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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1363452
審判番号 不服2018-13546  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-11 
確定日 2020-06-17 
事件の表示 特願2015-524839「再構成可能アンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月 6日国際公開、WO2014/020302、平成27年11月 5日国内公表、特表2015-532031〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)7月12日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年7月31日、英国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 4月 6日 :手続補正書の提出
平成29年 9月21日付け:拒絶理由の通知
平成29年12月28日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年 5月24日付け:拒絶査定
平成30年10月11日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 平成30年10月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年10月11日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「 【請求項1】
支持基板に取り付けられた平衡アンテナおよび不平衡アンテナを有し、
前記平衡アンテナおよび前記不平衡アンテナは両方とも前記基板の同じ端部に位置し、
前記平衡アンテナは、前記基板の端部において設置面積を規定する内向きに対向する2つのL字型アームを有し、
各アンテナには、関係するアンテナの周波数を特定の周波数範囲にわたって所望の動作周波数に調整するために少なくとも1つの可変コンデンサを含む少なくとも1つの整合回路が設けられ、前記平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路は、第1の信号ポートに接続され、前記不平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路は、第2の信号ポートに接続され、
前記不平衡アンテナは、前記平衡アンテナの設置面積の範囲内にある、
再構成可能アンテナ。
【請求項2】
前記基板は、プリント回路板によって構成されている、
請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記不平衡アンテナは、前記基板によってまたは前記基板上に形成された接地面に対して給電される非共振素子を有する、
請求項1又は2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記アンテナは、DVB-H、GSM710、GSM850、GSM900、GSM1800、PCS1900、GPS1575、UMTS2100、Wi-Fi、Bluetooth、LTE、LTA、および4G周波数帯の1以上をカバーするように構成されている、
請求項1乃至3のいずれかにアンテナ。
【請求項5】
前記平衡アンテナおよび/または前記不平衡アンテナに対して異なる整合回路を選択することによって異なる動作モードが可能であり、任意選択的に、特定の動作モードに対する所望の整合回路を選択するためにスイッチが設けられている、
請求項1乃至4のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの可変コンデンサは、複数のスイッチ付き固定コンデンサ、バラクタ、またはMEMSコンデンサによって構成されている、
請求項1乃至5のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項7】
第1の信号ポート及び第2の信号ポートのそれぞれの信号ポートが、異なる分極に対応付けられている、
請求項1乃至6のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項8】
平衡アンテナ用の整合回路及び不平衡アンテナ用の整合回路のそれぞれの整合回路が、異なる分極に対応付けられている、
請求項1乃至7のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項9】
前記平衡アンテナおよび前記不平衡アンテナには、ほぼ中央に位置する給電ラインが設けられている、
請求項1乃至8のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項10】
前記不平衡アンテナは、前記基板に刻み込まれた少なくとも一部、および/または、前記基板に取り付けられる別の構造体に設けられた少なくとも一部を有する、
請求項1乃至9のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項11】
前記不平衡アンテナは、前記基板にほぼ平行な第1の素子および前記基板にほぼ垂直な第2の素子を有するブラケットの形をしている、
請求項1乃至10のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項12】
前記平衡アンテナは、浮動接地面に対して給電される、
請求項1乃至11のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項13】
前記平衡アンテナは、各アームが少なくとも1つの垂直素子を有するブラケットの形をしている、
請求項1乃至12のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項14】
第1のアームは、浮動接地面として構成され、第2のアームは、前記第1のアームに対して給電される、
請求項1乃至13のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項15】
前記平衡アンテナ用の前記少なくとも1つの整合回路は、前記浮動接地面に取り付けられている、
請求項12又は14に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記平衡アンテナは、プリントダイポールによって構成されている、
請求項1乃至12のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項17】
前記基板は、ほぼ長方形であるも、前記平衡アンテナの下に位置する切り欠き部を有する、
請求項1乃至16のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項18】
前記基板は、対向する第1および第2の表面を有し、前記平衡アンテナは、前記第1の表面に設けられ、前記不平衡アンテナは、前記第2の表面に設けられている、
請求項1乃至17のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項19】
前記基板は、前記基板の第2の表面にプリントされた接地面を有し、前記不平衡アンテナも、前記第2の表面に設けられ、前記接地面から隙間をあけて配置されている、
請求項1乃至18のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項20】
各信号ポートまたは各整合回路の間には、所望の動作周波数において90度の位相差が設けられており、平衡アンテナは、各信号ポートのいずれか一方に接続され、不平衡アンテナは他方の信号ポートに接続され、かつ、所望の動作モードを選択する制御手段を有する、制御システムをさらに有する、
請求項1乃至19のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項21】
シャーシアンテナとして携帯機器用に構成され、または、多入力多出力(MIMO)の用途用に構成されている、
請求項1乃至20のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項22】
請求項1乃至21のいずれかに記載のアンテナを有する携帯電子機器。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の、平成29年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。なお、平成29年12月28日にされた手続補正による特許請求の範囲の補正内容は、請求項1、7、8、19、20、21を変更するものである。
「 【請求項1】
支持基板に取り付けられた平衡アンテナおよび不平衡アンテナを有し、
前記平衡アンテナおよび前記不平衡アンテナは両方とも前記基板の同じ端部に位置し、
前記平衡アンテナは、前記基板の端部において設置面積を規定する一対のアームを有し、
各アンテナには、関係するアンテナの周波数を特定の周波数範囲にわたって所望の動作周波数に調整するために少なくとも1つの可変コンデンサを含む少なくとも1つの整合回路が設けられ、前記平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路は、第1の信号ポートに接続され、前記不平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路は、第2の信号ポートに接続され、
前記不平衡アンテナは、前記平衡アンテナの設置面積の範囲内にある、
再構成可能アンテナ。
【請求項2】
前記基板は、プリント回路板によって構成されている、
請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記不平衡アンテナは、前記基板によってまたは前記基板上に形成された接地面に対して給電される非共振素子を有する、
請求項1又は2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記アンテナは、DVB-H、GSM710、GSM850、GSM900、GSM1800、PCS1900、GPS1575、UMTS2100、Wi-Fi、Bluetooth、LTE、LTA、および4G周波数帯の1以上をカバーするように構成されている、
請求項1乃至3のいずれかにアンテナ。
【請求項5】
前記平衡アンテナおよび/または前記不平衡アンテナに対して異なる整合回路を選択することによって異なる動作モードが可能であり、任意選択的に、特定の動作モードに対する所望の整合回路を選択するためにスイッチが設けられている、
請求項1乃至4のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項6】
前記少なくとも1つの可変コンデンサは、複数のスイッチ付き固定コンデンサ、バラクタ、またはMEMSコンデンサによって構成されている、
請求項1乃至5のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項7】
第1の信号ポート及び第2の信号ポートのそれぞれの信号ポートが、異なる分極に対応付けられている、
請求項1乃至6のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項8】
平衡アンテナ用の整合回路及び不平衡アンテナ用の整合回路のそれぞれの整合回路が、異なる分極に対応付けられている、
請求項1乃至7のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項9】
前記平衡アンテナおよび前記不平衡アンテナには、ほぼ中央に位置する給電ラインが設けられている、
請求項1乃至8のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項10】
前記不平衡アンテナは、前記基板に刻み込まれた少なくとも一部、および/または、前記基板に取り付けられる別の構造体に設けられた少なくとも一部を有する、
請求項1乃至9のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項11】
前記不平衡アンテナは、前記基板にほぼ平行な第1の素子および前記基板にほぼ垂直な第2の素子を有するブラケットの形をしている、
請求項1乃至10のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項12】
前記平衡アンテナは、浮動接地面に対して給電される、
請求項1乃至11のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項13】
前記平衡アンテナは、内向きに対向する2つのL字形アームを有する、
請求項1乃至12のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項14】
前記平衡アンテナは、各アームが少なくとも1つの垂直素子を有するブラケットの形をしている、
請求項13に記載のアンテナ。
【請求項15】
第1のアームは、浮動接地面として構成され、第2のアームは、前記第1のアームに対して給電される、
請求項13又は14に記載のアンテナ。
【請求項16】
前記平衡アンテナ用の前記少なくとも1つの整合回路は、前記浮動接地面に取り付けられている、
請求項12又は15に記載のアンテナ。
【請求項17】
前記平衡アンテナは、プリントダイポールによって構成されている、
請求項1から13のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項18】
前記基板は、ほぼ長方形であるも、前記平衡アンテナの下に位置する切り欠き部を有する、
請求項1乃至17のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項19】
前記基板は、対向する第1および第2の表面を有し、前記平衡アンテナは、前記第1の表面に設けられ、前記不平衡アンテナは、前記第2の表面に設けられている、
請求項1乃至18のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項20】
前記基板は、前記基板の第1の表面にプリントされた接地面を有し、前記不平衡アンテナは、第2の表面に設けられている、
請求項1乃至19のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項21】
各信号ポートまたは各整合回路の間には、所望の動作周波数において90度の位相差が設けられており、平衡アンテナは、各信号ポートのいずれか一方に接続され、不平衡アンテナは他方の信号ポートに接続され、かつ、所望の動作モードを選択する制御手段を有する、制御システムをさらに有する、
請求項1乃至20のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項22】
シャーシアンテナとして携帯機器用に構成され、または、多入力多出力(MIMO)の用途用に構成されている、
請求項1乃至21のいずれかに記載のアンテナ。
【請求項23】
請求項1乃至22のいずれかに記載のアンテナを有する携帯電子機器。」

