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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A41D 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A41D 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A41D |
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管理番号 | 1363173 |
異議申立番号 | 異議2020-700022 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-01-15 |
確定日 | 2020-06-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6546086号発明「手袋及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6546086号の請求項に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6546086号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成26年6月12日(優先権主張平成25年6月14日 日本国)を国際出願日とする特許出願であって、平成29年2月14日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年5月19日に手続補正書、意見書が提出され、平成29年10月25日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成30年2月28日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、平成30年4月13日に手続補正書(方式)が提出され、平成30年11月27日付けで拒絶理由通知がされ、平成31年4月19日に手続補正書、意見書が提出され、令和元年6月28日に特許権の設定登録(特許掲載公報発行日:令和元年7月17日)がされ、令和2年1月15日に、特許異議申立人 湯原規公(以下「申立人」という。)から本件特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件発明 特許第6546086号の請求項1?9の特許に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明9」という。本件発明1?9をまとめて「本件発明」ということもある。)は、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 ゴムまたは樹脂で形成される手袋皮膜に磁性粒子を含む手袋であって、 前記磁性粒子は、手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満であり、 前記磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含み、 前記1次粒子の平均粒子径が1μm以下であり、 前記手袋を切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、所定範囲に2次粒子が200?700個含まれるように観察し、これらの200?700個の2次粒子の長径及び短径を測定してこれら長径及び短径から計算される体積と同体積の真球の直径を当該2次粒子の粒子径とし、 前記2次粒子の前記粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合が、前記1次粒子及び前記2次粒子の総体積に対して20体積%以上である、手袋。 【請求項2】 前記手袋皮膜が単層であり、前記磁性粒子は、手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上20質量%未満である、請求項1に記載の手袋。 【請求項3】 前記手袋皮膜が複数層であり、ゴム層または樹脂層の一部またはすべてに1次粒子が凝集した2次粒子を含む磁性粒子を含み、前記磁性粒子は、手袋皮膜全体に対して0.4質量%以上40質量%未満である、請求項1に記載の手袋。 【請求項4】 前記磁性粒子はフェライト粒子を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の手袋。 【請求項5】 前記フェライト粒子はマグネタイト粒子である、請求項4に記載の手袋。 【請求項6】 前記ゴムは、天然ゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化NBR(X-NBR)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びブタジエンゴムから選択される少なくとも1種を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の手袋。 