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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
管理番号 1363174
異議申立番号 異議2020-700018  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-15 
確定日 2020-06-08 
異議申立件数
事件の表示 特許第6546011号発明「酸性液状調味料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6546011号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6546011号の請求項1?2に係る特許についての出願は、平成27年5月29日の出願であって、令和1年6月28日にその特許権の設定登録がされ、同年7月17日にその特許公報が発行され、その後、その特許に対し、令和2年1月15日にアクシス国際特許業務法人(以下「特許異議申立人」という。)により請求項1?2(全請求項)に対して特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6546011号(以下「本件特許」という。)の請求項1?2の特許に係る発明(以下「本件発明1?2」といい、これらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
凍結乾燥キノコ粉末(但し、エノキタケの凍結乾燥粉末を除く。)と2糖類及び/又は異性化糖とを配合し、前記凍結乾燥キノコ粉末1部に対し、前記2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上である酸性液状調味料。
【請求項2】
請求項1記載の酸性液状調味料であって、
前記凍結乾燥キノコ粉末のキノコが、ポルチーニである酸性液状調味料。」

第3 特許異議申立の理由の概要
特許異議申立書に記載された特許異議申立理由の概要は次のとおりである。

理由1 特許法第29条第2項について
本件発明1?2は、甲第1?5号証に記載された発明に基いて、本件発明に係る出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

理由2 特許法第36条第6項第1号について
本件発明1?2は発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、本件発明1?2に係る出願は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合せず、同法第36条第6項に規定される要件を満たしていない。
したがって、本件特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

そして、以下の証拠方法が挙げられている。
甲第1号証:特開昭60-47657号公報
甲第2号証:特開2007-53924号公報
甲第3号証:特開平11-196817号公報
甲第4号証:特許第4256000号公報
甲第5号証:特開2006-230208号公報
甲第6号証:知的財産高等裁判所令和元年8月28日判決(平成30年(行ケ)第10164号)
甲第7号証:知的財産高等裁判所令和元年8月29日判決(平成30年(行ケ)第10084号)

第4 甲各号証の記載事項
甲第1?7号証(以下「甲1」等ともいう。)には、以下の記載がある。

甲1:
1a)「1.少なくとも水相部を含む酸性液状調味料を製造するに際して、上記水相部の原料の一部としてキサンタンガムとローカストビーンガムとを水分の存在下でゲル化しうる状態にし、これを次いで、あるいはゲル化させたのち解体処理して使用することを特徴とする酸性液状調味料の製造方法。
2.水相部の原料の一部として更に他の食品添加用ガム質も併用する、特許請求の範囲第1項記載の酸性液状調味料の製造方法。
3.該酸性液状調味料が水相部にスパイス類を含むものである、特許請求の範囲第1項記載の酸性液状調味料の製造方法。」(1頁左下欄、特許請求の範囲)

1b)「これら酸性液状調味料には水相部に粘度を付与したもの、あるいはスパイス類等を含ませたものなどがあり、その粘度付与あるいはスパイス類等の分散保持のために通常食品添加用ガム質が用いられている。ところがこれらガム質を用いた従来のものは含有せる他の調味料等の味が直接的に舌に感じられるというようにまろやかさに欠けたものであり、しかも粘度を付与する程度の量で用いたものは食感は軽いものであるとはいえ水相部の粘度を高めてスパイス類等、特に粗砕スパイス類、を分散保持する程度の量で用いたものは食感は重いものであるという問題がある。
このような現状にあつて、水相部にまろやかさを付与することができ、しかもその粘度をあまり高くしなくてもスパイス類等を水相部中に分散保持できる増粘剤の出現が望まれている。」(1頁右下欄9行?2頁左上欄4行)

1c)「水相部に添加しうるその他の原料としては、砂糖、食塩、グルタミン酸ソーダ、イノシン酸ソーダ、トマトペースト、ワイン、醤油等の調味料および各種スパイス類等を挙げることができる。ここにおいてスパイス類とは、植物の種子、果実、花、葉、根、茎、皮などを通常乾繰した香味、辛味付与用の原料、いわゆる香辛料を意味し、その種類としては、例えば、レツドベルペパー、ホワイトペパー等のペパー類、タラゴン、マジヨラム、デイル、バシル、パセリ等のハーブ類、その他辛子、胡椒、ガーリツク、オニオン等を挙げることができる。」(2頁右上欄下から3行?左下欄9行)

1d)「試験例
下記の表1に示した配合割合の成分原料から分離型ドレツシング形態の酸性液状調味料を製造した。
・・・
表 1
成分原料 配合割合(%)
水相部原料:
食酢(酸度10%の米酢) 30.0
清水 58.5-x
砂糖 10.0
グルタミン酸ソーダ 0.5
粗砕スパイス類(等重量の混合品) 1.0
・・・

ガム質類 x
100.0
油相部原料:
大豆サラダ油 100.0
・・・
実施例1
下記の表3に示した配合割合の成分原料から上記試験例に準じ、ただし水相部と油相部との配合割合を重量割合で8:2とした他は同様にして分離型ドレツシング形態の酸性液状調味料を製造した。
・・・
表 3
成分原料 配合割合(%)
水相部原料:
食酢(酸度8%のモルト酢) 38.0
清水 50.76
砂糖 9.5
グルタミン酸ソーダ 0.5
粗砕スパイス類(等重量の混合品) 0.8
・・・
キサンタンガム 0.03
ローカストビーンガム 0.03
グアーガム 0.38
100.00
油相部原料:
大豆サラダ油 100.00 」(4頁右上欄1行?6頁左上欄最終行)

甲2:
2a)「【請求項1】
キノコエキス、又はその乾燥物を含むことを特徴とする食品素材。
【請求項2】
下記の(A)?(C)の工程を順次経ることを特徴とする食品素材。
(A)生のキノコを凍結する工程
(B)凍結したキノコをそのまま粉砕する工程
(C)前記粉砕物を乾燥する工程
・・・
【請求項7】
キノコがエノキタケ、ブナシメジ、エリンギ、マイタケ、マッシュルーム、ハタケシメジ、ヤマブシタケ、又は雪嶺茸である請求項1?請求項6に記載する食品素材の製造方法。
・・・
【請求項11】
請求項1?請求項10に記載する食品素材を添加して栄養を強化し、かつ呈味性を改善したことを特徴とする食品。」