2 補正の適否について
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「平衡アンテナ」が有する「一対のアーム」を、「内向きに対向する2つのL字型アーム」と限定する補正を含み、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とすることを含むことから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)の請求項1に記載したとおりのものである。
(2)引用文献の記載事項、引用発明及び記載技術
ア 引用文献1の記載事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、米国特許出願公開第2010/0220022号明細書(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(なお、下線は当審にて付与したものである。)。
(ア)「[0043] FIG. 2 is a schematic block diagram of another embodiment of wireless communication devices 10-12 wirelessly communicating. The communication devices 10-12 include the baseband processing module 14, two or more up conversion mixing modules 18-18a, and the wireless front-end 20. In this embodiment, the wireless front-end 20 includes two or more power amplifiers and/or power amplifier drivers 26-26a, one or more transformer baluns 28, and the multiple antenna apparatus 22.
[0044] In an example of operation, the baseband processing module 16 receives outbound data and converts into a plurality of outbound symbol streams in accordance with a multiple input multiple output (MIMO) or single input multiple output (SIMO) communication protocol (e.g., IEEE802.11n, WiMAX, 4G cellular, etc.). A first one of the outbound symbol streams is up converted by a first one of the up conversion mixing modules 18-18a to produce a first up converted signal. The other up conversion mixing modules 18-18a up converts the other outbound symbol streams to produce other up converted signals.
[0045] The power amplifiers 26-26a amplifies the plurality of up converted signals to produce a plurality of outbound RF or MMW signals (e.g., transmission signals of a MIMO or SIMO signal). The transformer balun 28 generates an inverting and non-inverting representation of one of the outbound RF or MMW signals, which are provided to thefirst antenna 20. The second antenna 32 receives the outbound RF or MMW signal from power amplifier 26a. In this embodiment, the second antenna 32 is isolated (e.g., >20 dB of isolation) from the first antenna 30 as discussed with reference to FIG.1 such that the outbound RF or MMW signals are transmitted with reduced interference therebetween.」
(当審訳)
「[0043] 図2は、無線通信する無線通信装置10-12の別の実施形態の概略ブロック図である。通信装置10-12は、ベースバンド処理モジュール14を含み、2又はそれ以上のアップコンバージョン混合モジュール18-18a、無線フロントエンド20を含む。この実施形態では、無線フロントエンド20は、2又はそれ以上の電力増幅器及び/又は電力増幅器ドライバ26-26a、1つ又は複数のバラン28と、マルチアンテナ装置22を含む。
[0044] 動作の一例では、ベースバンド処理モジュール16は、アウトバウンドデータを受信し、多入力多出力(MIMO)又は単一入力多出力(SIMO)の通信プロトコル(例えば、IEEE規格802.11n、WiMAX、4Gセルラーなど)に基づいて、複数のアウトバウンドシンボルストリームに変換する。アウトバウンドシンボルストリームの第1のものは、アップコンバージョン混合モジュール18-18aの第1のものによってアップコンバートされ、第1のアップコンバートされた信号を生成する。他のアップコンバージョン混合モジュール18-18aは、他のアウトバウンドシンボルストリームをアップコンバートし、他のアップコンバートされた信号を生成する。
[0045] 電力増幅器26-26aは、複数のアップコンバートされた信号を増幅し、複数のアウトバウンドRF又はMMW信号(例えば、MIMO又はSIMO信号の送信信号)を生成する。バラン28は、アウトバウンドRF又はMMW信号の反転及び非反転表現を生成し、これは、第1アンテナ20に供給される。第2アンテナ32は、電力増幅器26aからのアウトバウンドRF又はMMW信号を受信する。この実施形態では、第2アンテナ32は、図1を参照して説明したように、第1アンテナ30から分離(例えば、>20dbの分離)されており、両者間の干渉を減じて、アウトバウンドRF又はMMW信号が送信される。」

