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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06T
審判 全部申し立て 2項進歩性  G06T
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G06T
管理番号 1363188
異議申立番号 異議2020-700016  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-14 
確定日 2020-06-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第6567460号発明「位置検出装置、位置検出方法、位置検出プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6567460号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6567460号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成28年4月20日の出願であって、令和元年8月9日にその特許権の設定登録(特許公報発行日 令和元年8月28日)がされ、令和2年1月14日に特許異議申立人平賀博により請求項1?4に対して特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
本件特許の請求項1?4に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明4」という。また、本件発明1?本件発明4を総称して「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
ここで、本件発明1?4の各構成には、(A1)?(F)の符号を当審において付した。以下、構成A1?構成Fと称する。

(本件発明1)
【請求項1】
(A1)複数の対象物が封入され、表面に複数のパターンが付され且つ該表面側から光が照射されるシート状物を該表面側から撮影したカラー画像である撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
(B1)前記撮影画像から前記対象物および前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第1プレーン情報を取得すると共に、前記撮影画像から前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第2プレーン情報を取得するプレーン情報取得部と、
(C1)前記第1プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記対象物および前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成し、該プレーン画像から第1二値化画像を生成すると共に、前記第2プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成し、該プレーン画像から第2二値化画像を生成する二値化画像生成部と、
(D1)前記第1二値化画像と前記第2二値化画像との差分をとることにより、差分画像を生成し、該差分画像に基づいて前記対象物の前記撮影画像上の位置を検出する対象物検出部と、
(E1)を備えることを特徴とする位置検出装置。

(本件発明2)
【請求項2】
(F)色空間であるRGBのうちの何れかの成分、色空間であるHSLのうちの何れかの成分、およびRGBのうちの2つの成分の一方から他方を差し引いた成分の中から、何れかの成分を前記色成分として持つプレーン画像を生成するための、前記第1及び第2プレーン情報を含む複数種類のプレーン情報を格納する格納部を更に備え、
前記第1プレーン情報および前記第2プレーン情報は、前記複数種類のプレーン情報の中から予め選択される
ことを特徴とする請求項1記載の位置検出装置。

(本件発明3)
【請求項3】
(E1)位置検出装置が、
(A2)複数の対象物が封入され、表面に複数のパターンが付され且つ該表面側から光が照射されるシート状物を該表面側から撮影したカラー画像である撮影画像を取得し、
(B2)前記撮影画像から前記対象物および前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第1プレーン情報を取得すると共に、前記撮影画像から前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第2プレーン情報を取得し、
(C2)前記第1プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記対象物および前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成し、該プレーン画像から第1二値化画像を生成すると共に、前記第2プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成し、該プレーン画像から第2二値化画像を生成し、
(D2)前記第1二値化画像と前記第2二値化画像との差分をとることにより、前記対象物を含む差分画像を生成し、該差分画像に基づいて前記対象物の前記撮影画像上の位置を検出する
(E2)ことを特徴とする位置検出方法。

(本件発明4)
【請求項4】
(E3)コンピュータを、
(A1)複数の対象物が封入され、表面に複数のパターンが付され且つ該表面側から光が照射されるシート状物を該表面側から撮影したカラー画像である撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
(B1)前記撮影画像から前記対象物および前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第1プレーン情報を取得すると共に、前記撮影画像から前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第2プレーン情報を取得するプレーン情報取得部と、
(C1)前記第1プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記対象物および前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成し、該プレーン画像から第1二値化画像を生成すると共に、前記第2プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成し、該プレーン画像から第2二値化画像を生成する二値化画像生成部と、
(D1)前記第1二値化画像と前記第2二値化画像との差分をとることにより、差分画像を生成し、該差分画像に基づいて前記対象物の前記撮影画像上の位置を検出する対象物検出部
(E3)として機能させるための位置検出プログラム。

3 特許異議申立理由
特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。

(理由1)進歩性(特許法第29条第2項)
本件発明1?本件発明4は、甲第1号証?甲第6号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、本件発明1?本件発明4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

甲第1号証:特開2012-98191号公報
甲第2号証:特表2015-535108号公報
甲第3号証:特開2011-137704号公報
甲第4号証:国際公開第2014/080966号
甲第5号証:特開2007-3494号公報
甲第6号証:特開2015-197361号公報

(理由2)実施可能要件(特許法第36条第4項第1号)、サポート要件(同条第6項第1号)及び明確性(同条同項第2号)

(a)本件発明1においては、「複数の対象物が封入され、表面に複数のパターンが付され且つ該表面側から光が照射されるシート状物を該表面側から撮影したカラー画像」とある。
ここで、「前記撮影画像から前記対象物および前記パターンを特徴量として抽出」するためには、少なくとも、いわゆる「基部シート」が透明であることが必要であると考える。しかしながら、本件発明1では、単に「シート状物」としか記載されておらず、シート状物がどのような構成を有しているのかが不明であって発明が不明確となっている。
また、「シート状物」と記載されている本件発明1に対し、実施形態では、「基部シート300」と、「印刷文字」の付された「蓋シート500」とからなる「PTPシート600」の事例が記載されているのみである。それ故、いわゆるサポート要件を具備しているとは言えない。(以下、「理由a」という。)