2b)「【0001】
この発明は、食品素材、及びその製造方法、及びこの食品素材を添加した食品に関し、更に詳しくは、キノコの遊離アミノ酸を多量に含む食品素材、及びその製造方法、及びこの食品素材を添加した食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キノコ類を野菜や果物と同様の食材として捕らえ、温風乾燥や凍結乾燥などにより乾燥し、これを粉末化したものはすでに存在している。
【0003】
【特許文献1】特開2004-189710
【特許文献2】特開昭50-46872
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キノコの旨味成分は漠然と考えられているため、旨味成分、特に遊離アミノ酸を最大限に生かすような食品素材(乾燥粉末や濃縮エキス等)、又はその製造方法は検討されていない。
又、栽培キノコ類のいくつかが高濃度の遊離アミノ酸を含むこと、また機能性アミノ酸であるγ-アミノ酪酸(GABA)及びオルニチンを豊富に含むことは知られておらず、従ってこれらの機能性アミノ酸を生かしたキノコの食品素材は、未だ市場に存在しない。
本発明は、キノコ類に豊富に含まれている遊離アミノ酸、及びγ-アミノ酪酸(GABA)、オルニチン等の機能性アミノ酸に注目し、これらの物質の含有量の高い新しい食品素材、及びその製造方法、及びこの食品素材を添加して、栄養及び旨味を強化した食品を提供することを目的とするものである。」

2c)「【0024】
具体的には以下のような食品を製造すれば、1食分に対し、10mg以上のGABAを含有させることができる。
(1)味噌汁用調味味噌
・・・
(2)液体スープ類
・・・
(3)粉末スープ類
・・・
(4)インスタントカレー、シチュー」

甲3:
3a)「【請求項1】 流動性を有すると共に、イグチ科の茸を全体に対して絶乾品として0.005?30重量%又はイグチ科の茸のエキスを全体に対して0.001?10重量%配合してなり、且つレトルト殺菌処理をしないことを特徴とする酸性調味料。」

3b)「【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来、野菜用ドレッシング、マヨネーズ、たれ類などのように、酢酸やクエン酸等の酸性原料が添加された液状又は半固体状であって流動性を有する酸性調味料は、酸性原料による微生物抑制効果によって保存性を向上させているが、これらの中には、耐微生物保存性を優先するために、酸性原料の配合量を多くしてpHを低くする必要があり、酸性調味料の有する香味のバランスを損ねてしまうものもある。特に、最近は酸味だけではなく塩分を抑えた香味特徴を有する酸性調味料も望まれる傾向にあるが、塩分の配合量を低下させつつ耐微生物保存性を確保するためには、酸性原料の配合量を増加させてpHを低くしなければならない。また、酸性調味料であっても比較的pHが高いものについては製品化に際してレトルト殺菌処理を行なう必要が生じる。
【0003】このような問題点を解決するために、従来より、酢馴れ効果、即ち酸性調味料等を摂取したときに、酸性調味料等に配合された酸性原料の酸味を低減させる効果を有する食品原料として蔗糖、サッカリンなどの甘味成分を配合させる、或いは増量することが提案されているが、これらの甘味成分を配合すると酸性調味料等の香味のバランスが崩れてしまうために、必ずしも満足しうる結果は得られていないのが現状である。
【0004】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、酸性原料の添加濃度を増加してpHを低くしても酸味をあまり感じず、耐微生物保存性に優れ、且つレトルト殺菌処理を行なう必要もない酸性調味料を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、酸性調味料の原料の一部としてイグチ科の茸を配合すると、酸性調味料に含有される酸性原料の酸味が低減されることを見い出し、本発明をなすに至った。」

3c)「【0010】本発明の酸性調味料に配合される「イグチ科の茸」とは、担子菌類ハラタケ目イグチ科の菌類である。代表的な茸としては、例えばヤマドリタケ(学名;Boletus edulis,イタリア名;ポルチーニ,フランス名;セップ,ドイツ名;シュタインピルツ,英語名;ボレッツ)、アミタケ(学名 Suillus bovinus)、ヤマイグチ(学名 Leccinum scabrum)等を挙げることができる。これらの茸を配合する際の形態は特に制限されるものではなく、例えば生(冷凍品,冷蔵品,常温品)、乾燥品、缶詰、各種調味品のいずれの形態でも配合することができ、また加工方法も丸ごと、カット(スライス、ダイス等)品、粉末、液状あるいはペースト状等のいずれであってもよい。更に、茸そのものを上記のようにして使用する他、例えば、水,油脂類,エタノール,ヘキサン,アセトン等の溶媒、超臨界ガス、カラム精製等の公知の各種抽出方法を利用して茸から抽出した抽出物(エキス)を用いることも可能である。本発明の場合、茸の保存安定性等を考慮すれば、これらの中でも乾燥カット品、乾燥粉末、エキス等が特に好適である。
【0011】本発明の酸性調味料における上記イグチ科の茸の配合量は、茸そのものを配合するか、抽出物(エキス)として配合するかなどによって異なり、茸そのものを配合する場合、絶乾品(完全に乾燥した状態に換算)として、調味料全体に対して0.005?30%(重量%、以下同様)、好ましくは0.01?20%、より好ましくは0.05?10%であり、特に茸としてヤマドリタケを使用する場合、絶乾品として好ましくは0.1?30%、より好ましくは0.1?20%、特に好ましくは0.1?10%とすると好適である。一方、イグチ科の茸の抽出物(エキス)を用いるならば、調味料全体に対して0.001?10%、好ましくは0.001?5%であり、特にヤマドリタケのエタノール抽出物(エキス)を使用する場合、好ましくは0.001?10%、より好ましくは0.001?5%、特に好ましくは0.005?3%とすると好適である。いずれの場合も、茸又はそのエキスの配合量が少なすぎると酢馴れ効果を十分に得ることができず、多すぎると茸の香味が強くなり過ぎて調味料全体の香味バランスが損なわれる。
【0012】本発明の酸性調味料は、本発明の効果を妨げない限り上記必須成分以外にも、必要に応じて通常の酸性調味料に配合される各種成分を適宜配合することができ、例えば砂糖,異性化糖,果糖,ブドウ糖,麦芽糖などの糖類、食塩,グルタミン酸ナトリウム,核酸,醤油,みそ,味醂,酒類などの各種調味料、上記柑橘果汁以外の各種果汁、トマト,玉葱,大根,人参,大蒜,オリーブ,葱,生姜,胡麻,ピーナッツ,アーモンドなどの野菜・種子類、各種スパイス・ハーブ類、ビーフ,ポーク,チキン,卵,魚介類などの動物性物質、大豆油,コーン油,ヒマワリ油,サフラワー油,菜種油,綿実油,オリーブ油,ゴマ油などの液状食用油、色素、酸化防止剤、増粘剤等を通常量配合することができる。」