(イ)「[0050] FIG.4 is a block diagram of an embodiment of a multiple antenna apparatus 22 that includes a substrate 40 (e.g., PCB,IC, etc.), a dipole antenna 42 as the first antenna 30, and a monopole antenna 44 as the second antenna 32. The dipole antenna 42 has a near-zero electric field plane in which the monopole antenna 44 is positioned. In this regard,the monopole antenna 44 is isolated (e.g., >20 dB) from the dipole antenna 42.
[0051] The particular construct of the dipole antenna 42 and the monopole antenna 44 is dependent on the desired performance requirements of the antennas 42 and 44.The performance requirements include one or more of frequency band, bandwidth, gain, impedance, efficiency, and polarization. For example, if the both antennas 42 and 44 are for 60GHz, communications, the monopole antenna 44 and each segment of the dipole antenna 42 may be a microstrip having a length equivalent to ^(1)/_(4) wavelength (e.g., ^(1)/_(4)(A)=c/f, 0.25*3×10^(8)/60×10^(9)=1.25 mm). As another example, a ^(1)/_(4) wavelength antenna at 900 MHz has a total length of approximately 8.3 centimeters (i.e., 0.25*(3×10^(8 )m/s)/(900×10^(6 )c/s)=0.25*33cm, where m/s is meters per second and c/s is cycles per second). As a further example, a ^(1)/_(4) wavelength antenna at 2400 MHz has a total length of approximately 3.1 cm (i.e., 0.25*(3×10^(8 )m/s)/(2.4×10^(9 )c/s)=0.25*12.5 cm). As yet one more example, a ^(1)/_(4) wavelength antenna at 5500 MHz has a total length of approximately 1.36cm (i.e., 0.25*(3×10^(8 )m/s)/(5.5×10^(9 )c/s)=0.25*5.45 cm). Note that the other performance requirements are affected by trace thickness, use of a ground plane, and/or other physical characteristics of the antennas.」
(当審訳)
「[0050] 図4は、基板40(例えば、PCB、ICなど)、第1アンテナ30としてダイポールアンテナ42、及び、第2アンテナ32としてモノポールアンテナ44を含むマルチアンテナ装置22の実施形態のブロック図である。ダイポールアンテナ42は、モノポールアンテナ44が配置される、ほぼ0の電界面を有している。ここで、モノポールアンテナ44は、ダイポールアンテナ42から分離(例えば、>20db)されている。
[0051] ダイポールアンテナ42及びモノポールアンテナ44の特定の構成は、アンテナ42及び44の所望の性能要件に依存する。性能要件は、周波数帯域、帯域幅、利得、インピーダンス、効率、及び分極のうちの1つ以上を含む。例えば、アンテナ42及び44の両方が60GHzの通信用の場合、モノポールアンテナ44とダイポールアンテナ42の各セグメントとは、1/4波長(例えば、1/4(A)=c/f、0.25*3×10^(8)/60×10^(9)=1.25mm)に等しい長さのマイクロストリップであってよい。別の例として、900MHzでの1/4波長アンテナは、約8.3センチメートル(すなわち、0.25*(3×10^(8)m/s)/(900×10^(6)c/s)=0.25*33cm、m/sは秒毎のメートル、c/sは秒毎のサイクル)の全長を有する。さらに別の例として、2400MHzでの1/4波長アンテナは、約3.1cm(すなわち、0.25*(3×10^(8)m/s)/(2.4×10^(9)c/s)=0.25*12.5cm)、の全長を有する。さらにもう1つの例として、5500MHzでの1/4波長アンテナは、約1.36cm(すなわち、0.25*(3×10^(8)m/s)/(5.5×10^(9)c/s)=0.25*5.45cm)の全長を有する。なお、その他の性能要件は、アンテナの配線の厚さ、接地面の使用、及び/又は他の物理的特性の影響を受けることに留意されたい。」

(ウ)「[0056] FIG.7 is a block diagram of another embodiment of a multiple antenna apparatus that includes a monopole antenna 44 and a dipole antenna 42. In this embodiment, the dipole antenna 42 includes a first trace 50 confined within a first geometric shape 54 and a second trace 52 confined within a second geometric shape 55. Similarly, the monopole antenna 44 includes a trace 56 that is confined within a second geometric shape 58. The geometric shapes 54, 55, and 58 may be the same geometric shape (e.g., a triangle, a square, a rectangle, polygon, a parallelogram, rhombus, circle, oval, ellipse, etc.), they may each be of a different shape, or a combination thereof. Note that the shape may be a combination of geometric shapes as may be dictated by available layout space on a printed circuit board and/or integrated circuit die(s).
[0057] Each of the traces 50, 52, and 56 may have a recursive fractal curve pattern that includes one or more of the following properties: an n^(th) order, where n is equal to or greater than 1; a y^(th) order, where y is equal to or greater than 1; a first line width; a second line width; a first shaping factor; and a second shaping factor. The recursive fractal curve patterns may be one or more of a vonKoch curve, a Peano's curve, a modified Peano curve, a Cesaro triangle curve, a Modified Cesaro curve, a Dragon Curve, a Modified Dragon Curve, a Polya's Curve, a Modified Polya Curve (as shownin this figure), a Hilbert's curve, a tree of triangles curve, a Ternary Tree curve, a Quaternary tree curve, an H fractal tree curve, a Modified H fractal tree curve, a Tree of squares curve, a tree of almost squares curve, a Pythagorean tree curve, an alternating Pythagorean tree curve, and a Bronchial system tree curve. For example, each trace may be of the same recursive fractal curve pattern, different recursive fractal curve patterns, or a combination thereof.
[0058] FIGS. 8A-C are diagrams of another embodiment of a multiple antenna apparatus 22 that includes the substrate 40, the traces 50 and 52 of the dipole antenna 42, and the trace 56 of the monopole antenna 44. As shown,the substrate 40 includes a first layer 68 and a second layer 70. Note that the substrate 40 may include more than two layers.
[0059] The first trace 50 of the dipole antenna 42 includes a first segment 60 that is on the first layer 68 and a second segment 64 that is on the second layer 70. As shown, the geometric shapes of the first and second segments 60 and 64 are different, however, they could be the same. The first and second segments 60 and 64 are electrically coupled together to increase the length and/or width of the trace 50 of the dipole antenna. For example, when the available layout space on the first layer 68 (e.g., first geometric shape 54) is insufficient to accommodate the desired length and/or desired width of the trace 50, then available layout space on the second layer is used. Note that availably layout space on additional layers may be used to achieve the desired length and/or desired width if they cannot be achieved on two layers. Further note that the first segments 60 and 62 of the first and second traces 50 and 52 collectively have a bow tie shape, which increases the bandwidth of the dipole antenna 42.
[0060] The second trace 52 of the dipole antenna 42 includes a first segment 62 that is one the first layer 68 and a second segment 66 that is one the second layer 70. As shown, the geometric shapes of the first and second segments 62 and 66 are different, however, they could be the same. The first and second segments 62 and 66 are electrically coupled together to increase the length and/or width of the trace 52 of the dipole antenna.
[0061] Similarly, the trace 56 of the monopole antenna 44 includes a first segment 72 that is one the first layer 68 and a second segment 74 that is one the second layer 70. As shown, the geometric shapes of the first and second segments 72 and 74 are different, however, they could be the same.The first and second segments 72 and 74 are electrically coupled together to increase the length and/or width of the trace 56 of the monopole antenna.」
(当審訳)
「[0056] 図7は、モノポールアンテナ44と、ダイポールアンテナ42を含むマルチアンテナ装置の別の実施形態のブロック図である。この実施形態では、ダイポールアンテナ42は、第1の幾何学的形状54内に閉じ込められている第1の配線50及び第2の幾何学的形状55内に閉じ込められている第2の配線52を含む。同様に、モノポールアンテナ44は第2の幾何学的形状58内に閉じ込められている配線56含む。幾何学的形状54、55、及び58は、同じ幾何学的形状(例えば、三角形、正方形、長方形、多角形、平行四辺形、菱形、円、長円、楕円等)であってもよいし、それらは各々異なる形状、又はそれらの組み合わせであってもよい。ここで留意すべきは、該形状は幾何学的形状の組み合わせであってもよく、プリント回路基板及び/又は集積回路ダイ上の利用可能なレイアウト空間によって決定されてもよい。
[0057]配線50、52、及び56の各々は、1つ又は複数の以下の特性を含む再帰的なフラクタル曲線パターンを有してもよい:n次、nは1以上;y次、yは1以上;第1の線幅;第2の線幅;第1の成形要素;及び第2の成形要素。再帰的なフラクタル曲線パターンは、コッホ曲線、ペアノ曲線、モディファイドペアノ曲線、セザーロ三角曲線、モディファイドセザーロ曲線、ドラゴン曲線、モディファイドドラゴン曲線、ポリヤ曲線、モディファイドポリヤ曲線(この図に示されるように)、ヒルベルト曲線、三角木曲線、三分木曲線、四分木曲線、Hフラクタル木曲線、モディファイドHフラクタル木曲線、スクエア木曲線、ほぼスクエア木曲線、ピタゴラス木曲線、代替ピタゴラス木曲線、及び、気管支ツリーを構成する曲線のうちの1つ以上であってもよい。例えば、各々の配線は、同じ再帰的なフラクタル曲線パターン、異なる再帰的なフラクタル曲線パターン、又はそれらの組み合わせであってもよい。
[0058]図8A-Cは、基板40と、ダイポールアンテナ42の配線50及び52と、モノポールアンテナ44の配線56とを含むマルチアンテナ装置22の別の実施形態の図である。図示のように、基板40は第1層68及び第2層70を含む。基板40は、2層よりも多くの層を含んでもよいことに留意されたい。
[0059]ダイポールアンテナ42の第1の配線50は、第1層68上の第1のセグメント60と第2層70上の第2のセグメント64を含む。図示のように、第1及び第2のセグメント60及び64の幾何学的形状は異なっているが、それらは同一であってもよい。第1及び第2のセグメント60及び64は、ダイポールアンテナの配線50の長さ及び/又は幅を増加させるために共に電気的に接続される。例えば、第1層68上で使用可能なレイアウト空間(例えば、第1の幾何学的形状54)が、配線50の所望の長さ及び/又は所望の幅を収容するのに不十分である場合には、第2層の使用可能なレイアウト空間が使用される。ここで留意すべきは、2層で達成できない場合には、所望の長さ及び/又は所望の幅を達成するために追加の層上の利用可能なレイアウト空間が使用されてもよい。さらに留意すべきは、第1及び第2の配線50及び52の第1のセグメント60及び62は全体として蝶ネクタイ形であり、これによりダイポールアンテナ42の帯域幅が増大する。
[0060]ダイポールアンテナ42の第2の配線52は、第1層68上の第1のセグメント62と第2層70上の第2のセグメント66を含む。図示のように、第1及び第2のセグメント62及び66の幾何学的形状は異なっているが、それらは同一であってもよい。第1及び第2のセグメント62及び66は、ダイポールアンテナの配線52の長さ及び/又は幅を増加させるために共に電気的に接続される。
[0061]同様に、モノポールアンテナ44の配線56は、第1層68上の第1のセグメント72と第2層70上の第2のセグメント74を含む。図示のように、第1及び第2のセグメント72及び74の幾何学的形状は異なっているが、それらは同一であってもよい。第1及び第2のセグメント72及び74は、モノポールアンテナの配線56の長さ及び/又は幅を増加させるために共に電気的に接続される。」
(訳注:[0060]及び[0061]の"that is one"(4箇所)は、"that is on"の誤記と認める。)