(b)また、実施形態では、「蓋シート500」の表面に印刷文字が付された事例が記載されている。
しかしながら、本件発明では、単に「対象物」、「パターン」としか規定されておらず、例えば、『「錠剤(対象物)」自体に、「パターン(印刷等)」が付されたようなもの』、『「基部シート300」、特に、その「ポケット」に「パターン(印刷等)」が付されたようなもの』なども含みうると解することもできるが、明細書中にはそのような記載はなされていない。
結果として、この点においても発明が不明確であり、サポート要件を具備しない。(以下、「理由b」という。)

(c)本件発明には、単に「パターン」と規定されているに過ぎない。この点、明細書には「印刷文字」の事例しか記載されておらず、例えば「刻印等」の凹凸によるパターンも含みうるのか、また、その場合、どのようにして当業者が実施可能であるのかが明らかでない。
よって、発明が不明確であり、実施可能要件を満たしていない。(以下、「理由c」という。)

上記理由a?理由cから、本件発明1?4に係る特許は、特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号及び同条同項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。

4 甲号証について
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、次の記載がある。なお、以下の下線は当審で付したものである。

「【0001】
本発明は、入力画像をテンプレート画像と比較して入力画像に最も近似するテンプレート画像を選出することにより入力画像の識別を行う画像識別装置に関し、特に、PTP(press through package)包装がされた錠剤やカプセル等の薬剤の識別を行うのに適した画像識別装置に関する。」

「【0013】
そこで、本発明の目的は、PTP包装された錠剤の識別検査に際し、通常の撮影手段で撮影されたPTP包装済みの錠剤の画像データに基づいて高い精度で錠剤の識別を行うことを可能とする画像識別装置及びそのプログラムを提供することにある。」

「【0018】
尚、本発明においてはPTP包装の持つ重要な特徴である「色」を用いて識別を行う。一般に、PTP包装は、内部に錠剤やカプセルを含み、その表面には文字やマークなどの印刷が施されている。これらはそれぞれ色分けされており、PTP包装ごとにバラエティーに富んだ配色となっている。この事実に着目し、本発明においては色情報を識別のための特徴量として用いることとした。一方、従来から、色に関する記述子は多く提案されている。例えば、MPEG7の動画像検索では「色相分布記述子(Color Layout Descriptor;CLD)」や「代表色記述子(Dominant Color Descriptor;DCD)」などが用いられている。」

「【0028】
〔1〕構成
図1は、本発明の実施例1に係る画像識別装置の構成を表す図である。図1において、本実施例の画像識別装置1は、撮影装置2で撮影されるPTP包装された錠剤の画像データに基づき、その錠剤の種類を識別するための装置である。画像識別装置1は、対象画像記憶手段3、テンプレート記憶手段4、物体像記憶手段5、物体像抽出手段6、平均値ベクトル演算手段7、共分散行列演算手段8、固有値・固有ベクトル演算手段9、CDD演算手段10、CDD距離演算手段11、テンプレート選択手段12、出力装置13、及びテンプレート格納手段14を備えている。尚、これらの構成は、専用のLSIや汎用のFPGA等のプログラマブル論理デバイスを用いて、ハードウェア的に構成してもよいが、プログラムとしてソフトウェアにより構成し、コンピュータに読み込ませて実行することで、機能的に図1の画像識別装置1を実現するようにしてもよい。
【0029】
対象画像記憶手段3は、撮影装置2で撮影される画像データを記憶する。撮影装置2においては、識別の対象であるPTP包装された錠剤の画像である対象画像が撮影される。この対象画像が対象画像記憶手段3に格納される。」

「【0031】
物体像記憶手段5は、対象画像内から抽出される物体像の画像を記憶する。
【0032】
物体像抽出手段6は、対象画像記憶手段3から対象画像を読み出し、当該対象画像から物体像を抽出し、物体像画像として物体像記憶手段5に格納する。対象画像から物体像を抽出する方法は、エッジ検出による領域抽出等、既に種々の方法が知られており、それら公知の方法により物体像の抽出が行われる。」