【請求項7】 1次粒子の平均粒子径が1μm以下である磁性粒子を溶媒中に分散させ磁性粒子分散体を作製する工程、 ゴムまたは樹脂を含むエマルジョンに前記磁性粒子分散体を添加し、固形分全量に対し前記磁性粒子が0.2質量%以上である磁性粒子含有エマルジョンを作製する工程、及び 前記磁性粒子含有エマルジョンを用いて、磁性粒子が手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満で、1次粒子が凝集した2次粒子を含む手袋を作製する工程を含み、 前記手袋を切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、所定範囲に2次粒子が200?700個含まれるように観察し、これらの200?700個の2次粒子の長径及び短径を測定してこれら長径及び短径から計算される体積と同体積の真球の直径を当該2次粒子の粒子径とし、 前記2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合が、前記1次粒子及び前記2次粒子の総体積に対して20体積%以上である、 浸漬法による手袋の製造方法。 【請求項8】 前記磁性粒子含有エマルジョンの磁性粒子が固形分全量に対し20質量%未満であり、ゴム層または樹脂層が単層である、請求項7に記載の浸漬法による手袋の製造方法。 【請求項9】 前記磁性粒子含有エマルジョンの磁性粒子が固形分全量に対し80質量%未満であり、複数のゴム層または樹脂層の一部またはすべてに磁性粒子を含む、請求項7に記載の浸漬法による手袋の製造方法。」 第3 特許異議の申立て理由の概要 申立人の主張する申立て理由は、次のとおりである。 なお、申立人が本件特許異議申立書に添付した「甲第1号証」?「甲第8号証」に記載された発明を「甲1発明」?「甲8発明」という。 甲第1号証:国際公開第2014/200047号 甲第2号証:実用新案登録第3149893号公報 甲第3号証:特開2009-120974号公報 甲第4号証:特開2013-101080号公報 甲第5号証:特許第3272783号公報 甲第6号証:平成30年4月13日提出手続補正書(方式) 甲第7号証:平成31年4月19日提出意見書 甲第8号証:平成29年5月19日提出意見書 1 申立て理由1 本件発明1?9は、発明の詳細な説明に基いて実施することができないから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条4項1号の規定に違反するものであるから、その特許は、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立て理由2 本件発明1?9は、発明の詳細な説明に記載されたものでないから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条6項1号の規定に違反するものであるから、その特許は、、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立て理由3 本件発明1?9は、明確でないから、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条6項2号の規定に違反するものであるから、その特許は、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 4 申立て理由4 本件発明1?6は、甲1発明?甲3発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであり、本件発明7?9は、甲1発明?甲5発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 申立て理由1についての判断 (1)本件発明1の構成は「ゴムまたは樹脂で形成される手袋皮膜に磁性粒子を含む手袋であって、前記磁性粒子は、手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満であり、前記磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含み、前記1次粒子の平均粒子径が1μm以下であり、前記手袋を切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、所定範囲に2次粒子が200?700個含まれるように観察し、これらの200?700個の2次粒子の長径及び短径を測定してこれら長径及び短径から計算される体積と同体積の真球の直径を当該2次粒子の粒子径とし、前記2次粒子の前記粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合が、前記1次粒子及び前記2次粒子の総体積に対して20体積%以上である、手袋。」である。そして、その構成は、以下に示した摘記事項ア?エに示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 ア 本件特許明細書の段落【0015】「「手袋」本発明の一実施形態による手袋としては、ゴムまたは樹脂で形成される皮膜を単層、または複数層有し、その皮膜すべて、または一部に磁性粒子を含む手袋であって、磁性粒子は、手袋全体に対して0.2質量%以上40質量%未満であり、磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含むことを特徴とする。」 イ 本件特許明細書の段落【0033】「磁性粒子の1次粒子の平均粒子径としては、1μm以下であることが好ましい。」 ウ 本件特許明細書の段落【0032】「ここで、磁性粒子の2次粒子径の測定は次の方法で行うことができる。まず、手袋を切断した断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2次粒子を観察する。ここで、2次粒子は、1粒の粒子、すなわち1次粒子が2個以上重なって観察される凝集体として観察する。次いで、観察される2次粒子の長径及び短径を測定する。次いで、この2次粒子と同体積の真球の直径を計算し、この直径を2次粒子径として用いることができる。2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合の測定は次の方法で行うことができる。