(エ)「[0070] FIGS.13A-C are diagrams of another embodiment of a multiple antenna apparatus 22 that includes the substrate 40, the dipole antenna 42, the monopole antenna 44, and a ground plane 75. As shown,the substrate 40 includes a first layer 68 and a second layer 70. Note that the substrate 40 may include more than two layers.
[0071] The dipole antenna 42 includes segments on the first layer 68 and segments on the second layer 70. The dipole segments are adjacent to the monopole antenna 44 and each dipole segment may include one or more dipole slabs of the same or varied geometric shapes.
[0072] The monopole antenna 44 includes a segment on the first layer 68 and a segment on the second layer 70. The segments may be of same or different geometric shape. As positioned, the monopole antenna 44 is in the near-zero electric field plane of the dipole antenna 42.」
(当審訳)
「[0070] 図13A-Cは、基板40、ダイポールアンテナ42、モノポールアンテナ44、及び接地面75を含むマルチアンテナ装置22の別の実施形態の図である。図示のように、基板40は第1層68及び第2層70を含む。基板40は、2層よりも多くの層を含むことができることに留意されたい。
[0071] ダイポールアンテナ42は、第1層68上の複数のセグメントと第2層70上の複数のセグメントを含む。ダイポールの複数のセグメントは、モノポールアンテナ44に隣接し、それぞれのダイポールのセグメントは、同一又は異なる幾何学形状のうちの1つ又はそれ以上のダイポールスラブを含むことができる。
[0072] モノポールアンテナ44は、第1層68上の1つのセグメントと第2層70上の1つのセグメントを含む。セグメントは、同じ又は異なる幾何学的形状であってもよい。配置されたとおり、モノポールアンテナ44は、ダイポールアンテナ42のほぼ0の電界面に位置する。」

(オ)図2、4、7、8、13は、以下のとおりである。
図2

図4

図7

図8A-C

図13A-C


(カ)上記(ア)に記載される無線通信装置で用いられるマルチアンテナ装置22は、上記(エ)の記載より、基板40、ダイポールアンテナ42、モノポールアンテナ44及び接地面75からなり、基板40は、第1層68及び第2層70を含むものである。また、ダイポールアンテナ42は、基板40の第1層68上の複数のセグメント、及び第2層70上の複数のセグメントを含み、モノポールアンテナ44は、第1層68上及び第2層70上のセグメントから構成される。
ダイポールアンテナのセグメントは、上記(ウ)の記載より、基板40の第1層及び第2層上のレイアウト空間である幾何学的形状であって、第1層及び第2層上の幾何学的形状の範囲の中に、電気的に接続することで所望の長さ及び/又は幅とされた2つの配線50及び52がそれぞれ収容されることから、上記(オ)図13A-Cにおける、基板の第1層及び第2層上の「dipole」と記載される長方形が、マルチアンテナ装置22のダイポールアンテナのセグメントを意味し、第1層上の2つのダイポールアンテナのセグメントの一方と第2層上の2つのダイポールアンテナのセグメントの一方に、電気的に接続することで所望の長さ及び/又は幅とされた、ダイポールアンテナの一方の配線50が収容され、第1層上のダイポールアンテナのセグメントの他方と第2層上のダイポールアンテナのセグメントの他方に、電気的に接続することで所望の長さ及び/又は幅とされた他方の配線52が収容されるといえる。
同様に、モノポールアンテナのセグメントは、上記(オ)図13A-Cにおける、基板の第1層、第2層上の「mono」と記載される長方形が、マルチアンテナ装置22のモノポールアンテナのセグメントを意味し、第1層上と第2層上のモノポールアンテナのセグメントに、電気的に接続することで所望の長さ及び/又は幅とされる、モノポールアンテナの配線56が収容されるといえる。
ここで、ダイポールアンテナの2つの配線50及び52は、上記(ウ)の記載より「第1層68上で使用可能なレイアウト空間(例えば、第1の幾何学的形状54)が、配線50の所望の長さ及び/又は所望の幅を収容するのに不十分である場合には、第2層の使用可能なレイアウト空間が使用される」ことから、所望の長さ及び/又は幅を有するように構成するために、2つの層を用いるものであり、第1層上のセグメントの範囲の中に所望の長さ及び/又は幅の配線を収容できる場合には、第2層上のセグメントを設ける必要がないことは、明らかである。
加えて、上記(オ)図13A-Cより、マルチアンテナ装置22のダイポールアンテナのセグメント及びモノポールアンテナのセグメントは、基板40の同じ端部に位置しているといえる。
そうすると、マルチアンテナ装置22のダイポールアンテナ42及びモノポールアンテナ44は、基板40上に配置され、ダイポールアンテナ42とモノポールアンテナ44は、基板の同じ端部に位置しているといえる。