「【0041】
〔2〕動作
以上のように構成された本実施例に係る画像識別装置1について、以下その動作を説明する。尚、画像識別装置1では、事前準備として、PTP包装された各種の錠剤のサンプルを撮影して各テンプレート画像の色分散記述子D_(α)(α=1,…,M)をテンプレート記憶手段4に保存しておく。そして、その後、実際に検査を行うPTP包装された錠剤の識別を行う。
【0042】
(1)テンプレート情報作成処理
(1-1)まず、撮影装置2は、PTP包装された錠剤のサンプルを撮影し、そのサンプルの画像データ(対象画像)が対象画像記憶手段3に保存される。図2にPTP包装された錠剤のサンプルの画像データの一例を示す。
【0043】
(1-2)次に、物体像抽出手段6は、サンプルの画像データからサンプルの物体像を切り出し、切り出されたサンプルの物体像は物体像記憶手段5に保存される。
【0044】
(1-3)次に、平均値ベクトル演算手段7は、物体像記憶手段5に格納された物体像画像の各画素の色ベクトルp_(i)(i=1,…,N;Nは物体像画像の画素数)の平均値ベクトルp_(ave)を式(1c)により算出する。
【0045】
(1-4)次に、共分散行列演算手段8は、平均値ベクトルp_(ave)及び物体像記憶手段5に格納された物体像画像の各画素の色ベクトルp_(i)(i=1,…,N)から、式(1a)により分散共分散行列Sを算出する。ここで、分散共分散行列Sは、K×K個の要素を有する正方行列である。最初に撮影される対象画像がRGB画像の場合、K=3であり、分散共分散行列Sは3×3要素の正方行列となる。
【0046】
(1-5)次に、固有値・固有ベクトル演算手段9は、分散共分散行列Sの固有値λ_(k)及び固有ベクトルφ_(k)(k=1,…,K)を算出する。
【0047】
(1-6)CDD演算手段10は、分散共分散行列Sの各固有値λ_(k)から式(1d)により寄与率r_(k)を算出し、式(1e)により定義される色分散記述子Dを算出する。
ここで、固有値λ_(k)及び固有ベクトルφ_(k)は、それぞれ、K個ずつ算出される。固有ベクトルφ_(k)については、定数倍の自由度があるが、ここでは規格化条件||φ_(k)||^(2)=1を満たすように固有ベクトルφ_(k)を算出する。各固有ベクトルφ_(k)は、色ベクトルp_(i)の分布の3つの主軸方向にそれぞれ向いた単位ベクトルを表している。また、固有値λ_(k)は、k番目の主軸に沿った分散を表している。従って、式(1d),(1e)における寄与率r_(k)は、各主軸方向の色ベクトルp_(i)の分布の分散の比率を表している。また、ここでは説明の便宜のため、λ_(1)≧λ_(2)≧λ_(3)≧0,0≦r_(3)≦r_(2)≦r_(1)≦1であるとする。
【0048】
もし、PTP包装された錠剤が殆どグレースケール画像に近いもの(例えば、銀色のシート上に白い錠剤が封入され黒い印字がされている場合など)であれば、主軸φ_(1)が支配的な役割を果たし、他の主軸φ_(2),φ_(3)は殆ど意味をなさないことになる。この場合、r_(1)≒1,r_(2)≒0,r_(3)≒0となる。故に、式(1d)の寄与率r_(k)は、重み係数として用いるのに適していることが分かる。以下では、ベクトルr_(k)φ_(k)を「寄与ベクトル」と呼ぶ。色分散記述子Dは、色ベクトルp_(i)の分布のK個の寄与ベクトルr_(k)φ_(k)の組である。
【0049】
(1-7)最後に、テンプレート格納手段14は、CDD演算手段10により算出される色分散記述子Dを、α番目(α=1,…,M;Mはテンプレート画像の数)のテンプレート画像の色分散記述子D_(α)として、テンプレート記憶手段4に格納する。
【0050】
以上の(1-1)?(1-7)の操作を、M個のPTP包装された錠剤のサンプルについて繰り返し実行する。これにより、テンプレート記憶手段4には、M組のテンプレート画像の色分散記述子D_(α)(α=1,…,M)が蓄積されることになる。
【0051】
(2)錠剤識別処理
上記(1)のテンプレート情報作成処理を行うことにより事前準備ができた後、次に、以下のような錠剤識別処理によりPTP包装された錠剤の識別を行う。
【0052】
(2-1)まず、撮影装置2は、識別の対象であるPTP包装された錠剤を撮影し、その画像データを対象画像として対象画像記憶手段3に保存する。
【0053】
(2-2)次に、上述の(1-2)?(1-6)と同様の処理動作によって、対象画像の色分散記述子D={r_(1)φ_(1),…,r_(k)φ_(k)}を算出する。
【0054】
(2-3)次に、CDD距離演算手段11は、テンプレート記憶手段4に記憶された各テンプレート画像の色分散記述子D_(α)(α=1,…,M;Mはテンプレート画像の数)とCDD演算手段10が算出する色分散記述子Dとの距離S_(CV)(D,D_(α))を下式(1f),(1g)により算出する。
【0055】
色分散記述子D,Dαの距離S_(CV)(D,D_(α))は、式(1f),(1g)により定義される。ここで、||・||はL1ノルムを表し、ベクトルx=[x_(1),…,x_(k)]のL1ノルムは、||x||=|x_(1)|+…+|x_(k)|で計算される。図3に、式(1g)における距離d(r_(k)φ_(k),r_(α,k)φ_(α,k))の例を図示する。固有ベクトルφ_(k)の符号に関しては不定性が残るため、固有ベクトルφ_(k)の符号に関しては、正でも負でも同じ距離となるように式(1g)のような定義をした。
【0056】
(2-4)最後に、テンプレート選択手段12は、テンプレート記憶手段4に記憶された各テンプレート画像のうち、距離S_(CV)(D,D_(α))が最小のテンプレート画像を選択し、選択したテンプレート画像の番号αを識別結果として出力する。出力装置13は、テンプレート選択手段12が出力する識別結果を表示、印刷等により出力する。」

「【図2】



イ 甲1発明
上記アから、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
ここで、甲1発明の各構成には、(a)?(f24)の符号を当審において付した。以下、構成a?構成f24と称する。

(甲1発明)
(a)入力画像をテンプレート画像と比較して入力画像に最も近似するテンプレート画像を選出することにより入力画像の識別を行う画像識別装置に関し、特に、PTP(press through package)包装がされた錠剤やカプセル等の薬剤の識別を行うのに適した画像識別装置であって、
(a1)PTP包装された錠剤の識別検査に際し、通常の撮影手段で撮影されたPTP包装済みの錠剤の画像データに基づいて高い精度で錠剤の識別を行うことを可能とする画像識別装置を提供することを目的とし、
(a2)一般に、PTP包装は、内部に錠剤やカプセルを含み、その表面には文字やマークなどの印刷が施されており、これらはそれぞれ色分けされており、PTP包装ごとにバラエティーに富んだ配色となっており、この事実に着目して色情報を識別のための特徴量として用いることとし、
(a3)画像識別装置1は、撮影装置2で撮影されるPTP包装された錠剤の画像データに基づき、その錠剤の種類を識別するための装置であって、
(a4)画像識別装置1は、対象画像記憶手段3、テンプレート記憶手段4、物体像記憶手段5、物体像抽出手段6、平均値ベクトル演算手段7、共分散行列演算手段8、固有値・固有ベクトル演算手段9、CDD演算手段10、CDD距離演算手段11、テンプレート選択手段12、出力装置13、及びテンプレート格納手段14を備えており、

