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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A45F
管理番号 1363354
審判番号 不服2020-2881  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-02 
確定日 2020-06-30 
事件の表示 特願2019-117278「ランドセルカバー」拒絶査定不服審判事件〔、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、令和元年6月25日の出願であって、平成元年9月3日に拒絶の理由が通知され(発送日:令和元年9月10日)、これに対し、令和元年9月26日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成元年11月21日付で拒絶査定がなされ(発送日:令和元年12月3日)、これに対し、令和2年3月2日に拒絶査定不服審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されたものである。


2.特許請求の範囲
令和2年3月2日の手続補正で補正された特許請求の範囲は以下のとおりである。
「【請求項1】
ランドセルの収納部を上部から前面にわたって被覆する被せ蓋に取り付けられるランドセルカバーであって、
装飾体を任意の位置に着脱自在である連続した装飾領域を有し、
上記装飾体と上記装飾領域とは、面ファスナーを利用して相互に着脱自在であることを特徴とするランドセルカバー。
【請求項2】
ランドセルの収納部を上部から前面にわたって被覆する被せ蓋に取り付けられ、装飾体を任意の位置に着脱自在である連続した装飾領域を有するランドセルカバーと、
上記装飾領域に着脱自在な装飾体と、
の組み合わせ物であって、
上記装飾体と上記装飾領域とは、面ファスナーを利用して相互に着脱自在であることを特徴とる組み合わせ物。」
(なお、本願の請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。)

上記補正は、請求人が請求書で主張するように、補正前の請求項1に補正前の請求項2の内容が取り込まれたものが補正後の請求項1であり、補正前の請求項3に補正前の請求項4の内容が取り込まれたものが補正後の請求項2であるから、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除に該当する。


3.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「本願発明は、引用例1(特開2014-128375号公報)に記載された発明及び引用例2(特開2008-237918号公報)に記載の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」


4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2014-128375号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a「【要約】
【課題】使用者が自身の好みに応じて外観を容易に変更可能で、独自性を付与することが可能であり、なおかつ外観を変更するための種々の装飾体を容易に着脱可能なランドセルカバー及びランドセルを提供する。
【解決手段】ランドセルカバー20は、開口部3を有するランドセル本体2の上端部に接続された、開口部3を開閉するための被せ蓋7に取り付けられ、その一部を構成するランドセルカバー本体30により被せ蓋7の外面S3を被覆する。ランドセルカバー本体30には、厚さ方向に貫通するボタンホール80が1又は複数形成されており、ボタンホール80の内周壁80xが弾性材料で構成される。ランドセルカバー本体30の厚さ方向に延びる軸部と軸部の一端に固定された装飾部材とを含む装飾体が、ボタンホール80を介して着脱自在であるように構成される。」
b「【請求項1】
開口部を有するランドセル本体の当該開口部を開閉するための被せ蓋に取り付けられ、その一部を構成するランドセルカバー本体により被せ蓋の外面の少なくとも一部を被覆するランドセルカバーであって、
ランドセルカバー本体に厚さ方向に貫通するカバー本体貫通孔を1又は複数形成するとともに、カバー本体貫通孔の少なくとも内周壁を弾性材料によって構成し、
ランドセルカバー本体の厚さ方向に延びる軸と当該軸の一端に固定された装飾部材とを含む装飾体を、当該カバー本体貫通孔を介して着脱自在としたことを特徴とするランドセルカバー。」

上記記載事項からみて、引用例1には、
「ランドセル本体の開口部を開閉するための被せ蓋に取り付けられるランドセルカバーであって、
装飾体を着脱自在である複数形成されたカバー本体貫通孔を有し、
上記装飾体と上記カバー本体貫通孔は、上記装飾体の装飾部材に一端が固定された軸で着脱可能であるランドセルカバー。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開2008-237918号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
c「【請求項 1】
物を収納して持ち運ぶため、或いは体に装着するための第1の物品と、この第1の物品から独立した機能と用途とを有する第2の物品との組み合わせであって、
第1の物品は、その外表面のうち少なくとも半分の面積を占める外側付着面を有し、
この外側付着面を面ファスナーの雌部で、第2の物品の外表面の一部である被付着面を面ファスナーの雄部でそれぞれ形成して、
この外側付着面上に第2の物品を仮止めできるようにするとともに、第2の物品を剥がしたときに剥離音を生ずるようにしたことを特徴とする、
面ファスナーを利用した相互に着脱自在な複数物品の組み合わせ。」
d「【0030】
本手段では、第1の手段から第4の手段にいう第1の物品を鞄にしたものである。そうすることで、例えば携帯電話やガイドブックなどを鞄の中にしまっておく保管方法と、鞄の表面に取り付けておく保管方法とを適宜に選ぶことができ、利便性が高まるからである。本明細書において、「鞄」とは、面ファスナーの雌材(布地に多数雌部を植設してなる素材をいう)を表面材又は基材として用いて、さまざまな物を入れるように形成した携帯用具をいい、リュックサックやランドセルなどを含む。但し特定の物品の表面を覆う布状のカバーや風呂敷などは対象外である。その特定物品を保持する前提として「鞄」自体がある程度の定形性と強度を有することが必要だからである。」