また、(オ)図13A-Cより、ダイポールアンテナの2つのセグメントは、基板の上記端部において、基板の両側部に間隔をあけて位置するとともに、モノポールアンテナのセグメントと並列に位置するものであり、モノポールアンテナは、ダイポールアンテナの2つのセグメントの前記間隔の範囲内にあるといえる。

したがって、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「 基板40上に配置されたダイポールアンテナ42及びモノポールアンテナ44を含み、
前記ダイポールアンテナ及び前記モノポールアンテナは両方とも前記基板の同じ端部に位置し、
前記ダイポールアンテナは、2つのセグメントの中にそれぞれ収容される所望の長さ及び/又は幅となる2つの配線を有し、該セグメントは、前記基板の端部において、基板の両側部に間隔をあけて位置するものであり、
前記モノポールアンテナは、前記ダイポールアンテナの2つのセグメントの前記間隔の範囲内にある、
マルチアンテナ装置22。」

イ 引用文献2の記載事項
同じく原査定に引用され、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった国際公開第2012/072969号(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
(ア)「As illustrated in Figure 3, the balanced antenna system 10 according to the present embodiment of the invention comprises the balun 50 shownin Figure 2, used to feed the balanced dipole antenna 37 shown in Figure 1A, with an impedance matching circuit 60 provided therebetween. It will be noted that in this illustration, an input Port 1 is shown which feeds into the first (unbalanced) port Z_(u) of the balun 50 to drive the balanced antenna system 10. More specifically, the high pass filter with impedance Z_(bH) from the balun 50 is connected to the matching circuit 60 and to Feed 1 (i.e. feed line 24 of Figure 1A) of the dipole antenna 37 and the low pass filter with impedance Z_(bL) from the balun 50 is connected to the matching circuit 60 and to Feed 2 (i.e. feed line 32 of Figure 1A) of the dipole antenna 37.

As will be explained in more detail below, by incorporating the matching circuit 60 between the dipole antenna 37 and the balun 50, the system can be made reconfigurable and can be used to provide a wide tuning range of from 470MHz to 2200MHz, which can cover DVB-H, all GSM and UMTS2100 frequency bands.

Figure 4 shows a circuit diagram for a particular impedance-matching circuit60 which can be used in an embodiment of the present invention. It will be noted that in this illustration, the paths for the high pass filter with impedance Z_(bH) and the low pass filter with impedance Z_(bL) from the balun 50 to Feed 1 and Feed 2 respectively, have been separated out such that the impedance-matching circuit 60 is split into a first matching circuit 62 and a second matching circuit 64. In this particular embodiment, the first and second matching circuits 62, 64 are identical and are configured to provide impedance transformation to each leg of the balanced dipole antenna 37.

More specifically, each of the first and second matching circuits 62, 64 comprise an inductor L_(2) connected in parallel to the ground plane 40 and a capacitor C_(1)/C_(2) and inductor L_(1) connected in series. Thecapacitors C_(1)/C_(2) are variable so as to allow the impedance of the first and second matching circuits 62, 64 to be adjusted to tune the antenna 37 over a range of frequencies.」(18ページ16行?19ページ14行)
(当審訳)
「図3に示すように、本発明の本実施形態による平衡アンテナシステム10は、図1Aに示された平衡ダイポールアンテナ37に給電するために使用される、図2に示されるバラン50と、それらの間に備えられたインピーダンス整合回路60を含む。この例では、平衡アンテナ装置10を駆動するためバラン50の第1の(不平衡の)ポートZ_(u)に給電する入力ポート1が示されていることに気づくだろう。より具体的には、バラン50からのインピーダンスZ_(bH)をもつハイパスフィルタは、整合回路60及びダイポールアンテナ37のフィード1(すなわち、図1Aの給電線24)に接続され、バラン50からのインピーダンスZ_(bL)をもつローパスフィルタが、整合回路60及びダイポールアンテナ37のフィード2(図1Aの給電線32)に接続されている。

以下でより詳細に説明するとおり、ダイポールアンテナ37とバラン50との間に整合回路60を組み込むことにより、システムは、再構成可能にすることができ、DVB-H、全てのGSM及びUMTS2100の周波数帯域をカバー可能な、470MHzから2200MHzの広い同調範囲を提供するために使用することができる。

図4は、本発明の実施形態で使用され得る特定のインピーダンス整合回路60の回路図を示す。この図では、バラン50からそれぞれフィード1及びフィード2へ至る、インピーダンスZ_(bH)のハイパスフィルタ及びインピーダンスZ_(bL)のローパスフィルタのためのパスが分離されており、インピーダンス整合回路60が第1の整合回路62及び第2の整合回路64に分けられていることに気づくだろう。この特定の実施形態では、第1及び第2の整合回路62、64は、同一であり、平衡ダイポールアンテナ37の各脚部にインピーダンス変換を提供するように構成されている。

より具体的には、第1及び第2の整合回路62、64のそれぞれは、グランド面40に平行に接続されたインダクタL_(2)及びキャパシタC_(1)/C_(2)及びインダクタL_(1)の直列回路を含む。キャパシタC_(1)/C_(2)が可変であることで、第1及び第2の整合回路62、64のインピーダンスは、ある周波数範囲でアンテナ37を同調するために調整されることができる。」

(イ)「The first impedance matching circuit 74 is of the form described above in relation to Figure 4 but includes three different inductors (L7, L8,L9) which can be selected as the inductor in parallel (L_(2)) and three further different inductors (L1, L2, L3) which canbe selected as the inductor in series (L_(1)). Various switches are provided in order to activate the desired combination of components for the first impedance matching circuit 74. As above, a tunable capacitor C_(1)(i.e. varactor) is provided between the two sets of inductors. The tunable capacitor C_(1) can be tuned from 0.2pF to 10pF.

Similarly, the second impedance matching circuit 76 is of the form described above in relation to Figure 4 but also includes three different inductors (L14, L15, L16) which can be selected as the inductor in parallel (L_(2)) and three further different inductors (L4, L5, L6) which can be selected as the inductor in series (L_(1)). Various switches are provided in order to activate the desired combination of components for the second impedance matching circuit 76. As before, a tunable capacitor C_(2)(i.e. varactor) is provided between the two sets of inductors. The tunable capacitor C_(2) can be tuned from 0.2pF to 10pF.」(20ページ6行?21行)
(当審訳)
「第1のインピーダンス整合回路74は、図4に関連して上述した形態のものであるが、並列インダクタ(L_(2))として選択することができる3個の異なるインダクタ(L7、L8、L9)、直列インダクタ(L_(1))として選択することができる3個のさらに異なるインダクタ(L1、L2、L3)を含む。第1のインピーダンス整合回路74の構成部品の所望の組み合わせを有効にするために各種スイッチが設けられている。以上のように、調整可能なキャパシタC_(1)(すなわち、バラクタ)は、インダクタの2組の間に設けられている。調整可能なキャパシタC_(1)は0.2pFから10pFに調整させることができる。

同様に、第2のインピーダンス整合回路76は、図4に関連して上述した形態のものであるが、並列インダクタ(L_(2))として選択することができる3個の異なるインダクタ(L14、L15、L16)、直列インダクタ(L_(1))として選択することができる3個のさらに異なるインダクタ(L4、L5、L6)を含む。第2のインピーダンス整合回路76の構成部品の所望の組み合わせを有効にするために各種スイッチが設けられている。前述のように、調整可能なキャパシタC_(2)(すなわち、バラクタ)は、インダクタの2組の間に設けられている。調整可能なキャパシタC_(2)は、0.2pFから10pFに調整させることができる。」