(b)対象画像記憶手段3は、撮影装置2で撮影される画像データを記憶し、
(c)撮影装置2においては、識別の対象であるPTP包装された錠剤の画像である対象画像が撮影され、この対象画像が対象画像記憶手段3に格納され、
(d)物体像記憶手段5は、対象画像内から抽出される物体像の画像を記憶し、
(e)物体像抽出手段6は、対象画像記憶手段3から対象画像を読み出し、当該対象画像から物体像を抽出し、物体像画像として物体像記憶手段5に格納し、
対象画像から物体像を抽出する方法は、エッジ検出による領域抽出等、既に種々の方法が知られており、それら公知の方法により物体像の抽出が行われ、

(f)画像識別装置1の動作は、画像識別装置1では、事前準備として、PTP包装された各種の錠剤のサンプルを撮影して各テンプレート画像の色分散記述子D_(α)(α=1,…,M)をテンプレート記憶手段4に保存しておき、その後、実際に検査を行うPTP包装された錠剤の識別を行うものであって、

(f1)(1)テンプレート情報作成処理は、
(f11)(1-1)まず、撮影装置2は、PTP包装された錠剤のサンプルを撮影し、そのサンプルの画像データ(対象画像)が対象画像記憶手段3に保存され、図2にPTP包装された錠剤のサンプルの画像データの一例を示し、
(f12)(1-2)次に、物体像抽出手段6は、サンプルの画像データからサンプルの物体像を切り出し、切り出されたサンプルの物体像は物体像記憶手段5に保存され、
(f13)(1-3)次に、平均値ベクトル演算手段7は、物体像記憶手段5に格納された物体像画像の各画素の色ベクトルp_(i)(i=1,…,N;Nは物体像画像の画素数)の平均値ベクトルp_(ave)を算出し、
(f14)(1-4)次に、共分散行列演算手段8は、平均値ベクトルp_(ave)及び物体像記憶手段5に格納された物体像画像の各画素の色ベクトルp_(i)(i=1,…,N)から、分散共分散行列Sを算出し、
(f15)(1-5)次に、固有値・固有ベクトル演算手段9は、分散共分散行列Sの固有値λ_(k)及び固有ベクトルφ_(k)(k=1,…,K)を算出し、
(f16)(1-6)CDD演算手段10は、分散共分散行列Sの各固有値λ_(k)から寄与率r_(k)を算出し、色分散記述子Dを算出し、
(f17)(1-7)最後に、テンプレート格納手段14は、CDD演算手段10により算出される色分散記述子Dを、α番目(α=1,…,M;Mはテンプレート画像の数)のテンプレート画像の色分散記述子D_(α)として、テンプレート記憶手段4に格納し、
(f18)以上の(1-1)?(1-7)の操作を、M個のPTP包装された錠剤のサンプルについて繰り返し実行し、これにより、テンプレート記憶手段4には、M組のテンプレート画像の色分散記述子D_(α)(α=1,…,M)が蓄積されることになり、

(f2)(2)錠剤識別処理は、上記(1)のテンプレート情報作成処理を行うことにより事前準備ができた後、次に、以下のような錠剤識別処理によりPTP包装された錠剤の識別を行うものであり、
(f21)(2-1)まず、撮影装置2は、識別の対象であるPTP包装された錠剤を撮影し、その画像データを対象画像として対象画像記憶手段3に保存し、
(f22)(2-2)次に、上述の(1-2)?(1-6)と同様の処理動作によって、対象画像の色分散記述子D={r_(1)φ_(1),…,r_(k)φ_(k)}を算出し、
(f23)(2-3)次に、CDD距離演算手段11は、テンプレート記憶手段4に記憶された各テンプレート画像の色分散記述子D_(α)(α=1,…,M;Mはテンプレート画像の数)とCDD演算手段10が算出する色分散記述子Dとの距離S_(CV)(D,D_(α))を算出し、
(f24)(2-4)最後に、テンプレート選択手段12は、テンプレート記憶手段4に記憶された各テンプレート画像のうち、距離S_(CV)(D,D_(α))が最小のテンプレート画像を選択し、選択したテンプレート画像の番号αを識別結果として出力し、出力装置13は、テンプレート選択手段12が出力する識別結果を表示、印刷等により出力するものである

(a)画像識別装置1。

(2)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、次の記載がある。

「【0001】
開示された実施形態は、錠剤の同定のためのデジタル画像処理に関し、具体的には、錠剤の識別を容易にするようにデジタル画像の色を補正することに関する。」