まず、手袋を切断した断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、所定範囲に2次粒子が200?700個含まれるように観察し、これらの200?700個の2次粒子径を上記した方法で求める。次いで、粒子の総体積に対して、1μmを超過する2次粒子の体積の割合として、2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合を求めることができる。」 エ 本件特許明細書の段落【0029】「磁性粒子は、2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合が、粒子全体の総体積に対して20体積%以上であることが好ましい。」 (2)本件発明2の構成は「前記手袋皮膜が単層であり、前記磁性粒子は、手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上20質量%未満である、請求項1に記載の手袋。」である。そして、その構成は、以下に示した摘記事項ア?イに示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 ア 本件特許明細書の段落【0015】「「手袋」本発明の一実施形態による手袋としては、ゴムまたは樹脂で形成される皮膜を単層、または複数層有し、その皮膜すべて、または一部に磁性粒子を含む手袋であって、磁性粒子は、手袋全体に対して0.2質量%以上40質量%未満であり、磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含むことを特徴とする。」 イ 本件特許明細書の段落【0038】「一方、磁性粒子の含有量としては、手袋の皮膜全体に対して、40質量%未満であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%未満である。これによって、手袋の機械的特性及び使用感を高めることができる。特に、手袋の破断時の強度、伸び率の低下を緩和できる。」 (3)本件発明3の構成は「前記手袋皮膜が複数層であり、ゴム層または樹脂層の一部またはすべてに1次粒子が凝集した2次粒子を含む磁性粒子を含み、前記磁性粒子は、手袋皮膜全体に対して0.4質量%以上40質量%未満である、請求項1に記載の手袋。」である。そして、その構成は、以下に示した摘記事項ア?イに示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。 ア 本件特許明細書の段落【0015】「「手袋」本発明の一実施形態による手袋としては、ゴムまたは樹脂で形成される皮膜を単層、または複数層有し、その皮膜すべて、または一部に磁性粒子を含む手袋であって、磁性粒子は、手袋全体に対して0.2質量%以上40質量%未満であり、磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含むことを特徴とする。」 イ 本件特許明細書の段落【0037】「磁性粒子の含有量としては、手袋の皮膜全体に対して、0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、一層好ましくは0.5質量%以上である。これによって、手袋全体の飽和磁束密度を高めて、より小さな手袋片を金属検出機によって検出することができるようにする。」 (4)本件発明4の構成は「前記磁性粒子はフェライト粒子を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の手袋。」である。そして、その構成は、以下に示した摘記事項アに示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 ア 本件特許明細書の段落【0024】「磁性粒子としては、フェライト、純鉄、酸化クロム、コバルト等を用いることができる。フェライトとしては、ニッケルフェライト、マンガンフェライト、マグヘマイト、マグネタイト(FeFe^(3+)_(2)O_(4)) 、マンガン・亜鉛フェライト(Mn・ZnFe_(2)O_(4))、ニッケル・亜鉛フェライト(Ni・ZnFe_(2)O_(4))等を挙げることができる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。」 (5)本件発明5の構成は「前記フェライト粒子はマグネタイト粒子である、請求項4に記載の手袋。」である。そして、その構成は、以下に示した摘記事項アに示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 ア 本件特許明細書の段落【0024】「磁性粒子としては、フェライト、純鉄、酸化クロム、コバルト等を用いることができる。フェライトとしては、ニッケルフェライト、マンガンフェライト、マグヘマイト、マグネタイト(FeFe^(3+)_(2)O_(4)) 、マンガン・亜鉛フェライト(Mn・ZnFe_(2)O_(4))、ニッケル・亜鉛フェライト(Ni・ZnFe_(2)O_(4))等を挙げることができる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。」 (6)本件発明6の構成は「前記ゴムは、天然ゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR) 、カルボキシル化NBR(X-NBR)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びブタジエンゴムから選択される少なくとも1種を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の手袋。」である。