(ウ)「It is possible to operate the MIMO antenna structure 90 by driving the balanced antenna system 10 through Port 1 and using Port 2 and Port 3 to operate each of the coupling elements 112, 114 of the chassis antenna 100. For purposes of demonstration, Port 1 was connected to a circuit similar to that shown in Figure 5 and only Port 2 was activated in connection with the chassis antenna 100. More specifically, Port 2 was connected to a circuit of the type described in GB0918477.1 and Port 3 was simply connected to a 50 ohm load but could have been tuned separately.」(24ページ17行?23行)
(当審訳)
「ポート1を介して平衡アンテナシステム10を駆動し、ポート2及びポート3を用いてシャーシアンテナ100の結合要素112、114のそれぞれを作動させることにより、MIMOアンテナ構造90を動作させることができる。実証の目的のために、ポート1は、図5に示したものと同様の回路に接続され、ポート2のみが、シャーシアンテナ100に関連して活性化される。より詳細には、ポート2は、GB0918477.1に記載されたタイプの回路に接続され、ポート3は、個別に調整できるが、単純に50オーム負荷に接続される。」

(エ)「Figure 30 shows a front and rear view of a further reconfigurable balanced antenna 400 according to an embodiment of the presentinvention. The antenna 400 is similar to that described above and shown in Figures 21A through 21C but this time has the dimensions detailed in Table 5 below.
H 5 mm L_(1) 110 mm
W 40 mm L_(2) 100 mm
l_(1 )70 mm l_(2 )19 mm
l_(3 )10 mm d 2 mm
w 1 mm - -
Table 5 Dimensions for the antennashowed in Figure 30

Thus, the antenna 400 comprises L-shaped dipole radiating elements 404, 70 mm x 40 mm in size, with a 1mm track width, a metal thickness of 0.01778 mm and has a total size of 110 x 40 mm^(2) and ground plane 406 of 100x 40 mm^(2). The antenna was constructed on a microwave substrate material 402, Taconic TLY-3-0450-C5, which has a permittivity of 2.33, loss tangent of 0.0009 and a thickness of 1.143 mm. A port 408 is provided on the ground plane 406 for driving the radiating elements 404 via a suitable circuit.」(34ページ16行?35ページ2行)
(当審訳)
「図30は、本発明の実施形態によるさらなる再構成可能な平衡アンテナ400の正面図及び後面図を示す。アンテナ400は、前述した図21Aから21Cで示したものと同様であるが、ここでは、以下の表5で詳細に述べた寸法を有している。
H 5mm L_(1) 110mm
W 40mm L_(2) 100mm
l_(1) 70mm l_(2) 19mm
l_(3) 10mm d 2mm
W 1mm - -
表5 図30に示したアンテナの寸法

このように、アンテナ400は、70mm×40mmのサイズで、1mmのトラック幅を有し、0.01778mmの金属厚さのL字型ダイポール放射素子404を含み、全体で110×40mm^(2)のサイズであり、100×40mm^(2)のグランド面406を有する。アンテナは、誘電率2.33、損失正接0.0009、厚さ1.143mmのTaconic TLY-3-0450-C5である、マイクロ波基板材料402上に構築される。ポート408は、適当な回路を介して放射素子404を駆動するためにグランド面406上に設けられている。」

(オ)「Figures 33A and 33B show, respectively, a front and rear view of another balanced antenna 500 according an embodiment of the present invention and which is suitable for Multiple-Input-Multiple-Output (MIMO) applications. The antenna 500 essentially comprises the antenna 400 of Figure 30 combined with a two-port chassis-antenna 100 as shown in Figures 9A and 9B and as described above. Thus, the two-port chassis antenna 100 is of the type described in detail in GB0918477.1 and comprises a pair of non-resonant coupling elements 112, 114, that are capable of simultaneous dual-band operation.

The MIMO antenna 500 has a total size of 118 x 40 mm^(2) and a ground plane 502 of 100 x 40 mm^(2). The chassis antenna 100 occupies a smallvolume of 40 x 4 x 7 mm^(3) and is mounted off a second end of the substrate 402, opposite to the end where the radiating elements 404 aredisposed. As shown in Figure 33A, the radiating elements 404 are provided on an additional U-shaped substrate 504 which is wider and longer than the radiating elements 404 themselves, to provide mechanical support. The balanced antenna element 400 and the coupling elements 112, 114 in the chassis antenna 100 are supported by Rohacell^(TM) material. A first port, Port 1 , is provided through the ground plane 502 for driving the radiating elements 404 via a suitable circuit. Similarly, a second port, Port 2, is provided on an edge of the substrate 402 for driving coupling element 114 and a third port, Port 3, is provided through the second end of the ground plane 502 for driving coupling element 112. 」(35ページ29行?36ページ17行)
(当審訳)
「図33A及び33Bは、本発明の一実施形態による、多入力多出力(MIMO)用途に適切な、他の平衡アンテナ500の正面図及び後面図をそれぞれ示している。アンテナ500は、本質的に、図9A及び9Bに示し、上述した、2ポートシャーシアンテナ100と結合された、図30のアンテナ400を含む。このように、2ポートシャーシアンテナ100は、GB0918477.1に詳細に記載されているタイプのものであり、非共振結合要素112、114の対を有し、これらは同時デュアルバンド動作が可能である。

MIMOアンテナ500は、118×40mm^(2)の全体サイズ、100×40mm^(2)のグランド面502を有している。シャーシアンテナ100は40×4×7mm^(3)という小さな体積を占有し、基板402の第2の端部から離れて取り付けられ、放射素子404が配置されている端とは反対側にある。図33Aに示すように、放射素子404は、機械的支持を提供するために、放射素子404よりも幅広で長い追加のU字形の基板504上に設けられる。平衡型アンテナ素子400とシャーシアンテナ100の結合素子112、114は、ロハセル(登録商標)材料により支持される。第1のポートであるポート1は、適切な回路を介して放射素子404を駆動するためにグランド面502を通って提供される。同様に、第2のポートであるポート2は、結合素子114を駆動するために基板402の縁部上で提供され、第3のポートであるポート3は、結合素子112を駆動するためにグランド面502の第2の端部を通って提供される。」

(カ)「Figure 34 shows circuit diagrams for the elements provided between each of the ports and their respective radiating and coupling elements 404, 112,114. Thus, for the balanced antenna 400, Port 1 is connected to a balun 510 comprising an inductor of 13nH and a capacitor of 3pF connected in parallel. Each arm of the balun 510 is then connected to one of the radiating elements 404 via an identical matching circuit 512. Each matching circuit 512 comprises an inductor of 1.9nH connected in parallel with a varactor C_(1) of up to 10pF, which in turn is connected in series with an inductor of 5.6nH. For the chassis-antenna 100, a first L-network matching circuit 514 is connected between Port 2 and coupling element 114 and a second L-network matching circuit 516 is connected between Port 3 and coupling element 112. The first matching circuit 514 comprises a parallel inductor of 5.1nH connected to a varactor C_(2) of up to l0pF, which in turn is connected in series to an inductor of 27nH. The second matching circuit 516 comprises a parallel inductor of 2.4nH connected to a varactor C_(3) of up to 10pF, which in turn is connected in series to an inductor of 2nH.」(36ページ19行?32行)
(当審訳)
「図34は、各々のポートと、対応する放射及び結合素子404、112、114との間に設けられた素子の回路図を示している。このように、平衡アンテナ400に対して、ポート1は、並列に接続された13nHのインダクタと3pFのキャパシタを含むバラン510に接続されている。そして、バラン510の各アームは、同一の整合回路512を介して放射素子404の1つに接続されている。各整合回路512は、5.6nHのインダクタが直列に接続された最大10pFのバラクタC_(1)と並列接続された1.9nHのインダクタを含む。シャーシアンテナ100については、第1のLネットワーク整合回路514は、ポート2と結合要素114との間に接続され、第2のLネットワーク整合回路516は、ポート3と結合要素112との間に接続される。第1の整合回路514は、27nHのインダクタに直列に接続された最大10pFのバラクタC_(2)と接続された5.1nHの並列インダクタを含む。第2の整合回路516は、2nHのインダクタと直列に接続された最大10pFのバラクタC_(3)と接続された2.4nHの並列インダクタを含む。」