3d)「【0018】[実施例1]乾燥ヤマドリタケから含水エタノールを溶媒として常法により抽出したヤマドリタケエキスを用い、このエキスと表1に示した組成中の水性の成分原料とを混合して調味液を調製した後、この調味液の上に菜種サラダ油を重層して、実施例1の分離液状ドレッシング(酸性調味料)を得た。
【0019】
【表1】

*日本農林規格「食酢の日本農林規格」に準じて測定した酢酸換算の酸度
・・・
【0023】[実施例3]表2の組成となるように各成分原料を混合して実施例3のノンオイルドレッシング(酸性調味料)を得た。
【0024】
【表2】

*日本農林規格「食酢の日本農林規格」に準じて測定した酢酸換算の酸度」

甲4:
4a)「【請求項1】
きのこ子実体の乾燥物を粉砕して得られる乾燥粉末に大豆多糖類及び還元糖を添加することを特徴とする、きのこ子実体の乾燥粉末のえぐ味緩和方法。
【請求項2】
きのこが、医薬品や医薬部外品、食品等に供される担子菌又は子のう菌から選択されるきのこである請求項1記載のえぐ味緩和方法。
【請求項3】
大豆多糖類が水溶性多糖類でヘミセルロースを主成分とするものである請求項1又は2に記載のえぐ味緩和方法。
【請求項4】
還元糖が、単糖類又は二糖類から選択されるものである請求項1?3のいずれか1項に記載のえぐみ緩和方法。
【請求項5】
添加により得られる組成物に対して、0.1?10w/w%の大豆多糖類、5?25w/w%の還元糖を添加してなる請求項1?4のいずれか1項に記載のえぐ味緩和方法。」

4b)「【0002】
【従来の技術】
きのこ類は、ヌクレオチドやアミノ酸、有機酸、マンニトールやトレハロースなどの糖質のバランスによって特有のうま味を有しており、そのまま乾燥し粉末状、あるいは熱水などで抽出した液状物として食品等に適度の量を配合することにより味の改善剤として利用されている。しかし、きのこ類は、えぐ味などの不快感を伴う味も保有しており、特に医薬品や医薬部外品、食品等としてそのまま乾燥粉末などの固形物として多量に摂取する場合に、このえぐ昧が口中に残り違和感をもたらす。中でも健康食品などとして継続的に摂取する場合、特に問題となる。きのこ類にはビタミン類や良質の食物繊維、多糖類など健康に役立つ成分が豊富に含まれており、特に近年では、β-D-グルカンに代表されるきのこ類の各成分には癌を含む各種生活習慣病予防に効果があるとの研究報告が多く発表され、医薬品や医薬部外品、食品等として液剤や固形剤として製剤化されている。液剤については、きのこ類を熱水や有機溶媒抽出などから得たエキスを用いることで不快味を除去したり、甘味剤や矯味剤あるいは香味などの添加によってマスキング化することで、しかも水に分散又は溶解希釈されているため、このえぐ味は比較的抑え易い。一方、固形剤の場合、えぐ味を緩和するための方法として、フィルムコーチング化や不溶化体の形成、包接化合物化、吸着化あるいは甘味剤や芳香剤などによるマスキング化等の手段で行われている。しかし、きのこ類の香味が弱く、又はなくなったり、あるいは配合する甘味や香味の味が支配的になり過ぎて、きのこ類のうま味も同時に抑えてしまう。また、製造方法が複雑でコストがかかりすぎる等問題も多く、いまだ、きのこ類の香味を保ちながらえぐ味を抑える方法は報告されていない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、きのこ類の香味を保ちながら、不快なえぐ味が緩和された組成物を提供することを目的とする。」

4c)「【0009】
次に例えばきのこ子実体よりきのこ乾燥粉末を製造する場合の方法についての一例を下記に述べる。まず、きのこ子実体を自然乾燥、加圧乾燥、常圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などの方法で乾燥を行う。乾燥したきのこを一辺数mmの大きさの立方体状になるように粗粉砕を行い、これを高温、高圧の殺菌装置や過飽和加熱蒸気の発生する殺菌装置、あるいは、紫外線照射装置などを用いて、きのこ中の微生物を死滅させるような殺菌工程を行う。更に、粉砕装置で微粉砕を行い、篩い機などで100メッシュ通過の微粉末のみを回収して、この粉末を本発明のきのこえぐ味緩和組成物の原料として用いる。」

4d)「【0011】
還元糖としては、単糖類、二糖類又はこれらの混合物を言うが、好ましくはグルコースやフルクトース、ラクトース、ショ糖がある。きのこ類への配合量は組成物に対し好ましくは5?25w/w%、より好ましくは10?20w/w%で、添加する方法としては、水又は有機溶媒などで溶解したものを加えてもよいが、きのこ類に直接混合してもよく特に制限されるものではない。」

甲5:
5a)「【請求項1】
ごまを素材とする風味成分及びトレハロースを含有し、水相と油相を含む液体調味料。
・・・
【請求項3】
更に、食酢を含むものである請求項1又は2記載の液体調味料。
【請求項4】
水相部と油相部が分離した分離型ドレッシングである請求項1?3のいずれか1項に記載の液体調味料。」