そして、その構成は、以下に示した摘記事項アに示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 ア 本件特許明細書の段落【0019】「本実施形態による手袋には、ゴムとして、天然ゴム及び合成ゴムを用いることができ、具体的には、天然ゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、カルボキシル化NBR(X-NBR)、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリクロロプレン等を挙げることができる。これらは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。」 (7)本件発明7の構成は「1次粒子の平均粒子径が1μm以下である磁性粒子を溶媒中に分散させ磁性粒子分散体を作製する工程、ゴムまたは樹脂を含むエマルジョンに前記磁性粒子分散体を添加し、固形分全量に対し前記磁性粒子が0.2質量%以上である磁性粒子含有エマルジョンを作製する工程、及び前記磁性粒子含有エマルジョンを用いて、磁性粒子が手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満で、1次粒子が凝集した2次粒子を含む手袋を作製する工程を含み、前記手袋を切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、所定範囲に2次粒子が200?700個含まれるように観察し、これらの200?700個の2次粒子の長径及び短径を測定してこれら長径及び短径から計算される体積と同体積の真球の直径を当該2次粒子の粒子径とし、前記2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合が、前記1次粒子及び前記2次粒子の総体積に対して20体積%以上である、浸漬法による手袋の製造方法。」である。そして、その構成は、以下に示した摘記事項ア?ウに示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 ア 本件特許明細書の段落【0065】「「手袋の製造方法」本発明の一実施形態による手袋の製造方法としては、1次粒子の平均粒子径が1μm以下である磁性粒子を溶媒中に分散させ磁性粒子分散体を作製する工程、ゴムまたは樹脂を含むエマルジョンに磁性粒子分散体を添加し、固形分全量に対し磁性粒子が0.2質量%以上80質量%未満である磁性粒子含有エマルジョンを作製する工程、及び磁性粒子含有エマルジョンを用いて単層、または異なる組成の磁性粒子含有エマルジョンを用いて複数層のゴム層または樹脂層を有し、磁性粒子が手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満で、1次粒子が凝集した2次粒子を含む手袋を作製する工程を含むことを特徴とする。」 イ 本件特許明細書の段落【0032】「ここで、磁性粒子の2次粒子径の測定は次の方法で行うことができる。まず、手袋を切断した断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2次粒子を観察する。ここで、2次粒子は、1粒の粒子、すなわち1次粒子が2個以上重なって観察される凝集体として観察する。次いで、観察される2次粒子の長径及び短径を測定する。次いで、この2次粒子と同体積の真球の直径を計算し、この直径を2次粒子径として用いることができる。2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合の測定は次の方法で行うことができる。まず、手袋を切断した断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、所定範囲に2次粒子が200?700個含まれるように観察し、これらの200?700個の2次粒子径を上記した方法で求める。次いで、粒子の総体積に対して、1μmを超過する2次粒子の体積の割合として、2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合を求めることができる。」 ウ 本件特許明細書の段落【0029】「磁性粒子は、2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合が、粒子全体の総体積に対して20体積%以上であることが好ましい。」 (8)本件発明8の構成は「前記磁性粒子含有エマルジョンの磁性粒子が固形分全量に対し20質量%未満であり、ゴム層または樹脂層が単層である、請求項7に記載の浸漬法による手袋の製造方法。」である。そして、その構成は、以下に示した摘記事項ア?イに示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 ア 本件特許明細書の段落【0065】「「手袋の製造方法」本発明の一実施形態による手袋の製造方法としては、1次粒子の平均粒子径が1μm以下である磁性粒子を溶媒中に分散させ磁性粒子分散体を作製する工程、ゴムまたは樹脂を含むエマルジョンに磁性粒子分散体を添加し、固形分全量に対し磁性粒子が0.2質量%以上80質量%未満である磁性粒子含有エマルジョンを作製する工程、及び磁性粒子含有エマルジョンを用いて単層、または異なる組成の磁性粒子含有エマルジョンを用いて複数層のゴム層または樹脂層を有し、磁性粒子が手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満で、1次粒子が凝集した2次粒子を含む手袋を作製する工程を含むことを特徴とする。」 イ 本件特許明細書の段落【0038】「一方、磁性粒子の含有量としては、手袋の皮膜全体に対して、40質量%未満であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%未満である。