「【0005】
色は、特に錠剤の色が同じ大きさと形状を有する2つの異なる錠剤の間には非常にいくつかの相違点の一つであり、時には錠剤の識別のために、対象物の識別に使用される重要な機能である。ただし、対象物の色が異なる照明条件の下で異なって見えることができる。撮像された色が修正されない場合はこのように、錠剤の誤認が発生する可能性がある。
【0006】
この課題を認識し、従来の錠剤の識別技術は、しばしば理想的な照明条件は、デジタル画像処理中に使用することを必要としていた。理想的な照明条件は、撮像された色は錠剤の実際の色であることを確認することができる。残念ながら、真の色画像が得られる理想的な照明条件を見つけることが一般的にほとんどの個人のために便利ではない。さらに、(例えば、ヒストグラム均等化など)シーン内の色分布に基づいて、伝統的な色補正方法は、一般的に錠剤を識別するための良好な色補正にはならない。
【0007】
そのため、理想的な照明条件よりも少なく補償し、錠剤の識別の前に錠剤の撮像された色を自動的に補正することができる色補正方法が必要である。」

「【0011】
錠剤は、タブレット、カプセル、カプレット、もしくは、経口的に摂取される、薬剤、処方又は店頭での他の固体単位である。錠剤は他の特徴の中で、色、大きさ、形状によって外観が異なる。デジタル画像及び信号処理により錠剤識別が錠剤を識別するために、錠剤の外観でこれらの違いを利用する。例えば、各個人は、1つ以上の錠剤を撮像するためにスマートフォンなどのモバイルデバイスを使用することができる。スマートフォン上に存在し、もしくはスマートフォンから遠隔で存在するソフトウェアは、画像を処理することで複数の錠剤を区分化し、各撮像された錠剤の特徴を識別し、各錠剤の識別を決定するために、各錠剤の識別された特徴を、錠剤特徴のデータベースと比較する。錠剤データベースは、データベース内の各錠剤の色の表示を含む。各錠剤の色が標準化され、1つ又はいくつかの色の基準(例えば、RGB、HSV、YUV等)の複数を使用して表される。従って、一つ以上の錠剤を撮像したとき、各錠剤のための1つ以上の色値が決定された後、決定された色値がデータベースに格納された色値と比較される。色の一致は各錠剤を識別の一工程である。」

「【0017】
制御された表面200は、図2に示される。制御された表面200は、錠剤が撮像された背景210を含む。背景210は、好ましくは、密集してパッケージ化され近接した間隔を有する矩形の行列を含むマルチ色チェッカーボードの背景である。高密度の着色チェッカーボードパターンは、撮像された錠剤と、適切な錠剤の区別化のために必須である背景との間のコントラストを形成するために使用される。背景210は、既知の色特性の境界220によって囲まれている。典型的には、境界220は、既知の白である。境界220は、他の色であってもよいが、好ましくは無彩色(白黒)であることができる。境界220の色は既知であるので、境界220を含む画像の対応する境界領域は、色の違いを決定するために、境界220の色特性と比較することができる。」

「【0030】
許容可能な画像が取得されると、画像は色補正のために処理することができる。このことは、既知の色値を有する無彩色の境界220の領域をサンプリングし、既知の値のサンプリング値を比較することによって行われる。サンプリング処理のロバスト性を改善しかつ(例えば、表面の斑点、小さな傷、汚れ又は小粒子などの)境界220上の不整合から結果としてえられる誤差又はノイズを回避するために、境界220の複数のサンプルは、実際には、サンプルポイント付近の画素の組の切り捨て平均値を表す。例えば、サンプルは境界220上のポイント(x,y)を中心とした場合、得られたサンプルは、ポイント(x,y)を中心とするn行n列の画素のそれぞれの色サンプルの平均値が割り当てられる。平均の色値を計算するときに、範囲外の画素が破棄される。従って、ポイントのサンプル(x,y)はn行n列の画素の切り捨て平均である。複数のサンプルポイントは、境界220の周りに取られる。」

(3)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、次の記載がある。

「【0001】
本発明は、錠剤などの被検査物品の形状における欠損を検査する外観検査装置、表面検査装置、及び外観検査方法に関する。」

「【0038】
図7(a)、(b)は、本実施形態による第1外観検査装置8の6つの反射体22を介して撮像された、被検査物品Sの側面の画像例を示す概念図である。ある1つの反射体22からの画像に注目すると、図7(a)に示すような画像が得られる。図7(a)において、白い部分が被検査物品(虚像)S、黒い部分が背景(ドラム5)であり、被検査物品(虚像)Sの上面と(下側)エッジLを含む側面とが撮像される。第1外観検査装置8では、背景(ドラム5)と被検査物品(虚像)Sとの輝度差や、色成分差、ソーベルフィルタ、ラプラシアンフィルタなどの手法を用いて、被検査物品Sと背景との色の違い(境界)を、被検査物品Sの(下側)エッジLとして検出する。」

(4)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、次の記載がある。

「[0001] 本発明は、薬剤の数量を鑑査するための薬剤鑑査装置、及び当該薬剤鑑査装置を備えた薬剤分包装置に関する。」

「[0008] 上述した本発明の薬剤鑑査装置は、前記薬剤候補領域抽出工程が、前記背面側照明画像をグレイスケール化して背面照明グレイ画像を取得する処理と、前記背面照明グレイ画像を二値化処理することにより分包袋に付された印字及び薬剤の存在が想定される印字・薬剤想定領域として特定する処理と、前記背面照明グレイ画像をトップハット処理することにより得られたトップハット領域、及び前記背面照明グレイ画像をボトムハット処理することにより得られたボトムハット領域の和領域を印字の存在が想定される印字想定領域として導出する処理と、を実施し、前記印字・薬剤想定領域と前記印字想定領域との差分により、薬剤の存在が想定される薬剤候補領域Aを導出することを特徴とするものであることが望ましい。」