5b)「【0005】
従って、本発明の目的は、ごまを焙煎し、擂った直後の風味を維持した液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題について、ごまを素材とする風味成分を含有し、水相と油相を含有する液体調味料に種々の素材、方法を組み合わせる検討を行ったところ、トレハロースを組み合わせることにより、ごまを焙煎し、擂った直後の風味が維持されることを見出した。」

5c)「【0015】
また、本発明の液体調味料においては、水相と油相を有する乳化型の形態のものも含まれるが、水相が存在しても、焙煎ごまを擂った直後の風味を維持する点から、水相部の上に油相部が積載されてなる水相部と油相部が分離した分離型ドレッシングであることが好ましい。更に、トレハロースは水相中に溶解させておくことにより、調味料としての甘さを有する点からも好ましい。特に、トレハロースは、液体調味料の原料である砂糖の一部、又は全部に置き換え、液体調味料中2?10質量%、更に、3?7質量%添加することが好ましい。」

甲6:
6a)「(3) 出願時における当業者の認識
ア 高甘度甘味料が酸味のマスキング剤としての機能を備えるとの認識について
引用例(甲1)の記載に加え,後掲の各証拠によれば,本件特許の出願日において,当業者に次の事項が知られていたことが認められる。
(ア) 甘味,塩から味,酸味,苦味といった単純化された基本味のうち2つを混合すると,味を強める効果(対比効果)や味を弱める効果(抑制効果)が働く(甲2)。
酸味の食物にショ糖を加えた場合には酸味が減少し(甲1,2,3,7),その場合に,酸味は,ショ糖の添加量が多くなるに従って減少するものの(甲2,3),量的に比例するものではなく(甲3),酸味食物の酸味を消すために多量のショ糖を添加すると,甘味がつきすぎて味のバランスが崩れることがある(甲1,3)。」(17頁5?16行)

甲7:
7a)「(2) サポート要件の適合性について
ア 特許法36条6項1号は,特許請求の範囲の記載に際し,発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えて記載してはならない旨を規定したものであり,その趣旨は,発明の詳細な説明に記載していない発明について特許請求の範囲に記載することになれば,公開されていない発明について独占的,排他的な権利を請求することになって妥当でないため,これを防止することにあるものと解される。
そうすると,所定の数値範囲を発明特定事項に含む発明について,特許請求の範囲の記載が同号所定の要件(サポート要件)に適合するか否かは,当業者が,発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から,当該発明に含まれる数値範囲の全体にわたり当該発明の課題を解決できると認識できるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。」(31頁16行?32頁1行)

第5 当審の判断
1 理由1について
(1)甲1及び3に記載された発明
甲1には、酸性液状調味料の製造方法についての記載があるところ(摘示1a)、酸性液状調味料が植物の種子、果実などを通常乾繰した香味、辛味付与用の原料であるスパイス類を水相部に含むものであることが記載され(摘示1a、1b、1c)、その具体例として、実施例1に、水相部原料として、食酢(酸度8%のモルト酢)38.0%、清水50.76%、砂糖9.5%、グルタミン酸ソーダ0.5%、粗砕スパイス類(等重量の混合品)0.8%、キサンタンガム0.03%、ローカストビーンガム0.03%、グアーガム0.38%を含有し、油相部原料として、大豆サラダ油100.00を含有する分離型ドレッシング形態の酸性液状調味料が記載されている(摘示1d)。
したがって、甲1には、
「水相部原料として、食酢(酸度8%のモルト酢)38.0%、清水50.76%、砂糖9.5%、グルタミン酸ソーダ0.5%、粗砕スパイス類(等重量の混合品)0.8%、キサンタンガム0.03%、ローカストビーンガム0.03%、グアーガム0.38%を含有し、油相部原料として、大豆サラダ油100.00%を含有し、水相部と油相部の配合割合が重量割合で8:2である分離型ドレッシング形態の酸性液状調味料」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。

また、甲3には、「流動性を有すると共に、イグチ科の茸を全体に対して絶乾品として0.005?30重量%又はイグチ科の茸のエキスを全体に対して0.001?10重量%配合してなり、且つレトルト殺菌処理をしないことを特徴とする酸性調味料」が記載されているところ(摘示3a)、当該イグチ科の茸として、ヤマドリタケ(ポルチーニ)が具体的に例示され(摘示3c、3d)、また、酸性調味料に果糖、ブドウ糖等を通常量配合することができること(摘示3c)、果糖ぶどう糖液糖及び乾燥ヤマドリタケスライスを配合したノンオイルドレッシング(酸性調味料)が具体的に記載されている(摘示3d)。
したがって、甲3には
「流動性を有すると共に、ヤマドリタケ(ポルチーニ)を全体に対して絶乾品として0.005?30重量、及び果糖ぶどう糖液糖を配合してなり、且つレトルト殺菌処理をしないことを特徴とする酸性調味料」の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認める。

(2)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)甲1発明について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「砂糖」は、本件発明1の「2糖類及び/又は異性化糖」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「2糖類及び/又は異性化糖を配合した酸性液状調味料」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明1が「凍結乾燥キノコ粉末(但し、エノキタケの凍結乾燥粉末を除く。)」を配合するものであり、「前記凍結乾燥キノコ粉末1部に対し」、「2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上である」と特定するものであるのに対し、甲1発明は、食酢(酸度8%のモルト酢)、清水、グルタミン酸ソーダ、粗砕スパイス類(等重量の混合品)、キサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム、大豆サラダ油を含有するものの、凍結乾燥キノコ粉末(但し、エノキタケの凍結乾燥粉末を除く。)を配合するものでなく、その2糖類及び/又は異性化糖との配合比も特定されていない点

