずれかを構成し、
前記検知部品は、成形カバー又は支持枠への導電性接触によって自動車ドア鍵の開閉操作信号を検知するものである請求項5又は7記載の自動車用機能部品。
【請求項9】
前記支持枠は、成形カバーを覆設した状態で自動車ドアミラー、リアガーニッシュ、又は表示灯カバーのいずれかを構成し、
前記検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作の操作信号、又は使用者によるウインカー操作の操作信号を検知するものである請求項5又は7記載の自動車用機能部品。
【請求項10】
成形カバーは、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであり、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成されてなり、
この非光透過性の構成によって、面発光素子の発光領域を制限する請求項1ないし9のいずれか記載の自動車用機能部品。
【請求項11】
発光領域の形状に抜き孔加工したマスキング材を成形カバーの裏面に当接してなる請求項1ないし10のいずれか記載の自動車用機能部品。
【請求項12】
発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材を、発光領域の形状に抜き加工した、透明でない樹脂成形材の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなる請求項1ないし10のいずれか記載の自動車用機能部品。」

第5 当審の判断
第5-1 令和1年7月24日に特許権者に通知した取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由1について
1 本件発明1について
(1)引用文献の記載
(1-1)引用文献1の記載
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された引用文献1(特開2006-213319号公報)には、「隠蔽標示を有するトリム部品」に関して、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審で付与。)
(a)「【0028】
図1に示す例示的な車両用トリム部品20は、車両10の後端にあるナンバープレート用の取り付け場所12の上方に配置される、ナンバープレート照明の形態である。トリム部品20は、図2?図7においてより詳細に示され、これらの図は、本発明に関するトリム部品20の要素を示す。・・」
(b)「【0029】
・・基板は、外面26上の仕上げ材32及び標示22を画定するマスク34を有し、トリム部品20の照明源36が、基板30のうち内面28に面する側に位置付けられる。・・」
(c)「【0030】
基板30はトリム部品20のベースとなり、一実施形態によれば、高分子材料からできている。・・例えば、基板30は、電荷が印加されると不透明度等の光学特性が変化する導体材料から少なくとも部分的にできていてもよい。・・さらに、本発明の一実施形態による基板30は、光を著しくぶれさせたり歪ませたりせずに透過するように、半透明又は十分に透明であり得る。さらに、基板30は、くすんだ外観又は琥珀色の外観等の所望の視覚効果を与えるため、所望の色を得るため、所望の灯色出力を得るため、又は電子機器を隠すために、着色された透明材料からできていてもよく、これについてはより詳細に後述する。」
(d)「【0031】
基板30の前側にある仕上げ材32は、照明源36が点灯していない場合にマスク34及び照明源36を隠蔽し、トリム部品20に所望の外観を与える。さらに、仕上げ材32は、トリム部品20の前側から見るとほぼ不透明であることにより、照明源36が点灯していない場合に、照明源36、マスク34、及び仕上げ材32の後側にある任意の他の部品を隠蔽する。しかしながら、仕上げ材32は、その後側にある照明源36から発せられる光を透過するため、照明源36が照明状態にある場合、観察者には照明源36からの光が見えることにより標示22が見える。さらに、仕上げ材32は、照明源36が非照明状態にある場合に照明源36及びマスク34を隠すことにより、トリム部品20に標示のないトリム部品と同じ外観を与える。・・」
(e)「【0032】
・・例えば、テクスチャ加工された仕上げ材は、照明源36からの光を濾過するか又は拡散させること等により所望の光出力を生成することができる。・・」
(f)「【0033】
一実施形態によれば、仕上げ材32は基板30に施されるコーティングである。例示的なコーティング材料としては、限定はされないが、Alsa Corporationから入手可能なGhost Chrome(登録商標)塗料等のメタリック塗料を含む塗料が挙げられる。・・コーティングは、任意の適当な金属蒸着プロセスを利用してトリム部品20に蒸着される、アルミニウム又はクロム等の金属の形態であってもよい。」
(g)「【0034】
・・仕上げ材32は、所望の化粧的(cosmetic)外観を与えるとともにトリム部品20に望まれる光学特性を与えるために基板30に載せられる、高分子材料又は織物材料等の適当な材料からできている薄膜であってもよい。膜は、べた色であってもよく、パターン又は画像を含んでいてもよい。基板30に膜を施す別の例示的なプロセスは、ハイドログラフプロセスであり、このプロセスでは、炭素繊維に似た外観等の所望の外観を有する膜を液体上に浮かばせ、基板30を液体に浸漬させることで、基板30を液体から取り出すと膜が基板30に付着するようにする。代替的に、膜は基板30とともにインサート成形してもよい。このプロセスでは、膜を金型キャビティに挿入することができ、次に金型を閉じて材料を射出し、基板30を形成する。膜及び基板30は単一部品となり、膜が基板30の化粧的外皮として機能する。」
(h)「【0036】
・・さらに、マスク34は、基板30の内面28に施されるものとして図示されているが、マスク34は、基板30の外面26に、又はトリム部品20の任意の他の適当な場所に位置付けることができる。」
(i)「【0038】
・・マスク34は、例えば、そこから材料を除去することにより非マスク部分48が形成される、高分子材料又は織物等の不透明材料からできていてもよく、又は不透明コーティングが施された別個の部品であってもよい。代替的に、マスク34は、基板30又は仕上げ材32に施される塗料等のコーティングであってもよく、又は接着剤等により基板30又は仕上げ材32に取り付けられる膜であってもよい。マスク34は、基板30から材料を除去して、照明源36から背面照明されると光を通過させる薄壁部分を形成すること、又は薄壁部分を組み込んだ設計を有する金型を用いて基板30を成形すること等により、基板30と一体形成することもできる。これらの例では、薄壁部分がマスク34の非マスク部分48を形成する。」
(j)「【0039】
・・代替的に、マスク34は、複数の樹脂を1つの金型に射出してマスク部分46及び非マスク部分48を形成する2ショット成形(two shot molding:2個取り成形)プロセスを用いて製造してもよい。・・」
(k)「【0041】
・・照明源36は、1つ又は複数の発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、電界発光光源(electroluminescent source:エレクトロルミネセンス光源)(例えば、ライトパッド)、白熱電球、蛍光電球、ネオンライト、及びレーザを含むがこれらに限定されない、任意の適当な光発生装置であり得る。・・例えば、照明源36は、ユーザがイグニションをオンにしたとき、方向指示器スイッチを作動させたとき、ブレーキをかけたとき、加速したとき、キーレスエントリシステムの遠隔フォブを起動したとき、ドアハンドル(entry handle)に触れたとき、又は観察者が車両10の所定距離内にいるときに、点灯するようになっていてもよい。・・」
(l)「【0043】
トリム部品20は、ユーザからの入力を受けるスイッチ及びセンサ等の電子機器(図示せず)をさらに備えることができる。例えば、トリム部品20は、ユーザが作動させると信号を発生するメンブレンスイッチ又は静電容量センサ若しくは電界効果センサを備えることができる。・・
【0044】
上述のように、照明源36が非照明状態にある場合、トリム部品20の外観は、図2に示すように標示のないトリム部品の外観とほぼ同一である。照明源36が照明状態にある場合、図6Aに示すように、照明源36からの光はマスク34の非マスク部分48を透過するが、光はマスク部分46にはあまり又はほとんど透過しない。非マスク部分48を通して輝く光は、基板30の面40及び基板30の外面26の仕上げ材32も同様に透過するため、図3又は図4に示すように、観察者は標示22を知覚することができる。したがって、仕上げ材32は、所望の場合にはマスク34、したがって標示22を隠し、標示22は、照明状態にある場合には見えるだけでなく魅力的な外観を有する。」
(m)「【0045】
本発明によるトリム部品120の第2の実施形態を有する車両110を図7に示す。トリム部品120は、図8?図11にさらに詳細に示されており、図において、第1の実施形態の部品と同様の部品は1XXという形で同様の符号で示し、この場合、XXは第1の実施形態の部品の符号である。第2の実施形態のトリム部品120は、車両110のドア114の外面に取り付けられる車両のドアハンドルである。」
(n)「【0049】
ハンドルキャップ160は、ハンドルベース150の前面に取り付けられて、トリム部品120に所望の外観を与える。・・第1の実施形態のトリム部品20と同様に、ハンドルキャップ160は、外面126上に仕上げ材132及び内面128上にマスク134を有する基板130を備える。トリム部品120はさらに、ハンドルキャップ160とハンドルベース150との間に位置する照明源136を備える。基板130、仕上げ材132、マスク134、及び照明源136は、第1の実施形態の対応する部品と同様であり、標示122及び観察者に対するその視認性に関して同様に機能する。」
(o)「【0051】
・・キー170は、キー170の背後に配置されてユーザがキー170に触れるとユーザの指の存在を感知することが可能な、メンブレンスイッチ、静電容量センサ、又は電界効果センサ等、スイッチ又はセンサの形態の電子機器と連動することができる。したがって、ユーザがトリム部品のキー170に触れると、電子機器がユーザの指の存在を検知し、ユーザがキー170に所定の順序で触れると、電子機器がロック機構と動作可能に通信してドアをロック解除する。・・」
(p)「【0053】
・・図13及び図14の標示222は、運転者が車両210内の制御レバーを作動させると点滅する方向指示器として機能することもできる。・・」


(q)【図10】には、ハンドルベース150と、ハンドルキャップ160と、照明源136とからなるトリム部品120が記載されており、
ハンドルベース150は、外側が開放する枠形状のものであって、外側が開放した空間と、該空間の一端寄りに設けられて配線(図番無し)を挿通する配線孔(図番無し)とを有してなり、該空間には、照明源136側に突出するリブ状の部分(参考図10、異議申立書第19頁「甲1図10」図の○印内で上下方向に延びる照明源136側に突出する部分参照)を備え、
ハンドルキャップ160は、ハンドルベース150の外面側の形状と対をなす形状に成形され、基板130の外面126上に仕上げ材132及び内面128上にマスク134を有するものであり、
照明源136は、ハンドルキャップ160の内面に沿って配された面発光素子であり、平板状の基板と、この基板の外面側に配された複数の発光ダイオードと、基板の一端から延長する配線(図番無し。【図11】も参照。)とを有している。

(r)引用文献1の【0045】に「本発明によるトリム部品120の第2の実施形態を有する車両110を図7に示す。トリム部品120は、図8?図11にさらに詳細に示されており、図において、第1の実施形態の部品と同様の部品は1XXという形で同様の符号で示し、この場合、XXは第1の実施形態の部品の符号である。第2の実施形態のトリム部品120は、車両110のドア114の外面に取り付けられる車両のドアハンドルである。」と記載されていることから、引用文献1の【0045】?【0052】に記載の基板130、仕上げ材132、照明源136は、【0028】?【0044】や【0054】?【0056】記載の基板30、仕上げ材32、照明源36と同様のものであるといえる。

以上の記載によれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ハンドルベース150と、ハンドルベース150の外面側の形状と対をなす形状に成形されたハンドルキャップ160と、ハンドルキャップ160の内面に沿って配された面発光素子である照明源136とからなるトリム部品120であって、
ハンドルベース150は、外側が開放する枠形状のものであって、外側が開放した空間と、空間の一端寄りに設けられて配線を挿通する配線孔とを有してなり、該空間には、照明源136側に突出するリブ状の部分を備え、
ハンドルキャップ160は、基板130の外面126上に仕上げ材132及び内面128上にマスク134を有し、
基板130は、高分子材料からできており、半透明又は十分に透明であり、
仕上げ材132は、基板130に載せられる、薄膜であって、膜は、パターン又は画像を含んでいて、基板130に膜を施すプロセスは、ハイドログラフプロセスであり、このプロセスでは、炭素繊維に似た外観等の所望の外観を有する膜を液体上に浮かばせ、基板130を液体に浸漬させることで、基板130を液体から取り出すと膜が基板130に付着するようにされ、
照明源136は、平板状の基板と、この基板の外面側に配された複数の発光ダイオードと、基板の一端から延長する配線とを有し、
仕上げ材132は、その後側にある照明源136から発せられる光を透過するため、照明源136が照明状態にある場合、観察者には照明源136からの光が見えることにより標示122が見え、仕上げ材132は、照明源136が非照明状態にある場合に照明源136及びマスク134を隠すことにより、トリム部品120に標示のないトリム部品と同じ外観を与える
車両110のドア114の外面に取り付けられる車両のドアハンドルであるトリム部品120。」

(1-2)引用文献2の記載
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された引用文献2(特開2006-95690号公報)には、「裏面から照光可能な成形同時加飾成形品」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0001】
この発明は、裏面から照光可能な成形同時加飾成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の裏面から照光可能な加飾成形品は、照光時において透光部のパターンが明るく照らされる点と、非照光時において製品全体が美麗な意匠を呈する点とを重視してデザイン設計がされていた。
しかし近年は、裏面から光源で照らすと透光部のパターンが浮き出る視認性を有するが、裏面から光源で照らされていない状態では透光部のパターンが周囲の遮光部と同化して、その存在がわからなくなるような意匠を呈する照光可能な加飾成形品が望まれている。」
「【0017】
・・本発明の成形同時加飾成形品4は、成形樹脂層2の表面側に接着層35a、透光性の金属膜層37、オーバーコート層36と剥離層31aが順に設けられている。」
(b)「【0019】
一方、裏面からの照光が無い場合には、金属膜層37は遮光層38を覆い隠し、金属膜層全体が、金属色など金属膜層自体が有する属性に応じた意匠を呈する。加飾シート(転写シートまたはインサートシート)を用いて成形同時加飾成形品4の表面側に透光性の金属膜層37を形成する場合・・」
(c)「【0047】
・・裏面から光源により照らされた状態では、文字パターンが浮き上がり、当該文字パターンを明確に視覚認識することができた。この照明器具筐体は、光源により照らされていない状態では全体がクロムメッキ調の重厚感のある金属調意匠を呈していた。」

(1-3)引用文献3の記載
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された引用文献3(特開2009-18747号公報)には、「自動車内装用照明装置及びそれを用いた自動車内装用照明システム」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0001】
本発明は、自動車内装用照明装置及びそれを用いたシステムに関し、さらに詳しくは、優れた意匠性とともに、夜間には、ぼんやりした光が車内を流れるような演出や、文字やロゴを模った光がぼんやりと浮かぶような演出等、昼間と夜間とで異なる演出を達成することができる自動車内装用照明装置及びそれを用いたシステムに関する。」
(b)「【0020】
本発明の自動車内装用照明装置において、それを構成する光拡散板が重要な作用を発揮する。すなわち、上記自動車内装用照明装置では、光源の光が、光拡散板の表面上に施された装飾意匠層を通過して放出される。ここで、光拡散板により、光源からの光が拡散され、例えば、該光拡散板の裏側に設けられた光源がはっきりと見えることなく、ぼんやりとした光になるように作用する。」
(c)「【0035】
(実施例1)
図1は、自動車の車室内側を上面としてその構成の一例を表す本発明の自動車内装用照明装置の断面概略図と評価用のハロゲンランプを表す図である。
図1において、光拡散板4は、2枚の透明ポリカーボネイト板(2mm厚)2-1、2-2に、光拡散剤を分散させた可塑化ポリビニルブチラール樹脂シート3を挟持させて、一体成型したものである。ここで、光拡散板4の全光線透過率は75%、及びその平行光透過率は1%であった。なお、光拡散板4の車室内表面には、透明PETシート(0.13mm厚)に木目調の印刷による装飾意匠層1を施したものを接着している。また、光拡散板4の車室内とは反対面に、文字及び図形の部分だけに光透過性を持たせた光スリット5を施した。以上の装飾意匠層1、光拡散板4及び光スリット5からなる光放出部6の車室内とは反対面に、光源部として、白色LED7を設置している。
なお、ハロゲンランプ8は、暗室の中で、昼と夜の環境を再現するため、車室内側の光拡散板4から1m離れた所に設置したものであり、本発明の自動車内装用照明装置の構成には含まれない。」


