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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1363453
審判番号 不服2018-13550  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-10-11 
確定日 2020-06-17 
事件の表示 特願2015-549801「白血病の治療に使用するためのDOT1L阻害剤」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日国際公開、WO2014/100662、平成28年 4月 7日国内公表、特表2016-510316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年12月20日(パリ条約による優先権主張 2012年12月21日 米国(US))を国際出願日とする特許出願であって、出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年12月14日 :手続補正書の提出
平成29年 9月12日付け :拒絶理由通知
平成30年 3月16日 :意見書及び手続補正書の提出
平成30年 6月 7日付け :拒絶査定
平成30年10月11日 :審判請求書の提出

第2 本願発明
本願に係る発明は、平成30年3月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1及び7に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」、「本願発明7」といい、両者をあわせて「本願発明」ともいう。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
治療有効量の以下の式で表される化合物を含む、増加したレベルのHOXA9、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、MEIS1および/またはDOT1Lによって特徴付けられる白血病の症状の治療または軽減用医薬組成物。


「【請求項7】
治療有効量の以下の式で表される化合物を含む、11番染色体q23上の遺伝子の転座、欠失および/または重複により誘発される障害を治療するための医薬組成物。



以下、請求項1及び7に特定される化学式の化合物を「化合物A2」という。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、以下の理由を含む。
この出願の請求項1及び7に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
引用文献1.米国特許出願公開第2012/0142625号明細書
(公開日:2012年6月7日)

第4 引用文献に記載の事項等
1.引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶理由で引用された引用文献1には、以下の事項が記載されている。
(引用文献1は外国語で作成された文献であるが、以下において、摘記は、引用文献1のファミリー文献である特表2013-544846号公報の記載を基礎として、当審合議体が適宜加筆修正した訳文のみを記載する。なお、便宜のために、引用文献1の記載箇所の指摘の後に、括弧書きで、引用文献1の上記ファミリー文献の対応記載箇所も指摘した。また、訳出にあたり、読みやすいように記載形式を若干変更した。下線は、当審合議体が付した。以下、この審決において同様である。)

(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】式(IV)の化合物、又はそのN‐オキシド、又はその医薬的に許容される塩:

(IV)
(式中、
Aは、O又はCH_(2)であり;
Qは、H、NH_(2)、NHR_(b)、NR_(b)R_(c)、OH、R_(b)、又はOR_(b)、ここでR_(b)及びRcのそれぞれは独立して、C_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、C_(2)‐C_(6)アルキニル、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?7員のヘテロシクロアルキル、5?10員のヘテロアリール、又は‐M_(1)‐T_(1)であり、ここでM_(1)は、結合、又は任意によりハロ、シアノ、ヒドロキシル、又はC_(1)‐C_(6)アルコキシルで置換されるC_(1)‐C_(6)アルキルリンカーであり、及び、T_(1)は、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、又は5?10員のヘテロアリールであり、又は、R_(b)及びR_(c)は、それらが結合するN原子と一緒に、任意によりC_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、C_(2)‐C_(6)アルキニル、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、C(O)OH、C(O)O‐C_(1)‐C_(6)アルキル、OC(O)‐C_(1)‐C_(6)アルキル、シアノ、C_(1)‐C_(6)アルコキシル、アミノ、モノ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、ジ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、又は5?6員のヘテロアリールで置換されるN原子に0又は1つの追加のヘテロ原子を有する4?7員のヘテロシクロアルキルを形成し、及び、R_(b)、R_(c)及びT_(1)のそれぞれは、任意により、C_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、C_(2)‐C_(6)アルキニル、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、C_(1)‐C_(6)アルコキシル、アミノ、モノ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、ジ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、及び5?6員のヘテロアリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され;
Xは、N又はCRxであり、ここでRxは、H、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、又はRs_(1)であり、Rs_(1)は、アミノ、C_(1)‐C_(6)アルコキシル、C_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、C_(2)‐C_(6)アルキニル、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、又は5?6員のヘテロアリールであり、及びRs_(1)は、任意により、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、C_(1)‐C_(6)アルコキシル、アミノ、モノ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、ジ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、及び5?6員のヘテロアリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され;
Yは、H、R_(d)、SO_(2)R_(d)、又はCOR_(d)であり、R_(d)は、C_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、C_(2)‐C_(6)アルキニル、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、又は5?6員のヘテロアリールであり、及び、R_(d)は、任意により、C_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、C_(2)‐C_(6)アルキニル、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、C_(1)‐C_(6)アルコキシル、C_(1)‐C_(6)アルキルスルホニル、アミノ、モノ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、ジ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、及び5?6員のヘテロアリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され、及び、R_(d)上のC_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、及び5?6員のヘテロアリール置換基のそれぞれは、さらに任意により、C_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、C_(2)‐C_(6)アルキニル、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、C(O)OH、C(O)O‐C_(1)‐C_(6)アルキル、OC(O)‐C_(1)‐C_(6)アルキル、シアノ、C_(1)‐C_(6)アルコキシル、アミノ、モノ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、ジ‐C1‐C6アルキルアミノ、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、又は5?6員のヘテロアリールで置換され;
R_(1)及びR_(2)はそれぞれ、独立して、H、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、又はRs_(2)であり、Rs_(2)は、アミノ、C_(1)‐C_(6)アルコキシル、C_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、又はC_(2)‐C_(6)アルキニルであり、及びそれぞれのRs_(2)は、任意により、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、C_(1)‐C_(6)アルコキシル、アミノ、モノ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、ジ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、及び5?6員のヘテロアリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され;
R_(e)、R_(f)、R_(g)、及びR_(h)はそれぞれ、独立して、‐M_(2)‐T_(2)であり、ここで、M_(2)は、結合、SO_(2)、SO、S、CO、CO_(2)、O、O‐C_(1)‐C_(4)アルキルリンカー、C_(1)‐C_(4)アルキルリンカー、NH、又はN(R_(t))であり、R_(t)は、C_(1)‐C_(6)アルキルであり、及び、T_(2)は、H、ハロ、又はRs_(4)であり、Rs_(4)は、C_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、C_(2)‐C_(6)アルキニル、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?8員のヘテロシクロアルキル、又は5?10員のヘテロアリールであり、及びO‐C_(1)‐C_(4)アルキルリンカー、C_(1)‐C_(4)アルキルリンカー、R_(t)、及びRs_(4)のそれぞれは、任意により、ハロ、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、C_(1)‐C_(6)アルキル、C_(2)‐C_(6)アルケニル、C_(2)‐C_(6)アルキニル、C_(1)‐C_(6)アルコキシル、アミノ、モノ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、ジ‐C_(1)‐C_(6)アルキルアミノ、C_(3)‐C_(8)シクロアルキル、C_(6)‐C_(10)アリール、4?6員のヘテロシクロアルキル、及び5?6員のヘテロアリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換され、並びに、
mは、0、1、又は2である)。
・・・
【請求項12】前記化合物が、化合物1?140から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】治療有効量の請求項1に記載の化合物及び医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項14】治療有効量の請求項12に記載の化合物及び医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項15】治療有効量の請求項13又は14に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、がんの治療方法。
【請求項16】治療有効量の請求項13又は14に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、血液がんの治療方法。
【請求項17】治療有効量の請求項13又は14に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、白血病の治療方法。
【請求項18】前記白血病が、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、又は混合系統白血病である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】治療有効量の請求項13又は14に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、染色体11q23上の遺伝子の転座によって媒介される障害の治療方法。
【請求項20】治療有効量の請求項13又は14に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、DOT1L媒介タンパク質メチル化によって媒介される障害の治療方法。」

(イ)化合物2
「【0295】 本発明の代表的な化合物としては、表1に示された化合物が挙げられる。
・・・
表1の続き


(【0295】(【0291】?【0292】))

「【0705】 ・・・
・・・
実施例2
(2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-5-((((1r,3S)-3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ [d] イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール(化合物2)の合成

ステップ1:シス及びトランスメチル3-((((3aR,4R,6R,6aR)-6-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-2,2-ジメチルテトラヒドロフロ[3,4-d][1,3]ジオキソール-4-イル)メチル)アミノ)シクロブタンカルボキシレートの合成