上記<相違点1>について検討する。
甲2には、生のキノコを凍結、粉砕、乾燥した食品素材が記載され(摘示2a)、さらに、キノコ類を野菜や果物と同様の食材として捉え、温風乾燥や凍結乾燥などにより乾燥し、これを粉末化したものはすでに存在していること(摘示2b)、液体スープ類等の食品に用いること(摘示2c)が記載されている。
しかし、甲2にキノコ類を野菜等と同様の食材として捕らえることが記載されていたとしても、甲1には、用いるスパイス類が植物の種子等を香辛料としたものであることが記載されている(摘示1c)から、甲1に記載のスパイス類として植物の種子等ではない凍結乾燥キノコ粉末(但し、エノキタケの凍結乾燥粉末を除く。)を用いることが当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
また、仮に甲1に記載のスパイス類として、凍結乾燥キノコ粉末(但し、エノキタケの凍結乾燥粉末を除く。)を用いることを当業者が容易になし得た事項であったといえたとしても、甲1、甲2には、「凍結乾燥キノコ粉末1部に対し」、「2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上である」ことは記載も示唆もされていないから、そのような配合割合の範囲において凍結乾燥キノコ粉末、2糖類及び/又は異性化糖を配合することは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。
甲3には、従来より、酢馴れ効果を有する食品材料として、蔗糖等の甘味成分を配合、増量することが提案されていること、実施例として、酸性調味料全体に対して、砂糖を7.0%、果糖ぶどう糖液糖を10.0%配合することが記載されており(摘示3b、3d)、甲5には、ごまを素材とする風味成分及びトレハロースを含有する液体調味料について、トレハロースを液体調味料中2?10質量%添加することが記載されているものの(摘示5a?5c)、凍結乾燥キノコ粉末に対する2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量について記載、示唆するものではないから、それらの記載をみても、甲1発明において、「凍結乾燥キノコ粉末(但し、エノキタケの凍結乾燥粉末を除く。)」を配合し、「前記凍結乾燥キノコ粉末1部に対し」、「2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上である」とすることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

効果について
本件明細書の記載からみて、本件発明1は、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供することができるという効果を奏するものであり(【0010】)、明細書の実施例1?3、比較例1、2、試験例1、2の記載からみて、凍結乾燥キノコ粉末を使用すること、2糖類及び/又は異性化糖を配合すること、凍結乾燥キノコ粉末と2糖類及び/又は異性化糖の配合割合が本件発明1で特定される範囲内であることにより、上記の効果を奏することが確認できる(【0025】?【0044】)。
一方、甲4には、きのこ子実体の乾燥物を粉砕して得られる乾燥粉末に大豆多糖類及び還元糖を添加することによって、きのこ子実体の乾燥粉末のえぐ味を緩和することが記載されており(摘示4a?4d)、甲5には、水相と油相を含有する液体調味料において、ごまにトレハロースを組み合わせることにより、ごまを焙煎し、擂った直後の風味が維持されることが記載されている(摘示5a?5c)ものの、酸性液状調味料において、凍結乾燥キノコ粉末(但し、エノキタケの凍結乾燥粉末を除く。)と2糖類及び/又は異性化糖を特定の配合割合で配合した場合に、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供することができることは、甲1?5のいずれにも記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するといえる。

以上のとおりであるから、本件発明1は甲1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(イ)甲3発明について
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「ヤマドリタケ(ポルチーニ)」の「絶乾品」は本件発明1の「キノコ」、「(但し、エノキタケの凍結乾燥粉末を除く。)」に相当し、いずれも乾燥されている点で共通する。
甲3発明の「果糖ぶどう糖液糖」は本件発明1の「2糖類及び/又は異性化糖」に相当する。
甲3発明の「酸性調味料」は「流動性を有する」ものであるところ、流動性を有する酸性調味料は液状のものを当然に包含し(摘示3b)、甲3には具体例として、液状であると認められるノンオイルドレッシングが記載されている(摘示3d)から、本件発明1の「酸性液状調味料」に相当する。
したがって、本件発明1と甲3発明とは、
「乾燥キノコ(但し、エノキタケの凍結乾燥粉末を除く。)と2糖類及び/又は異性化糖とを配合した酸性液状調味料」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2>
キノコについて、本件発明1が「凍結乾燥キノコ粉末」と特定しているのに対し、甲3発明は、「絶乾品」であり、その形状が特定されていない点

<相違点3>
本件発明1が「凍結乾燥キノコ粉末1部に対し」、「2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上である」と特定しているのに対し、甲3発明は、ヤマドリタケ(ポルチーニ)を全体に対して絶乾品として0.005?30重量配合するとされているものの、ヤマドリタケ(ポルチーニ)と果糖ぶどう糖液糖との配合割合が特定されていない点

上記相違点について検討する。
<相違点2>について
甲3には、ヤマドリタケ(ポルチーニ)等のイグチ科の茸について、配合する際の形態は特に制限されるものではなく、生、乾燥品等のいずれの形態でも配合することができ、加工方法も粉末等のいずれであっても良い旨が記載されており(摘示3c)、キノコ類を凍結乾燥し粉末とすることも公知であるから(摘示2b)から、甲3発明のヤマドリタケ(ポルチーニ)を凍結乾燥粉末とすることは当業者が容易になし得た事項である。

<相違点3>について
甲3には、砂糖、異性化糖等の成分は通常量配合することができることが記載されている(摘示3c)が、その具体的な量は明らかではない。また、具体例として、ヤマドリタケエキス1.0%(乾燥した場合は、割合が少なくなると認める。)に対して、砂糖7.0%を配合した例(実施例1)、乾燥ヤマドリタケスライス2.0%に対して果糖ぶどう糖液糖を10.0%配合した例(実施例3)が記載されているが(摘示3d)、実施例1のヤマドリタケエキスは、凍結乾燥キノコ粉末とはその形態や成分が大きく異なるから、その配合量を以て、凍結乾燥キノコ粉末1部に対して2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量を7部以上とすることが記載乃至示唆されているとはいえず、実施例3における乾燥ヤマドリタケスライスと果糖ぶどう糖液糖との配合割合は本件発明1の範囲内になく、凍結乾燥キノコ粉末1部に対して2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量を7部以上とすることが記載乃至示唆されているとはいえない。
そして、甲1、2、4及び5のいずれにも、「凍結乾燥キノコ粉末1部に対し」、「2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上」配合することは記載も示唆もされておらず、そのように配合することは出願時の技術常識でもない。
したがって、この点は当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。