(d)【図1】には、透明PETシートに木目調の印刷による装飾意匠層1を施したものと白色LED7との間に、2枚の透明ポリカーボネイト板2-1、2-2に、光拡散剤を分散させた可塑化ポリビニルブチラール樹脂シート3を挟持させ、車室内とは反対面に、文字及び図形の部分だけに光透過性を持たせた光スリット5を施した光拡散板4を配した構成が記載されている。

(1-4)引用文献4の記載
本件特許に係る出願の優先日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献4(国際公開2011/078988号)には、「半透過性物品及びライトアセンブリ」に関して、図面とともに、次の記載がある。(なお、引用文献4は、英文であるため特表2013-515289号(甲第5号証)を仮訳として用いる。)
(a)「 [0003] Illuminated signs, of thetype that comprise an internal light source and a translucent outer cover withtext and/or graphics formed on it, are another application of directed arealighting. One common internal light source for this application is a row offluorescent bulbs, with the uniformity requirements being met by placingdiffuser plates between the bulbs and the outer cover. 」(【0003】内部の光源と、その上に形成される文字及び/又は図柄を有する半透明の外側カバーと、を備える型式の照明看板は、方向性を有するエリアライティングのもう一つの用途である。この用途での1つの一般的な内部光源は、一列の蛍光電球であり、要求される均一性はそれらの電球と外側カバーとの間に拡散板を置くことによって達成される。)
(b)「[0027] Typically,transflective surfaces are smooth partial reflectors or structured surfaces(e.g., microstructures). However, in some embodiments, the transflectivesurface may have a textured surface(s), or at least a portion may have texturedsurface(s). The texturing may be random, or have a regular symmetricorientation (e.g., a repeating pattern). Typically, the texturing facilitateshomogeneous, uniform lighting or otherwise provides light dispersion effect(s).Transflective surfaces can be provided, for example, as separate piece (e.g., apiece of plastic or the like) or a film. The transflective surfaces can also beprovided, for example, by any of a number of techniques, including molding,sand blasting, bead blasting, chemical etching, embossing, and laser ablating,as well as other forming techniques that may be apparent to one skilled in theart after reading the instant disclosure. 」(【0021】典型的に、半透過性表面は平滑な部分的反射体又は構造化表面(例えば微細構造体)である。しかしながら、いくつかの実施形態では、半透過性表面は非平坦表面を有してもよく、少なくとも一部分に非平坦表面を有してもよい。非平坦化はランダムであってもよく、又は規則正しい対称的な方向付け(例えば反復パターン)を有してもよい。典型的には、非平坦化は均質で均一なライティングを容易にするか、さもなければ光分散効果をもたらす。半透過性表面は、例えば別個の一片(例えばプラスチックなどの一片)又はフィルムとして提供することができる。半透過性表面は、例えば、成形、サンドブラスト、ビードブラスト、化学エッチング、エンボス加工、及びレーザーアブレーション、及び他の、本開示を読んだ当業者には明白であり得る成形技法を含む、任意の数の技法によってもまた提供され得る。)
(c)「 [0052] For example, referring to FIGS. 7 and7A, exemplary automobile tail light assembly 110 has curved outer light cover112, reflector 116 having inner major surface 117, and light emitting diode 118. Outer light cover 1 12 is made up of twopieces 10 (see FIG. 1 for further details) and 1 14. Optionally,automobile tail light assembly 110 includes diffuser 1 19. 」(【0046】例えば、図7及び7Aを参照して、例示の自動車のテールライトアセンブリ110は、湾曲した外側ライトカバー112と、内側主表面117を有する反射体116と、発光ダイオード118と、を有する。外側ライトカバー112は、2つピース10及び114から構成されている(更なる詳細に関して図1を参照)。所望により、自動車のテールライトアセンブリ110は拡散体119を含む。)
(d)「 [0055] Referring to FIG. 9, exemplary lightassembly 130 has curved outer light cover 132, reflector 136 having inner majorsurface 137, and light emitting diode 138. Transflective article 10 (see FIG. 1for further details) is attached to inner major surface 133 of outer lightcover 132.」(【0049】図9を参照して、例示のライトアセンブリ130は、湾曲した外側ライトカバー132と、内側主表面137を有する反射体136と、発光ダイオード138と、を有する。半透過性物品10(更なる詳細に関しては図1を参照)は、外側ライトカバー132の内側主表面133に取り付けられる。」
(e)「 [0095] Achieving a desiredgradient can be accomplished, for example, by changing the light re-directingproperties of a diffusing coating locally or gradually across the surface area.This could be accomplished with, for example, a change in thickness,composition, or surface properties. Perforations would be another option, forexample, a diffusing film having a gradient of perforations placed over theback reflector. 」(【0090】所望のグラジエントの達成は、例えば、局所的又は徐々に表面積にわたる拡散性コーティングの光再方向性を変えることによって実現し得る。これは、例えば、厚さ、組成物、又は表面特性によって達成することができる。例えば背面反射体の上に置かれる穿孔のグラジエントを有する拡散性フィルムなど、穿孔はもう1つの選択肢であろう。)

(1-5)引用文献5の記載
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された引用文献5(実用新案登録第3113521号公報)には、「ドアノブによる方向指示ランプの構造」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0001】
本考案はドアノブによる方向指示ランプの構造に係り、特に車のボディーのドアノブに回路板を設け、該回路板を通じ、該回路板上の数個の発光体を光らせることで、運転時の安全性を高めるための方向指示ランプの構造に関わる。
・・・
【0004】
本考案の請求項1に記載のドアノブによる方向指示ランプの構造は、
本体前側に設けられる設置溝と、
該設置溝上に設けられ、それぞれ発光体が連結される複数の回路板と、
該設置溝内に設置されるものであり、凸型部とプリズム状の光導引層とを具有し、該光導引層により該発光体の光で満たされる光導引板と、
該設置溝内に設けられるものであり、略長方形を呈する溝を具有し、且つ該光導引板前方に設置される外蓋と、
を具有する本体より構成され、
且つ各該回路板上には電源コードを延伸させ、該電源コードを本体に設けたコードガイド溝中に収容し、更に該電源コードが該設置溝の孔を穿設することで該本体外側に延伸し、また該略長方形の溝を該光導引板の凸型部位置に設置した際、該外蓋外面と該光導引板の凸型部外面が平坦且つ流線型を呈すものであり、
尚且つ該回路板の電源コードを車両内のIC制御装置と連結させることにより、該IC制御装置が車両のヘッドライトが点灯された際に該設置溝中間位置に設けたB回路板の発光体が点るようにし、方向指示ランプを点滅させた際には該発光体が自動で消え、且つ該設置溝両側位置のA回路板の発光体が点り、方向指示ランプとともに点滅し、事故の危険を未然に防ぐべく周囲の車両等に警告を促すことを特徴とする。」
(b)「【0012】
図1,2に示すように、本考案のドアノブによる方向指示ランプの構造1は、本体11前側に設置溝110を設け、該設置溝110にはA回路板15とB回路板16、並びに光導引板12と外蓋13が設置され、該設置溝110内部にはボルトホール113、コードガイド溝114、孔115を具有し、該設置溝110内部の中間の位置にはBフラット112が設けられ、該Bフラット112の至端部にはB回路板16が貼設される。該Bフラット112の両側にはAフラット111が設けられ、該Aフラット111至端部上にはA回路板15が張設され、且つ各該回路板15,16上には発光体17が設けられる。該回路板15,16上には電源コード14が延伸し、該電源コード14はコードガイド溝114中に収容され、該電源コード14は更に該収容溝110の孔115を貫通し、該本体1外部に延伸する。・・・」

(c)

(1-6)引用文献6の記載
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された引用文献6(特開2010-209609号公報)には、「ドアハンドル」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0003】
パッシブエントリーシステムを構築するに際し、車両のドアに取り付けられたドアハンドル装置内にアンテナと静電容量センサを配置したものが多く用いられている。例えば、静電容量センサは、ドアハンドル内部に収容された金属板などを検出電極とし、ドアハンドルに手を触れることによる静電容量の変化を検知してアンテナを交信状態に遷移させる。」
(b)「【0052】
図6は、図5において矩形の点線で囲まれる部分を拡大した図である。同図に示されるように、ドアハンドル10の外郭のパーツ21の内部に、センサ基板71、およびLEDユニット90が配置されている。
【0053】
センサ基板71は、静電容量検出回路などを有する基板とされ、センサ基板71上の回路パターンとしてロック電極72が形成される。また、センサ基板71は、防塵、防湿などのため、透明の樹脂などで構成されるセンサケース81により保護されている。」

(1-7)引用文献7の記載
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された引用文献7(特開2005-282205号公報)には、「車両用ドアハンドル装置」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル装置に関し、特に、ユーザーの施錠若しくは解錠の意志を自動認識するための静電容量センサを内蔵した車両用ドアハンドル装置に関するものである。」
(b)「【0010】
操作ハンドル4は、合成樹脂材で形成された本体部6と、合成樹脂材で形成され且つ外面に金属メッキが施された下部カバー7と、静電容量変化を検知する回路基板を合成樹脂材でインサートモールドしてなるセンサユニット8と、センサユニット8を本体部6内に保持するための保持部材9とからなっている。」

(1-8)引用文献8の記載
本件特許に係る出願の優先日前に頒布された引用文献8(特開2007-83740号公報)には、「サイドターンランプ付きドアミラー」に関して、図面とともに、次の記載がある。
(a)「【0001】
本発明は、LED式のサイドターンランプ付きドアミラーに関するものである。」
(b)「【0003】
ところで、このようなドアミラーに取り付けられるサイドターンランプにおいても、その配光特性が厳密に規定されており、この配光特性を満たすためには、サイドターンランプ2は、例えば図5に示すように構成されている。
図5において、サイドターンランプ2は、左側のドアミラー1に取り付けられるサイドターンランプであって、ドアミラー1の前側のミラーカバー1aの表面に沿って湾曲して、ハウジング3,アウターレンズ4及びLED光源5から構成されている。」
(c)「【0014】
上記構成によれば、LEDが発光すると、LEDから出射した光が、アウターレンズの内側端面から内部に入射し、徐々に肉薄になる先端に向かって全反射を繰り返して進むことになる。そして、上記アウターレンズの先端付近に達した光は、アウターレンズから外部へ出射して、所定範囲内に照射される。」
(d)「【0026】
ここで、各LED15bから出射した光Lは、上記アウターレンズ13の内側端面13aからアウターレンズ13内に入射し、図2において矢印で示すように、全反射を繰り返しながら、より肉薄の先端に向かって進むことになる。
その際、上記アウターレンズ13が先端に向かって徐々に肉薄になるように形成されていることにより、その内側端面13aから入射した光が、先端に向かって集束されることになり、より効率良く先端に向かって導かれるようになっている。」

(2)対比
(a)引用発明の「ハンドルベース150」は、「車両110のドア114の外面に取り付けられる車両のドアハンドルであるトリム部品120」のものであって、引用文献1の「【0025】車両は・・自動車・・であり得る」ものであるので、本件発明1の「自動車に付属する部品」に相当する。
そして、引用発明の「ハンドルベース150の外面側の形状と対をなす形状に成形されたハンドルキャップ160」は、本件発明1の「自動車に付属する部品の表面形状に成形された成形カバー」に相当する。
(b)引用発明の「ハンドルキャップ160の内面に沿って配された面発光素子である照明源136」と、本件発明1の「成形カバーの裏面に沿って接着又は嵌入固定された面発光素子」とは、「成形カバーの裏面に沿って配された面発光素子」である点で共通する。
(c)引用発明の「車両110のドア114の外面に取り付けられる車両のドアハンドルであるトリム部品120」は、引用文献1の「【0025】車両は・・自動車・・であり得る」ものであるので、本件発明1の「自動車用機能部品」に相当する。
(d)引用発明の「基板130」は、「高分子材料からできており、半透明又は十分に透明」であるので、本件発明1の「光透過性の樹脂成形材」に相当する。
引用発明の「仕上げ材132」は、「照明源136から発せられる光を透過するため、照明源136が照明状態にある場合、観察者には照明源136からの光が見えることにより標示122が見え、仕上げ材132は、照明源136が非照明状態にある場合に照明源136及びマスク134を隠すことにより、トリム部品120に標示のないトリム部品と同じ外観を与える」機能のものであるので、光透過性かつ面発光素子の非発光時に透明でない性質を備えることが自明であり、引用発明の「パターン又は画像を含んでい」る「基板130に載せられる、薄膜」も、光透過性であるといえる。
そうすると、引用発明の「基板130に載せられる、薄膜」は、本件発明1の「透光性フィルム」に相当するので、引用発明の「ハンドルキャップ160は、基板130の外面126上に仕上げ材132及び内面128上にマスク134を有し、
基板130は、高分子材料からできており、半透明又は十分に透明であり、
仕上げ材132は、基板130に載せられる、薄膜であって、膜は、パターン又は画像を含んでいて、基板130に膜を施すプロセスは、ハイドログラフプロセスであり、このプロセスでは、炭素繊維に似た外観等の所望の外観を有する膜を液体上に浮かばせ、基板130を液体に浸漬させることで、基板130を液体から取り出すと膜が基板130に付着するようにされ」た構成と、本件発明1の「成形カバーは、光透過性の樹脂成形材が、電鋳処理されることなく、光透過性フィルムで加飾(型内加飾を除く)成形された、面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品からな」る構成とは、
「成形カバーは、光透過性の樹脂成形材が、光透過性フィルムで装飾された、面発光素子の非発光時に透明でない成形品からな」る点で共通する。
(e)引用発明の「照明源136が照明状態にある場合、観察者には照明源136からの光が見えることにより標示122が見え」は、【0044】の「照明源36からの光はマスク34の非マスク部分48を透過するが、光はマスク部分46にはあまり又はほとんど透過しない。非マスク部分48を通して輝く光は、基板30の面40及び基板30の外面26の仕上げ材32も同様に透過するため、図3又は図4に示すように、観察者は標示22を知覚することができる」ものであって、非マスク部分48を通して輝く光が、基板30の面40を透過(すなわち、一部分を透過)することにより標示122が見えるものである。
そうすると、引用発明の「照明源136が照明状態にある場合、観察者には照明源136からの光が見えることにより標示122が見え」ることは、非マスク部分48を通して輝く光が、基板130の一部分を透過することにより見えるものであるので、本件発明1の「面発光素子の発光時には面発光素子からの光が」「成形カバーの一部分を透過」することに相当する。
したがって、引用発明の「仕上げ材132は、その後側にある照明源136から発せられる光を透過するため、照明源136が照明状態にある場合、観察者には照明源136からの光が見えることにより標示122が見え、仕上げ材132は、照明源136が非照明状態にある場合に照明源136及びマスク134を隠すことにより、トリム部品120に標示のないトリム部品と同じ外観を与える」ことと、本件発明1の「面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用機能部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がる」こととは、
「面発光素子の発光時には面発光素子からの光が成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用機能部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がる」点で共通する。