これによって、手袋の機械的特性及び使用感を高めることができる。特に、手袋の破断時の強度、伸び率の低下を緩和できる。」 (9)本件発明9の構成は「前記磁性粒子含有エマルジョンの磁性粒子が固形分全量に対し80質量%未満であり、複数のゴム層または樹脂層の一部またはすべてに磁性粒子を含む、請求項7に記載の浸漬法による手袋の製造方法。」である。そして、その構成は、以下に示した摘記事項アに示したように、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている。 ア 本件特許明細書の段落【0065】「「手袋の製造方法」本発明の一実施形態による手袋の製造方法としては、1次粒子の平均粒子径が1μm以下である磁性粒子を溶媒中に分散させ磁性粒子分散体を作製する工程、ゴムまたは樹脂を含むエマルジョンに磁性粒子分散体を添加し、固形分全量に対し磁性粒子が0.2質量%以上80質量%未満である磁性粒子含有エマルジョンを作製する工程、及び磁性粒子含有エマルジョンを用いて単層、または異なる組成の磁性粒子含有エマルジョンを用いて複数層のゴム層または樹脂層を有し、磁性粒子が手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満で、1次粒子が凝集した2次粒子を含む手袋を作製する工程を含むことを特徴とする。」 (10)また、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の構成を備えた実施例1?実施例8、実施例9(ラテックス槽;2回目)、実施例10(ラテックス槽;2回目)、実施例11(ラテックス槽;2回目)、実施例12(ラテックス槽;2回目)、実施例13(ラテックス槽;2回目、4回目)も示されている。 (11)したがって、当業者であれば過度な試行錯誤をすることなく、本件発明の構成を備えた「手袋」及びその製造方法を実施することができるといえる。 (12)小括 よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明を、当業者が実施することができる程度に記載されている。 (13)ここで、申立人は特許異議申立書(第12頁7行?第14頁1行)において、本件特許明細書の発明の詳細な説明における2次粒子の判定基準が曖昧であり、当業者といえども、どれが「2次粒子」であるか判定することができないと主張する。そして、申立人は「甲第7号証の図A(b)」において「2次粒子の中の1次粒子を見ると、明らかに互いに分離しているものが多数見られている。つまり、本件特許の出願人は、上記判定基準に関わらず、互いに分離した1次粒子の凝集体を2次粒子と判定している。」と主張する。 この点、本件特許明細書の段落【0026】には、「磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含むことが好ましい。凝集としては、複数の1次粒子が集まって、複数の1次粒子によって1つの凝集体を形成する形態である。この1次粒子が凝集した2次粒子の形態は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認することができ、1個の粒子、すなわち1次粒子が、複数集まって一つの塊状、すなわち凝集体に観察される。」と記載されており、走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認できる1次粒子のうち、当該粒子が凝集したものが2次粒子であるとし、1次粒子か2次粒子かは、粒子が凝集しているものか否かで判断するものであると定義している。 ここで「凝集」とは、一般には「こり固まって、集まること。」(例えば、広辞苑、第2版補訂版、株式会社岩波書店、1976年12月1日、第570頁参照。)であることからしても、1次粒子が「凝集」するとは、粒子がこり固まり、「塊状」となることだから、その技術的事項は明確であるといえる。 また、特許権者は「甲第6号証」で「SEM写真は、所定の断面を観察するものであり、原則的には、切断断面位置で凝集しているか、凝集していないかを判断するものである。焦点がぴったり合ったものは切断断面に存在するが、焦点がぼけたものは、深さ方向にずれたものと判断し、切断断面の位置で繋がったものが凝集体であり、深さ方向にずれた位置で繋がっているように見えるものであっても、切断断面位置で隙間が観察されるものは凝集しているものではないと判断する。」と説示している。この点からしても、 ア SEM写真の観察技術を備えた当業者であれば、本件特許明細書の記載に基づいて、1次粒子のうち「凝集」していると判断できるものが2次粒子であると理解できる。 イ 甲第6号証には「原則的には、切断面位置で凝集しているか、凝集していないかを判断するものである。」とあるように、あくまで「原則」にすぎない。 ウ 甲第6号証の特許権者の「原則」の主張に加えて、SEM写真の観察技術を備えた当業者であれば、「深さ方向にずれているが凝集している」と判断できるものを追加して「凝集」していると判定することは当然可能である。 したがって、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、当業者であれば、1次粒子か2次粒子かは判定し得るものといえるから、上記申立人の主張は採用できない。 また、本件特許明細書段落【0032】には、「ここで、磁性粒子の2次粒子径の測定は次の方法で行うことができる。まず、手袋を切断した断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて2次粒子を観察する。ここで、2次粒子は、1粒の粒子、すなわち1次粒子が2個以上重なって観察される凝集体として観察する。次いで、観察される2次粒子の長径及び短径を測定する。次いで、この2次粒子と同体積の真球の直径を計算し、この直径を2次粒子径として用いることができる。