「[0054] 具体的には、図7に示すメインルーチンに係る制御フローがステップ1-1にある場合には、図8に示すサブルーチンのステップ2-1のグレイ画像取得処理が実行される。グレイ画像取得処理は、背面側照明画像をグレイスケール化した画像を背面照明グレイ画像を取得する処理である。その後、制御フローがステップ2-2に進められ、ステップ2-1において得られた背面照明グレイ画像を動的二値化処理することにより分包袋bに付された印字及び薬剤の存在が想定される印字・薬剤想定領域を切り出す処理(切出処理)が実施される。すなわち、印字及び薬剤の影については背面照明グレイ画像において黒色あるいは暗色として写っており、背景については白色あるいは明色として写っている。そのため、背面照明グレイ画像を動的二値化処理することにより、印字及び薬剤が存在する領域(黒色系領域)を、背景の領域(白色系領域)から切り出すことができる。
[0055] ステップ2-2において切出処理が完了すると、制御フローがステップ2-3に進められ、印字想定領域導出処理が実施される。印字想定領域導出処理においては、背面照明グレイ画像をトップハット処理することにより周辺よりも明るい領域(トップハット領域)導出する。また、背面照明グレイ画像をボトムハット処理することにより、周辺よりも暗い領域(ボトムハット領域)を導出する。このようにしてトップハット領域及びボトムハット領域は、印字の存在が想定される領域(印字想定領域)に相当する。そこで、制御装置60は、トップハット領域とボトムハット領域の和領域を、印字の存在が想定される印字想定領域として導出する。
[0056] ステップ2-3において印字想定領域の導出が完了すると、制御フローがステップ2-4に進められ、差分処理が実行される。具体的には、ステップ2-2において特定された印字・薬剤想定領域と、ステップ2-3において特定された印字想定領域との差分を取ることにより、薬剤の存在が想定される薬剤候補領域A(図6(c)において白線によって囲まれた領域)が導出される。ステップ2-4において薬剤候補領域Aが導出されると、ステップ2-5においてノイズ除去処理が実行され、ノイズが除去される。その後、ステップ2-6において、薬剤候補領域Aを縮小する画像処理(薬品候補領域縮小処理)が実施される。すなわち、薬剤候補領域Aを画定する輪郭線を薬剤候補領域Aの内側にオフセットした輪郭線により囲まれた領域を縮小薬剤候補領域A2(図6(d)において白線で囲まれた領域)として導出する。この画像処理は、後に詳述する鑑査領域規定工程における画像処理の前処理として実施される。これにより、図8に示したサブルーチンが完了し、制御フローが図7に示したメインルーチンのステップ1-2に進行する。」

(5)甲第5号証の記載事項
甲第5号証には、次の記載がある。

「【0001】
本発明は、主として半導体素子を実装する実装基板における微細な配線パターンの画像を用いて配線パターンの良否を検査する配線パターンの検査方法およびその装置に関するものである。」

「【0038】
ところで、上述の構成では、撮像手段としてのTVカメラ11として白黒の濃淡画像を出力するものを用いる例を示したが、カラー画像を出力するものを用いる場合には、分離手段21においてカラー画像の三刺激値を用いて基台1aと配線パターン1bとを分離する。つまり、TVカメラ11からはR,G,Bの三刺激値を持つ色信号が出力されるから、これらの3種類の色信号から基台1aと配線パターン1bとの色を分離するのに適した2色を選択し、当該2色の差分を二値化することにより基台1aの領域と配線パターン1bの領域とを分離する。」

(6)甲第6号証の記載事項
甲第6号証には、次の記載がある。

「【0001】
本発明は、表面検査装置および表面検査方法に関するものである。」

「【0010】
撮影部はカラーフィルターを有し、カラーフィルターは第1波長の第1光と第2波長の第2光と第3波長の第3光とを分離する。これにより、撮影部は落射照明部により第1光が照射された画像である第1画像を出力することができる。さらに、撮影部は第1斜照明部により第2光が照射された画像である第2画像を出力することができる。さらに、撮影部は第2斜照明部により第3光が照射された画像である第3画像を出力することができる。」

「【0015】
画像演算部は第1画像と第2画像との差分を演算して差分画像を算出する。差分画像では、凹凸の斜面と第1方向と直交する面との輝度の差が大きくなる。従って、画像演算部は差分画像を用いて樹脂膜の輪郭を容易に認識することができる。その結果、画像演算部は樹脂膜の形状に関する特徴量を容易に演算することができる。」

5 当審の判断
(1)理由1(進歩性)について
(1-1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。

(ア)構成A1について
構成c及び構成fの「PTP包装された錠剤」は、構成f11の図2に示される例からみて、「複数の錠剤が封入されたシート状のPTP包装」といえる。
構成a2に「PTP包装は、内部に錠剤やカプセルを含み、その表面には文字やマークなどの印刷が施され」とあるから、構成c及び構成fの「PTP包装された錠剤」は、「表面に複数のパターンが付され」ているといえる。
よって、構成c及び構成fの「PTP包装された錠剤」は、構成A1の「複数の対象物が封入され、表面に複数のパターンが付され」た「シート状物」に相当する。