一致点:したがって、本件発明1と引用発明とは、
「自動車に付属する部品の表面形状に成形された成形カバーと、
成形カバーの裏面に沿って配された面発光素子とからなる自動車用機能部品であって、
成形カバーは、光透過性の樹脂成形材が、光透過性フィルムで装飾された、面発光素子の非発光時に透明でない成形品からなり、
面発光素子の発光時には面発光素子からの光が成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用機能部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がる自動車用機能部品。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1:面発光素子が、本件発明1は「成形カバーの裏面に沿って接着又は嵌入固定された」ものであるのに対して、引用発明は、ハンドルキャップ160の内面に沿って配する手段が特定されていない点。

相違点2:成形カバーが、本件発明1は「光透過性の樹脂成形材が、電鋳処理されることなく、光透過性フィルムで加飾(型内加飾を除く)成形された」「加飾成形品」であり、面発光素子の非発光時に透明でない成形品が
「面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品」であるのに対して、引用発明の「ハンドルキャップ160」は、「ハンドルキャップ160は、基板130の外面126上に仕上げ材132及び内面128上にマスク134を有し、
基板130は、高分子材料からできており、半透明又は十分に透明であり、
仕上げ材132は、基板130に載せられる、薄膜であって、膜は、パターン又は画像を含んでいて、基板130に膜を施すプロセスは、ハイドログラフプロセスであり、このプロセスでは、炭素繊維に似た外観等の所望の外観を有する膜を液体上に浮かばせ、基板130を液体に浸漬させることで、基板130を液体から取り出すと膜が基板130に付着するようにされ」たものであって、「電鋳処理されることなく」、「加飾(型内加飾を除く)成形された」「加飾成形品」といえるか否か明らかでない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。

(3-1)相違点1について
(a)引用発明の「ハンドルキャップ160の内面に沿って配された面発光素子である照明源136」が、何らかの手法で、ハンドルベース150とハンドルキャップ160との間に固定されていることは自明である。
(b)固定手法として、接着が周知慣用のもの(必要があれば、引用文献5【0012】には「設置溝110・・にはB回路板16が貼設される。」参照)であることを考慮すると、上記(a)に記載したように自明である引用発明の面発光素子である照明源136の固定を、接着又は嵌入によるものとして本件発明1の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

(3-2)相違点2について
(a)引用発明の「ハンドルキャップ160」の「仕上げ材132」の「膜」は、「パターン又は画像を含んで」おり、「膜が基板130に付着」してハンドルキャップ160を加飾して加飾成形品とするものであり、かつ、「基板130に膜を施すプロセスは、ハイドログラフプロセスであり、このプロセスでは、炭素繊維に似た外観等の所望の外観を有する膜を液体上に浮かばせ、基板130を液体に浸漬させることで、基板130を液体から取り出すと膜が基板130に付着するようにされ」たものであり、基板130を液体から取り出すと膜が基板130に付着するものであるから電鋳処理されていないものであり、さらに、「ハイドログラフプロセス」は、引用文献1の「【0034】・・代替的に、膜は基板30とともにインサート成形してもよい。」と共に記載された、「インサート成形」と代替される実施形態であって、インサート成形でないので、型内加飾でもない。
そうすると、引用発明の「ハンドルキャップ160」は、「光透過性の樹脂成形材が、電鋳処理されることなく、光透過性フィルムで加飾(型内加飾を除く)成形された」「加飾成形品」といえるものであって、相違点2は、実質的な相違点ではない。
(b)また、仮に引用発明で「加飾・・成形された」「加飾成形品」との表現が用いられていない点を、相違点としても、引用文献2(特開2006-95690号公報)に「【0002】従来の裏面から照光可能な加飾成形品は・・・。しかし近年は、裏面から光源で照らすと透光部のパターンが浮き出る視認性を有するが、裏面から光源で照らされていない状態では透光部のパターンが周囲の遮光部と同化して、その存在がわからなくなるような意匠を呈する照光可能な加飾成形品が望まれている。」、「【0017】・・本発明の成形同時加飾成形品4は、成形樹脂層2の表面側に接着層35a、透光性の金属膜層37、オーバーコート層36と剥離層31aが順に設けられている。」、「【0019】一方、裏面からの照光が無い場合には、金属膜層37は遮光層38を覆い隠し、金属膜層全体が、金属色など金属膜層自体が有する属性に応じた意匠を呈する。加飾シート(転写シートまたはインサートシート)を用いて成形同時加飾成形品4の表面側に透光性の金属膜層37を形成する場合・・」、「【0047】・・裏面から光源により照らされた状態では、文字パターンが浮き上がり、当該文字パターンを明確に視覚認識することができた。この照明器具筐体は、光源により照らされていない状態では全体がクロムメッキ調の重厚感のある金属調意匠を呈していた。」と記載され、加飾成形品が従来から知られたものであるとともに、透光性の金属膜層を、加飾シートを用いて加飾成形することが記載されている。
そして、引用発明の非照明状態にある場合に照明源136及びマスク134を隠す仕上げ材132を、同様に照光が無い場合に覆い隠す引用文献2記載の透光性の加飾シートを用いて加飾成形して、「加飾・・成形された」「加飾成形品」として、本件発明1の相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
なお、「ハイドログラフプロセス」が、型内加飾を必要としないことは上記(a)のとおりであり、上記引用発明の仕上げ材132を、引用文献2記載の透光性の加飾シートを用いて加飾成形して、「加飾・・成形された」「加飾成形品」にあたり、「ハイドログラフプロセス」による成形が困難となるようなものでもない。

2 本件発明2について
(1)対比
(a)引用発明の「ハンドルベース150」は、「外側が開放する枠形状のもの」であって、本件発明2の「自動車本体に取り付けられる支持枠」に相当する。
そして、引用発明の「ハンドルキャップ160」は、「ハンドルベース150の外面側の形状と対をなす形状」に成形された「ハンドルキャップ」であって、引用文献1の【図10】に、ハンドルベース150の外面を覆うキャップの形態で記載されたものであるので、引用発明の「ハンドルキャップ160」が「ハンドルベース150の外面側の形状と対をなす形状」であることは、本件発明2の「成形カバーは、」「自動車本体に取り付けられる支持枠の表面に覆設されるもの」であることに相当する。

一致点:したがって、本件発明2と引用発明とは、上記「1 (2)」の一致点に加えて、
「成形カバーは、自動車本体に取り付けられる支持枠の表面に覆設されるものであ」る点で一致し、上記「1 (2)」の相違点1、2に加えて、以下の点で相違する。

相違点3:成形カバーが、本件発明2は「樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したもの」であるのに対して、引用発明の「ハンドルキャップ160」は、「基板130の外面126上に仕上げ材132及び内面128上にマスク134を有し、
基板130は、高分子材料からできており、半透明又は十分に透明であり、
仕上げ材132は、基板130に載せられる、薄膜であって、膜は、パターン又は画像を含んでいて、基板130に膜を施すプロセスは、ハイドログラフプロセスであり、このプロセスでは、炭素繊維に似た外観等の所望の外観を有する膜を液体上に浮かばせ、基板130を液体に浸漬させることで、基板130を液体から取り出すと膜が基板130に付着するようにされ」た構成であって、「樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したもの」といえるか否か明らかでない点。

相違点4:面発光素子が、本件発明2は「支持枠の内部に形成されたステーに支持されて、成形カバーとの距離を保持したまま支持枠内に固定される」ものであるのに対して、引用発明の「照明源136」は、「支持枠の内部に形成されたステーに支持されて、成形カバーとの距離を保持したまま支持枠内に固定される」ものか否か明らかでない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
相違点1、2は、上記「1 (3)」の判断のとおりである。

(2-1)相違点3について
引用文献2には、「【0019】・・裏面からの照光が無い場合には、金属膜層37は遮光層38を覆い隠し、金属膜層全体が、金属色など金属膜層自体が有する属性に応じた意匠を呈する。加飾シート(転写シートまたはインサートシート)を用いて成形同時加飾成形品4の表面側に透光性の金属膜層37を形成する」、「【0047】・・この照明器具筐体は、光源により照らされていない状態では全体がクロムメッキ調の重厚感のある金属調意匠を呈していた。」(上記「1.(1-2)」)と、加飾成形品を、透光性の金属膜層によって、金属調意匠とすることが記載されている。
そして、引用文献1の【0033】には「仕上げ材32は基板30に施されるコーティングである。・・コーティングは・・アルミニウム又はクロム等の金属の形態であってもよい。」と記載されており、仕上げ材32を金属形態とすることが記載されているので、引用発明の仕上げ材132を金属形態とするために、引用文献2記載の透光性の金属膜層を用いて、本件発明2のメッキ調の光透過性フィルムによって面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものとして本件発明2の相違点3に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

(2-2)相違点4について
引用発明の「ハンドルベース150」は、「外側が開放する枠形状のもの」であって、本件発明2の「自動車本体に取り付けられる支持枠」に相当する。
そして、引用発明の「ハンドルベース150」は、外側が開放した空間に「照明源136側に突出するリブ状の部分を備え」ており、上記「1.(3)(3-1)(a)」の照明源136を、ハンドルベース150とハンドルキャップ160との間に固定するのを具現化するにあたり、照明源136に隣接する部材の一方であるハンドルベース150の照明源136側に突出したリブ状の部分を、支持する部分として選択して、ステー(支柱)とすることは容易であり、突出したリブ状の部分で支持することにより成形カバーとの距離を保持した状態の固定とすることも容易である。
そうすると、照明源136を、ハンドルベース150とハンドルキャップ160との間に固定するのを具現化するにあたり、照明源136に隣接する部材の一方であるハンドルベース150の照明源136側に突出したリブ状の部分を、支持する部分として選択して、本件発明2の「面発光素子は、この支持枠の内部に形成されたステーに支持されて、成形カバーとの距離を保持したまま支持枠内に固定される」構成として本件発明2の相違点4に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

3 本件発明3について
(1)対比
本件発明3と引用発明とは、上記「1 (2)」の一致点で一致し、上記「1 (2)」の相違点1、2に加えて、以下の点で相違する。

相違点5:自動車用部品が、本件発明3は「成形カバーの裏面側と面発光素子の表面側との間に、光拡散効果を有する光透過性フィルムを配してなり、面発光素子からの光は光透過性フィルムを通り、拡散した状態で成形カバーの表面側に透過する」ものであるのに対して、引用発明の「トリム部品120」は、そのように特定されていない点。

(2)判断
相違点1、2は、上記「1 (3)」の判断のとおりである。
次に、上記相違点5について検討する。
(a)引用文献3には、「【0020】・・・光拡散板により、光源からの光が拡散され、例えば、該光拡散板の裏側に設けられた光源がはっきりと見えることなく、ぼんやりとした光になるように作用する。」との作用とともに、【図1】の「透明PETシートに木目調の印刷による装飾意匠層1を施したものと白色LED7との間に、2枚の透明ポリカーボネイト板2-1、2-2に、光拡散剤を分散させた可塑化ポリビニルブチラール樹脂シート3を挟持させ、車室内とは反対面に、文字及び図形の部分だけに光透過性を持たせた光スリット5を施した光拡散板4を配した」構成が記載されている。
引用文献3の「装飾意匠層1を施したもの」は「【0020】・・・光源の光が、光拡散板の表面上に施された装飾意匠層を通過して放出される。」ものであり、本件発明3の「成形カバー」は、本件発明1に係る「・・・成形カバーは・・・面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品からなり、
面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用機能部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がる」成形カバーであるので、両者は、「光源からの光を透過する装飾部材」である点で共通する。
そして、引用文献3の「光拡散板4」が配された、「透明PETシートに木目調の印刷による装飾意匠層1を施したものと白色LED7との間」と、本件発明3の「成形カバーの裏面側と面発光素子の表面側との間」とは、「光源からの光を透過する装飾部材と光源との間」である点で共通する。
引用文献3の「光拡散剤を分散させた可塑化ポリビニルブチラール樹脂シート3」は、本件発明3の「光拡散効果を有する光透過性フィルム」に相当する。
そして、引用文献3の「光拡散剤を分散させた可塑化ポリビニルブチラール樹脂シート3」は、「透明PETシートに木目調の印刷による装飾意匠層1を施したものと白色LED7との間に・・・配した」光拡散板4の中の層をなすものであるので、引用文献3【図1】に図示された構成は、本件発明3の記載に倣うと、「光源からの光を透過する装飾部材と光源との間に、光拡散効果を有する光透過性フィルムを配してな」る構成といえる。
(b)また、引用文献4には、「【0003】内部の光源と、その上に形成される文字及び/又は図柄を有する半透明の外側カバーと、を備える型式の照明看板は、方向性を有するエリアライティングのもう一つの用途である。この用途での1つの一般的な内部光源は、一列の蛍光電球であり、要求される均一性はそれらの電球と外側カバーとの間に拡散板を置くことによって達成される。」と記載されており、光源からの光を拡散させるために、光源からの光を透過して外部に出射する部材と光源との間に、光拡散手段を設けることは、従来周知の技術でもある。
(c)引用文献1の【0032】には「仕上げ材32は、所望の視覚効果及び触覚効果を生み出すようにテクスチャ加工することができる。例えば・・照明源36からの光を濾過するか又は拡散させること等により所望の光出力を生成することができる。」と記載されており、引用発明の「照明源136が照明状態にある場合、観察者には照明源136からの光が見えることにより標示122が見え、仕上げ材132は、照明源136が非照明状態にある場合に照明源136及びマスク134を隠すことにより、トリム部品120に標示のないトリム部品と同じ外観を与える・・・トリム部品120」においても、照明源136からの光を拡散させることが示唆されている。
(d)引用文献1の【0032】において、照明源36からの光を拡散させる機能は、仕上げ材32をテクスチャ加工することでなされているが、上記のごとく、光源からの光を拡散させるための光拡散手段を、光源からの光を透過して外部に出射する部材と光源との間に設けることが従来周知の技術でもあることを考慮すると、【0032】の「・・・照明源36からの光を・・・拡散させること等により所望の光出力を生成することができる。」を、従来周知の光源からの光を透過して外部に出射する部材と光源との間に、光拡散手段を設ける手法で具現化することに特段の困難性は認められない。
そうすると、引用発明の「照明源136が照明状態にある場合、観察者には照明源136からの光が見えることにより標示122が見え」るトリム部品120において、照明源36からの光を拡散させるために、引用文献3の「光源からの光を透過する装飾部材と光源との間に、光拡散効果を有する光透過性フィルムを配してな」る構成を用いて、上記の具現化をなし、本件発明3の成形カバーの裏面側と面発光素子の表面側との間に、光拡散効果を有する光透過性フィルムを配してなり、面発光素子からの光は光透過性フィルムを通り、拡散した状態で成形カバーの表面側に透過する構成として、本件発明3の相違点5に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。