2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合の測定は次の方法で行うことができる。まず、手袋を切断した断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、所定範囲に2次粒子が200?700個含まれるように観察し、これらの200?200個の2次粒子径を上記した方法で求める。次いで、粒子の総体積に対して、1μmを超過する2次粒子の体積の割合として、2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合を求めることができる。」と記載されている。 そして、「甲第7号証」において特許権者から、 「下記図A(a)は、1次粒子が2?3個からなる2次粒子の場合であり、図A(b)は、多数の1次粒子からなる2次粒子の場合であり、SEM写真に長径、短径を記載している。 何れの場合も、最大径を長径とし、長径に直交する最大径を短径としたものである。 このように不定形の2次粒子について、長径及び短径を決定した後は、測定した長径及び短径からなる回転楕円体として体積を求める。この回転楕円体の体積vは以下の公式より求めることができる。aが長径でbが短径である。 v=(4/3)π(a/2)(b/2)^(2)= πab^(2)/6 そして、回転楕円体と同体積の真球を想定し、真球の直径を2次粒子の粒子径とする。この真球の直径(相当径d)は、以下の公式により求めることができる。 d=(6v/π)^(1/3) =(ab^(2))^(1/3) 以上より、2次粒子の粒子径の求め方は明確であると思料する。 また、2次粒子の体積は、長径及び短径から求めた回転楕円体の体積であり、総体積は、前記所定範囲で観察される2次粒子の体積の合計であることも明らかである。 以上の作業を2次粒子が200?700個含まれるように観察した所定範囲について行い、全部の2次粒子の体積の合計を2次粒子の総体積とする。」(甲第7号証第2頁下から6行?第3頁10行)との説示もある。 したがって、2次粒子の直径及び短径の決定の仕方、2次粒子径の求め方、そして2次粒子の総体積の求め方も説示されており、これらを用いて2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合を求めることができるから、2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合を調整して、本件発明に係る手袋を製造することも可能であるといえる。 そうすると、申立人が主張する「本件特許明細書の発明の詳細な説明における2次粒子の判定基準が曖昧であり、当業者は、どれが「2次粒子」であるか判定することができず、2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合を調整して、本件発明1に係る手袋を製造することができない」とはいえない。 (13)同様に、本件発明1の手袋の製造方法を規定した本件発明7も、本件特許明細書の発明の詳細な説明に、当業者が実施することができる程度に記載されているといえる。 (14)よって、特許法第36条4項1号の規定に係る申立人の申立て理由1は理由がない。 2 申立て理由2についての判断 (1)本件発明1?9で特定される構成は、上記第4の1(1)?(9)に示したとおり、すべて本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているといえる。 (2)ここで、発明の詳細な説明の段落【0009】及び【0010】の記載から本件発明の課題は、「少ない磁性粒子量であっても、金属検出機による手袋片の検出感度を高めることができることであり、同一の磁性粒子量において金属検出機による手袋片の最小検出体積を小さくすること」である。 そして、特許請求の範囲に記載された本件発明の構成を備えたものであれば、以下のア?エに示したように、上記本件発明が解決しようとする課題を解決できることが理解できる。 ア 本件発明1について 本件特許の発明の詳細な説明には次の記載がある。「本発明の一実施形態による手袋としては、ゴムまたは樹脂で形成される皮膜を単層、または複数層有し、その皮膜すべて、または一部に磁性粒子を含む手袋であって、磁性粒子は、手袋全体に対して0.2質量%以上40質量%未満であり、磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含むことを特徴とする。これによって、少ない磁性粒子量で、磁性粒子の磁気特性(飽和磁束密度或いは飽和磁化)等を高めて、金属検出機による手袋片の最小検出体積を小さくすることができる。また、優れた機械的特性を得ることができる。」(段落【0015】及び【0016】) ここで、本件発明1は「ゴムまたは樹脂で形成される手袋皮膜に磁性粒子を含む手袋であって、前記磁性粒子は、手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満であり、前記磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含み、」であるから、本件発明が解決しようとする課題を解決できるといえる。 よって、本件発明1は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。 イ 本件発明2?6について 本件発明2?6は、本件発明1を引用する発明であるから、上記アに示したとおり、本件発明2?6も上記課題を解決するものであり、本件発明2?6は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。 ウ 本件発明7について 本件特許の発明の詳細な説明には次の記載がある。