【0706】 ・・・
・・・
ステップ9:化合物2の合成
【0723】 9-((3aR,4R,6R,6aR)-6-((((1r,3S)-3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)-2,2-ジメチルテトラヒドロフロ[3,4-d][1,3]ジオキソール-4-イル)-9H-プリン-6-アミン(105mg)のHCl/MeOH(2.5mol/L)(10mL)中の溶液を室温にて2時間攪拌し、その後、乾燥まで濃縮した。水(0.5mL)及びMeOH(5mL)中のK_(2)CO_(3)(96mg)を添加し、そして得られた混合物をさらに10分間室温にて攪拌し、そしてろ過した。ろ液を濃縮し、そして残留物を分取-HPLC(xbridge 30mm^(*)150mm,移動相:A:水(10mM NH4HCO3)B:CAN,勾配:10分間35-45%B、6分間45-45%B、20分で停止、流速:50ml/min)により精製し、化合物2を白色固形分として与えた(50mg,収率:51%)。^(1)HNMR(500MHz,MeOD):δ_(H)8.29(s,1H),8.20(s,1H),7.47-7.39(m,3H),5.96(d,J=4.0Hz,1H),4.70-4.75(m,1H),4.26-4.27(m,1H),4.05-4.06(m,1H),3.140-3.155(m,1H),3.00-2.76(m,5H),2.18-2.16(m,2H),1.87-1.85(m,2H),1.57-1.55(m,2H),1.36(s,9H),1.01(d,J=6.5Hz,3H),0.94(d,J=6.5Hz,3H)ppm;ESI-MS(m/z):563.4[M+1]^(+)。」(【0705】?【0723】(【0714】?【0739】))