4 本件発明4について
(1)対比
(a)本件発明4の「面発光源」は、本件明細書「【0031】・・・基板21の表面側に一列に配された複数の面発光源22・・・。面発光源22は矩形枠内に平面配置されたLED発光素子からなり」と記載され、【図1】において各LED発光素子に符号22が付され、「【0039】・・・図7bのように、連設された面発光素子22のうち、前記第一の面発光素子22A間に離間単独配置された第二の面発光素子22B」と記載されているように、各LED発光素子を実施例とするものである。
一方、引用発明の各「発光ダイオード」は、【図10】で矩形状表面を有する形態で記載され、矩形状表面を有する発光ダイオードとして、表面が面で発光することは、技術常識ということもできる。
それらを考慮すると、引用発明の各「発光ダイオード」は、実質的に本件発明4の「面発光源」に相当し、引用発明の「複数の発光ダイオード」は、本件発明4の「複数の面発光源」に相当する。
また、引用発明の照明源136の「平板状の基板」は、「複数の発光ダイオード」に対して、「基板の一端から延長する配線」が1本のみ設けられているもの(【図11】参照)であり、各発光ダイオードに給電されるためには、基板上で各発光ダイオードに至って配線される基板配線を備え、「基板の一端から延長する配線」は、基板配線と電気的に繋がっていると考えるのが通常である。
そうすると、引用発明の「照明源136は、平板状の基板と、この基板の外面側に配された複数の発光ダイオードと、基板の一端から延長する配線とを有し」た構成と、本件発明4の「前記面発光素子は、シート状の基板と、この基板の表面側に配された複数の面発光源と、基板上で前記各面発光源間を亘って配線される基板配線と、この基板配線と電気的に繋がって基板の一端から延長する延長配線とを有して」なる構成とは、「面発光素子は、シート状の基板と、この基板の表面側に配された複数の面発光源と、基板上で前記各面発光源に至って配線される基板配線と、この基板配線と電気的に繋がって基板の一端から延長する延長配線とを有し」た構成で共通する。
(b)引用発明の「配線を挿通する配線孔」は、本件発明4の「各種配線を挿通する配線孔」に相当する。
そして、引用発明の「ハンドルベース150は、外側が開放する枠形状のものであって、外側が開放した空間と、空間の一端寄りに設けられて配線を挿通する配線孔とを有して」なる構成と、本件発明4の「支持枠は、前記基板を収容可能な収容空間と、前記収容空間の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有して」なる構成とは、「支持枠は、空間と、前記空間の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有して」なる構成で共通する。
(c)引用発明の「トリム部品120」は、「車両110のドア114の外面に取り付けられる車両のドアハンドルであるトリム部品120」であって、引用文献1の「【0025】車両は・・自動車・・であり得る」ものであるので、本件発明4の「自動車用機能部品」にも相当する。
(d)引用発明の照明源136は、引用文献1の「【0041】・・照明源36は、ユーザがイグニションをオンにしたとき、方向指示器スイッチを作動させたとき、・・点灯するようになっていてもよい。」とされたものであり、イグニションや方向指示器スイッチは、通常自動車本体内に設けられたものであるので、引用発明の「基板の一端から延長する配線」は、実質的に自動車本体内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれたものといえる。
そうすると、引用発明の「基板の一端から延長する配線」の電気的接続は、本件発明4の「基板の延長配線は、前記配線孔に挿通され、自動車本体内又は収容空間内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれる」構成に相当する。

そうすると、本件発明4と引用発明とは、上記「1 (2)」の一致点に加えて、
「面発光素子は、シート状の基板と、この基板の表面側に配された複数の面発光源と、基板上で前記各面発光源に至って配線される基板配線と、この基板配線と電気的に繋がって基板の一端から延長する延長配線とを有してなり、
支持枠は、空間と、前記空間の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有してなり、
基板の延長配線は、前記配線孔に挿通され、自動車本体内又は収容空間内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれる」「自動車用機能部品」である点で一致し、相違点1、2に加えて、以下の点で相違する。

相違点6:本件発明4は、基板配線が「各面発光源間を亘って配線される基板配線」であるのに対して、引用発明は、基板配線が「各面発光源間を亘って配線される」と特定されない点。

相違点7:本件発明4は、支持枠の空間が「基板を収容可能な収容空間」であり、基板が「収容空間に収容した基板」であるのに対して、引用発明は、ハンドルベース150の外側が開放した空間が基板を収容するものであるか否か特定されない点。

(2)判断
相違点1、2は、上記「1 (3)」の判断のとおりである。
次に、上記相違点6、7について検討する。
(a)引用文献5には「【0004】本考案の請求項1に記載のドアノブによる方向指示ランプの構造は・・それぞれ発光体が連結される複数の回路板と・・を具有する本体より構成され・・」、「【0012】・・図1,2に示すように、本考案のドアノブによる方向指示ランプの構造1は、本体11前側に設置溝110を設け、該設置溝110にはA回路板15とB回路板16、並びに光導引板12と外蓋13が設置され、・・且つ各該回路板15,16上には発光体17が設けられる。該回路板15,16上には電源コード14が延伸し、該電源コード14はコードガイド溝114中に収容され、該電源コード14は更に該収容溝110の孔115を貫通し、該本体1外部に延伸する。」(当審注:「設置溝110」と「収容溝110」とは同じもの。)と記載され、【図2】には、それぞれ2個の発光体17を備えた3枚の回路板15,16、各回路板15、16間を亘って配線される電源コード14、設置溝110の孔115を貫通し、該本体1外部に延伸する電源コード14が記載されている。そして、引用文献5の3枚の回路板15,16は、それぞれ2個の発光体17を備えたものであって、面発光源といえるものであるので、本件発明4の「複数の面発光源」に相当する。
引用文献5の各回路板15、16間を亘って配線される電源コード14と、本件発明4の「基板上で前記各面発光源間を亘って配線される基板配線」とは、各面発光源間を亘って配線される配線である点で共通する。
引用文献5の設置溝110は、「設置溝110にはA回路板15とB回路板16・・が設置され」るものであるので、本件発明4の「基板を収容可能な収容空間」に相当する。
(b)引用発明の車両のドアハンドルであるトリム部品120と、引用文献5のドアノブは、照明源を備えたドアハンドルである基本構造において共通するものであって、引用発明の基板内の配線を、引用文献5の各回路板15、16間を亘って配線される電源コード14の様に、各面発光源間を亘って配線されるものとして本件発明4の相違点6に係る構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
(c)さらに、引用発明のハンドルベース150の外側が開放した空間を、引用文献5の「A回路板15とB回路板16・・が設置され」る設置溝110の様に、基板を収容可能な収容空間として本件発明4の相違点7に係る構成とすることも当業者が容易になし得ることである。
(d)上記「(1)(a)」では、引用発明の各「発光ダイオード」は、実質的に本件発明4の「面発光源」に相当するものとしたが、仮に、引用発明の「発光ダイオード」が、面で発光するものでないとしても、【図10】で矩形状表面を有する形態で記載された発光ダイオードを、封止樹脂の表面が面発光するチップLED(SMD)のような周知慣用のものとして具現化して、「面発光源」とすることは、当業者が容易になし得ることである。

5 本件発明5について
(1)対比
本件発明5と引用発明とは、上記「1 (2)」「4 (1)」の一致点で一致し、上記「1 (2)」の相違点1、2、上記「4 (1)」の相違点6、7、に加えて、以下の点で相違する。

相違点8:自動車用部品が、本件発明5は「前記支持枠の収容空間は、前記面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容するものであり、
前記スイッチ回路は、前記検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子を点滅又は点灯させる」ものであるのに対して、引用発明の「トリム部品120」は、「支持枠の収容空間は、前記面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容するもの」でない点。

(2)判断
相違点1、2、相違点6、7は、上記「1 (3)」「4 (2)」の判断のとおりである。
次に、上記相違点8について検討する。
(a)引用文献1の【0043】には「トリム部品20は、ユーザからの入力を受けるスイッチ及びセンサ等の電子機器(図示せず)をさらに備えることができる。例えば、トリム部品20は、ユーザが作動させると信号を発生するメンブレンスイッチ又は静電容量センサ若しくは電界効果センサを備えることができる。」と記載されており、その「スイッチ及びセンサ等」「メンブレンスイッチ」「静電容量センサ」「電界効果センサ」は、本件発明5の「使用者による所定の操作信号を検知する検知部品」に相当する。
そして、上記「4 (2)(c)」の引用発明のハンドルベース150の外側が開放した空間を、基板を収容可能な収容空間とすることにともない、当該スイッチ及びセンサ等もハンドルベース150の外側が開放した空間に収容(必要があれば、引用文献6の【0003】、引用文献7の【0001】【0010】参照。)して、支持枠の収容空間は、面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容する構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
(b)また、引用文献1の【0041】には「車両10の1つ又は複数の状態又はその環境に応じて、交互に照明状態と非照明状態とになるようになっていてもよい。例えば、照明源36は、ユーザがイグニションをオンにしたとき、方向指示器スイッチを作動させたとき、ブレーキをかけたとき、加速したとき、キーレスエントリシステムの遠隔フォブを起動したとき、ドアハンドル(entry handle)に触れたとき、又は観察者が車両10の所定距離内にいるときに、点灯するようになっていてもよい。」と記載されており、所定条件で照明源を点灯する以上、スイッチング動作を行うスイッチ回路が存在することは明らかであって、引用発明の照明源136を、上記スイッチ及びセンサ等の検知信号と連動して点消灯するものとして、スイッチ回路は、検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子を点滅又は点灯させる構成とすることも、当業者が容易になし得ることである。
(c)そうすると、引用発明のハンドルベース150の外側が開放した空間を、基板を収容可能な収容空間とすることにともない、当該スイッチ及びセンサ等もハンドルベース150の外側が開放した空間に収容して、支持枠の収容空間は、面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容する構成とするとともに、照明源136を、上記スイッチ及びセンサ等の検知信号と連動して点消灯するものとして、スイッチ回路は、検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子を点滅又は点灯させる構成として、本件発明5の相違点8に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

6 本件発明6について
(1)対比
本件発明6と引用発明とは、上記「1 (2)」の一致点で一致し、上記「1 (2)」の相違点1、2に加えて、以下の点で相違する。

相違点9:自動車用部品が、本件発明6は「前記面発光素子は、上面を光導出面とする板状の導光体と、この導光体の側面側に配されて導光体内に入光する発光源と、この発光源と電気的に繋がって導光体の側部から延長する延長配線とを有してなり、
支持枠は、前記導光体及び発光源をそれぞれ所定高さに並べて支持可能な支持構造と、前記支持構造の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有してなり、
前記所定高さに支持した発光源の延長配線は、前記配線孔に挿通され、自動車本体内又は支持構造内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれる」ものであるのに対して、引用発明の「トリム部品120」は、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
相違点1、2は、上記「1 (3)」の判断のとおりである。
次に、上記相違点9について検討する。
(a)引用文献4には、発光ダイオード138を、ライトアセンブリ130の側部に配置した【図9】と、底部に配置した【図8】とが併記され、「【0049】図9を参照して、例示のライトアセンブリ130は、湾曲した外側ライトカバー132と、内側主表面137を有する反射体136と、発光ダイオード138と、を有する。半透過性物品10(更なる詳細に関しては図1を参照)は、外側ライトカバー132の内側主表面133に取り付けられる。」と記載されている。
(b)引用文献8には、LED15bを、アウターレンズ13の側部に配置した【図2】と、アウターレンズ4の裏面側に配置した【図5】とが併記され、「【0014】上記構成によれば、LEDが発光すると、LEDから出射した光が、アウターレンズの内側端面から内部に入射し、徐々に肉薄になる先端に向かって全反射を繰り返して進むことになる。そして、上記アウターレンズの先端付近に達した光は、アウターレンズから外部へ出射して、所定範囲内に照射される。」と記載されている。
(c)異議申立人は、異議申立書(4)(4-3-8)において、
「イ.構成要件Lについては、本件第4発明の項で述べたと同様に甲1に記載されている。すなわち、甲1では、所定高さに支持された照明源136の延長配線が配線孔に挿通され、スイッチ回路及び電源と繋げられている(段落41及び図10)。
ウ.甲1には、導光体と当該導光体の側部に光源を配置する照明手段が記載されていない。
しかしながら、照明の技術分野において、光源を背面に配置することも、側部に配置した光源を導光することも、いずれも従来周知の技術にすぎない。
例えば、甲4(国際公開2011/078988号には、自動車ライト用半透過性物品10が、拡散体135(導光体)の側面側に発光ダイオード138を配置する照明手段を備えることが記載されている(段落55(甲5翻訳文の段落49)及び図9)。
また、甲9(特開2007-83740号公報)には、サイドターンランプ付きドアミラーに用いられる照明手段として、導光体(アウターレンズ13)とその側面側に配置されたLED光源15を用いることが記載されている(段落14、26及び図2)。
エ.よって、本件第6発明は、甲1発明及び従来周知の技術に基いて、当業者が容易に想到しえた発明にすぎず、進歩性を有さない。」旨主張している。
(d)しかし、引用文献1(甲1)には上記「1 (1)(1-1)」の「ハンドルベース150は、外側が開放する枠形状のものであって、外側が開放した空間と、空間の一端寄りに設けられて配線を挿通する配線孔とを有してなり、該空間には、照明源136側に突出するリブ状の部分を備え」た構成が記載されているといえるものの、導光体を備えるものでないので、相違点9の「支持枠は、前記導光体及び発光源をそれぞれ所定高さに並べて支持可能な支持構造・・・有してな」るに相当する構成を備えているとはいえないし、引用文献4、8(甲4、甲9)も、上記のものであって、いずれも相違点9の「面発光素子は、上面を光導出面とする板状の導光体と、この導光体の側面側に配されて導光体内に入光する発光源と・・・を有してなり、
支持枠は、前記導光体及び発光源をそれぞれ所定高さに並べて支持可能な支持構造・・・を有してな」るに相当する構成を備えているといえない。
(e)また、異議申立人は、令和1年12月3日付けの意見書「3 (3-3-2)」「イ」において、「他方で、特許発明6で追加的に特定された事項は従来周知である。」と主張して、新たに参考資料1?3(特開2007-186943号公報、特開2005-258077号公報、特開2008-195374号公報)を提出した。
(f)まず、異議申立書による「従来周知の技術」は、上記(c)の甲4、甲9を例示とした「光源を背面に配置すること」、「側部に配置した光源を導光すること」であるのに対して、上記(e)の参考資料1は【0013】【0015】【0016】【図1】?【図4】【図7】【図8】を引用して「LED314及び導光板32がハンドル部(枠体)21内に所定高さに並べて指示され・・・LED314のリード線315のための孔が設けられることが記載され」ていることを主張するものであり、参考資料2は【0025】及び図1,2を引用して「光源2及び導光体5がハウジング1内に所定高さに並べて支持され、当該ハウジング1の一端寄りに光源2が設けられ、配線8を外部に導く取出口17が設けられることが記載され」ていることを主張するものであり、参考資料3は【0036】?【0040】及び図2を引用して「光源30及び導光体2がケース体1内に所定高さに並べて支持され、当該ケース体1の一端寄りに光源30が設けられ、ワイヤハーネス31を外部に導く取出口12が設けられることが記載され」ていることを主張するものであって、異議申立書による「従来周知の技術」の内容を変更する実質的に新たな理由であるので、当該主張は、基本的に異議申立の理由として採用すべきものでないが、以下念のため検討する。
参考資料1の「ハンドル部21」(申立人が「枠体」といっているもの)は、異議申立人が摘記した参考資料1の記載箇所を参照しても、その詳細な構造を特定できるものでなく、「導光体」及び「発光源」を「それぞれ・・・支持可能な支持構造」であるのか否か、「前記支持構造の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔」を有しているのか否かが読み取れるものではない。
また、参考資料2の「ハウジング1」も、異議申立人が摘記した参考資料2の記載箇所を参照しても、詳細な導光体5の支持構造を特定できるものでなく、ハウジング1のどの部分が「導光体」を「支持可能な支持構造」をなすのか特定できず、「それぞれ・・・支持可能な支持構造」であるのか否か、「前記支持構造の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔」を有してなるのか否かが読み取れるものではない。
また、参考資料3の「ケース体1」も、異議申立人が摘記した参考資料3の記載箇所を参照しても、詳細な光源30及び導光体2の支持構造を特定できるものでなく、「導光体」及び「発光源」を「それぞれ所定高さに並べて支持可能な支持構造」であるのか否か、「前記支持構造の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔」を有しているのか否かが読み取れるものではない。
(g)そうすると、上記参考資料1?3の記載事項を参照しても、相違点9に係る本件発明6の構成は、引用発明及び従来周知の技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものといえず、本件発明6は、引用発明及び従来周知の技術に基いて、当業者が容易に想到し得た発明とはいえない。