5.本願発明
(1)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ランドセル本体の開口部を開閉するための被せ蓋」は、本願発明の「ランドセルの収納部を上部から前面にわたって被覆する被せ蓋」に相当する。
本願発明の「装飾領域」は、本願明細書【0031】の「被覆部30aのおもて面は面ファスナーで形成されており、被覆部30aのおもて面全体が、装飾体50を任意の位置に着脱自在である装飾領域となっている。」によれば、装飾体を着脱できる箇所を意味するので、引用発明の装飾体が取り付けられる箇所は装飾領域となるから、引用発明の「装飾体を着脱自在である複数形成されたカバー本体貫通孔」と、本願発明の「装飾体を任意の位置に着脱自在である連続した装飾領域」は、「装飾体をある位置に着脱自在である装飾領域」の点で一致する。
引用発明の「上記装飾体と上記カバー本体貫通孔は、上記装飾体の装飾部材に一端が固定された軸で着脱可能」と、本願発明の「上記装飾体と上記装飾領域とは、面ファスナーを利用して相互に着脱自在」は、「上記装飾体と上記装飾領域とは、所定手段を利用して相互に着脱自在」の点で一致する。

したがって、両者は、
「ランドセルの収納部を上部から前面にわたって被覆する被せ蓋に取り付けられるランドセルカバーであって、
装飾体をある位置に着脱自在である装飾領域を有し、
上記装飾体と上記装飾領域とは、所定手段を利用して相互に着脱自在であるランドセルカバー。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
装飾領域に関し、本願発明は、装飾体を任意の位置に着脱自在である連続したものであるのに対し、引用発明は、装飾体を着脱自在である複数形成されたカバー本体貫通孔である点。
〔相違点2〕
装飾体と装飾領域とが相互に着脱自在であることに関し、本願発明は、面ファスナーを利用するのに対し、引用発明は、装飾体の装飾部材に一端が固定された軸を利用している点。


(2)判断
相違点1、2について
本願発明は、装飾体と装飾領域に面ファスナーを用いることによって、装飾体を装飾領域の任意の位置に着脱可能としている。
引用発明は、ランドセルカバーにカバー本体貫通孔を設け、装飾体を軸を利用して着脱可能としているから、装飾領域が連続した装飾領域となることはない。しかも、引用例1には、装飾体をランドセルカバーの連続した装飾領域の任意の位置に取り付けることは記載も示唆もなく、また、面ファスナーを用いることも記載も示唆もない。
更に、引用例2には、ランドセル等の鞄の表面に面ファスナーを介して物品を着脱自在とすることは記載はあるが、ランドセル等の鞄のカバーに面ファスナーを介して物品を着脱自在とすることは記載も示唆もない。
そうすると、引用発明に面ファスナーを利用して任意の位置に装飾品を着脱自在とすることは動機付けがなく、引用発明に引用例2記載の事項を適用してもランドセルの表面に装飾体を着脱自在とするだけでランドセルカバーに装飾体を着脱自在とするものとはならないから、引用発明において相違点にかかる構成を採用することは当業者が容易に考えられたものとすることはできない。


6.請求項2に係る発明
本願発明と請求項2に係る発明は発明の保護の対象が異なるだけで相違点は本願発明と引用発明の相違点と実質的に同一である。
そして、引用発明において相違点にかかる構成を採用することは当業者が容易に考えられたものとすることはできないのであるから、同様の理由により請求項2に係る発明において相違点にかかる構成を採用することは当業者が容易に考えられたものとすることはできない。


7.むすび
したがって、本願発明及び請求項2に係る発明は、引用発明及び引用例2記載の事項に基づいて当業者が容易に考えられたものとすることはできない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定を維持することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見できない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-06-10 
出願番号 特願2019-117278(P2019-117278)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A45F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 粟倉 裕二  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 窪田 治彦
堀川 一郎
登録日 2020-07-10 
登録番号 特許第6732268号(P6732268)
発明の名称 ランドセルカバー  
代理人 成川 弘樹  
代理人 大崎 絵美  

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