(ウ)治療方法
「【0507】 混合系統白血病(MLL)は、乳児白血病の70%以上及び成人急性骨髄性白血病(AML)の約10%を構成する急性白血病の遺伝子学的異型である(Hess,J.L.(2004),Trends Mol Med 10,500-507; Krivtsov,A.V.,及びArmstrong,S.A.(2007),Nat Rev Cancer 7,823-833)。MLLは、特に悪性の白血病を示し、そして本疾患に罹患した患者は、一般的に予後不良を有する;これらの患者は、多くの場合、現在の化学療法での治療後、早期再発に苦しむ。従って、MLLに苦しむ患者のための新しい治療法の大きなそして現存する必要性がある。
【0508】 MLL疾患の共通の顕著な特徴は、染色体11q23上のMLL遺伝子に影響を与える染色体転座である(Hess,2004;Krivtsov及びArmstrong,2007)。通常、MLL遺伝子は、特定の遺伝子座で、ヒストンH3(H3K4)のリシン4のメチル化を触媒するSET‐ドメインヒストンメチルトランスフェラーゼをコードする(Milneら、(2002)Mol Cell 10,1107-1117;Nakamuraら、(2002),Mol Cell 10,1119-1128)。遺伝子局在は、SET‐ドメインの外部の、MLL内の認識要素との特異的な相互作用によって付与される(Aytonら、(2004)Mol Cell Biol 24,10470-10478; Slanyら、(1998) Mol Cell Biol 18,122-129;Zeleznik-Leら、(1994)Proc Natl Acad Sci USA91,10610-10614)。疾患に関連した転座において、触媒SET‐ドメインは、失われそして残存しているMLLタンパク質は、AF及びENLファミリーメンバーのタンパク質、例えば、AF4、AF9、AF10及びENLを含む、様々なパートナーと融合する(Hess,2004;Krivtsov及びArmstrong,2007;Slany(2009)Haematologica 94,984-993)。これらの融合パートナーは、他のヒストンメチルトランスフェラーゼ、DOT1Lと、直接的に又は間接的に相互作用することができる(Bitounら、(2007)Hum Mol Genet 16,92-106;Mohanら、(2010)Genes Dev.24,574-589;Muellerら、(2007)Blood 110,4445-4454;Muellerら、(2009)PLoS Biol 7,e1000249; Okadaら、(2005) Cell 121,167-178;Parkら、(2010)Protein J 29,213-223;Yokoyamaら、(2010)Cancer Cell 17,198-212;Zhangら、(2006)J Biol Chem 281,18059-18068)。結果、これらの位置に対して、転座産物は、MLLタンパク質の残余内に遺伝子特異的な認識要素を保持するだけでなく、DOT1Lをリクルートするための能力を獲得する(Monroeら、(2010)Exp Hematol.2010 Sep18.[Epub ahead of print]Pubmed PMID:20854876;Muellerら、2007; Muellerら、2009;Okadaら、2005)。DOT1Lは、H3K79のメチル化、転写遺伝子活性に関連するクロマチン修飾を触媒する(Fengら、(2002 Curr Biol 12,1052-1058;Stegerら、(2008)Mol Cell Biol 28,2825-2839)。DOT1LのMLL融合タンパク質リクルートメントから生じる異所性H3K79メチル化は、HOXA9及びMEIS1を含む、白血病遺伝子の発現増強につながる(Guentherら、(2008)Genes & Development 22,3403-3408;Krivtsovら、(2008)Nat Rev Cancer 7,823-833; Milneら、(2005)Cancer Res 65,11367-11374;Monroeら、2010;Muellerら、2009;Okadaら、2005;Thielら、(2010)Cancer Cell 17,148-159)。従って、DOT1Lが、本質的に疾患において、遺伝子学的に変えられない一方で、その間違って位置した酵素活性は、MLL患者に影響を与える遺伝子転座の直接の結果であり;従って、DOT1Lは、本疾患において、白血病誘発の触媒駆動機構となることを企図する(Krivtsovら、2008;Monroeら、2010;Okadaら、2005;Yokoyamaら、(2010)Cancer Cell 17,198-212)。さらに、MLLにおけるDOT1Lの病原性役割へのさらなる支持は、MLL融合タンパク質の形質転換活性を伝播するにあたり、DOT1Lの必要性を明らかにするモデル系における研究に由来する(Muellerら、2007;Okadaら、2005)。
【0509】 証拠は、DOT1Lの酵素活性が、MLLにおける発症に重要であり、そしてDOT1Lの阻害が、本疾患において治療的介入のための薬理学的基礎を提供することを示す。化合物治療は、非MLL形質転換細胞への影響なしに、MLL転座を有する白血病細胞の選択的、濃度依存的死滅をもたらす。阻害剤処置細胞の遺伝子発現分析は、MLL再配列(MLL‐rearranged)白血病において異常大量発現された遺伝子の下方制御及びMLL‐AF9白血病のマウスモデルにおけるDot1L遺伝子の遺伝子ノックアウトにより引き起こされる遺伝子発現変化との類似性を示す。」(【0507】?【0509】(【0484】?【0486】))