7 本件発明7について
(1)対比
本件発明7と引用発明とは、上記「1 (2)」の一致点で一致し、上記「1 (2)」「6 (1)」の相違点1、2、9に加えて、以下の点で相違する。

相違点10:自動車用部品が、本件発明7は「前記支持枠の支持構造は、前記面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を支持するものであり、
前記スイッチ回路は、前記検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子を点滅又は点灯させる」ものであるのに対して、引用発明の「トリム部品120」は、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
相違点1、2、9は、上記「1 (3)」「6 (2)」の判断のとおりである。
そして、上述したとおり相違点9は、引用発明及び従来周知の技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものといえないので、相違点10について検討するまでもなく、本件発明7は、引用発明及び従来周知の技術に基いて、当業者が容易に想到し得た発明とはいえない。

8 本件発明8(請求項5を引用するもの)について
(1)対比
(a)引用発明の「ハンドルベース150」は、「外側が開放する枠形状のもの」であって、本件発明8の「支持枠」に相当し、さらに「ハンドルベース150」は、「車両のドアハンドルであるトリム部品120」のものであるので、本件発明8の「自動車ドアハンドル、ドアハンドル用取付枠、サイドピラー、又はサイドモールのいずれかを構成」するものに相当する。

一致点:したがって、本件発明8と引用発明とは、上記「1 (2)」「4 (1)」の一致点に加えて、
「支持枠は、成形カバーを覆設した状態で自動車ドアハンドル、ドアハンドル用取付枠、サイドピラー、又はサイドモールのいずれかを構成し」た点で一致し、上記「1 (2)」「4 (1)」「5 (1)」の相違点1、2、6、7、8に加えて、以下の点で相違する。

相違点11:自動車用部品が、本件発明8は「前記検知部品は、成形カバー又は支持枠への導電性接触によって自動車ドア鍵の開閉操作信号を検知するものである」のに対して、引用発明の「トリム部品120」は、「前記検知部品」を備えていない点。

(2)判断
相違点1、2、相違点6、7、相違点8は、上記「1 (3)」「4 (2)」「5 (2)」の判断のとおりである。
次に、上記相違点11について検討する。
(a)引用文献1の【0051】には「ユーザがトリム部品のキー170に触れると、電子機器がユーザの指の存在を検知し、ユーザがキー170に所定の順序で触れると、電子機器がロック機構と動作可能に通信してドアをロック解除する。」と記載されており、その「キー170」は、本件発明8の「検知部品」に相当し、「触れ・・指の存在を検知」は、指が導電性であることを前提とするものであるので、「キー170に触れると・・ユーザの指の存在を検知」は、「ドアをロック解除する」ためのものであるので、本件発明8の「成形カバー又は支持枠への導電性接触によって自動車ドア鍵の開閉操作信号を検知するものである」ことに相当する。
(b)そして、上記「5 (2)」の支持枠の収容空間は、面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容する構成とすることに加えて、引用発明のトリム部品120を、【0051】の「キー170」を備えたものとして、本件発明8の相違点11に係る「前記検知部品は、成形カバー又は支持枠への導電性接触によって自動車ドア鍵の開閉操作信号を検知するものである」構成として、本件発明8の相違点11に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

9 本件発明9(請求項5を引用するもの)について
(1)対比
本件発明9と引用発明とは、上記「1 (2)」「4 (1)」の一致点で一致し、上記「1 (2)」「4 (1)」「5 (1)」の相違点1、2、6、7、8に加えて、以下の点で相違する。

相違点12:自動車用部品が、本件発明9は「前記支持枠は、成形カバーを覆設した状態で自動車ドアミラー、リアガーニッシュ、又は表示灯カバーのいずれかを構成し、
前記検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作の操作信号、又は使用者によるウインカー操作の操作信号を検知するものである」ものであるのに対して、引用発明の「トリム部品120」は、「ドアハンドル」であり、「前記検知部品」を備えていない点。

(2)判断
相違点1、2、相違点6、7、相違点8は、上記「1 (3)」「4 (2)」「5 (2)」の判断のとおりである。
次に、上記相違点12について検討する。
(a)引用文献1の【0025】には「『トリム部品』という用語は、車両の外面又は内面に位置する任意の部品を指すことができる。・・トリム部品は、装飾的、機能的、又はそれらの組み合わせであり得る。外部トリム部品の例としては、限定はされないが、ボディサイドモールディング、・・トリム部品の他の例としては・・。内部トリム部品の例としては・・が挙げられる。」と記載されており、トリム部品を車両の装飾的、機能的部品とすることが示唆されている。
そして、自動車ドアミラー、リアガーニッシュ、表示灯カバーは、車両の装飾的、機能的部品として、周知のものであり、引用発明の「トリム部品120」として、それらを選択し、「ハンドルベース150」を、成形カバーを覆設した状態で自動車ドアミラー、リアガーニッシュ、又は表示灯カバーのいずれかを構成するものとして、本件発明9の相違点12に係る「支持枠は、成形カバーを覆設した状態で自動車ドアミラー、リアガーニッシュ、又は表示灯カバーのいずれかを構成」する構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
(b)また、引用文献1の【0051】には「ユーザがトリム部品のキー170に触れると、電子機器がユーザの指の存在を検知し、ユーザがキー170に所定の順序で触れると、電子機器がロック機構と動作可能に通信してドアをロック解除する。」と記載されており、その「キー170」は、本件発明9の「検知部品」に相当し、「キー170に触れると・・ユーザの指の存在を検知」は、「ドアをロック解除する」ためのものであるので、本件発明9の「使用者による自動車ドアの開閉操作の操作信号」「を検知するもの」に相当する。
そして、上記「5 (2)」の支持枠の収容空間は、面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容する構成とすることに加えて、引用発明のトリム部品120を、【0051】の「キー170」を備えたものとして、本件発明9の相違点12に係る「前記検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作の操作信号、又は使用者によるウインカー操作の操作信号を検知するものである」構成とすることも、当業者が容易になし得ることである。

10 本件発明10(請求項1を引用するもの)について
(1)対比
本件発明10と引用発明とは、上記「1 (2)」の一致点で一致し、上記「1 (2)」の相違点1、2に加えて、以下の点で相違する。

相違点13:自動車用部品が、本件発明10は、「成形カバーは、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであり、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成されてなり、
この非光透過性の構成によって、面発光素子の発光領域を制限する」ものであるのに対して、引用発明の「ハンドルキャップ160」は、「基板130の外面126上に仕上げ材132及び内面128上にマスク134を有し、
基板130は、高分子材料からできており、半透明又は十分に透明であり、
仕上げ材132は、基板130に載せられる、薄膜であって、膜は、パターン又は画像を含んでいて、基板130に膜を施すプロセスは、ハイドログラフプロセスであり、このプロセスでは、炭素繊維に似た外観等の所望の外観を有する膜を液体上に浮かばせ、基板130を液体に浸漬させることで、基板130を液体から取り出すと膜が基板130に付着するようにされ」た構成であって、基板130(本件発明10の「樹脂成形材」に相当。)が「一部を」有色透明又は無色透明としたものといえるものでなく、ハンドルキャップ160は「メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したもの」「前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子が配設され」「この非光透過性の構成によって、面発光素子の発光領域を制限する」ものといえるものでない点。

(2)判断
相違点1、2は、上記「1 (3)」の判断のとおりである。
相違点13について
(a)上記「2 (2)(2-1)」と同様に、引用発明の仕上げ材132を金属形態とするために、引用文献2記載の透光性の金属膜層を用いて、本件発明10の「メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したもの」とすることは、当業者が容易になし得ることである。
(b)また、引用文献1の【0029】には「基板は、外面26上の仕上げ材32及び標示22を画定するマスク34を有し、・・」と、【0036】【0037】には「マスク34は、マスク部分46及び非マスク部分48を備え、非マスク部分48は、マスク部分46よりも多くの光を透過するとともに標示22を画定する。・・一実施形態によれば、マスク部分46は、マスク34の後側に位置する照明源36からの光が、一般的に半透明、透明、又は中空(すなわち、開口又は穴)であり得る非マスク部分48のみを通過することを確実にするように、黒色である。」と、【0038】には「マスク34は、・・基板30と一体形成することもできる。」と記載されており、引用発明の基板130(本件発明10の「樹脂成形材」に相当)とマスク134とを、一体に形成すること(すなわち両者を「一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材」とすること)、及び、マスク134を、黒色のマスク部分146(本件発明10の「有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分」に相当)及び透明であり得る非マスク部分48(「半透明又は十分に透明であ」る基板130と共に、本件発明10の「有色透明又は無色透明の部分」に相当)を備えるものとすることが示唆されている。
そうすると、引用発明の「高分子材料からできており、半透明又は十分に透明」である「基板130」と「マスク134」とを一体のものとすると共に、「マスク134」を黒色のマスク部分46及び透明であり得る非マスク部分48を備えるのもとして、成形カバーは、「一部」を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材とし、樹脂成形材の「有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成され」たものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
(c)さらに、引用文献1の【図10】のハンドルキャップの非マスク部分148(本件発明10の「樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分」に相当。)には、照明源136(本件発明10の「面発光素子」に相当。)が配設されており、非マスク部分148によって、面発光素子の発光領域が制限されることも図面から明らかである。
(d)そうすると、引用発明の仕上げ材132を金属形態とするために、引用文献2記載の透光性の金属膜層を用いるとともに、引用文献1の示唆に基づいて、引用発明の「基板130」と「マスク134」とを一体のものとし、マスク134を引用文献1の【図10】の形態のものとして、本件発明10の相違点13に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

11 本件発明11(請求項1を引用するもの)について
(1)対比
本件発明11と引用発明とは、上記「1 (2)」の一致点で一致し、上記「1 (2)」の相違点1、2に加えて、以下の点で相違する。

相違点14:自動車用部品が、本件発明11は「発光領域の形状に抜き孔加工したマスキング材を成形カバーの裏面に当接してなる」のに対して、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
相違点1、2は、上記「1 (3)」の判断のとおりである。
相違点14について
引用文献1の【0038】には「マスク34は、例えば、そこから材料を除去することにより非マスク部分48が形成される、高分子材料又は織物等の不透明材料からできていてもよく・・」と記載されている。
そして、「材料を除去することにより非マスク部分48が形成される・・・不透明材料」からなるマスクは、本件発明11の「発光領域の形状に抜き孔加工したマスキング材」に相当)に相当する。
そして、引用発明の「マスク134」を、引用文献1の【0038】記載の上記構成のものとして、本件発明11の相違点14に係る構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。

12 本件発明12(請求項1を引用するもの)について
(1)対比
本件発明12と引用発明とは、上記「1 (2)」の一致点で一致し、上記「1 (2)」の相違点1、2に加えて、以下の点で相違する。

相違点15:自動車用部品が、本件発明12は「発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材を、発光領域の形状に抜き加工した、透明でない樹脂成形材の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなる」ものであるのに対して、引用発明の「トリム部品120」は、そのような構成を備えていない点。

(2)判断
相違点1、2は、上記「1 (3)」の判断のとおりである。
次に、上記相違点15について検討する。
(a)引用文献1の【0038】には、上記「11 (2)」の記載があり、【0039】には「多くの異なる方法を用いて、マスク34を製造することができる。例えば、マスク34は、インク又は他の材料をスクリーンから表面に通過させるスクリーン印刷プロセス(例えば、シルクスクリーン印刷)、又はスタンプを用いてインク又は他の材料をインクパッドから表面に転写する印刷パッドプロセス等の、印刷プロセスを用いて施すことができる。スクリーン印刷プロセス及び印刷パッドプロセスでは、スクリーン及びパッドは標示22に従って設計される。代替的に、マスク34は、複数の樹脂を1つの金型に射出してマスク部分46及び非マスク部分48を形成する2ショット成形(two shot molding:2個取り成形)プロセスを用いて製造してもよい。関連のプロセスであるインサート成形/オーバーモールディングにおいて、固体の透明部品を金型に挿入して、樹脂等の不透明材料を透明部品の周りに射出してもよい。透明部品のうち不透明材料で覆われない部分は非マスク部分48を形成し、不透明材料はマスク部分46を形成する。代替的に、マスク34は、上述のように基板30であり得る単一部品、又は非マスク部品48を形成するように成形品の残りの部分よりも薄い壁を有する部分を有する、基板30とは別個の部品を成形することにより、作製することができる。」の記載がある。
(b)引用文献1の【0038】の「材料を除去することにより非マスク部分48が形成される・・・不透明材料」からなるマスクの「材料を除去」した部分は、本件発明12の「発光領域の形状に抜き加工した・・・抜き加工部分」に相当する。
しかし、引用文献1の【0038】のマスクの「材料を除去」した部分は、「樹脂成形材」の抜き加工部分ではないし、さらに、「発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材」を「埋め込み/組み込み成型」される部分ではないし、そのようなものとすることが示唆されたものでもない。
また、引用文献1の【0039】の「非マスク部分48」、「マスク部分46」は、本件発明12の「発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材」、「透明でない樹脂成形材」に、それぞれ相当する。
しかし、引用文献1の【0039】の「マスク部分46」は、「樹脂を1つの金型に射出して・・・非マスク部分48を形成」して、または、「樹脂等の不透明材料を透明部品の周りに射出して」製造されるものであるので、「抜き加工した・・・抜き加工部分」を備えたものでないし、そのようなものとすることが示唆されたものでもない。
(c)そうすると、相違点15を備える本件発明12は、引用発明及び引用文献1記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明とはいえない。
(d)異議申立人は、令和1年12月3日付けの意見書「3 (3-3-4)」「イ」において、「当該開口に透明樹脂を配置するか否かは適宜の設計事項に過ぎない。」と主張して、新たに参考資料1(特開2007-186943号公報)、4(米国特許公開2007/0258258号)、6(特開2004-319445号公報)を提出した。
(e)しかし、仮に不透明樹脂の開口部に透明又は半透明の樹脂材を配置する構成が周知であっても、上記引用文献1の【0038】のマスク34は、基板30と一体化されるものであるので、マスクの「材料を除去」した部分に、あえて「発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材」を「埋め込み/組み込み成型」することが、引用文献1示唆されているとはいえない。
また、引用文献1の【0039】の「マスク部分46」は、「樹脂を1つの金型に射出して・・・非マスク部分48を形成」して製造されるものであるので、「発光領域の形状に抜き加工した、透明でない樹脂成形材の抜き加工部分」を備えたものでないし、参考資料1、4、6を参照しても引用文献1の【0039】の「マスク部分46」を「発光領域の形状に抜き加工した、透明でない樹脂成形材の抜き加工部分」を備えたものとすることが示唆されているとはいえない。
(f)そうすると、上記参考資料1、4、6を参照しても、相違点15を備える本件発明12は、引用発明とも引用文献1記載の発明ともいえないし、引用発明及び従来周知の技術に基いて、当業者が容易に想到し得たものといえず、本件発明12は、引用発明及び引用文献1記載の事項に基いて、当業者が容易に想到し得た発明とはいえない。