効果について
上記(ア)で述べたのと同様である。

以上のとおりであるから、本件発明1は甲1?5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1について、「凍結乾燥キノコ粉末のキノコが、ポルチーニである」ことを特定したものであるといえるところ、上記アのとおり、本件発明1が甲1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないのであるから、本件発明2も甲1?5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 理由2について
特許異議申立人の主張の概要は、具体的には以下のとおりである。
本件発明1?2の解決しようとする課題は、「保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供すること」であるところ、本件発明1?2では、「前記凍結乾燥キノコ粉末1部に対し、前記2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上である」とされ、凍結乾燥キノコ粉末1部に対する2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量の下限のみが7部と特定され、上限は特定されていない。
しかし、本件明細書では、具体的に、凍結乾燥キノコ粉末の配合量0.5?1%に対して、2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量の配合割合では10?20部、2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量では、5?12%の範囲のものだけが記載されている。
一方、酸性調味料において甘味が多すぎると味のバランスが失われること、マスキング剤の量が多すぎると、マスキング対象の素材そのものの風味を抑えてしまうことは、本件出願前の技術常識である。
そうすると、本件出願時の技術常識を考慮すると、2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量の配合割合が7部以上であるという数値範囲で特定されている本件発明には、キノコの風味が維持できないものや、甘味が多すぎて酸性調味料の味のバランスが失われているものや、マスキング効果が及ばないほどキノコ粉末量が多い酸性液状調味料が包含されており、本件発明に含まれる数値範囲全体にわたり当該発明の課題を解決できるとはいえない。
したがって、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明において、その課題を解決することができることを当業者が認識できるように記載されているとはいえず、発明の詳細な説明に記載されているとはいえないから、本件出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

そこで以下に検討する。
(1)発明の詳細な説明の記載
a)「【0001】
本発明は、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性液状調味料とは、植物油、食酢、塩、香辛料等を基本とした、主として野菜サラダにかけるソースであり、乳化液状調味料、分離液状調味料、及びノンオイル調味料等が知られている。
多種多様な味わいの酸性液状調味料が市販されており、中にはキノコの風味を特徴としたキノコ配合酸性液状調味料が市販されている。
【0003】
キノコを配合した酸性液状調味料は、キノコの良好な香りを楽しめるものが望まれているが、キノコを配合すると良好な香りと同時にキノコ特有の不快臭も発生してしまうという課題があった。これは特に酸性環境下で顕著に感じられるものである。
【0004】
従来、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持する方法として、「ひじきの熱水抽出物」を添加する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、酸性環境下でキノコ特有の不快臭を充分に抑えることができなかった。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく酸性液状調味料に使用されている様々な配合原料、及び製造工程について鋭意研究を重ねた。その結果、キノコ原料として特定の乾燥方法によって得られるキノコ粉末と特定の糖類とを酸性液状調味料に配合することで、意外にも、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)凍結乾燥キノコ粉末と2糖類及び/又は異性化糖とを配合する、酸性液状調味料、
(2)(1)記載の酸性液状調味料であって、
凍結乾燥キノコ粉末1部に対し2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上である酸性液状調味料、
(3)(1)又は(2)記載の酸性液状調味料であって、
前記凍結乾燥キノコ粉末のきのこが、ポルチーニである酸性液状調味料、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供することができ、さらなる酸性液状調味料の需要拡大が期待される。」

b)「【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の調味料を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0012】
<本発明の特徴>
本発明は、凍結乾燥キノコ粉末と2糖類及び/又は異性化糖とを配合することにより、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持することができる。
・・・
【0016】
<凍結乾燥キノコ粉末の配合量>
凍結乾燥キノコ粉末の配合量は、0.1%以上1%以下であるとよく、0.2以上0.8%以下であると更によい。凍結乾燥キノコ粉末の配合量が前記範囲内であることにより、キノコの良好な風味を感じることができる。
・・・
【0019】
<凍結乾燥キノコ粉末1部に対する2糖類及び/又は異性化糖の配合割合>
凍結乾燥キノコ粉末1部に対し、2糖類及び/又は異性化糖を7部以上であるとよく、更に10部以上であると、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持することができる。
一方、凍結乾燥キノコ粉末と2糖類及び/又は異性化糖との配合割合の上限値は、特に制限されないが、酸性液状調味料の味のバランスから35部以下であるとよく、30部以下であると更によい。
【0020】
<2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量>
酸性液状調味料に対する2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量は、1%以上がよく、2%以上がさらによい。2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が前記値以上であると、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持することができる。
一方、2糖類及び/又は異性化糖の上限の合計配合量は、酸性液状調味料全体の味のバランスを考慮し、10%以下がよく、9%以下が更によい。
・・・
【0023】
<本発明の作用効果>
本発明の酸性液状調味料は、凍結乾燥キノコ粉末と2糖類及び/又は異性化糖とを配合することにより、保存後においてもキノコ特有の不快臭を抑制され、良好な風味を有することができる。作用機序は以下のように考える。
凍結乾燥キノコ粉末は、凍結乾燥工程の特徴上、水分が抜けスポンジ状の構造になっており、そこに2糖類及び/又は異性化糖が浸み込みやすくなっているためか、凍結乾燥キノコ粉末に不快臭が残存している、又は保存中に不快臭が発生したとしても、キノコ粉末中に浸み込んだ2糖類及び/又は異性化糖によって、不快臭を抑制することができるものと推測される。
一方、熱風乾燥や天日乾燥では、凍結乾燥のようなスポンジ状の構造が得られないためか、2糖類及び/又は異性化糖を組合わせても不快臭をし難いものと推測される。」