「本発明の一実施形態による手袋の製造方法としては、1次粒子の平均粒子径が1μm以下である磁性粒子を溶媒中に分散させ磁性粒子分散体を作製する工程、ゴムまたは樹脂を含むエマルジョンに磁性粒子分散体を添加し、固形分全量に対し磁性粒子が0.2質量%以上80質量%未満である磁性粒子含有エマルジョンを作製する工程、及び磁性粒子含有エマルジョンを用いて単層、または異なる組成の磁性粒子含有エマルジョンを用いて複数層のゴム層または樹脂層を有し、磁性粒子が手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満で、1次粒子が凝集した2次粒子を含む手袋を作製する工程を含むことを特徴とする。これによって、手袋内で磁性粒子が適切な大きさの2次粒子を形成し、少ない磁性粒子量でも、金属検出機による手袋片の最小検出体積が小さい手袋を提供することができる。また、優れた機械的特性を得ることができる。」(段落【0065】及び【0066】) ここで、本件発明7は「1次粒子の平均粒子径が1μm以下である磁性粒子を溶媒中に分散させ磁性粒子分散体を作製する工程、ゴムまたは樹脂を含むエマルジョンに前記磁性粒子分散体を添加し、固形分全量に対し前記磁性粒子が0.2質量%以上である磁性粒子含有エマルジョンを作製する工程、及び前記磁性粒子含有エマルジョンを用いて、磁性粒子が手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満で、1次粒子が凝集した2次粒子を含む手袋を作製する工程を含み、」であるから、本件発明が解決しようとする課題を解決できるといえる。 よって、本件発明7は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。 エ 本件発明8?9について 本件発明8?9は、本件発明7を引用する発明であるから、上記ウに示したとおり、本件発明8?9も上記課題を解決するものであり、本件発明8?9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された発明である。 (3)小括 したがって、本件発明1?9は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているものであるから、本件の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件を満たすものである。 (4)申立人は、特許異議申立書(第14頁2行?第18頁22行)において、 ア 全ての実施例の中で、比較例3?5より「少ない磁性粒子量」で、磁性粒子の磁気特性(飽和磁束密度)が高められた実施例は1つもないから、本件特許発明は技術的課題を解決しておらず、本件特許明細書の発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することはできない。 イ 比較例3?5よりも「少ない磁性粒子量」で、比較例3?5の「最小検出体積」よりも小さいのは実施例5および10だけである。また、比較例3?5と「同一の磁性粒子量」で「最小検出体積」が小さいのも実施例10だけである。つまり、2次粒子割合が80体積%である実施例5、10だけが本件の技術的課題を解決できるから、2次粒子割合が80体積%以外のものは、技術的課題を解決しておらず、本件特許は課題を解決していないものまで含まれている。 ウ 粒子径が1μmを超過する2次粒子の体積割合というパラメータは、飽和磁束密度や最小検出体積に対して、何ら影響を及ぼすことが無く、少なくとも飽和磁束密度や最小検出体積に対する技術的意義は無いために、粒子径1μmを超過する2次粒子の体積割合を20体積%以上とすることに臨界的意義もない。 と主張する。 (5)上記(4)ア?イの主張について検討すると、本件特許明細書段落【0015】?【0016】には、「本発明の一実施形態による手袋としては、ゴムまたは樹脂で形成される皮膜を単層、または複数層有し、その皮膜すべて、または一部に磁性粒子を含む手袋であって、磁性粒子は、手袋全体に対して質量0.2%以上40質量%未満であり、磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含むことを特徴とする。これによって、少ない磁性粒子量で、磁性粒子の磁気特性(飽和磁束密度或いは飽和磁化)等を高めて、金属検出機による手袋片の最小検出体積を小さくすることができる。また、優れた機械的特性を得ることができる。」と記載されている。 また、本件特許明細書段落【0046】?【0048】には、「金属検出機による手袋片の最小検出体積としては、40mm^(3)以下であることが好ましく、より好ましくは38mm^(3)以下であり、さらに好ましくは36mm^(3)以下である。これによって、より小さな手袋片を異物として金属検出機によって検出することができる。特に、食品の製造ラインにおいて、より小さな手袋片を検出することができ、食品等への手袋片の混入を防止することができる。本実施形態では、より少ない量の磁性粒子でも、金属検出機によって手袋片を検出することができるため、検出可能な手袋片の大きさをより小さくすることができる。一方、手袋片の金属検出機による最小検出体積の下限値としては、金属検出機の検出限界にもよるが、通常0.5mm^(3)以上とすることができる。」と記載されている。 実施例をみても、比較例3と比べて、実施例10には同等の磁性粒子量(質量%)で最小検出体積(mm^(3))が小さい例が示されている。 さらに、少ない磁性粒子量(質量%)で同程度の最小検出体積(mm^(3))なら、同じ磁性粒子量(質量%)の場合、当然、より小さい最小検出体積(mm^(3))となることは自明であるといえる。 