(エ)実施例11 腫瘍抗増殖アッセイ
「【1173】 インビトロ抗増殖アッセイ.MLLL-再構成及び非-MLL-再構成ヒト白血病細胞株の調査対象群を用いて本発明の化合物の抗増殖活性の効力及び選択性を評価した。本研究で使用した細胞株を図1Aに示す。MLL-再構成の調査対象群はALL,AML及びMLL-AF4,MLL-AF9又はMLL-ENL融合種を有している混合型白血病からの細胞株を含んだ。これらの細胞株はDOT1Lをリクルートした。調査対象群は、また、MLL-再構成を有しない5つの細胞株を含み、そしてMLL遺伝子の部分タンデム重複(MLL-PTD)を含む1つの細胞株を含んだ。
【1174】 指数関数的に増殖する細胞を、150μlの最終体積で3x10^(4)細胞/ウェルの密度にて96-ウェルのプレートに3セット蒔いた。漸増濃度の化合物2の存在下に細胞をインキュベートした。14日までの間の3?4日毎の細胞生存率測定により、抗増殖活性を決定した。細胞計数の日に、増殖培地及び化合物2を入れ替え、そして細胞を分割して5x10^(4)細胞/ウェルに戻した。
【1175】 図1の半数最大阻害濃度(IC_(50))結果は化合物2が試験した4つのMLL-再構成細胞株のうちの3つ(MV4;11(MLL-AF4),MOLM-13(MLL-AF9)及びKOPN-8(MLL-ENL))に対して強力なナノモル抗増殖活性を示すことを表している。MLL-PTDを発現するEOL-1細胞も化合物2に高感度であった(IC_(50)=11nM)。RS4;11細胞及び2つの非MLL-再構成細胞(Reh及びKasumi-1)は1?3対数の大きさで感度が低く、そして2つの非MLL-再構成細胞(Jurkat及びHL-60)は活性を示さなかった。全体として、結果は化合物2がMLL-再構成白血病細胞株及びサブセットの非MLL-再構成白血病細胞株の増殖を強力かつ選択的に阻害することを示している。
【1176】 インビボ抗増殖アッセイ.本発明の化合物のインビボ抗腫瘍活性をMLL-再構成白血病のマウス異種移植モデルにおいて評価した。
【1177】 4つの群(群1,3,4及び5)の20匹及び1つの群(群2)の8匹の雌ヌードマウス(平均体重0.023kg)で、80?120mm^(3)の範囲のサイズのMV4-11異種移植腫瘍を有するマウスに対して、皮下にミニポンプ(Alzet Model 2001)を埋め込んだ。群1はポンプからビヒクルのみを受け入れた。群2はポンプからビヒクルのみ+ビヒクルの1日3回の腹注(8時間開けて)を受け入れた。群3は1日の総投与量172mg/kg/日として、ポンプから112mg/kg/日+20mg/kgの化合物2の1日3回の腹注(8時間開けて)を受け入れた。群4及び5は、それぞれ、ポンプから112及び56mg/kg/日の化合物2を受け入れた。ポンプは7日間続くように設計されており、そして21日間の暴露の総計輸液期間を提供するためにポンプを2回交換した。
【1178】 群4及び5中のすべての動物から単一の血液サンプルを第7日、第14日及び第21日に取り出し、そして化合物2の血漿レベルについての評価を行った。血液サンプルを群3から第7日及び第14日に以下の時点で取り出した(各時点で3匹の動物):腹注投与前5分、及び、腹注投与後15分、30分、1、2及び4時間。第21日に、最後の腹注の3時間後に、1つの血液サンプルを群3から取り出した。4日毎に腫瘍サイズを測定した。21日後に、試験を止め、そして平均TGIを計算した。
【1179】 図2は21日間の投与にわたる腫瘍増殖を示す。2つのビヒクルコントロール群の間の腫瘍サイズの差異はなかった。腹注投与で補給した高投与ミニポンプ群はコントロールと比較して統計的に有意な>70%のTGIを示した。56及び112mg/kg/日の群はコントロールと比較して統計的に有意でない、それぞれ、43及び38%のTGI値を示した。化合物2は図2中のEx.2を指す。」(【1173】?【1179】の実施例11(【1360】?【1366】))

なお、上記の「TGI」は、腫瘍増殖抑制率を意味する。(合議体注)

(オ)図1、2


図1


図2 」

2.引用文献1に記載された発明
上記1.の(ア)の記載、特に、請求項12、14、17及び18の記載によれば、引用文献1の特許請求の範囲には、治療有効量の化合物1?140から選択される化合物、及び、医薬的に許容される担体を含む医薬組成物であって、混合系統白血病等の白血病の治療に使用されるものが記載されている。
そして、引用文献1の実施例11には、特許請求の範囲に記載の医薬組成物あるいは当該医薬組成物を使用した治療に関する具体的態様として、化合物2(これは、【0705】に記載のとおり、(2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-5-((((1r,3S)-3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオールである。)が、MLL再構成ヒト白血病細胞株であって、混合型白血病からの細胞株であるMV4-11(MLL-AF4)融合種細胞株に対する増殖阻害作用を有すること(上記1.の(エ)の【1175】及び同(オ)の図1)、及び、MV4-11異種移植腫瘍を有するヌードマウスに対して腹注投与することで、有意なTGI(腫瘍増殖抑制率)を示したこと(上記1.の(エ)の【1176】?【1179】及び同(オ)の図2)が、記載されている。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「治療有効量の(2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-5-((((1r,3S)-3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール、及び、医薬的に許容される担体を含む、MLL再構成ヒト白血病細胞であるMLL-AF4融合種を有する混合型白血病患者の治療に使用するための医薬組成物。」