構成c及び構成f11の「対象画像」は、「PTP包装された錠剤」が撮影装置2において撮影された画像であるから、構成A1の「撮影画像」に相当する。

ここで、構成aの「PTP(press through package)包装がされた錠剤やカプセル等の薬剤の識別」は、構成a2によれば、「色情報を識別のための特徴量として用いる」から、甲1発明の入力画像である構成c及び構成f11の「対象画像」は、カラー画像であることは明らかである。
また、構成f11の「図2にPTP包装された錠剤のサンプルの画像データ」は、PTP包装の表面側から撮影した画像であり、撮影装置で撮影する際に撮影装置側から光を照射することも当然の構成(常套手段)である。
そうすると、構成c及び構成f11の「対象画像」は、「表面側から光が照射されるPTP包装を該表面側から撮影したカラー画像」といえる。
したがって、構成c及び構成f11の「対象画像」は、構成A1の「複数の対象物が封入され、表面に複数のパターンが付され且つ該表面側から光が照射されるシート状物を該表面側から撮影したカラー画像である撮影画像」に相当する。

そして、構成eの「物体像抽出手段6」は、構成c及び構成f11の「対象画像」を格納した対象画像記憶手段3から対象画像を読み出すから、構成A1の「複数の対象物が封入され、表面に複数のパターンが付され且つ該表面側から光が照射されるシート状物を該表面側から撮影したカラー画像である撮影画像を取得する撮影画像取得部」に相当する。

(イ)構成B1?構成D1について
本件発明1は、対象物の撮影画像上の位置を検出するにあたり、撮影画像から色成分を示すプレーン情報を取得するものである。これに対し、甲1発明では、対象画像から物体像を抽出する方法は、エッジ検出による領域抽出等、既に種々の方法が知られており、それら公知の方法により物体像の抽出が行われるものとされているが、対象画像から色成分を示すプレーン情報を取得することは特定されていない。
よって、本件発明1及び甲1発明は、本件発明1が「前記撮影画像から前記対象物および前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第1プレーン情報を取得すると共に、前記撮影画像から前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第2プレーン情報を取得するプレーン情報取得部」(構成B1)を備えているのに対し、甲1発明が構成B1を備えていない点(以下、「相違点1」という。)で相違する。
そして、前記のとおり、甲1発明は第1プレーン情報及び第2プレーン情報を取得しておらず、かつ、二値化画像も生成していないから、本件発明1及び甲1発明は、本件発明1が「前記第1プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記対象物および前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成し、該プレーン画像から第1二値化画像を生成すると共に、前記第2プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成し、該プレーン画像から第2二値化画像を生成する二値化画像生成部」(構成C1)を備えているのに対し、甲1発明が構成C1を備えていない点(以下、「相違点2」という。)で相違する。
さらに、前記のとおり、甲1発明は第1二値化画像及び第2二値化画像を生成しておらず、かつ、両画像の差分もとっていないから、本件発明1及び甲1発明は、本件発明1が「前記第1二値化画像と前記第2二値化画像との差分をとることにより、差分画像を生成し、該差分画像に基づいて前記対象物の前記撮影画像上の位置を検出する対象物検出部」(構成D1)を備えているのに対し、甲1発明が構成D1を備えていない点(以下、「相違点3」という。)で相違する。

(ウ)構成E1について
構成aの「画像識別装置」は、構成a2によれば色情報を「PTP包装された錠剤」の識別のための特徴量として用いるものであり、構成eの「物体像抽出手段6」が「対象画像から物体像を抽出」することは、構成f1の「テンプレート情報作成処理」及び構成f2の「錠剤識別処理」において、物体像の色情報を特徴量として用いるのに必要な部分を取り出すためであり、当該色情報を用いた識別には位置の情報は用いられていないから、「物体像抽出手段6」が位置を検出するものとは認められない。また、画像識別装置全体をみても、位置を検出する構成は存在しない。したがって、甲1発明は「画像検出装置」とはいえない。
よって、甲1発明は、「装置」である点で本件発明1と共通し、当該装置が「位置検出」のものでない点(以下、「相違点4」という。)で本件発明1と相違する。

(エ)一致点及び相違点
上記(ア)?(ウ)から、本件発明と甲1発明との間の一致点は
「(A1)複数の対象物が封入され、表面に複数のパターンが付され且つ該表面側から光が照射されるシート状物を該表面側から撮影したカラー画像である撮影画像を取得する撮影画像取得部と、
(E1’)を備えることを特徴とする装置。」
であり、相違点は上記相違点1?相違点4である。