(キ)図3、4、30、33A,B、34は以下のとおりである。
図3

図4

図30

図33A,B

図34


(ク)a.上記(オ)の記載より、「図33A及び33B」の「平衡アンテナ500」は、「図30の平衡アンテナ400」を含むものであり、上記(エ)の記載及び(キ)図33Aより、「平衡アンテナ400」は、内向きに対向する2つの「L字型ダイポール放射素子404」により、いわゆるダイポールアンテナとして動作するものといえる。
そうすると、引用文献2には、「平衡アンテナであるダイポールアンテナを、内向きに対向する2つのL字型ダイポール放射素子で構成すること」(以下、「引用文献2記載の技術1」という。)が記載されていると認められる。

b.上記(オ)、(カ)の記載より、平衡アンテナの放射素子404は、最大10pFのバラクタC1を含む整合回路512を介して第1のポートに接続する。また、シャーシアンテナの結合要素112、114は、それぞれ、最大10pFのバラクタC2を含む第1の整合回路514を介して第2のポートと接続し、最大10pFのバラクタC3を含む第2の整合回路516を介して第3のポートと接続する。
ここで、シャーシアンテナの各結合要素112、114は、いずれも第2のポート、第3のポートと、バランを介さずに単独のポートが接続されるものであるから、いずれも不平衡アンテナを構成するものといえる。
また、上記(イ)の記載より、バラクタは調整可能なキャパシタであり、上記(カ)のバラクタを含む整合回路は、上記(ア)に記載される、キャパシタが可変であることにより、整合回路のインピーダンスが、ある周波数範囲でアンテナを同調するために調整されることができるものであり、該整合回路は、システムを再構成可能として、広い同調範囲を提供するために使用されるものである。
そして、キャパシタとコンデンサとは同じ電気素子を意味する用語であり、第1のポート、第2のポート、第3のポートは、それぞれ第1の信号ポート、第2の信号ポートと称することができるから、引用文献2には、「平衡アンテナに接続される可変コンデンサを含む整合回路は第1の信号ポートに接続され、不平衡アンテナであるシャーシアンテナの2つの結合要素にそれぞれ接続される可変コンデンサを含む整合回路は、それぞれ第2の信号ポート又は第3の信号ポートに接続され、整合回路は可変コンデンサにより、ある周波数範囲でアンテナを同調するためにインピーダンスを調整して、システムを再構成可能として、広い同調範囲を提供すること」(以下、「引用文献2記載の技術2」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「ダイポールアンテナ42」、「モノポールアンテナ44」は、それぞれ、本件補正発明の「平衡アンテナ」、「不平衡アンテナ」に含まれる。

イ 引用発明は、ダイポールアンテナ及びモノポールアンテナを「基板上」に配置するものであるから、「基板」はダイポールアンテナとモノポールアンテナを支持するものといえ、引用発明の「基板」は、本件補正発明の「支持基板」に相当し、引用発明の「基板40上に配置された」は、本件補正発明の「支持基板に取り付けられた」に対応する。

ウ 引用発明の、「ダイポールアンテナ」が有する「2つのセグメントの中にそれぞれ収容される所望の長さ及び/又は幅となる2つの配線」と、本件補正発明の「平衡アンテナ」が有する「設置面積を規定する内向きに対向する2つのL字型アーム」とは、いずれも平衡アンテナが有する「2つの放射素子」である点で一致する。

エ 引用発明は、「該セグメントは、前記基板の端部において、基板の両側部に間隔をあけて位置する」ことから、2つのセグメントの中にそれぞれ収容される「所望の長さ及び/又は幅となる2つの配線」は、いずれも「前記基板の端部に位置」するものである。
また、引用発明のダイポールアンテナは、2つのセグメントが「基板の両側部に間隔をあけて位置する」ことから、ダイポールアンテナを設置するのに必要な面積は、ダイポールアンテナの2つのセグメントにより規定されているといえる。
そして、2つのセグメントには、「所望の長さ及び/又は幅となる2つの配線」がそれぞれ収納されていることから、ダイポールアンテナを設置するのに必要な面積は、「所望の長さ及び/又は幅となる2つの配線」により規定されているといえ、ダイポールアンテナの2つのセグメントの前記間隔の範囲内にあるモノポールアンテナは、ダイポールアンテナを設置するのに必要な面積の範囲内にあるといえる。
そうすると、引用発明の「前記ダイポールアンテナは、2つのセグメントの中にそれぞれ収容される所望の長さ及び/又は幅となる2つの配線を有し、該セグメントは、前記基板の端部において、基板の両側部に間隔をあけて位置するものであり」、「前記モノポールアンテナは、前記ダイポールアンテナの2つのセグメントの前記間隔の範囲内にある」と、本件補正発明の「前記平衡アンテナは、前記基板の端部において設置面積を規定する内向きに対向する2つのL字型アームを有し」、「前記不平衡アンテナは、前記平衡アンテナの設置面積の範囲内にある」とは、上記ア、ウを踏まえ、「前記平衡アンテナは、前記基板の端部において設置面積を規定する2つの放射素子を有し」、「前記不平衡アンテナは、前記平衡アンテナの設置面積の範囲内にある」点で一致する。

オ 引用発明の「マルチアンテナ装置」と、本件補正発明の「再構成可能アンテナ」とは、「アンテナ」である点で共通する。

以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
一致点
「 支持基板に取り付けられた平衡アンテナおよび不平衡アンテナを有し、
前記平衡アンテナおよび前記不平衡アンテナは両方とも前記基板の同じ端部に位置し、
前記平衡アンテナは、前記基板の端部において設置面積を規定する2つの放射素子を有し、
前記不平衡アンテナは、前記平衡アンテナの設置面積の範囲内にある、
アンテナ。」

相違点1:
平衡アンテナの「2つの放射素子」について、本件補正発明では、「内向きに対向する2つのL字型アーム」であるのに対して、引用発明は「2つのセグメントの中にそれぞれ収容される所望の長さ及び/又は幅となる2つの配線」である点。

相違点2:
本件補正発明は、「各アンテナには、関係するアンテナの周波数を特定の周波数範囲にわたって所望の動作周波数に調整するために少なくとも1つの可変コンデンサを含む少なくとも1つの整合回路が設けられ、前記平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路は、第1の信号ポートに接続され、前記不平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路は、第2の信号ポートに接続され」るのに対して、引用発明は、当該構成を有していない点。