第5 本願発明と引用発明との対比・判断
1.本願発明7と引用発明との対比・判断
(1)対比
本願発明7と、引用発明とを対比する。
引用発明の「(2R,3R,4S,5R)-2-(6-アミノ-9H-プリン-9-イル)-5-((((1r,3S)-3-(2-(5-(tert-ブチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)エチル)シクロブチル)(イソプロピル)アミノ)メチル)テトラヒドロフラン-3,4-ジオール7」(以下、引用文献1の記載にならい「化合物2」という。)は、本願発明7の化合物A2に相当する。

そうすると、本願発明7と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点1で一応相違する。
<一致点>
治療有効量の化合物A2を含む、医薬組成物。

<相違点1>
医薬組成物について、本願発明7では、「11番染色体q23上の遺伝子の転座、欠失および/または重複により誘発される障害を治療するため」のものであることが特定されているのに対して、引用発明では、「MLL再構成ヒト白血病細胞であるMLL-AF4融合種を有する混合型白血病患者の治療に使用するため」のものであることが特定されている点。

(2)判断
相違点1について検討する。
引用発明の医薬組成物の対象疾患である「MLL再構成ヒト白血病細胞であるMLL-AF4融合種を有する混合型白血病」はMLL疾患であるところ、引用文献1の【0508】(対応ファミリー文献の【0484】)に、「MLL疾患の共通の顕著な特徴は、染色体11q23上のMLL遺伝子に影響を与える染色体転座である」と記載されているとおり、MLL疾患は11番染色体q23上の遺伝子の転座により誘発される疾患である。
そうすると、引用発明の「MLL再構成ヒト白血病細胞であるMLL-AF4融合種を有する混合型白血病患者の治療に使用するため」の医薬組成物は、本願発明7の、「11番染色体q23上の遺伝子の転座、欠失および/または重複により誘発される障害を治療するため」との構成を満足するといえる。
よって、相違点1は、実質的には相違点ではない。
したがって、本願発明7は、引用発明、すなわち、引用文献1に記載された発明である。

2.本願発明1と引用発明との対比・判断
(1)対比
本願発明1と、引用発明とを対比する。
引用発明の化合物2は、本願発明1の化合物A2に相当する。
本願発明1の「治療」という用語は、本願明細書によれば、「疾患、状態または障害の対処を目的とした患者の管理およびケアをいい、疾患、状態もしくは障害の症状または合併症を軽減するため、あるいは疾患、状態もしくは障害を除去するため本発明の化合物・・・を投与することを含む」ものであるし、また、「軽減」という用語は、「障害の徴候または症状の重症度を低下させるプロセスを説明することを意図」するものである(【0078】?【0079】)。一方、引用発明の「治療」について、引用文献1には、「「治療する(treat)」・・・は、疾患、症状、又は障害を治すための患者の管理及び看護を言い表し、そして疾患、症状又は障害の症候又は合併症を緩和するために、又は疾患、症状又は障害を取り除くために、本発明の化合物・・・の投与を含む」(【0548】(対応ファミリー文献の【0525】))と、また、「軽減」については、「「緩和する(alleviate)」は、障害の兆候又は症候の重症度が軽減されるプロセスを言い表すことを意味する」と記載されている(【0550】(【0527】))。
そうすると、引用発明の「治療」は、上記混合型白血病の「症状の治療」をするものといえるし、また、本願発明1の「治療または軽減」に相当するともいえる。
してみると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の相違点2で一応相違する。
<一致点>
治療有効量の化合物A2を含む、白血病の症状の治療または軽減用医薬組成物。

<相違点2>
医薬組成物の適用対象疾患の白血病について、本願発明1では、「増加したレベルのHOXA9、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、MEIS1および/またはDOT1Lによって特徴付けられる白血病」(以下、「特定遺伝子の発現する白血病」という。)と特定されているのに対して、引用発明では、「MLL再構成ヒト白血病細胞であるMLL-AF4融合種を有する混合型白血病」と特定されており、上記特定遺伝子の発現する白血病であることは特定されていない点。