c)「【0024】
以下、本発明の実施例、比較例を述べ、本発明を更に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【0025】
[実施例1]
<乳化液状調味料の製造方法>
下記の配合割合に準じ、まず植物油以外の原料をミキサーで均一に混合し水相部を調製した後、当該水相部を攪拌させながら油層の植物油を徐々に注加して粗乳化物を製した。得られた粗乳化物を更に高速で攪拌して仕上げ乳化した後、250mL容量のポリエチレンテレフタレート製の容器(以下、PET容器)に充填し、乳化液状調味料を製した。
【0026】
<乳化液状調味料の配合割合>
(油相)
植物油 40%
(水相)
醸造酢(酸度5%) 13%
卵黄 3%
凍結乾燥キノコ粉末 0.5%
(ポルチーニ)
砂糖 10%
食塩 2.5%
グルタミン酸ナトリウム 0.2%
キサンタンガム 0.1%
香辛料 0.1%
清水 残余
??????????????????
合計 100%
【0027】
得られた乳化液状調味料を25℃で1か月間保存後、喫食したところ、乳化液状調味料は、キノコ特有の不快臭が抑制されキノコ風味が良好であった。
【0028】
[比較例1]
凍結乾燥キノコ粉末(ポルチーニ)を熱風乾燥キノコ粉末(ポルチーニ)に変更した以外は、実施例1に準じて乳化液状調味料を製した。
【0029】
得られた乳化液状調味料を25℃で1か月間保存後、喫食したところ、乳化液状調味料は、キノコ特有の不快臭がして、キノコの良好な風味が損なわれていた。
【0030】
[比較例2]
凍結乾燥キノコ粉末(ポルチーニ)をペースト状のキノコに変更した以外は、実施例1に準じて乳化液状調味料を製した。
【0031】
得られた乳化液状調味料を25℃で1か月間保存後、喫食したところ、乳化液状調味料は、キノコの良好な風味が損なわれていた。
【0032】
[試験例1]
糖類の種類の違いによる本発明の効果への影響を調べた。すなわち、実施例1において、糖類の種類を表1に示す糖類に変更した以外は、実施例1と同様の方法で容器詰め乳化液状調味料を製し、25℃で2か月間保存した。保存後の得られたそれぞれの乳化液状調味料を喫食して、本発明の効果を評価した。
【0033】
「保存後のキノコ特有の不快臭が抑制されキノコ風味が良好か」の評価
ランク:基準
A:キノコ特有不快臭が抑制され、良好なキノコ風味である。
B:キノコ特有の不快臭が若干感じられるが、問題ない程度である。
C:キノコ特有の不快臭が感じられ、キノコ風味が劣っている。
【0034】
【表1】

【0035】
表1より2糖類及び/又は異性化糖を配合した酸性液状調味料は、保存後のキノコの不快臭を抑制し、キノコの良好な風味を有することが理解できる。一方、単糖やデキストリン類を配合した酸性液状調味料は、キノコの不快臭を十分抑制できず、キノコ特有の良好な風味が得られないことが理解できる。
【0036】
[試験例2]
凍結乾燥キノコ粉末と砂糖との配合割合の違いによる本発明の効果への影響を調べた。すなわち、実施例1において凍結乾燥キノコ粉末と砂糖との配合割合を表1に示す割合で配合した以外は、実施例1と同様の方法で容器詰め乳化液状調味料を製し、25℃で2か月間保存した。保存後の得られたそれぞれの乳化液状調味料を喫食して、本発明の効果を評価した。
【0037】
【表2】

【0038】
表2より、凍結乾燥キノコ粉末1部に対し、砂糖を8部以上配合する酸性液状調味料は、キノコ特有の不快臭を抑制し、キノコの良好な風味を得られることが理解できる。特に10部以上配合すると、更に良いことが理解できる。一方、砂糖を配合しないと、キノコ特有の不快臭が抑制されず、良好なキノコ風味が得られないことが理解できる。
【0039】
[実施例2]
<分離液状調味料の製造方法>
下記の配合に準じ、まず水相部の原料をミキサーで均一に混合し水相部を調製した。そして、分離液状調味料の容量が250mLとなるように250mL容量のPET容器に上記水相部を充填した後に、残りの油相部である植物油を充填して水相部に油相部を積層させ、次いで密栓し分離液状調味料を製した。
【0040】
<分離液状調味料の配合割合>
(油相部)
植物油 30%
(水相部)
食酢(酸度5%) 13%
卵黄 3%
凍結乾燥キノコ粉末
(椎茸) 1%
ブドウ糖果糖液糖 10%
三温糖 2%
食塩 2.5%
グルタミン酸ソーダ 0.2%
キサンタンガム 0.2%
香辛料 0.1%
清水 残余
???????????????????
合計 100%
【0041】
得られた分離液状調味料を上下に振って一時的に乳化させた後、喫食したところ、キノコ特有の不快臭を抑制し、キノコの良好な風味を得られることが理解できる。
【0042】
[実施例3]
<分離液状調味料の製造方法>
下記の配合に準じ、まず水相部の原料をミキサーで均一に混合し水相部を調製した。そして、分離液状調味料の容量が250mLとなるように250mL容量のPET容器に上記水相部を充填した後に、残りの油相部である植物油を充填して水相部に油相部を積層させ、次いで密栓し分離液状調味料を製した。
【0043】
<分離液状調味料の配合割合>
(油相部)
植物油 30%
(水相部)
食酢(酸度5%) 13%
卵黄 3%
凍結乾燥キノコ粉末
(マッシュルーム) 1%
果糖ブドウ糖液糖 10%
グラニュー糖 2%
食塩 2.5%
グルタミン酸ソーダ 0.2%
キサンタンガム 0.2%
香辛料 0.1%
清水 残余
???????????????????
合計 100%
【0044】
得られた分離液状調味料を上下に振って一時的に乳化させた後、喫食したところ、キノコ特有の不快臭を抑制し、キノコの良好な風味を得られることが理解できる。」