相違点3:
「アンテナ」について、本件補正発明は「再構成可能」であるのに対して、引用発明は、再構成可能であるか否かについて特に明記されていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 相違点1について
平衡アンテナであるダイポールアンテナの「2つの放射素子」を、どの様な形状とするかは、当業者が適宜選択し得る事項であるから、引用発明のダイポールアンテナの2つの放射素子である「2つのセグメントの中にそれぞれ収容される所望の長さ及び又は幅となる2つの配線」を、上記「引用文献2記載の技術1」にある、「内向きに対向する2つのL字型ダイポール放射素子」(本件補正発明の「内向きに対向する2つのL字型アーム」に相当)とすることは、当業者が容易になし得る事項である。

イ 相違点2、3について
無線通信装置を広い周波数範囲で使用することは、適用するシステムに応じて適宜なし得る事項であって、そのために無線通信装置のアンテナにおいて広い同調範囲を提供することは、当然考慮すべき事項である。
また、上記「引用文献2記載の技術2」において、「平衡アンテナに接続される可変コンデンサを含む整合回路」は、本件補正発明の「平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路」に相当し、「不平衡アンテナであるシャーシアンテナの2つの結合要素にそれぞれ接続される可変コンデンサを含む整合回路」は、本件補正発明の「不平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路」に相当する。さらに、「整合回路は可変コンデンサにより、ある周波数範囲でアンテナを同調するためにインピーダンスを調整」することは、各アンテナに対して整合回路を接続することを考慮すると、本件補正発明の「少なくとも1つの可変コンデンサを含む少なくとも1つの整合回路」を設けて、「関係するアンテナの周波数を特定の周波数範囲にわたって所望の動作周波数に調整する」ことに相当する。
そうすると、引用発明において、上記「引用文献2記載の技術2」を適用して、「各アンテナには、関係するアンテナの周波数を特定の周波数範囲にわたって所望の動作周波数に調整するために少なくとも1つの可変コンデンサを含む少なくとも1つの整合回路が設けられ、前記平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路は、第1の信号ポートに接続され、前記不平衡アンテナ用の少なくとも1つの整合回路は、第2の信号ポートに接続」する(相違点2)ことで、アンテナを「再構成可能」として(相違点3)、広い同調範囲を提供することは、当業者が容易になし得ることである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された各技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、次の主張をしている。
「出願人は、当業者であれば、引用文献1から始めて、モノポールアンテナとダイポールアンテナとを十分に分離しつつ、ダイポールアンテナのアームのほぼ間にモノポールアンテナを位置するためには、アンテナ素子に対して複雑なフラクタルパターンが必要であることは理解できるだろう、と考える。万が一当業者が、ダイポールアンテナのアームの複雑なフラクタル形状を、例えば引用文献2に開示されているような、内向きに対向するL字形アームに置き換えることを検討するとしたら、当業者は、必要な分離を提供するために、平衡アンテナを、基板の反対側端部に、L字形アームによって規定される設置面積の範囲外に位置する必要があることを教示される、と考える。
一方で、本発明者らは、驚くべきことに、携帯電話機の使用に十分適した、特に小型のアンテナ装置を、不平衡アンテナが平衡アンテナの内向きに対向する一対のL字形アームの間に規定される設置領域の範囲内にあるという請求項1に記載の構成によって得ることができることを見出した。平衡アンテナおよび不平衡アンテナの両方のアンテナを基板の同じ端部に位置することにより、高性能化が促進される。
平衡アンテナと不平衡アンテナの間の分離は、引用文献1の装置とは異なる方法で得られる。引用文献1では、ダイポールアンテナの2つの部分の間にゼロに近い電界の平面が規定される。したがって、モノポールアンテナは、ゼロに近い電界の平面の線に従う必要がある(例えば、図4、図7、図10、および図13を参照)。しかしながら、本発明では、分離は、偏波位相差(およびほぼ直交する放射パターン)を利用することによって得られる。結果として、不平衡シャーシアンテナは、L字形アームの間の基板の全幅に渡って延在することができ、ゼロに近い電界の平面によって規定される狭い中心線に限定される必要はない。これは、不平衡アンテナがゼロに近い電界の平面に沿った細い線をなぞる必要がなく、当該アンテナがその一端部に限定された状態で、基板上の利用可能な貴重な面積をもっとうまく活用できることを意味する。
さらに、本発明の平衡アンテナのL字形アームは、基板上に配置する必要がなく、代わりに基板の端部を取り囲むことができ、例えば、携帯電話機の筐体に組み込むことができるため、貴重なPCB基板の面積をさらに節約することができる。これは、各引用文献の技術では不可能である。」

しかしながら、引用発明の「ダイポールアンテナ」の2つの放射素子として、「引用文献2記載の技術1」の「内向きに対向する2つのL字型ダイポール放射素子」(すなわち、本件補正発明でいう「内向きに対向する2つのL字型アーム」)を採用することは、当業者が容易になし得る事項である。
そして、引用発明において、ダイポールアンテナの2つの放射素子として、「内向きに対向する2つのL字型アーム」を採用した場合には、モノポールアンテナは、内向きに対向するL字型アームを収容するセグメントに隣接するようにセグメント間の間隔の領域内に配置されることとなる。
当該領域は、内向きに対向する2つのL字型アームをダイポールアンテナの2つの放射素子とした場合の、内向きに対向する2つのL字型アームにより規定されるダイポールアンテナの設置面積に含まれることから、請求人の上記「万が一当業者が、ダイポールアンテナのアームの複雑なフラクタル形状を、例えば引用文献2に開示されているような、内向きに対向するL字形アームに置き換えることを検討するとしたら、当業者は、必要な分離を提供するために、平衡アンテナを、基板の反対側端部に、L字形アームによって規定される設置面積の範囲外に位置する必要があることを教示される、と考える。」との主張は、採用できない。

また、「平衡アンテナと不平衡アンテナの間の分離は、引用文献1の装置とは異なる方法で得られる」との主張については、「本発明では、分離は、偏波位相差(およびほぼ直交する放射パターン)を利用することによって得られる。」ものであるから、本件補正発明で特定される事項ではなく、採用することはできない。

また、「本発明の平衡アンテナのL字形アームは、基板上に配置する必要がな」いとの主張について検討すると、引用発明は、「基板40上に配置されたダイポールアンテナ42およびモノポールアンテナ44を含」むものであり、支持基板である基板40上に、ダイポールアンテナおよびモノポールアンテナが配置されることは、ダイポールアンテナおよびモノポールアンテナが基板40に取り付けられていることと、相違するものではないから、当該主張は採用することができない。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 補正の却下の決定についてのまとめ
したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年10月11日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年12月28日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?23に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載される技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.米国特許出願公開第2010/0220022号公報
引用文献2.国際公開第2012/072969号

3 引用文献の記載、引用発明及び記載の技術
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1、2の記載事項、引用発明及び引用文献2記載の各技術は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2[理由]2で検討した本件補正発明から、「一対のアーム」についての「内向きに対向する2つのL字型アーム」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2に記載された各技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2に記載された各技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2記載の各技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲
 
審理終結日 2020-01-16 
結審通知日 2020-01-21 
審決日 2020-02-03 
出願番号 特願2015-524839(P2015-524839)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01Q)
P 1 8・ 575- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 純橘 均憲  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 衣鳩 文彦
丸山 高政
発明の名称 再構成可能アンテナ  
代理人 平井 安雄  

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