(2)判断
相違点2について検討する。
引用発明の医薬組成物の適用対象疾患である「MLL再構成ヒト白血病細胞であるMLL-AF4融合種を有する混合型白血病」について、引用文献1の【0508】(対応ファミリー文献の【0484】)には、「染色体11q23上のMLL遺伝子に影響を与える染色体転座」を有する「MLL疾患」に関し、「通常、MLL遺伝子は、特定の遺伝子座で、SET‐ドメインヒストンメチルトランスフェラーゼをコードする」こと、「疾患に関連した転座において、触媒SET‐ドメインは、失われそして残存しているMLLタンパク質は、AF及びENLファミリーメンバーのタンパク質、例えば、AF4を含む、様々なパートナーと融合する」こと、「これらの融合パートナーは、他のヒストンメチルトランスフェラーゼ、DOT1Lと、直接的に又は間接的に相互作用することができ」、「結果、これらの位置に対して、DOT1Lをリクルートするための能力を獲得する」こと、「DOT1Lは、H3K79のメチル化、転写遺伝子活性に関連するクロマチン修飾を触媒」し、「DOT1LのMLL融合タンパク質リクルートメントから生じる異所性H3K79メチル化は、HOXA9及びMEIS1を含む、白血病遺伝子の発現増強につながる」ことが記載されている。
また、引用発明の「MLL再構成ヒト白血病細胞であるMLL-AF4融合種を有する混合型白血病」を含め、MLL再構成ヒト白血病融合種細胞を有する混合型白血病においては細胞にHOXA9、FLT3、MEIS1が、過剰に発現しており、これらの増加したレベルを有することは、本願の優先日前に周知の事項であった。例えば、HOXA9及びMEIS1の発現については、原査定の引用文献2であるDaigle,S.R. et al,Selective killing of mixed lineage leukemia cells by a potent small-molecule DOT1L inhibitor.,Cancer Cell,2011年7月12日,Vol.20,No.1,p.53-65(特に、p55の左欄下5行?右欄22行、図5B)、同引用文献3であるBasavapathruni,A. et al.,Conformational adaptation drives potent,selective and durable inhibition of the human protein methyltransferase DOT1L.,Chem. Biol. Drug. Des.,2012年10月9日,Vol.80, No.6,pp.971?980(特に、p971の右欄下7行?p972の左欄28行)を参照。また、HOXA9及び/又はMEIS1に加えてFLT3を発現する点については、杉田完爾、小児難治性白血病へのアプローチ、日小血会誌、2007年2月、21巻,1号、pp.1?12(特に、p3の左欄7?10行、p6の左欄4?6行)、今村俊彦、小児急性リンパ性白血病とMLL遺伝子、京府医大誌、2010年、119巻、10号、pp.707?715(特に、p707の抄録、p710の左欄下9行?右欄23行)、Kimberly G. et al.,Hoxa9 Regulates FLT3 in Lymphohematopoietic Progenitors,J.Immunol.2010年,Vol.185,pp.6572?6583(特に、タイトル及び抄録)を参照。
そうすると、上記の引用文献1の記載や本願の優先日前に周知の事項を踏まえれば、当業者は、引用発明の「MLL再構成ヒト白血病細胞であるMLL-AF4融合種を有する混合型白血病」は、少なくとも増加したレベルのHOXA9、FLT3、MEIS1を有する白血病である点で、本願発明1の「増加したレベルのHOXA9、Fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、MEIS1および/またはDOT1Lによって特徴付けられる白血病」との構成を満足するものであることを認識するといえる。
そうすると、相違点2は実質的には相違点ではない。
したがって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明である。

3.審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の3.において、以下のとおり、進歩性の拒絶理由に対する主張をするのみで、新規性の拒絶理由についての反論を何らしていない。