(2)判断
発明の詳細な説明の記載、特に【0007】の記載からみて、本件発明の解決しようとする課題は、「保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供すること」であると認める。
当該課題に関し、発明の詳細な説明には、「キノコ原料として特定の乾燥方法によって得られるキノコ粉末と特定の糖類とを酸性液状調味料に配合することで、意外にも、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。」こと(摘示a、【0008】)、「本発明によれば、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供することができ」ること(摘示a、【0010】)が記載され、また、凍結乾燥キノコ粉末1部に対する2糖類及び/又は異性化糖の配合割合について、「凍結乾燥キノコ粉末1部に対し、2糖類及び/又は異性化糖を7部以上であるとよく、更に10部以上であると、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持することができる。一方、凍結乾燥キノコ粉末と2糖類及び/又は異性化糖との配合割合の上限値は、特に制限されないが、酸性液状調味料の味のバランスから35部以下であるとよく、30部以下であると更によい。」(摘示b、【0019】)と記載されている。
さらに、実施例1、比較例1及び2において、醸造酢を含有し、凍結乾燥キノコ粉末(ポルチーニ)0.5%、砂糖10%含有する乳化液状調味料が、25℃で1か月間保存後、キノコ特有の不快臭が抑制されキノコ風味が良好であったのに対し、凍結乾燥キノコ粉末(ポルチーニ)を熱風乾燥キノコ粉末(ポルチーニ)、ペースト状のキノコに変更したものは、キノコ特有の不快臭がしたり、キノコの良好な風味が損なわれていたことが、試験例2において、実施例1において凍結乾燥キノコ粉末と砂糖との配合割合を1:20(凍結乾燥キノコ粉末と砂糖の配合量がそれぞれ、0.5%と10%(実施例1の配合))、1:10(同じく、0.5%と5%)、1:5(同じく、0.5%と2.5%)、砂糖の配合なし(同じく0.5%と0%)に変更した乳化液状調味料について、25℃で2か月間保存後にキノコ特有の不快臭と良好なキノコ風味を評価した結果が記載されている(摘示c)。
そして、凍結乾燥キノコ粉末1重量部に対して、2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が5重量部である酸性液状調味料についても問題ない程度であることが具体的に記載されており(摘示c、【0033】、【0037】)、キノコ粉末中に浸み込んだ2糖類及び/又は異性化糖によって、不快臭を抑制することができるものと推測されることが記載されており(摘示b、【0023】)、さらに、凍結乾燥キノコ粉末1重量部に対して、2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が10及び20重量部である酸性液状調味料について、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持することができることが具体的に記載されているから(摘示c、【0026】、【0027】、【0033】、【0037】)、凍結乾燥キノコ粉末1部に対し2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量の下限が7部であれば、上記課題を解決することができると当業者が認識できるといえる。
一方、凍結乾燥キノコ粉末1部に対し2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量の上限値について、発明の詳細な説明には、「特に制限されないが、酸性液状調味料の味のバランスから35部以下であるとよく、30部以下であると更によい。」との記載がある(摘示b、【0019】)が、当該記載は、酸性液状調味料の味のバランスを考慮した際の望ましい上限値を述べているに過ぎず、そこに記載されている数値範囲よりも2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が多い場合に、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供することができないことを示すものとはいえない。
また、発明の詳細な説明には、凍結乾燥キノコ粉末の配合量について、「凍結乾燥キノコ粉末の配合量は、0.1%以上1%以下であるとよく、0.2以上0.8%以下であると更によい。凍結乾燥キノコ粉末の配合量が前記範囲内であることにより、キノコの良好な風味を感じることができる。」との記載(摘示b、【0016】)、2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量について、「酸性液状調味料に対する2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量は、1%以上がよく、2%以上がさらによい。2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が前記値以上であると、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持することができる。一方、2糖類及び/又は異性化糖の上限の合計配合量は、酸性液状調味料全体の味のバランスを考慮し、10%以下がよく、9%以下が更によい。」との記載(摘示b、【0020】)がそれぞれあるが、いずれも、キノコの良好な風味、キノコ由来の不快臭等を考慮した望ましい数値範囲が記載されている程度であり、そこで記載されている数値範囲以外である場合に、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供することができないことを示しているとはいえない。
たしかに、2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が多くなると、甘味が多すぎて味のバランスが崩れる場合や、マスキング作用が強くなる場合があるともいえるが、本件発明の課題は、「保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供すること」であり、保存後の不快臭抑制、風味の維持に関するものであるから、甘味が強いからといって、当業者が当該課題を解決できると認識できないとはいえない。
また、実施例、比較例、試験例等の記載から、凍結乾燥キノコ粉末1部に対する2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上であれば、当業者が上記課題を解決することができると認識できるといえ、キノコ粉末量が多い場合であっても、上記配合割合で2糖類及び/又は異性化糖を配合するのであるから、本件発明が、マスキング効果が及ばないほどキノコ粉末量が多く、当業者が上記課題を解決できると認識できない場合を含むとはいえない。
以上のとおりであるから、本件発明は、当業者が上記課題を解決できると認識できるといえ、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。

3 特許異議申立人の主張について
理由1に関して、特許異議申立人は、本件発明1の効果について、凍結乾燥キノコ粉末1部に対する2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上の全範囲にわたって、本件発明1の効果が奏せられるとはいえない旨主張するが、凍結乾燥キノコ粉末1部に対する2糖類及び/又は異性化糖の合計配合量が7部以上であれば、保存後においてもキノコ由来の不快臭が抑制され、良好なキノコ風味を維持した酸性液状調味料を提供できるといえることは上記2で述べたとおりであり、当該主張は採用できない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?2は、甲第1?5号証に記載された発明に基いて、本件発明に係る出願日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1?2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるとはいえない。
また、本件発明1?2は発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、本件発明1?2に係る出願は、その特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に適合せず、同法第36条第6項に規定される要件を満たしていないとはいえず、本件発明1?2に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものであるとはいえない。
したがって、本件発明1?2に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消すことができない。
また、他に本件発明1?2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-05-25 
出願番号 特願2015-110846(P2015-110846)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 林 康子松田 芳子千葉 直紀  
特許庁審判長 村上 騎見高
特許庁審判官 冨永 保
天野 宏樹
登録日 2019-06-28 
登録番号 特許第6546011号(P6546011)
権利者 キユーピー株式会社
発明の名称 酸性液状調味料  
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