そして、比較例3と比べて、少ない磁性粒子量(質量%)で、同等の最小検出体積(mm^(3))を検出できる例が、実施例4(磁性粒子量(10質量%);最小検出体積(1mm^(3)))、実施例9(磁性粒子量(9.8質量%);最小検出体積(0.9mm^(3)))に示されており、ともに2次粒子割合が60体積%(実施例4)、75体積%(実施例9)であるところ、2次粒子割合が80体積%以外のものも、本件の技術的課題を解決しているといえる。 したがって、申立人の主張(4)ア?イを採用することができない。 (6)上記(4)ウの主張について検討すると、本件特許明細書段落【0030】には、「2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合が、粒子全体の総体積に対して20体積%以上であることで、1次粒子が単独で分散している状態に比べて、手袋の磁気特性を高めて金属検出機による検出感度を高めることができる。さらに、磁性粒子の2次粒子の粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合が、粒子全体の総体積に対して20体積%以上であることで、少ない磁性粒子量で手袋内に磁性粒子が均一に配合されて、手袋の磁気特性を高めて金属検出機による検出感度を高めることができる。」と記載されている。 上記記載から、粒子径が1μmを超過する2次粒子の体積割合というパラメータを20体積%以上に調整することで、少ない磁性粒子量で手袋の磁気特性を高めて金属検出機による検出感度を高めることができるものであることが理解できる。 したがって、申立人の主張(4)ウを採用することができない。 (7)よって、特許法第36条6項1号の規定に係る申立人の申立て理由2は理由がない。 3 申立て理由3についての判断 (1)本件発明1は「ゴムまたは樹脂で形成される手袋皮膜に磁性粒子を含む手袋であって、前記磁性粒子は、手袋皮膜全体に対して0.2質量%以上40質量%未満であり、前記磁性粒子は、1次粒子が凝集した2次粒子を含み、前記1次粒子の平均粒子径が1μm以下であり、前記手袋を切断した断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、所定範囲に2次粒子が200?700個含まれるように観察し、これらの200?700個の2次粒子の長径及び短径を測定してこれら長径及び短径から計算される体積と同体積の真球の直径を当該2次粒子の粒子径とし、前記2次粒子の前記粒子径が1μmを超過する粒子の体積割合が、前記1次粒子及び前記2次粒子の総体積に対して20体積%以上である、手袋。」である。 そして、本件発明1の「手袋」の構成は、手袋皮膜全体に対しての磁性粒子の割合、1次粒子の平均粒子径の大きさ、粒子径が1μmを超過する2次粒子の体積割合が、その記載のとおり明確に理解できる。 また、本件発明1の各構成は、上記第4の1(1)ア?エに示したとおり本件特許明細書にも記載されている。 したがって、本件発明1は明確である。 (2)申立人は、特許異議申立書(第18頁第23行?第20頁第15行)において、本件特許明細書の発明の詳細な説明における2次粒子の判定基準が曖昧であり、当業者は、どれが「2次粒子」であるか判定することができず、2次粒子の粒子径や体積割合を求めることはできないために、発明が不明確である旨を主張する。 この点、上記第4の1(4)?(5)において検討したとおり、「本件特許明細書の発明の詳細な説明における2次粒子の判定基準が曖昧であり、当業者は、どれが「2次粒子」であるか判定することができず、2次粒子の粒子径や体積割合を求めることはできないために、発明が不明確である」とはいえない。 (3)同様に、本件発明1の手袋の製造方法を規定した本件発明7も明確であるといえる。 (4)したがって、本件発明1?9は明確である。 (5)よって、特許法第36条6項2号の規定に係る申立人の申立て理由3は理由がない。 4 申立て理由4についての判断 申立人は、本件特許発明1?9は、甲第1号証に示された、本件特許の優先日前に公然知られた、または公然実施された発明(甲1発明)に基いて容易に発明できたものであるとする。 しかしながら、そもそも甲第1号証は本件特許の国際公開公報であるところ、その国際公開日は、2014年(平成26年)12月18日であって、本件特許の優先日である2013年(平成25年)6月14日よりも後のものであるから、甲第1号証によって甲1発明、ひいてはアラム株式会社製「MPFサクラメン(商品名)」なる製品、及びその仕様(組成等)が、本件特許の優先日前に公然知られた、または公然実施されたものであるとはいえない。 よって、特許法第29条2項の規定に係る申立人の申立て理由4は採用できない。 5 むすび 以上のとおりであるから、本件発明1?9に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2020-05-27 |
出願番号 | 特願2015-522848(P2015-522848) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(A41D)
P 1 651・ 536- Y (A41D) P 1 651・ 537- Y (A41D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 杏子 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
横溝 顕範 杉山 悟史 |
登録日 | 2019-06-28 |
登録番号 | 特許第6546086号(P6546086) |
権利者 | ハルタレガ エスディーエヌ ビーエイチディー ミドリ安全株式会社 |
発明の名称 | 手袋及びその製造方法 |
代理人 | 山▲崎▼ 雄一郎 |
代理人 | 栗原 浩之 |
代理人 | 山▲崎▼ 雄一郎 |
代理人 | 栗原 浩之 |