13 小括
本件発明1、2、10、11は、引用発明、引用文献2記載の事項、及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明3は、引用発明、引用文献2?4記載の事項、及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明4は、引用発明、引用文献2、5記載の事項、及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明5、8、9は、引用発明、引用文献2、5、6記載の事項、及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5-2 取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由2について
1.特許請求の範囲及び発明の詳細な説明で、光学特性に関して、「透光性」、「非透光性」、「不透明」、「有色透明」、「無色透明」、「半透明」、「透明」、「光透過性」、「光不透過性」、「透過」との用語が使用されていたが、本件訂正により、上記光学特性に関する用語が整理、統一され、当該用語で表現された技術的事項は明確となった。
具体的には、
(1)請求項1の「光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過」や、請求項2の「光透過性フィルムによって面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形した・・請求項1記載の自動車用機能部品。」では、面発光素子の非発光時に透明でない部材を光が透過するものとされて、請求項12の「透明又は半透明の樹脂成形材を、・・透明でない樹脂成形材の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなる」や、本件明細書【0020】の「光透過範囲は・・非光透過性の樹脂成形材と光透過性の樹脂成形材との埋め込み/組み込み成型・・によってコントロールされる」では、「透明でない」「非光透過性」の部材は光が透過しない記載となっているので、結局、不透明な部材を光が透過するのか否か明確となった。
(2)請求項10に「成形カバーは、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであり、・・樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成され」と記載されているので、「有色透明又は無色透明の成形面」が「前記」されてなくとも、「樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分」が「非光透過性に構成され」る構成が理解でき、「樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成され」で特定される構成は明確となった。
さらに、「・・・除く残りの部分は、非光透過性」との記載は、非光透過性と記載されているので、透光性であるのか非透光性であるのかも明確となった。
また、「・・・除く残りの部分は、非光透過性」であり、光は透過しないから、「この非光透過性の構成によって、面発光素子の発光領域を制限する」が可能であって、請求項10が引用する請求項1の「面発光素子の発光時には面発光素子からの光が・・・成形カバーの一部分を透過して・・・浮かび上がる」ものになるのも明確となった。
(3)請求項12に「透明又は半透明の樹脂成形材を・・、透明でない樹脂成形材の抜き加工部分に・・してなる」と記載され、請求項12の自動車用部品は、請求項1に「面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して・・・所定の発光領域に浮かび上がる」と記載され、「不透明」が「透明でない」に訂正されたため、「透明・・の樹脂成形材」「半透明の樹脂成形材」「透明でない樹脂成形材」の違いは明確となった。
本件訂正により、請求項1?3の「自動車用部品」との記載は、「自動車用機能部品」に訂正されたので、請求項4?12に「請求項1,2又は3のいずれか記載の自動車用機能部品」等を包含することとなり、当該記載で特定される構成は明確となった。
また、本件明細書【0043】【0052】においても、同様である。
(4)請求項1に「光が・・成形カバーの一部分を透過して、・・表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がる」と記載され、本件明細書【0036】では「・・透過発光部Lが・・浮かび上がる」と記載されており、文言上請求項1の「浮かび上がる」が、「光」が浮かび上がることが読み取れるので、その意味は明確となった。
(5)本件明細書【0020】に「光透過の可否や光の透過度を自由に設定することができる」、「光透過範囲は・・非光透過性の樹脂成形材と光透過性の樹脂成形材との埋め込み/組み込み成型・・によってコントロールされる」と記載されているが、不透明の樹脂成形材が、光を透過せずコントロールできるのが明確となった。

2.上記1.のとおり特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載は明確になったので、本件明細書の【0005】の「自動車用機能部品の発光機能を、比較的簡易な構造かつ比較的コンパクトな形態で得る」という課題を解決する発明を実施できないとはいえなくなった。

3.小括
以上のとおり、特許請求の範囲に記載された技術的事項は明確であり、発明の詳細な説明の記載と矛盾するものでもないから、本件発明は明確であり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たす。
また、発明の詳細な説明には、請求項1?12に係る発明を実施するための形態が記載されており、特許請求の範囲の記載と矛盾するものでもないので、発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1?12に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たす。

第5-3 取消理由通知<決定の予告>において採用しなかった特許異議申立理由について
1.異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証(上記、引用文献1。)及び従たる証拠として甲第2?4、6?13号証(上記、引用文献2?8及び、平成31年2月13日付け意見書に添付された以下の文献)、を提出し、以下の旨主張する。
<平成31年2月13日付け意見書に添付された文献等一覧>
1.特開2002-240202号公報(甲第10号証)
2.特開2010-143095号公報(甲第11号証)
3.特開2011- 79273号公報(甲第12号証)
4.特開2010-131901号公報(甲第13号証)

ア 特許法第29条第1項第3号
本件発明1、2、10?12は、甲1に記載された発明であり新規性を有さない。
イ 特許法第29条第2項
本件発明6、7は、甲1及び従来周知の技術(甲4、甲6、甲8、甲9、参考資料1,2,3)に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、進歩性を有さない。
例え、本件発明12が新規性があるとしても、甲1及び従来周知の技術(甲2、甲9、参考資料1,4,6)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、進歩性を有さない。

2.当審の判断
ア 特許法第29条第1項第3号について
(1)甲1に記載された発明である引用発明と、本件発明1、2、10?12とは、上記「第5-1」の「1?12」で検討したように相違点が存在するので、本件発明1、2、10?12は、甲1に記載された発明であるとはいえない。
(2)異議申立人は、異議申立書(4)(4-3-13)において、
「イ.他方で、甲1には、『マスク34は、複数の樹脂を1つの金型に射出してマスク部分46及び非マスク部分48を形成する2ショット成形プロセスを用いて製造してもよい。』と記載されており(段落39)、当該成形プロセスでは、マスク部分46又は非マスク部分48の一方が他方の抜き部分に埋め込まれることになる。
ウ.以上のように、本件第12発明の構成要件Rは甲1に記載されている。
よって、本件第12発明は、甲1に記載されており、新規性を有さない。」旨主張している。
引用文献1の【0039】の「非マスク部分48」、「マスク部分46」は、本件発明12の「発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材」、「透明でない樹脂成形材」に、それぞれ相当する。
しかし、引用文献1の【0039】の「マスク部分46」は、「樹脂を1つの金型に射出して・・・非マスク部分48を形成」して製造されるものであるので、「抜き加工した・・・抜き加工部分」を備えたものでないし、「発光領域の形状に抜き加工した、透明でない樹脂成形材の抜き加工部分」を備えたものとすることが示唆されたものでもない。
(3)そうすると、異議申立人の当該主張は、採用することはできない。