・請求人の主張
「本願発明は、本願明細書の段落17に記載されているように、DOOT1L阻害剤が、HOXA9、FLT3、MEIS1及び/又はDOT1Lの過剰発現を特徴とする白血病を効果的に治療することができるという驚くべき発見に基づくものである。・・・例えば、本願の実施例5は、図1A及び実施例2に示されるように、化合物A2による治療に感受性であるEOL-1細胞におけるHOXA9過剰発現を実証している。
追加的な証拠として、本出願人は、化合物A2による治療後の白血病細胞系Molm13、MV411、LOUCY、EOL1、Reh、HL60、BV173及びJurkatの増殖データを、以下の表のとおり示す。
【表】
化合物A2での治療に対する白血病系の感受性

表中、「+++」は、化合物A2に対する感受性を示し、「-」は化合物A2に対する非感受性を示す。

本願における図3に示すように、Molm13、MV411、LOUCY、EOL1及びReh細胞は、Jurkat細胞(コントロール)に対して、HOXA9を過剰発現するが、HL60及びBV173細胞は、Jurkat細胞に対して、HOXA9を過剰発現しないことがわかる。
上述した表におけるデータは、化合物A2による治療に対する白血病細胞株の感受性は、HOXA9過剰発現状態と相関し、HOXA9過剰発現が化合物A2による治療に対する応答性を示すことを実証している。
出願時の明細書に開示されている驚くべき知見及び出願後の上述したデータを考慮すると、HOXA9、FLT3、MEIS1のレベルの上昇を特徴とする白血病を治療するための化合物A2の使用、さらには、化合物A2による治療への応答性の指標としてのHOXA9、FLT3、MEIS1及び/又はDOT1Lレベルの検出のために使用し得る本願の医薬組成物は、引用された引用文献のすべてに対して進歩性を有するものである。
当業者においては、引用文献のいずれからも、それが有用な所望の結果を十分に生み出すことを期待して請求された発明を試みることはもちろん、その発明を直接的に導くものではない。
このようなことから、本願発明は、引用文献の存在下においても進歩性を有するものであると思料する。」

そこで、検討すると、請求人の「本願発明は、本願明細書の段落17に記載されているように、DOOT1L阻害剤が、HOXA9、FLT3、MEIS1及び/又はDOT1Lの過剰発現を特徴とする白血病を効果的に治療することができるという驚くべき発見に基づくものである。」との主張に関しては、上記第4の1.(エ)及び(オ)として摘記したとおり、引用文献1には、化合物2(本願発明の化合物A2)がMLL再構成ヒト白血病細胞であるMLL-AF4融合種を有する混合型白血病患者の治療に使用することができることが、実施例11に具体的な試験結果を伴って記載されており、引用文献1に接した当業者は、化合物A2がMLL-AF4融合種を有する混合型白血病を効果的に治療することができることを理解するといえるところ、上記第5の2.(2)で説示したとおり、当業者は、本願優先日前に周知の事項を踏まえれば、この白血病が、HOXA9、FLT3、MEIS1が過剰に発現している白血病であることを認識できるといえる。
そして、本願発明1と引用発明とには、実質的には相違点がないことは、すでに上記第5の2.(2)で説示したとおりである。
また、本願発明7については、本願発明7は、請求人が主張する「HOXA9、FLT3、MEIS1のレベルの上昇を特徴とする白血病」なる発明特定事項を有していないし、本願発明7と引用発明とには、実質的には相違点がないことは、上記第5の1.(2)で説示したとおりである。
そして、請求人の他の主張を参酌しても、本願発明1、7と引用発明の間には実質的には相違点はないとの合議体の判断を覆すに足りる根拠は示されてない。
したがって、請求人の上記主張を参酌しても本願発明1及び7は引用文献1に記載された発明であるとの合議体の判断は変わらない。

第6 むすび
上記のとおり、本願発明1及び7は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願発明は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-01-15 
結審通知日 2020-01-21 
審決日 2020-02-04 
出願番号 特願2015-549801(P2015-549801)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横山 敏志古閑 一実幸田 俊希  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 前田 佳与子
渕野 留香
発明の名称 白血病の治療に使用するためのDOT1L阻害剤  
代理人 村井 康司  
代理人 堀川 かおり  

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