イ 判断
上記相違点のうち、まず相違点2(構成C1)について検討する。

構成C1の「前記第1プレーン情報」及び「前記第2プレーン情報」とは、それぞれ、構成B1の「前記撮影画像から前記対象物および前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第1プレーン情報」及び「前記撮影画像から前記パターンを特徴量として抽出するための色成分を示す第2プレーン情報」のことであると認められる。
そして、甲第2号証?甲第6号証の記載事項は、上記4(2)?(6)に示したとおりであり、甲第2号証には、錠剤の識別のために異なる照明下で撮影された錠剤の色を自動的に補正する技術、甲第3号証には、錠剤の検査装置において、被検査物品と背景との色の違いをエッジとして検出する技術、甲第4号証には、薬剤鑑査装置において、背面照明グレイ画像に対して二値化処理などの処理を行い、印字・薬剤が存在する領域(印字薬剤想定領域)及び印字の存在が想定される領域(印字想定領域)を導出し、それらの差分を取ることにより薬剤候補領域を導出する技術、甲第5号証には、配線パターンの検査装置において、基台と配線パターンを、それぞれを分離するのに適した2色の差分を二値化して分離する技術、及び甲第6号証には、表面検査装置において、2つの異なる波長が照射された第1画像と第2画像の差分画像を算出することにより樹脂膜の輪郭を認識する技術が記載されている。
しかしながら、甲第2号証?甲第6号証には、第1の色成分に基づいて撮影画像から2種類のもの(対象物及びパターン)の特徴量が抽出されたプレーン画像を生成すると共に、第2の色成分に基づいて前記撮影画像から前記2種類のもののうちの一方(パターン)の特徴量が抽出されたプレーン画像を生成することは、記載されているとはいえない。
また、当該構成が周知技術であるとも認められない。
さらに、甲第2号証?甲第6号証に記載の事項から、2つの色成分を利用して対象物及びパターンのプレーン画像とパターンのプレーン画像とを生成する構成を導出することはできない。

よって、「前記第1プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記対象物および前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成し」、及び「前記第2プレーン情報に基づいて前記撮影画像から前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成」する構成を含む構成C1は、甲第1号証?甲第6号証には記載も示唆もされておらず、これにより、甲1発明に甲第2号証?甲第6号証に記載された事項を適用しても、相違点2は当業者であっても容易に想到しうるものとはいえない。

したがって、本件発明1は、その他の相違点である相違点1、相違点3及び相違点4について検討するまでもなく、当業者であっても甲1発明及び甲第2号証?甲第6号証に記載された事項に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

(1-2)本件発明2?本件発明4について
本件発明2?本件発明4も、上記相違点2に係る構成である構成C1又は構成C1と同等の構成C2を備えるものであるから、上記(1-1)と同じ理由により、甲1発明及び甲第2号証?甲第6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)理由2(実施可能要件、サポート要件及び明確性)について
ア 理由aについて
本件発明は、「複数の対象物が封入され、表面に複数のパターンが付され且つ該表面側から光が照射されるシート状物を該表面側から撮影したカラー画像である撮影画像」から第1プレーン情報の色成分に基づいて対象物及びパターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成するものであるから、本件発明の「シート状物」が、封入された対象物が表面側からカラー画像として撮影可能な構成を備えたもの、すなわちシート状物の表面側が対象物の色を透過可能な構成を備えたものであることは明らかである。よって、本件発明は明確なものである。
また、上記のとおり、本件発明は、「シート状物」が、シート状物の表面側が対象物の色を透過可能な構成を備えたものに特定されていることが明らかであるから、実施形態の「基部シート300」と「印刷文字」の付された「蓋シート500」とからなる「PTPシート600」の事例は、本件発明をサポートするものといえる。

イ 理由bについて
本件発明は、対象物が封入され、表面にパターンが付されたシート状物を表面から撮影した画像において、対象物及びパターンの色成分に関する画像とパターンの色成分に関する画像との差分に基づいて対象物の位置を検出するものであるから、本件発明は、当該差分によって位置の検出が可能である「対象物」及び「パターン」の位置や色の関係のものを対象としていることは明らかである。例えば、特許異議申立人が理由bにおいて例示した『「錠剤(対象物)」自体に、「パターン(印刷等)」が付されたようなもの』及び『「基部シート300」、特に、その「ポケット」に「パターン(印刷等)」が付されたようなもの』については、上記位置の検出ができない「対象物」及び「パターン」の位置や色の関係のものは本件発明の対象に含まれないものと解することが相当である。よって、本件発明は明確なものである。
また、上記のとおり、本件発明は、「対象物」及び「パターン」が対象物の撮影画像上の位置を検出可能な位置関係にあるものを対象としていることが明らかであるから、実施形態の「蓋シート500」の表面に印刷文字が付された事例は、本件発明をサポートするものといえる。

ウ 理由cについて
本件発明は、第1プレーン情報の色成分に基づいて撮影画像から対象物及びパターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成すると共に、第2プレーン情報の色成分に基づいて前記撮影画像から前記パターンの特徴量が抽出されたプレーン画像を生成するものであるから、本件発明の「パターン」には、特徴量として抽出可能な色成分を有するものが含まれることは明らかである。なお、「刻印等」についても、当該観点から本件発明の「パターン」に含まれるか否かが判断されるものと解することが相当である。よって、本件発明は明確なものである。
そして、本件発明に含まれる、特徴量として抽出可能な色成分を有する「パターン」は、パターンに係るプレーン画像を生成できるものであるから、当該「パターン」を対象とする本件発明を当業者が実施可能であることは明らかである。

エ 理由2についてのまとめ
上記ア?ウから、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載が、理由a?理由cにより特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号及び同条同項第2号の要件を満たさないもの、ということはできない。

6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-06-09 
出願番号 特願2016-84550(P2016-84550)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06T)
P 1 651・ 537- Y (G06T)
P 1 651・ 536- Y (G06T)
最終処分 維持  
前審関与審査官 千葉 久博  
特許庁審判長 清水 正一
特許庁審判官 樫本 剛
渡辺 努
登録日 2019-08-09 
登録番号 特許第6567460号(P6567460)
権利者 東芝デジタルソリューションズ株式会社 株式会社東芝
発明の名称 位置検出装置、位置検出方法、位置検出プログラム  
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