イ 特許法第29条第2項について
本件発明6、7、12は、上記「第5-1」の「6」及び「12」で異議申立人の主張について検討したように、甲1及び従来周知の技術に基いて当業者が容易に発明することができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本件発明1、2、10、11は、引用発明、引用文献2記載の事項、及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明3は、引用発明、引用文献2?4記載の事項、及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明4は、引用発明、引用文献2、5記載の事項、及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明5、8、9は、引用発明、引用文献2、5、6記載の事項、及び周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明1?5、8?11に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、取消理由通知<決定の予告>に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項6、7及び12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項6、7及び12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
自動車用機能部品
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車ドアミラー、ミラーカバー、自動二輪車用バックミラー、自動車ドアハンドル、ドアハンドル用取付枠、給油口カバー、露出式給油口キャップ、グリル、サイドピラー(Aピラー、Bピラー、Cピラー)、サイドモール、リアガーニッシュ、エンブレム、プレート枠、アンテナ、フェンダー、表示灯カバー、各種メーター、各種操作レバー等の、自動車・自動二輪車本体又はその部品に取り付けることでそれ自体が機能を発揮するか、或いは、自動車・自動二輪車の外装部品を構成する自動車用機能部品であって、特に発光機能を内部に備えたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の機能部品として、ドアミラーの取付基体の下部に、方向指示器スイッチと接続されて点滅する補助方向指示器を備え、その補助方向指示器の照射光を外部に通過させるプラスチックカバーを前面から側面及び背面の一部まで回り込んで備え、かつ、背面には車幅灯、バックギアの入力と接続されて点灯する発光照射体からの照射部を備えた自動車の補助方向指示器兼側面照射装置が開示される(特許文献1参照)。これは通常の方向指示器よりも高い位置でかつ、車幅外の位置で補助方向指示器を点滅させることができ、周囲の車両や歩行者にも目視確認がし易くなり、また、夜間、暗所、雨天時等のバック走行時に特に後輪付近が明るく照射されることで安全に、確実に目的とする車庫入れ、駐車、方向転換が行なえることとなる、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登3100024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のドアミラーは、別構成した発光ブロックと組み構成することで、自動車用機能部品の発光機能を得ていた。このようなものは、発光機能を組み込むために発光ブロックの収容スペースを確保する必要があるなど、比較的複雑な構成を必要とし、しかも別構成部材であるために自動車用機能部品自体のデザイン性を損なうなど、美感ないし体裁に優れるものとは言い切れなかった。
【0005】
そこで本発明は、自動車用機能部品の発光機能を、比較的簡易な構造かつ比較的コンパクトな形態で得ることができ、また、自動車用機能部品自体のデザイン性を損なうことなく、美感及び体裁に優れた自動車用の機能部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決すべく以下(1)?(12)の手段を講じている。
(1)本発明の自動車用機能部品は、自動車に付属する部品の表面形状に成形された成形カバー(1)と、
成形カバー(1)の裏面に沿って接着又は嵌入固定された面発光素子(2)とからなる自動車用機能部品であって、
成形カバー(1)は、光透過性の樹脂成形材が、電鋳処理されることなく、光透過性フィルムで加飾(型内加飾を除く)成形された、面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品からなり、
面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用機能部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がることを特徴とする。
【0007】
(2)上記記載の自動車用機能部品において、前記成形カバー(1)は、樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであって、かつ、自動車本体に取り付けられる支持枠(3)の表面に覆設されるものであり、
前記面発光素子(2)は、この支持枠(3)の内部に形成されたステー(31/351、352)に支持されて、成形カバー(1)との距離を保持したまま支持枠(3)内に固定されることが好ましい。
(3)上記いずれか記載の自動車用機能部品において、成形カバー(1)の裏面側と面発光素子(2)の表面側との間に、光拡散効果を有する光透過性フィルム(4)を配してなり、面発光素子(2)からの光は光透過性フィルム(4)を通り、拡散した状態で成形カバー(1)の表面側に透過することが好ましい。
【0008】
(4)上記いずれか記載の自動車用機能部品において、前記面発光素子(2)は、シート状の基板(21)と、この基板(21)の表面側に配された複数の面発光源(22)と、基板(21)上で前記各面発光源(22)間を亘って配線される基板配線(23)と、この基板配線(23)と電気的に繋がって基板(21)の一端から延長する延長配線(24)とを有してなり、
支持枠(3)は、前記基板(21)を収容可能な収容空間(32)と、前記収容空間(32)の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔(33)とを有してなり、
前記収容空間(32)に収容した基板(21)の延長配線(24)は、前記配線孔(33)に挿通され、自動車本体内又は収容空間(32)内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれることが好ましい。
【0009】
(5)上記(4)記載の自動車用機能部品において、前記支持枠(3)の収容空間(32)は、前記面発光素子(2)と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容するものであり、
前記スイッチ回路は、前記検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子(2)を点滅又は点灯させることが好ましい。
【0010】
(6)上記いずれか記載の自動車用機能部品において、前記面発光素子(2)は、上面を光導出面とする板状の導光体(26)と、この導光体(26)の側面側に配されて導光体(26)内に入光する発光源(27)と、この発光源(27)と電気的に繋がって導光体(26)の側部から延長する延長配線(24)とを有してなり、
支持枠(3)は、前記導光体(26)及び発光源(27)をそれぞれ所定高さに並べて支持可能な支持構造(36)と、前記支持構造の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有してなり、
前記所定高さに支持した発光源(27)の延長配線(24)は、前記配線孔に挿通され、自動車本体内又は支持構造(36)内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれることが好ましい。
【0011】
(7)上記(6)記載の自動車用機能部品において、前記支持枠(3)の支持構造は、前記面発光素子(2)と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を支持するものであり、
前記スイッチ回路は、前記検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子(2)を点滅又は点灯させることが好ましい。
【0012】
(8)上記(5)又は(7)記載の自動車用機能部品において、前記支持枠(3)は、成形カバー(1)を覆設した状態で自動車ドアハンドル、サイドピラー、又はサイドモールのいずれかを構成し、
前記検知部品は、成形カバー(1)又は支持枠(3)への導電性接触によって自動車ドア鍵の開閉操作信号を検知するものであることが好ましい。
【0013】
(9)上記(5)又は(7)記載の自動車用機能部品において、前記支持枠(3)は、成形カバー(1)を覆設した状態で自動車ドアミラー、リアガーニッシュ、又は表示灯カバーのいずれかを構成し、
前記検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作の操作信号、又は使用者によるウインカー操作の操作信号を検知するものであることが好ましい。
【0014】
(10)上記いずれか記載の自動車用機能部品において、成形カバー(1)は、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子(2)の非発光時に透明でないように加飾成形したものであり、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子(2)が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成されてなり、
この非光透過性の構成によって、面発光素子(2)の発光領域を制限することが好ましい。
【0015】
(11)上記いずれか記載の自動車用機能部品において、発光領域の形状に抜き孔加工したマスキング材(5)を成形カバー(1)の裏面に当接してなることが好ましい。
【0016】
(12)上記いずれか記載の自動車用機能部品において、発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材(11)を、発光領域の形状に抜き加工した、透明でない樹脂成形材(11)の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上記手段によって、自動車用機能部品の発光機能を、それ自体の内部に備えた面発光素子の透過発光によって得ることで、従来のような発光体ブロックの組み構成が不要となり、また発光体の収容スペースを抑えて比較的簡易かつコンパクトな構造で得ることができ、また従来にない発光形態によって美感及び体裁に優れた自動車用の機能部品を提供することができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例1の自動車用機能部品の構成を示す分解斜視図。
【図2】実施例1の自動車用機能部品の発光状態を示す斜視図。
【図3】実施例1の自動車用機能部品に使用する成形カバー1の構成材を示す斜視説明図。
【図4】実施例1の自動車用機能部品に使用する光透過性フィルム4の表面加工パターン例の平面説明図。
【図5】本発明の実施例2の自動車用機能部品の一部破断斜視図。
【図6】本発明の実施例3の自動車用機能部品の正面視取り付け状態図。
【図7】本発明の実施例4の自動車用機能部品の第一発光状態(a)及び第二発光状態(b)における正面視取り付け状態図。
【図8】本発明の実施例5の自動車用機能部品の発光状態における正面視取り付け状態図。
【図9】本発明の実施例6の自動車用機能部品の構成を示す一部破断分解斜視図。
【図10】本発明の実施例6の自動車用機能部品の構成を示す一部破断斜視図。
【図11】本発明の実施例7の自動車用機能部品の構成を示す一部破断斜視図。
【図12】本発明の実施例8の自動車用機能部品の自動車ドアハンドル、サイドピラー、及びサイドモールへの取り付け状態図。
【図13】本発明の実施例9の自動車用機能部品のフロントグリル、及びエンブレムへの取り付け状態図。
【図14】本発明の実施例10の自動車用機能部品のリアガーニッシュ、プレート枠、及びエンブレムへの取り付け状態図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を、実施例1の自動車用機能部品として示す図1?4、実施例2?7の自動車用機能部品としてそれぞれ示す図5?11、及びこれらの自動車用機能部品の使用例として示す図12?図14を参照して説明する。いずれの実施例においても、本発明の自動車用機能部品は基本的に、自動車に付属する部品の表面形状に成形された成形カバー1と、成形カバー1の裏面に沿って接着又は最入固定された面発光素子2とからなる。そして、面発光素子2からの光が成形カバー1を透過して自動車用機能部品の表面の一部分に、透過発光部Lとして浮かび上がることを特徴とする。ここで自動車とは二輪車、四輪車、三輪車のほか原動機付自転車を含み、又乗用自動車のほか遠隔走行車、手押し走行車、又は牽引走行車を含む。
【0020】
(成形カバー1)
成形カバー1は、自動車本体に取り付けられる支持枠3の表面に覆設されるものである。次述する前記面発光素子2は、この支持枠3の内部に形成されたステー31に押さえられて、成形カバー1との距離を保持したまま支持枠3内に固定される。ここで成形カバー1は、成形加工された樹脂からなる光透過性の樹脂成形材10を、光透過性を有する加飾フィルム1Fで加飾(型内加飾を除く)成形した加飾成形品であって、メッキ等の電鋳処理がされたものを除く。すなわち従来のメッキ処理品では光不透過性材となってしまうところ、加飾フィルム1Fの加飾(型内加飾を除く)によって表面形成された加飾成形品の成形カバー1であれば、樹脂成形材10や加飾フィルム1Fの選択によって光透過の可否や光の透過度を自由に設定することができる。また、成形カバー1からの光透過範囲は、成形カバー1へのマスキング処理、或いは、非光透過性の樹脂成形材と光透過性の樹脂成形材との埋め込み/組み込み成型のいずれかによってコントロールされるほか、面発光素子2の発光位置、発光方向、指向性(発光範囲)によってもコントロールされる。なお、ここでいうマスキング処理とは、成形カバー1の表面又は裏面への不透明色の塗布膜の形成のほか、成形カバー1の裏面へのマスキング材5の覆設、或いは成形カバー1自体の厚さの調節すなわち肉厚部或いはリブの形成、嵌めこみ用スタッドやリブの形成等の様々な手段を含む。また、非光透過性の樹脂成形材と光透過性の樹脂成形材との埋め込み成型とは、非光透過性の樹脂成形材の一部を発光領域の形状に抜き加工し、当該抜き加工部分に光透過性の樹脂成形材を埋め込んでモールド成型することを含む。また組み込み成型とは、一部を発光領域の形状に抜き加工した非光透過性の樹脂成形材と、当該抜き加工部分の形状に合わせて予め成形した光透過性の樹脂成形材とを組み込んで一体化させることを含む。
【0021】
(面発光素子2)
面発光素子2は、曲面又は平面の配光面に発光する発光体のことであり、例えば、曲面又は平面の配光面を有する基材と、基材の前記配光面上に配置された一又は複数の発光素子とから構成される平面上の発光体からなるものを含むほか、側面を入光面とし上面を導光の射出面とした板状の導光体26と、導光体26の入光面に配置されて導光体26内に光を入光する発光源27とから構成される発光源つきの導光体からなるものを含む。発光素子からの光は配置面の上面側へ配光されて面内に拡がる。配光面の裏側にまで光が廻りにくいため、発光素子からの配光面側への光量を確保し易く、また、基材を薄板状又は薄膜状にすることでコンパクトに構成しやすく、基材自体が可擦性を有するものであれば、成形カバー1の成形面に沿って変形させ易い。この面発光素子2は、それ自体の配光面を成形カバー1の裏面に対向させて配置される。ここで配光面は、成形カバー1の裏面に沿って形成され、成形カバーの裏面と所定以上の間隔を開けて並行形成されることが好ましい。面発光素子2による成形カバー1への光透過範留は、面発光素子2への直接のマスキング処理によってコントロールされるここで面発光素子2へのマスキング処理とは、面発光素子2上へのマスキング材5の接触又は非接触の覆設、素子カバーへの著色による塗膜層の形成、面発光素子12と成形カバー1との間への遮光板(遮光シート、遮光フィルムを含む)の設置といった様々な手段を含む。
【0022】
また面発光素子2は、側面を入光面とし上面を導光の射出面とした板状の導光体26と、導光体26の入光面に当接して発光源27を埋め込んだ発光源保持部とが隣り合って接触し、平面視長方形の板状の導光体26の長手方向に連なって一体構成されたものでもよい(図9、図10、図11)。この場合、発光源27が導光体の側面に向けて側方へ放射発光し、導光体内で光が屈折、反射されて導光体の上面全体が発光することとなる。
【0023】
(支持枠3)
支持枠3は、関口された上面又は側面部に前記成形カバー1が覆設されることで成形カバー1を枠支持する部分構成材であって、成形カバー1を覆設した状態で、成形カバー1と共に自動車用の機能部品を構成する。ここでいう自動車用の機能部品とは、自動車(自動四輪車又は自動二輪車)本体の外部または内部に付属させることで何らかの機能を果たす発取り付け部品のことをいい、自動車ドアミラー、ミラーカバー、自動二輪車用バックミラー、自動車ドアハンドル、ドアハンドル用取付枠、給油口カバー、露出式給油口キャップ、グリル、サイドピラー(Aピラー、Bピラー、Cピラー)、サイドモール、リアガーニッシュ、エンブレム、プレート枠、アンテナ、フェンダー、表示灯カバー、各種メーター、各種操作レバー等の部品又は部材、或いは、自動車・自動二輪車の外装部品の全体または一部部品を含む。何らかの機能とは安全上、体裁上の発光機能のほか、美感面以外の視認機能、保護機能、各種ドアの開閉/施錠機能等を含む。
【0024】
支持枠3は例えば、前記何らかの機能を果たすための機能部品と共に、前記発光素子2を収容可能な収容空間32をそれ自体の内部に有し、さらに、自動車本体への取り付け部を有する。収容空間32内には機能部品の側部又は上部の少なくとも一部分に面発光素子2を露出させて収容する。収容空間32内にはまた、取り付け部を介して自動車本体と連通関口した配線孔33が形成される。収容空間32内に収容した機能部品の配線、及び、面発光素子2の発光用の配線を、この配線孔33に挿通する。
【0025】
(検知部品)
収容空間32は、前記面発光素子2と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容するものであってもよい。スイッチ回路は、前記検知部品が受けた鍵の開閉動作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子2を点滅または点灯させる。この場合、面発光素子2の延長配線24は、配線孔33内を挿通して自動車本体内内のスイッチ回路及び電源と繋がれる。
【0026】
他の構成として、支持枠3自体が、成形カバー1を覆設した状態で自動車ドアハンドル、サイドピラー、又はサイドモールのいずれかを構成したものであって、このとき検知部品は、成形カバー1又は支持枠3への導電性接触によって自動車ドア鍵の開閉操作信号を検知するものとしてもよい。
【0027】
また他の構成として、支持枠3自体が、成形カバー1を覆設した状態で自動車ドアミラー、リアガーニッシュ、又は表示灯カバーのいずれかを構成したものであって、このとき検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作の操作信号、又は使用者によるウインカー操作の操作信号を検知するものとしてもよい。
【0028】
なお、収容空間32内にスイッチ回路及び/または電源を収容してもよい。この場合は、電源用配線は配線孔33を挿通させず、機能部品の動作指示信号又は動作信号を知らせる連絡線のみを挿通させることで、自動車本体と機能部品とが電気的に接続される。
【0029】
(光透過性フィルム4)
また必要に応じて、成形カバー1の裏面側と面発光素子2の表面倒との問に、光拡散効果を有する光透過性フィルム4を配してなるものとしてもよい。光透過性フィルム4を配した場合、面発光素子2からの光は光透過性フィルム4を通り、光拡散した状態で成形カバー1の表面側に透過する。光透過性フィルム4の光拡散効果によって、面発光素子2が成形カバー1と近接していても適度な光源の広がりを確保することができる。ここで光拡散効果とは、フィルム表面又は裏面へのレンズ加工によるレンズ効果、ランダムな窪み(エンボス)加工、或いはフィルム内面又は各面への光透過性拡散粒子の混入又は付着成形、フィルム自体の変形による段差又は凹凸面の形成、拡散性定着剤の表面塗布等の、各種加工によるものを含む。また光透過性フィルム4は厚さを問わず、シート状又は板状のものを含む。さらに単層フィルムのほか、同一又は異質材による多層成形フィルムを含む。また光透過性フィルム4はその一部をマスキング処理することで、光の透過範囲を制限したり、偏光処理を行うことで拡散効果の一部を制限したりすることもできる。以下、実施例における各構成につき詳述する。
【実施例1】
【0030】
図1ないし図4に示す実施例1の自動車用機能部品は、成形カバー1が支持枠3上に覆設されることで自動車用ドアハンドルを構成する。このドアハンドルは例えば、内部の収容空間32内に開閉用の電気鍵K(図示せず)を内蔵し、その電気鍵Kの上面側に、LED素子からなる面発光源22が一列に連設された、細長シート状の面発光素子2が配され、更にその上面たる配光面に沿って、例えば図4に示すような所定のパターンで表面凹凸加工された光透過性フィルム4を配してなる。面発光素子2及び光透過性フィルム4は略同形状であり、成形カバー1のドアハンドル形状の伸長上面に沿って細長矩形に成形される。
【0031】
ここで実施例1の面発光素子2は、シート状の基板21と、この基板21の表面側に一列に配された複数の面発光源22と、基板21上で前記各面発光源22間を亘って配線される基盤配線23と、この基盤配線23と電気的に繋がって基板21の一端から延長する延長配線24とを有してなる。面発光源22は矩形枠内に平面配置されたLED発光素子からなり、各素子の矩形枠それぞれの上面は各球冠状の透明レンズカバーで覆われており、レンズカバーのレンズ効果によって光拡散性を有している。
【0032】
実施例1ではまた、横長柱状の収容空間32の一端寄りであって、支持枠3の自動車本体への取り付け脚部の片側相当位置に、配線孔32が設けられる。この配線孔32に、面発光素子2の延長配線24を挿通する。
【0033】
図2に示すように、保持枠3内の収容空間32の一方の端部には、面発光素子2へ対向するカバー端を有するマスキング材5が取り付けられ、このマスキング材5のカバー端5Eが、発光領域の片端縁としてマスキング効果を果たす。このカバー端5Eはマスキング材5の端部が直線状に切断加工(抜き加工)されてなり、この直線状部分が成形カバー1の裏面に当接して、マスキング端縁を形成する。保持枠3内の収容空間32の当該一方の端部で、あってカバー端5Eの内側には、面発光素子2の一端を保持するための2枚のステー31が、収容空間32内に並行に立設形成される。このステー31は上端が半円形に湾曲成形され、ステー31の設置基部がカバー端5Eに近接してなる。また保持枠3内の収容空間32の他方の端部には、面発光素子の他端を保持するための第一保持枠341、第二保持枠342が、収容空間32の空間隔方向内側を向いて対向形成される。第一保持枠341と第二保持枠342は、収容空間の長手方向すなわちドアハンドルの長手方向に僅かな隙間を明けて近接形成されることで、枠間に溝34が形成される。この溝34に面発光素子2の基板21の一端部を折り曲げ挿入国定してもよい。
【0034】
図3に示すように、実施例1の自動車用機能部品において、成形カバー1は、有色透明または無色透明の樹脂成形材の表面に、メッキ調の光透過性フィルムによって加飾(型内加飾を除く)成形したものである。ここで実施例1の前記樹脂成形材の成形面の裏側には、面発光素子2の配設箇所の周囲に非光透過性の塗膜層1Mとして暗色(黒色)の塗装による塗膜が部分形成される。この塗膜層1Mによって、面発光素子2の発光領域をマスキングし、余分な領域での発光を遮蔽している。
【0035】
実施例1の光透過性フィルム4の表面は、例えば図4に示すように、同一形状の多角錐による立体レンズ部を縦横にパターン状に配置成形してなる。
【0036】
このように構成された実施例1の面発光素子2は、内部収容した機能部品たる電気鍵Kの鍵開閉動作に連動して発光スイッチが動作し、解錠時又は施錠時に所定回数だけ発光する。発光させたとき、図2に示す連設円状の透過発光部Lが成形カバー1の外面上に一列に浮かび上がる。
【実施例2】
【0037】
図5に示す実施例2の自動車用機能部品において、支持枠3は、成形カバー1を覆設した状態で自動車ドアミラーを構成し、面発光素子2と共に収容空間に収容された前記検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作信号、またはウインカー操作信号を検知する。他の特記しない構成および使用方法、使用状態は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0038】
図6に示す実施例3の自動車用機能部品において、支持枠3は、成形カバー1を覆設した状態でリアドア又はフロントドアそれぞれの自動車ドアハンドルを構成し、面発光素子2と共に収容空間に収容された前記検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作信号またはウインカー操作信号を検知する。図6ではリアドア、フロントドアそれぞれ、同一高さの横長細長矩形の棒状の透過発光部Lが投影される。他の特記しない構成および使用方法、使用状態は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0039】
図7(a)(b)に示す実施例4の自動車用機能部品において、支持枠3は、成形カバー1を覆設した状態で自動車ドアハンドルを構成し、面発光素子2と共に収容空間に収容された前記検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作信号、またはウインカー操作信号を検知する。特に本実施例では図7aのように、連設された面発光素子22のうち、3連成形された第一の面発光素子22Aのみを発光させた、第一の透過発光領域LAへの発光状態と、図7bのように、連設された面発光素子22のうち、前記第一の面発光素子22A間に離間単独配置された第二の面発光素子22Bのみを発光させた、第二の透過発光領域LBへの発光状態とによる2通りの発光状態を可能としている。例えば自動車錠の施錠時、解錠時に発光状態を図7a、図7bのいずれかに変えて発光させることで、錠の開/閉動作が明確に区別し認識することができる。なお図7の符号DSは接触式スイッチであり、両スイッチ部分を同時に握って通電させることで解錠が可能となる。他の特記しない構成および使用方法、使用状態は実施例1と同様である。
【実施例5】
【0040】
図8に示す実施例5の前記支持枠3は、成形カバー1を覆設した状態で自動車ドアハンドルを構成する。そして実施例5の検知部品は、一方の接触式スイッチが成形カバーの一部として露出し、成形カバー1自体への導電性接触によって前記接触式スイッチと導電状態となって、自動車ドア鍵の開閉操作信号を検知する。具体的には、ドアハンドルの可動部と非可動部とが正面視横方向に併設され、可動部の成形カバー1の一部に矩形の接触式スイッチDSが露出する。この可動部である成形カバー1のうち前記接触式スイッチDSを除く表面部、或いは非可動部の成形カバー全体の表面部が、他方の接触式スイッチとなっており、人体の手部が一方の接触式スイッチDSに接触したまま他方の接触式スイッチに接触することで、導電状態となって開閉信号を検知する。
【0041】
また実施例5では可動部の成形カバー1の左端を除く全体が透過発光部Lとなっており、この透過発光部L全体が、光拡散効果を持って斜め格子模様状に反射投影される。また実施例5ではドア窪みが反射体D2で構成され、面発光素子2の発光によって、この窪み面の反射体D2に光が反射する。他の特記しない構成および使用方法、使用状態は実施例1と同様である。
【実施例6】
【0042】
図9及び図10に示す実施例6の自動車用機能部品の構成は、光を部分透過させる透過窓部分のみが透明又は半透明の樹脂成形材11によってインサートモールド成形された成形カバー1と、この成形カバー1の表面全体を加飾(型内加飾を除く)成形する光透過性フィルム1Fと、前記成形カバー1のうち透明又は半透明の樹脂成形材11の裏側部分に近接配置され、当該透明又は半透明の樹脂成形材11側へ導光する板状の導光体26と、この導光体26の側面側に配されて導光体26内に入光する発光源27と、この発光源27に電気的に繋がって導光体26の側部から延長する延長配線24とを有してなる(図9,図10)。
【0043】
実施例6の成形カバー1は、非光透過性の樹脂成形材10と、透明又は半透明の樹脂成形材11とが、インサートモールド成形によって一体成形されたものである。これは、非光透過性の樹脂成形材1の発光領域に相当する部分を窓状にくり抜き加工し、この非光透過性の樹脂成形材1の抜き加工部分に、当該発光領域を覆う成形材の形状に表面加工した透明又は半透明の樹脂成形材11を埋め込むような形でインサートモールド成型して得られる。透明又は半透明の樹脂成形材11は、非光透過性の樹脂成形材10の切欠き窓部分に組み込まれ、非光透過性の樹脂成形材10と連続する表面を形成するとともに、成形カバー1の裏側にて、切欠き窓部分の両側縁付近から各外方へ折れ曲がって下方突出した突出リブ11Bを形成する。切欠き窓部分の両側縁の突出リブ11Bは、切欠き窓の両側辺に沿って伸長して、面発光素子6の支持枠を形成する。実施例6では、透明の樹脂成形材11の突出リブ11B間に窪み面が形成され、この窪み面内に、導光体26のフレネルレンズ1F成形面が嵌まり込む。このようにすることで導光体26の配設位置を確定させ、導光体26からの光を確実に透明の樹脂成形材11側へ取り込むことができる。
【0044】
また実施例6の面発光素子2は、側面を入光面とし上面を導光の射出面とした板状の導光体26と、導光体26の入光面に当接して発光源27を埋め込んだ発光源保持ユニットとが隣り合って接触し、平面視長方形の板状の導光体26の長手方向に連なって一体構成される。発光源27は、扁平立方体の発光源保持ユニット内に収容され、導光体26側を発光方向として導光体26の側面に発光する。導光体26は細長矩形板状体からなり、透明又は半透明の樹脂成形材11と近接し対向する面を導光面とし、発光源保持ユニットと接触する立方体の側面を入光面とする。また導光体26の上面にはフレネルレンズ26Lが形成され、側面の発光源保持部との接触面からの光を、それ自身の直方体形状の内部で反射・屈折させ、上面のフレネルレンズ形成面から整光して、導光体26の上面である導光面方向、すなわち透明の樹脂成型材11側へ射光する。
【0045】
実施例6の支持枠3は、上面に検知部品たるスイッチング回路37を配置した平面視横長矩形の板状の支持構造36と、前記支持構造36の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有してなる。前記所定高さに支持した発光源27の延長配線24は、前記配線孔に挿通され、自動車本体内又は支持構造(36)内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれる。前記支持構造36は具体的には、面発光素子2の支持台となるベース板と、ベース板の一端寄り及び他端寄りからそれぞれ立設した第一支持枠351,第二支持枠352と、ベース板の面上に形成されたスイッチング回路37とから構成される。第一支持枠351、第二支持枠352は、各支持枠の先部にて、前記導光体26及び発光源27をベース板から同じ高さに支持するものであり、このうち第一支持枠351は発光源27の収容ユニットを上面支持すると共に、発光源27の延長配線24を挿通する挿通孔を高さ方向に沿って内部に有する。
【0046】
なお、図9hは実施例6の自動車用機能部品の構成を示す一部破断分解斜視図であり、図10は実施例6の自動車用機能部品の構成を示す一部破断斜視図である。実施例6の自動車用機能部品は全体として図12に示すドアハンドルを構成する。スイッチング回路37が、ドアハンドルへの操作者による電気的接触または電子鍵による電磁信号によって開錠/施錠いずれかのスイッチ動作を行うとき、延長配線24への電気信号を通じて発光源27が発光し、導光及び透過した光がハンドル表面の切欠き窓枠領域の部分で発光する。
【実施例7】
【0047】
図11は、本発明の実施例7の自動車用機能部品の一部破断斜視構成である。実施例7では光透過性の樹脂成形材11の裏面の窪み面にフレネルレンズ11Lを形成しており、光透過性の樹脂成形材11は、導光体26の導光面26Uからの光を整光しながら上面の切欠き窓部全体を発光させる。その他の基本的な構成及び使用方法は実施例6と同様である。
【0048】
(他の実施例)
また、図12に、本発明の実施例8の自動車用機能部品の自動車ドアハンドル1H、サイドピラー1P、及びサイドモール1Mへの取り付け状態例を示す。図12ではサイドピラーへの適用例として、施錠状態の文字を表示する施錠状態表示窓11Aと、開錠状態の文字を表示する開錠状態表示窓11Bとが光透過性の樹脂成形材11として成形カバー1に組み込まれた例を示す。施錠状態表示窓11Aの樹脂成形材11の裏側には導光体が配置されその側部には施錠時発光源27Aが設けられる。また、開錠状態の文字を表示する開錠状態表示窓11Bの樹脂成形材11の裏側には導光体が配置されその側部には開錠時発光源27Bが設けられる。
【0049】
また図13に、本発明の実施例9の自動車用機能部品のフロントグリル1GL、及びエンブレム1Eへの取り付け状態例を示す。図13では断面図bに示すように、フロントグリルのグリルバーの正面視中央部分が切欠き窓状に成形され、切欠き窓部に透明の樹脂成形材11がはめ込まれ、そのすぐ裏側に、光透過性の樹脂成形材11の上下の突出リブ11Bに挟まれた形で導光体26がはめ込まれる。エンブレムはエンブレム成形部分Eの周囲の枠内部分が透明窓形成され、その裏に縦横配列された面発光源を有する面発光素子が組み込まれる。
【0050】
そして図14に、本発明の実施例10の自動車用機能部品のリアガーニッシュ1GN、プレート枠1PF、及びエンブレム1Eへの取り付け状態例を示す。ただしこれらは本発明の適用例であって、すべてを組み込むものに限られず一部を組み込んだものでもよい。また発光部分や発光のタイミングは自動車用機能部品の形状に応じて適宜調節される。
【0051】
その他本発明は上述した実施例に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば各実施例間の一部構成同士の組み合わせ、発光領域の選択或いは発光形態の変更、光透過性フィルム4の省略や配置の有無の変更、機能部品の収容の有無の変更、マスキング方法の変更、成形カバー1の形状の変更、支持枠3の材質の変更または支持枠3自体の加飾成形など、各種技術の組み合わせが可能である。
【0052】
例えば支持枠3は、成形カバー1を覆設した状態で自動車ドアハンドル、サイドピラー、又はサイドモールのいずれかを構成する。このとき検知部品は、成形カバー1又は支持枠3への導電性接触によって自動車ドア鍵の開閉操作信号を検知する。また支持枠3は、成形カバー1を覆設した状態で自動車ドアミラー、リアガーニッシュ、又は表示灯カバーのいずれかを構成する。このとき検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作の操作信号、又は使用者によるウインカー操作の操作信号を検知する。また上記いずれか記載の自動車用機能部品において、成形カバー1は、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、光透過性フィルムによって加飾成形したものであり、前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子2が配設され、前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成されてなり、この非光透過性の構成によって、面発光素子2の発光領域を制限することが好ましい。また発光領域の形状に抜き孔加工したマスキング材5を成形カバー1の裏面に当接したものとしてもよい。或いは発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材11を、当該発光領域の形状に抜き加工した非光透過性の樹脂成形材1の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 成形カバー
1F 加飾フィルム
10 透明でない樹脂成形材
11 透明又は半透明の樹脂成形材
2 面発光素子
21 基板
22 面発光源
22A 第一面発光源
22B 第二面発光源
22C レンズカバー
23 基盤配線
24 延長配線
26 導光体
27 発光源
3 支持枠
3L 枠側板
31 ステー
32 収容空間
33 配線孔
36 支持構造
4 光透過性フィルム
5 マスキング材
5K ドア鍵(シリンダヘッド)
DS 接触式スイッチ
L 透過発光部、反射発光部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に付属する部品の表面形状に成形された成形カバーと、
成形カバーの裏面に沿って接着又は嵌入固定された面発光素子とからなる自動車用機能部品であって、
成形カバーは、光透過性の樹脂成形材が、電鋳処理されることなく、光透過性フィルムで加飾(型内加飾を除く)成形された、面発光素子の非発光時に透明でない加飾成形品からなり、
面発光素子の発光時には面発光素子からの光が加飾成形品の成形カバーの一部分を透過して、自動車用機能部品の表面の一部分である所定の発光領域に浮かび上がることを特徴とする自動車用機能部品。
【請求項2】
前記成形カバーは、樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであって、かつ、自動車本体に取り付けられる支持枠の表面に覆設されるものであり、
前記面発光素子は、この支持枠の内部に形成されたステーに支持されて、成形カバーとの距離を保持したまま支持枠内に固定される請求項1記載の自動車用機能部品。
【請求項3】
成形カバーの裏面側と面発光素子の表面側との間に、光拡散効果を有する光透過性フィルムを配してなり、面発光素子からの光は光透過性フィルムを通り、拡散した状態で成形カバーの表面側に透過する請求項1又は2記載の自動車用機能部品。
【請求項4】
前記面発光素子は、シート状の基板と、この基板の表面側に配された複数の面発光源と、基板上で前記各面発光源間を亘って配線される基板配線と、この基板配線と電気的に繋がって基板の一端から延長する延長配線とを有してなり、
支持枠は、前記基板を収容可能な収容空間と、前記収容空間の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有してなり、
前記収容空間に収容した基板の延長配線は、前記配線孔に挿通され、自動車本体内又は収容空間内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれる請求項1,2又は3のいずれか記載の自動車用機能部品。
【請求項5】
前記支持枠の収容空間は、前記面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を収容するものであり、
前記スイッチ回路は、前記検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子を点滅又は点灯させる請求項4記載の自動車用機能部品。
【請求項6】
前記面発光素子は、上面を光導出面とする板状の導光体と、この導光体の側面側に配されて導光体内に入光する発光源と、この発光源と電気的に繋がって導光体の側部から延長する延長配線とを有してなり、
支持枠は、前記導光体及び発光源をそれぞれ所定高さに並べて支持可能な支持構造と、前記支持構造の一端寄りに設けられて各種配線を挿通する配線孔とを有してなり、
前記所定高さに支持した発光源の延長配線は、前記配線孔に挿通され、自動車本体内又は支持構造内に設けられたスイッチ回路及び電源と繋がれる請求項1,2又は3のいずれか記載の自動車用機能部品。
【請求項7】
前記支持枠の支持構造は、前記面発光素子と共に、使用者による所定の操作信号を検知する検知部品を支持するものであり、
前記スイッチ回路は、前記検知部品が検知した所定の操作信号と連動してスイッチング動作を行い、面発光素子を点滅又は点灯させる請求項6記載の自動車用機能部品。
【請求項8】
前記支持枠は、成形カバーを覆設した状態で自動車ドアハンドル、ドアハンドル用取付枠、サイドピラー、又はサイドモールのいずれかを構成し、
前記検知部品は、成形カバー又は支持枠への導電性接触によって自動車ドア鍵の開閉操作信号を検知するものである請求項5又は7記載の自動車用機能部品。
【請求項9】
前記支持枠は、成形カバーを覆設した状態で自動車ドアミラー、リアガーニッシュ、又は表示灯カバーのいずれかを構成し、
前記検知部品は、使用者による自動車ドアの開閉操作の操作信号、又は使用者によるウインカー操作の操作信号を検知するものである請求項5又は7記載の自動車用機能部品。
【請求項10】
成形カバーは、一部を有色透明又は無色透明とした樹脂成形材の表面全体を、メッキ調の光透過性フィルムによって、面発光素子の非発光時に透明でないように加飾成形したものであり、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の部分には、裏側に面発光素子が配設され、
前記樹脂成形材の前記有色透明又は無色透明の成形面を除く残りの部分は、非光透過性に構成されてなり、
この非光透過性の構成によって、面発光素子の発光領域を制限する請求項1ないし9のいずれか記載の自動車用機能部品。
【請求項11】
発光領域の形状に抜き孔加工したマスキング材を成形カバーの裏面に当接してなる請求項1ないし10のいずれか記載の自動車用機能部品。
【請求項12】
発光領域の形状に加工した透明又は半透明の樹脂成形材を、発光領域の形状に抜き加工した、透明でない樹脂成形材の抜き加工部分に埋め込み/組み込み成型してなる請求項1ないし10のいずれか記載の自動車用機能部品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-12 
出願番号 特願2013-528050(P2013-528050)
審決分類 P 1 651・ 121- ZDA (F21S)
P 1 651・ 841- ZDA (F21S)
P 1 651・ 536- ZDA (F21S)
P 1 651・ 113- ZDA (F21S)
P 1 651・ 855- ZDA (F21S)
P 1 651・ 537- ZDA (F21S)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 竹中 辰利  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 中川 真一
出口 昌哉
登録日 2017-09-22 
登録番号 特許第6210880号(P6210880)
権利者 布施真空株式会社 株式会社 宏機製作所
発明の名称 自動車用機能部品  
代理人 森田 拓生  
代理人 森田 拓生  
代理人 森田 拓生  

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